(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】光重合性拡散反射材料を固化させるための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/124 20170101AFI20220121BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220121BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220121BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20220121BHJP
【FI】
B29C64/124
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/255
(21)【出願番号】P 2019512675
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(86)【国際出願番号】 AT2017000059
(87)【国際公開番号】W WO2018039688
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2019-07-12
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519070161
【氏名又は名称】リソッツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライター、ラファエル
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523148(JP,A)
【文献】特表2019-500248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259862(US,A1)
【文献】国際公開第2018/013829(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/026829(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02477828(GB,A)
【文献】特開2016-060173(JP,A)
【文献】実開平07-033629(JP,U)
【文献】国際公開第2015/128783(WO,A1)
【文献】特開2016-097517(JP,A)
【文献】特表2012-505773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料支持体またはタンク底部である透明な材料閉じ込め要素を覆う光重合性拡散反射材料を、前記透明な材料閉じ込め要素を通して前記材料に実行される固化させるべき表面の照射により、固化させるための方法であって、a)前記材料閉じ込め要素の厚さと、b
)構築
場とが、前記材料閉じ込め要素の厚さが前記構築場の直径の少なくとも1/4であるように互いに適合させられる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記材料閉じ込め要素の厚さが前記構築場の直径の少なくとも1/3であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料閉じ込め要素の厚さが前記構築場の直径の少なくとも1/2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記構築場
と、覆われた表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも10mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記構築場
と、覆われた表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも15mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記構築場
と、覆われた表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも20mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記構築場
と、覆われた表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも30mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記材料閉じ込め要素の厚さおよび前記
構築場は、前記材料から前記材料閉じ込め要素に臨界角以上で反射させられた放射が、前記材料閉じ込め要素の側壁で全反射させられるように互いに適合させられる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
照射入射面と出口面とを除く前記材料閉じ込め要素の表面が、少なくとも部分的に、放射吸収特性を備える、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記照射入射面と前記出口面とを除く前記材料閉じ込め要素の前記表面が、側壁である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記照射入射面と前記出口面とを除く前記材料閉じ込め要素の前記表面が、少なくとも特定の領域において放射を吸収する層を備える、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記材料閉じ込め要素の表面が、少なくとも部分的に、反射防止特性を備える、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記材料閉じ込め要素の前記表面が、前記覆われた表面から遠ざかる方を向いた照射入射面である、
請求項4~7のいずれか一項を引用する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記材料閉じ込め要素の前記表面が、反射防止層を備える、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
光重合性拡散反射材料から、成形体を層状に構築するための方法であって、
・成形体の各層が、前記光重合性拡散反射材料の所与の厚さの材料層を材料閉じ込め要素上にそれぞれ形成することによって順次に重ねて形成され、
・構築プラットフォームまたは構築プラットフォーム上に少なくとも途中まで作られた前記成形体が、該構築プラットフォームまたは該成形体と前記材料閉じ込め要素との間に前記材料の固化させるべき層が形成されるように、前記材料層に下降させられ、前記固化させるべき層が、前記成形体の各層の所望の形状をもたらすように前記材料閉じ込め要素を通しての照射によって位置選択的に固化させられ、固化は請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって実行される、方法。
【請求項16】
前記光重合性拡散反射材料が、セラミックまたは金属フィラーを有する樹脂である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
光重合性拡散反射材料を照射によって固化させ、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実行するために、材料支持体またはタンク底部である透明な材料閉じ込め要素を前記材料によって覆うことができ、固化させるべき表面を前記透明な材料閉じ込め要素を通して照射するために放射源が前記材料閉じ込め要素の下方に配置されている装置であって、
前記材料閉じ込め要素の厚さと、覆うことができる表面とが、前記材料閉じ込め要素の厚さが前記覆うことができる表面の直径の少なくとも1/4に相当するように互いに適合させられる、ことを特徴とする装置。
【請求項18】
前記覆うことができる表面が、構築場である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記材料閉じ込め要素の厚さが、前記覆うことができる表面の直径の少なくとも1/3に相当する、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記材料閉じ込め要素の厚さが、前記覆うことができる表面の直径の少なくとも1/2に相当する、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項21】
前記構築場と前記覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも10mmである、ことを特徴とする請求項17~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記構築場と前記覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも15mmである、請求項17~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記構築場と前記覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも20mmである、請求項17~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記構築場と前記覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離が、少なくとも30mmである、請求項17~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記材料閉じ込め要素の厚さと、前記覆うことができる表面とは、前記材料から前記材料閉じ込め要素に臨界角以上で反射させられた放射が、前記材料閉じ込め要素の側壁で全反射させられるように互いに適合させられる、ことを特徴とする請求項17~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記覆うことができる表面が、構築場である、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
照射入射面と出口面とを除く前記材料閉じ込め要素の表面が、少なくとも部分的に、放射吸収特性を備える、ことを特徴とする請求項17~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記照射入射面と前記出口面とを除く前記材料閉じ込め要素の前記表面が、側壁である、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記照射入射面と前記出口面とを除く前記材料閉じ込め要素の前記表面が、少なくとも部分的に、少なくとも特定の領域において放射を吸収する層を備える、請求項27又は28に記載の装置。
【請求項30】
前記材料閉じ込め要素の表面が、少なくとも部分的に、反射防止特性を備える、ことを特徴とする請求項17~29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記材料閉じ込め要素の前記表面が、前記覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面である、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記材料閉じ込め要素の表面が、反射防止層を備える、請求項30又は31に記載の装置。
【請求項33】
前記材料閉じ込め要素は、前記覆うことができる表面を形成する弾性層を備える、請求項17~32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記材料閉じ込め要素は、ガラスまたはポリメチルアクリレートの透明なブロックを備える、請求項17~33のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料支持体またはタンク底部などの透明な材料閉じ込め要素を覆う光重合性拡散反射材料を、透明な材料閉じ込め要素を通して材料に実行される固化させるべき表面の照射により、固化させるための方法、およびそのような方法を実行するための装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、光重合性拡散反射材料、特にセラミックまたは金属フィラーを有する樹脂から、成形体を層状に構築するための方法であって、成形体の各層が、光重合性材料の所与の厚さの材料層を材料閉じ込め要素上にそれぞれ形成することによって順次に重ねて形成され、構築プラットフォームまたは構築プラットフォーム上に少なくとも途中まで作られた成形体が、構築プラットフォームまたは成形体とタンク底部との間に材料の固化させるべき層が形成されるように、材料層に下降させられ、固化させるべき層が、成形体の各層の所望の形状をもたらすように材料閉じ込め要素を通しての照射によって位置選択的に固化させられる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造または3D印刷の主な技術の1つ、すなわちステレオリソグラフィにおいては、成形体の個々の層を位置選択的な放射によって硬化させることで、所望の物体をその3次元形状にて順次に製造する。光重合性の出発材料を、さまざまな成分で構成することができる。冒頭で述べた方法は、セラミック成形体の付加製造に使用されるため、拡散反射材料を使用する。そのようなセラミック充填材料は、さまざまな屈折率を有する成分の懸濁液である。これは、材料を硬化させるために導入される光の拡散または再分配につながり、したがって、充填のない透明な出発材料では生じないコントラストの低下および多数のエラーにつながる。
【0004】
最初に述べた方法は、特に、光重合性材料が、この材料によって直接覆われた透明な材料閉じ込め要素を通して露光される状況に関する。材料閉じ込め要素は、通常は、このプロセスにおいて使用される光重合性材料を収容するタンクの一部を形成し、したがって材料閉じ込め要素は、機械的に安定でなければならない。他の方法において、材料閉じ込め要素は、単に薄膜または箔を備えるか、あるいは異なる弾性および光学特性を有するいくつかの構成要素で構成される。
【0005】
最初に定めた種類の方法または装置について考えられる用途が、国際公開第2010/045950号および欧州特許第2505341号明細書に記載されている。そこに記載されている方法は、例えばラピッドプロトタイピングなどのリソグラフィに基づく発生的製造を適用することによって成形体を層状に構築する役に立つ。そこでは、透明なタンク底部、すなわち材料閉じ込め要素を有するタンク内に用意される光重合性材料の所定の層が、以下の方法で形成される。上下方向に制御可能に移動することができる構築プラットフォームが、昇降機構によって保持され、制御ユニットの制御下で昇降機構によって垂直方向に上昇および下降させることができるようにタンク上に配置される。タンク内に用意された光重合性材料に構築プラットフォームを下降させることによって、構築プラットフォームの下側とタンク底部との間の空間から材料が押し出され、所定の厚さの材料層が生み出される。次いで、この層が、透明なタンク底部を通して下方から位置選択的な放射によって照射され、構築プラットフォーム上で所望の形状にて硬化する。その後に、この第1の硬化層を有する構築プラットフォームが上昇させられ、光重合性材料が新たに露光領域に供給される。連続した層から成形体を作り上げるために、これらの工程が繰り返されるが、繰り返しにおいて、光重合性材料の層は、構築プラットフォームよりもむしろ未完成の成形体によって定められる。
【0006】
上述のように、光重合性材料は、一般に、この材料によって覆われる透明な材料閉じ込め要素を備えているタンクまたは桶内に用意される。この材料閉じ込め要素は、層の位置選択的な照射によって固化させられる。光源およびその投射系を過ぎて到達する光路の光学的性質、ならびに光重合性材料の光学的および光化学的性質が、通常は、固化した層の幾何学的形状が、プロジェクタによって生成される実像の幾何学的形状に対応することを妨げる。したがって、幾何学的に正しいデジタル画像データを投射しても、不完全な幾何学的形状の成形体が製造される結果となる。
【0007】
光重合性材料に含まれる成分が、さまざまな光学特性を示す可能性がある。本発明の関連の影響は、透明成分の屈折率の違いである。光屈折は、異なる屈折率を有する2つの材料の間のあらゆる界面で生じる。成分は、通常は、懸濁状態にあり、すなわち液滴または粒子の大きさがμmの範囲にあり、したがって多数の界面を形成する。光線が、互いに無作為に配向した多数の界面によって屈折させられる場合、光は、あらゆる方向に再分配または散乱させられる。材料に照射された光の一部が、材料から再び現れ、材料の表面から再び現れ、照射点に再び現れ、あるいは照射点の付近に再び現れる。この作用は、拡散反射と呼ばれる。
【0008】
このような拡散反射光は、透明な材料閉じ込め要素に再び進入して伝わり、材料閉じ込め要素の底部および側面からの種々の部分、すなわち材料閉じ込め要素と空気との間の境界層において、通常どおりに反射させられ、さらには/あるいは全反射させられる。固体であるため、透明な材料閉じ込め要素は、通常は、屈折率が空気よりも著しく高い媒体で構成され、したがって光の屈折および上述の現象を引き起こす。光は、単純な反射または多重反射によって材料に戻ることができ、これは、実際に、画像のコントラストの低下を構成し、層の幾何学的形状に重大な誤差をもたらす。
【0009】
全反射の影響が特に大きく、なぜならば、光重合性材料による拡散反射光が、その全強度で再び材料に反射させられるからである。
【0010】
このようにして引き起こされる通常生じる誤差は、極端な場合には数センチメートルの距離にわたって、個々の成形体または成形体内の個々の領域の拡大、成形体内の所望の空洞または穴の塞がり、ならびに本来は別々に形成されるべき成形体の融合を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2010/045950号
【文献】欧州特許第2505341号明細書
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、上述の誤差の発生が回避され、あるいは少なくとも低減されるように、最初に定めた種類の方法および装置を改良することを目的とする。
【0013】
この目的を達成するために、光重合性拡散反射材料を固化させるための最初に定めた種類の方法における本発明の第1の態様は、実質的に、a)材料閉じ込め要素の厚さと、b)覆われた表面および/または構築場および/または固化させるべき材料表面とを、材料から材料閉じ込め要素に反射させられた放射の40%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満、とりわけ10%未満が、材料閉じ込め要素またはその表面において、材料、とりわけ構築場、好ましくは固化させるべき表面に再び反射させられるように互いに適合させる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、光重合性拡散反射材料を固化させるための最初に定めた種類の方法において、実質的に、a)材料閉じ込め要素の厚さと、b)覆われた表面および/または構築場および/または固化させるべき材料表面とが、特に材料から材料閉じ込め要素に反射させられた放射の40%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満、とりわけ10%未満が、材料閉じ込め要素またはその表面において、材料、とりわけ構築場、好ましくは固化させるべき表面に再び反射させられるような方法で、材料閉じ込め要素の厚さが覆われた表面または固化させるべき表面または構築場のそれぞれの直径の少なくとも1/4であり、好ましくは少なくとも1/3であり、好ましくは少なくとも1/2であるように互いに適合させられる。
【0015】
コントラストを低下させ、照射結果に悪影響を及ぼす材料閉じ込め要素内で引き起こされる反射が、このようにして最小限に抑えられる。特に、光路の光学パラメータの変化が、材料閉じ込め要素の厚さと、覆われた表面および/または材料の直接照射される表面、すなわち固化させるべき表面とを、互いに適合させることで達成される。
【0016】
この点において、本発明は、以下の物理的背景に基づく。光重合性材料を固化させるために利用される電磁放射(第1の光)は、最初に透明な材料閉じ込め要素の入射面に入射し、その後に、材料閉じ込め要素の反対側の出口面を通って、材料閉じ込め要素を覆っている固化させるべき材料に入射する。その大部分(第2の光)は、材料において拡散反射させられ、材料閉じ込め要素に戻る。そこで、反射させられた放射のかなりの部分が、材料閉じ込め要素の底部、すなわち前記入射面、ならびに材料閉じ込め要素の側方または側面から、1回または数回の反射によって再び材料に戻され(第3の光)、これは、比較的小さい厚さを有する材料閉じ込め要素を有する従来の構成では、第2の光の約50%(全反射による)および約4%(反射による)に達し得る。
【0017】
後方散乱光線(第2の光)は、界面の法線と光線との間の角度が、界面、すなわち材料閉じ込め要素および一般的には空気の屈折率からもたらされる臨界角θcよりも小さい場合、放射入射面において普通の反射を被る。対照的に、後方散乱光線(第2の光)は、界面の法線と光線との間の角度が臨界角θcよりも大きい(すなわち、光線がむしろ材料閉じ込め要素の端部に向かって進む)場合、全反射を被り、全反射ゆえに光線の全体が材料に反射して戻る。
【0018】
この場合、材料における拡散反射の出口点を中心とする円の半径であって、全反射によって戻る光の最小半径として臨界角から求められる円の半径が、臨界半径rcと称される。
【0019】
材料閉じ込め要素の厚さをより大きくし、すなわち全反射後の光線が進むべき経路を長くすると、臨界半径は大きくなる。臨界半径が大きいほど、材料閉じ込め要素を覆う材料、特に固化させるべき材料に入射する全反射後の光線部分が小さくなる。
【0020】
しかしながら、材料に入射する全反射後の光線部分は、覆われた表面または材料の固化させるべき表面/直接照射(第1の光)される表面のサイズにも依存する。覆われた表面または材料の固化させるべき表面が小さければ小さいほど、材料に到達する全反射後の放射部分は小さくなる。
【0021】
本発明の文脈において、材料閉じ込め要素の厚さと覆われた表面のサイズとが互いに適合させられる場合、これは、固化させるべき材料表面または直接照射(第1の光)される材料表面を含む覆われた表面に全反射させられる放射部分を減少させる目的で行われる。他方で、本発明の文脈において、材料閉じ込め要素の厚さと固化させるべき材料表面のサイズとが互いに適合させられる場合、これは、固化させるべき表面に全反射させられる放射部分だけを減少させるように行われ、固化させるべき表面の外側を囲んでいる覆われた表面に全反射させられる放射部分は、まったく減らなくてもよく、あるいは減ったとしてもわずかな減少でよい。これは、固化させるべき領域における形状形成の誤差または不正確さの発生の増加を直接的には引き起こさないが、固化させるべき表面の外側を囲んでいる材料に全反射させられた放射は、一方では、材料の変化およびおそらくは固化を引き起こし、これは、後続の処理工程において、このようにして影響された材料がさらなる材料供給の際に固化させるべき領域に到達しかねないため、有害と考えられる。他方で、周囲の材料に全反射させられた放射は、そこで再び拡散反射を被り、結果として、とりわけ固化させるべき領域に、制御されない放射分布をもたらす可能性がある。
【0022】
本方法の好ましい構成による(全)反射放射の40%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満、とりわけ10%未満への低減は、材料から材料閉じ込め要素に反射させられ、材料閉じ込め要素の覆われた表面から遠ざかる方を向いた表面、特に放射入射面において全反射によって反射させられた放射が、覆われた表面または構築場に直接反射させられて戻ることがないように、材料閉じ込め要素の厚さと、覆われた表面、特に構築場とを、互いに適合させることで達成される。
【0023】
さらに、材料から材料閉じ込め要素に反射させられ、材料閉じ込め要素の覆われた表面から遠ざかる方を向いた放射入射面において全反射によって反射させられた放射が、固化させるべき材料表面に直接反射させられて戻ることがないように、材料閉じ込め要素の厚さと、固化させるべき材料表面とを、互いに適合させることも可能である。
【0024】
用語「固化させるべき表面」を、好ましくは、その直径が固化させるべき層の最も離れた点を結ぶ円の表面積と理解すべきである。
【0025】
この場合の放射入射面は、材料閉じ込め要素の覆われた表面から遠ざかる方を向いた表面のうち、照射ユニットからの放射が材料閉じ込め要素に直接進入する部分表面である。出口面は、材料閉じ込め要素の覆われた表面のうち、材料閉じ込め要素からの放射が固化させるべき材料に進入する部分表面である。
【0026】
用語「構築場」を、光源または照射光学系によって予め与えられる可能な限り大きい出口面、すなわち成形体を構築プラットフォーム上に形成することができる可能な限り大きい表面と理解すべきである。
【0027】
材料閉じ込め要素の材料(例えば、ガラス)ゆえに、全反射が生じる臨界角が45°であると予想される場合、本発明の第2の態様によれば、材料閉じ込め要素の厚さは、覆われた表面または固化させるべき表面の直径の少なくとも1/4、好ましくは少なくとも1/3、好ましくは少なくとも1/2である。45°の臨界角において覆われた表面の1/2の厚さを選択することで、覆われた表面のどの点からも、第2の光の光線が、全反射後の光線(第3の光)が覆われた表面に直接到達するような方法では、全反射させられないことが保証される。覆われた表面または固化させるべき表面の直径は、表面の互いに最も離れた点の間の距離と理解される。
【0028】
本発明の文脈において、材料閉じ込め要素の厚さの適合は、材料から材料閉じ込め要素に反射させられた光線が、覆われた表面から遠ざかる方を向いた放射入射面に衝突するまでに移動する経路を、調整するという主旨で実行される。この点において、材料閉じ込め要素の厚さが増加するにつれて経路長が増加するような方法で、厚さは経路長に相関し、逆もまた然りであり、材料閉じ込め要素の厚さが減少するにつれて経路長が減少する。
【0029】
材料閉じ込め要素の厚さは、好ましくは、構築場と、材料閉じ込め要素の覆われた表面から遠ざかる方を向いた放射入射面との間の最小距離と理解される。
【0030】
材料閉じ込め要素の覆われた表面と覆われた表面から遠ざかる方を向いた放射入射面との間の最小距離は、好ましくは10mm、好ましくは少なくとも15mm、好ましくは少なくとも20mm、好ましくは少なくとも30mmである一方で、先行技術の材料閉じ込め要素は、より小さい厚さを有する。
【0031】
他の好ましい動作の態様においては、界面の法線に対して臨界角以上で材料から材料閉じ込め要素に反射させられた放射が、材料閉じ込め要素の側壁において全反射させられ、これが、特に、(反対側の)側壁から最も遠い覆われた表面の境界点から現れる光線についても当てはまり、臨界角以上で材料閉じ込め要素に反射させられた光線(第2の光)が覆われた表面に直接全反射(第3の光)させられることがないことが保証されるように、材料閉じ込め要素の厚さおよび覆われた表面が互いに適合させられる。ガラスから空気への移行において、臨界角は41°であり、プレキシガラスから空気への移行においては42°である。本明細書において、側壁は、出口面も入射面も形成しない材料閉じ込め要素の境界面、特に放射の入射面も出口面も含まない材料閉じ込め要素の横方向の境界面と理解される。
【0032】
側壁に全反射させられた光線が、さらなる全反射によって覆われた表面に再び到達する可能性があるが、これは、好ましい動作の態様によれば、材料閉じ込め要素の放射の入射面および出口面を除く表面、好ましくは側壁が、少なくとも部分的に放射吸収特性を備え、特に少なくとも特定の領域において放射を吸収する層を備えることで、防止可能、または少なくとも低減可能である。この場合の放射吸収特性は、光重合性材料の照射および固化に使用される放射の波長範囲における吸収を指す。
【0033】
さらに、界面における全反射の発生を、本発明の好ましい構成に対応するように、材料閉じ込め要素の表面、好ましくは覆われた表面から遠ざかる方を向いた放射入射面が、少なくとも部分的に反射防止特性を備え、特に反射防止層を備えることで、低減することもできる。
【0034】
本発明による方法を、光重合性拡散反射材料、特にセラミックフィラーを有する樹脂から、成形体を層状に構築するための方法の文脈において使用することができ、そこでは、成形体の各層が、光重合性材料の所与の厚さの材料層を材料閉じ込め要素上にそれぞれ形成し、構築プラットフォームまたは構築プラットフォーム上に少なくとも途中まで作られた成形体を、構築プラットフォームまたは成形体と材料閉じ込め要素との間に材料の固化させるべき層が形成されるように、材料層に下降させ、この層を、成形体の各層の所望の形状をもたらすように、材料閉じ込め要素を通しての照射によって位置選択的に固化させることによって、順次に重ねて形成される。
【0035】
さらに、本発明の根底にある目的を達成するために、本発明の第3の態様によれば、最初に定めた種類の装置において、材料閉じ込め要素の厚さと、覆うことができる表面、特に構築場とが、材料閉じ込め要素またはその表面において、材料から材料閉じ込め要素に反射させられた放射の40%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満、とりわけ10%未満が、材料、とりわけ構築場、または固化させるべき表面に再び反射させられるように、互いに適合させられる。
【0036】
本発明の第4の態様によれば、実質的に、最初に定めた種類の装置において、材料閉じ込め要素の厚さと、覆うことができる表面、特に構築場とが、材料閉じ込め要素の厚さが、覆うことができる表面、特に構築場の直径の少なくとも1/4、好ましくは少なくとも1/3、好ましくは少なくとも1/2になるように、互いに適合させられる。
【0037】
材料閉じ込め要素の厚さ、および覆うことができる表面、特に構築場は、好ましくは、材料から材料閉じ込め要素に反射させられ、材料閉じ込め要素の覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた表面、特に放射入射面において全反射によって反射させられた放射が、覆うことができる表面、特に構築場に直接反射させられて戻ることがないように、互いに適合させられる。
【0038】
構築場と覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面との間の最小距離は、好ましくは少なくとも10mmであり、好ましくは少なくとも15mmであり、好ましくは少なくとも20mmであり、好ましくは少なくとも30mmである。
【0039】
好都合には、材料閉じ込め要素の厚さおよび覆うことができる表面は、材料から材料閉じ込め要素に臨界角以上で反射させられた放射が、材料閉じ込め要素の側壁で全反射させられるように互いに適合させられる。
【0040】
照射入射面と出口面とを除く材料閉じ込め要素の表面、好ましくは側壁は、好ましくは、少なくとも部分的に、放射吸収特性を備え、特に少なくとも特定の領域において放射を吸収する層を備える。
【0041】
好ましくは、材料閉じ込め要素の表面、好ましくは覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた照射入射面は、少なくとも部分的に、反射防止特性を備え、特に反射防止層を備える。
【0042】
固化した材料層の除去を容易にするために、材料閉じ込め要素は、覆うことができる表面を形成する弾性層を備える。それぞれの構成に応じて、この層は、数100μm~数ミリメートルの厚さを有することができる。
【0043】
好ましい様相において、材料閉じ込め要素は、ガラスまたはポリメチルアクリレート(アクリルガラス)の透明なブロックを備える。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、光重合性材料、特にセラミックフィラーを有する樹脂から、成形体を層状に構築するための装置であって、
・光重合性材料を充填することができる材料閉じ込め要素、特に少なくとも一部の領域において半透明な底部を有するタンクと、
・材料閉じ込め要素の上方に、特に調節可能な高さに保持され、材料閉じ込め要素上に材料層を形成し、前記高さを調節するための調節ユニットを備えているドクターブレードと、
・材料閉じ込め要素の上方の調節可能な高さに保持された構築プラットフォームと、
・構築プラットフォームまたは途中まで完成した成形体の下側と材料閉じ込め要素との間に形成された成形体層について、位置選択的な照射をもたらすように動作させることができる照射ユニットと、
・成形体層および成形体層で作られる成形体の仮想の三次元モデルのための電子メモリと、
・成形体層の仮想のモデルが供給され、照射ユニットを制御することによって所与の幾何学的形状を各々が有する構築プラットフォーム上の重ね合わせの成形体層を立て続けの照射工程にて重合させるように構成された制御ユニットと
を備え、
本発明による固化装置の特徴的な特徴を備える装置を含む。
【0045】
以下で、本発明を、図面に概略的に示された典型的な実施形態によって、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】方法経過の連続した段階にて成形体を層状に構築するための装置の断面図である。
【
図2】方法経過の連続した段階にて成形体を層状に構築するための装置の断面図である。
【
図3】方法経過の連続した段階にて成形体を層状に構築するための装置の断面図である。
【
図4】材料によって拡散反射させられた光の材料閉じ込め要素における反射および全反射を示している。
【
図5】放射源から発せられ、材料によって拡散反射させられ、材料閉じ込め要素の覆うことができる表面から遠ざかる方を向いた放射入射面において全反射させられて、材料に再び戻る光線の典型的な経路を示している。
【
図6】拡散反射後に多重反射によって材料に再び戻る光線の典型的な経路を示している。
【
図7】拡散反射後に多重反射によって材料に再び戻ることが吸収体の使用によって不可能にされた光線の典型的な経路を示している。
【
図8a】材料での拡散反射後に単純な全反射によって材料に再び戻ることが材料閉じ込め要素の厚さが増したがゆえに不可能である光線の典型的な経路を示している。
【
図8b】材料での拡散反射後に単純な全反射によって材料に再び戻ることが材料閉じ込め要素の厚さが増したがゆえに不可能である光線の典型的な経路を示している。
【
図8c】材料での拡散反射後に単純な全反射によって材料に再び戻ることが材料閉じ込め要素の厚さが増したがゆえに不可能である光線の典型的な経路を示している。
【
図9】材料閉じ込め要素の好ましい構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
最初に、本発明による方法を実施するための装置の機能の態様を、それ自体は欧州特許第2505341号明細書からすでに知られている装置を示している
図1~
図3を参照して説明する。装置は、空気中または任意の他のガス雰囲気に配置されるが、タンク底部2が少なくとも部分領域3において透明または半透明であるタンク1を含む。タンク底部のこの部分領域3は、少なくともタンク底部2の下方に配置された照射ユニット4の広がりに及ぶ。照射ユニット4は、光源(図示せず)および光変調器を備えており、これらを用いて、その瞬間において形成すべき層のための所望の形状を有する露光場をタンク底部2に生成するために、制御ユニットによって強度を制御し、位置を選択的に調整することができる。あるいは、レーザを照射ユニットに使用することができ、このレーザの光線で、露光場を、制御ユニットによって制御される可動ミラーを介して所望の強度パターンで連続的に走査することができる。
【0048】
照射ユニット4の反対側において、構築プラットフォーム5がタンク1の上方に設けられており、構築プラットフォーム5は、照射ユニット4の上方の領域においてタンク底部2の上方に高さ調節可能な方法で保持されるように、昇降機構(図示せず)によって保持されている。構築プラットフォーム5も、透明または半透明であってよい。
【0049】
タンク1内に、拡散反射光重合性材料6の浴(bath)が存在する。浴の材料レベル7は、材料を所定の材料層厚さ
aでタンク底部2に均一に適用するドクターブレードなどの適切な要素によって定められる。タンク1に、例えば案内レールを組み合わせることができ、案内レールは、キャリッジを二重矢印8の方向に可動に案内することができる。駆動装置が、キャリッジの往復運動を保証し、キャリッジは、ドクターブレードのためのマウントを備える。前記マウントは、例えば、二重矢印9の方向にドクターブレードを上下に調整するためのガイドおよび調整装置を備える。このようにして、タンク1の底部2からドクターブレードの下縁までの距離を調整することができる。ドクターブレードは、構築プラットフォームが
図1に示されるように持ち上げられた状態にあるときに使用され、所与の層の厚さの調整時に材料6を均一に分配するように機能する。材料分配プロセスからもたらされる材料6の層の厚さは、タンク1の底部2からドクターブレードの下縁までの距離によって定められる。
【0050】
このようにして形成された材料の層の厚さ
aは、成形体の層の厚さ
bよりも大きい(
図2)。光重合性材料の層を定めるために、以下の方法が続けられる。成形体の層10’、1’’、および10’’’がすでに形成されている構築プラットフォーム5が、
図2に示されるように制御された方法で昇降機構によって下方に下げられ、成形体の最も下方の層10’’’の下側が、高さ
aを有する材料浴6の表面に最初に接触し、次いで所望される成形体の層の厚さ
bが成形体の最も下方の層10’’’の下側とタンク底部2との間に正確に残るまで沈められ、タンク底部2に近づく。この浸漬のプロセスの最中に、光重合性材料は、構築プラットフォーム5の下側とタンク底部2との間のすき間から押し出される。成形体の層の厚さ
bが調整されるとすぐに、成形体の層10’’’’を所望の形状にて硬化させるために、この成形体の層に特有の位置選択的な照射が行われる。成形体の層10’’’’の形成後に、構築プラットフォーム5は、昇降機構によって再び持ち上げられ、
図3に示される状態がもたらされる。光重合性材料6は、露光領域にもはや存在しない。
【0051】
光重合性材料からなる成形体のさらなる層10を得るために、これらの工程が、その後に数回にわたって繰り返される。成形体の最後に形成された層10の下側からタンク底部2までの距離が、成形体の所望の層の厚さbに調整され、その後に、光重合性材料が、所望の方法で位置選択的に硬化させられる。
【0052】
図4に、タンク底部2およびタンク底部2を覆う材料層11ならびに底部の反射挙動が、概略的に示されている。照射ユニット4から透明なタンク底部2を通って光重合性材料の表面に到達する光線12は、かなりの部分が、拡散反射によってタンク底部2に戻る。次いで、拡散反射光は、タンク底部2と空気との界面、すなわち放射の入射面13において再び反射させられる。入射角が臨界角θ
cよりも大きい場合、全反射が生じる。ガラスの場合、θ
cは約45°であり、したがって、全体として、拡散反射光の半分超が材料に再び反射させられる。
【0053】
後方散乱光線は、
・通常の反射(界面の法線と光線14との間の角度が臨界角θcよりも小さく、したがって通常の反射が生じ、光のうちのわずかな部分14’(数パーセント)が材料11に反射して戻る)、または
・全反射(界面の法線と光線15との間の角度が臨界角θcよりも大きく、したがって全反射が生じ、光線15’の全体が材料に反射して戻る)
のいずれかを生じ得る。
【0054】
臨界半径rcが、材料11における拡散反射の出口点16を中心とする円の半径であって、臨界角から、全反射によって戻る光の最小半径として求められる。
【0055】
図5に示されるように、光16が、タンク底部2を通って光重合性材料11に照射される(第1の光)。光は、最初にタンク底部2の入射面13に進入し、その後にタンク底部2の出口面17を通過し、タンク底部2を覆う材料層11に進入する。光の大部分は、材料から拡散反射によって半空間、すなわちタンク底部2に戻る(第2の光19)。次いで、第2の光19のかなりの部分は、底部2の入射面13および側面18から1回または数回の反射を介して材料に戻り(第3の光20)、これは、小さな厚さのタンク底部2において、第2の光19の約50%(全反射による)および約4%(反射による)になる。
【0056】
露光結果は、タンク底部2の厚さ
dの関数として、材料11からの拡散反射光の入射面13における全反射によって、さまざまな形で影響を受ける(
図8)。
・厚さが小さい場合(
図8a):全反射20は、ほぼ完全に、小さな広がりで、すなわち高い表面積当たりの強度で、材料11に戻る。物体はわずかに大きくなる。
・中程度の厚さの場合(
図8b):全反射20は、ほぼ完全に、大きな広がりで、すなわち低い表面積当たりの強度で戻る。物体は、さらにより長い距離にわたって融合し、材料が部分的に重合する。
・厚さが大きい場合(
図8c):幾何学的な理由から、全反射20が出口面17に直接戻ることはないが、依然としてタンク底部2の側面18によって出口面17に反射され得る。
【0057】
一般に、全反射部分が、横方向の広がりおよび強度に関して支配的であるが、通常反射部分が、光重合性材料を誤った部位で固化させるのにすでに充分であり得る。
【0058】
反射光の強度は、タンク底部の厚さにつれておおむね二次関数的に減少する。さらに、臨界半径は、タンク底部の厚さにつれて増大し、すなわち全反射部分の全てが
2dtanθc>rF
(rFは覆われ得る領域の最大の対角線)において出口面17の領域の外に移動する。
【0059】
したがって、タンク底部2の厚さは、全反射光がタンク底部2の出口面17に直接戻ることができないように選択されることが好ましい。この場合、全反射光は、完全にタンク底部2の側面18に到達する。タンク底部2の側面18において、角度に応じて、全反射21または反射が新たに発生し、やはり制御されない露光につながる可能性がある。臨界角が45°未満(大部分のガラスに当てはまる)の場合、タンクの底部および側面によって全反射させられ、したがって完全な強度にて材料に戻る部分が、さらに存在する。タンクの厚さが増すにつれて、そのような全反射光の発生は著しく増え、すなわちタンクから横方向に表れる光がますます少なくなる。
【0060】
図6が、そのような多重反射をより詳細に示している。拡散反射後の光線が、最初に入射面13で反射させられ、その後にタンク底部2の側面18で反射させられる。各々の場合において反射21、21’が通常の反射であるか、あるいは全反射であるかに応じて、材料に反射させられて戻る部分は、数パーミルから100パーセントまでの範囲である。
【0061】
タンク底部2の側面18における上述の反射を、とりわけ底部の厚さが大きい場合に防止するために、好ましくは光吸収材料23が側面18に適用される。この部分は、側面18が大きくなるがゆえに、底部の厚さが増すにつれて増加する。
図7は、光線の多重反射が吸収層23によってどのように防止されるかを概略的に示している。
【0062】
タンク底部2において、光は、底部の厚さが大きいがために、もっぱら通常の反射を被る。この影響を減らすために、タンクの底部に反射防止コーティングを施すことができる。反射防止コーティングは、古典的なARコーティングまたは屈折率の連続的な変化(例えば、「モスアイ」)を含むことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、入射面および出口面を除くタンク底部2の全ての表面に、残りの光路との(不都合な)光の交換をやはり低減する吸収性のコーティングを施すことができる。
【0063】
プロセス工学上の理由、または保守性を高める目的で、タンク底部を、互いに固定的に(接着剤で)接続され、あるいは取り外し可能に(油で)接続される異なる透明部品で構成することができる。部品の一部は、装置に固定的に設置されてよく、他の部品は、容易に着脱可能であってよい。
【0064】
次に、タンク底部の好ましい構造を、
図9を参照して説明する。タンク底部2は、好ましくはプリズムで構成される。その下部の一部は、放射の入射面13を含み、上面の一部は、放射の出口面17を含む。
【0065】
放射源は、タンク底部2の下方に配置される。投射(すなわち、放射)は、下部13を通って下方からタンク底部2に進入し、上面17を通り、上面17を覆っている光重合性拡散反射材料11に到達する。
【0066】
タンク底部2は、いくつかの層または領域で構成され、これらの層または領域は、好ましい方法においては、やはりプリズムで構成され、プリズムの下面および上面は、タンク底部の下面および上面と平行に延びる。タンク底部2および材料は、一方では材料の流出が防止され、他方では投射が妨げられることなくタンク底部2に進入できるように、フレーム内に組み込まれる。
【0067】
空隙が形成されかねない場所には、パテまたは油が領域間の接続材料として設けられる。
【0068】
タンク底部2の第1の上部領域25は、弾性を示し、タンク底部2からの固化した材料層の分離を可能にする透明な材料、またはいくつかの材料の複合で構成される。構成に応じて、前記層は、数10μmから数mmまでの範囲の厚さを有する。この領域は、光重合性材料11によって覆われる。
【0069】
第2の領域27は、好ましくはガラスまたはポリメチルメタクリレートの透明なブロックで構成され、その厚さdは、上面17の覆われる領域の直径の半分に相当する。材料に直接反射させられるタンク底部2の下部13における全反射が、このようにして防止される。放射の入射面13は、この領域の下部の一部である。
【0070】
タンク底部2の表面は、後述の方法で被覆される。タンク底部2の下部13に、通常の反射による光を通常は0.5~1%に著しく減衰させる反射防止層28が設けられる。タンク底部の側面18には、側面18における全反射を防止するための吸収性のコーティング(23)が施される。