(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】茶製品を生産するための方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
A23F3/06 S
(21)【出願番号】P 2019512735
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2017071356
(87)【国際公開番号】W WO2018046310
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-25
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521193094
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロケシュ・バサヴァラジュ
(72)【発明者】
【氏名】スレーラムル・グッタパドゥ
(72)【発明者】
【氏名】スワシー・パラギリ
(72)【発明者】
【氏名】グルミート・シン
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/206883(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2014-0091846(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105379860(CN,A)
【文献】ZDERIC, Aleksandra et al.,Polyphenol extraction from fresh tea leaves by pulsed electric field: A study of mechanisms,Chemical Engineering Research and Design,2016年05月12日,Vol.109,pp.586-592,DOI: 10.1016/j.cherd.2016.03.010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶の特質を有する葉茶製品の調製の方法であって、
a.4℃~60℃の範囲の温度、嫌気的条件下で、4~50時間の期間、生茶葉をインキュベートする工程、
b.インキュベートされた葉に、
マイクロピンを使用して、直径が5~100μmの範囲の微細孔を創製する工程、
c.15~35℃の温度に、15分~4時間、葉を曝露する工程
を含み、
容器内に茶葉を置くこと、容器を通して酸素以外の気体をパージすること、及び、容器を閉じること、若しくは、気密室内に若しくは真空下に葉を置くことにより嫌気的条件を達成し;
前記微細孔の数が、茶葉1cm
2当たり200~400個の範囲であり;
紅茶葉茶製品における葉の長さが10mm~60mmであ
り、
工程(c)の前に茶葉を粉砕する工程がない、方法。
【請求項2】
50~150℃の温度で茶葉を乾燥する工程を更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の方法により得られる、及び/又は、得ることができる葉茶製品。
【請求項4】
紅茶葉茶製品における葉の幅が3mm~40mmである、請求項
3に記載の茶製品。
【請求項5】
紅茶製品における個別の葉の面積が2~5cm
2である、請求項
3又は
4に記載の葉茶製品。
【請求項6】
葉茶製品のカテキン含量が3.5~5.5質量%である、請求項
3から
5のいずれか一項に記載の葉茶製品。
【請求項7】
請求項
3から
6のいずれか一項に記載の茶製品を5~50%含む、葉茶ブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶製品を生産するための方法に関する。より具体的には、本発明は、紅茶の特質を有する葉茶製品を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紅茶葉茶製品のサイズは、茶業において商業的意義を有する。長い葉茶製品は市場でより高い値段で売れ、消費者からも好まれる。普通の紅茶の製造は、以下の工程を含む:(i)植物チャノキ(Camellia sinensis)の生葉を萎凋する工程であって、これは(例えば、浅いトラフにおいて)摘採された茶葉の水分を失わせるプロセスであり、この間に生化学反応が起こり、芳香化合物を含む多くの有益な化合物の形成が生じる工程、(ii)萎凋した葉を細断する工程であって、これは茶の細胞組織を破壊するプロセスであり、更なる生化学反応が起こる工程、(iii)細断された葉を発酵する工程であって、茶葉内の酵素が大気中の酸素を使用して様々な基質を酸化して、着色された生成物を生成する工程、及び、(iv) 発酵した葉を高温で乾燥して、酵素の活性を停止し、含水量を下げる工程。
【0003】
発酵のために葉を細断すること(又は、サイズを低減する/損傷するその他の形態)が必要であり、渋味、香り、色等を含む紅茶葉茶製品の典型的な味を生み出す。このプロセスの効果として、葉のサイズが低減される。
【0004】
それにもかかわらず、全葉を発酵した茶製品を得るためにいくらかの取組みが行われている。
【0005】
US6254902(Lipton社、2001年)は、全葉茶を加工するための方法であって、液体二酸化炭素を用いて圧力容器内で茶葉を含浸すること、液体二酸化炭素が凍結するのに十分な速度で容器を脱圧すること、凍結した二酸化炭素を昇華させるのに十分な熱を与えること、及び、その結果として葉内での発酵が開始すること、所望の液体特性を達成するのに十分な時間、茶を発酵させること、並びに、発酵した製品を乾燥して全葉茶を産することを含む、方法を開示する。この方法の主な欠点は、有害物質である液体二酸化炭素を用いた加圧系を使用することであり、この方法は、実施が困難であり、費用効果がない。
【0006】
WO 2014/206883(Unilever社、2014年)は、紅茶の特質を有する長い葉茶製品を生産する方法を開示する。方法は以下の工程:(a)4℃~60℃の範囲の温度、嫌気的条件下で、4~36時間の期間、生茶葉をインキュベートする工程、(b)15~35℃の温度に、70分~4時間、葉を曝露する工程を含み、インキュベーションの前及び/又は工程(b)の前に茶葉を粉砕する工程はない。この方法は、実施するのが容易であるが、しかし紅茶の特質及び得られた製品の不融化性(infusibility)は、満足のいくものではなく、改善されうる。
【0007】
ゆえに、良好で改善された紅茶の特質を有する全葉茶製品は所望され続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US6254902
【文献】WO 2014/206883
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、著しい紅茶の特質を有する長い葉茶製品を生産するための適切な代替手段を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、著しい紅茶の特質を有する長い葉茶製品を生産するための方法を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、液体二酸化炭素又はいかなる加圧系も使用せずに、著しい紅茶の特質を有する長い葉茶製品を生産するための方法であって、更に、簡素で費用効果があり、実施が容易である方法を提供することである。
【0012】
本発明者は、これに取り組み、嫌気的条件の開始の工程と、続く周囲条件でのマイクロポレーション(microporation)及び曝露を含む方法が、粉砕することなく、紅茶の特質を有する長い葉茶製品を提供し、それにより1つ又は複数の上述の目的を満たすことを、驚くべきことに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様において、本発明は、以下の工程を含む、紅茶の特質を有する葉茶製品の調製の方法を提供する:
a.4℃~60℃の範囲の温度、嫌気的条件下で、4~50時間の期間、生茶葉をインキュベートする工程、
b.インキュベートされた葉に、直径が5~100μmの範囲の微細孔を創製する工程、
c.15~35℃の温度に、15分~4時間、葉を曝露する工程。
【0014】
第二の態様において、本発明は、第一の態様の方法により得られる、及び/又は得ることができる葉茶製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的のための「茶」は、カメリア・シネンシス変種シネンシス(Camellia sinensis var. sinensis)及び/又はカメリア・シネンシス変種アッサミカ(Camellia sinensis var. assamica)由来の材料を意味する。特に好ましいのは、変種シネンシスより高いレベルの茶活性を有するので、変種アッサミカ由来の材料である。
【0016】
本発明の目的のための「葉茶」は、浸出していない形態の茶葉及び/又は茎を含有し、30質量%未満の含水量まで乾燥させ、通常は1~10質量%の範囲の水分量を有する茶製品(いわゆる「作製された茶」)を意味する。
【0017】
「生茶葉」は、30質量%未満の水分量まで乾燥させておらず、通常は60~90質量%の範囲の水分量を有する茶葉、芽、及び/又は茎を指す。
【0018】
「紅茶」は、実質的に発酵させた茶を指す。紅茶は、緑茶と異なる特質を有する。紅茶は、緑茶より味の面で渋味があり、苦味が少ない。紅茶の液体の赤さも、緑茶のものより著しく高い。紅茶はまた、より高いレベルのテアフラビンを含有する。
【0019】
したがって、本明細書で述べられる「紅茶の特質」は、好ましくは、味の面でより渋味があり、苦味がより少なく、液体の赤い色味が増しており、テアフラビン含量がより高いレベルであり、上で定義された紅茶と類似の特質を有する茶製品を意味する。
【0020】
単語「微細孔」は、好ましくは、直径が200μm未満の、より好ましくは150μm未満の、最も好ましくは100μm未満の小さいピンホールを意味する。
【0021】
本発明は、以下の工程を含む、紅茶の特質を有する葉茶製品の調製の方法を提供する:
a.4℃~60℃の範囲の温度、嫌気的条件下で、4~50時間の期間、生茶葉をインキュベートする工程、
b.インキュベートされた葉に、直径が5~100μmの範囲の微細孔を創製する工程、
c.15~35℃の温度に、15分~4時間、葉を曝露する工程。
【0022】
工程(a):
嫌気性インキュベーション:
工程(a)は、4℃~60℃の範囲の温度、嫌気的条件下で、4~50時間の期間、摘採した葉をインキュベートする工程を含む。本明細書で使用される用語「嫌気的条件」は、葉が接する気相が体積で3%未満の酸素を有することを意味する。葉が接する気相中の酸素は、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満である。葉が接する気相は、実質的には酸素を含まないことが特に好ましい。
【0023】
嫌気的条件:
好ましくは、工程(a)の嫌気的条件を以下により達成する:
i.容器内に摘採した茶葉を置くこと、及び、容器を閉じること、又は、
ii.容器内に茶葉を置くこと、容器を通して酸素以外の気体をパージすること、及び容器を閉じること。
【0024】
容器内に摘採した茶葉を置き、容器を閉じることにより、気相内の酸素濃度は、時間の経過とともに減少し、嫌気的条件は、一定の時間、容器を閉じた後、達成される。好ましくは約3時間超、より好ましくは4時間超、最も好ましくは6時間超、又は更に8時間超の間、容器は閉じられる。嫌気的条件を達成するこの方法は、費用効果があり、実施が容易であるので好ましい。
【0025】
或いは、嫌気的条件は、容器内に茶葉を置くこと、容器を通して酸素以外の気体をパージすること、及び、容器を閉じることにより達成される。酸素以外の気体は、好ましくは窒素又は二酸化炭素、より好ましくは窒素である。酸素以外の気体は、好ましくは空気を含まない。
【0026】
容器を一旦、上の工程(i)又は(ii)で閉じた後、容器内の圧力に対する特別な制約はない。閉じられた容器内の絶対圧力は、好ましくは1~1000mmHg(1.3ミリバール~1.3バール)、より好ましくは10~800mmHg(13ミリバール~1バール)である。
【0027】
工程(a)の間の葉からの水分喪失はできる限り低いことが好ましい。これは、閉鎖条件下で工程(a)を実行することにより、有利且つ便宜的に達成される。工程(a)後のインキュベートされた茶葉は、好ましくは70~75質量%の範囲の水を含む。
【0028】
インキュベーション温度:
工程(a)は、4℃~60℃の範囲、好ましくは4~55℃の範囲、より好ましくは10~40℃の範囲の温度で実行される。
【0029】
嫌気性インキュベーションの期間:
摘採された葉は、4~50時間の期間、好ましくは6~40時間の期間、より好ましくは8~30時間の期間、最も好ましくは10~24時間の期間、嫌気的条件下で、インキュベートされる。嫌気性インキュベーションの期間は12~20時間であることが特に好ましい。
【0030】
工程(b):
インキュベートされた葉への微細孔の創製:
工程(b)は、インキュベートされた葉に微細孔を創製することを含む。上で説明する嫌気的条件下でのインキュベーション後、葉に微細孔を創製するプロセスを施す。
【0031】
微細孔の創製は、好ましくは、直径が5~100μm、より好ましくは20~80μm、最も好ましくは30~70μmの範囲の小細孔を創製することを意味する。
【0032】
微細孔は、好ましくは、レーザー、サンドブラスト、ドライアイスブラスト、マイクロピン、エレクトロポレーション、及び、これらの1つ又は複数の組合せからなる群から選択される技術を使用することにより創製されうる。しかし、微細孔の創製は、上記の技術の使用に限定されない。葉上に微細孔を創製できる任意の方法を適切に使用できる。
【0033】
微細孔を創製するためのレーザーを使用する好ましい実施形態において、茶葉は、好ましくは、平坦な面に置き、レーザーに曝露する。レーザーは、好ましくは、2つの異なるモード、連続又はパルス状態のいずれかで放出される。一般に、連続レーザーは、茶葉の均一なマイクロポレーションを得るためにより効果的である。
【0034】
交互に、且つ好ましくは、茶葉はまた、円運動での空気圧レーザートンネルを通されうる。トンネルを茶葉が通る間、レーザーは連続モードで放出されて、茶葉の均一なマイクロポレーションを得ることができる。
【0035】
レーザーのエネルギーは、好ましくは1~50mJ、より好ましくは10~25mJ、最も好ましくは15~20mJの範囲である。
【0036】
単語「マイクロピン」は、好ましくは、ピン又は釘を意味する。ブラシを形成するように配置された複数のピン又は釘で存在しうる。
【0037】
最も好ましい技術はマイクロピンの使用であり、これは非常に容易に実施が可能であり、安価である。したがって、マイクロピンは、好ましくは、容易に使用できるようにブラシの形態に配置されうる。
【0038】
微細孔の数は、好ましくは茶葉1cm2当たり200~400個、より好ましくは茶葉1cm2当たり250~400個、最も好ましくは茶葉1cm2当たり300~400個の範囲である。
【0039】
茶葉は、好ましくは、インキュベーション工程の前、又は、インキュベーション工程と工程(b)との間に、細断又はどんな種類のサイズ低減プロセスにもかけない。
【0040】
工程(c):
上記のインキュベーション工程の後、方法は、15~35℃の温度に、15分~4時間、茶葉を曝露することを含む。曝露する温度は、好ましくは20~35℃、より好ましくは25~35℃である。曝露するのに好ましい時間は、30分~4時間、より好ましくは60分~4時間、更により好ましくは75分~4時間、最も好ましくは90分~4時間である。
【0041】
工程(c)は、上述の条件で開放雰囲気に葉を保持することで達成されうるが、ここで「開放雰囲気」とは、好ましくは酸素の存在下であることを意味し、即ち好気的条件を意味する。
【0042】
理論に束縛されることは望まないが、上述の温度範囲に開放雰囲気において茶葉を曝露する上記の工程で、茶葉中である縮合発酵が開始することが考えられる。用語「発酵」は、一般的に、紅茶の典型的な味覚を生む前記発酵の前に、茶葉にサイズの低減(細断)のプロセスを行う、通常の紅茶葉の製造プロセスにおいて使用される。本発明の方法において、葉にはサイズを低減する工程を行わず、長い葉で紅茶の特質を有する茶製品を製造することができる。
【0043】
本発明の方法の最も好ましい特徴として、工程(c)の前に茶葉を粉砕する工程がない。
【0044】
工程(c)の後、葉茶は、好ましくは、更に乾燥されうる。乾燥する工程は、好ましくは、熱乾燥、凍結乾燥、又は真空乾燥により実行される。乾燥する工程の間、茶葉は、好ましくは茶葉の全質量当たり10%未満、より好ましくは茶葉の全質量当たり5%未満の含水量まで乾燥させる。
【0045】
乾燥する工程は、好ましくは、熱乾燥、凍結乾燥、又は真空乾燥により実行される。
【0046】
熱乾燥は、好ましくは、空気、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~130℃、最も好ましくは80~120℃である温度の空気に、葉が接触することにより実行される。熱乾燥は、任意の従来の乾燥機において実行されうる。しかし、流動層乾燥機又はトレー乾燥機は、熱乾燥に特に好ましい。
【0047】
葉はまた、真空乾燥により乾燥されうる。真空乾燥の間、茶葉に、好ましくは5~500mmHg、より好ましくは50~300mmHg、最も好ましくは100~200mmHgの絶対圧力を施す。真空乾燥は、好ましくは20~70℃、より好ましくは25~60℃、最も好ましくは30~55℃の範囲の温度で実行される。真空乾燥は、任意の適切な真空乾燥機、好ましくは回転真空乾燥機で実行されうる。
【0048】
葉茶製品:
紅茶製品は、一般的に、味を含むその味覚、及び、比較的高いテアフラビン含量を特徴とする。紅茶製品の味覚として、渋味、香り、色等が挙げられる。本発明の方法により得られる葉茶製品は、通常の紅茶製品のテアフラビン含量と類似のテアフラビン含量を有する。
【0049】
本発明の茶製品のテアフラビン含量は、1.4~2質量%であり、これは、通常の紅茶製品のテアフラビン含量と同様である。
【0050】
紅茶は、比較的少量のカテキンを含有する。カテキンは、健康に有益であることが知られている。本発明の方法の更なる有利な点は、通常の紅茶製品と比較した場合、比較的高いカテキン含量の紅茶の特質を有する葉茶製品を製造することである。本発明の茶製品のカテキン含量は、3.5~5.5質量%、より好ましくは4~5.5%である。
【0051】
本発明の葉茶製品における葉の長さは、好ましくは10mm~60mm、好ましくは10mm~50mm、より好ましくは10mm~40mmの範囲である。本明細書で述べられる長さは、好ましくは、中央脈に沿った茶葉の長さを意味する。
【0052】
本発明の葉茶製品における葉の幅は、好ましくは3mm~40mm、好ましくは3mm~30mm、最も好ましくは3mm~25mmの範囲である。本明細書で述べられる幅は、好ましくは、中央脈をまたぐ(又は、中央脈に垂直な)茶葉の長さを意味する。
【0053】
本発明の葉茶製品における個別の葉の面積は、好ましくは2~5cm2、好ましくは2~4cm2の範囲である。任意選択で、茶製品は、一部の他の茶製品とブレンドされて、独特の特質を得ることができる。本発明の茶製品を5~50%含む、葉茶ブレンドが好ましい。
【0054】
本発明の一態様の任意の特徴は、本発明のその他の態様において利用されうる。単語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味することを意図するが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「から構成される(composed of)」を意図しない。言い換えれば、列挙された工程や選択肢を、徹底させる必要はない。動作例及び比較例、又は他に明示的に示される場合を除き、材料若しくは反応条件の量、材料の物理特性及び/又は使用を示す本明細書の全ての数字は、単語「約」によって修飾されることを理解すべきである。「x~y」の形式で表現される数値範囲は、x及びyを含むと理解される。具体的な特徴に対して多数の好ましい範囲が形式「x~y」で記載される場合、異なる端点を組み合わす全ての範囲も考慮されると理解される。
【0055】
ここで、本発明は実施例の点から実証される。以下の実施例は単なる例証であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0056】
様々な茶製品の調製:
(実施例A)
生茶葉(含水量77%)を、南インドの茶園から調達した。次いで、これらの茶葉を、5%未満の含水量まで乾燥した(130℃のトレー乾燥機で20分間)。
【0057】
(実施例B)
生茶葉(含水量77%)を、南インドの茶園から調達した。これらの茶葉に、直径60μmの複数のピンを備えるブラシを回転することによるマイクロポレーションのプロセスを施して、茶葉1cm2当たり約200~400個の微細孔を得た。細孔のサイズは60μmであった。次に、葉を取り、5%未満の含水量まで乾燥した(130℃のトレー乾燥機で20分間)。
【0058】
(実施例C)
生茶葉(含水量77%)を、南インドの茶園から調達した。次いで、これらの茶葉を気密性の無菌プラスチック製バッグに入れ、密閉し、18時間インキュベートした。次に、インキュベートした茶葉を室温(25℃)に90分間曝露した。90分後、葉を取り、5%未満の含水量まで乾燥した(130℃のトレー乾燥機で20分間)。
【0059】
(実施例D)
これは、紅茶葉茶製品を製造するための標準的な方法である。生茶葉(含水量77%)を、南インドの茶園から調達した。次いで、これらの葉を18時間、萎凋した。次に、茶葉にCTC(カット、ティア、カール(cut tear curl))を4回施して、細断したドール(dhool)を得た。次いで、細断したドールを(25℃の空気に曝露して)90分間発酵した。90分後、葉を取り、5%未満の含水量まで乾燥した(130℃のトレー乾燥機で20分間)。
【0060】
(実施例1)
生茶葉(含水量77%)を、南インドの茶園から調達した。次いで、これらの茶葉を気密性の無菌プラスチック製バッグに入れ、密閉し、18時間インキュベートした。これらの茶葉に、マイクロピンを備えるブラシを回転することによるマイクロポレーションのプロセスを施して、茶葉1cm2当たり約200~400個の微細孔を得た。細孔のサイズは60μmであった。次に、インキュベートした茶葉を室温(25℃)に90分間曝露した。90分後、葉を5%未満の含水量まで乾燥した(130℃のトレー乾燥機で20分間)。
【0061】
上記の全ての茶製品について、2gの葉茶を200mLの沸騰したばかりの湯で2分間、撹拌せずに浸出することにより、茶浸出液を調製し、下記に記載したプロトコルを使用して測定を行った。
【0062】
測定方法:
カテキン及びテアフラビン(TF)の含量を測定するためのサンプルの調製
(a)テアフラビン(TF)含量
サンプルを、380nmの波長、40℃のカラム温度、20μLの注入体積、及び1mL/分の流速で検出することで、オクタデシルシリカ(C18)カラム(Nova-pak ex. Waters、3.9mm i.d.×150mm)を使用してHPLCにより解析した。テアフラビン解析用の移動相は、水中2%(v/v)酢酸(緩衝剤Aとして)及びアセトニトリル(緩衝剤Bとして)であった。50分にわたって8%Bから69%Bまでの線形グラジエントを使用して、テアフラビンを分離し、次いで、カラムを8%の緩衝剤Aで5分間、平衡化した。純粋なテアフラビン(Sigma Aldrich、>90%、HPLCグレード)を、定量化用の基準として使用した。
【0063】
(b)カテキン含量
総カテキン含量を、高速液体クロマトグラフィーを使用する緑茶及び紅茶でのカテキンを決定するためのISO法(ISO 14502-2:2005)を使用して決定した。
【0064】
(c)色測定
色(CIE L*a*b*値)を、Hunter lab Ultrascan XE(モデル-USXE/UNIバージョン3.4、Hunterlab Associates Laboratory, Inc.社、Virginia)を使用して測定した。ハロゲンサイクルランプを光源として使用した。使用した光源はD65であり、測定を観察者角度10°で行った。路長10mmの石英キュベットを使用して測定を行った。茶葉をキュベットのブリムまで充填し、色測定の装置に置いた。取扱説明書に提供された指示に従って、標準白色タイル(Hunterlab Diffuse/8°、モード-RSEX、ポート-1"、及び、領域-大)を使用して、装置を較正した。L*a*b*値を室温(25℃)で測定した。
【0065】
L*の最大値は100であり、これは完全拡散反射面を表す。最小値はL*=0であり、黒色を表す。a*軸及びb*軸は、具体的な数的限界値を有さない。正のa*は赤色であり、負のa*は緑色である。同様に、正のb*は黄色であり、負のb*は青色である。
【0066】
結果は、以下の表1にまとめる。
【0067】
【0068】
上表より、本発明の方法により得られた茶製品は、対照例(実施例A~D)と比較する場合、カテキン及びテアフラビンをより多く有する茶浸出液(実施例1)を提供することが分かる。実施例1より得られた浸出液は、対照例A~D全てに対して、より暗く(L*値が低い)、より赤く(a*値が高い)、より鮮やか(b*値が高い)であることも留意されたい。実施例1の方法が、一般的に紅茶製造の特徴的な工程であるサイズの低減、即ち粉砕の工程を含まないので、長い葉のサイズを維持する。本発明(実施例1)の方法により得られた茶製品は、通常の紅茶(実施例D)より良好な紅茶の特質を更に有する。
【0069】
テアフラビン及びカテキン含量を実施例1により得られた葉茶製品に対して測定し、以下に示す。
【0070】
テアフラビン含量: 茶葉の1.68質量%。
カテキン含量: 茶葉の4.01質量%。
【0071】
したがって、ここで、本発明を介して、優れた紅茶の特質を有する長い葉茶製品を提供することが可能である。