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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】藻類を増殖させるための改善された方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20220204BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220204BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20220204BHJP
   C12N 1/13 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
C12N1/12 A
C12P21/02 C
A23L33/00
C12N1/13
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019531855
(86)(22)【出願日】2017-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017046831
(87)【国際公開番号】W WO2018038960
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/379,358
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519065123
【氏名又は名称】トリトン アルジー イノベーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マクブライド ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス オスカー
(72)【発明者】
【氏名】メイフィールド スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】トラン ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン ジョン
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0315538(US,A1)
【文献】特開昭52-105276(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1827769(CN,A)
【文献】Feng Chen,Process Biochemistry,1996年,31(6),601-604
【文献】Feng Chen,Trends in biotechnology,1996年,Vol.14,421-426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12Q 1/00-3/00
C12N 1/00-7/08
A23L 5/40-5/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラミドモナス種(Chlamydomonas species)の高密度培養物の好気性従属栄養培養のための方法であって、
クラミドモナス種の生産培養物を好気的に6.0~7.0のpH設定点で維持する工程;
生産培養物のpHが設定点を0.5超えたときにのみ、唯一の炭素源として酢酸または酢酸塩を供給することによって、生産培養物のフィードを開始し、該pHが設定点を0.2下回るまで低下したときに前記炭素源でのフィードを中止する工程
含む、前記方法。
【請求項2】
クラミドモナス種が異種遺伝子を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クラミドモナス種が異種遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生産培養物が光の非存在下で維持される、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
pH設定点が6.0、6.2、6.5、6.8、および7.0からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
目標密度に達するまで、生産培養物を増殖させる工程を含み、目標密度が、50~75g/L、75~100g/L、100~125g/L、125~150g/L、150~175g/L、または175~200g/L乾燥細胞重量である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
目標密度が、生産培養物の接種後250時間以内に達成される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
生産培養物からクラミドモナス種を回収する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記異種遺伝子が治療用タンパク質をコードし、前記方法が治療用タンパク質を生産培養物から回収する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項10】
生産培養物から回収されたクラミドモナス種から栄養補助食品または栄養添加物を調製する工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
クラミドモナス種を、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満の水分の含水量まで乾燥する工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
クラミドモナス種が、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、クラミドモナス・ディソモス(Chlamydomonas dysomos)、クラミドモナス・ムンダン(Chlamydomonas mundane)、クラミドモナス・デバリアナ(Chlamydomonas debaryana)、クラミドモナス・モエブシィ(Chlamydomonas moewusii)、クラミドモナス・キュレウス(Chlamydomonas culleus)、クラミドモナス・ノクチガマ(Chlamydomonas noctigama)、クラミドモナス・オーラタ(Chlamydomonas aulata)、クラミドモナス・アプラナタ(Chlamydomonas applanata)、クラミドモナス・マルバニィ(Chlamydomonas marvanii)、クラミドモナス・プロボシゲラ(Chlamydomonas proboscigera)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
クラミドモナス種がコナミドリムシである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記回収が、ろ過または遠心分離による、請求項8記載の方法。
【請求項15】
生産培養物のpH設定点が6.5である、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
世界の人口が増え続けると共に、食用タンパク質源に対する需要が高まりつつある。伝統的な作物の栽培に適した土地が限られているという事実にもかかわらず、この需要は満たされる必要がある。藻類は伝統的な農作物の代替物を提供する。藻類は陸生作物に比べていくつかの利点を有する。藻類は非常に高い速度で生殖し、生成時間は10時間と短い。藻類の多くの菌株はタンパク質にも富んでおり、藍藻類のいくつかの菌株は70%がタンパク質であると報告されている(Becker, Biotech. Adv.(2007)25:207(非特許文献1))。高いタンパク質含量と合わせた藻類の迅速な生殖率は、藻類が1エーカー当たりの基準で大豆よりも10倍以上多いタンパク質を生産できることを意味する。
【0002】
藻類は、生産できるタンパク質の豊富な量に加えて、タンパク質がそのアミノ酸組成の観点から高品質でもあるため、ヒトおよび非反芻動物のための食用タンパク質の生産に特に有用である。藻類のアミノ酸組成は、小麦などの穀物をはるかに上回る、大豆のような他の高品質植物源において見出されるものと同様である(Fabregas and Herrero, Applied Microbiol. Biotechnol.(1985)23:110(非特許文献2))。藻類タンパク質は比較的高い生物学的価値を有し、卵およびカゼインなどの動物性タンパク質と比べて引けを取らない(Becker、上記)。さらに、藻類タンパク質は非常に消化されやすい。加えて、藻類は、特定の栄養価のタンパク質を生産するように遺伝子操作し得る。
【0003】
栄養タンパク質の供給源としてのその使用に加えて、藻類はまた、治療用タンパク質の生産にも有用である。タンパク質に基づく治療薬は医療処置のますます重要な局面である。組換えタンパク質生産のための代替的プラットフォームとしての真核生物微細藻類への関心が近年高まっている。トランスジェニック藻類におけるタンパク質生産は、コスト、安全性、および迅速な拡張性を含む、トランスジェニック植物と同じ利点の多くを提供することができる。治療用タンパク質を発現する微細藻類は、本明細書に記載される改善された条件下で増殖させることができる。緑藻類コナミドリムシ(クラミドモナス・ラインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii))の葉緑体における組換えタンパク質の発現は十分に確立されている(Mayfield S.P., et al.(2007)Curr Opin Biotechnol 18:126-133(非特許文献3))。これらのタンパク質には、レポータータンパク質(Franklin S., et al. Plant J(2002)30:733-744(非特許文献4);Mayfield S.P. and Schultz J. Plant J(2004)37:449-458(非特許文献5);Muto M., et al. BMC Biotechnol(2009)9:26(非特許文献6))、大型複合哺乳動物一本鎖抗体(Mayfield S.P., et al. Proc Natl Acad Sci U S A(2003)100:438-442(非特許文献7))、より伝統的な一本鎖抗体(Franklin S.E. and Mayfield S.P. Expert Opin Biol Ther.(2005)5:225-235(非特許文献8))、完全長モノクローナル抗体(Tran M., et al. Biotechnol Bioeng.(2009)104(4):663-673(非特許文献9))、潜在的なワクチン抗原(Surzycki R., et al. Biologicals(2009)37:133-138(非特許文献10))、および種々の潜在的な治療用タンパク質(Rasaia et al. Plant Biotechnol. J.(2010)8:719-733(非特許文献11))が含まれる。藻類から精製されたタンパク質は、細菌または哺乳動物細胞培養物からの調製物中に存在する可能性がある毒素およびウイルス性因子を含まないはずであるため、標準的な方法で生産されたものに勝る利点を有する。
【0004】
タンパク質源および治療用タンパク質の生産プラットフォームとしての藻類の広範な使用を妨げる重要な要因は、生産コストが高いことである。ヒトの消費または薬学的使用のための藻類は、高品質の基準で生産されなければならない。ほとんどの場合、藻類は密閉された発酵容器で育てなければならない。密閉型発酵容器の使用は、発酵槽の購入および設置に必要とされる大量の資本、ならびに発酵槽の運転に関連する高いエネルギーコストの両方の観点から、生産コストを増大させる。
【0005】
生産コストを下げる1つの方法は、藻類の増殖率を高めることである。より高い増殖率では、資本コストと運用コストがより大量の製品に分散され、したがって単位生産コストが低減される。実質的により高い増殖率および改善された栄養プロフィールをもたらす、藻類の改善された生産方法が本明細書で提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Becker, Biotech. Adv.(2007)25:207
【文献】Fabregas and Herrero, Applied Microbiol. Biotechnol.(1985)23:110
【文献】Mayfield S.P., et al.(2007)Curr Opin Biotechnol 18:126-133
【文献】Franklin S., et al. Plant J(2002)30:733-744
【文献】Mayfield S.P. and Schultz J. Plant J(2004)37:449-458
【文献】Muto M., et al. BMC Biotechnol(2009)9:26
【文献】Mayfield S.P., et al. Proc Natl Acad Sci U S A(2003)100:438-442
【文献】Franklin S.E. and Mayfield S.P. Expert Opin Biol Ther.(2005)5:225-235
【文献】Tran M., et al. Biotechnol Bioeng.(2009)104(4):663-673
【文献】Surzycki R., et al. Biologicals(2009)37:133-138
【文献】Rasaia et al. Plant Biotechnol. J.(2010)8:719-733
【発明の概要】
【0007】
概要
本明細書に開示される発明概念のいくつかの局面および態様には、クラミドモナス種(Chlamydomonas species)の高密度培養物の好気性従属栄養培養のための方法が含まれ、この培養物は50~200g/L乾燥細胞重量の目標密度を達成する。特定の態様では、培養物は、少なくとも50g/L、少なくとも60g/L、少なくとも70g/L、少なくとも80g/L、少なくとも90g/L、少なくとも100g/L、少なくとも110g/L、少なくとも120g/L、少なくとも130g/L、少なくとも140g/L、少なくとも150g/L、少なくとも160g/L、少なくとも170g/L、少なくとも180g/L、少なくとも190g/Lまたは少なくとも200g/L乾燥細胞重量の目標密度を達成する。他の態様では、目標密度は、50~75g/L、75~100g/L、100~125g/L、125~150g/L、150~175g/Lまたは175~200g/L乾燥細胞重量である。特定の態様では、生産培養物を、回収前に50g/L、55g/L、65g/L、70g/L、75g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、130g/L、135g/L、140g/L、145g/L、150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/Lまたは200g/L乾燥細胞重量の密度まで増殖させる。いくつかの態様では、目標密度または濃度は、生産培養の開始後250時間以内に達成される。
【0008】
使用されるクラミドモナス種は、従属栄養増殖または混合栄養増殖することができる任意の種、例えばコナミドリムシ、クラミドモナス・ディソモス(Chlamydomonas dysomos)、クラミドモナス・ムンダン(Chlamydomonas mundane)、クラミドモナス・デバリアナ(Chlamydomonas debaryana)、クラミドモナス・モエブシィ(Chlamydomonas moewusii)、クラミドモナス・キュレウス(Chlamydomonas culleus)、クラミドモナス・ノクチガマ(Chlamydomonas noctigama)、クラミドモナス・オーラタ(Chlamydomonas aulata)、クラミドモナス・アプラナタ(Chlamydomonas applanata)、クラミドモナス・マルバニィ(Chlamydomonas marvanii)、またはクラミドモナス・プロボシゲラ(Chlamydomonas proboscigera)であり得る。一態様では、クラミドモナス種は野生型種であり、すなわち異種または外因性遺伝子を含まない。
【0009】
本発明の方法は、クラミドモナス種の実質的に純粋な培養物の接種材料を0.1~15g/Lの濃度で得ることを含む。接種材料は、それを初期容量の発酵培地に添加することによって、生産培養物を生産するために用いられ、使用する接種材料の量は発酵培地の初期容量の20%を超えない。次いで、生産培養物をpH約6.0~10.0および約15℃~約37℃の温度で好気的に増殖させる。一態様では、生産培養物を光の非存在下で増殖させる。1つの方法では、生産培養物は、氷酢酸を補充した100倍濃度の発酵培地であるフィード培地を供給することによってフィードされる。フィードスケジュールは、生産培養物のpHの変化によって決定される。生産培養物は、所望の目標密度に達するまで増殖させ、その時点で藻類を培養物から回収する。
【0010】
特定の態様では、生産培養物のpHが所定の設定点を超えて上昇したときに生産培養物にフィードする。いくつかの態様では、pHが7.5を超えたときにフィードを開始し、pHが6.8未満に低下した後にフィードを中止する。他の態様では、フィードは、生産培養物のpHをpH6.6±0.1、pH6.8±0.1またはpH7.0±0.1に維持するために使用される。
【0011】
回収は、ろ過、バッチ遠心分離または連続遠心分離を含むがこれらに限定されるわけではない、当技術分野において公知の任意の方法によって達成され得る。場合によっては、生産培養物は培養開始後250時間以内に回収密度に達する。
【0012】
回収された藻類は、例えば噴霧乾燥、リング乾燥、パドル乾燥、トレイ乾燥、天日乾燥もしくは太陽乾燥、真空乾燥、または凍結乾燥によって15%以下の含水量まで乾燥され得る。
【0013】
別の局面は、少なくとも90%の少なくとも1つのクラミドモナス種を含む栄養補助食品を提供し、ここで栄養補助食品は、水分15%以下、粗タンパク質50%以上、脂肪10%以上および灰分5%以下である。特定の態様では、栄養補助食品はまた、オメガ3、オメガ6およびオメガ9脂肪酸を含む。
【0014】
一局面では、培養物の密度が24時間当たり50%~300%、50%~100%、100%~150%、150%~200%、200%~250%または250%~300%の割合で増加する増殖条件下での1種または複数種のクラミドモナス藻類の培養物が提供される。
【0015】
一局面では、培養物の密度が24時間当たり少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%または少なくとも300%増加する増殖条件下での1種または複数種のクラミドモナス藻類の培養物が提供される。
【0016】
培養物が、少なくとも50g/L、少なくとも60g/L、少なくとも70g/L、少なくとも80g/L、少なくとも90g/L、少なくとも100g/L、少なくとも110g/L、少なくとも120g/L、少なくとも130g/L、少なくとも140g/L、少なくとも150g/L、少なくとも160g/L、少なくとも170g/L、少なくとも180g/L、少なくとも190g/Lまたは少なくとも200g/L乾燥細胞重量の藻類密度を有する定常状態条件下での1種または複数種のクラミドモナス藻類の藻類培養物も提供され、ここで、定常状態は、培養物中の藻類の濃度が24時間当たり約0.1%~約50%増加している状態として定義される。
【0017】
さらなる局面は、少なくとも1つの外因性治療用タンパク質を発現する少なくとも1つのクラミドモナス種の実質的に純粋な培養物から、治療用タンパク質を生産する方法を提供する。この方法は、少なくとも外因性治療用タンパク質を発現する、約0.1~約15g/Lの少なくとも1つのクラミドモナス種を含有する実質的に純粋な培養物を含む接種材料を、生産培養物に接種することを含む。使用される接種材料の量は、生産培養物の初期容量の20%を超えない。次いで、生産培養物をpH約6.4~10および約15℃~約37℃の温度で好気的に増殖させる。一態様では、生産培養物を光の非存在下で増殖させる。生産培養物に、氷酢酸を補充した100倍濃度の生産培養物培地であるフィード培地を使用して、生産培養物のpHに基づくスケジュールでフィードする。生産培養物を、藻類が所望の目標濃度に達するまで増殖させ、次いで藻類を培地から回収する。回収は、ろ過、バッチ遠心分離または連続遠心分離によって行い得る。
【0018】
特定の態様では、フィードは、生産培地のpHの上昇に基づいて決定される。特定の態様では、pHが7.4より大きい場合には生産培養物にフィードし、pHが6.8に達すると停止する。他の態様では、フィードスケジュールは、生産培地のpHがpH6.6±0.1、pH6.8±0.1またはpH7.0±0.1に維持されるように設計される。
【0019】
いくつかの態様では、目標濃度は、少なくとも65g/Lまたは少なくとも70g/Lである。他の態様では、目標濃度は、75g/L、80g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、130g/L、135g/L、140g/L、145g/L、150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/Lまたは200g/Lである。
【0020】
いくつかの態様では、藻類は、回収後に、例えば噴霧乾燥、リング乾燥、パドル乾燥、トレイ乾燥、天日乾燥もしくは太陽乾燥、真空乾燥または凍結乾燥によって乾燥される。さらに他の態様では、この方法は、藻類から少なくとも1つの治療用タンパク質を単離することをさらに含む。
[本発明1001]
クラミドモナス種(Chlamydomonas species)の高密度培養物の好気性従属栄養培養のための方法であって、
クラミドモナス種の実質的に純粋な培養物の接種材料を、0.1~15g/Lの濃度で得る工程;
初期容量の発酵培地に、前記初期容量の発酵培地の20%を超えない容量の接種材料を接種することによって、生産培養物を生成する工程;
生産培養物を好気的にpH6.0~10.0および15℃~37℃の温度で維持する工程;
生産培養物のpHの変化によって決定される量およびスケジュールでフィード培地を生産培養物に供給することによって、生産培養物にフィードする工程;
少なくとも60g/L乾燥細胞重量の目標密度に達するまで、生産培養物を無菌条件下で増殖させる工程;ならびに
生産培養物からクラミドモナス種を回収する工程
を含み、前記クラミドモナス種が異種遺伝子を含まない、前記方法。
[本発明1002]
生産培養物が光の非存在下で維持される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
フィードがpHの上昇によって決定される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
フィード培地が、生産培地のpHをpH6.8±0.5に維持するために生産培養物に供給される、本発明1001の方法。
[本発明1005]
生産培養物のpHが培養設定点を超えるときは常に、フィード培地が生産培養物に供給され、生産培養物のpHがpH設定点より低いときは常に、フィード培地が中止される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
pH設定点が6.0である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
pH設定点が6.2である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
pH設定点が6.5である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
pH設定点が6.8である、本発明1001の方法。
[本発明1010]
pH設定点が7.0である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
目標密度が、少なくとも50g/L、少なくとも55g/L、少なくとも60g/L、少なくとも65g/L、少なくとも70g/L、少なくとも75g/L、少なくとも80g/L、少なくとも85g/L、少なくとも90g/L、少なくとも95g/L、少なくとも100g/L、少なくとも105g/L、少なくとも110g/L、少なくとも115g/L、少なくとも120g/L、少なくとも125g/L、少なくとも130g/L、少なくとも135g/L、少なくとも140g/L、少なくとも145g/L、少なくとも150g/L、少なくとも155g/L、少なくとも160g/L、少なくとも165g/L、少なくとも170g/L、少なくとも175g/L、少なくとも180g/L、少なくとも185g/L、少なくとも190g/L、少なくとも195g/L、または少なくとも200g/L乾燥重量である、本発明1001の方法。
[本発明1012]
目標密度が、50~75g/L、75~100g/L、100~125g/L、125~150g/L、150~175g/L、または175~200g/L乾燥細胞重量である、本発明1001の方法。
[本発明1013]
目標密度が、50g/L、55g/L、65g/L、70g/L、75g/L、80g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、130g/L、135g/L、140g/L、145g/L、150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、または200g/L乾燥細胞重量である、本発明1001の方法。
[本発明1014]
目標密度が、生産培養物の接種後250時間以内に達成される、本発明1001の方法。
[本発明1015]
クラミドモナス種がろ過または遠心分離によって回収される、本発明1001の方法。
[本発明1016]
クラミドモナス種がバッチ遠心分離によって回収される、本発明1015の方法。
[本発明1017]
クラミドモナス種が連続遠心分離によって回収される、本発明1015の方法。
[本発明1018]
回収されたクラミドモナス種を乾燥する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
乾燥が、噴霧乾燥、リング乾燥、パドル乾燥、トレイ乾燥、天日乾燥もしくは太陽乾燥、真空乾燥、または凍結乾燥による、本発明1018の方法。
[本発明1020]
クラミドモナス種を15%未満の含水量まで乾燥する工程をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1021]
クラミドモナス種が、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、クラミドモナス・ディソモス(Chlamydomonas dysomos)、クラミドモナス・ムンダン(Chlamydomonas mundane)、クラミドモナス・デバリアナ(Chlamydomonas debaryana)、クラミドモナス・モエブシィ(Chlamydomonas moewusii)、クラミドモナス・キュレウス(Chlamydomonas culleus)、クラミドモナス・ノクチガマ(Chlamydomonas noctigama)、クラミドモナス・オーラタ(Chlamydomonas aulata)、クラミドモナス・アプラナタ(Chlamydomonas applanata)、クラミドモナス・マルバニィ(Chlamydomonas marvanii)、およびクラミドモナス・プロボシゲラ(Chlamydomonas proboscigera)の1種または複数種である、本発明1001の方法。
[本発明1022]
クラミドモナス種がコナミドリムシである、本発明1021の方法。
[本発明1023]
本発明1001の方法によって生成された90%超または少なくとも1種のクラミドモナス種を含む、栄養補助食品であって、
を含む、前記栄養補助食品。
[本発明1024]
オメガ3、オメガ6、およびオメガ9脂肪酸をさらに含む、本発明1023の栄養補助食品。
[本発明1024]
増殖条件下で1種または複数種のクラミドモナス藻類を含む、藻類培養物であって、少なくとも50g/L乾燥細胞重量の濃度で前記藻類を含み、および前記増殖条件で培養物の密度が24時間当たり50%~300%の割合で増加する、前記藻類培養物。
[本発明1025]
定常状態条件下で培養物の密度が24時間当たり0.1%~50%の割合で増加する、本発明1019の藻類培養物。
[本発明1026]
治療用タンパク質を生産する方法であって、
少なくとも1つの外因性治療用タンパク質を発現するクラミドモナス種の実質的に純粋な培養物の接種材料を、0.1~15g/Lの濃度で得る工程;
初期容量の発酵培地に、前記初期容量の発酵培地の20%を超えない容量の接種材料を接種することによって、生産培養物を生成する工程;
生産培養物を好気的にpH6.0~10.0および15℃~37℃の温度で維持する工程;
生産培養物のpHの変化によって決定される量およびスケジュールでフィード培地を生産培養物に供給することによって、生産培養物にフィードする工程;
無菌条件下で少なくとも50g/L乾燥細胞重量の目標密度に達するまで、生産培養物を増殖させる工程;ならびに
生産培養物からクラミドモナス種を回収する工程
を含む、前記方法。
[本発明1027]
生産培養物が光の非存在下で維持される、本発明1026の方法。
[本発明1028]
フィードがpHの上昇によって決定される、本発明1026の方法。
[本発明1029]
フィード培地が、生産培地のpHをpH6.8±0.5に維持するために生産培養物に供給される、本発明1026の方法。
[本発明1030]
生産培養物のpHが培養設定点を超えるときは常に、フィード培地が生産培養物に供給され、生産培養物のpHがpH設定点より低いときは常に、フィード培地が中止される、本発明1026の方法。
[本発明1031]
pH設定点が6.0である、本発明1026の方法。
[本発明1032]
pH設定点が6.2である、本発明1026の方法。
[本発明1033]
pH設定点が6.5である、本発明1026の方法。
[本発明1034]
pH設定点が6.8である、本発明1026の方法。
[本発明1035]
pH設定点が7.0である、本発明1026の方法。
[本発明1036]
目標密度が、少なくとも50g/L、少なくとも55g/L、少なくとも60g/L、少なくとも65g/L、少なくとも70g/L、少なくとも75g/L、少なくとも80g/L、少なくとも85g/L、少なくとも90g/L、少なくとも95g/L、少なくとも100g/L、少なくとも105g/L、少なくとも110g/L、少なくとも115g/L、少なくとも120g/L、少なくとも125g/L、少なくとも130g/L、少なくとも135g/L、少なくとも140g/L、少なくとも145g/L、少なくとも150g/L、少なくとも155g/L、少なくとも160g/L、少なくとも165g/L、少なくとも170g/L、少なくとも175g/L、少なくとも180g/L、少なくとも185g/L、少なくとも190g/L、少なくとも195g/L、または少なくとも200g/L乾燥重量である、本発明1026の方法。
[本発明1037]
目標密度が、50~75g/L、75~100g/L、100~125g/L、125~150g/L、150~175g/L、または175~200g/L乾燥細胞重量である、本発明1026の方法。
[本発明1038]
目標密度が、50g/L、55g/L、65g/L、70g/L、75g/L、80g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、130g/L、135g/L、140g/L、145g/L、150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、または200g/L乾燥細胞重量である、本発明1026の方法。
[本発明1039]
目標密度が、生産培養物の接種後250時間以内に達成される、本発明1026の方法。
[本発明1040]
クラミドモナス種がろ過または遠心分離によって回収される、本発明1026の方法。
[本発明1041]
クラミドモナス種が連続遠心分離によって回収される、本発明1040の方法。
[本発明1042]
回収されたクラミドモナス種を乾燥する工程をさらに含む、本発明1026の方法。
[本発明1045]
乾燥が、噴霧乾燥、リング乾燥、パドル乾燥、トレイ乾燥、天日乾燥もしくは太陽乾燥、真空乾燥、または凍結乾燥による、本発明1042の方法。
[本発明1046]
少なくとも1つの治療用タンパク質をクラミドモナス種から単離する工程をさらに含む、本発明1026の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のこれらおよび他の特徴、局面、および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面に関してより良く理解されるであろう。
図1図1は、シード発酵槽における酸素のパーセント飽和度および撹拌対バッチ齢のグラフである。
図2図2は、シード発酵槽におけるpHおよび温度対バッチ齢のグラフである。
図3図3は、シード発酵槽における乾燥細胞重量濃度およびタンク充填率%対バッチ齢のグラフである。
図4図4は、生産発酵槽における酸素の飽和度および撹拌対バッチ齢のグラフである。
図5図5は、生産発酵槽におけるpHおよび温度対バッチ齢のグラフである。
図6図6は、生産発酵槽における乾燥細胞重量濃度およびタンク充填率%対バッチ齢のグラフである。
図7図7は、マイクロ波法によって乾燥細胞重量(DCW)を決定するために使用されるフィルタの番号付けおよび折り畳みを示す。
図8図8はウェーブバッグの写真である。
図9図9は、表4の要素から構成される基礎培地、表5の要素から構成される微量要素、および表6に列挙される化合物から構成されるフィード培地を使用して発酵工程の間に達成される乾燥細胞重量および増殖速度を表す。
図10図10は、表4の要素から構成される基礎培地、表5の要素から構成される微量要素、および表6に列挙される化合物から構成されるフィード培地を使用して発酵工程の間に達成される溶存酸素(DO)、温度およびインペラの撹拌速度を表す。
図11図11は、表4の要素から構成される基礎培地、表5の要素から構成される微量要素、および表6に列挙される化合物から構成されるフィード培地を使用して発酵工程の間に測定された空気流およびpHを表す。
図12図12は、表4の要素から構成される基礎培地、表5の要素から構成される微量要素、および表6に列挙される化合物から構成されるフィード培地を使用した発酵工程の間に、コナミドリムシの培養物によって消費されたフィード培地を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのに助けるために提供される。しかしながら、この詳細な説明は、本明細書で論じる態様における修正および変形が本発明の発見の範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得るので、本発明を過度に限定すると解釈されるべきではない。
【0023】
本出願において引用される全ての刊行物、特許、特許出願、公共データベース、公共データベースエントリ、および他の参考文献は、あたかも個々の刊行物、特許、特許出願、公共データベース、公共データベースエントリ、または他の参考文献が参照により組み入れられることを具体的かつ個別に示されているかのごとくに、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の言及を含む。
【0025】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈上明らかに別段の指示がない限り下限の単位の10分の1までの、各介在値もまた具体的に開示されていると理解される。記載されている任意の値または記載されている範囲内の介在値と、その記載されている範囲内の任意の他の記載値または介在値との間の各々の小さな範囲が包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して範囲に含まれるかまたは除外されることができ、記載される範囲のいずれかの具体的に除外される限界に従って、いずれかまたは両方の限界がより小さな範囲に含まれるかまたは除外される各々の範囲も包含される。記載される範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外した範囲も含まれる。特に明記しない限り、培養密度または濃度は乾燥細胞重量(DCW)に基づく。
【0026】
クラミドモナス属の藻類の従属栄養性または混合栄養性好気的生産のための改善された方法が本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、従属栄養性および従属栄養という用語は、藻類が有機炭素源をエネルギー源としておよび炭素源として利用することができる状況を指す。したがって、従属栄養性藻類は光の非存在下で増殖することができる。本明細書で使用される場合、混合栄養性および混合栄養という用語は、光(光合成)および有機炭素がエネルギー源として使用され得る条件下で藻類が増殖する状況を指す。混合栄養条件下では、藻類は、無機炭素(例えば二酸化炭素、重炭酸塩および/または炭酸塩)を固定するためのエネルギー源として光を使用して光合成を行い、有機炭素をエネルギー源として使用して従属栄養増殖することによって増殖することができる。
【0027】
エネルギー源として有機炭素源を利用することができる任意の種のクラミドモナスを、本明細書に開示される方法を実施する際に利用することができる。藻類は、自然にまたは当技術分野で利用可能な任意の手段による遺伝子操作のために光合成することができないという点で、厳密に従属栄養性であり得る。遺伝子操作とは、人間の操作による生物の遺伝子構成の変化を意味する。本明細書で使用される場合、遺伝子操作は、組換えDNA技術および伝統的な植物育種技術の両方を含む。伝統的な植物育種技術を利用する場合、光合成藻類は、例えば選択およびランダム突然変異誘発によって厳密に従属栄養性にすることができる。組換えDNA技術を用いる場合、藻類は、当技術分野において公知の任意の技術、例えば遺伝子ノックアウトまたは遺伝子サイレンシング技術によって光合成不能にすることができる。当業者は、藻類を光合成不能にするための様々な方法を容易に理解することができる。
【0028】
あるいは、藻類は、天然にまたは遺伝子操作の使用によって混合栄養性であり得る。天然に混合栄養性であるクラミドモナスの種の例には、コナミドリムシ、クラミドモナス・ディソモス、クラミドモナス・ムンダン、クラミドモナス・デバリアナ、クラミドモナス・モエブシィ、クラミドモナス・キュレウス、クラミドモナス・ノクチガマ、クラミドモナス・オーラタ、クラミドモナス・アプラナタ、クラミドモナス・マルバニィ、およびクラミドモナス・プロボシゲラが含まれるが、これらに限定されるわけではない。例えば、天然に従属栄養性ではない藻類の光合成種は、例えば選択圧を加えることによって従属栄養性にすることができる。あるいは、光合成藻類は、当技術分野において公知の組換えDNA技術の使用を介して、外因性有機炭素源を代謝するのに必要な代謝経路遺伝子の導入によって従属栄養性にし得る。
【0029】
従属栄養条件下または混合栄養条件下のいずれで増殖するかにかかわらず、藻類には光合成がなくても増殖を支持するのに必要な栄養素が提供される。例えば、生物がその中で(またはその上で)増殖する培地には、有機炭素源、窒素源、リン源、ビタミン、金属、脂質、核酸、微量栄養素、および/または任意の生物特有の要件を含む、任意の必要な栄養素を補充し得る。有機炭素源には、酢酸塩、単純炭水化物(例えばグルコース、スクロース、ラクトース)、複合炭水化物(例えばデンプン、グリコーゲン)、タンパク質、および脂質を含むがこれらに限定されるわけではない、藻類が代謝することができる任意の炭素源が含まれる。一態様では、炭素源は、酢酸の形態で提供される酢酸塩である。
【0030】
本明細書に開示される方法を実施するのに使用される藻類は、クラミドモナスの単一種または種の混合物であり得る。一態様では、培養物は、主に1種のクラミドモナスを含む。本明細書で使用される場合、その種が存在する藻類生物の50%超を構成する場合、培養物は、主に1つの種である。例えば、クラミドモナスの特定の種を50%超、55%超、60%超、70%超、80%超または90%超含む培養物は、その種を主に含むと言われる。他の態様では、培養物は、種または属のいずれかに関して無菌である。本明細書で使用される場合、培養物は、意図されるもの以外の生物による汚染がない場合、属または種について無菌であると言われる。例えば、クラミドモナスについて無菌である培養物は、1種または複数種のクラミドモナスの藻類を含み得るが、他のいかなる属の生物も含み得ない。同様に、コナミドリムシについて無菌である培養物は、クラミドモナスの他の種を含めて、コナミドリムシ以外の生物を含み得ない。培養物が無菌であるかどうか、例えば酵母または細菌によって汚染されているかどうかを決定するための方法は、当業者に公知である。
【0031】
一態様では、培養物は、標準的な方法で決定されるように真菌または細菌を含まない。特定の態様では、培養物は、コロニー形成単位(CFU)が存在しないことによって決定されるように好気性菌を含まない。別の態様では、培養物は、コロニー形成単位が存在しないことによって決定されるように酵母、カビ、および大腸菌群を含まない。さらに他の態様では、培養物は、コロニー形成単位が存在しないことによって決定されるように大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびサルモネラ種(Salmonella sp.)を含まない。
【0032】
本明細書に開示される方法を用いて、藻類をバイオリアクタ内で従属栄養的にまたは混合栄養的に増殖させる。「バイオリアクタ」という用語は、環境に対して閉じられており、環境との間でガスおよび汚染物質の直接交換がないシステムを指す。藻類が混合栄養性である場合、それらを光バイオリアクタ内で増殖させることができる。光バイオリアクタは、リアクタに光子エネルギー入力を提供するためにある種の光源を組み込んだバイオリアクタである。光バイオリアクタは、光栄養液体細胞懸濁培養物の制御されたバイオマス生産のために設計された閉鎖型の照明付き培養容器として説明することができる。光バイオリアクタの例には、例えばガラス容器、プラスチックチューブ、半透明タンク、プラスチックスリーブ、およびプラスチックバッグが含まれる。光合成を維持するのに必要なエネルギーを提供するために使用できる光源の例には、例えば蛍光電球、LED、および自然太陽光が含まれる。
【0033】
特定の態様では、藻類を光の非存在下で従属栄養的に増殖させ、この場合は光バイオリアクタではないバイオリアクタを使用し得る。一態様では、バイオリアクタは、光をバイオリアクタの内部に入らせない不透明材料、例えばステンレス鋼から作られる。別の態様では、バイオリアクタは、光バイオリアクタの場合のように、内部への光の通過を可能にする材料から作られるが、バイオリアクタ自体は、バイオリアクタに光が入るのを防ぐ部屋またはキャビネットなどの囲いの中に収容される。さらに別の態様では、光バイオリアクタは、光が入るのを防ぐために不透明材料で覆われている。
【0034】
光がバイオリアクタの内部に入ることが許容されるか否かにかかわらず、バイオリアクタに存在し得るいくつかの特徴がある。一態様では、バイオリアクタは、バイオリアクタの内部の滅菌を可能にする材料から構築される。滅菌のために使用し得る方法は、加熱滅菌、化学滅菌またはこの2つの組み合わせを含む。バイオリアクタはまた、任意で、バイオリアクタの内容物を所望の温度範囲内に保持することを可能にする加熱要素および冷却要素を有し得る。バイオリアクタの温度を制御するための様々な方法が当技術分野において周知である。
【0035】
さらに、バイオリアクタは、バイオリアクタに含まれる培地の酸素含量を制御するための方法を有し得る。酸素は、純粋な酸素、周囲の空気、または純粋な酸素と周囲の空気の混合物を使用して培地に導入することができる。酸素は、任意の公知の方法によって培地に導入することができる。例えば、酸素は、直接注入、撹拌、または直接注入と撹拌の組み合わせによって導入することができる。直接注入を使用する場合、酸素は気体形態、液体形態またはこれら2つの組み合わせで導入することができる。
【0036】
バイオリアクタはまた、培地のpHを調節するための手段を有し得る。培地のpHは、酸を添加することによって低下させ得るか、または塩基を添加することによって上昇させ得る。酸または塩基は、液体形態、気体形態、固体形態またはそれらの何らかの組み合わせで導入し得る。pHを制御する際に、強酸を使用してもよく、弱酸を使用してもよく、強塩基を使用してもよく、弱塩基を使用してもよく、またはそれらの任意の組み合わせを使用してもよい。増殖させる藻類と適合性のある任意の酸または塩基を使用することができる。一態様では、pHは氷酢酸の添加によって制御される。酢酸は、藻類のエネルギー源および炭素源として働くことができる酢酸塩に変換され得るため、有用である。一態様では、培地のpHは、約6.0~約10.0、約6.0~約9.0、約6.0~約8.0、または約6.0~約7.0に維持される。他の態様では、培地のpHは、約6.4~7.2、約6.45~約7.15、約6.5~約7.1、約6.55~約7.05、約6.6~約7.0、約6.65~6.95、約6.7~約6.9、または約6.75~約6.85のpHに維持される。一態様では、培地のpHは、pH6.5±0.1、pH6.8±0.1またはpH7.0±0.1に維持される。
【0037】
一態様では、藻類は、例えば小規模実験室培養系で増殖させることができる。小規模実験室系は、約6リットル未満の容量の培養物を指す。一局面では、小規模実験室培養物は、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、または5リットルであり得る。本発明の別の局面では、小規模実験室培養物は1リットル未満であり得る。一局面では、小規模実験室培養物は100ミリリットル以下であり得る。
【0038】
当業者には明らかなように、培養物の容量は所望する藻類バイオマスの量に依存する。容量は、当業者に利用可能なバイオリアクタのサイズによってのみ制限される。一態様では、バイオリアクタは、約5リットルを超える、または約10リットルを超える、または約20リットルを超える容量のものであり得る。大規模増殖はまた、50リットル以上、100リットル以上、200リットル以上、300リットル以上、400リットル以上、500リットル以上、600リットル以上、700リットル以上、800リットル以上、900リットル以上、1000リットル以上、2000リットル以上、3000リットル以上、4000リットル以上、5000リットル以上、6000リットル以上、7000リットル以上、8000リットル以上、9000リットル以上、または10000リットル以上の容量の培養物の増殖であり得る。
【0039】
本開示はさらに、非常に大規模な培養系を提供する。一局面では、培養物の容量は少なくとも20,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大40,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大80,000リットル、最大100,000リットル、最大125,000リットル、最大150,000リットル、または最大175,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大200,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大250,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大500,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大600,000リットルであり得る。別の局面では、培養物の容量は最大1,000,000リットルであり得る。
【0040】
当業者には明らかなように、より大きな培養容量を使用する場合、いくつかの中間容量を介して接種材料を増殖させる必要があり得る。以下は、培養をスケールアップする方法の一般的な考察である。種々のサイズの出発培養物および種々のサイズの生産培養物に適応するように本明細書で論じる方法を修正することは、十分に当業者の能力の範囲内である。この例示的な考察の目的のために、出発材料は、所望の1種または複数種の菌株の藻類を線条接種したTAPプレートである。滅菌ループを使用して藻類をTAPプレートから取り出し、適切な培地150mLを含む滅菌バッフル付き500mL振とうフラスコに添加し、150rpmで振とうしながら室温(約20~28℃)で約5日間培養する。
【0041】
あるいは、中間培養は、ウェーブバッグ中で実施することができる。ウェーブバッグは、ガス交換(大気または導入ガスとの)、試料採取、および/または栄養補給を可能にする1つまたは複数のポートを有する滅菌プラスチックバッグである(図8参照)。ウェーブバッグのための、撹拌を含む培養条件は、振とうフラスコの場合と同様であるが、回転以外の動きを含み得る。当業者は、中間培養物のための他の適切な容器を想定することができるであろう。
【0042】
典型的には、培養は、光の非存在下で行われるが、これは必須ではない。次のスケールアップの約2日前に、汚染および藻類の適切な形態を調べるために試料を無菌的に得る。5日間の培養後、フラスコの乾燥細胞重量(DCW)は、典型的には1.0~3.0g/Lである。DCWを決定するための方法は、本明細書中で提供される。次いで、500mLフラスコの内容物の約20%(この場合は120mL)を、培地約1050mLを含む滅菌バッフル付き3L振とうフラスコに添加して、約1200mLの最終容量または1:10希釈にする。1200mL培養物を、形態および汚染のチェックを含む150mL培養物と同じ方法で培養する。振とうフラスコ法を、生産バイオリアクタで使用される容量の少なくとも10%の培養物が得られるまで続ける。
【0043】
十分な量の藻類が振とうフラスコ中で増殖すれば、その藻類をバイオリアクタに接種するために使用することができる。本開示の目的のために、バイオリアクタ培養は、バイオリアクタ培養では培養物が濃縮培地の添加によってフィードされるという点で、振とうフラスコ培養と区別される。バイオリアクタに、バイオリアクタ内の培地の初期容量の約10%を超えない容量の培養物を接種する。バイオリアクタの接種に使用される藻類の濃度は、約0.1g/L~約15g/L乾燥細胞重量(DCW)であるべきである。特定の態様では、移される藻類の濃度は、約0.1g/L~約10g/L、約0.1g/L~約5g/L、約0.1g/L~約4g/L、約0.1g/L~約3g/L、約0.1g/L~約2g/L、約0.1g/L~約1g/L、約0.1g/L~約0.9g/L、約0.1g/L~約0.8g/L、約0.1g/L~約0.7g/L、約0.1g/L~約0.6g/L、約0.1g/L~約0.5g/L、約0.1g/L~約0.4g/L、約0.1g/L~約0.3g/L、および約0.1g/L~約0.2g/Lである。一態様では、バイオリアクタに接種するのに使用される藻類の濃度を計算するために以下の式が使用される:
式中、Cinは接種材料の濃度、Vbrはバイオリアクタ内の初期容量培地、およびCbrは接種直後のバイオリアクタ内の藻類の初期濃度である。
【0044】
バイオリアクタ内で藻類を増殖させるのに使用される培地(発酵培地)は、バイオリアクタ内で増殖させる藻類の1種または複数種の菌株の従属栄養培養に適した任意の培地であり得る。一態様では、発酵培地の組成は表1に示すものである。
【0045】
(表1)発酵培地A
【0046】
微量要素溶液の組成を表2に示す。
【0047】
(表2)微量要素溶液A
【0048】
発酵培地および微量要素溶液は、バイオリアクタ内の藻類培養物が他の生物による汚染を受けないようにするための滅菌溶液である。発酵培地は、表1、表4および表7に示すように使用され得るか、またはより濃縮された形態で使用され得る。特定の態様では、発酵培地は、表1、表4および表7の発酵培地の濃度の2倍、3倍、4倍または5倍の濃度で使用される。
【0049】
バイオリアクタ内の培養物の温度は、約15℃~約26℃または約26℃~約37℃の温度に維持される。別の態様では、温度は約26.5℃~約29.5℃に維持される。さらに他の態様では、温度は約27℃~約29℃または約27.5℃~約28.5℃に維持される。1つの特定の態様では、バイオリアクタ内容物の温度は約28℃に維持される。
【0050】
バイオリアクタ内での発酵の間、培地中の酸素の飽和度は約5%~100%に維持される。他の態様では、酸素の飽和度は、約5%~約90%、約5%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、または約5%~約50%に維持される。他の態様では、酸素の飽和度は、約5%~約55%、約10%~約50%、約15%~約45%、約20%~約40%、または約25%~約35%に維持される。別の態様では、培地中の酸素の飽和度は30%±2.5%に維持される。培地中の酸素の飽和度は、本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の方法のいずれかを用いて維持される。
【0051】
発酵(培養)中に酸素の飽和度が変化することが許容される範囲は、一部には、バイオリアクタの形状、特に酸素を導入するその能力に依存する。典型的には、操作者は、設定点および関連する上限と下限の範囲を定める。設定点は5%~100%であり得る。許容される範囲は、本明細書で提供される範囲のうちのいずれか内であり得る。
【0052】
本発明の方法の特徴は、藻類が、培養培地の50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、110倍または120倍の濃度のフィード培地を用いて発酵中にフィードされることである。典型的には、フィード培地は、従属栄養条件下で高い増殖率を支持するために炭素源を補充される。したがって、一態様では、フィード培地は、炭素源として氷酢酸を補充した、本明細書で提供される発酵培地の100倍濃度である。1つの特定のフィード培地の組成を表3に示す。
【0053】
(表3)フィード培地A
【0054】
培養物のフィードはpHの変化によって開始される。培養物がそのエネルギー需要を満たすために酢酸塩を使用するにつれて、培地中の酢酸の量は減少し、その結果、培地のpHが上昇する。このpHの上昇を利用して、pHを所望の設定点に回復させるためのフィード培地の添加が開始される。この方法を用いることによって、これまでの培養系によって達成されていたよりも迅速な増殖およびより高い培養密度の実現が可能になる。フィードは、pH設定点ならびにその付近でフィード培地の添加が開始されるおよび停止される範囲を決定する操作者によって決定される。pHがある値だけ設定点を超えたときにフィード培地の添加が始まり、pHが選択した値だけ設定点を下回ったときに停止する。当業者には理解されるように、正確な設定点および範囲は、増殖させる藻類の特定の種に依存する。クラミドモナス種の場合、pHの範囲は、pH5.5を下回ってはならず、またはpH10を超えてはならない。pHの設定点は、典型的には±1.0pH単位の範囲で6.5~7.5の範囲内である。当業者は、pHが低下することが許容されるよりも大きな程度まで上昇することが許容され得るように、pH範囲が対称的ではない可能性があることを理解するであろう。例えば、pHが設定点を0.5pH単位だけ超えたときにフィードが開始され得るが、pHが設定点を0.2pH単位だけ下回ったときに停止され得る。
【0055】
1つのバイオリアクタの生産物を、別のバイオリアクタに接種するために使用し得ることは当業者に理解されるであろう。非常に大きなバイオリアクタを使用する状況では、接種材料をフラスコまたはウェーブバッグ内だけで増殖させることは実現不可能である。この場合、最終生産バイオリアクタに接種するのに必要な量の接種材料を生産するために、より小さなバイオリアクタを使用する。
【0056】
別の態様では、発酵培地の組成は表4に示すものである。
【0057】
(表4)発酵培地B
【0058】
別の態様では、微量要素の組成は表5に示される。
【0059】
(表5)微量要素溶液B
【0060】
別の態様では、フィード培地の組成は表6に示すものである。
【0061】
(表6)フィード培地B
【0062】
別の態様では、発酵培地の組成は表7に示すものである。
【0063】
(表7)発酵培地C
【0064】
別の態様では、微量要素の組成は表8に示される。
【0065】
(表8)微量要素溶液C
【0066】
別の態様では、フィード培地の組成は表9に示すものである。
【0067】
(表9)フィード培地C
【0068】
発酵培地および微量要素溶液は、バイオリアクタ内の藻類培養物が他の生物による汚染を受けないようにするための滅菌溶液である。発酵培地は、本明細書の表に示すように使用してもよく(1倍濃度)、またはより濃縮された形態で使用してもよい。特定の態様では、発酵培地は、表に示す発酵培地の濃度の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、または8倍の濃度で使用される。フィード培地は、本明細書の表に示すように(1倍濃度)、またはより濃縮された形態で使用してもよい。特定の態様では、フィード培地は、表のフィード培地の2倍、3倍、4倍、または5倍の濃度で使用される。好ましくは、同じ名称を有する培地または溶液を一緒に使用し、例えば発酵培地Aを微量要素溶液Aおよびフィード培地Aと共に使用する。
【0069】
本明細書に記載の方法の使用は、非常に高密度の藻類培養物の生産を可能にする。したがって、本開示は、定常状態条件下で少なくとも50g/L乾燥細胞重量の藻類濃度を有する藻類培養物を提供する。他の態様では、少なくとも55g/L乾燥細胞重量、少なくとも60g/L乾燥細胞重量、少なくとも65g/L乾燥細胞重量、少なくとも70g/L乾燥細胞重量、少なくとも75g/L乾燥細胞重量、少なくとも80g/L乾燥細胞重量、少なくとも85g/L乾燥細胞重量、少なくとも90g/L乾燥細胞重量、少なくとも95g/L乾燥細胞重量、少なくとも100g/L乾燥細胞重量、少なくとも105g/L乾燥細胞重量、少なくとも110g/L乾燥細胞重量、少なくとも115g/L乾燥細胞重量、少なくとも120g/L乾燥細胞重量、または少なくとも125g/L乾燥細胞重量、少なくとも150g/L乾物細胞重量、少なくとも175g/L乾燥細胞重量または少なくとも200g/L乾燥細胞重量の定常状態濃度を有する藻類培養物が提供される。特定の態様では、培養物はクラミドモナス種の培養物である。特定の態様では、培養物はコナミドリムシの培養物である。当技術分野で公知のように、生物の質量または濃度対時間のプロットは、典型的にはS字形曲線をもたらす。定常状態は、S字形増殖曲線の変曲点に続く比較的緩やかな増殖の期間である。本開示の目的のために、藻類の培養物は、藻類の濃度が24時間以内に約0.1%~約10%増加しているときに定常状態条件下にあると見なされる。他の態様では、定常状態とは、培養物中の藻類の濃度が約0.1%~50%、約0.1%~25%、約0.1%~7%、約0.1%~約5%、0.1%~3%、または0.1%~2%増加している状況を指す。培養物の濃度が減少しているときは、培養物は定常状態にあるとは見なされない。
【0070】
培養物が所望の濃度に達すると、培養物を他のバイオリアクタ内で増殖させるか、または回収するか、またはその両方を行うことができる。さらなるバイオリアクタ内で増殖させる場合、接種手順は本明細書に記載されているものと同じである。追加のバイオリアクタは、接種材料が得られるバイオリアクタと同じサイズでもよく、またより大きいかもしくはより小さくてもよい。増殖および/または回収が連続式、バッチ式または半バッチ式であり得ることは当業者には明らかであろう。バッチ方式では、培養物全体を回収するかまたは増殖に使用する。連続方式では、少量の培養物を回収または増殖のために連続的に取り出し、同時に少量の培地を添加して取り出した培地と交換する。半バッチ式はバッチ式と連続式の間である。半バッチ式では、培養物の全部ではなく一部を増殖または回収のために一定の間隔で取り出す。連続方式と同様に、半バッチ式では対応する量の培地を添加して取り出した培地と交換する。
【0071】
特定の態様では、バイオリアクタ内の材料の一部または全部を回収し得る。一態様では、培養物が所望の増殖段階、例えば対数増殖期または定常増殖期に達すると、材料の全部をバイオリアクタから回収する。別の態様では、藻類の増殖または定常状態の培養物から連続的に回収を実施し得る。一局面では、藻類の取り出しは、培養物を対数増殖期に維持する。別の局面では、藻類の取り出しは、培養物を定常期に維持する。微細藻類の増殖率および増殖期の決定は、当技術分野において公知である。例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Sode et al., J. Biotechnology(1991)21:209-217, Torzillo et al., J. Phycology(1998)34:504-510, Jung and Lee, Biotechnology Progress(2006)22:1443-1450、およびVonshak, A. Spirulina Platensis Arthrospira:Physiology, Cell-Biology And Biotechnology. 1997. CRC Pressにおいて。
【0072】
バイオリアクタから藻類含有培地の一部または全部を取り出した後、藻類を培地から分離すること(脱水)が望ましい場合がある。一態様では、回収は、液体が枯渇した微細藻類を生産するために少なくとも90%の微細藻類を培地から分離することを含む。別の態様では、少なくとも95%の微細藻類を培地から取り出す。別の態様では、少なくとも97%の微細藻類を培地から取り出す。別の態様では、少なくとも99%の微細藻類を培地から取り出す。他の態様では、50%以上の微細藻類を取り出す。別の態様では、75%以上の微細藻類を培地から取り出す。さらに別の態様では、80%以上の微細藻類を培地から取り出す。さらに別の態様では、培地は、回収後に残存する30%未満の微細藻類を有し得る。さらなる態様では、回収後に25%未満の微細藻類が培地中に残存する。さらなる態様では、回収後に5%未満の微細藻類が培地中に残存する。さらなる態様では、回収後に2.5%未満の微細藻類が培地中に残存する。一態様では、回収後に1%未満の微細藻類が培地中に残存する。
【0073】
液体からの微細藻類の分離は、当業者に公知の方法によって達成し得る。一態様では、微細藻類を重力で沈降させ、上を覆っている液体を除去し得る。別の態様では、微細藻類含有培養物の遠心分離によって微細藻類を回収し得る。一態様では、液体培養物の遠心分離は、固定容量遠心分離機を使用してバッチ方式で実施し得る。異なる態様では、微細藻類のバッチ回収は、連続流遠心分離機を使用して達成し得る。別の態様では、微細藻類は、連続流遠心分離によって増殖中の培養物から連続的に回収し得る。他の態様では、脱水は、ろ過、例えばタンジェンシャルフローろ過によって達成し得る。ろ過は、バッチ方式または連続回収方式のいずれでも実施し得る。他の態様では、脱水は、電解凝固および電解凝集などの電気泳動技術によって達成し得る。さらに他の態様では、脱水は、凝集によって達成し得る。凝集は、合成または天然の凝集剤を用いた化学的凝集によって、または自己凝集によって達成し得る。凝集を誘導する方法には、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,969,066号および米国特許出願公開第2015/0284673号(出願番号第14/649524号)に見出される方法が含まれる。凝集物は、重力、遠心分離、溶存空気浮選(DAF)、または当業者に公知の他の任意の方法によって培養液から分離し得る。化学的凝集を使用する場合、場合によっては食品グレードの凝集剤を利用するのが望ましいことがある。食品グレードの凝集剤は様々な供給元から市販されている。
【0074】
脱水後、回収された藻類は、まだかなりの量の液体を含んでいる可能性がある。長期保存を容易にするために、乾燥によってさらなる液体を除去することが望ましい場合がある。いくつかの態様では、得られる材料が少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%乾燥細胞重量になるように藻類バイオマスを乾燥させる。他の態様では、得られる材料が25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満の水分を含むように藻類を乾燥させる。藻類バイオマスの乾燥は、当技術分野において公知の任意の手段によって達成し得る。例示的な乾燥方法としては、噴霧乾燥、リング乾燥、パドル乾燥、トレイ乾燥、または天日乾燥もしくは太陽乾燥、真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。
【0075】
乾燥されると、藻類は、人間が消費するためまたは動物飼料として使用するための栄養補助食品または添加物としての使用に適し得る。したがって、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のクラミドモナス種および約80%±5%または90%±5%乾燥細胞重量を含む栄養補助食品または飼料添加物が本明細書で提供され、栄養補助食品または飼料添加物はまた、約50%±5%を超える粗タンパク質、約10%±5%の粗脂肪、および5%未満の灰分も有する。いくつかの態様では、栄養補助食品または添加物はまた、少なくとも0.4%(w/w)、少なくとも0.5%(w/w)、少なくとも0.75%(w/w)、少なくとも1.0%(w/w)、または少なくとも1.25%(w/w)のオメガ3脂肪酸も含む。他の態様では、栄養補助食品または添加物は、少なくとも0.25%(w/w)、少なくとも0.75%、少なくとも1.25%、少なくとも1.5%または少なくとも1.75%のオメガ6脂肪酸を含む。さらに他の態様では、栄養補助食品または添加物は、少なくとも1.25%(w/w)、少なくとも1.75%、少なくとも2.25%または少なくとも2.75%のオメガ9脂肪酸を含む。栄養補助食品または添加物は、表10の基準によって決定されるように微生物汚染がないとさらに特徴付けられる。
【0076】
(表10)
【0077】
本明細書に開示される方法はそのような高密度培養物を提供するので、この方法は、治療的価値のあるタンパク質を産生するように遺伝的に改変されている藻類の生産に使用し得る。いくつかの態様では、治療用タンパク質は、天然に存在するタンパク質である。他の態様では、治療用タンパク質は、外因性タンパク質である。本明細書に記載の外因性核酸、ヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、宿主生物と関連付けて定義される。外因性核酸、ヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、宿主生物において天然には存在しないもの、または宿主生物において異なる位置に存在するものである。
【0078】
治療用タンパク質は、疾患または障害の治療または予防のために使用される。治療用タンパク質は、哺乳動物タンパク質、例えばヒトタンパク質であり得る。治療用タンパク質は、動物医療またはヒト医療に使用することができる。治療用タンパク質は、伴侶動物、家畜、エキゾチック動物、野生生物および生産動物を治療するために使用することができる。治療用タンパク質は、例えば細胞シグナル伝達およびシグナル伝達に関与し得る。
【0079】
治療用タンパク質の例は、抗体、膜貫通タンパク質、増殖因子、酵素、免疫調節タンパク質、または構造タンパク質である。治療用タンパク質は、動物もしくはヒトにおいて見出されるタンパク質、または動物もしくはヒトにおいて見出されるタンパク質の誘導体であり得る。治療用タンパク質を生産するための藻類の使用の例は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2003)100:438-42;Curr. Opin. Plant Biol.(2004)7:159-65;Vaccine(2005)23:1828-32;Curr. Opin. Biotechnol.(2007)18:1-8;Expert Opin. Biol. Ther.(2005)5:225-35;Biotechnol. Lett.(2010)32:1373-83;および国際特許出願公開第2001/063,284号に見出すことができる。
【0080】
関心対象の治療用タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、天然に存在する配列もしくは野生型配列であり得るか、または修飾された配列であり得る。修飾の種類には、少なくとも1つの核酸の欠失、少なくとも1つの核酸の付加、または少なくとも1つの核酸の置換が含まれる。当業者は、ヌクレオチド配列に修飾を加える方法を理解している。
【0081】
ヌクレオチド配列に加えることができる1つの特定の種類の修飾はコドン最適化である。当技術分野で公知のように、コードポリヌクレオチドの1つまたは複数のコドンは、宿主生物のコドン使用頻度を反映するように「偏らせる」または「最適化する」ことができる。例えば、コードポリヌクレオチドの1つまたは複数のコドンを、葉緑体コドン使用頻度または核コドン使用頻度を反映するように「偏らせる」または「最適化する」ことができる。ほとんどのアミノ酸は、2つまたは複数の異なる(縮重)コドンによってコードされており、様々な生物が特定のコドンを他のコドンに優先して利用することは、広く認識されている。「偏った」またはコドン「最適化された」は、本明細書を通して互換的に使用することができる。コドンの偏りは、タバコと比較して、例えば藻類を含む種々の植物において様々に作製することができる。一般に、選択されたコドンバイアスは、核酸で形質転換されている生物(またはその中の細胞小器官)のコドン使用頻度を反映する。特定のコドン使用頻度に偏っているポリヌクレオチドは、デノボ合成することができるか、または、例えば部位指定突然変異誘発法によって通常の組換えDNA技術を用いて遺伝的に修飾して、葉緑体コドン使用頻度に偏るように1つまたは複数のコドンを変化させることができる。葉緑体において利用されるそのような優先的コドン使用頻度は、本明細書では「葉緑体コドン使用頻度」と称する。コナミドリムシの葉緑体および核コドン使用頻度の使用例は、当技術分野において、例えば米国特許出願公開第2004/0014174号および国際特許公開第2011/063,284号に見出すことができる。
【0082】
藻類における治療用タンパク質の発現は、発現ベクターの使用によって達成される。発現ベクターは、特定の部位に挿入されたコード配列が転写されてタンパク質に翻訳されるように設計されたベクターである。発現ベクター、またはその線状化部分は、関心対象の治療用タンパク質をコードする1つまたは複数の外因性ヌクレオチド配列を含み得る。宿主に形質転換することができる外因性ヌクレオチド配列の例には、哺乳動物タンパク質をコードする核酸配列が含まれる。場合によっては、外因性配列は、形質転換されるべき宿主生物に含まれる配列と相同性を有する2つの配列によって隣接される。
【0083】
相同配列は、例えば、参照アミノ酸配列またはヌクレオチド配列、例えばタンパク質が天然に得られるかまたはそれに由来する、宿主細胞に見出されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列である。相同配列は、形質転換されるべき宿主藻類の核または色素体ゲノムへの外因性配列の組換えを可能にする。いくつかの態様では、発現ベクターは、プロモータおよび/または転写ターミネータなどの1つまたは複数の制御エレメントに機能的に連結されたポリヌクレオチドを含む。核酸配列は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、機能的に連結されている。例えば、プレ配列または分泌リーダについてのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドについてのDNAに機能的に連結されており、プロモータが配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモータはコード配列に機能的に連結されており、またはリボソーム結合部位が翻訳を容易にするように配置されている場合、リボソーム結合部位はコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結された配列は隣接しており、分泌リーダの場合には、隣接して読み枠内にある。連結は、制限酵素部位での連結によって達成される。適切な制限部位が利用できない場合は、当業者に公知のように、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーを使用することができる。Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2ndEd., Cold Spring Harbor Press,(1989)およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, 2ndEd., John Wiley&Sons(1992)。
【0084】
調節または制御エレメントは、この用語が本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドの転写もしくは翻訳またはそれが機能的に連結されているポリペプチドの局在化を調節するヌクレオチド配列を広く指す。例としては、RBS、プロモータ、エンハンサー、転写ターミネータ、ヘアピン構造、RNAアーゼ安定性エレメント、開始(出発)コドン、イントロン切除および正しい読み枠の維持のためのスプライシングシグナル、終止コドン、アンバーまたはオーカーコドン、ならびにIRESが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。調節エレメントは、プロモータならびに転写および翻訳終結シグナルを含み得る。制御配列と、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード領域との連結を容易にする特定の制限部位を導入する目的で、エレメントはリンカーと共に提供され得る。さらに、細胞区画化シグナルを含む配列(すなわちポリペプチドを細胞質ゾル、核、葉緑体膜または細胞膜に標的化する配列)を、関心対象のタンパク質をコードするポリヌクレオチドに結合することができる。そのようなシグナルは、当技術分野において周知であり、広く報告されている。
【0085】
発現ベクターにおいて、関心対象のヌクレオチド配列は、mRNA合成を指令するために宿主細胞によって認識されるプロモータに機能的に連結されている。プロモータは、それらの制御下で核酸配列の転写および翻訳を調節する構造遺伝子の開始コドンから一般に100~1000塩基対(bp)上流に位置する非翻訳配列である。プロモータは、構成的プロモータまたは誘導性プロモータであり得る。誘導性プロモータは、環境の何らかの変化、例えば栄養素の有無または温度の変化に応答してそれらの制御下でDNAからの転写レベルの増加を開始させるプロモータである。これに対し、構成的プロモータは、比較的一定なレベルの転写を維持する。
【0086】
形質転換される藻類に対して内因性のプロモータ、ならびに形質転換される藻類に対して内因性ではないプロモータ(すなわち他の藻類由来のプロモータ、高等植物由来のプロモータ、および植物ウイルスまたは藻類ウイルス由来のプロモータ)を含む多くのプロモータが藻類において活性である。藻類において活性である外因性および/または内因性のプロモータ、ならびに藻類において機能性の抗生物質耐性遺伝子としては、例えば、Curr. Microbiol.(1997)35(6):356-62(クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris));Marine Biotechnol.(NY).(2002)4(I):63-73(クロレラ・エリプソイデア(Chlorella ellipsoidea));Mol. Gen. Genet.(1996)252(5):572-9(ファエオダクチルム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)); Plant Mol. Biol.(1996)31(1):1-12(ボルボックス・カルテリ(Volvox carteri));Proc. Natl. Acad. Sci. USA.(1994)91(24):11562-6(ボルボックス・カルテリ);Falciatore A, Casotti R, Leblanc C, Abrescia C, Bowler C, PMID:10383998,(1999)1(3):239-251(Laboratory of Molecular Plant Biology, Stazione Zoologica, Villa Comunale, 1-80121 Naples, Italy)(ファエオダクチルム・トリコルヌツムおよびタラシオシラ・ワイスフロッギー(Thalassiosira weissflogii));Plant Physiol.(2002)129(1):7-12 (ポルフィリディウム種(Porphyridium sp.));Proc. Natl. Acad. Sci. USA,(2003)100(2):438-42.(コナミドリムシ);Proc. Natl. Acad. Sci. USA.(1990)87(3):1228-32.(コナミドリムシ);Nucleic Acids Res.(1992)20(12):2959-65;Marine Biotechnol.(NY).(2002)4(1):63-73(クロレラ属(Chlorella));Biochem. Mol. Biol. Int.(1995)36(5):1025-35(コナミドリムシ);J. Microbiol.(2005)43(4):361-5(ドナリエラ属(Dunaliella));Marine Biotechnoi.(NY)(1999)1(3):239-251.(タラシオシラ属(Thalassiosira)およびファエオダクチルム属(Phaedactylum));Appl. Microbiol. Biotechnol.(2002)58(2):123-37(様々な種);Mol. Genet. Genomics(2004)271(1):50-9(サーモシネココッカス・エロンガテス(Thermo synechococcus elongates));J. Bacteriol.(2000), 182, 211-215;FEMS Microbiol. Lett.(2003)221(2):155-9;Plant Physiol.(1994)105(2):635-41; Plant Mol. Biol.(1995)29(5):897-907(シネコッカス属(Synechococcus)PCC 7942);Marine Pollut. Bull.(2002)45(1-12):163-7(アナベナ属(Anabaena)PCC 7120);Proc. Natl. Acad. Sci. USA.(1984)81(5):1561-5(アナベナ属(様々な菌株));Proc. Natl. Acad. Sci. USA.(2001)98(7):4243-8(シネコシスティス属(Synechocystis));Mol. Gen. Genet.(1989)216(1):175-7(様々な種);Mol. Microbiol.(2002)44(6):1517-31; Plasmid(1993)30(2):90-105(フレミエラ・ジプロシフォン(Fremyella diplosiphon));Gene(1993)124:75-81(コナミドリムシ);Current Micro.(1991)22:15-20;Current Genet.(1991)19:317-322(クロレラ属)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。さらなるプロモータは、米国特許第6,027,900号の表1に見出すことができる。
【0087】
治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは組換え核酸分子は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて藻類細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当技術分野において周知であり、一部には、特定の宿主細胞に基づいて選択される様々な方法によって細胞に導入することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、エレクトロポレーションまたはパーティクルガンを使用するマイクロプロジェクタイル媒介(バイオリスティック)形質転換、または「ガラスビーズ法」またはリポソーム媒介形質転換などの直接遺伝子導入法を使用して細胞に導入することができる。
【0088】
マイクロプロジェクタイル媒介形質変換は、塩化カルシウム、スペルミジンまたはポリエチレングリコールを用いた沈殿によって所望のポリヌクレオチドで被覆した金またはタングステンなどのマイクロプロジェクタイルを利用する。マイクロプロジェクタイル粒子は、BIOLISTIC PD-1000パーティクルガン(BioRad;Hercules Calif.)などの装置を用いて細胞内に高速で加速注入される。バイオリスティック法を用いた形質転換の方法は、当技術分野において周知である(例えばChristou, Trends in Plant Science(1996)1:423-431に記載されているように)。藻類の形質転換のための例示的な方法は、国際特許出願公開第2011/034,863号および同第2011/063,284号、ならびにBiosci. Biotechnol. Biochem.(2014)78:812-7;J. Biosci. Bioeng.(2013)115:691-4;Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2011)108:21265-9;Plant Physiol.(2002)129:7-12;Adv. Expl. Med. Biol.(2007)616:1-9;Molec. Biotechnol.(2005)30:185-91;Science(1988)240:1534-38;Folia Microbiol.(2000)45:496-504;Plant Physiol.(2002)129:7-12; Molec. Gen. Genetics(2000)263:404-10;J. Biosci. Bioeng.(1999)87:307-14;Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990)87:2087-90;Plant Cell(1989)1:123-32;Plant Biotechnol. J.(2007)5:402-12;およびJ. Biotechnol.(2013)163:61-8に見出すことができる。
【0089】
治療用タンパク質は、核または葉緑体において発現され得る。核形質転換を利用する場合、関心対象のDNAコード配列が、コードされたタンパク質の植物色素体への輸送を促進することができる任意の利用可能な輸送ペプチド配列に融合されている植物細胞核形質転換構築物を使用し、適切なプロモータを用いて発現を駆動することによって、タンパク質を色素体標的化のために修飾することができる。タンパク質の標的化は、色素体、例えば葉緑体の輸送ペプチド配列をコードするDNAを、タンパク質をコードするDNAの5'末端に融合することによって達成することができる。輸送ペプチド領域をコードする配列は、例えばリブロースビスホスフェートカルボキシラーゼの小サブユニット(SSU)、EPSPシンターゼ、脂肪アシル-ACPチオエステラーゼ、アシルキャリアタンパク質(ACP)、ステアロイル-ACPデサチュラーゼ、β-ケトアシルシンターゼおよびアシル-ACPチオエステラーゼを含む植物脂肪酸生合成関連遺伝子、またはLHCPII遺伝子等のような植物核コード色素体タンパク質から得ることができる。色素体輸送ペプチド配列はまた、GGPPシンターゼ、フィトエンシンターゼ、およびフィトエンデサチュラーゼなどのカロテノイド生合成酵素をコードする核酸配列からも得ることができる。他の輸送ペプチド配列は、Plant Mol. Biol. Rep.(1991)9:104;J. Biol. Chem. 1989 264:17544;Plant Physiol.(1987)84:965;Biochem. Biophys. Res. Commun.(1993)196:1414;およびScience(1986)233:478に開示されている。別の輸送ペプチド配列は、クラミドモナス由来の無傷のACCアーゼの配列である(genbank ED096563、アミノ酸1~33)。色素体への輸送に有効な輸送ペプチドのコード配列は、特定の輸送ペプチドのコード配列の全部または一部を含むことができ、特定の輸送ペプチドに関連する成熟タンパク質コード配列の一部も含み得る。標的タンパク質を色素体に送達するために使用できる輸送ペプチドの数多くの例が存在し、本開示において有用な特定の輸送ペプチドコード配列は、色素体内への送達が得られる限り重要ではない。色素体内のタンパク質分解プロセシングは、その後成熟タンパク質を生成する。
【0090】
治療用タンパク質が発現されると、それを対象に投与し得る。特定の態様では、治療用タンパク質は、藻類を消費する対象に投与される。他の態様では、治療用タンパク質は、投与前に藻類から精製または単離される。タンパク質の精製または単離のためにいくつかの方法が利用可能であり、それらは当業者に公知である。これらには、例えば硫酸アンモニウムによる沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、レクチンクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、天然または変性条件下での電気泳動、等電点電気泳動、および免疫沈降が含まれる。
【0091】
当業者には理解されるように、正確な投与経路は、使用される特定の治療用タンパク質、治療されるべき状態、および治療されるべき対象などの因子に依存して異なる。例示的な投与方法としては、経口、経腸、粘膜、経皮、または非経口が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。投与方法の例には、経口、鼻腔内、気管内、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、動脈内、胸骨内、病巣内、局所、経皮、吸入、およびイオン導入が含まれる。当業者は、本明細書に記載のもののような一般的に公知の因子に基づいて最も適切な投与経路を容易に決定することができる。
【実施例
【0092】
以下の実施例は、本発明の適用の説明を提供することを意図する。以下の実施例は、本発明の範囲を完全に定義するまたは他の方法で限定することを意図しない。
【0093】
実施例1. 培地およびフィードの調製
特に明記しない限り、全ての培地および培養材料は、滅菌されている。以下の実施例の目的のために、滅菌とは、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)芽胞の少なくともlog16の減少として定義される。また、特に明記しない限り、使用される全ての材料は、人間による消費に適する(食品グレード)。
【0094】
微量要素(TE) 溶液TE溶液をTE(表11)およびTE(表12)と称する2つの別々の溶液として調製し、次いでこれらを等しい割合で混合する。TEAは透明な橙色の溶液であり、TEBは透明な青色の溶液である。合わせると、得られる溶液(TE)は透明で緑色である。全ての溶液は、滅菌脱イオン水に固体試薬を添加することによって調製される。試薬は、表11および表12に列挙する順序で溶液に添加するべきである。
【0095】
(表11)TEA
【0096】
(表12)TEB
【0097】
最終的なTE溶液を調製するために、等容量のTEおよびTE溶液を一緒に混合する。全工程のバイオバーデンを低減するために、得られた溶液を、0.22μmの細孔径を有する膜を通して滅菌ろ過する。TE溶液の最終組成は、表2に示されている。未使用のTE溶液は、2℃~8℃の不透明な容器に保存する。
【0098】
培地の配合 2つのフラスコ段階、シード発酵、および生産発酵のための培地(発酵培地)は、微量要素の溶液が添加されている塩の単純な配合物である(表2)。培地のpHを、98%氷酢酸の原液を用いて約pH=6.0に調整する。酢酸を添加する前の培地のpHは、約10.5である。培地をオートクレーブ滅菌する。この実施例では、培地の組成は、表1に示されている。FOAM BLAST(登録商標)F111-GF消泡剤は、フラスコ増殖に使用する場合、典型的には培地に添加されない任意成分である。
【0099】
シード発酵および生産発酵のためのフィード(フィード培地)は、一次炭素源として酢酸を大量に添加した表1の発酵培地の濃縮版(100倍)である。酢酸の蒸発による損失を軽減するために、オートクレーブによるのではなく、0.22μm細孔径のメンブレンフィルタを通すろ過によってフィードを滅菌する。フィードの組成は、表3に示されている。
【0100】
実施例2. フラスコ細胞大量増殖
以下の手順は、総作業容量1,200mLの1つの第II段階フラスコをもたらす、総作業容量150mLの1つの第I段階フラスコの作製を詳述する。シード発酵槽接種要件を満たすために必要に応じてより多くのフラスコを調製し得る。フラスコ要件の一般的なガイドラインは、シード発酵槽中の9リットルの培地容量ごとに1リットルの第II段階フラスコブロスである。最初のフラスコ接種材料は、線条接種したTAPプレートから、または1mLのクライオバイアル(クライオバレット)のいずれかから調達し得る。
【0101】
第I段階. フラスコ細胞大量増殖の第I段階を開始するために、滅菌発酵培地150mLを、生物学的安全キャビネット内で通気口付き蓋を有する滅菌バッフル付き500mL振とうフラスコに添加する。プレートからの接種の場合は、所望の菌株のコナミドリムシを線条接種した適切なTAPプレートを入手し、生物学的安全キャビネット内で、滅菌ループを用いて4cmの線条を採取し、続いて調製した第I段階フラスコに接種するために使用する。
【0102】
クライオバレットを使用する場合、これは、典型的には総第I段階増殖時間に192~240時間を追加する。所望の数のクライオバレットを-80℃の冷凍庫から取り出し、直ちに周囲温度で水の入った500mLビーカーに入れて解凍する。典型的には、発酵培地50mLにつき2つのクライオバレットを使用する。クライオバレットを入れたビーカーを速やかに約35℃の水浴に入れて、クライオバレット中の材料を解凍する。クライオバレット中の材料が解凍したら、クライオブレットを穏やかに振とうして全ての材料を確実に液化させる。解凍したら、クライオバレットに70%エタノールを噴霧および/または塗布し、クライオバレットの内容物を、滅菌発酵培地150mLを含む滅菌バッフル付き500mL振とうフラスコに移す。クライオバレットの内容物を振とうフラスコに移した後、振とうフラスコを1時間静置する。1時間の待機時間が経過した後、振とうフラスコを、露光量を減らすための物質、例えばKIMWIPE(登録商標)で包み、振とうフラスコを約100~約500マイクロアインシュタインの適切な光源下に周囲温度(約25℃)および150RPMでオービタルシェーカーに移す。振とう台上で4日後、露光量を制限する物質を取り除き、典型的には手順の開始から10日後までに、緑色が観察されるまでフラスコをインキュベートする。
【0103】
次に接種した第I段階フラスコを蓋からアルミホイルまたは他の何らかの不透明材料で包み、回転直径1.9cmおよび周囲温度(典型的には約25℃)で150RPMに設定したオービタルシェーカー上に置く。接種した第I段階フラスコを約120時間オービタルシェーカー上に置く。第I段階フラスコがクライオバレットから開始された場合、総振とう時間は、約312~360時間(120時間プラス追加の192~240時間)となる。
【0104】
汚染のチェックとして、第II段階フラスコの接種の48時間前に、顕微鏡による目視検査のために生物学的安全キャビネット内で滅菌ピペットを用いて試料を第I段階フラスコから無菌的に取り出し、LBプレート(Luria-Bertaniプレート、“Molecular Cloning, A Laboratory Manual”, Sambrook and Russell, 2001参照)に線条接種する。LBプレートは、1mLの容量で線条接種し、37℃で24時間インキュベートするべきである。120時間の第I段階増殖が経過した後、750nmでの光学密度および乾燥細胞重量濃度(DCW)の定量化のために、生物学的安全キャビネット内で滅菌ピペットを用いて1mLの試料を第I段階フラスコから無菌的に取り出す。DCWを決定するための方法は、本明細書中で提供される。第I段階フラスコの典型的な最終DCWは1.8~2.5g・L-1であるが、3.2g・L-1までの濃度は許容される。
【0105】
第II段階. 第II段階フラスコは、生物学的安全キャビネット内で滅菌発酵培地1,050mLを、通気口付き蓋を有する滅菌バッフル付き3,000mL振とうフラスコに添加することによって調製する。第II段階フラスコの初期作業容量は、第I段階の接種物を添加した後、1,200mLである。所望の初期第II段階作業容量の10%に等しい最終第I段階ブロスの容量(この場合は150mL)を使用して、生物学的安全キャビネット内で調製した第II段階フラスコに接種する。
【0106】
第II段階フラスコのインキュベーションは、第I段階フラスコと同様の方法で進行する。接種した第II段階フラスコを蓋からアルミニウムホイルまたは他の不透明材料で包み、回転直径1.9cm、周囲温度(典型的には約25℃)で150RPMに設定したオービタルシェーカー上に置く。接種した第I段階フラスコを約120時間オービタルシェーカー上に置く。
【0107】
汚染のチェックとして、シード発酵槽の接種の48時間前に、顕微鏡による目視検査のために生物学的安全キャビネット内で滅菌ピペットを用いて試料を第II段階フラスコから無菌的に取り出し、LBプレートに線条接種する。LBプレートは、1mLの容量で線条接種し、37℃で24時間インキュベートするべきである。第II段階フラスコの典型的な最終DCWは1.8~2.5g・L-1であるが、3.2g・L-1までの濃度は許容される。
【0108】
実施例3. シード発酵
シード発酵は、より大きな生産発酵槽に所望の初期DCW濃度を接種するために、単純な振とうフラスコで達成され得るよりもはるかに大量の細胞をより高いDCW濃度で生産するために使用される。シード発酵の目的は、検出可能な汚染物質を伴わずに144~182時間で少なくとも30~40gのDCW・L-1を生産することである。
【0109】
滅菌発酵培地は、滅菌発酵容器中で調製する。調製した培地の容量は、10%(容量で)の接種材料の添加を可能にするために、シード発酵槽の所望の出発容量の90%に等しくするべきである。第II段階フラスコ増殖および汚染が生じていないことの確認の120時間後に、生物学的安全キャビネット内で滅菌ピペットを用いて第II段階フラスコから試料を無菌的に取り出し、OD750およびDCWの定量化のために使用する。前述のように、第II段階フラスコの典型的な最終DCWは、2.5±0.7g・L-1である。第II段階のフラスコのDCWが所望の範囲内にあることが確認されたら、シード発酵槽の接種を進めることができる。
【0110】
シード発酵槽の所望の接種材料容量は初期シード発酵槽作業容量の10%に等しく、したがって初期乾燥細胞重量濃度は0.25±0.07g/Lである。シード接種材料を生物学的安全キャビネット内で無菌的にフラスコから滅菌シード接種容器に移し、次にシード発酵槽に入れる。接種材料の添加は、典型的にはpH値をpH6.8の設定点を超えて上昇させる。pH制御装置が適切に調整されていない場合、この期間中に過剰量の酸性フィードが発酵槽に添加されて、pHが著しく低下する可能性がある。5.5未満のpH値は発酵の性能に悪影響を及ぼす可能性があり、避けるべきである。これを防ぐために、接種前にpH制御を一時的に無効にすることができる。pH制御が無効になっている場合、接種直後にpHを手動で設定点に調整し、pH制御を再び有効にすることができる。接種の成功およびpH制御の活性化後に、代謝活性およびより具体的には酢酸塩の消費を示すpH値の上昇が観察されるべきである。
【0111】
シード発酵は、表13に列挙する工程パラメータおよび制御方法を用いて好気的に行われる。この実施例では、シード発酵は光の非存在下で行われ、これは存在するあらゆるビューポートが発酵中に覆われることを意味する。
【0112】
(表13)例示的なシード発酵パラメータ
【0113】
この実施例では、フィードストリームは、0.22μm細孔フィルタを用いてろ過滅菌された、濃縮培地と氷酢酸の混合物である(表3参照)。フィードストリームは、蠕動ポンプによって発酵槽にフィードされる。酸性フィードストリームはpHを調整するように働き、pHがその設定点を超えて上昇した場合、pH制御装置によって自動的に供給される(片側「pHスタット」)。溶存酸素(DO)は、撹拌速度を調節することによって30%の空気飽和度(大気圧で)の設定点に制御される。撹拌だけではDO設定点を維持するのに不十分になる場合は、スパージ速度も調節し得る。有意の泡が形成される場合、ブロス1リットル当たり0.06mLのFOAM BLAST(登録商標)F111-GF消泡剤に等しい滅菌消泡剤ボーラスを発酵槽に添加することができる。この実施例の目的のために、「有意の泡」は、発酵槽の頂部からの酸の添加を「遅滞させる」のに十分な泡の量として定義される。トータライザ/マスフローメータは酸がフィードされていることを示しているが、なおもpHの低下が観察されない場合、「有意の泡」の形成の可能性がある。この場合、ルッキングガラス(目視検査のために一時的に覆われていない)を通して目視検査することによって「有意の泡」の存在を確認するべきである。泡があまりにも長い間形成されたままである場合、泡を壊すと、過剰な量の「遅滞された」酸がブロス中に放出されて培養物の死をもたらす可能性がある。そのため、泡の形成はできるだけ早く対処するべきである。
【0114】
OD750およびDCWのために0時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、および168時間の総発酵時間(TFT)にシード発酵槽から試料採取する。測定された様々なパラメータについて得られた例示的な結果は、図1~3に見出すことができる。
【0115】
生産発酵槽の接種の48時間前に、顕微鏡による目視検査のために滅菌サンプリングポートを通してシード発酵槽から試料を無菌的に取り出し、さらなる汚染チェックとしてLBプレート上に線条接種する(37℃で24時間インキュベートする)。シード発酵についての回収基準は30~40g・L-1のDCWであるが、50.0g・L-1までの濃度は許容される。
【0116】
実施例4. 生産発酵
生産発酵は、シード発酵と同様に操作される;2つの工程の間の主な違いは、細胞集団の初期濃度と、生産発酵の場合は接種材料が振とうフラスコからではなく別の発酵槽からもたらされ得るという事実である。生産発酵の目的は、検出可能な汚染物質を伴わずに、典型的には90~110時間以内に少なくとも60gのDCW・L-1を生産することである。
【0117】
滅菌発酵培地は、発酵容器中で調製することができる。あるいは、滅菌発酵培地を発酵容器の外側で生成し、次いで滅菌発酵容器に導入することができる。培地の容量は、10%(容量で)の接種材料の添加を可能にするために生産発酵槽の所望の出発容量の90%に等しくするべきである。
【0118】
シード発酵の完了および汚染が生じていないことの確認の後に、OD750およびDCWの定量化のために滅菌サンプリングポートを通して最終試料を無菌的に取り出す。シード発酵についての典型的な最終DCWは30.0~40.0g/Lであるが、50.0g/Lまでの濃度は許容される。シード発酵槽のDCWが所望の範囲内にあり、汚染が生じていないことが確認されたら、生産発酵槽に接種する。
【0119】
生産発酵槽の所望の接種材料容量は生産発酵槽の出発容量の10%であり、したがって初期DCW濃度は3.0~4.0g/Lである。特に生産発酵槽への接種のためには、シード接種材料が15分以上低酸素条件にさらされないことが好ましい。接種材料の移送中はシード発酵槽内で工程制御(例えば撹拌およびスパージ)を可能にしたままにし、接種材料移送ラインにおける滞留時間をできるだけ最小限に抑えるべきである。接種前に生物が酸素欠乏を経験した場合、工程性能が実質的に低下し得る。
【0120】
接種材料の添加は、しばしばpH値を設定点より上に上昇させる。pH制御装置が適切に調整されていない場合、この期間中に過剰量の酸性フィードが発酵槽に添加されて、pHが著しく低下する可能性がある。5.5未満のpH値は発酵の性能に悪影響を及ぼす可能性があり、避けるべきである。そのため、接種前にpH制御を一時的に無効にすることができる。接種直後に、pH制御を再び有効にする前に、pHを手動で設定点に調整するべきである。接種の成功およびpH制御の活性化後に、代謝活性および特に酢酸塩の消費を示すpH値の上昇が観察されるべきである。生産発酵は、表14に列挙されている工程パラメータおよび制御方法を用いて好気的に行われる。生産発酵は、典型的には光の非存在下で行われ、発酵中は全てのビューポートが覆われる。
【0121】
(表14)生産発酵槽工程のパラメータ
【0122】
フィードストリーム(フィード培地A、表3)は、0.22μmでろ過滅菌され、蠕動ポンプによって発酵槽にフィードされる、濃縮培地と氷酢酸との混合物である。酸性フィードストリームは、pHを調整するように働き、pHがその設定点を超えて上昇した場合、pH制御装置によって自動的に供給される(片側「pHスタット」)。溶存酸素(本明細書ではDOと略す)の飽和度は、撹拌速度を調節することによって30%の空気飽和度(大気圧で)の設定点に制御される。撹拌だけではDO設定点を維持するのに不十分になる場合は、スパージ速度も調節し得る。
【0123】
有意の泡が形成される場合、ブロス1リットル当たり0.06mLのFOAM BLAST(登録商標)F111-GF消泡剤に等しい滅菌消泡剤ボーラスを発酵槽に添加することができる。本開示の目的のために、「有意の泡」は、発酵槽の頂部からの酸の添加を「遅滞させる」のに十分な泡の量として定義される。トータライザ/マスフローメータは酸がフィードされていることを示しているが、なおもpHの低下が観察されない場合、「有意の泡」の形成の可能性がある。この場合、ビューポートを通して目視検査することによって「有意の泡」の存在を確認し、適切な処置を講じるべきである。泡があまりにも長い間形成されたままである場合、泡を壊すと、過剰な量の「遅滞された」酸がブロス中に放出されて培養物の死をもたらす可能性がある。そのため、泡の形成はできるだけ早く対処するべきである。
【0124】
OD750およびDCWの決定のためにTFT=0時間、24時間、48時間、72時間、96時間、および100時間に生産発酵槽から試料採取する。典型的な0.5L生産発酵に関するデータおよび傾向を図4~6に示す。図4に見られる約100時間後の設定点を下回るpO2の減少は、使用される実験室規模の発酵槽において撹拌およびスパージの両方がそれらの最大値に達したため、ブロス通気速度を増加させることができないことの結果である。理想的な工程制御は、撹拌がその最大値に達した後にスパージ速度を増加させることによって、発酵全体を通してDOの値をその設定点に保持する(カスケード制御)。
【0125】
シード発酵と同様に、生産発酵は片側(酸)「pHスタット」として操作される。 この操作モードの結果として、設定点と比較したpH値の変動が、典型的には発酵全体を通して観察される(図5参照)。培養物の密度が増加するにつれて、全体の酢酸塩消費速度は増加し、pH「エンベロープ」のサイズは約0.05pH単位の最小値まで減少する。発酵性能を維持するために、pHの偏差は、特に発酵の初期には、好ましくは0.5pH単位を超えるべきではない。可能な場合は、pH偏差をできるだけ少なくするようにpH制御ループを調整するべきである。
【0126】
生産発酵の終了を知らせるための難しい目標はない。しかしながら、生産発酵の全体的な目標は、時間/装置の制約を考慮して、できるだけ多くの規格内の藻類細胞集団を生産することである。生産発酵槽を回収するための主な基準として、少なくとも60g/Lのマイクロ波乾燥細胞重量(DCW)濃度が使用される。
【0127】
実施例5. 回収および下流処理
生産発酵の完了後、ブロスを下流処理ユニット操作のために発酵槽から移す。最終ブロスは加熱によって失活させるべきではない。藻類の細胞集団を最初に周囲温度(典型的には約25℃)で遠心分離(約3000g)によって液体から分離し、次いで得られた細胞集団を噴霧乾燥のために約20±5%の固形分濃度で移す。噴霧乾燥のための正確な条件は、使用される乾燥機および材料の条件によって異なる。当業者は、噴霧乾燥のための最適条件を容易に決定することができる。噴霧乾燥した細胞集団を規格に対して評価し、許容されると判断された場合は、プラスチック内張りドラムに包装する。最終的な噴霧乾燥した藻類細胞集団生成物についての目標基準を表15に詳細に示す。
【0128】
(表15)
【0129】
実施例6. 乾燥細胞重量(DCW)の決定
ガラス製のマイクロファイバーフィルタに、パーマネントマーカーを使用して端付近の下側にラベル表示する。次に、ラベル表示したフィルタを化学天秤で秤量し、重量をグラムで記録する(質量初期、g)。次いで、予め秤量したフィルタをろ過装置に入れて真空を適用する。フィルタの端から始めて横方向に移動しながら、2g/Lの重炭酸アンモニウムの溶液を用いてフィルタを湿潤させる。藻類を含む既知容量の培地(容量ろ過後、ml)を、ピペットを用いてフィルタに添加する。選択する容量は、フィルタが目詰まりしたり、培地がフィルタの端からはみ出したりするほど大きくするべきではない。次いでピペットを2g/Lの重炭酸アンモニウムで洗浄し、洗浄液をフィルタに添加する。次いで、フィルタを、容量ろ過後、mlの3倍に等しい2g/Lの重炭酸アンモニウムで洗浄する。フィルタをろ過装置から慎重に取り外し、数字が7時の位置になるように折り畳む(図7参照)。次にフィルタを四分の一に折り、2つの角を曲げて脚を形成する。次にフィルタを電子レンジ安全皿の上に置き、70%の出力で10分間電子レンジで乾燥する。フィルタを冷却させ、次に質量初期、gに使用したのと同じ天秤で秤量して質量最終、gを得る。乾燥細胞重量(DCW)を以下のように計算する:
【0130】
実施例6. 発酵培地Bを用いたシード発酵
滅菌高濃度発酵培地B(表4)を滅菌発酵容器中で調製する。調製する培地の容量は、10%(容量で)の接種材料の添加を可能にするために、シード発酵槽の所望の出発容量の90%に等しくするべきである。第II段階フラスコ増殖および汚染が生じていないことの確認の120時間後に、生物学的安全キャビネット内で滅菌ピペットを用いて第II段階フラスコから試料を無菌的に取り出し、OD750およびDCWの定量化のために使用する。第II段階フラスコの典型的な最終DCWは、2.5±0.7g/Lである。第II段階フラスコのDCWが所望の範囲内にあることが確認されたら、シード発酵槽の接種を進めることができる。
【0131】
シード発酵槽の所望の接種材料容量は初期シード発酵槽の作業容量の10%に等しく、したがって初期乾燥細胞重量濃度は0.25±0.07g/Lである。シード接種材料を生物学的安全キャビネット内で無菌的にフラスコから滅菌シード接種容器に移し、次にシード発酵槽に移す。接種材料の添加は、典型的にはpH値をpH6.8の設定点を超えて上昇させる。pH制御装置が適切に調整されていない場合、この期間中に過剰量の酸性フィードが発酵槽に添加されて、pHが著しく低下する可能性がある。5.5未満のpH値は発酵の性能に悪影響を及ぼす可能性があり、避けるべきである。これを防ぐために、接種前にpH制御を一時的に無効にすることができる。pH制御が無効になっている場合、接種直後にpHを手動で設定点に調整し、pH制御を再び有効にすることができる。接種の成功およびpH制御の活性化後に、代謝活性およびより具体的には酢酸塩の消費を示すpH値の上昇が観察されるべきである。
【0132】
シード発酵は、表13に列挙する工程パラメータおよび制御方法を用いて好気的に行われる。この実施例では、シード発酵は光の非存在下で行われ、これは存在するあらゆるビューポートが発酵中に覆われることを意味する。
【0133】
フィードストリームは、0.22μm細孔フィルタを用いてろ過滅菌された氷酢酸とアンモニアとの混合物(フィード培地B、表6)である。フィードストリームは、蠕動ポンプによって発酵槽にフィードされる。酸性フィードストリームはpHを調整するように働き、pHがその設定点を超えて上昇した場合、pH制御装置によって自動的に供給される(片側「pHスタット」)。溶存酸素(DO)は、撹拌速度を調節することによって30%の空気飽和度(大気圧で)の設定点に制御される。撹拌だけではDO設定点を維持するのに不十分になる場合は、スパージ速度も調節し得る。
【0134】
有意の泡が形成される場合、ブロス1リットル当たり0.06mLのFOAM BLAST(登録商標)F111-GF消泡剤に等しい滅菌消泡剤ボーラスを発酵槽に添加することができる。この実施例の目的のために、「有意の泡」は、発酵槽の頂部からの酸の添加を「遅滞させる」のに十分な泡の量として定義される。トータライザ/マスフローメータは酸がフィードされていることを示しているが、なおもpHの低下が観察されない場合、「有意の泡」の形成の可能性がある。この場合、ルッキングガラス(目視検査のために一時的に覆われていない)を通して目視検査することによって「有意の泡」の存在を確認するべきである。泡があまりにも長い間形成されたままである場合、泡を壊すと、過剰な量の「遅滞された」酸がブロス中に放出されて培養物の死をもたらす可能性がある。そのため、泡の形成はできるだけ早く対処するべきである。OD750およびDCWのために0時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、および168時間の総発酵時間(TFT)にシード発酵槽から試料採取する。
【0135】
生産発酵槽の接種の48時間前に、顕微鏡による目視検査のために滅菌サンプリングポートを通してシード発酵槽から試料を無菌的に取り出し、さらなる汚染チェックとしてLBプレート上に線条接種する(37℃で24時間インキュベートする)。シード発酵のための回収基準は40~60g/LのDCWであるが、80.0g/Lまでの濃度は許容される。
【0136】
実施例7. 発酵培地Bを用いた生産発酵
高濃度発酵培地Bを使用する生産発酵は、シード発酵と同様に操作される;2つの工程の間の主な違いは、発酵培地、微量要素、およびフィード培地の成分である。高濃度発酵培地Bを使用する生産発酵の目的は、検出可能な汚染物質を伴わずに、典型的には90~140時間以内に少なくとも60gのDCW/Lを生産することである。
【0137】
滅菌発酵培地Bは、表4に詳述されている処方を用いて発酵容器中で調製することができる。あるいは、滅菌発酵培地を発酵容器の外側で生成し、次いで滅菌発酵容器に導入することができる。培地の容量は、10%(容量で)の接種材料の添加を可能にするために、生産発酵槽の所望の出発容量の90%に等しくするべきである。
【0138】
高濃度発酵培地を使用したシード発酵の完了および汚染が生じていないことの確認の後、OD750およびDCWの定量化のために滅菌サンプリングポートを通して最終試料を無菌的に取り出す。典型的には、シード発酵の最終DCWは40~60g/Lであるが、80g/Lまでの濃度は許容される。シード発酵槽のDCWが所望の範囲内にあり、汚染が生じていないことが確認されたら、生産発酵槽に接種する。
【0139】
生産発酵槽の所望の接種材料容量は生産発酵槽の出発容量の10%であり、したがって初期DCW濃度は4~6g/Lである。特に生産発酵槽への接種のためには、シード接種材料が15分以上低酸素条件にさらされないことが好ましい。接種材料の移送中はシード発酵槽内で工程制御(例えば撹拌およびスパージ)を可能にしたままにし、接種材料移送ラインにおける滞留時間をできるだけ最小限に抑えるべきである。接種前に生物が酸素欠乏を経験した場合、工程性能が実質的に低下し得る。
【0140】
接種材料の添加は、しばしばpH値を設定点より上に上昇させる。pH制御装置が適切に調整されていない場合、この期間中に過剰量の酸性フィードが発酵槽に添加されて、pHが著しく低下する可能性がある。5.5未満のpH値は発酵の性能に悪影響を及ぼす可能性があり、避けるべきである。そのため、接種前にpH制御を一時的に無効にすることができる。接種直後に、pH制御を再び有効にする前に、pHを手動で設定点に調整するべきである。接種の成功およびpH制御の活性化後に、代謝活性および特に酢酸塩の消費を示すpH値の上昇が観察されるべきである。生産発酵は、表14に列挙されている工程パラメータおよび制御方法を用いて好気的に行われる。生産発酵は、典型的には光の非存在下で行われ、発酵中は全てのビューポートが覆われる。
【0141】
フィードストリーム(フィード培地B、表6)は、0.22μmでろ過滅菌され、蠕動ポンプによって発酵槽にフィードされる、氷酢酸とアンモニアとの混合物である。酸性フィードストリームはpHを調整するように働き、pHがその設定点を超えて上昇した場合、pH制御装置によって自動的に供給される(片側「pHスタット」)。溶存酸素(DO)の飽和度は、撹拌速度を調節することによって30%空気飽和度(大気圧で)の設定値に制御される。撹拌だけではDO設定点を維持するのに不十分になる場合は、スパージ速度も調節し得る。
【0142】
有意の泡が形成される場合、ブロス1リットル当たり0.06mLのFOAM BLAST(登録商標)F111-GF消泡剤に等しい滅菌消泡剤ボーラスを発酵槽に添加することができる。本開示の目的のために、「有意の泡」は、発酵槽の頂部からの酸の添加を「遅滞させる」のに十分な泡の量として定義される。トータライザ/マスフローメータは酸がフィードされていることを示しているが、なおもpHの低下が観察されない場合、「有意の泡」の形成の可能性がある。この場合、ビューポートを通して目視検査することによって「有意の泡」の存在を確認し、適切な処置を講じるべきである。泡があまりにも長い間形成されたままである場合、泡を壊すと、過剰な量の「遅滞された」酸がブロス中に放出されて培養物の死をもたらす可能性がある。そのため、泡の形成はできるだけ早く対処するべきである。
【0143】
OD750およびDCWの決定のためにTFT=0時間、20時間、43時間、68時間、96時間、116時間、および140時間に生産発酵槽から試料採取する。典型的な0.5L生産発酵に関するデータおよび傾向を図9~12に示す。図10に見られる約80時間後の設定点を下回るpO2の減少は、使用される実験室規模の発酵槽において撹拌およびスパージの両方がそれらの最大値に達したため、ブロス通気速度を増加させることができないことの結果である。理想的な工程制御は、撹拌がその最大値に達した後にスパージ速度を増加させることによって、発酵全体を通してDOの値をその設定点に保持する(カスケード制御)。
【0144】
シード発酵と同様に、生産発酵は片側(酸)「pHスタット」として操作される。 この操作モードの結果として、設定点と比較したpH値の変動が、典型的には発酵全体を通して観察される(図11参照)。培養物の密度が増加するにつれて、全体の酢酸塩消費速度は増加する(図12)。生産発酵の終了を知らせるための難しい目標はない。しかしながら、生産発酵の全体的な目標は、時間/装置の制約を考慮して、できるだけ多くの規格内の藻類細胞集団を生産することである。80.0g/Lを超えるマイクロ波乾燥細胞重量(DCW)濃度が図9に示されている。
【0145】
本発明、その原理、およびその実際の用途を他の当業者に知らせるために、本発明を例示および実施例によって詳細に説明したことが理解されるべきである。本発明の特定の配合物および工程は、提示される特定の態様の説明に限定されず、むしろ説明および実施例は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の観点から考察されるべきである。上記の実施例および説明のいくつかは、本発明が機能し得る方法についてのいくつかの結論を含むが、本発明者は、それらの結論および機能によって拘束されることを意図せず、それらを単に可能な説明として提示するものである。
【0146】
上述した特定の態様は本発明を網羅するまたは限定することを意図しないこと、ならびに多くの代替形態、修正形態、および変形形態が前述の実施例および詳細な説明に照らして当業者に明らかであることがさらに理解されるべきである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれるそのような全ての代替形態、修正形態、および変形形態を包含することを意図している。
図1
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図12