(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】腎臓透析を受けている患者のための食餌性多量/微量栄養補給剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/30 20060101AFI20220204BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20220204BHJP
A23L 33/155 20160101ALI20220204BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20220204BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20220204BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/205 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20220204BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20220204BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20220204BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20220204BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20220204BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20220204BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20220204BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20220204BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220204BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220204BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K33/30
A23L33/15
A23L33/155
A23L33/16
A23L33/175
A61K31/122
A61K31/197
A61K31/202
A61K31/205
A61K31/375
A61K31/4188
A61K31/4415
A61K31/455
A61K31/51
A61K31/519
A61K31/525
A61K31/593
A61K31/714
A61K33/06
A61K33/24
A61K33/26
A61K36/45
A61K36/736
A61K36/752
A61K36/9066
A61K47/36
A61P3/02
A61K33/04
(21)【出願番号】P 2019531865
(86)(22)【出願日】2017-08-23
(86)【国際出願番号】 US2017048126
(87)【国際公開番号】W WO2018039297
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-21
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519062937
【氏名又は名称】ダブドゥブ,アティフ
【氏名又は名称原語表記】DABDOUB,Atif
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ダブドゥブ,アティフ
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-019691(JP,A)
【文献】特表平05-505935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0155163(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0280851(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105519961(CN,A)
【文献】特表2003-521501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0317725(US,A1)
【文献】特開2009-203219(JP,A)
【文献】特開2012-214435(JP,A)
【文献】特表2010-505409(JP,A)
【文献】国際公開第2010/077878(WO,A1)
【文献】特表2008-516948(JP,A)
【文献】特開2008-247748(JP,A)
【文献】特表2014-532032(JP,A)
【文献】特開平08-026984(JP,A)
【文献】特開平02-308779(JP,A)
【文献】米国特許第05714168(US,A)
【文献】特開2011-105632(JP,A)
【文献】国際公開第2013/072767(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0199337(US,A1)
【文献】特表2009-520824(JP,A)
【文献】特開2015-209398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107223(US,A1)
【文献】国際公開第2009/087988(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0191386(US,A1)
【文献】特表2015-524477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0082536(US,A1)
【文献】米国特許第08183227(US,B1)
【文献】特表2001-513370(JP,A)
【文献】国際公開第03/032751(WO,A1)
【文献】特表2013-516464(JP,A)
【文献】特開2006-028051(JP,A)
【文献】特開2007-244325(JP,A)
【文献】DATA 食品の生理活性機能,食品と科学 43巻9号 ,第43巻,岸 直邦 株式会社食品と科学社
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位用量組成物であって、
(a)ビタミンB1
(b)ビタミンB2
(c)ビタミンB
3
(d)ビタミンB5
(e)ビタミンB6
(f)ビタミンB7
(g)ビタミンB9
(h)ビタミンB12
(i)ビタミンC
(j)ビタミンD
3
(k)薬理的に許容可能なカルシウム化合物
(l)薬理的に許容可能なマグネシウム化合物
(m)薬理的に許容可能な亜鉛化合物
(n)薬理的に許容可能なセレン化合物
(o)薬理的に許容可能な鉄化合物
および
(p)薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物
を含んでな
り、リンまたはカリウムの薬理的に許容可能な化合物を含まないことを特徴とする単位用量組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が、
(a)単位用量当たり0.1mg~50mgの量のビタミンB1;
(b)単位用量当たり0.1mg~2mgの量のビタミンB2;
(c)単位用量当たり1mg~40mgの量のビタミンB3;
(d)単位用量当たり1mg~20mgの量のビタミンB5;
(e)単位用量当たり1mg~100mgの量のビタミンB6;
(f)単位用量当たり10μg~500μgの量のビタミンB7;
(g)単位用量当たり0.05mg~1.0mgの量のビタミンB9;
(h)単位用量当たり1μg~150μgの量のビタミンB12;
(i)単位用量当たり10mg~2,000mgの量のビタミンC;
(j)単位用量当たり1μg~100μgの量のビタミンD
3;
(k)単位用量当たり100mg~2,500mgの量の薬理的に許容可能なカルシウム化合物;
(l)単位用量当たり100mg~500mgの量の薬理的に許容可能なマグネシウム化合物;
(m)単位用量当たり1mg~40mgの量の薬理的に許容可能な亜鉛化合物;
(n)単位用量当たり10μg~400μgの量の薬理的に許容可能なセレン化合物;
(o)単位用量当たり1mg~45mgの量の薬理的に許容可能な鉄化合物;
および
(p)単位用量当たり100mg~3,500mgの量の薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物
を含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物において、前記薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物が、L-カルニチン-L-酒石酸またはアセチル-L-カルニチンであることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物において、前記カルシウムがクエン酸カルシウムであり、前記マグネシウムがクエン酸マグネシウムであり、前記亜鉛がクエン酸亜鉛であり、前記
セレンがセレン酸ナトリウムであり、前記鉄がグルコン酸鉄であることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が、柑橘類バイオフラボノイド、クランベリーおよび/またはチェリー粉末抽出物、またはそれらの組み合わせをさらに含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が乾燥粉末を含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が、
(a)単位用量当たり0.5mg~2mgの量のビタミンB1;
(b)単位用量当たり0.5mg~2mgの量のビタミンB2;
(c)単位用量当たり1mg~20mgの量のビタミンB3;
(d)単位用量当たり1mg~15mgの量のビタミンB5;
(e)単位用量当たり1mg~10mgの量のビタミンB6;
(f)単位用量当たり10
μg~100μgの量のビタミンB7;
(g)単位用量当たり0.1mg~1.0mgの量のビタミンB9;
(h)単位用量当たり1μg~10μgの量のビタミンB12;
(i)単位用量当たり100mg~300mgの量のビタミンC;
(j)単位用量当たり1μg~20μgの量のビタミンD
3;
(k)単位用量当たり100mg~1,000mgの量の薬理的に許容可能なカルシウム化合物;
(l)単位用量当たり100mg~500mgの量の薬理的に許容可能なマグネシウム化合物;
(m)単位用量当たり5mg~20mgの量の薬理的に許容可能な亜鉛化合物;
(n)単位用量当たり10μg~100μgの量の薬理的に許容可能なセレン化合物;
(o)単位用量当たり5mg~30mgの量の薬理的に許容可能な鉄化合物;および
(p)単位用量当たり1,000mg~3,000mgの量のL-カルニチン-L-酒石酸
を含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が多糖類増量剤をさらに含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載の組成物において,前記多糖類増量剤がマルトデキストリンを含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物において、前記組成物が
、ナトリウ
ムの薬理的に許容可能な化合物を含まないことを特徴とする組成物。
【請求項11】
キットであって、
(a)請求項1に記載の組成物;
(b)海産オメガ3脂肪酸を含んでなるカプセル;および
(c)補酵素Q10を含んでなるゲル
を含んでなることを特徴とするキット。
【請求項12】
請求項11に記載のキットにおいて、前記海産オメガ3脂肪酸が1:1~4:1の重量比(EPA:DHA)のDHAおよびEPAを含んでなることを特徴とするキット。
【請求項13】
請求項11に記載のキットにおいて、前記海産オメガ3脂肪酸が単位用量当たり500mg~4,000mgの量であることを特徴とするキット。
【請求項14】
請求項11に記載のキットにおいて、補酵素Q10がユビキノールであることを特徴とするキット。
【請求項15】
請求項11に記載のキットにおいて、前記補酵素Q10が単位用量当たり70mg~400mgの量であることを特徴とするキット。
【請求項16】
請求項11に記載のキットにおいて、前記キットがターメリックを含んでなるカプセルをさらに含んでなり、前記ターメリックが単位用量当たり1g~3gの量であることを特徴とするキット。
【請求項17】
請求項11に記載のキットにおいて、成分(a
)が、
(a)単位用量当たり0.1mg~50mgの量のビタミンB1;
(b)単位用量当たり0.1mg~2mgの量のビタミンB2;
(c)単位用量当たり1mg~40mgの量のビタミンB3;
(d)単位用量当たり1mg~20mgの量のビタミンB5;
(e)単位用量当たり1mg~100mgの量のビタミンB6;
(f)単位用量当たり10μg~500μgの量のビタミンB7;
(g)単位用量当たり0.05mg~1.0mgの量のビタミンB9;
(h)単位用量当たり1μg~150μgの量のビタミンB12;
(i)単位用量当たり10mg~2,000mgの量のビタミンC;
(j)単位用量当たり1μg~100μgの量のビタミンD
3;
(k)単位用量当たり100mg~2,500mgの量の薬理的に許容可能なカルシウム化合物;
(l)単位用量当たり100mg~500mgの量の薬理的に許容可能なマグネシウム化合物;
(m)単位用量当たり1mg~40mgの量の薬理的に許容可能な亜鉛化合物;
(n)単位用量当たり10μg~400μgの量の薬理的に許容可能なセレン化合物;
(o)単位用量当たり1mg~45mgの量の薬理的に許容可能な鉄化合物;
および
(
p)単位用量当たり100mg~3,500mgの量の薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物
を含んでなることを特徴とするキット。
【請求項18】
請求項17に記載のキットにおいて、前記薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物が、L-カルニチン-L-酒石酸またはアセチル-L-カルニチンであることを特徴とするキット。
【請求項19】
請求項17に記載のキットにおいて、前記カルシウムがクエン酸カルシウムであり、前記マグネシウムがクエン酸マグネシウムであり、前記亜鉛がクエン酸亜鉛であり、前記
セレンがセレン酸ナトリウムであり、前記鉄がグルコン酸鉄であることを特徴とするキット。
【請求項20】
請求項17に記載のキットにおいて、前記組成物が、柑橘類バイオフラボノイド、クランベリーおよび/またはチェリー粉末抽出物、またはそれらの組み合わせをさらに含んでなることを特徴とするキット。
【請求項21】
請求項11に記載のキットにおいて、成分(a
)が、
(a)単位用量当たり0.5mg~2mgの量のビタミンB1;
(b)単位用量当たり0.5mg~2mgの量のビタミンB2;
(c)単位用量当たり1mg~20mgの量のビタミンB3;
(d)単位用量当たり1mg~15mgの量のビタミンB5;
(e)単位用量当たり1mg~10mgの量のビタミンB6;
(f)単位用量当たり10
μg~100μgの量のビタミンB7;
(g)単位用量当たり0.1mg~1.0mgの量のビタミンB9;
(h)単位用量当たり1μg~10μgの量のビタミンB12;
(i)単位用量当たり100mg~300mgの量のビタミンC;
(j)単位用量当たり1μg~20μgの量のビタミンD
3;
(k)単位用量当たり100mg~1,000mgの量の薬理的に許容可能なカルシウム化合物;
(l)単位用量当たり100mg~500mgの量の薬理的に許容可能なマグネシウム化合物;
(m)単位用量当たり5mg~20mgの量の薬理的に許容可能な亜鉛化合物;
(n)単位用量当たり10μg~100μgの量の薬理的に許容可能なセレン化合物;
(o)単位用量当たり5mg~30mgの量の薬理的に許容可能な鉄化合物;
および
(
p)単位用量当たり1,000mg~3,000mgの量のL-カルニチン-L-酒石酸
を含んでなることを特徴とするキット。
【請求項22】
請求項21に記載のキットにおいて、前記組成物が多糖類増量剤をさらに含んでなることを特徴とするキット。
【請求項23】
請求項22に記載のキットにおいて、前記多糖類増量剤がマルトデキストリンを含んでなることを特徴とするキット。
【請求項24】
請求項11~22のいずれか一項に記載のキットにおいて、成分(a
)が、ナトリウ
ムの薬理的に許容可能な化合物を含まないことを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月26日に出願された米国仮特許出願第62/379,872号明細書、および2016年9月23日に出願されたスウェーデン特許出願第1651259-2号明細書の優先権を主張する。これらの出願は、それらの教示の全てについてそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
成人の腎臓は、毎日およそ190リットルの血液を濾過し;それらの役割のために、これらの臓器は、時間経過と共に疾病に進行することもある損傷および機能不全の影響を受け易い。慢性腎臓病:http://www.lifeextension.com/protocols/kidney-urinary/kidney-disease/page-04、高血圧、血糖値の上昇(糖尿病の存在を含む)、高タンパク食餌、喫煙、肥満、腎臓病または腎不全の家族歴、および患者の心臓病の病歴は、全て腎臓の健康を脅かし、致命的になる可能性がある損傷を与える。多くの場合、腎臓が適切に機能しなければ、腎臓透析が必要である。
【0003】
L-カルニチンなどの必須アミノ酸は、透析中に本質的に失われ得る(70~80%);L-カルニチン欠乏症は、筋肉痛および疲労、混乱、低血糖、心筋症、脂肪肝、筋肉壊死、異常な脂質蓄積、およびその他の症状に関連する。
【0004】
脂質やタンパク質やDNAなどの基本的な細胞成分を損傷し得る、過剰なフリーラジカルおよび有害分子によって引き起こされる酸化的ストレスは、L-カルニチン欠乏症に起因し得て、透析を受けている患者にとって特に危険な状態である。L-カルニチン欠乏症によって引き起こされる心臓組織の不十分なエネルギー管理は、心臓麻痺や心不全をはじめとする心血管合併症をもたらし得る。さらなるストレス要因としては、特に透析が必要とされる程度まで腎機能が低下した場合に、進行した糖化および脂質酸化最終産物および炎症を取り扱う必要性に起因する、腎臓への過剰な濾過負担が挙げられる。
【0005】
ビタミンB複合体およびビタミンCなどの水溶性ビタミン、そして亜鉛およびセレンなどのミネラルをはじめとする多くの必須栄養素は、透析治療中に体内から枯渇する。さらに、主に健康な腎臓によって産生されるビタミンDなどのその他の栄養素、そして腎不全の場合にはビタミンD合成は止まるか、または著しく影響される。しかし、脂溶性ビタミンなどのその他の栄養素は、透析患者において危険なレベルまで組織に蓄積し得るので、補給すべきではない。
【0006】
必要とされているのは、大量では損傷を与え得る過剰な脂溶性ビタミンを供給することなく、透析によって失われる基本的な栄養素の身体への供給を補給し得る栄養補給剤である。理想的には、この補給剤は、全体的な腎臓の健康をサポートして酸化的ストレスの影響と闘うL-カルニチンをはじめとするが、これに限定されるものではない栄養素もまた供給する。これらの必須栄養素を補給することに加えて、補給剤は、ミトコンドリアのエネルギー産生(すなわちATP合成)にとって重要であることが知られているミトコンドリア電子伝達鎖の重要な構成要素である補酵素Q10を理想的には供給する。最後に、慢性腎臓透析によって、例えば海産オメガ3脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸もまた、身体から除去される。これらの化合物は、代謝にとって重要な脂質可溶性多量栄養素(すなわち、ATPの形態で捕捉されるエネルギー生産)である。
【0007】
本発明は、身体に対する慢性腎臓透析の有害な影響に対処する栄養補給剤を提供することによって、これらの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書で提供されるのは、血液透析を受けている患者における、腎臓および心臓の機能、ならびにミトコンドリアエネルギー機能の要求をサポートするように設計された栄養補給剤である。この補給剤は、透析中に失われる必須ビタミンおよびミネラルを補給し、特に透析患者に害を及ぼすこともある化合物を含有せず、酸化的ストレスを受けている組織へのサポートを提供する。
【0009】
本明細書に記載される材料、方法、および装置の利点は、以下の説明に部分的に記載されており、または下に記載される態様の実施によって習得されてもよい。下述の利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘される要素と組み合わることによって、実現化され達成されるであろう。前述の概要と以下の詳細な説明は、どちらも例証および説明のみを意図し、制限を意図しないものと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本材料、物品、組成物、および/または方法を開示して説明する前に、下述の態様は、特定の化合物、合成法、または使用に限定されず、それらはもちろん変動してもよいものと理解される。本明細書で使用される用語法は、特定の態様の説明のみを目的として、制限を意図しないこともまた理解される。
【0011】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲ではいくつかの用語が参照されるが、それらは以下の意味を有すると定義される:
本明細書および添付の特許請求範囲の用法では、文脈上例外が明記されていない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数指示対象を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「柑橘類バイオフラボノイド」への言及は、2種以上の柑橘類バイオフラボノイドの混合物などを含む。
【0012】
「任意選択の」または「任意選択的に」は、引き続いて記述される事象または状況が、存在し得て、または存在し得ないことを意味し、記述は、事象または状況が存在する事例、および存在しない事例を含むことを意味する。例えば、本明細書に記載の栄養補給剤は、任意選択的にターメリックを含有してもよく、ターメリックは存在してもしなくてもよい。
【0013】
本明細書の用法では、「約」という用語は、所望の結果に影響を及ぼすことなく、所与の値が終点の「少し上」または「少し下」であってもよいことを提供することによって、数値範囲の終点に融通性を与えるために用いられる。
【0014】
「単位用量」は、対象に投与されるべき製剤の個別量を指す。本明細書で開示される組成物および製剤は、それぞれが、対象の要求および病歴に基づいて計算された所定量の活性化合物を含有する、別々の用量に包装されている。
【0015】
「薬理的に許容可能な化合物」は、中性の複合体を指すのに用いられる。いくつかの態様では、薬理的に許容可能な化合物は、より経済的に製造されてもよく、化学的安定性が増していてもよく、化合物の薬物動態および生物学的利用能の操作を可能にしてもよく、化合物をより投与し易くしてもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらなる態様では、薬理的に許容可能な化合物は、化合物の溶解または溶解度を変化させ得る。一態様では、薬理的に許容可能な化合物は、イオン性化合物であり得る。例えば、薬理的に許容可能な化合物は、有機酸(例えば、クエン酸)と塩基(例えば、水酸化カルシウム)との間の反応生成物であり得て、イオン性化合物であるクエン酸カルシウムが生成する。
【0016】
本明細書全体を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含んでなる(comprise)」という語、または「含んでなる(comprises)」または「含んでなる(comprising)」などのバリエーションは、記載された整数またはステップまたは整数群またはステップ群の包含を暗示するが、任意のその他の整数またはステップまたは整数群またはステップ群の包含は暗示しないものと理解される。
【0017】
明細書中における、および結びの特許請求の範囲における、組成物または物品中の特定の要素または成分の重量部への言及は、それに対して重量部が表された、組成物または物品中の要素または成分と、あらゆるその他の要素または成分との間の重量関係を指す。したがって2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物中には、XおよびYが2:5の重量比で存在し、追加的な成分が化合物中に含有されるかどうかにかかわりなく、このような比率で存在する。
【0018】
本明細書の用法では、便宜上、複数の項目、構造要素、組成要素、および/または材料が、共通のリスト中で提示されることがある。しかし、これらのリストは、リストの各メンバーが、個別の一意のメンバーとして個々に同定されているかのように解釈されるべきである。したがって、特に別段の指定がない限り、このようなあらゆるリストの個々のメンバーは、共通のグループ中のその提示のみに基づいて、同一リストのその他のメンバーの事実上の同等物として解釈されるべきである。
【0019】
濃度、量、およびその他の数値データは、本明細書では範囲形式で表現または提示されてもよい。このような範囲形式は、便宜上および簡潔さのためだけに用いられるものと理解され、したがって、範囲の制限として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、各数値および部分的範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分的範囲もまた含むものと、柔軟に解釈されるべきである。例示として、「約1~約5」の数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値および部分的範囲もまた含むものと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲に含まれるのは、2、3、および4などの個々の値、1~3、2~4、3~5などの下位範囲、ならび個々に1、2、3、4、および5である。同じ原理が、最小値または最大値として1つの数値のみを列挙している範囲に適用される。さらに、このような解釈は、記載されている範囲の幅または特性にかかわりなく適用されるべきである。
【0020】
開示されるのは、開示される組成物および方法のために使用され得る、併せて使用され得る、調製するのに使用され得る、またはその生成物である、材料および成分である。これらのおよびその他の材料は本明細書で開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物のそれぞれ、および集団的組み合わせ、および置換に対する具体的な言及が明示的に開示されなくてもよい一方で、それぞれは本明細書で具体的に検討され、説明されるものと理解される。例えば、水溶性ビタミンが開示されて考察され、いくつかの様々なミネラルが考察される場合、特に別段の指定がない限り、可能な水溶性ビタミンとミネラルのありとあらゆる組み合わせが具体的に検討される。例えば、水溶性ビタミンA、B、およびCのクラス、ならびにミネラルD、E、およびFのクラスが開示されて、A+Dの組み合わせ例が開示される場合、たとえそれぞれが個別に列挙されなくても、それぞれが個別におよび集合的に検討される。したがってこの例では、A、B、およびC;D、E、およびFの開示;およびA+Dの組み合わせの例から、A+E、A+F、B+D、B+E、B+F、C+D、C+E、およびC+Fの組み合わせのそれぞれが具体的に検討され、考慮されるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた、具体的に検討され開示される。したがって、A、B、およびC;D、E、およびFの開示;およびA+Dの組み合わせの例から、例えばA+E、B+F、およびC+Eのサブグループが具体的に検討されて、考慮されるべきである。この概念は、開示された組成物を作製して使用する方法のステップをはじめとするが、これに限定されるものではない、本開示の全ての態様に適用される。したがって、開示された方法の任意の特定の実施形態で、または実施形態の組み合わせで、実施され得る様々な追加的なステップがある場合、そのような各組み合わせは具体的に検討され、開示されていると見なされるべきである。
【0021】
本明細書の用法では、ビタミンは、成長および細胞維持をはじめとする必須の身体機能をサポートするために、少量が必要とされる有機化合物である。いくつかの態様では、ビタミンは身体によって産生され得ず(例えば、ビタミンC)、または患者の要求を満たすのに十分な量で産生されず、外部供給源を通じて供給されなくてはならない。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 361。一態様では、特に腎臓透析を受けている患者などの慢性疾患の個人の場合、多くの食餌は1つまたは複数の主要ビタミンが不十分であり、補給剤がしばしば処方される。一態様では、ビタミンは、必須の生化学反応において酵素を補助するための補因子として作用し得る。
【0022】
一態様では、本明細書で開示される製剤には、1つまたは複数の水溶性ビタミンが含まれる。一態様では、水溶性ビタミンは腎臓透析中に枯渇し、全体的な健康状態および福利を維持するために補給されるべきである。さらなる態様では、本明細書で開示される補給剤は、ビタミンB複合体およびビタミンCなどの水溶性ビタミンを提供する。
【0023】
ビタミンB複合体
一態様では、本明細書で開示される製剤には、1つまたは複数のビタミンB群が含まれる。この態様では、ビタミンB群は、補因子または補酵素を産生するのに必要な補因子または補酵素または前駆体として、一般に機能する。さらなる態様では、ビタミンB群は体内に貯蔵されず、欠乏症を避けるために食餌または別の手段によって定期的に供給されなくてはならない。一態様では、鉄と併せたビタミンB6、B9、およびB12の同時補給は、骨粗鬆症および貧血に対して特に有効である一方で、免疫機能もまた改善する。さらなる態様では、1つまたは2つのビタミンB複合体だけでなく、全てのビタミンB複合体が使用され得る。
【0024】
別の態様では、低いビタミンB群レベルは、神経伝達物質の産生に影響を及ぼし、ストレスおよび不安に寄与し得る。この態様では、ビタミンB群の補給は、それらの欠乏症に関連するストレスを軽減させ得る。一態様では、低いビタミンB群レベルは、慢性腎臓透析、利尿薬の使用、および精製炭水化物の過剰摂取によって引き起こされるが、それは多くの炭水化物の消化がビタミンB群の使用を要求するためである。一態様では、不十分なビタミンB摂取は、あまりにも多くの精製炭水化物を摂取する患者における血糖急上昇と関連づけられている。
【0025】
一態様では、チアミンまたはビタミンB1が、本明細書で開示される製剤に含まれる。この態様では、チアミンは、神経や筋肉の健康、胃における塩酸の産生、そして便秘や疲労の治療にとって重要であってもよく、ならびにいくつかの炭水化物およびタンパク質の消化を助ける。一態様では、チアミン源はチアミン硝酸塩である。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB1の量は、0.1mg~50mg、0.1mg~25mg、0.1mg~10mg、0.1mg~5mg、0.1mg~2mg、または0.1mg~1mgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり0.5mg~2mgのチアミンが存在する。
【0026】
別の態様では、リボフラビンまたはビタミンB2が、本明細書で開示される製剤に含まれる。この態様では、リボフラビンは、成長、赤血球産生、および眼の健康にとって重要であってもよく、ならびにいくつかの炭水化物、脂肪、ケトン体、およびタンパク質の消化を助ける。一態様では、リボフラビン源は分子リボフラビンである。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB2の量は、0.1mg~2mg、0.5mg~2mg、または0.5mg~1mgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり0.5~2mgのリボフラビンが存在する。
【0027】
なおも別の態様では、ナイアシンアミドまたはビタミンB3としても知られているニコチン酸またはニコチンアミドが、本明細書で開示される製剤に含まれる。さらにこの態様では、ビタミンB3は、消化器系の健康にとって重要であり、いくつかの炭水化物の消化、ならびに様々な性ホルモンおよびストレス関連ホルモンの産生を助けてもよい。なおもさらにこの態様では、ナイアシンは血中コレステロールレベルを低下させるのに有用であってもよい。一態様では、ナイアシンアミド源は分子ナイアシンアミドである。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB3の量は、1mg~40mg、5mg~30mg、または5mg~25mgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり5~25mgのナイアシンアミドが存在する。
【0028】
一態様では、本明細書で開示される製剤には、パントテン酸またはビタミンB5が含まれる。この態様では、パントテン酸は、赤血球産生、消化器系健康、副腎健康、およびいくつかの炭水化物の消化にとって重要であってもよい。一態様では、パントテン酸源はD-パントテン酸カルシウムである。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB5の量は、1mg~20mg、1mg~15mg、または5mg~10mgである。別の態様では、5~10mgのL-またはD-パントテン酸カルシウムが、補給剤の単位用量当たりに存在する。
【0029】
別の態様では、本明細書で開示される製剤には、ピリドキサールリン酸(ピリドキシンとしてもまた存在する)またはビタミンB6が含まれる。さらにこの態様では、ピリドキサールリン酸は、脳の健康、そして赤血球および免疫系細胞の産生にとって重要であってもよい。さらなる態様では、ビタミンB6欠乏症は、糖尿病、神経系障害、および心疾患と結びつけられている。一態様では、ピリドキシン源は塩酸ピリドキシンである。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB6の量は、1mg~100mg、1mg~50mg、または1mg~10mgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり1~10mgの塩酸ピリドキシンが存在する。
【0030】
なおも別の態様では、本明細書で開示される製剤には、ビオチンまたはビタミンB7が含まれる。さらなる態様では、ビオチンは代謝の様々な態様にとって重要であり、毛髪および爪の強化、ならびに脂肪およびアミノ酸の代謝において重要であってもよい。一態様では、ビオチン源は分子ビオチンである。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB7の量は、10μg~500μg、10μg~300μg、または10μg~100μgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり10~100μgのビオチンが存在する。
【0031】
一態様では、本明細書で開示される製剤には、葉酸またはビタミンB9としても知られている葉酸塩が含まれる。さらにこの態様では、葉酸は、脳機能、精神的健康、赤血球産生、および核酸産生にとって重要であってもよい。一態様では、葉酸塩源は葉酸である。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB9の量は、0.05mg~1mg、0.1mg~1mg、または0.1mg~0.5mgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり0.2~0.4mgの葉酸が存在する。
【0032】
別の態様では、コバラミンまたはビタミンB12が、本明細書で開示される製剤に含まれる。さらにこの態様では、コバラミンは、シアノコバラミン、ヒドロキシコバラミン、アデノシルコバラミン、またはメチルコバラミン形態で存在してもよい。別の態様では、コバラミンは、神経系健康、赤血球産生、および核酸合成にとって重要である。さらなる態様では、コバラミンは、赤血球産生に関して葉酸と相乗的に作用する。一態様では、コバラミン源はシアノコバラミンである。一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンB12の量は、1μg~150μg、1μg~100μg、1μg~50μg、1μg~25μg、または1μg~10μgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり3~6μgのシアノコバラミンが存在する。
【0033】
ビタミンC
一態様では、本明細書で開示される製剤には、アスコルビン酸またはビタミンCが含まれる。さらなる態様では、ビタミンCは、免疫系、コラーゲン産生、および創傷治癒にとって重要である。さらにこの態様では、ビタミンCはヒドロキシプロリンの生合成に必要であり、ヒドロキシプロリンはコラーゲン、類骨、および象牙質の合成において重要である。
【0034】
さらなる態様では、ビタミンCは、フリーラジカル損傷と戦い得る強力な抗酸化剤である。なおもさらなる態様では、ビタミンCは、非ヘム鉄の取り込みを助けてもよい。さらに別の態様では、ビタミンCは、葉酸塩を酸化的損傷から保護するのを助ける。
【0035】
一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンCの量は、10mg~2,000mg、10mg~1,500mg、10mg~1,000mg、100mg~500mg、または100mg~300mgである。別の態様では、補給剤の単位用量当たり、100~300mgのビタミンC(アスコルビン酸として)が提供される。
【0036】
脂溶性ビタミンは小腸で吸収されて身体組織に貯蔵され、蓄積し得る。いくつかの態様では、過剰量の脂溶性物品が摂取された場合、身体にとって有害になり得る。
【0037】
ビタミンA、E、およびK
一態様では、ビタミンA、E、およびKは、透析を受けている患者の体組織中に有毒レベルまで蓄積し得る。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 366。さらにこの態様では、腎臓透析患者へのこれらのビタミン補給は禁忌である。別の態様では、本明細書で開示される補給剤には、ビタミンA、E、およびKが含まれない。
【0038】
ビタミンD
別の態様では、ビタミンDは、通常は、健康なまたは良好に機能している腎臓によって活性化される脂溶性ビタミンである。一態様では、腎不全の場合、身体は十分なビタミンDを産生し得ず、それは腎不全を有する患者に補給されるべきである。しかし、別の態様では、患者の医療提供者は、ビタミンD補給が必要でなく、および/またはさらなる害を及ぼすと判断してもよい。上の態様のいずれにおいても、補給剤はビタミンD源を含んでも含まなくてもよく、ケースバイケースで医療提供者の裁量で与えられる。
【0039】
一態様では、ビタミンDが本明細書に開示される製剤に含まれる場合、それは骨の健康および免疫系機能を改善してもよく、特定のがんから保護してもよい。さらなる態様では、ビタミンDは、小腸からのカルシウムおよびリン酸の吸収を増加させ得て、骨の石灰化において重要であり、血清中の適切なカルシウムおよびリンレベルを維持する。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 368。
【0040】
一態様では、単位用量当たりに存在するビタミンDの量は、1μg~100μg、1μg~50μg、または1μg~20μgである。別の態様では、本明細書で開示される補給剤の単位用量当たり、5~10μgのビタミンD(コレカルシフェロールとして)が提供される。
【0041】
本明細書の用法では、ミネラルは、食物または補給剤から得られて、人体の機能に必要とされる無機要素である。ミネラルとしては、カルシウム、クロム、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、カリウム、セレン、ナトリウム、バナジウム、コバルト、および亜鉛が挙げられるが、これに限定されるものではない。一態様では、ミネラルは補因子として作用し得る。その他の態様では、ミネラルは、細胞シグナル伝達のために使用され得るか、または身体の必須の構成要素(例えば、骨中のカルシウム)であり得るか、またはタンパク質、核酸、脂質、および炭水化物と結合して特定の二次、三次、および四次構造を維持し得る。
【0042】
別の態様では、ミネラルは、キレート錯体の一部であり得る。キレートは環状構造を有し、その中では、中心金属イオンが共有配位結合を介して密接に保持されて、配位化合物またはキレート錯体を形成する。さらに、キレートは天然に豊富に存在し;例えば、クロロフィルはマグネシウムと、ヘモグロビンは鉄と、ビタミンB12はコバルトと、ヘモシアニンは銅と、ならびにバナジウムまたはモリブデンを含む酵素と、複合体化する。
【0043】
慢性腎臓透析は、身体から必須ミネラルを枯渇させ得る。この態様では、本明細書で開示される補給剤には、いくつかの重要なミネラルが含まれる。
【0044】
カルシウム
一態様では、本明細書で開示される製剤には、カルシウムの薬理的に許容可能な化合物が含まれる。さらなる態様では、カルシウムは骨および歯の主要構成要素であるため、カルシウム補給は骨粗鬆症の予防に有用であり得る。なおもさらなる態様では、カルシウムの吸収および効果は、ビタミンDおよび副甲状腺ホルモンによって増強されまたは補助される。なおも別の態様では、カルシウムはビタミンB複合体のビタミン吸収にとって重要であってもよく、多数の細胞の機能的統合性にとって重要である。さらに別の態様において、カルシウム要求量はタンパク質摂取の増加と共に増加してもよい。
【0045】
一態様では、カルシウムは、カルシウムのイオン性化合物として提供される。このような化合物の例としては、クエン酸カルシウム、クエン酸カルシウム四水和物、乳酸カルシウム五水和物、およびアスコルビン酸カルシウムが挙げられるが、これに限定されるものではない。一態様では、本明細書に記載の製剤には、単位用量当たり100mg~2,500mg、100mg~2,000mg、100mg~1,500mg、100mg~1,000mg、または100mg~750mgのカルシウムが存在するような量のカルシウムのイオン性化合物が含まれる。例えば、クエン酸カルシウム四水和物は570.49の分子量を有し、そのうちカルシウムは21.08%である。したがって、製剤が単位用量当たり500mgのカルシウムを有するためには、単位用量当たりおよそ2,372.3mgのクエン酸カルシウム四水和物が存在するであろう。別の態様では、本明細書で開示される補給剤の単位用量当たり、250~500mgのカルシウムが提供される。
【0046】
マグネシウム
一態様では、本明細書で開示される製剤には、マグネシウムの薬理的に許容可能な化合物が含まれる。さらなる態様では、マグネシウムは、例えば、カルシウムイオンの細胞内への移行を助け、ひいては組織の石灰化を防ぐなど、体内でカルシウムが適切に機能するために必要である。いくつかの態様では、マグネシウムの補給は健康な心機能をサポートしてもよい。
【0047】
一態様では、マグネシウムは、通常の骨構造形成に、および数百の酵素、特にATP依存性リン酸化酵素、タンパク質合成酵素、および炭水化物代謝酵素の機能に必要である。さらなる態様では、細胞外マトリックス中のマグネシウムは、神経細胞および筋肉細胞における電位、そして神経筋接合部を横切る活動電位の伝達にとって重要である。
【0048】
一態様では、マグネシウムはマグネシウムのイオン性化合物として提供される。このような化合物の例としては、クエン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム一水和物もしくは七水和物、酢酸マグネシウム四水和物、マグネシウムD-グルコン酸塩水和物、または硝酸マグネシウム六水和物が挙げられるが、これに限定されるものではない。一態様では、本明細書に記載の製剤には、単位用量当たり100mg~500mg、150mg~500mg、200mg~500mg、250mg~500mg、または300mg~500mgのマグネシウムが存在するような量のマグネシウムのイオン性化合物が含まれる。
【0049】
亜鉛
一態様では、本明細書で開示される製剤には、亜鉛の薬理的に許容可能な化合物が含まれる。さらなる態様では、透析中に特に亜鉛が枯渇する(40%~78%)。いくつかの態様では、亜鉛は抗炎症性、抗うつ剤であり、免疫系をサポートするように機能する。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 388。
【0050】
別の態様では、亜鉛は多くの金属酵素の機能に不可欠であり、核酸の合成における補因子である。さらなる態様では、亜鉛は、肝臓からのビタミンAの動員において、そしていくつかの生殖系ホルモンにおいて重要であり、男性および女性の双方で機能する。
【0051】
一態様では、亜鉛は、亜鉛のイオン性化合物として提供される。このような化合物の例としては、クエン酸亜鉛、クエン酸亜鉛二水和物、酢酸亜鉛二水和物、または硝酸亜鉛六水和物が挙げられるが、これに限定されるものではない。一態様では、本明細書に記載の製剤には、単位用量当たり1mg~40mg、1mg~30mg、1mg~20mg、または5mg~20mgの亜鉛が存在するような量の亜鉛のイオン性化合物が含まれる。
【0052】
セレン
一態様では、本明細書で開示される製剤には、セレンの薬理的に許容可能な化合物が含まれる。さらなる態様では、セレンは肝臓および腎臓中に高濃度であり、したがって透析中に特に枯渇する。なおもさらなる態様では、セレンは強力な抗酸化剤であり、フリーラジカルの有害な効果に対して使用されると、特に有用である。別の態様では、セレン補給は動脈硬化および有害な分子から保護してもよい。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 387。
【0053】
一態様では、セレンは、例えば、セレン酸ナトリウムなどのセレンのイオン性化合物として提供される。一態様では、本明細書に記載の製剤には、単位用量当たり10μg~400μg、10μg~300μg、10μg~200μg、10μg~100μg、または25μg~80μgのセレンが存在するような量のセレンのイオン性化合物が含まれる。
【0054】
鉄
一態様では、本明細書で開示される製剤には、鉄の薬理的に許容可能な化合物が含まれる。さらなる態様において、鉄は貧血を予防するのに不可欠である。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 380。なおも別の態様では、生化学的に、鉄は酸素および電子の輸送にとって、ならびに貧血を予防し赤血球の質および量を改善するのに重要である。さらなる態様では、ヘム鉄が食肉中に見いだされて良く吸収される一方で、非ヘム鉄はほとんど吸収されない。なおもさらなる態様では、鉄の補給は、肉をほとんどまたは全く含まない食餌を摂取する患者にとって、特に重要であってもよい。
【0055】
一態様では、鉄は、例えば、グルコン酸鉄、グルコン酸鉄二水和物、または硫酸鉄七水和物などの鉄のイオン性化合物として提供される。一態様では、本明細書に記載の製剤には、単位用量当たり1mg~45mg、1mg~30mg、1mg~20mg、または5mg~20mgの鉄が存在するような量の鉄のイオン性化合物が含まれる。
【0056】
一態様では、本明細書で開示される製剤には、1つまたは複数のアミノ酸が組み込まれている。さらなる態様では、これらのアミノ酸は、タンパク質新生または非タンパク質新生であり得る。
【0057】
L-カルニチン
L-カルニチンはビタミン様分子であり、それは分解のために脂肪酸をミトコンドリアに輸送するために、身体によって使用される。それは、リジンおよびメチオニンから肝臓および腎臓において合成される、非タンパク質新生アミノ酸である。この必須アミノ酸は、慢性腎臓透析によって血液から完全にまたはほぼ完全に枯渇する。L-カルニチン欠乏症は、不整脈およびアンギナをはじめとするが、これに限定されるものではない、心臓の有害な状態と関連があり;したがって、一態様では、L-カルニチンを補給することによって、腎臓透析に関連する心臓損傷および心臓事象の発生率を低下させ得る。さらなる態様では、L-カルニチン欠乏症は、心臓およびその他の臓器におけるミトコンドリアの脂肪代謝を制限することが示されており;この態様では、L-カルニチンの補給は、正常なミトコンドリア脂肪代謝を回復させるのを助けてもよい。なおも別の態様では、L-カルニチン補給は、筋力低下の場合にサポートを提供し得て、循環器障害から保護してもよい。なおもさらなる態様では、L-カルニチンは、脂肪酸の酸化および細胞のエネルギー管理において重要であることが示されている。
【0058】
一態様では、本明細書で開示される製剤には、L-カルニチンの薬理的に許容可能な化合物が含まれる。L-カルニチンの薬理的に許容可能な化合物の例としては、血漿エステラーゼによって血液中で代謝されてL-カルニチンを生じ得る、アセチル-L-カルニチンまたはL-カルニチン-L-酒石酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。その他の態様では、L-カルニチンは直接使用され得る。一態様では、単位用量当たりに存在するL-カルニチンの薬学的に許容される化合物の量は、単位用量あたり100mg~3,500mg、500mg~2,500mg、500mg~1,000mg、1,000mg~2,000mgのL-カルニチンである。例えば、2,239mgのL-カルニチン-L-酒石酸は、単位用量当たり1,500mgのL-カルニチンを提供する。さらなる態様では、500mg~2,500mgのアセチル-L-カルニチンまたはL-カルニチン-L-酒石酸が、本明細書で開示される補給剤に含まれる。
【0059】
一態様では、医療提供者によって評価される患者の必要性に応じて、追加的な成分を本明細書に開示される補給剤に含め得る。
【0060】
柑橘類バイオフラボノイド
一態様では、本明細書で開示される製剤には、柑橘類バイオフラボノイドが含まれる。さらなる態様では、柑橘類果実はビタミンCの優れた供給源であり、柑橘類果実全体または柑橘類の外皮/果皮から供給される柑橘類ビオオフラボノイド製剤は、ビタミンCに富んでいてもよい。さらなる態様では、柑橘類バイオフラボノイドは、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ、タンジェリン、またはそれらの組み合わせに由来し得る。さらなる態様では、柑橘類バイオフラボノイドとしては、ルチン、ケルセチン、タンゲレチン(tangeritin)、ジオスメチン、ジオスミン、ナリンギン、ナリルチン(nairrutin)、ネオヘスペリジン、ノビレチン、ヘスペリジン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
なおもさらなる態様では、柑橘類バイオフラボノイドは、抗炎症性、抗酸化性、または抗微生物性であってもよい。なおも別の態様では、柑橘類バイオフラボノイドは、毛細血管透過性および循環、高血圧、腫脹もしくは浮腫、およびインスリン応答、またはそれらの組み合わせを改善してもよい。なおも別の態様では、柑橘類バイオフラボノイド源は、本明細書で開示される組成物をより美味にするフレーバー化合物を含有してもよい。
【0062】
クランベリーおよびチェリーの粉末抽出物
一態様では、本明細書で開示される製剤には、クランベリーおよびチェリーの粉末抽出物が含まれる。別の態様では、クランベリーおよびチェリー抽出物は、本明細書で開示される組成物をより美味にするフレーバー化合物を含有してもよい。さらなる態様では、クランベリーおよびチェリー抽出物は、抗酸化剤、ビタミン、およびミネラルの含有量が高い。
【0063】
なおもさらなる態様では、クランベリー抽出物は、抗バイオフィルム(すなわち細菌バイオフィルム)特性を有する糖であるD-マンノースを含有し、尿路内の細菌に結合してそれを凝集させ、ひいては尿路感染症を予防し、これは透析患者にとって特に重要であり得る。
【0064】
一態様では、チェリー抽出物はサワーチェリーに由来する。さらにこの態様では、サワーチェリー抽出物の摂取は、スタチンの副作用を軽減してもよく、血中コレステロールレベルを改善してもよく、関節炎および/または肥満に関連する炎症を軽減してもよく、健康な代謝をサポートしてもよい。
【0065】
一態様では、いくつかのミネラルは、本明細書で開示される補給剤には含まれない。
【0066】
カリウム
一態様では、カリウムは本明細書に記載の製剤から除外される。いくつかの態様では、高いカリウムレベルは、筋肉および心臓の問題を引き起こし得る。さらなる態様では、カリウムレベルは透析セッションの間に上昇し得て、心拍動に影響を及ぼすこともある。
【0067】
ナトリウム
別の態様では、ナトリウムは本明細書で開示される製剤から除外される。一態様では、ナトリウム摂取量の増加は口渇を引き起こし、水分貯留をもたらすこともある。さらなる態様では、過剰なナトリウム摂取および/または高いナトリウムレベルは、血圧を上昇させ得る。
【0068】
リン
一態様では、リンは本明細書で開示される製剤から除外される。さらなる態様では、血液中の過剰なリンは、骨からのカルシウム再吸収を引き起こし得る。なおも別の態様では、過剰なリンは皮膚の痒みを引き起こし得る。Handbook of Nonprescription Drugs,11th edition,1996,American Pharmaceutical Association.2215 Constitution Avenue,NW,Washington,DC 20037.Chapter 19,Nutritional Products,page 383-384。一態様では、リン酸結合剤が、本明細書で開示される製剤と一緒に患者に提供される。
【0069】
本明細書に記載の補給剤は、当該技術分野で公知の技術を用いて調合され得る。一態様では、乾燥形態で提供されるミネラル、ビタミン、およびアミノ酸を互いに混合して、乾燥粉末が製造される。ミネラル、ビタミン、およびアミノ酸に加えて、その他の薬理的に許容可能な増量剤を添加して、粉末形態の補給剤が調合され得る。例えばマルトデキストリンなどの多糖類を使用して、補給剤が調合され得る。
【0070】
一態様では、補給剤は、
(a)ビタミンB1
(b)ビタミンB2
(c)ビタミンB3
(d)ビタミンB5
(e)ビタミンB6
(f)ビタミンB7
(g)ビタミンB9
(h)ビタミンB12
(i)ビタミンC
(j)ビタミンD3
(k)薬理的に許容可能なカルシウム化合物
(l)薬理的に許容可能なマグネシウム化合物
(m)薬理的に許容可能な亜鉛化合物
(n)薬理的に許容可能なセレン化合物
(o)薬理的に許容可能な鉄化合物
(p)薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物
から構成される単位用量組成物である。
【0071】
別の態様では、補給剤は、乾燥粉末中に以下の成分を含む:
(a)単位用量当たり0.1mg~50mgの量のビタミンB1;
(b)単位用量当たり0.1mg~2mgの量のビタミンB2;
(c)単位用量当たり1mg~40mgの量のビタミンB3;
(d)単位用量当たり1mg~20mgの量のビタミンB5;
(e)単位用量当たり1mg~100mgの量のビタミンB6;
(f)単位用量当たり10μg~500μgの量のビタミンB7;
(g)単位用量当たり0.05mg~1.0mgの量のビタミンB9;
(h)単位用量当たり1μg~150μgの量のビタミンB12;
(i)単位用量当たり10mg~2,000mgの量のビタミンC;
(j)単位用量当たり1μg~100μgの量のビタミンD3;
(k)単位用量当たり100mg~2,500mgの量の薬理的に許容可能なカルシウム化合物;
(l)単位用量当たり100mg~500mgの量の薬理的に許容可能なマグネシウム化合物;
(m)単位用量当たり1mg~40mgの量の薬理的に許容可能な亜鉛化合物;
(n)単位用量当たり10μg~400μgの量の薬理的に許容可能なセレン化合物;
(o)単位用量当たり1mg~45mgの量の薬理的に許容可能な鉄化合物;および
(p)単位用量当たり100mg~3,500mgの量の薬理的に許容可能なL-カルニチン化合物。
【0072】
別の態様では、補給剤は、乾燥粉末中に以下の成分を含む:
(a)単位用量当たり0.5mg~2mgの量のビタミンB1;
(b)単位用量当たり0.5mg~2mgの量のビタミンB2;
(c)単位用量当たり1mg~20mgの量のビタミンB3;
(d)単位用量当たり1mg~15mgの量のビタミンB5;
(e)単位用量当たり1mg~10mgの量のビタミンB6;
(f)単位用量当たり10g~100μgの量のビタミンB7;
(g)単位用量当たり0.1mg~1.0mgの量のビタミンB9;
(h)単位用量当たり1μg~10μgの量のビタミンB12;
(i)単位用量当たり100mg~300mgの量のビタミンC;
(j)単位用量当たり1μg~20μgの量のビタミンD3;
(k)単位用量当たり100mg~1,000mgの量の薬理的に許容可能なカルシウム化合物;
(l)単位用量当たり100mg~500mgの量の薬理的に許容可能なマグネシウム化合物;
(m)単位用量当たり5mg~20mgの量の薬理的に許容可能な亜鉛化合物;
(n)単位用量当たり10μg~100μgの量の薬理的に許容可能なセレン化合物;
(o)単位用量当たり5mg~30mgの量の薬理的に許容可能な鉄化合物;および
(p)単位用量当たり1,000mg~3,000mgの量のL-カルニチン-L-酒石酸。
【0073】
別の態様では、補給剤は、表1に記載の以下の成分を有する。
【0074】
本明細書に記載の補給剤は、経口摂取されることが意図される。一態様では、補給剤は、錠剤またはカプセル剤として調合され得る。その他の態様では、補給剤は、粉末として調合され得て、それは水または別の飲料と混合され得る。代案としては、粉末形態の補給剤は、ヨーグルト、ピーナッツバター、または補給剤と容易に混合するその他の食品などの食品と混合され得る。
【0075】
本明細書に記載の製剤は、腎臓病を有するおよび/または腎臓透析を受けている患者、または腎臓病(生活習慣、家族歴など)のリスクがある個人に投与されるべきである。患者に投与される製剤の量は、各成分について推奨される1日量を超えてはならない。製剤は、透析前、透析中、透析後、およびそれらの任意の組み合わせで患者に投与され得る。本明細書に記載の栄養補給剤は、血液透析を受けている患者における腎臓および心臓の機能、ならびにミトコンドリアエネルギー機能の要求をサポートするように設計されている。この補給剤は、透析中に失われる必須ビタミンおよびミネラルを補給し、特に透析患者に害を及ぼすこともある化合物を含有せず、酸化的ストレスを受けている組織へのサポートを提供する。透析中に失われるミネラルおよびビタミンを補給することによって、対象はエネルギーレベルが上昇し、より生産的な生活を送れるようになる。
【0076】
1つまたは複数の追加的な補給剤が、本明細書に記載の補給剤と共に服用され得る。一態様では、オメガ3脂肪酸が、本明細書に記載の補給剤と共に服用され得る。オメガ3脂肪酸は脂質可溶性多量栄養素であり、代謝(すなわち、ATPの形態で捕捉されるエネルギー生産)にとって重要である。オメガ3脂肪酸は、慢性腎臓透析によってある程度身体から除去される。オメガ3脂肪酸は炎症を軽減し、ひいては慢性疾患(心疾患など)のリスクを低下させることが示されている。それらは、認知機能にとって重要であると考えられ、またトリグリセリドを低減する一方で、高密度リポタンパク(HDL)コレステロールを増加させることも示されている。オメガ3脂肪酸は、皮膚、関節、眼、および胃腸病状をはじめとする、いくつかのその他の病状の改善と結びつけられている。一態様では、オメガ3脂肪酸の補給は、高い心血管系リスクを有する人々において、血圧、血液循環、および血管弾性を改善する一方で、心血管イベントおよび冠動脈イベントを防止するのに特に重要であり得る。海産オメガ3脂肪酸https://en.wikipedia.org/wiki/Fatty_acid_metabolism。
【0077】
オメガ3脂肪酸は、魚、一部の植物、ナッツ油、および藻類に見いだされ、標準的な食餌において常に十分な量で摂取されるとは限らない。一態様では、これらの重要な多量栄養素は身体によって合成され得ないため、身体のオメガ3脂肪酸の供給を補給することが重要である。別の態様では、海産オメガ3脂肪酸(すなわち、魚または藻類由来)は、身体によって効率的に利用されない化合物であるALA(αリノレン酸)を主に含有する植物源由来のオメガ3脂肪酸と比較して、好ましい量のDHA(ドコサヘキサエン酸)およびEPA(エイコサペンタエン酸)を有する。
【0078】
なおも別の態様では、本明細書で開示される製剤には、海産オメガ3脂肪酸が含まれる。さらなる態様では、海産オメガ3脂肪酸は、サケ、サバ、イワシ、マグロ、またはニシンから供給され得る。多くの西洋食には、炎症を促進し得るより高い食餌性オメガ6脂肪酸が混在する。別の態様では、炎症および死亡リスクを低減するために、特に血液透析患者において、オメガ3脂肪酸を補給することが重要である。別の態様では、オメガ3の量はオメガ6の量よりも顕著に高い。
【0079】
さらに別の態様では、血液透析は、オメガ3脂肪酸の過酸化をもたらし得る酸化的機序を上方制御すると考えられており;これは、次に、脂肪酸構造の破壊と機能喪失をもたらし得る。この態様では、オメガ3脂肪酸の補給は、過酸化によって破壊された栄養素の供給を補給するために使用され得る。
【0080】
一態様では、海産オメガ3脂肪酸は、野生アラスカ産サケ油または海産藻類油として提供される。さらなる態様では、海産オメガ3脂肪酸のEPA:DHA比は1:1~4:1である。一態様では、単位用量当たりに存在する海産オメガ3脂肪酸の量は、500mg~4,000mg、500mg~3,000mg、500mg~2,000mg、または500mg~1,500mgである。別の態様では、本明細書で開示される補給剤の単位用量当たり、1000mgの海産オメガ3脂肪酸が提供される。
【0081】
別の態様では、本明細書に記載の補給剤によって、補酵素Q10(CoQ10)が摂取され得る。CoQ10は抗酸化剤の役割を果たし、酸化的ストレスから細胞膜を保護する。別の態様では、CoQ10は、ミトコンドリア(および細胞中のその他の部分)中の重要な補酵素であって細胞呼吸に関与し、それは最終的にアデノシン三リン酸の形態のエネルギーを生じる。なおも別の態様では、CoQ10は、心臓の健康に不可欠な低密度リポタンパク質(LDL)を酸化から保護する。さらなる態様では、還元型のCoQ10(CoQ10H2)は、αトコフェロキシル遊離基からビタミンEを再生し得て、ひいては酸化ストレスの軽減をもたらす。
【0082】
一態様では、特定の患者は、平均食餌によって提供されるよりも高いCoQ10摂取を必要とする。これらとしては、運動選手、甲状腺機能亢進症を有する患者、スタチンを服用している患者、および高齢者が挙げられるが、これに限定されるものではない。したがって、一態様では、特に高齢透析患者はCoQ10補給から恩恵を受けてもよい。関連態様では、CoQ10は、糖尿病患者のインスリン要求量を低下させ得て;ひいては、糖尿病の透析患者もまたCoQ10補給の恩恵を受けてもよい。
【0083】
しかし別の態様では、CoQ10補給はワルファリンまたはその他の抗凝血剤を服用している患者では避けるべきであり、それはCoQ10がこれらの薬の活性を低下させ得るためである。この態様では、本明細書で開示される補給剤にはCoQ10が含まれない。
【0084】
一態様では、本明細書で開示される補給剤中のCoQ10は、CoQ10の還元型であるユビキノールとして提供され、それは特に高い取り込み百分率を有し、引き続いて血液中のCoQ10レベルの増加をもたらす。ユビキノールは、α-トコフェロール遊離基からビタミンEを効果的に再生する。一態様では、単位用量当たりに存在するCoQ10H2(例えば、ユビキノール)の量は、70mg~400mg、70mg~300mg、または150mg~250mgである。別の態様では、本明細書で開示される補給剤には、200mgのユビキノールが含まれる。
【0085】
一態様では、本明細書に記載の補給剤と共に、ターメリックが摂取され得る。ターメリックはいくつかの態様では、腎臓に有用である抗炎症および抗酸化特性を有する。別の態様では、本明細書で開示される製剤には、ターメリックが含まれない。いくつかの態様では、ターメリックは、敏感またはアレルギー性、妊娠中または授乳中、糖尿病で抗凝血剤を服用している患者、胆嚢病状を有する患者、および/またはGERD(胃食道逆流症)などの消化器疾患を有する患者には、投与されるべきでない。一態様では、ターメリックは、別個の分配形態(例えば、別個のカプセル)で調製され、患者の医療提供者の裁量で患者に投与される。なおも別の態様では、ターメリックは強力な血液希釈剤であることが知られているので、患者が手術を受けようとしている、および/または出血障害を有する場合を除いて、補給剤と共に提供される。
【0086】
一態様では、本明細書に記載の補給剤と共に、ペペリン(pepperine)が摂取され得る。いくつかの態様では、ターメリックは身体によって容易に吸収されず、ペペリン(pepperine)は吸収を10~20倍高める。一態様では、本明細書で開示される製剤には、500mgのターメリック当たり100mgのペペリン(pepperine)が含まれる。一態様では、単位用量当たりに存在するターメリックの量は、1g~3g、1.5g~2.5g、または2gである。
【0087】
一態様では、補給剤はキットとして調合され、1つの区画またはバイアルは、乾燥形態(例えば、錠剤、粉末)で提供されるミネラル、ビタミン、およびアミノ酸から構成される本明細書に記載の補給剤の混合物を含み、第2の区画は、その他の補給剤(例えば、カプセル形態の海産オメガ3脂肪酸、ゲル形態のユビキノール、カプセル内のターメリック、またはそれらの任意の組み合わせ)を含有する。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、本明細書で説明され特許請求される材料、物品、および方法をどのように生成して評価するかという、完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、純粋に例示的であることが意図され、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を制限することは意図されない。数字(例えば、量、温度など)に関して、正確さを保証するための努力がなされたが、いくらかの誤差および偏差は考慮されるべきである。特に断りのない限り、部は重量部であり、温度は℃単位でありまたは環境温度であり、圧力は大気圧前後である。記載される方法から得られる生成物の純度および収率を最適化するために使用し得る、例えば成分濃度、所望の溶剤、溶剤混合物、温度、圧力およびその他の反応範囲および条件などの、反応条件の多数のバリエーションおよび組み合わせがある。このようなプロセス条件を最適化するためには、妥当で日常的な実験法のみが必要であろう。
【0089】
表2中の成分を乾燥形態で互いに混合し、補給剤を製造した。マルトデキストリンを、8.5gの補給剤が製造されるような量で添加した。
【0090】
本明細書に記載の補給剤は、透析を受けている対象で評価された。対象は、過去20年間にわたり透析治療を受けており、過去13年は自宅で透析治療を受けている。透析は一晩おきに7時間自宅で行われる。
【0091】
対象は最初に、補給剤の全用量を摂取し始めた(表2に提供される補給剤の8.5g)。しかし、栄養補給剤の居眠り(doze)は半量に調節された。対象は、朝食用の迅速吸収炭水化物と共に補給剤の4分の1を摂取し、迅速吸収炭水化物を含む昼食でも同一用量を摂取した。
【0092】
3週間後に、対象の精神状態が改善した。対象は、以前のように長時間眠る必要がなくなった。対象にはより多くのエネルギーがあり、ゴルフをプレーするなどのより多くの活動をすることができる。
【0093】
約6週間にわたり補給剤を摂取した後、対象にはより多くのエネルギーがあり、より多くの屋外活動をすることができる(例えば、18ホールのゴルフをプレーする)。対象は、補給剤を摂取していなかったときに比べてはるかに多く汗をかいたが、これは体内の過剰な液体を除去するのが困難な透析患者にとって好ましい。対象はまた睡眠が非常に良好で、より集中力がある。対象の血圧は、良好である。透析治療のために調節されたナトリウムのレベルを除いて、腎臓の血液サンプルもまた良好である。
【0094】
本公開全体にわたり、様々な文献が参照される。これらの文献の開示は、本明細書に記載される方法、組成物、および化合物をより完全に説明するために、その内容全体を参照によって本出願に援用する。
【0095】
本明細書に記載の材料、方法、および物品に対して、様々な修正および変更を加え得る。本明細書に記載の材料、方法、および物品のその他の態様は、本明細書の考察および本明細書で開示される材料、方法、および物品の実施から明らかになるであろう。明細書および実施例は、例示的と見なされることが意図される。