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特許7012731自動スライド作製における試薬の評価及び制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】自動スライド作製における試薬の評価及び制御
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20220204BHJP
   G01N 1/31 20060101ALI20220204BHJP
   G01F 23/68 20060101ALI20220204BHJP
   G01F 23/292 20060101ALI20220204BHJP
   G01F 23/296 20220101ALI20220204BHJP
   G01F 23/64 20060101ALI20220204BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
G01N33/48 P
G01N1/31
G01F23/68
G01F23/292 A
G01F23/296 A
G01F23/64 A
G01N33/00 B
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2019543190
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2017058111
(87)【国際公開番号】W WO2018081142
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】62/412,529
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ベレズナヤ,スビトラナ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャンバフシュ,マームード
(72)【発明者】
【氏名】オラー,エマ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラングスナー,ロバート
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04812412(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0134731(US,A1)
【文献】特表2012-503180(JP,A)
【文献】特開平08-005543(JP,A)
【文献】特開平01-154568(JP,A)
【文献】国際公開第2015/135550(WO,A1)
【文献】特表2005-509140(JP,A)
【文献】特開2016-070833(JP,A)
【文献】特開平03-068063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N35/00-37/00
G01N33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色剤を評価する方法であって、
少なくとも1つの検体スライドとブランクスライドとを含む複数のスライドを染色剤の中で同時に染色すること、
検体スライドイメージング装置を用いて前記染色したブランクスライドのデジタルカラー画像を取得すること、
前記デジタルカラー画像を処理することにより、少なくとも1つの染色パラメータ値を備えるバックグラウンド染色シグネチャを生成すること、及び、
前記バックグラウンド染色シグネチャを参照シグネチャと比較することにより、前記染色剤を評価すること、を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの染色パラメータ値が、染色強度値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理することが、前記デジタルカラー画像を個々のカラーチャンネルへ分けることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの染色パラメータ値が、赤色染色強度値を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの染色パラメータ値が、緑色染色強度値を含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの染色パラメータ値が、青色染色強度値を含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記取得することが、前記染色したブランクスライドの異なる領域の複数のデジタルカラー画像を取得することを含み、前記処理することが、前記複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値を備えるバックグラウンド染色シグネチャを生成するべく前記複数のデジタルカラー画像を処理することを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値が、染色強度値を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記染色パラメータ値が、前記複数の画像の染色強度の標準偏差を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記処理することが、前記複数の画像のそれぞれを個々のカラーチャンネルへ分けることを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値が、赤色染色強度値を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記染色パラメータ値が、前記複数の画像の赤色染色強度の標準偏差を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値が、緑色染色強度値を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記染色パラメータ値が、前記複数の画像の緑色染色強度の標準偏差を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値が、青色染色強度値を含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記染色パラメータ値が、前記複数の画像の青色染色強度の標準偏差を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記染色したブランクスライドの異なる領域が、隣接する領域である、請求項7から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記染色したブランクスライドの異なる領域が、隣接しない領域である、請求項7から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記染色したブランクスライドの異なる領域が、前記スライドの中央の長軸に沿っている、又は中央の短軸に沿っている、請求項7から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記染色したブランクスライドが、長軸及び短軸を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記染色したブランクスライドの異なる領域が、前記スライドの長軸に沿っている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記染色したブランクスライドの異なる領域が、前記スライドの短軸に沿っている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記染色したブランクスライドの異なる領域が、前記短軸に沿っており、かつ前記長軸に沿っている、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記参照シグネチャが、前記検体スライドイメージング装置を用いて取得した、染色していないスライドのデジタル画像に基づく、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記参照シグネチャが、前記検体スライドイメージング装置を用いて取得した、既知の品質の染色剤で染色したブランクスライドのデジタル画像に基づく、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記染色剤の品質を評価する、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、前記染色剤の品質が所定の閾値を上回るかどうかについての結果を出力することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記染色剤の中の残屑の存在を評価する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、前記染色剤がストリークを生じるかどうかを評価する、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
染色剤の品質を制御する方法であって、
請求項26から29のいずれか一項に記載の方法で染色剤の品質を評価すること、
前記染色剤の品質が所定の閾値を上回るかどうかについての結果を出力すること、
前記結果に基づいて前記染色剤の調節をトリガーすること、を含む方法。
【請求項31】
前記調節が、染色浴の中に存在する染色剤の量を増加させることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記調節が、前記染色剤の1つ以上の成分を前記染色剤に補充することを含む、請求項30又は請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記調節が、前記染色浴を空にし、前記染色剤を置換することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記染色浴を空にし、前記染色剤を置換することが、前記染色浴を洗浄することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2016年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/412,529号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
作製されたスライド上の患者検体の組織学的及び血液学的分析は、今日も臨床医学の基礎とされている。検体作製と分析を含むこのようなプロセスの自動化が進んでいる。自動組織学及び血液学は、作製及び分析プロセスでの観察者による偏りの発生及び人間の主観の影響を低減するとともに検体処理量を増加させる。
【0003】
スライドへの検体の適用から、検体の染色、さらにはイメージング及び分析に至るまでの、スライド作製手順のすべてのステップを取り扱うべく、自動組織学及び血液学スライド作製システムが開発されている。このような装置の増加した処理量と、全プロセスを自動化する多大な複雑さにより、用いられる試薬には厳しい要求を課される。自動組織学及び/又は血液学分析器で一貫した結果を生み出すには、最適な染色及び自動分析アルゴリズムの適正な機能を保証するべく、固定、染色、洗浄などを含む種々のステップで用いられる多くの試薬の微調整が必要とされる。さらに、試薬の品質の低下又は試薬浴の不適切な充填の迅速な検出は、分析に不適当なスライドの作製を抑制又は防止し、サンプルを再検査する必要性を低減することができる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、自動スライド作製機器におけるスライド作製の態様の自動制御のための方法を提供する。方法の態様は、試薬の量、質、及び性能の自動評価、並びに、例えば試薬浴の中に存在する試薬量の調節、試薬組成の調節、及び試薬の置換を含む、これらの評価に基づく試薬の自動調節を含む。開示する方法を行う際に有用な装置及びシステムも本明細書で提供される。
【0005】
本開示の態様は、浴の中に存在する液体の体積を評価する方法であって、当該方法は、検出器への信号経路に沿って信号を発すること、所定体積の液体(volume of liquid)が入っている浴に一端が接続された垂直レベル管内でフロートを信号経路内に配置すること、信号が検出器に到達するのを少なくとも部分的にブロックするためにフロートを上昇又は下降させるべく液体の体積を増加又は減少させること、少なくとも部分的にブロックされた信号を検出すること、及び検出した部分的にブロックされた信号に基づいて浴の中に存在する液体の体積を評価することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、信号は光信号であり、信号経路は光路であり、検出器は光検出器である。いくつかの実施形態では、信号は音響信号であり、信号経路は音響経路であり、検出器は音響検出器である。いくつかの実施形態では、垂直レベル管は、信号経路が通る開口を備える。いくつかの実施形態では、開口は垂直スリットである。いくつかの実施形態では、評価することは、少なくとも部分的にブロックされた信号の振幅を測定することを含み、振幅は、浴の中に存在する液体の体積と線形相関する。いくつかの実施形態では、方法は、評価の結果を報告することをさらに含む。いくつかの実施形態では、浴は試薬浴であり、所定体積の液体はスライド作製試薬を含む。いくつかの実施形態では、スライド作製試薬は、固定剤である。いくつかの実施形態では、スライド作製試薬は、組織学的染色剤である。いくつかの実施形態では、スライド作製試薬は、洗浄溶液である。
【0007】
本開示の態様は、スライドキャリアにより保持されたスライドの数を自動的に判定する方法であって、スライドキャリアにより保持された1つ以上のスライドをエミッタと検出器との間に形成される信号経路内に配置すること、1つ以上のスライドが信号経路内にあるときに検出器により検出される信号を測定すること、及び測定に基づいてスライドキャリアにより保持されたスライドの数を判定することとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、判定することは、測定した信号を参照値と比較することを含む。いくつかの実施形態では、参照値は、エミッタにより発せられた信号の振幅に基づいている。いくつかの実施形態では、参照値は、所定の透過パーセント値である。いくつかの実施形態では、測定することは、エミッタにより発せられた信号のうち何パーセントが検出器へ伝送されるかを計算することを含む。いくつかの実施形態では、経路は浴を通る。いくつかの実施形態では、上記経路は、スライドキャリアにより保持された1つ以上のスライドがとる浴への又は浴からのルートを通る。いくつかの実施形態では、スライドキャリアにより保持された1つ以上のスライドは2つ以上のスライドを含む。いくつかの実施形態では、方法は、スライドキャリアにより保持されたスライドの判定された数に基づいて浴の中に存在する液体の体積を調節することをさらに含む。いくつかの実施形態では、調節することは、浴の中に存在する液体の体積を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、調節することは、浴の中に存在する液体の体積を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、液体の体積を調節することは、浴の中に存在する液体のレベルを0.1mmから10mmの範囲で上昇又は下降させることを含む。いくつかの実施形態では、液体の体積を調節することは、浴の中に存在する液体のレベルを0.5mmから5mmの範囲で昇又は下降させることを含む。いくつかの実施形態では、浴は試薬浴であり、所定体積の液体はスライド作製試薬を含む。いくつかの実施形態では、スライド作製試薬は、固定剤である。いくつかの実施形態では、スライド作製試薬は、組織学的染色剤である。いくつかの実施形態では、スライド作製試薬は、洗浄溶液である。
【0009】
本開示の態様は、試薬浴の中に存在する液体の体積を自動的に調節する方法であって、試薬浴の中に存在する液体の体積を評価すること、スライドキャリアにより保持されたスライドの数を判定すること、評価した液体の体積及び判定したスライドの数から、判定した数のスライドが試薬浴へ挿入されるときに期待される試薬浴に関する予測液面レベルを計算すること、調節量を特定するべく試薬浴に関する予測液面レベルを所定の液面レベルと比較すること、及び調節量に従って試薬浴の中に存在する液体の体積を調節することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、調節することは、試薬浴の中に存在する液体の体積を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、調節することは、試薬浴の中に存在する液体の体積を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、スライドキャリアにより保持されたスライドの数を判定することは、1つ以上のスライドが試薬浴へ向かう途中に行われる。いくつかの実施形態では、スライドキャリアにより保持されたスライドの数を判定することは、1つ以上のスライドが試薬浴とは別の一次浴へ挿入されるときに行われる。いくつかの実施形態では、一次浴は固定浴である。いくつかの実施形態では、一次浴は洗浄浴である。いくつかの実施形態では、試薬浴は染色浴である。いくつかの実施形態では、一次浴と試薬浴は、両方とも染色浴である。
【0011】
本開示の態様は、浴体積インジケータであって、エミッタと、信号経路を形成するエミッタと対向して配置される検出器と、一端が浴に接続され、エミッタと検出器との間の信号経路内に配置されるフロートを備える垂直レベル管とを備え、フロートが、浴内の所定体積の液体により上昇又は下降させられるときに、経路に沿って発せられた信号が検出器に到達するのを少なくとも部分的にブロックする、浴体積インジケータを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、信号は光信号であり、信号経路は光路であり、検出器は光検出器である。いくつかの実施形態では、信号は音響信号であり、信号経路は音響経路であり、検出器は音響検出器である。いくつかの実施形態では、垂直レベル管は開口を備え、フロートは、浴内の所定体積の液体により上昇又は下降させられるときに、信号経路に沿って発せられた信号が開口を通過する及び検出器に到達するのを少なくとも部分的にブロックする。いくつかの実施形態では、開口は垂直スリットである。いくつかの実施形態では、体積インジケータは、検出器が受信した信号の振幅を測定し、浴内の液体の体積を出力するための、検出器と通信するプロセッサをさらに備える。いくつかの実施形態では、浴は染色浴である。いくつかの実施形態では、浴は固定浴である。いくつかの実施形態では、浴は洗浄浴である。
【0013】
本開示の態様は、自動スライドカウンティングシステムであって、それぞれスライドを保持するように寸法設定された複数のスロットを備えるスライドキャリアと、スライドキャリアの中に保持されたスライドにより遮られる信号経路を備えるエミッタ・検出器ペアとを備え、エミッタ・検出器ペアの検出器と通信するプロセッサが、実行されるときに、プロセッサに、信号経路がスライドにより遮られるときに検出器が受信した信号の振幅を測定させ、上記測定に基づいてスライドキャリアにより保持されたスライドの数を判定させる命令を有するシステムを含む。
【0014】
本開示の態様は、体積制御式のスライド染色システムであって、自動スライドカウンティングシステムと、浴体積インジケータを備える試薬浴と、弁とを備え、自動スライドカウンティングシステムのプロセッサが、実行されるときに、プロセッサに、スライドキャリアにより保持されたスライドの判定された数に基づいて試薬浴の中に存在する液体の体積を調節するべく弁をトリガさせる命令をさらに備える、システムを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、試薬浴は染色浴である。いくつかの実施形態では、システムは、スライドキャリアにより保持されたスライドの判定された数に対応する体積調節のライブラリを備える、プロセッサと通信するコンピュータメモリをさらに備える。いくつかの実施形態では、弁は、試薬浴の中に存在する液体の体積を増加させるべくトリガされる。いくつかの実施形態では、弁は、試薬浴の中に存在する液体の体積を減少させるべくトリガされる。いくつかの実施形態では、スライドキャリアの中に保持されたスライドにより遮られる信号経路は、試薬浴への輸送中にスライドがとる経路を通る。いくつかの実施形態では、システムは、そこからスライドキャリアがスライドを試薬浴へ輸送する、一次浴をさらに備える。いくつかの実施形態では、スライドキャリアの中に保持されたスライドにより遮られる信号経路は一次浴を通る。いくつかの実施形態では、一次浴は固定浴である。いくつかの実施形態では、一次浴は洗浄浴である。いくつかの実施形態では、一次浴と試薬浴は、両方とも染色浴である。
【0016】
本開示の態様は、染色剤を評価する方法であって、少なくとも1つの検体スライドとブランクスライドとを含む複数のスライドを染色剤の中で同時に染色すること、検体スライドイメージング装置を用いて染色したブランクスライドのデジタルカラー画像を取得すること、少なくとも1つの染色パラメータ値を備えるバックグラウンド染色シグネチャを生成するべくデジタルカラー画像を処理すること、及び染色剤を評価するべくバックグラウンド染色シグネチャを参照シグネチャと比較することとを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、総合的な染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、処理することは、デジタルカラー画像を個々のカラーチャンネルへ分けることを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、赤色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、緑色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、青色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、取得することは、染色したブランクスライドの異なる領域の複数のデジタルカラー画像を取得することを含み、処理することは、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値を備えるバックグラウンド染色シグネチャを生成するべく複数のデジタルカラー画像を処理することを含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、総合的な染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、総合的な染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、処理することは、複数の画像のそれぞれを個々のカラーチャンネルへ分けることを含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、赤色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、赤色染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、緑色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、緑色染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、青色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、青色染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドの異なる領域は、隣接する領域である。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドの異なる領域は、隣接しない領域である。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドの異なる領域は、スライドの中央に沿った経路内にある。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドは、長軸及び短軸を備える。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドの異なる領域は、スライドの長軸に沿った経路内にある。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドの異なる領域は、スライドの短軸に沿った経路内にある。いくつかの実施形態では、染色したブランクスライドの異なる領域は、短軸に沿った経路及び長軸に沿った経路を備える。いくつかの実施形態では、参照シグネチャは、検体スライドイメージング装置を用いて取得した、染色していないスライドのデジタル画像に基づいている。いくつかの実施形態では、参照シグネチャは、検体スライドイメージング装置を用いて取得した、既知の品質の染色剤で染色したブランクスライドのデジタル画像に基づいている。いくつかの実施形態では、方法は、染色剤の品質を評価する。いくつかの実施形態では、方法は、染色剤の品質が所定の閾値を上回るかどうかについての結果を出力することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、染色剤の中の残屑(デブリ)の存在を評価する。いくつかの実施形態では、方法は、染色剤がストリークを生じるかどうかを評価する。
【0018】
本開示の態様は、染色剤の品質を制御する方法であって、染色剤の品質を評価することと、染色剤の品質が所定の閾値を上回るかどうかについての結果を出力することと、結果に基づいて染色剤の調節をトリガすることとを含む、方法を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、調節は、染色浴の中に存在する染色剤の量を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、調節は、染色剤の1つ以上の成分を染色剤に補充することを含む。いくつかの実施形態では、調節は、染色浴を空にし、染色剤を置換することを含む。いくつかの実施形態では、空にし、置換することは、染色浴を洗浄することをさらに含む。
【0020】
本開示の態様は、染色剤を評価するためのシステムであって、検体スライドイメージング装置と、参照シグネチャを記憶するコンピュータメモリと、検体スライドイメージング装置及びコンピュータメモリと通信するプロセッサとを備え、プロセッサが、実行されるときに、プロセッサに、染色したブランクスライドのデジタルカラー画像を検体スライドイメージング装置から受信させ、少なくとも1つの染色パラメータ値を備えるバックグラウンド染色シグネチャを生成するべくデジタルカラー画像を処理させ、コンピュータメモリから参照シグネチャを取得させ、染色剤を評価するべくバックグラウンド染色シグネチャを参照シグネチャと比較させる命令を有するシステムを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムは、評価の結果を出力する、プロセッサと通信するユーザインターフェースをさらに備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、総合的な染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、プロセッサは、実行されるときに、プロセッサに、デジタルカラー画像を個々のカラーチャンネルへ分けさせる命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、赤色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、緑色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの染色パラメータ値は、青色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、プロセッサは、実行されるときに、検体スライドイメージング装置に、染色したブランクスライドの異なる領域の複数のデジタルカラー画像を取得させる命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、プロセッサは、実行されるときに、プロセッサに、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値を含むバックグラウンド染色シグネチャを生成するべく複数のデジタルカラー画像を処理させる命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、総合的な染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、総合的な染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、プロセッサは、実行されるときに、プロセッサに、複数のデジタルカラー画像のそれぞれを個々のカラーチャンネルへ分ける命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、赤色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、赤色染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、緑色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、緑色染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、複数の画像のそれぞれに関する少なくとも1つの染色パラメータ値は、青色染色強度値を含む。いくつかの実施形態では、染色パラメータ値は、青色染色均一性値を含む。いくつかの実施形態では、参照シグネチャは、検体スライドイメージング装置を用いて取得した、染色していないスライドのデジタル画像に基づいている。いくつかの実施形態では、参照シグネチャは、検体スライドイメージング装置を用いて取得した、既知の品質の染色剤で染色したブランクスライドのデジタル画像に基づいている。いくつかの実施形態では、プロセッサは、実行されるときに、プロセッサに、評価の結果をコンピュータメモリに記憶された所定の染色剤の品質閾値と比較させ、染色剤の品質が所定の染色剤の品質閾値を上回るかどうかについての結果を出力させる命令をさらに含む。
【0022】
本開示の態様は、染色剤の品質を制御するためのシステムであって、染色剤を評価するためのシステムと、染色剤を備える染色浴と、プロセッサと通信する1つ以上の弁とを備え、プロセッサが、実行されるときに、評価に基づいて染色剤を調節するべく1つ以上の弁をトリガする命令をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ以上の弁は、トリガされたときに染色浴の中に存在する染色剤の量を増加させる染色剤を備えるリザーバに接続された充填弁を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の弁は、トリガされたときに染色浴に染色剤の成分を追加する染色剤の成分を備えるリザーバに接続された充填弁を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の弁は、トリガされたときに染色浴に洗浄流体を追加する、洗浄流体を備えるリザーバに接続された充填弁を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の弁は、トリガされたときに染色浴の中に存在する染色剤の量を減少させる染色浴に接続されたドレン弁を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本明細書で説明される方法の一実施形態に係る組織学的スライド作製のプロセスの概略図である。
図2】スライドの種々の構成要素(コンポーネント)を特定する、例示的であって限定ではない寸法を提供する染色された塗沫標本を有するスライドの概略図である。
図3】本開示の一実施形態に係るレベル管に基づく自動体積インジケータシステムの概略図である。
図4】本開示の一実施形態に係るレベル管に基づく自動体積インジケータシステムにおける検出器振幅出力とフロート位置との間の線形相関を実証する図である。
図5】本開示の実施形態に係るスライド、スライドキャリアの中に存在する複数のスライド、及び試薬浴へ挿入される複数のスライドが入っているスライドキャリアを示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係る自動スライドカウンティングに用いるためのスライドキャリア内に存在する複数のスライドに対するエミッタ・検出器ペアにより画定される信号経路の位置の概略図である。
図7】ソーダ石灰ガラスの典型的な透過スペクトルを提供する図である。
図8】光路内のスライドの数の増加に伴う光信号の透過が段階的に減少することを示す図である。
図9】本開示の一実施形態に係る自動体積インジケータと自動スライドカウンタシステムとを組み合わせている一体化されたシステムの略図である。
図10】本明細書で説明される自動液面レベル評価及び調節の実施形態に有用な論理図である。
図11】本開示の一実施形態に係るブランクの染色したスライドから得られた染色剤の品質に対する計算したパラメータを示すヒストグラムの例である。
図12】本開示の一実施形態に係るブランクの染色したスライドから得られた染色剤の品質に対する計算したパラメータを示すヒストグラムのさらなる例である。
図13】本開示の一実施形態に係るブランクの染色したスライドから得られた染色剤の品質に対する計算したパラメータを示すヒストグラムのさらなる例である。
図14】本開示の一実施形態に係る染色していないブランクスライドから得られた染色剤の品質に対する計算したパラメータを示すヒストグラムの例である。
図15】本明細書で説明される細胞画像、ヒストグラム、及び計算した画像パラメータに対するバックグラウンド染色の影響を実証する図である。
図16】染色された塗沫標本を有するスライドの長軸及び短軸を示す図である。
図17図16に描かれたスライドの長軸に沿って得られた画像のスティッチングしたモンタージュを示す図である。
図18図16に描かれたスライドの短軸に沿って得られた画像のスティッチングしたモンタージュを示す図である。
図19】本開示の一実施形態に係る染色の際の局在化した欠陥を検出するための染色したブランクスライドの強度プロフィールの使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
「評価する」という用語は、任意の形式の測定を含み、要素が存在するか否かを判定することを含む。「判定する」、「測定する」、「評定する」、「評価する」、及び「アッセイする」という用語は、互換的に用いられ、定量的判定及び定性的判定を含む。評価は、相対又は絶対であり得る。「~の識別情報(identity)を評価すること」は、特定の化合物又は調製物又は物質の最も可能性の高い識別情報を判定すること、及び/又は予測化合物又は調製物又は物質が存在するか又は存在しないかを判定することを含む。「~の品質を評価すること」は、例えば、判定した値と既知の品質の参照又は標準との比較を通じて、品質の定性的又は定量的評価を行うことを含む。
【0026】
本明細書で用いられる場合の「組織学」及び「組織学的」という用語は、一般に、植物及び動物を含むがこれらに限定されない多細胞生物から得られた細胞の細胞解剖学及び/又は形態学の顕微鏡分析を指す。したがって、「組織学的染色剤」は、細胞解剖学及び/又は形態学の分析に用いられる染色剤を指し、「組織学分析器」は、多細胞の動物から得られた細胞の解剖学及び/又は形態学を分析する機器を指す。本明細書で用いられる場合の組織学分析器は、一般に、組織学的評価を行うのに1つ以上の組織学的染色剤を用いる機器を指すことになる。組織学的分析器はまた、そのプロセスが作製中にユーザからの手入力を必要とする又はしない場合があることを含む組織学的分析のためにスライドを作製するのに用いられてよく、又は用いられなくてよい(すなわち、このような装置は、或る場合には自動であり得る)。
【0027】
本明細書で用いられる場合の「体液」という用語は、一般に、個体又は個体群から得られる様々なサンプルタイプを包含する「生体サンプル」から導出され、診断、モニタリング、又はスクリーニング・アッセイに用いることができる、流体を指す。この定義は、血液及び生体由来の他の液体サンプルを包含する。この定義はまた、有核細胞、無核細胞、病原体などの特定の成分の個々のサンプルの混合又はプーリング、試薬での処理、可溶化、又は濃縮などにより、それらの調達後に多少なりとも操作されているサンプルを含む。
【0028】
「生体サンプル」という用語は、臨床サンプルを包含し、また、培養細胞、細胞上清、細胞溶解産物、血清、血漿、生体流体、及び組織サンプルを含む。「生体サンプル」という用語は、尿、唾液、脳脊髄液、間質液、眼液、滑液、血漿及び血清などの血液分画物などを含む。
【0029】
「対照(control)」、「対照アッセイ」、「対照サンプル」などの用語は、例えば、関連する実験サンプルから得られた結果が信頼性があるかどうかを示すために、どんな信頼度に関連する実験結果が真の結果を示すかを示すために、及び/又は実験結果の校正を可能にするかを示すために、期待される結果が高い確実性をもって分かっているサンプル、テスト、若しくは実験手順又は診断手順又は実験設計の他の部分を指す。例えば、或る場合には、対照は、陰性対照アッセイが陽性結果をもたらさないという高い確実性を実験者が有し得るようにアッセイの本質的な構成要素が除外されるような「陰性対照」アッセイであり得る。或る場合には、対照は、組み合わされたときに陽性対照アッセイが陽性結果をもたらさないという高い確実性を実験者が有し得るように行われるアッセイの特定の結果をもたらすべく特定のアッセイのすべての構成要素がキャラクタライズされている及び分かっているような「陽性対照」であり得る。対照はまた、「ブランク」サンプル、「標準」サンプル(例えば、「至適標準(ゴールドスタンダード)」サンプル)、バリデーション済みのサンプルなどを含む場合がある。
【0030】
本明細書で用いられる場合の「入力する」という用語は、例えば、ユーザインターフェースの使用などを通じて、コンピュータに情報を入力するあらゆる方法を指すのに用いられる。例えば、或る場合には、入力することは、コンピュータシステム上に既に存在する参照スペクトル又はスペクトル特徴又はそのライブラリを選択することに関係することがある。他の場合には、入力することは、例えば、コンピュータとインターフェースすることができる装置上でサンプルのスペクトルを測定することにより、スペクトル又はスペクトル特徴をコンピュータシステムに追加することに関係することがある。入力することは、ユーザインターフェースを用いて行うこともできる。
【0031】
本明細書で用いられる場合の「プロセッサ」又は「データ処理ユニット」とは、それに必要とされる機能を行うことになる任意のハードウェア及び/又はソフトウェアの組み合わせを意味する。例えば、本明細書での任意のデータ処理ユニットは、電子コントローラ、メインフレーム、サーバ、又はパーソナルコンピュータ(デスクトップ又はポータブル)の形態などで入手可能な、プログラム可能なデジタルマイクロプロセッサであり得る。データ処理ユニットがプログラム可能であるならば、適切なプログラミングを、遠隔地からデータ処理ユニットへ通信することができ、又はコンピュータプログラム製品(磁気デバイス、光学デバイス、又はソリッドステートデバイスのいずれに基づくかに関係なく、ポータブル又は固定のコンピュータ可読記憶媒体など)に事前に保存することができる。
【0032】
本明細書で用いられる場合の「実行する」という用語は、プログラムを開始するためにユーザがとるアクションを指すのに用いられる。
【0033】
詳細な説明
本開示は、自動スライド作製機器におけるスライド作製の態様の自動制御のための方法を提供する。方法の態様は、試薬の量、品質、及び性能の自動評価、並びに、例えば、試薬浴の中に存在する場合の試薬量の調節、試薬組成の調節、及び試薬の置き換えを含む、このような評価に基づく試薬の自動調節を含む。説明した方法を行う際に有用な装置及びシステムも本明細書で提供される。
【0034】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されず、従って、もちろん変化し得ると理解される。本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであって、本発明の範囲は付属の請求項によってのみ限定されることになるので、限定するものとなることを意図されないことも理解される。
【0035】
値の範囲が提供される場合、文脈上他の意味に明白に規定される場合を除き、下限の単位の10分の1までの中間にある各値、該範囲の上限と下限との間、及び表記された該範囲内のあらゆる他の表記された値又は中間にある値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、且つまた本発明内に包含され、表記された範囲内のあらゆる具体的に除外される限界(limit)の対象になる。表記された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限界のいずれか又は両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0036】
ある範囲が、「約」という用語に先行されている数値とともに提示されている。「約」という用語は、それが先行する正確な数、ならびに、この用語が先行する数に近いか、または近似的である数の文字支援を提供するために本明細書で使用される。数が具体的に記載された数に近いか、または近似的であるかどうかを決定する際に、近い、または近似的な記載されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に記載された数の実質的均等物を提供する数であってもよい。
【0037】
他に定めのない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって通例理解されるものと同じ意味をもつ。本明細書に記載のものと類似した又は等価なあらゆる方法及び材料もまた本発明の実践又は試験に用いることができるが、代表的な例証となる方法及び材料がここで説明される。
【0038】
本明細書で挙げられたすべての刊行物及び特許は、個々の各刊行物又は特許が参照により組み入れられるように特異的に及び個々に示されたかのように参照により本明細書に組み入れられ、且つ挙げられた刊行物との関連において方法及び/又は材料を開示し及び説明するために参照により本明細書に組み入れられる。あらゆる刊行物の引用は、出願日よりも前のその開示のためであって、本発明が先願発明の理由に基づきこうした公開の日付を実際より早める権利をもたないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、独立して確認される必要がある場合がある。
【0039】
本明細書及び付属の請求項で用いられる、単数形の「ひとつの(a、an)」、及び「該、前記(the)」は、文脈上他の意味に明白に規定される場合を除き、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。請求項は、あらゆる随意的な要素を除外するように起草されてもよいことにさらに留意されたい。従って、この記述は、請求項の要素の列挙又は「消極的な」限定の使用との関連において「単独で」、「のみ」などのような排他的用語の使用のための先行詞基準として作用することを意図される。
【0040】
本開示を読めば当業者には明らかとなるように、本明細書で説明され例証される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく他の幾つかの実施形態のいずれかの機能部から容易に分離されてもよい又はいずれかの機能部と組み合わされてもよい個別の構成要素及び機能部を有する。あらゆる列挙される方法は、列挙される事象の順番で又は論理的に可能なあらゆる他の順番で実行することができる。
【0041】
方法
上記で要約したように、本開示は、例えば自動スライド塗付及び染色機器を含む、自動スライド作製機器におけるスライド作製の態様の自動評価及び制御のための方法を提供する。方法の態様は、試薬の量の自動評価を含む。方法の態様はまた、或る場合には、試薬の品質及び/又は性能の評価を含む。或る場合には、方法は、例えば、評価に基づいて試薬の量が調節される、評価に基づいて試薬の組成が調節される、評価の結果に基づいて試薬が置き換えられるなどを含む、評価に基づく試薬の自動調節を含み得る。
【0042】
本開示の方法は、一般に、分析のためのスライドの自動塗付及び/又は染色プロセスを含む自動スライド作製機器との関連で行われる自動化された方法となる。説明した方法を利用し得る自動スライド作製機器は、多様となり、例えば、自動組織学的スライド作製装置、自動血液学スライド作製装置、組織学的スライド作製装置と分析装置との組み合わせ、血液学スライド作製装置と分析装置との組み合わせなどを含み得る。
【0043】
本開示の方法は、スライド作製プロセスの種々のポイントの自動制御を提供し得る。例えば、或る場合には、本開示の方法は、例えば、染色浴を含む自動スライド染色のための装置の中に存在する試薬の量の評価を含み得る。本方法の他の評価は、例えば、自動スライド染色方法におけるスライド染色剤の性能を含む、自動スライド染色のための装置における特定の試薬の性能を評定することを含み得る。上記で示唆したように、本方法は、例えば、自動スライド染色のための装置内の特定の容器の中に存在する試薬の体積の調節、自動スライド染色のための装置内で用いられる特定の試薬の組成の調節を含む、このような評価に基づく試薬の調節をさらに含み得る。以下でより詳細に説明するように、このような調節は、かなり多様となり、例えば、試薬の体積又は試薬組成の僅かな調節から、例えば、試薬の置き換えを含む大きな調節に至るまでの範囲であり得る。
【0044】
典型的なスライド作製組織学的染色プロトコルの例が図1に描かれている。一般に、組織学的染色プロトコルでは、スライドは、複数の試薬浴へ連続的に垂直に挿入され得る。このような試薬浴は、スライドに付着させた細胞/組織の固定のための1つ以上の試薬浴(例えば、「メタノール」浴として図1に描かれる)、染色のための1つ以上の試薬浴(例えば、「対比」染色浴として図1に描かれる)、染色剤の成分の活性化のための1つ以上の試薬浴(例えば、「染色剤を活性化させる」ための「バッファ」浴として図1に描かれる)、洗浄のための1つ以上の試薬浴(例えば、洗浄し染色を仕上げるために脱イオン水を用いる「DI水」浴として図1に描かれる)を含み得る。或る場合には、1つ以上のスライド作製ステップが省略されてよく、及び/又はさらなる浴が採用されてよい。スライドの作製に続いて、染色したスライドは、通常、イメージングされる前に乾燥させられ、このような乾燥プロセスは、受動的に(例えば、受動蒸発を採用する)又は能動的に(例えば、空気をスライドの上で移動させることによる対流を採用する)行われてよい。或る場合には、スライド作製は、例えば、検体をスライドに適用すること、検体をスライド上に塗りつけること、スライドを1つ以上の特異的な結合部材(例えば、抗体、オリゴヌクレオチドプローブなど)と接触させること、標識すること(例えば、まだ標識されていない場合に特異的な結合部材を標識すること)、後固定することなどを含む、さらなるステップ(例えば、上流又は下流のステップ)をさらに含み得る。スライド作製方法は、例えば、生体サンプル、体液などから導出されるものを含むがこれらに限定されず、種々の検体との使用を見出し得る。
【0045】
上で述べたように、本開示の方法は、1つ以上の試薬浴インキュベーションステップを使用する組織学的染色プロトコルを含むスライド作製プロトコルで用いられる試薬を評価及び制御する際の使用を見出し得る。当該方法は、少なくとも部分的に、試薬浴の中に存在する試薬の量を評価する試薬量の調節が必要であると判断する、必要な試薬調節のタイプ及び大きさを特定する、試薬の品質を評価するなどの際の使用が見出される。
【0046】
試薬量の評価
或る場合には、本開示の方法は、自動スライド作製のための装置の特定の容器の中に存在する試薬の量の評価を行うことを含み得る。単純明快にするために、試薬の量を評価するための方法を、組織学的又は血液学的分析のための組織学的又は血液学的なスライドの染色との関連で後述するが、方法はそれに限定されず、染色浴などの又はこれと同様の容器の中に存在する試薬量の評価が望まれる種々の他の状況での使用が見出され得ることを当業者はすぐに理解するであろう。
【0047】
組織学的又は血液学的染色のプロセスでは、例えば被検者から収集されたサンプル又は検体が最初にスライドに適用され、サンプル又は検体は、スライドの検体領域の大部分、すなわち、その大半を覆ってよく、又はスライドの検体領域の大部分を覆うべく広げられ又は塗りつけられてよい。典型的なスライド上に存在する血液学的塗沫標本の例が図2に図式化されている。図2に描かれたスライドは、検体情報領域(200)と、塗沫標本(202)を含む検体領域(201)を有する。検体情報領域は、例えば、サンプルが導出された患者の識別情報、バーコードなどのサンプル追跡情報、アッセイ情報などを含む、検体についての種々の詳細を含み得る。塗沫標本(202)の例示的な寸法が描かれており、これは多様であり得ることを当業者は理解するであろう。同じく描かれているのは、例えば、固定、染色、洗浄、脱色などを含む種々の目的でスライドが垂直に挿入され得る任意の試薬浴の所望のレベルを表す所望の液面レベル(203)である。
【0048】
本開示は、検体全体又はその塗沫標本が液体の中に浸漬されるがスライドの検体情報領域は液体の中に浸漬されないように試薬浴の中の液体のレベルを維持するための方法を提供する。試薬浴の液体への検体の完全な浸漬は、液体が固定試薬を含有するときに検体全体の完全な固定を可能にし得る。試薬浴の液体への検体の完全な浸漬は、液体が染色試薬を含有するときに検体全体の完全な染色を可能にし得る。試薬浴の液体への検体の完全な浸漬は、液体が洗浄試薬を含有するときに検体全体の完全な洗浄を可能にし得る。試薬浴の中に検体情報領域を浸漬しないことは、試薬浴の液体の中に存在する1つ以上の試薬によってこの領域に存在する情報を不明瞭にすることを防止し得る。例えば、組織学的検体の作製に用いられる多くの有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールなど)は、一般的なインク及び/又は接着剤をすぐに溶解し、したがって、それらと検体情報領域との接触が回避され得る。
【0049】
図2の概略図で分かるように、通常採用される検体スライドは、試薬浴の液面レベルの比較的小さい変化の余地をもたらし、この変化の余地外の比較的小さい逸脱は、液体を検体情報領域と接触させる又は検体を不十分に覆うことになり得る。或る場合には、本明細書で説明される方法は、評価される液面レベルが、例えば±5.0mm、±4.5mm以下、±4.0mm以下、±3.5mm以下、±3.0mm以下、±2.5mm以下、±2.0mm以下、±1.5mm以下、±1.0mm以下、±0.5mm以下などを含むがこれらに限定されず、±5.0mm以下の精度で判定されるように浴の液面レベルを評価し得る。液面レベル評価の精度は、或る場合には、1つ以上のスライドの体積変位に基づいていてよい。例えば、精度は、1つのスライドの押しのけ量に関連する液面レベルの変化よりも大きい又はこれに等しくてよく、例えば、1つのスライドに関連する液面レベルの変化は、浴の構成に応じて多様であり得る。或る場合には、浴は、1つのスライドに関連する液面レベルの変化が、例えば、0.1mm~5mm、0.1mm~4mm、0.1mm~3mm、0.1mm~2mm、0.1mm~1mm、0.1mm~0.5mm、0.5mm~1mm、0.5mmなどを含むがこれらに限定されず、0.1mm未満~5mm以上の範囲であるように構成されてよい。
【0050】
或る場合には、本明細書で説明される方法は、所定の又は所望の液面レベルからの液面レベルの逸脱が、例えば、±5.0mmを超えない、±4.5mmを超えない、±4.0mmを超えない、±3.5mmを超えない、±3.0mmを超えない、±2.5mmを超えない、±2.0mmを超えない、±1.5mmを超えない、±1.0mmを超えない、±0.5mmを超えないなどを含むがこれらに限定されず、約±5.0mmを超えないように浴の液面レベルを制御し得る。
【0051】
本明細書で用いられる場合の「試薬浴」という用語は、一般に、例えば、組織学的染色プロトコル、血液学的染色プロトコル、免疫学的染色プロトコル、DNA/RNAハイブリダイゼーションプロトコルなどを含む任意の染色プロトコルでスライドが受け得る。、例えば、固定、インキュベーティング、ブロッキング、染色、ハイブリダイゼーション、洗浄、脱色、ストリッピング、後固定、標識などを含むがこれらに限定されず、スライド作製の任意のプロセスにおいて用いられる液体が入っている容器を指す。したがって、試薬浴のサイズ及び構成は、大いに変化することになる。
【0052】
「充填体積」又は「動作体積」とも呼ばれる、試薬浴において通常採用される液体の体積は、浴の構成に応じて同様に変化することになり、例えば、10cc~450cc、20cc~450cc、30cc~450cc、40cc~450cc、50cc~450cc、60cc~450cc、70cc~450cc、80cc~450cc、90cc~450cc、100cc~450cc、110cc~450cc、120cc~450cc、130cc~450cc、140cc~450cc、150cc~450cc、160cc~450cc、170cc~450cc、180cc~450cc、190cc~450cc、200cc~450cc、210cc~450cc、220cc~450cc、230cc~450cc、240cc~450cc、250cc~450cc、25cc~400cc、25cc~350cc、25cc~300cc、25cc~250cc、25cc~200cc、25cc~150cc、25cc~100cc、25cc~50cc、50cc~400cc、50cc~350cc、50cc~300cc、50cc~250cc、50cc~200cc、50cc~150cc、50cc~100cc、10cc~200cc、20cc~200cc、30cc~200cc、40cc~200cc、50cc~200cc、60cc~200cc、70cc~200cc、80cc~200cc、90cc~200cc、100cc~200cc、110cc~200cc、120cc~200cc、130cc~200cc、140cc~200cc、150cc~200ccなどを含むがこれらに限定されず、10cc未満又は450cc以上の範囲であり得る。
【0053】
試薬浴の液面レベルは、浴の総体積に大いに依存することになり、例えば、大体積の浴の液面レベルは、同じ又は等しいイベントを受ける小体積の浴と比べて、種々のイベント(例えば、液体の蒸発、浴への1つ以上のスライドの挿入、浴への或る設定された体積の液体の追加/除去など)に応答してより小さく変化することになる。当該方法で採用され得る浴の総体積の限定ではない例が以下で提供される。浴の構成は、かなり多様となり、それが果たす目的と適合する本質的にあらゆる形状をとり得るものであり、或る場合には本質的に長方形であり得る。或る場合には、浴は、浴へ挿入されるスライド又は複数のスライドと適合するように構成又は寸法設定されてよい。
【0054】
自動スライド作製装置は、自動スライド作製中に試薬浴の液面レベルを正確に評価する及び/又は厳重に制御する自動化された方法を利用し得る。このような装置は、例えば、自動組織学分析器に関連するスライド作製装置、自動組織学分析器における分析のためのスライドを作製する装置、自動血液学分析器に関連するスライド作製装置、自動血液学分析器における分析のためのスライドを作製する装置などを含むがこれらに限定されない。
【0055】
本開示の態様は、試薬浴の体積の評価を含む。「試薬浴の体積の評価」とは、一般に、試薬浴の中に存在する液体の体積が、1つ又は複数のスライドが浴の中に存在するときに浴の液面レベルが所望の又は所定のレベルにある若しくは所望の又は所定の範囲内にあるかどうかを判定することを意味する。本開示の評価は、浴の中に存在する液体の実際の体積を定量してよく又は定量しなくてよく、或る場合には、浴の液面レベルの評価又は浴の液面レベルの変化の評価がなされ得るように浴の中に存在する液体の相対体積を求めてよい。評価は、特定の状況及び/又はセンサ及び検出器の構成に応じて、スライドが浴に挿入される又は浴から取り出される前、又は後に行われてよい。或る場合には、試薬浴の体積及び/又は液面レベルの評価がなされ、評価は、調節が必要とされるかどうかを判定するべくさらに分析され、このような調節はより詳細に後述する。或る場合には、スライド(単数又は複数)が挿入されたときに浴の液面レベルが所定の、又は所望のレベルに達するように、1つ又は複数のスライドが浴へ挿入される前に、評価がなされ、あらゆる必要な調節が行われる。
【0056】
或る場合には、試薬浴の体積は、浴に接続されたレベル管の使用を通じて評価されてよい。本明細書で用いられる場合の「レベル管」とは、一般に、レベル管内の液面レベルの変化へ変換される、浴の流体体積の変化から生じる液体の力の変化を測定するように構成された開放端付きの管を含む測定装置を意味する。本方法では、レベル管は、一般に、浴内の液体の体積の変化がレベル管内の液面レベルの変化に変わるように試薬浴に接続されることになる。レベル管は、レベル管の開放端が試薬浴の液面レベルよりも低く、液体体積の変化が結果的にレベル管内の液面レベルの測定可能な変化を生じるように、試薬浴の任意の部分に任意の構成で接続されてよい。レベル管は、試薬浴の底部、試薬浴の側部などに接続されてよい。レベル管は、レベル管と例えば管又はリザーバなどの浴との間の介在コネクタで接続されてよく、又はされなくてよい。
【0057】
本方法の態様は、レベル管内の液面レベルの変化をフロートの移動へ伝達する、レベル管内の、又はレベル管に接続されるフロートを含み得る。或る場合には、フロートは、レベル管の内部にあり得る。試薬浴で用いられる液体、又は様々な液体の中で浮くならば、フロートのためにあらゆる便利な材料が用いられてよい。或る場合には、フロートは、限定はされないが、メタノール、エタノールなどのアルコールを含む、試薬浴で用いられる1つ以上の試薬に耐える材料で作製されてよい。或る場合には、レベル管及びフロートは、浴の特定の流体体積で試薬浴の中に所定の体積の液体が存在することを示すレベル管内の又はレベル管上のレベルにフロートが存在するように構成及び/又は校正されてよい。或る場合には、レベル管、フロート、及び試薬浴は、浴の特定の流体体積で、浴の液面レベルが所定のレベルにあることを示すレベル管内の、又はレベル管上のレベルにフロートが存在するように構成及び/又は校正されてよい。フロートのレベルは、例えば、視覚的に又は1つ以上の検出器の使用を含むがこれらに限定されず、任意の便利な方法で判定されてよい。
【0058】
本明細書で説明される自動化された実施形態によれば、或る場合には、フロートのレベルは、本明細書ではエミッタ・検出器ペアとも呼ばれる、信号エミッタと信号検出器を用いて判定されてよい。或る場合には、フロートのレベルを検出する際に用いられるエミッタ・検出器ペアは、例えば、光エミッタ及び光検出器を含む、光エミッタ・検出器ペアであってよい。或る場合には、フロートのレベルを検出する際に用いられるエミッタ・検出器ペアは、例えば、音響エミッタ及び音響検出器を含む、音響エミッタ・検出器ペアであってよい。さらに本明細書では、簡単にするために、エミッタ・検出器ペアと対応する信号経路は、主として光エミッタ・検出器ペアと光路に関して説明される。しかしながら、種々の他のエミッタ・検出器ペア(例えば、音響検出器ペア)が当該方法で使用及び採用されるように適宜容易に構成され得るので、本開示はそれに限定されない。例えば、音響経路を画定する音響エミッタ・検出器ペア(例えば、適切な音響検出器と結合される音響エミッタ)を、光路を画定する説明した光エミッタ・検出器ペアと代替してよいことを当業者はすぐに理解するであろうし、このような当業者は、このような代替のために方法及び装置がどのように再構成され得るかをさらに理解するであろう。
【0059】
本方法では、互いに対向するエミッタと検出器の位置が、一般に、信号経路(例えば、光路、音響経路など)を画定することになる。しかしながら、信号経路は、エミッタとその対応するセンサ/検出器との間の線形経路に限定されない場合がある。例えば、光路に関して、例えば、ミラー、レンズなどを含むがこれらに限定されず、光路を変更する種々の手段が採用されてよい。光路を再誘導する又はそらすためのどのような手段も使用せずに、互いに対向するエミッタと検出器との間の光路は、エミッタと検出器との間の経路を通る又は経路内に挿入されている1つ以上の物体によって遮断され得る。経路の遮断は、経路内の物体の存在に起因してエミッタからの信号が検出器に到達しない場合に完全であり得る、又は遮断は、エミッタからの信号の少なくとも一部が検出器により依然として受信されるように経路内の物体が信号を部分的にのみブロックする場合に部分的であり得る。
【0060】
エミッタ・検出器ペアで用いられる検出器は、信号が部分的に遮断される度合いを組み込み、受信した光信号を遮断の度合いと相関する電気信号に変換することが可能であり得る。信号の遮断は、例えば、光路内に配置された物体が不透明であるか又は半透明であるかに応じて多様であり得る。例えば、或る場合には、不透明の物体の存在に起因する信号遮断は、不透明の物体により部分的にブロックされる光のビームと同様に、物体によりブロックされる信号の物理的な領域の量を示し得る。或る場合には、1つ以上の半透明の物体の存在に起因する信号遮断は、例えば、経路内の物体の厚さ又は物体の数などを含む1つ以上の半透明の物体の特性を示し得る。したがって、本明細書で用いられる場合の、部分的にブロックされる信号は、光路の一部のみが不透明の物体によりブロックされる信号、光路の全体が半透明の物体によりブロックされる信号、光路の一部のみが半透明の物体によりブロックされる信号などを指し得る。したがって、信号強度又は振幅又は透過率の検出は、状況に応じてこのような部分的にブロックされる光信号を同様に指し得る。
【0061】
或る場合には、本開示の方法は、フロートがエミッタ・検出器ペアの光路内にあるようにフロートが入っているレベル管を配置することを含む。したがって、レベル管が接続される試薬浴の中に存在する液体の体積の変化が、光路内のフロートの位置の変化へ変換される。したがって、光路内のフロートの位置の変化が、結果的に、フロートによりブロックされる光信号の量の変化を生じる。或る場合には、光路は、例えば、フロートなどの干渉する物体との相互作用の前又は後のいずれか、又は前と後の両方で1つ以上の開口を通るように配置されてよい。例えば、或る場合には、エミッタから生じた信号は、フロートが入っているレベル管を通過し、次いで、検出器に到達する前に開口を通過する。或る場合には、エミッタから生じた信号は、フロートが入っているレベル管を通過する前に開口を通過し、次いで、検出器に到達する。或る場合には、エミッタから生じた信号は、フロートが入っているレベル管を通過する前に第1の開口を通過し、次いで、検出器に到達する前に第2の開口を通過する。光路が通り得る開口は、レベル管上とすることができ、又はレベル管とは別個の、装置の別の構成要素上とすることができる。したがって、このような方法で用いられる開口は、種々の構成に配列されてよい。有用な開口は、例えば、スリット開口、円形開口などを含むが、これらに限定されず、画定された形状及びサイズの開口を含む。
【0062】
ここで図3に描かれた実施形態に移る。レベル管(300)は、浴からの液体(「流体」とも呼ばれる)が管に流入するように、試薬浴(301)に接続される。試薬浴の中の液体の体積の変化により上昇及び下降する管の中の流体が、レベル管内に配置されたフロート(302)を上昇及び下降させる。信号エミッタ(303)が、スリット開口(305)を通して光検出器(306)の方へ誘導される、光信号「ビーム」(304)を発する。例えば試薬浴への液体の追加を通じて、レベル管と試薬浴とを接続する開口部で液体の力が増加するとき、フロートが上昇してビームをより多くブロックし、開口を通過する及び検出器に到達するのを防ぐ。したがって、検出器は、浴の中の流体体積の増加を検出及び/又は定量することができる。例えば試薬浴からの液体の除去を通じて、レベル管と試薬浴とを接続する開口部で液体の力が減少するとき、フロートが下降してビームをより少なくブロックし、より多くのビームが開口を通過する及び検出器に到達することを可能にする。したがって、検出器は、浴の中の流体体積の減少を検出及び/又は定量することができる。
【0063】
或る場合には、検出器により検出される光信号は、試薬浴の中の液体のレベルと線形相関し得る。光信号の遮断と浴の中の液体のレベルとの間の線形相関は、いくつかの方法で達成され得る。或る場合には、浴の中の液体のレベルが検出器により検出される信号の量と線形相関するようにシステムを校正するべく開口が採用されてよい。例えば、或る場合には、レベル管上に存在する垂直スリット開口が、検出器により受信される信号の量と浴の中の液体のレベルとの間に線形相関が存在するようなエミッタ・検出器ペアとの関係性をもつように構成される。このような状況では、既知の浴液面レベルにあるフロートの位置が、システムを校正するべく判定されてよい。或る場合には、線形相関している液面レベル検出システムにおけるフロートの移動は、浴の体積の変化、浴の液面レベルの変化などの定量的評価を可能にする場合があり、したがって、検出器により検出される信号の振幅の測定された変化が、体積の測定された変化、液面レベルの測定された変化などに変換され得る。
【0064】
例えば図3に描かれたような液面レベルインジケータから返ってくる場合の、線形相関している検出器出力対フロート位置を描いたプロットが図4に描かれている。図4に描かれているように、各累進的フロート位置(すなわち、「1」、「2」、及び「3」)で、より多くの信号が検出器への通過をブロックされる。より多くの信号が各フロート位置でブロックされるので、検出器振幅が減少する。したがって、検出器振幅は、フロートの位置と共に直線的に変化する(図4の傾向線参照)。
【0065】
例えば、本明細書で説明される方法に従って行われる場合の液面レベル評価の結果は報告され得る。例えば、或る場合には、方法は、液面レベル評価結果が特定の条件、例えば、液面レベルが所定のレベルにある、液面レベルが所定のレベルを下回る、液面レベルが所定のレベルを上回る、液面レベルが所定の範囲外にあるなどを示すときにインジケータをトリガすることを含み得る。液体体積又は液面レベル評価のレポートは、種々の形態で伝送されてよい。例えば、或る場合には、レポートは、例えば、評価の結果を示すインジケータライト、アラーム、又は他のユーザインターフェース(例えば、モニタ)によってユーザに通信されてよい。
【0066】
或る場合には、レポートは、自動試薬制御システムの別の態様に電気的に通信されてよい。例えば、或る場合には、評価の結果を報告する検出器は、レポートがプロセッサへ送信され、プロセッサにより処理されるように、システムのプロセッサに接続され又は他の方法でプロセッサと通信してよい。或る場合には、レポートを受信すると、プロセッサは、例えば、本明細書で説明される試薬調節のうちの1つ以上を含む、システムのいくつかの他のアクションをトリガしてよい。
【0067】
本開示の方法の態様は、同時に処理されているスライドの数の自動カウントを行うことを含み得る。自動スライドカウンティングは、試薬浴の体積の評価などの本明細書で説明される他の評価のいずれかを含む、本明細書で説明される他の方法のいずれかとは別に又は加えて行われてよい。
【0068】
図1に描かれているように、スライド作製方法は、一般に、1つ以上の試薬浴への少なくとも1つのスライドの挿入を含み、その後、少なくとも1つのスライドは、試薬浴の中で特定の時間量にわたってインキュベートされ得る。スライドはいくらかの体積を有するので、スライドを試薬浴へ挿入することは、浴の液面レベルに対する影響を有し得る。このようなスライドの押しのけ量に起因する液面レベルの変化は、大きい浴体積が用いられる又は少数のスライドが浴へ挿入される場合のどの時点においても顕著ではない場合がある。しかしながら、浴の体積が低く保たれる(例えば、用いられる試薬の量を最小にするために)ならば、スライドの押しのけ量は、浴の液面レベルに顕著に影響し得る、例えば、液体を所望のレベルを超えて上昇させる及び/又は液体をスライドの検体情報領域と接触するように上昇させる。同様に、複数のスライドが同時に処理されるならば、スライドの押しのけ量は、浴の液面レベルに顕著に影響し得る、例えば、液体を所望のレベルを超えて上昇させる及び/又は液体をスライドの検体情報領域と接触するように上昇させる。
【0069】
或る場合には、自動機器において同時に作製又は処理されることになるスライドの数を確かめ、浴へのスライドの挿入時に液面レベルが所望の又は所定のレベルに達するが超えないように浴の液面レベルを適宜調節することが望ましい場合がある。或る場合には、バッチごとに同時に作製又は処理されるスライドの数が可変であるならば、同時に作製又は処理されるスライドの数の検出が自動機器で行われてよい。例えば、或る場合には、固定又は可変のいずれかである、バッチごとに同時に作製又は処理されるスライドの数は、例えば、1スライド、1スライド以上、2スライド以上、3スライド以上、4スライド以上、5スライド以上、6スライド以上、7スライド以上、8スライド以上、9スライド以上、10スライド以上、11スライド以上、12スライド以上、13スライド以上、14スライド以上、15スライド以上、16スライド以上、17スライド以上、18スライド以上、19スライド以上、20スライド以上、2スライド、3スライド、4スライド、5スライド、6スライド、7スライド、8スライド、9スライド、10スライドなどを含むがこれらに限定されず、1スライド~20スライド以上に変化し得る。
【0070】
或る場合には、バッチで同時に処理され得るスライドの範囲は、スライドキャリア装置の容量により決定され得る。このような装置は、一般に、自動スライド作製装置の1つ以上の領域を通る輸送中にスライドを保持することができる1つ以上のスロット又は接触点を含むことになる。例えば、或る場合には、スライドキャリアは、スライドを受け入れ、保持するように寸法設定された複数のスロットを含んでよく、例えば、関心あるスライド寸法は、例えば、本明細書で説明されるものを含むがそれに限定されない。或る場合には、スライドキャリアは、2つ以上の試薬浴間で及び/又は例えば、検体適用ステーション、検体塗付ステーション、乾燥ステーション、イメージングステーションなどを含むがこれらに限定されず、追加のステーション間でスライドを輸送してよい。或る場合には、自動装置において単一のスライドキャリアが採用されてよく、又は複数のスライドキャリアが採用されてよい。
【0071】
ここで図5に描かれている実施形態に移る。スライド(500)又は複数のこのようなスライドは、スライドが吊り下げられる又は垂直配向に保持されるように、スライドキャリア(502)のスロット(501)内に収容されてよい。次いで、スライドキャリア(502)は、試薬浴(503)へ挿入されてよい。スライドキャリアにより保持されたスライドの数は、スライドが試薬浴へ挿入される前、間、又は後の任意の時点で評価されてよい。
【0072】
例えば、或る場合には、エミッタ・検出器ペアは、スライドがエミッタ・検出器ペアにより形成された光路に挿入される又はこれを通るように配置されてよい。エミッタ・検出器ペアの配置に応じて、スライドは、試薬浴への又は試薬浴からの輸送の前、間、又は後の任意の時点で、エミッタ・検出器ペアにより形成された光路を通ってよい。或る場合には、スライドは、試薬浴への途中で光路を通ることになる。或る場合には、スライドは、試薬浴から輸送されている間に光路を通ることになる。或る場合には、スライドは、試薬浴へ挿入されるときに光路を通ることになる。
【0073】
スライド(単数又は複数)の経路に沿ったそれらの位置に関係なく、エミッタ・検出器ペアは、一般に、スライド(単数又は複数)が光路を通る又は光路内に挿入されるときに光路がスライド(単数又は複数)の顕微鏡平面(すなわち、検体が適用される表面)と直交するように構成されることになる。例えば、図6の実施形態に描かれているように、エミッタ(600)は、光路(604)がスライドの顕微鏡平面と本質的に直交するように検出器(601)及びスライドキャリア(603)の中に保持されたスライド(602)に対して配置されてよい。スライドの顕微鏡平面に対する光路の角度は、必ずしも完全に直角である必要はなく、例えば、エミッタにより生成された信号が検出器に到達する前にスライドキャリアにより保持されるすべてのスライドを通過するのに角度が十分であるならば、真の直角に対し僅かに鋭角であってよい。
【0074】
或る場合には、エミッタ・検出器ペアは、光路が、例えば試薬浴への又は試薬浴からのスライドがとる経路に沿って試薬浴外にある、又は例えば作製プロセスを開始する前にスライドが保持される或る他の位置にあるように配置される。或る場合には、エミッタ・検出器ペアは、光路が試薬浴を通るように配置される。試薬浴を通る光路は、例えば、エミッタと検出器のうちの一方又は両方を浴外に配置し、例えば、光学的に透明な又はトランスルーセントの浴の使用を通じて、信号がスライドへと通過することを可能にする浴の壁の1つ以上の開口の使用を通じてなどを含む1つ以上の方法で信号が浴を通過するようにすることを含む種々の方法で達成されてよい。或る場合には、エミッタ・検出器ペアは、浴内に配置されてよい。
【0075】
本方法では、採用されるスライドは、一般に、スライドを通る光の透過率への少なくとも幾らかの抵抗を有する。したがって、或る場合には、スライドは、トランスルーセント又は半透明と呼ばれる場合があり、本明細書での「トランスルーセント」という用語は、一般に、幾らかの光が材料又は物体を通過するのを少なくとも部分的に防ぐ、材料又は物体の半透明の特徴を指す。スライドは、染色前にトランスルーセントである場合があり、染色後にトランスルーセントのままである場合があり又は透明性が減少する場合があり、透明性の減少は、一般に、スライドを通る光の透過率の減少を指す。
【0076】
本開示の方法は、スライドキャリアの中に保持された又は試薬浴へ挿入された又は挿入されるスライドの数を評価する方法においてスライドの半透明度(すなわち、完全とまではいかない透過率)を使用し得る。スライドの半透明度は、スライドを構築する材料、スライドの厚さ、半透明度を測定する波長などを含む種々の因子に応じて多様であり得る。例えば、図7では、厚さ2mmのソーダ石灰スライドガラスに関する、種々の波長での透過スペクトル、すなわち、透過パーセントが提供される。図7のプロットで分かるように、本質的にすべての可視スペクトル波長での透過パーセントは100%未満である。したがって、光エミッタ・検出器ペアを用いる例えば1000nmで2mmのソーダ石灰スライドガラスの半透明度又は透過パーセントの測定は、発した信号の振幅と比べて検出器が受信した信号の振幅の約20%の低下を実証することが予想されるであろう。
【0077】
存在するスライドの数を評価するための有用な波長は、例えば、スライドが構築される材料を含む種々のパラメータに応じて多様となり、このような波長は、例えば、100nm~1mm、200nm~1mm、300nm~1mm、400nm~1mm、500nm~1mm、600nm~1mm、700nm~1mm、800nm~1mm、900nm~1mm、1000nm~1mm、1100nm~1mm、1200nm~1mm、1300nm~1mm、1400nm~1mm、1500nm~1mm、1600nm~1mm、1700nm~1mm、1800nm~1mm、1900nm~1mm、2000nm~1mm、2100nm~1mm、2200nm~1mm、2300nm~1mm、2400nm~1mm、2500nm~1mm、100nm~0.1mm、200nm~0.1mm、300nm~0.1mm、400nm~0.1mm、500nm~0.1mm、600nm~0.1mm、700nm~0.1mm、800nm~0.1mm、900nm~0.1mm、1000nm~0.1mm、1100nm~0.1mm、1200nm~0.1mm、1300nm~0.1mm、1400nm~0.1mm、1500nm~0.1mm、1600nm~0.1mm、1700nm~0.1mm、1800nm~0.1mm、1900nm~0.1mm、2000nm~0.1mm、2100nm~0.1mm、2200nm~0.1mm、2300nm~0.1mm、2400nm~0.1mm、2500nm~0.1mm、100nm~3000nm、200nm~3000nm、300nm~3000nm、400nm~3000nm、500nm~3000nm、600nm~3000nm、700nm~3000nm、800nm~3000nm、900nm~3000nm、1000nm~3000nm、1100nm~3000nm、1200nm~3000nm、1300nm~3000nm、1400nm~3000nm、1500nm~3000nm、1600nm~3000nm、1700nm~3000nm、1800nm~3000nm、1900nm~3000nm、2000nm~3000nm、2100nm~3000nm、2200nm~3000nm、2300nm~3000nm、2400nm~3000nm、2500nm~3000nm、100nm~800nm、200nm~800nm、300nm~800nm、400nm~800nm、500nm~800nm、600nm~800nm、700nm~800nm、100nm~2500nm、100nm~2000nm、100nm~1500nm、100nm~1000nm、100nm~900nm、100nm~700nm、100nm~600nm、100nm~500nm、100nm~400nm、100nm~300nm、100nm~200nm、380nm~750nm、380nm~620nm、380nm~590nm、380nm~570nm、380nm~495nm、380nm~450nm、450nm~750nm、450nm~620nm、450nm~590nm、450nm~570nm、450nm~495nm、495nm~750nm、495nm~620nm、495nm~590nm、495nm~570nm、570nm~750nm、570nm~620nm、570nm~590nm、590nm~750nm、590nm~620nm、620nm~750nmなどを含むがこれらに限定されず、100nm未満又は1mm以上の範囲であり得る。
【0078】
したがって、或る場合には、1つ以上の波長での又は或る波長の範囲にわたる信号の透過パーセントの既知の又は所定の低下が、スライドの存在を検出するのに用いられてよく、及び/又は測定された累積低下が、存在するスライドの数を判定するのに用いられてよい。図8に描かれているように、検出器で検出された振幅を測定することにより、透過した信号の累積低下は、スライドキャリアにより保持された、例えば浴の中の、スライドの数を判定するなどに用いられてよい。図8で分かるように、例えば、浴の中の1つのスライドの存在を示す、発した信号振幅-既知の半透明度のスライドが光路内に存在するときに期待される透過率低下に等しい特定の振幅が測定される(「1」)。同様に、発した信号振幅-既知の半透明度のスライドが光路内に存在するときに期待される透過率低下の2倍に等しい振幅が測定されるとき、システムは2つのスライドが存在することを示し得る(「2」)。同様に、単一のスライドから期待される透過率低下の3倍の透過率低下と等価な検出器振幅が測定されるとき、システムは3つのスライドが存在することを示し得る(「3」)、以下同様である。
【0079】
或る場合には、例えば前述のように、測定した透過率は、存在するスライドの数を判定するべく、発した信号の振幅と比較されてよい。発した信号の振幅は、例えば、スライドが光路内に存在しないときに発した信号の測定を検出器で実行することを含む、種々の方法で判定されてよい。或る場合には、発した信号の振幅は、信号を発するためにエミッタに与えられる電流の量を測定すること又は他の方法で判定すること又は制御することに基づいていてよい。
【0080】
或る場合には、1つ以上の検出器振幅は、例えば存在するスライドの数の判定を行うべく、測定した検出器振幅と比較するためにコンピュータメモリに記憶されてよい。例えば、或る場合には、光路内にスライドが存在しないときの検出器振幅が、例えば、測定値が比較されるベースライン透過レベルとしてメモリに記憶されてよい。或る場合には、特定のスライドパラメータ(例えば、特定のスライド材料、特定のスライド厚さなど)に対応する1つ以上の検出器振幅が、例えば、特定のパラメータを有するスライドが用いられるときに存在するスライドの数を判定するのに用いるためにメモリに記憶されてよい。
【0081】
測定した信号をスライドカウントに変換することは、種々の方法で達成されてよい。例えば、或る場合には、光路内に存在する未知数のスライドに関する測定値が、経路内に存在するスライドの数を特定するべく、検出器振幅値のライブラリと比較されてよい。或る場合には、光路内に存在する特定のタイプの未知数のスライドに関する測定値が、経路内に存在するスライドの数を計算及び特定するべく、特定のタイプの1つのスライドに対応する透過パーセントの既知の値と比較されてよい。
【0082】
以下でさらに詳細に説明するように、或る場合には、存在するスライドの数の評価に基づいて調節が行われてよい。例えば、或る場合には、例えば、スライドが浴の中に存在するときに浴の液面レベルが所望の又は所定のレベルに維持されるように、本明細書で説明される方法に係る存在するスライドの数の評価に基づいて試薬浴の体積が調節されてよい。
【0083】
スライド数の評価に関係する方法は、スライドカウンティングの目的のためだけに行われてよく、又は、試薬浴の体積又は液面レベルを維持する一体化されたシステムの一部として行われてよい。或る場合には、スライド数の評価は、評価されるスライドが存在する試薬浴の体積又は浴の液面レベルを維持する一体化されたシステムの一部として行われてよい。
【0084】
或る場合には、スライド数の評価は、評価されるスライドの数がシステムの1つ以上の浴に関する液面レベル又は体積を調節及び/又は制御するのに使用されるように、複数浴スライド作製システムにおいて行われてよい。例えば、或る場合には、スライド数の評価は、スライドが本明細書では一次浴とも呼ばれる第1の浴に関連するときに行われてよく、評価は、一次浴の後にスライドが導入される第2の浴の液体体積の評価又は調節に用いられてよい。本明細書で試薬浴に対して用いられる場合の「に関連する」とは、「スライドが、浴へ挿入されることになる」、「挿入される」、又は「今まで挿入されていた、」したがって、「特定の浴に関連するスライドが、浴への途中にある」、「浴の中にある」、又は「浴から移動している」ことを意味する。採用されるスライド作製プロトコルに応じて、一次浴及び二次浴は、例えば、固定浴、洗浄浴、染色浴などを含むがこれらに限定されず、本明細書で説明されるものを含む、あらゆる試薬浴であり得る。
【0085】
或る場合には、本明細書で説明される評価は、例えば、試薬浴体積の評価がスライド数の評価と組み合わされる場合を含めて、組み合わされ得る。組み合わされた評価は、単一の試薬浴に対して又は2つ以上の異なる試薬浴にわたって行われ得る。例えば、図9の実施形態に描かれているように、第1のエミッタ・検出器ペア(「S1」及び「D1」)が、試薬浴の中に存在するスライドの数(「スライド」)を評価するべく配置されてよく、第2のエミッタ・検出器ペア(「S2」及び「D2」)が、前述のレベル管設計を用いて試薬浴の中に存在する液体の体積を評価するべく配置されてよい。或る場合には、両方とも組み合わされた評価に用いられる、試薬浴の中に存在するスライドの数を評価する第1のエミッタ・検出器ペアと、試薬浴の中に存在する液体の体積を評価する第2のエミッタ・検出器ペアは、同じ試薬浴上に存在し得る、又は同じ試薬浴に関連し得る。
【0086】
或る場合には、両方とも組み合わされた評価に用いられる、試薬浴の中に存在するスライドの数を評価する第1のエミッタ・検出器ペアと、試薬浴の中に存在する液体の体積を評価する第2のエミッタ・検出器ペアは、別個の試薬浴上に存在し得る又は別個の試薬浴に関連し得る。例えば、第1のエミッタ・検出器ペアは、存在するスライドの数を評価するべく一次浴に関連して存在してよい。第2のエミッタ・検出器ペアは、試薬浴の液面レベルの調節が必要であるかどうかを判定するべく、一次浴で評価されるスライド数が評価される液体体積と組み合わせて用いられるように、試薬浴に関連して存在してよい。
【0087】
例として、組み合わされた評価の一実施形態に対応する、液面レベル制御に関する論理図が図10に描かれている。この論理図では、試薬浴の液面レベルに対応する値(「AS2」)が判定され、試薬浴への途中にある評価されるスライドの数に基づく試薬浴に関する計算値(「AS1」)と比較される。2つの値が等しい場合、浴を所望の又は所定の液面レベルに維持するのに調節は必要ではない。値が等しくない場合、必要な調節が判定されてよく、及び/又は値の差に基づいてなされてよく、例えば、図10に描かれたものと同様の種々の排出/充填ループ及び/又はさらなる評価が適宜トリガされてよい。
【0088】
組み合わせ評価は、明示的に説明されたものに限定されない。評価の種々の組み合わせ、例えば、任意の数のスライド数評価、液体体積評価を組み合わせること、及び/又はこれらの組み合わせが、本明細書で説明した方法で採用され得る。組み合わされた評価の個々の評価はまた、任意の便利な適切な順序でなされてよい。したがって、例えば、採用されるスライド作製プロトコルに応じてかなり多様ともなり得る。
【0089】
試薬の品質の評価
或る場合には、本開示の方法は、自動スライド作製のための装置において用いられる試薬の品質の評価を行うことを含み得る。わかりやすくするために、試薬の品質を評価するための方法を、組織学的又は血液学的分析のための組織学的又は血液学的なスライドの染色との関連で後述するが、方法はそれに限定されず、組織学的染色などの又はこれと同様の染色プロセスで用いられる試薬の品質の評価が望まれる種々の他の状況での使用が見出され得ることを当業者はすぐに理解するであろう。
【0090】
本方法の態様は、染色したブランクスライドの分析を含む。本明細書で用いられる場合の「染色したブランクスライド」という用語は、一般に、検体を有していないが、検体を有するスライドを染色するのに用いられる手順に従って染色されるスライドを指す。したがって、或る場合には、本開示の方法は、染色したブランクスライドをもたらすために少なくとも1つのブランクスライドを染色することを含み得る。ブランクスライドの染色は、1つ以上の検体スライドの染色と連続して又は並行して行われてよい。例えば、或る場合には、ブランクスライドは、検体スライド(単数または複数)の染色に用いられるのと同じ試薬浴(単数または複数)を用いて1つ以上の検体スライドの染色の前又は後に染色されてよい。或る場合には、ブランクスライドは、1つ以上の検体スライドと一緒に処理されてよく、スライドへの検体の適用を除いて、1つ以上の検体スライドと本質的に同じスライド作製ステップを経てよい。1つ以上の検体スライドと「一緒の」ブランクスライドの処理は、本明細書では、「同時に染色」する、例えば、ブランクスライドと1つ以上の検体スライドを同時に染色するとも呼ばれる場合がある。
【0091】
或る場合には、ブランクスライドは、1つ以上の検体スライドと一緒に処理するためにスライドキャリアにおける指定の位置に配置されてよい。染色の連続的なラウンドにおいて、スライドキャリアにおける指定の位置は、一定に保たれてよく、又は、例えば、系統的に変更される、無作為に変更されるなどを含めて、変更されてよい。例えば前から後ろへ番号1~10の、例えば複数のスロットを有するスライドキャリアにおいて、ブランクスライドは、位置1に配置され、連続的な染色実行中に位置1から変更されなくてよい。或る場合には、ブランクスライドは、初回の実行に関して位置1に配置され、その後、例えば、次のブランクスライドを次の実行中に位置2、その次の実行中に位置3、そのまた次の実行中に位置4などに配置することにより、系統的に変更されてよい。或る場合には、ブランクスライドは、初回の実行に関して位置1に配置され、その後、例えば、次のブランクスライドを次の実行中に位置7、その次の実行中に位置3、そのまた次の実行中に位置10などに配置することにより、無作為に変更されてよい。
【0092】
或る場合には、ブランクスライドは、スライドキャリアにおける他の位置と比べて染色のより大きい変動を被る位置に排他的に又はより共通的に配置され得る。例えば、或る場合には、ブランクスライドは、外側の位置、すなわち、複数のスライドを支えるスライドキャリアの一端にある位置に、例えば、前から後ろへ番号1~10の複数のスロットを有するスライドキャリアにおける位置1又は位置10により共通的に又は排他的に配置され得る。本明細書のどこかで説明されるように、スライドキャリアにより支えられるスライドの数及びスライドキャリアの容量は、要望に応じて、例えば、採用される特定の機器に従って多様となり得るので、スライドキャリアは、必ずしも上記の例で説明されるように10スロットを有していなくてもよい。
【0093】
本方法は、一般に、品質評価を行う際の分析のために染色したブランクスライドの1つ以上の画像を取得することを含むことになる。染色したブランクスライドの1つ以上の画像を取得することにより、スライドの作製に用いられる試薬の品質のパラメータが判定されてよい。例えば、或る場合には、染色したブランクスライドの画像から得られるパラメータは、スライドを作製する際に用いられる染色剤又は染色試薬の品質を評価するのに用いられてよい。限定ではない例として、染色したブランクスライドのバックグラウンド染色に対応するパラメータの評価は、スライドを作製する際に用いられる染色剤の品質を示し得る。
【0094】
スライドの作製の際に用いられる試薬の品質の評価は、種々の結果をもたらし得る。例えば、本明細書で説明される評価は、試薬が、例えば、自動分析器による自動組織学的分析を含む組織学的分析のために十分な品質の組織学的に染色したスライドを生み出すことを示し得る。或る場合には、本明細書で説明される評価は、試薬が、例えば、自動分析器による自動組織学的分析を含む組織学的分析のために不十分な品質の組織学的に染色したスライドを生み出すことを示し得る。不十分な品質を示す分析の特徴は、多様であり得るものであり、例えば、所定の範囲外の染色強度(例えば、所定の閾値を上回る、所定の閾値を下回るなど)、所定の範囲外の染色変動性(例えば、所定の閾値を上回る)、所定の範囲外の光透過度(例えば、所定の閾値を下回るなど)、残屑の存在(例えば、所定の閾値を上回る残屑の存在)、ストリークの存在(例えば、所定の閾値を上回るストリークの存在)などを含み得るがこれらに限定されない。本明細書に記載される方法により測定可能な染色剤又は他の試薬のすべての特徴は、本明細書で説明される品質の評価に適宜用いられてよい。
【0095】
上で述べたように、本方法は、一般に、染色したブランクスライドの1つ以上の画像の取得を含むことになる。或る場合には、例えば、染色したブランクスライドと染色していないスライドが比較される場合に、本方法は、染色していないスライドの1つ以上の画像の取得も含み得るものであり、「染色していないスライド」という用語は、一般に、ブランクスライド、すなわち、どの染色手順も受けない、検体を有していないスライドを指す。このような染色していないスライドは、対照又はベースライン又は基準として、例えば、透過パーセントのベースライン基準として役立ち得る。
【0096】
後により詳細に述べるように、あらゆる便利な適切なイメージング装置が、例えばデジタルカメラを装備した顕微鏡を含み、本方法で説明されるように画像を取得する際の使用を見出し得る。或る場合には、染色したブランクスライドの1つ以上の画像を取り込むのに用いられるイメージング装置は、本明細書で或る場合に「検体スライドイメージング装置」と呼ばれる、検体スライドの画像を取り込むのに使用されるのと同じイメージング装置である。或る場合には、染色したブランクスライドの1つ以上の画像を取り込むのに用いられるイメージング装置は、検体スライドの画像を取り込むのに使用されるイメージング装置とは別の装置である。
【0097】
或る場合には、染色したブランクスライドの1つの画像が取得され、その後の分析に用いられてよい。或る場合には、染色したブランクスライドの複数の画像が取得され、その後の分析に用いられてよい。染色したブランクスライドの複数の画像が取得される場合、取得され使用される画像の数は、多様であり得るものであり、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、2~100、2~90、2~80、2~70、2~60、2~50、2~45、2~40、2~35、2~30、2~25、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~100、3~90、3~80、3~70、3~60、3~50、3~45、3~40、3~35、3~30、3~25、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~100、4~90、4~80、4~70、4~60、4~50、4~45、4~40、4~35、4~30、4~25、4~20、4~19、4~18、4~17、4~16、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、5~100、5~90、5~80、5~70、5~60、5~50、5~45、5~40、5~35、5~30、5~25、5~20、5~19、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、10~19、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、10~12、20~100、20~90、20~80、20~70、20~60、20~50、20~45、20~40、20~35、20~30、20~25などを含むがこれらに限定されず、2以上であるが一般に100以下の画像を含み得る。
【0098】
各画像がスライドの異なる領域を表すように複数の画像が取得されてよく、このような異なる領域は、部分的に重なっていてよく又は重なっていなくてよく、取得される画像は、スライドの複数の異なる領域を表す。複数の画像における取得されるスライドの異なる領域は、隣接していてよく又は隣接していなくてよく、系統的に又は無作為に、を含む任意の便利な様態で分散していてよい。
【0099】
或る場合には、複数の異なる領域は、スライドの表面上に作製される経路に沿って分散していてよい。例えば、スライドの長軸に平行な経路(例えば、スライドの長軸の中央に沿った経路、スライドの長軸の中央に沿っていない経路など)、スライドの短軸に平行な経路(例えば、スライドの短軸の中央に沿った経路、スライドの短軸の中央に沿っていない経路など)、対角線に沿った経路(例えば、スライドの検体領域の角部からスライドの検体領域の対角の角部への)などを含むがこれらに限定されず、スライドの表面に沿った任意の便利な適切な経路が、本明細書で説明される方法での使用を見出し得る。或る場合には、複数の平行な経路、複数の平行でない経路(例えば、2つの垂直経路)などを含む、複数の経路が採用されてよい。
【0100】
或る場合には、スライドの特定の軸とより共通的に相関し得る染色剤の品質の特徴をより容易に検出するべく、複数の平行でない経路が採用されてよい。例えば、或る場合には、配向においてスライドの長軸と相関し得るストリークを検出するべく2つの平行でない軸に沿って取り込まれた複数の画像が採用されてよい。画像が複数の平行でない経路に沿って取得されるならば、或る場合には、平行でない経路(例えば、垂直経路を含む)は、例えば、各経路に関する個別に計算したパラメータを比較すること及び計算値を比較することにより比較されてよい。
【0101】
本方法に従って取り込まれる画像は、モノクロ(デジタルモノクロ又は「グレースケール」)又はカラー(デジタルカラー画像)のデジタル画像を含み得る。本明細書で用いられる場合の「デジタル画像」は、一般に、固定又は非固定解像度であり得る二次元画像の数値表現(例えば、バイナリ表現)を指す。固定解像度画像は、XY方向の固定数の行及び列のピクセルを有する。或る場合には、デジタル画像は、XYZ方向の固定数のボクセルを有する三次元であってよい。ピクセル及びボクセルは、圧縮されていない又は圧縮された形式で伝送又は記憶される小さな整数の二次元又は三次元アレイであるラスタ画像又はラスタマップとしてコンピュータメモリに記憶される。適切なデジタル画像ファイルフォーマットは、例えば、BMP、BPG、CD5、DEEP、ECW、Exif、FITS、FLIF、GIF、HDR、HEIF、ILBM、ILBM、IMG、IMG、JPEG 2000、JPEG XR、JPEG/JFIF、レイヤードイメージファイルフォーマット、Nrrd、PAM、PBM、PCX、PGF、PGM、PLBM、PNG、PNM、PPM、SGI、SID、Sun Raster、TGA、TIFF、VICAR、WEBPなどを含むがこれらに限定されない。
【0102】
デジタル画像は、例えば、取り込まれる画像の特定のタイプ(例えば、カラー又はグレースケール)及びデジタルカメラ又は他の画像取り込み装置の感度に応じて様々な画像ビット深度であってよく、例えば、8ビット、10ビット、12ビット、14ビット、16ビット、18ビット、24ビット、30ビット、36ビット、48ビット、64ビットなどを含み得るがこれらに限定されない。或る場合には、カラー画像のチャンネルは、個々に8ビットのグレースケール画像であってよく、又は個々に8ビットのグレースケール画像へ分割されてよい。或る場合には、カラー画像のチャンネルは、個々に16ビットのグレースケール画像であってよく、又は個々に16ビットのグレースケール画像へ分割されてよい。或る場合には、個々に取り込んだグレースケール画像を単一画像の異なるカラーチャンネルに割り当てることにより、単一画像へ組み合わされた複数の個々に取り込んだグレースケール画像からデジタルカラー画像が生成されてよい。他の場合には、デジタルカラー画像のすべての色は、例えば、異なる色に割り当てられる複数の光検出器と異なる色の光を異なる光検出器に誘導するための1つ以上の光学装置とを有する画像取り込み装置の使用を通じて同時に取り込まれる。
【0103】
デジタル画像は、バイナリ(例えば、黒及び白)、グレースケール、又はカラーフォーマットであってよく、適切な画像処理アルゴリズムによりフォーマットを変換されてよい。例えば、カラー画像は、各カラーチャンネルに関する個々のグレースケール画像を生成するべく個々のカラーチャンネルへ「分割」されてよい。例えば、赤色、緑色、及び青色イメージ(RGB)画像は、赤色チャンネルのグレースケール画像、緑色チャンネルのグレースケール画像、及び青色チャンネルのグレースケール画像を生成するべく個々の赤色、緑色、及び青色チャンネルへ分割されてよい。カラー画像は、色空間の間で変換され、例えば、RGB色空間、CMYK色空間、HSV色空間、CIE色空間、Lab色空間、CIELUV色空間、YCbCr色空間などを含むがこれらに限定されず、特定の色空間の任意の便利な適切なカラーチャンネルへ分割されてよい。バイナリ画像及びグレースケール画像がカラー画像のチャンネルにあてはめられてよく、例えば、複数のバイナリ又はグレースケール画像がカラー画像の複数のチャンネルにあてはめられるならば、バイナリ及び/又はグレースケール画像からカラー画像が構築又は「マージ」され得る。グレースケール画像を生成するべくカラー画像が個々のカラーチャンネルへ分割されるならば、個々のグレースケール画像は、それらの以前のチャンネルの名称で呼ばれてよく、例えば、赤色チャンネルから生成されたグレースケール画像は、その後のステップにおいて「赤色」と呼ばれてよく、及び/又は、「赤色」チャンネルから生成されたあらゆる値は、それらの以前のチャンネルの名称で呼ばれてよく、例えば、平均「赤色」強度は、赤色チャンネルから生成されたグレースケール画像から導出される平均強度値を指す。他の色空間から導出される画像及び値は、対応する命名法を用いて呼ばれてよい。
【0104】
取得されるデジタルカラー画像は、任意の適切なカラー対応の画像取り込み装置を用いて取り込まれてよい。適切なデジタルカラー画像取り込み装置は、独立型の画像取り込みユニットとなり、又は、例えば、組織学分析器、自動顕微鏡法システム、血液学分析器などを含むより大きい分析システムの一部である一体化された画像取り込み装置であり得る。適切なデジタルカラー画像取り込み装置は、特定のイメージング状況、画像取り込みの目的、及び装置又はシステム全体としての関連するコンポーネントに応じて大いに変化することになる。
【0105】
説明した方法に用いるための少なくとも適切なカラー画像取り込み装置は、デジタルカラー画像を取り込むことができるデジタルカラーカメラと、デジタルカラー画像を記憶する及び/又は画像を付属の画像処理回路に又は画像処理回路へ後で伝送するために付属の記憶装置に伝送する手段を含むことになる。適切なデジタルカラーカメラは、多様となり、一般に、本明細書で説明される方法に従って処理され得る画像を取り込むのに十分に高分解能の且つ十分なカラー取り込み機能のあらゆるデジタルカラーカメラを含むことになる。
【0106】
したがって、デジタルカラー画像は、カラー画像として(すなわち、多チャンネル画像として)処理されてよく、又は、画像処理の一部として2つ以上の個々のカラーチャンネルへ変換又は分割されてよい。2つ以上の個々のカラーチャンネルへ分割するときに、すべての分割画像(すなわち、画像のすべての個々のチャンネル)、又は分割画像のうちの1つだけ(すなわち、画像の個々のチャンネルのうちの1つだけ)、又は分割画像のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、2つ、3つなど(すなわち、画像の個々のチャンネル)を含むがこれらに限定されず、あらゆる数の結果的に生じる分割画像が、さらなる処理ステップで用いられてよい。
【0107】
取得した画像の処理は、一般に、本明細書で説明される評価する方法で用いられる画像から少なくとも1つのパラメータ値を抽出することを含むことになる。或る場合には、2つ以上のパラメータ値が、単一の画像から抽出されてよい。或る場合には、2つ以上のパラメータ値が、同じ染色したブランクスライドからとられる2つ以上の画像から抽出されてよい。同じ画像から又は関連する画像(すなわち、同じ染色したブランクスライドから得られた画像、同じイメージング経路に沿って得られた画像、関連する(例えば、垂直)経路に沿って得られた画像など)から抽出された複数のパラメータ値が、例えば、代表的シグネチャへ組み合わされてよい。複数のパラメータ値をコンパイルすることから生成される代表的シグネチャは、プロセスの1つ以上の試薬を含む、スライド作製プロセスの種々の特徴を表し得る。
【0108】
或る場合には、用いられる染色剤から生じたバックグラウンドを表すシグネチャ(すなわち、バックグラウンド染色シグネチャ)を含む、組織学的に染色したスライドの作製に用いられる染色剤を表すシグネチャを生成するべく、複数のパラメータが組み合わされてよい。シグネチャは、シグネチャが何を表すかに応じて任意の数の個々のパラメータ値を含んでよく、シグネチャにおける個々のパラメータ値の数は、多様であり得るものであり、例えば、2つの個々の値、3つの個々の値、4つの個々の値、5つの個々の値、6つの個々の値、7つの個々の値、8つの個々の値、9つの個々の値、10の個々の値、11の個々の値、12の個々の値、13の個々の値、14の個々の値、15の個々の値、16の個々の値、17の個々の値、18の個々の値、19の個々の値、20の個々の値などを含むがこれらに限定されず、2~20個以上の範囲であり得る。
【0109】
画像処理中に抽出されるパラメータ値は、行われる評価に応じて多様であり得る。抽出され得るパラメータ値の限定ではない例は、強度値、均一性値などを含むがこれらに限定されない。このようなパラメータ値は、例えば画像ヒストグラムの分析を通じて、を含む任意の便利な適切な手段により抽出されてよい。パラメータ値を生成する際に統計計算が行われてよい。有用な統計計算の限定ではない例は、画像から得られたデータに基づいて平均値を計算すること、画像から得られたデータに基づいて中央値を計算すること、画像から得られたデータに基づいて最小を計算すること、画像から得られたデータに基づいて最大を計算すること、画像から得られたデータに基づいて標準偏差を計算すること、画像から得られたデータに基づいてモードを計算することなどを含み得る。
【0110】
パラメータ値は、画像の全体、画像の一部、複数の画像、複数の画像の複数の部分などに関して抽出又は計算されてよい。同様に、パラメータ値は、カラー画像又はその一部、若しくはグレースケール画像又はその一部のすべてのチャンネルに関して計算されてよい。例えば、カラー画像又はその一部、若しくはグレースケール画像又はその一部の強度値の計算は、総合的な染色強度と呼ばれる場合がある。カラー画像又はその一部、若しくはグレースケール画像又はその一部の標準偏差の計算は、総合的な標準偏差と呼ばれる場合がある。カラー画像の単一のチャンネルに関するパラメータ値の計算は、データが導出されたチャンネルに対して呼ばれる場合がある。例えば、画像又はその一部の赤色チャンネルの強度値の計算は、赤色染色強度と呼ばれる場合がある。画像又はその一部の緑色チャンネルの強度値の計算は、緑色染色強度と呼ばれる場合がある。画像又はその一部の青色チャンネルの強度値の計算は、青色染色強度と呼ばれる場合がある。このような画像に関する対応する平均値、中央値、標準偏差なども、本明細書で説明されるパラメータ値を抽出する際に得られ得る。
【0111】
例えば、標準偏差などの分散の尺度が、均一性値を抽出する際に用いられてよく、一般に、複数の画像及び/又は単一の画像又は複数の画像の複数の領域の評価に関係することになる。例えば、染色強度に関する総合的な均一性値は、染色したブランクスライドから取得した複数のカラー画像から抽出され、複数の画像の強度の標準偏差を計算することにより求められてよい。同様に、赤色染色強度に関する均一性値は、染色したブランクスライドから取得した複数の赤色チャンネル画像から抽出され、複数の画像の赤色強度の標準偏差を計算することにより求められてよい。例えば、他のチャンネルに関する、他の統計的尺度に関するなどの、他の分散に関係するパラメータ値の計算が、容易に理解されるであろう。
【0112】
或る場合には、パラメータ値は、参照値に対して計算されることになる。例えば、或る場合には、染色していないスライド上で測定されるパラメータに対応する参照値が、相対パラメータ値を計算する際に用いられることになる。このような相対パラメータ値を求める際に用いられる参照値は、事前に測定され、例えばコンピュータメモリに記憶されてよく、又は新たに測定されてよい、例えば、染色したブランクスライドの画像が取得される前、間、又は後に、染色していないスライドから測定されてよい。染色していないスライドからの参照値を使用する相対パラメータ値の1つの限定ではない例は、光透過係数である。光透過係数を求める際に、染色したブランクスライドから得られる画像の光透過度が、染色したブランクスライドの強度測度を染色していないスライドに関して得られる強度の参照値と比較することにより求められてよい。光透過係数は、染色していない参照と比較した場合の染色したブランクスライドの透過パーセントとして表され得る。
【0113】
染色剤シグネチャの比較は、染色したブランクスライドに関する染色剤シグネチャを取得し、該シグネチャを参照染色剤シグネチャと比較することにより行われてよい。このような参照染色剤シグネチャは、事前に測定され、例えばコンピュータメモリに記憶されてよく、又は新たに測定されてよい、例えば、未知の品質の染色剤で作製された染色したブランクスライドの画像が取得される前、間、又は後に、既知の品質の染色剤で染色したブランクスライドから測定されてよい。既知の品質の染色剤で染色した参照スライドは多様となる。或る場合には、組織学的に分析可能な染色された検体をもたらすべく、十分な品質であることが分かっている染色剤で作製された染色したブランクスライドが用いられ得る。このような状況では、参照と比較される染色したブランクスライドから得られるシグネチャが、参照と比較される場合に該シグネチャが品質の或る余地内にあるかどうかを判定するべく比較されてよい。或る場合には、組織学的に分析可能な染色された検体をもたらすべく、不十分な品質であることが分かっている染色剤で作製された染色したブランクスライドが用いられ得る。不十分な品質であることが分かっている染色剤で作製されたスライドの限定ではない例は、例えば、正確な分析を妨げる強度(例えば、強すぎる強度、不十分な強度など)に細胞を染色することが分かっている染色剤、正確な分析を妨げる変動性をもって細胞を染色することが分かっている染色剤、正確な分析を妨げる超過量の残屑を有することが分かっている染色剤、ストリークの形成を促進することが分かっている染色剤などを含むがこれらに限定されない。
【0114】
或る場合には、ブランクの染色したスライドを品質閾値と比較するのに1つ以上のパラメータ値が用いられてよい。したがって、個々のパラメータ値又は組み合わせのシグネチャが、閾値、例えば、パラメータ閾値又はシグネチャ閾値との比較のために用いられてよい。閾値は、多様となり、一般に、自動組織学的分析システムに従って正確に評価されるべき検体を有するスライドの染色のために十分な最小又は最大の単一値又は複数のパラメータ値を表し得る。例えば、最大バックグラウンド染色強度閾値は、正確な細胞分類を達成するために検体スライドが自動組織学的分析システムにおいて分析され得る、それを超えると正確な細胞分類が達成されない、最大バックグラウンド強度を表し得る。別の例として、最大変動性閾値は、正確な細胞分類を達成するために検体スライドが自動組織学的分析システムにおいて分析され得る、それを超えると正確な細胞分類が達成されない、最大染色変動性を表し得る。
【0115】
或る場合には、個々のパラメータ値閾値の組み合わせを表す、総合的な品質シグネチャ閾値が採用されてよい。評価される染色剤シグネチャは、総合的な品質シグネチャ閾値と比較されてよく、染色剤は、評価される染色剤シグネチャが品質閾値を超えるときに、正確な自動組織学的分析のための十分な品質であると判定され得る。このような総合的な品質シグネチャ閾値は、あらゆる数の前述のパラメータ値を組み込んでいてよく、例えば、実際の測定値は、品質スコアのコンポーネントへ変換されてよい。例えば、染色剤シグネチャに関する総合的な品質スコアは、総合的な染色強度に関するスコア、個々のチャンネルの染色強度に関するスコア、総合的な染色剤の変動性に関するスコア、個々のチャンネルの染色剤の変動性に関するスコア、光透過度に関するスコア、残屑の有無又はレベルに関するスコア、ストリークの有無又はレベルに関するスコアなどのいくつかの組み合わせを含み得る。総合的な品質シグネチャ閾値は、既知の品質の染色剤を用いて作製されたブランクスライドに関して得られるパラメータ値の同様の組み合わせに基づいていてよい。
【0116】
本方法の評価のうちの1つ以上の結果は、さらなるプロセスにおいて用いられてよく、又はユーザ又は自動スライド作製及び/又は分析システムの自動コンポーネントに直接報告されてよい。例えば、或る場合には、レポートが、例えば、評価の結果を示すインジケータライト、アラーム、又は他のユーザインターフェース(例えば、モニタ)によってユーザに通信されてよい。
【0117】
或る場合には、レポートは、自動化されたシステムの別の態様に電気的に通信されてよい。例えば、或る場合には、評価の結果を報告するプロセッサは、例えば、本明細書で説明される試薬調節のうちの1つ以上を含む、システムの或る他のアクションをトリガしてよい。
【0118】
本方法の1つ以上の評価に基づいて、以下でさらに詳細に説明する調節がなされ得る。例えば、染色剤が評価され、正確な自動組織学的細胞分類をもたらすのに不十分な品質であると判明するとき、作製プロトコルの1つ以上の試薬が排出され、置き換えられてよい。このような調節は、染色剤などのスライド作製プロトコルの1つ以上のコンポーネントの排出及び/又は置き換えに限定される必要はなく、例えば、染色剤への1つ以上のコンポーネントの追加、プロセスタイミング又は環境の変化などを含み得る。
【0119】
調節
或る場合には、本開示の方法は、自動スライド作製のための装置において用いられるスライド作製プロセス又はステップ又は試薬の調節を行うことを含み得る。単純明快にするために、本明細書で説明される種々の評価のうちの1つ以上に基づいて、例えば、処理ステップの長さ、処理ステップの速度、試薬の体積、試薬の組成を調節する、試薬を置換するなどの、調節するための方法を、組織学的又は血液学的分析のための組織学的又は血液学的スライドを作製することに関連して後述するが、方法はそれに限定されず、他の組織学的染色プロセスなどの又はこれと同様の染色プロセスの評価に基づく調節が望まれる種々の他の状況での使用が見出され得ることを当業者はすぐに理解するであろう。
【0120】
本方法の評価は、固定浴の調節、例えば、充填、排出、補充、すすぐことなどを含み得る。このような調節は、評価に応じて、固定浴の一部の又はすべての内容物の置き換えを含み得る。或る場合には、このような調節は、例えば、アルコール固定剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)又はアルコール固定剤を含有する溶液、ホルムアルデヒドベースの固定剤又はホルムアルデヒドベースの固定剤を含有する溶液を含むがこれらに限定されず、試薬浴液体の成分の調節を含み得る。
【0121】
本方法の評価は、洗浄浴の調節、例えば、充填、排出、補充、すすぐことなどを含み得る。このような調節は、評価に応じて、洗浄浴の一部の又はすべての内容物の置き換えを含み得る。或る場合には、このような調節は、例えば、洗剤又は洗剤を含有する溶液、洗浄バッファ、水などを含むがこれらに限定されず、試薬浴液体の成分の調節を含み得る。
【0122】
本方法の評価は、染色浴の調節、例えば、充填、排出、補充、すすぐことなどを含み得る。このような調節は、評価に応じて、染色浴の一部の又はすべての内容物の置き換えを含み得る。或る場合には、このような調節は、例えば、染色剤の1つ以上の染料成分又は染色剤の染料成分を含有する溶液を含むがこれらに限定されない、試薬浴液体の成分の調節を含み得る。或る場合には、当該染色剤は、組織学染色剤が入っている染色浴の充填、排出、補充、すすぎ、及び/又はこのような染色剤の任意の1つ以上の成分の調節などにより説明されるように調節され得る組織学的染色剤を含む。
【0123】
本明細書で用いられる場合の組織学染色剤は、多細胞生物から得られる細胞の細胞解剖学及び/又は形態学の顕微鏡分析に用いられる染色剤を指す。組織学染色剤は、一般に、1つ以上の細胞タイプ及び/又は1つ以上の細胞タイプの成分を対比色に染色する少なくとも1つの染料を含む。組織学染色剤はまた、残りの細胞を染色する又は残りの細胞を異なる色に染色する少なくとも1つの対比染色剤を含み得る。組織学的技術、染色剤、及び染色方法は、良く知られており、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、Kierman. Histological and histochemical methods: Theory and practice. Oxford: Butterworth/Heinemann, 1999及びBancroft & Stevens. Theory and practice of histological techniques. New York, N.Y.: Churchill Livingstone, 1996で説明されるものを含むがそれに限定されない。
【0124】
組織学的染色技術は、1つ以上の特定の細胞を特異的な方法で染色する特異性とすることができ、又は本質的にすべての細胞又はほとんどの細胞を同じ又は類似の方法で染色する非特異性とすることができる。組織学染色剤は、例えば、アルシアンブルー染色剤、アニリンブルー染色剤、アザン染色剤、ビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン染色剤、カルボール-フクシン染色剤、クロムミョウバン/ヘマトキシリン染色剤、コンゴーレッド染色剤、クリスタルバイオレット染色剤、ファストレッド染色剤、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色剤、鉄ヘマトキシリン染色剤、イサミンブルー/エオシン染色剤、ジェンナーの染色剤、マロリーのリンタングステン酸ヘマトキシリン(PTAH)染色剤、マロリーのトリクローム染色剤、マッソン染色剤、マラカイトグリーン染色剤、メチルグリーン-ピロニン(MGP)染色剤、ニッスル及びメチレンブルー染色剤、ニッスル染色剤、オイルレッドO染色剤、オルセイン染色剤、オスミウム酸染色剤、四酸化オスミウム染色剤、パパニコロウ染色剤、過ヨウ素酸-シッフ(PAS)染色剤、レチクリン染色剤、ロマノフスキー染色剤、サフラニンO染色剤、銀染色剤、スダンブラック及びオスミウム染色剤、トルイジンブルー染色剤、トリクロームAB、トリクロームLG、トリパンブルー染色剤、ワンギーソン染色剤、Verhoffの染色剤、ワイゲルトのレゾルシン-フクシン染色剤などを含むがこれらに限定されない。
【0125】
組織学染色剤に含まれる染料は、染色剤調製物及び所望の染色結果に応じて多様となる。或る場合には、組織学染色剤に有用な染料は、例えば、酸性フクシンカルシウム塩、酸性フクシン、アルシアンブルー、アリザリンレッド、アニリンブルー、アニリンブルー二アンモニウム塩、オーラミンO染料、アズール、アズールA塩化物、アズールB、塩基性フクシン、ビスマルクブラウンY、ブリリアントクレシルブルー、ブリリアントグリーン、カーマイン、コンゴーレッド、クレシルバイオレット酢酸塩、クリスタルバイオレット、ダローレッド、エオシン、エオシンB、エオシンY、エオシンY二ナトリウム塩、エリトロシンB、エリトロシンエクストラブルーイッシュ、エチルエオシン、ファストグリーンFCF、ヘマトキシリン、インディゴカーマイン、ヤヌスグリーンB、ライトグリーンSFイエロー、マラカイトグリーンシュウ酸塩、メチルブルー、メチルグリーン、メチルグリーン塩化亜鉛、メチルオレンジ、メチルバイオレット2B、メチレンブルー、メチレンバイオレット(ベルントゼン)、ニュートラルレッド、ニグロシン、ナイルブルーA、オイルレッドO、オレンジG、オレンジIIナトリウム塩、合成オルセイン、フロキシンB染料、ピロニンB、ピロニンG、ピロニンY、レサズリンナトリウム塩、ローズベンガルナトリウム塩、サフラニンO、スダンブラックB、スダンIII、スダンIV、チオニン酢酸塩、トルイジン、トルイジンブルーOなどを含み得るがこれらに限定されない。
【0126】
組織学的染色剤は、ロマノフスキー染色剤を含む。ロマノフスキー染色剤は、一般に、メチレンブルー(例えば、アズールB)及びエオシン(例えば、エオシンY)染料を含むがこれらに限定されず、種々の成分で構成された中性染色剤である。アズールは、核酸と結合して結果的に青~紫色を生じる塩基性染料である。エオシンは、アルカリ性の細胞質に引き寄せられて赤色着色を生じる酸性染料である。ロマノフスキー染色剤は多様であり、種々のアズール及びエオシン類似体を含有するものを含む種々の調製物を含む。ロマノフスキー染色剤及びそれらの染色機構は、よく知られており、例えば、Horobin & Walter.Histochemistry(1987)86:331-336、Marshall et al. J Clin Pathol(1978)31(3):280-2、Marshall et al. J Clin Pathol.(1975)28(11):920-3、J Clin Pathol(1975)28(8):680-5で説明され、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0127】
ロマノフスキー染色剤は、ギムザ染色剤、ライト染色剤、ライトギムザ染色剤、ジェンナー染色剤、ジェンナー-ギムザ染色剤、リーシュマン染色剤、メイ・グリュンワルド染色剤、メイグリュンワルズギムザ染色剤などを含むがこれらに限定されない。各ロマノフスキー染色剤は、種々の異なるレシピから導出されるか又は種々の供給業者から供給される、種々の調製物中に存在し得る。ロマノフスキー染色剤調製物は、例えば、メチレンブルー、アズールA、アズールB、アズールC、トルイジンブルー、チオニン、メチレンバイオレットベルントゼン、メチルチオノリン、チオノリン、エオシン、エオシンY、トリブロモフルオレセイン、フルオレセイン、チアジン染料などを含むがこれらに限定されず、種々の染色剤成分を含み得る。ロマノフスキー染色剤調製物は、例えば、水及び例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを含むがこれらに限定されないアルコールを含む、これらに限定されず、水性溶媒及び有機溶媒を含む、染色剤成分を溶解する種々の溶媒を含み得る。
【0128】
組織学的染色剤及びその成分は、例えば、Sigma Aldrich、Thermo Fisher Scientific、Avantor Proformance Materials、VWR International、Polysciences Inc.などを含むが、これらに限定されず、供給業者から市販されているものを含む。
【0129】
本方法はまた、或る場合には、液体浴レベルに影響する、評価された浴体積に基づく調節及び/又はカウントされたスライド数に基づく調節を含み得る。或る場合には、方法は、染色浴の液面レベルに影響する、評価された染色浴体積に基づく調節及び/又はカウントされたスライド数に基づく調節を含む。したがって、本方法の調節は、例えば、染色浴を含む種々の浴の浴体積を増加させること及び浴体積を減少させることを含む。自動化されたシステムに関係する方法では、液面レベルの調節は、例えば、結果的に試薬浴の充填、排出などをもたらす1つ以上の弁のトリガされたアクションを通じて、調節を自動的にトリガする評価の結果を含み得る。
【0130】
上で述べたように、本開示の調節は、複数の評価に基づく調節であり得る。例えば、或る場合には、調節は、評価された浴体積、カウントされたスライド数、試薬の品質、及びその組合せに基づいていてよい。調節がそれに基づく評価は、調節が行われる試薬浴へスライドが挿入される前、間、又は後に行われてよい。同様に、必要であると識別される又は評価によりトリガされる調節は、スライドが当該試薬浴へ挿入される前、間、又は後に行われてよい。
【0131】
本開示の方法は、自動スライド作製システムにおける1つ以上の試薬浴の中の液面レベルの微調整及び/又は当該浴の中の液体の総置き換えを提供し得る。したがって、当該方法の液体体積の調節は、例えば、1ml~1L、2ml~1L、3ml~1L、4ml~1L、5ml~1L、6ml~1L、7ml~1L、8ml~1L、9ml~1L、10ml~1L、11ml~1L、12ml~1L、13ml~1L、14ml~1L、15ml~1L、16ml~1L、17ml~1L、18ml~1L、19ml~1L、20ml~1L、21ml~1L、22ml~1L、23ml~1L、24ml~1L、25ml~1L、30ml~1L、35ml~1L、40ml~1L、45ml~1L、50ml~1L、55ml~1L、60ml~1L、65ml~1L、70ml~1L、75ml~1L、80ml~1L、85ml~1L、90ml~1L、95ml~1L、100ml~1L、150ml~1L、200ml~1L、250ml~1L、300ml~1L、350ml~1L、400ml~1L、450ml~1L、500ml~1L、600ml~1L、700ml~1L、800ml~1L、900ml~1L、1ml~500ml、2ml~500ml、3ml~500ml、4ml~500ml、5ml~500ml、6ml~500ml、7ml~500ml、8ml~500ml、9ml~500ml、10ml~500ml、11ml~500ml、12ml~500ml、13ml~500ml、14ml~500ml、15ml~500ml、16ml~500ml、17ml~500ml、18ml~500ml、19ml~500ml、20ml~500ml、21ml~500ml、22ml~500ml、23ml~500ml、24ml~500ml、25ml~500ml、30ml~500ml、35ml~500ml、40ml~500ml、45ml~500ml、50ml~500ml、55ml~500ml、60ml~500ml、65ml~500ml、70ml~500ml、75ml~500ml、80ml~500ml、85ml~500ml、90ml~500ml、95ml~500ml、100ml~500ml、150ml~500ml、200ml~500ml、250ml~500ml、300ml~500ml、350ml~500ml、400ml~500ml、450ml~500ml、1ml~250ml、2ml~250ml、3ml~250ml、4ml~250ml、5ml~250ml、6ml~250ml、7ml~250ml、8ml~250ml、9ml~250ml、10ml~250ml、11ml~250ml、12ml~250ml、13ml~250ml、14ml~250ml、15ml~250ml、16ml~250ml、17ml~250ml、18ml~250ml、19ml~250ml、20ml~250ml、21ml~250ml、22ml~250ml、23ml~250ml、24ml~250ml、25ml~250ml、30ml~250ml、35ml~250ml、40ml~250ml、45ml~250ml、50ml~250ml、55ml~250ml、60ml~250ml、65ml~250ml、70ml~250ml、75ml~250ml、80ml~250ml、85ml~250ml、90ml~250ml、95ml~250ml、100ml~250ml、150ml~250ml、200ml~250mlなどを含むがこれらに限定されず、1ml未満又は1L以上の範囲であり得る。
【0132】
同様に、本方法の液面レベル調節は、例えば、示される調節のタイプ及び浴の寸法に応じて多様となり、例えば、0.1mm~10mm、0.2mm~10mm、0.3mm~10mm、0.4mm~10mm、0.5mm~10mm、0.6mm~10mm、0.7mm~10mm、0.8mm~10mm、0.9mm~10mm、1mm~10mm、1.5mm~10mm、2mm~10mm、2.5mm~10mm、3mm~10mm、3.5mm~10mm、4mm~10mm、4.5mm~10mm、5mm~10mm、5.5mm~10mm、6mm~10mm、6.5mm~10mm、7mm~10mm、7.5mm~10mm、8mm~10mm、8.5mm~10mm、9mm~10mm、9.5mm~10mm、0.1mm~5mm、0.2mm~5mm、0.3mm~5mm、0.4mm~5mm、0.5mm~5mm、0.6mm~5mm、0.7mm~5mm、0.8mm~5mm、0.9mm~5mm、1mm~5mm、1.5mm~5mm、2mm~5mm、2.5mm~5mm、3mm~5mm、3.5mm~5mm、4mm~5mm、4.5mm~5mm、1.5mm~7.5mm、2mm~7mm、2.5mm~6.5mm、3mm~6mm、3.5mm~5.5mm、4mm~5mmなどを含むがこれらに限定されず、0.1mm~10mm以上の範囲であり得る。
【0133】
或る場合には、液面レベル調節は、例えば、本明細書で説明されるものを含むがこれらに限定されず、例えば市販のスライドのスライド寸法を含む既知のスライド寸法に基づいて計算される各スライドの押しのけ量が既知であるならば、スライドカウンティング評価において検出されたスライドの数に基づいていてよい。或る場合には、当該方法の液面レベル調節は、所望の液面レベルを達成するべく前述の1つ以上の評価に基づいて行われ、所望の液面レベルは、多様であり得るものであり、例えば、液体が検体情報領域と接触せずにスライドの検体領域を十分に覆うように浴に関して決定される液面レベルを含み得る。或る場合には、当該方法の液面レベル調節は、所定の液面レベルを達成するべく前述の1つ以上の評価に基づいて行われ、所定の液面レベルは、多様であり得るものであり、例えば、液体が検体情報領域と接触せずにスライドの検体領域を十分に覆うように特定の浴とスライドとの組み合わせに関して決定される液面レベルを含み得る。
【0134】
本方法の調節は、例えば本明細書で説明される場合の、染色剤の品質の評価に基づいて染色浴を調節することを含む。調節を示す及び/又はトリガすることになる染色剤の品質評価は、例えば、品質閾値を上回る又は下回る染色剤の評価(例えば、染色剤の強度閾値を下回る、染色剤の変動性閾値を上回る、染色剤の透明度閾値を下回るなど)、所定の閾値を上回る残屑のレベルを示す染色剤の評価、所定の閾値を上回るストリークのレベルを示す評価など含むがこれらに限定されない。本方法の、例えば本明細書で説明される1つ以上の評価に基づく場合の調節は、他にも手段はあるが、後述する1つ以上の装置又は一体化されたシステムの使用を通じて達成されてよい。
【0135】
試薬調節に加えて又はその代わりに、本明細書で説明される評価は、スライド作製手順中に行われる物理的操作を変更する必要性を示し得る。例えば、染色剤の品質の不足を示す評価は、特定の染色剤内のインキュベーション時間を増加又は減少させる必要性を示し得る。別の例として、本明細書で説明される評価に基づいて識別されたストリークの存在は、処理ステップの速度の変化、例えば、スライドが1つ以上の試薬浴に挿入される又は取り出される速度を増加又は減少させることが必要とされ得ることを示し得る。本明細書で説明される1つ以上の評価に基づいて示され得るスライド処理手順の物理的操作へのこのような調節は、手動で、又は例えば本明細書で説明される装置及びシステムのうちの1つ以上において自動的に実施されることを含む自動的に実施されてよい。
【0136】
装置及びシステム
上に要約したように、本開示は、自動組織学又は血液学機器でのスライド作製の態様の自動評価及び制御に用いるための装置及びシステムを提供する。本開示の装置及びシステムは、試薬の量の自動評価及び/又は試薬性能の自動評価のすべて又は一部を行ってよい。当該装置及びシステムはまた、例えば、試薬浴の中に存在する場合の試薬量の調節、試薬組成の調節、試薬の置き換えなどを含む、例えば、本明細書で説明される1つ以上の評価に基づくスライド染色試薬又はスライド染色プロセスの1つ以上の調節を行ってよい。
【0137】
本開示の装置及びシステムは、1つ以上の顕微鏡スライドを含み得る。当該装置及びシステムで用いられ得るスライドは、検体スライド及び非検体スライド(すなわち、ブランクスライド)を含む。ブランクスライドは、当該装置及びシステムにおいて種々の方法で用いられてよい。例えば、或る場合には、ブランクスライドは、例えば、血液学的分析のためのスライドの作製に用いられるスライド染色試薬の品質を評価する際に用いるために、スライドキャリアへロードされ、1つ以上の検体スライドと連続して又は並行して染色されてよい。或る場合には、染色していないブランクスライドは、例えば、染色したブランクスライドが比較される、参照又は対照として当該装置又はシステムで用いられてよい。
【0138】
スライド(すなわち、顕微鏡スライド)の形状及び寸法は、容易に入手可能であるが、多様であり得るものであり、したがって、スライドの「顕微鏡平面」とも呼ばれる分析表面は、本質的に四角形、本質的に長方形などであり得る。スライドは、通例、例えば、25mm×25mm、25mm×75mm、25mm×76mm、26mm×75mm、26mm×76mm、27mm×46mm、28mm×48mm、38mm×75mm、50mm×75mm、51mm×75mm、51mm×76mm、52mm×76mm、76mm×102mm、83mm×102mm、102mm×127mm、114mm×152mm、127mm×178mmなどを含むがこれらに限定されない顕微鏡平面寸法で入手可能である。長方形スライドは、長軸及び短軸を有すると言ってよく、このような軸はスライドの顕微鏡平面に対して画定される。スライドの厚さは、多様となり、例えば、厚さ0.5mm、厚さ1mm、厚さ1.2mm、厚さ1.4mm、厚さ1.6mmなどを含むがこれらに限定されず、0.5mm以下~2mm以上の範囲であり得る。スライドは、「すり加工領域」を有していてよく又は有していなくてよく、すり加工領域は、該領域が実際に「すり加工」されているか否かに関係なく、一般に、スライドに情報(例えば、検体情報、患者情報、アッセイ情報、日付、時刻など)を付加する(書き込む、印刷する、エッチングする、付着させるなど)ように構成されたスライドの任意の領域を指す。スライドは、一般に、ガラスで構築されることになるが、或る場合には、プラスチック(例えば、ポリスチレン、アクリルなど)を含むがこれらに限定されず、種々のポリマーで構築されてもよい。
【0139】
本開示の装置及びシステムは、スライドを保持するように寸法設定された1つ以上のスロットを有するスライドキャリアを含み得る。このような装置は、一般に、自動スライド作製装置の1つ以上の領域を通る輸送中にスライドを保持することができる1つ以上のスロット又は接触点を含むことになる。
【0140】
スライドキャリアのスライド保持容量は、特定の構成に応じて多様となり、例えば、スライドキャリアは、例えば、1~20スライド、1~19スライド、1~18スライド、1~17スライド、1~16スライド、1~15スライド、1~14スライド、1~13スライド、1~12スライド、1~11スライド、1~10スライド、1~9スライド、1~8スライド、1~7スライド、1~6スライド、1~5スライド、1~4スライド、1~3スライド、1又は2スライド、2~20スライド、2~19スライド、2~18スライド、2~17スライド、2~16スライド、2~15スライド、2~14スライド、2~13スライド、2~12スライド、2~11スライド、2~10スライド、2~9スライド、2~8スライド、2~7スライド、2~6スライド、2~5スライド、2~4スライド、2又は3スライド、5~20スライド、5~19スライド、5~18スライド、5~17スライド、5~16スライド、5~15スライド、5~14スライド、5~13スライド、5~12スライド、5~11スライド、5~10スライド、5~9スライド、5~8スライド、5~7スライド、5又は6スライド、10~20スライド、10~19スライド、10~18スライド、10~17スライド、10~16スライド、10~15スライド、10~14スライド、10~13スライド、10~12スライド、10又は11スライドなどを含むが、これらに限定されず、1~20スライド以上の容量を有する。
【0141】
或る場合には、本方法のスライドキャリアは、1つ以上のスライドを試薬浴への挿入のために垂直配向で保持し得る。スライドキャリアは、浴への挿入後にスライド(単数または複数)との接触を維持してよく又は維持しなくてよく、例えば、インキュベーション中にスライドを解放し、浴からスライドを取り出すときに接触を再確立してよい。スライドをスライドキャリア及び/又は浴の中に保持するための装置は、多様であり得るものであり、スロットに限定されず、例えば、垂直などの所望の配向にスライドを保持することができる、例えば、任意の接触点又はクランプ又は他の機構を含み得ることを当業者はすぐに理解するであろう。
【0142】
本開示の装置及びシステムは、1つ以上の試薬浴を含み得る。当該装置及びシステムの試薬浴は、例えば、組織学的染色プロトコル、血液学的染色プロトコル、免疫学的染色プロトコル、DNA/RNAハイブリダイゼーションプロトコルなどを含む任意の染色プロトコルでスライドが受け得る、例えば、固定、インキュベーティング、ブロッキング、染色、ハイブリダイゼーション、洗浄、脱色、ストリッピング、後固定、標識などを含むがこれらに限定されず、スライド作製の種々のプロセスにおいて用いられてよい。したがって、試薬浴のサイズ及び構成は、かなり多様となり、当該浴は、固定浴、インキュベーション浴、ブロッキング浴、染色浴、ハイブリダイゼーション浴、洗浄浴、脱色浴、ストリッピング浴、後固定浴、標識浴などと呼ばれる場合がある。
【0143】
試薬浴は、一般に、浴に通常採用される液体の体積を超える液体容量を有するように設計されることになり、例えば、試薬浴は、例えば、浴に採用される液体の体積よりも5%~50%の範囲で大きい、10%~50%の範囲で大きい、15%~50%の範囲で大きい、20%~50%の範囲で大きい、25%~50%の範囲で大きい、30%~50%の範囲で大きい、35%~50%の範囲で大きい、40%~50%の範囲で大きい、5%~40%の範囲で大きい、5%~35%の範囲で大きい、5%~30%の範囲で大きい、5%~25%の範囲で大きい、5%~20%の範囲で大きい、5%~15%の範囲で大きい、5%~10%の範囲で大きい、10%~40%の範囲で大きい、15%~35%の範囲で大きい、20%~30%の範囲で大きいなどを含むがこれらに限定されず、50%大きい又はそれよりも少し小さい液体容量を有してよい。
【0144】
或る場合には、当該方法の試薬浴の体積容量は、例えば、10cc~500cc、20cc~500cc、30cc~500cc、40cc~500cc、50cc~500cc、60cc~500cc、70cc~500cc、80cc~500cc、90cc~500cc、100cc~500cc、110cc~500cc、120cc~500cc、130cc~500cc、140cc~500cc、150cc~500cc、160cc~500cc、170cc~500cc、180cc~500cc、190cc~500cc、200cc~500cc、210cc~500cc、220cc~500cc、230cc~500cc、240cc~500cc、250cc~500cc、50cc~450cc、50cc~400cc、50cc~350cc、50cc~300cc、50cc~250cc、50cc~200cc、50cc~150cc、50cc~100cc、100cc~450cc、100cc~400cc、100cc~350cc、100cc~300cc、100cc~250cc、100cc~200cc、100cc~150cc、10cc~250cc、20cc~250cc、30cc~250cc、40cc~250cc、50cc~250cc、60cc~250cc、70cc~250cc、80cc~250cc、90cc~250cc、100cc~250cc、110cc~250cc、120cc~250cc、130cc~250cc、140cc~250cc、150cc~250cc、160cc~250cc、170cc~250cc、180cc~250cc、190cc~250cc、200cc~250ccなどを含むがこれらに限定されず、10cc未満又は500cc以上の範囲となる。
【0145】
本開示の装置及びシステムは、1つ又は複数のエミッタ・検出器ペアを含んでよく、前述の方法の検出プロセスを達成することができる本質的にあらゆるエミッタ・検出器ペアが採用されてよい。或る場合には、当該エミッタ・検出器ペアのエミッタ及び検出器は、光エミッタ及び光検出器であってよく、このようなコンポーネントは、装置及び/又はシステムの光路を画定してよい。
【0146】
光エミッタは、一般に、例えば、赤外光、可視光、紫外光などを含み得る、光検出器により検出可能な電磁気信号を生じることになる。或る場合には、有用な光エミッタは、白熱エミッタ、蛍光エミッタ、発光ダイオード(LED)、レーザなどを含み得る。光学センサとも呼ばれる有用な光検出器は、対応するセンサから生じた信号又は対応するセンサから生じた信号の変化を検出し、該信号又は信号の変化を電気信号に変換することができる任意の検出器を含む。有用な光学センサは、例えば、フォトレジスタ、太陽光発電装置、フォトダイオード、フォトトランジスタなどを含むがこれらに限定されない。本方法に有用な光学センサは、デジタルセンサ又はアナログセンサを含み得る。
【0147】
エミッタ・検出器ペアは、別のコンポーネントにより完全に又は部分的に遮断され得る光路を確立する任意の有用な構成で当該装置及びシステム内に配置されてよい。例えば、エミッタ・検出器ペアは、スライドキャリアにより支えられている1つ以上のスライド、試薬浴へ挿入された1つ以上のスライド、レベル管に取り付けられた又は収容されたフロートなどにより遮断される光路を確立するように配置されてよい。状況に応じて、当該装置及びシステムのエミッタ及び検出器は、放出又は受光される光路を整形する、誘導する、又は他の方法で制御するためのさらなる対応する光学部品を含んでいてよく又は含まなくてよい。有用な追加の光学部品は、例えば、光学開口、光学ミラー、光学レンズ、光学フィルタなどを含み得るがこれらに限定されない。
【0148】
当該装置及びシステムのコンポーネントは、1つ以上のプロセッサに接続されてよく又は他の方法でプロセッサと通信してよい。より詳細に後述するように、実質的にあらゆる回路を、本明細書で開示される方法を行うためのコンポーネント間の及び1つ以上のプロセッサへの接続を可能にする、装置及びシステム内の機能的配置に構成することができる。
【0149】
或る場合には、本明細書で説明される装置及びシステムは、本明細書で説明される評価の結果を示すためのコンポーネント又はシステムをさらに含み、該コンポーネント又はシステムは、評価の結果を任意の便利な適切な様態で報告するように構成されてよい。このようなコンポーネント又はシステムは、装置及び又はシステムの特定の構成に応じて多様となり、例えば、アラーム、インジケータライト、ディスプレイ(例えば、コンピュータモニタ、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)など)、例えば、有形メディア(例えば、紙又はテープを含む)上に印刷するように構成されたプリンタなどを含み得るがこれらに限定されない。或る場合には、コンポーネント又はシステムは、1つ以上の試薬浴の調節が必要であるかどうかをユーザに例えば、音、点灯で示す、又は他の方法で表示する。或る場合には、コンポーネント又はシステムは、当該染色剤が所定の品質閾値を超えるか否かをユーザに例えば、音、点灯で示す、又は他の方法で表示する。
【0150】
或る場合には、装置又はシステムが評価の結果をユーザに報告するための機構を含むか否かに関係なく、装置又はシステムは、例えば、評価に基づいて調節を行うべく装置又はシステムをトリガするために装置又はシステムの他のコンポーネントへの接続を含んでよく、又は他の方法で評価の結果を伝搬することができる。
【0151】
或る場合には、装置又はシステムは、本明細書で説明される1つ以上の評価の結果に基づいて1つ以上の試薬浴から液体試薬を追加又は除去するように構成された1つ以上のコンポーネントを含み得る。或る場合には、このようなコンポーネントは、弁を含むがそれに限定されない。このような弁のうちの1つ以上が、当該装置及びシステムにおいて用いられてよく、本明細書で説明される評価のうちの1つ以上の結果に基づいて1つ以上の弁の制御を可能にするプロセッサとリンクしてよい又は他の方法で通信してよい。例えば、アングル弁、空気作動弁、ボール弁、バタフライ弁、逆止め弁、シリンダ弁、ダイアフラム弁、仕切弁、玉形弁、プラグ弁、回転弁、ねじ締め逆止め弁などを含むがこれらに限定されず、任意の便利な適切な弁が、当該システム及び装置での使用を見出し得る。或る場合には、当該装置及びシステムの弁は、本明細書で説明される弁のうちの1つ以上の電動バージョンを含む、電動弁であってよい。
【0152】
容易に理解されるように、或る場合には、ポンプは、例えば液体が試薬浴との間で輸送される場合に、弁に代えられてよい又は弁と組み合わせて用いられてよい。有用なポンプは、例えば、容積式ポンプ(例えば、ギヤポンプ、ねじポンプ、一軸偏心ねじポンプ、ルート型ポンプ、蠕動ポンプ、プランジャポンプ、ダブルダイアフラムポンプ、ロープポンプなど)、インパルスポンプ、速度ポンプ、重力ポンプなどを含むがこれらに限定されない。電気制御式ポンプは、或る場合には、本明細書で説明される電気制御弁に代えられてよい。
【0153】
或る場合には、当該装置及びシステムの電気制御弁は、本明細書で説明される評価の結果が試薬浴に試薬を追加するべく電気制御弁をトリガするように、1つ以上のプロセッサと通信してよい。したがって、本開示のシステム及び装置は、作動されたときに試薬浴の液面レベルを増加させる、プロセッサと通信する1つ以上の充填弁を含み得る。充填弁は、弁を作動させる又は非作動にすることにより液面レベルを所望の又は所定の液面レベルに増加させることを含めて、例えば徐々に又は継続的に液面レベルを増加させ得る。
【0154】
充填弁は、試薬浴に追加されるべき試薬が入っている1つ以上のリザーバに取り付けられてよい。充填弁が取り付けられ得るリザーバは、例えば、本明細書で説明されるスライド作製コンポーネントのうちの1つ以上を含むがこれらに限定されず、任意のスライド作製試薬の本質的に任意の1つ又は複数の成分を含む。本明細書で説明されるシステム及び装置に有用なリザーバは、例えば、染色剤リザーバ、染色剤成分リザーバ、固定試薬リザーバ、洗浄リザーバ、バッファリザーバ、水リザーバなどを含むがこれらに限定されない。或る場合には、リザーバからの充填弁を通る試薬の流れは、少なくともある程度は、重力によりもたらされてよい。或る場合には、リザーバからの充填弁を通る試薬の流れは、少なくともある程度は、例えば充填弁に作動可能に接続されたポンプにより生じる圧力を含む、非重力により生じた圧力によりもたらされてよい。
【0155】
或る場合には、当該装置及びシステムの電気制御弁は、本明細書で説明される評価の結果が試薬浴の中の試薬の体積を減少させるべく電気制御弁をトリガするように、1つ以上のプロセッサと通信してよい。したがって、本開示のシステム及び装置は、作動されたときに試薬浴の液面レベルを減少させる、プロセッサと通信する1つ以上のドレン弁を含み得る。ドレン弁は、弁を作動させる又は非作動にすることにより液面レベルを所望の又は所定の液面レベルに減少させることを含めて、例えば徐々に又は継続的に液面レベルを減少させ得る。
【0156】
ドレン弁は、或る場合には、廃液コンテナに取り付けられてよい。或る場合には、試薬浴から、ドレン弁を通って、例えば、廃液コンテナへの試薬の流れは、少なくともある程度は、重力によりもたらされてよい。或る場合には、試薬浴から、ドレン弁を通って、例えば、廃液コンテナへの試薬の流れは、少なくともある程度は、例えばドレン弁に作動可能に接続されたポンプにより生じる圧力を含む、非重力により生じた圧力によりもたらされてよい。
【0157】
本開示の装置及びシステムは、試薬浴の体積及び/又は液面レベルを評価するための1つ以上の自動体積インジケータを含み得る。自動体積インジケータは、一般に、試薬浴に接続されるレベル管を含むことになる。レベル管は、試薬浴の底部、試薬浴の側部などに接続されてよい。レベル管は、レベル管と例えば管又はリザーバなどの浴との間の介在コネクタで接続されてよく又はされなくてよい。或る場合には、レベル管は、試薬浴が充填又は排出されるときに試薬浴の液面レベルが上昇又は下降し、フロートがエミッタ・検出器ペアの経路内で移動するように配置された、フロートと、エミッタ・検出器ペアを含み得る。このようなフロートは、光エミッタ・検出器ペアと組み合わせて用いられるときに、ほとんど又は完全に不透明ではない場合に、一般に少なくとも半透明となる。前述のように、或る場合には、自動体積インジケータに用いられる光エミッタ・検出器ペアの個々のコンポーネントは、1つ以上の開口を含み得る。
【0158】
本開示の自動体積インジケータは、一般に、当該方法で説明される体積評価の結果を伝送するための、エミッタ・検出器ペアの検出器と間の、有線又は無線の、1つ以上の接続を含むことになる。自動体積インジケータは、液体の体積又はレベルの調節が必要とされることを示す結果を伝送するときに、必要な調節に基づいて1つ以上の弁の開及び/又は閉をトリガしてよい。
【0159】
本開示の装置及びシステムは、例えば、スライドキャリア、試薬浴、又はこれらの組合せの中に存在する場合のスライドの自動カウントを行うための1つ以上の自動スライドカウンタを含み得る。自動スライドカウンタは、一般に、スライド作製プロセスを通じてスライドが横切る間の或るポイントでエミッタ・検出器ペアにより画定される光路をスライドが通るように配置されるエミッタ・検出器ペアを含むことになる。したがって、エミッタ・検出器ペアは、例えば、1つ以上の試薬浴の前の位置、試薬浴に関連する位置、1つ以上の試薬浴の後の位置などを含むがこれらに限定されず、自動スライド作製機器内のスライドの経路に沿った種々の地点に配置されてよい。
【0160】
本開示の自動スライドカウンタは、一般に、当該方法で説明されるスライド数評価の結果を伝送するための、エミッタ・検出器ペアの検出器との間の、有線又は無線の、1つ以上の接続を含むことになる。自動スライドカウンタは、識別したスライドの数が液体体積又はレベルの調節を必要とすることを示す結果を伝送するときに、必要な調節に基づいて1つ以上の弁の開及び/又は閉をトリガしてよい。
【0161】
本開示の装置及びシステムは、自動スライド作製装置における1つ以上の試薬浴の体積及び/又は液面レベルを制御するための1つ以上の体積制御式のスライド染色システムを含み得る。本開示の体積制御式のスライド染色システムは、一般に、自動スライド染色手順で用いられる試薬浴の体積及び/又は液面レベルの一体化された評価を行うための、1つ以上の自動スライドカウンタと一体化された1つ以上の自動体積インジケータを含むことになる。体積制御式のスライド染色システムの個々のコンポーネントは、プロセッサを共有してよく、又はシステムの1つ以上のコンポーネントのための1つ以上の指定されたプロセッサを含み得る。単一のプロセッサ又は複数のプロセッサのいずれが採用されるかに関係なく、当該システムは、システムのコンポーネントの個々の評価を、例えば本明細書で説明される制御又は1つ以上の弁を通じて、例えば必要とされる場合に試薬浴の調節をトリガする、コマンドの単純なセット又は単一のコマンドへ組み込んでよい。
【0162】
或る場合には、体積制御式のスライド染色システムは、スライド染色システムの1つ以上の試薬浴の体積及び/又は液面レベルを絶えず監視してよい。或る場合には、体積制御式のスライド染色システムは、スライド染色システムの1つ以上の試薬浴の体積及び/又は液面レベルを周期的に評価してよい。このような周期的な評価は、スライド作製の実行又はバッチごとに1回以上、スライドが特定の試薬浴(例えば、染色浴)へ挿入される前に1回以上などを含む規則的な時間間隔で、又はイベントに関連した間隔で装置、又はシステムにより行われてよい。
【0163】
本開示の装置及びシステムは、自動スライド作製システムで用いられる試薬の品質及び/又は性能を評価するための1つ以上の試薬評価システムを含み得る。或る場合には、このような装置及びシステムは、自動組織学的スライド作製システムで用いられる染色剤の品質及び/又は性能を評価してよい。当該試薬評価システムは、一般に、例えば、前述のデジタル顕微鏡法装置のうちの1つ以上を含むスライドイメージング装置を含むことになる。本開示の装置及びシステムは、検体スライドと、染色したブランクスライド又は染色していないスライドを含むブランクスライドとの両方をイメージングするのに使用される単一のイメージング装置を含み得る。或る場合には、装置又はシステムは、例えば、このような装置又はシステムが2つ以上の指定のイメージング装置を含む場合を含めて、指定の検体イメージング装置、指定のブランクスライドイメージング装置を含むが、これらに限定されず、指定のイメージング装置を含み得る。
【0164】
自動試薬評価システムのイメージング装置(単数または複数)は、一般に、例えば、前述の試薬評価方法で説明した機能又はステップのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されず、試薬の評価を行う1つ以上の機能を行うためのプロセッサと通信することになる。試薬評価システムはまた、或る場合には、共有される又は指定のプロセッサに付属のコンピュータメモリを含み得る。付属のコンピュータメモリは、例えば、1つ以上の参照パラメータ値及び/又は参照シグネチャを含むがこれらに限定されず、種々のデータを記憶してよい。記憶された参照値及び/又はシグネチャは、例えば上記の方法で説明したように試薬評価を行うべく、取得したパラメータ値及び/又は取得したシグネチャの比較に用いられてよい。
【0165】
自動試薬評価システムのプロセッサは、例えば、プロセッサによって実行され得る、それに記憶している命令に起因して、種々の機能を行うこと及び/又は種々の機能を行うべくシステムの他のコンポーネントをトリガすることが可能であり得る。或る場合には、プロセッサは、イメージング装置から画像を受信するための命令を含むことができ、含み得る。或る場合には、プロセッサは、例えば前述の画像処理ステップのうちの1つ以上を含む例えば1つ以上の画像処理ステップを行うことを通じて画像を処理するための命令を含むことができ、含み得る。或る場合には、プロセッサは、画像データからパラメータ値を抽出するための命令を含むことができ、含み得る。或る場合には、プロセッサは、例えば、2つ以上のパラメータ値から導出される場合の染色剤シグネチャを生成するための命令を含むことができ、含み得る。或る場合には、プロセッサは、参照値とシグネチャ、測定値とシグネチャなどを含むが、これらに限定されず、種々のデータをメモリに記憶する及びメモリから検索するための命令を含むことができ、含み得る。或る場合には、プロセッサは、例えば、参照パラメータ値と測定したパラメータ値との比較、参照染色剤シグネチャと測定した染色剤シグネチャとの比較などを含むが、これらに限定されず、データ間の比較を行うための命令を含むことができ、含み得る。
【0166】
或る場合には、本明細書で説明されるシステムのコンポーネントは、有線データ接続により接続されてよい。例えば、USBケーブル、同軸ケーブル、シリアルケーブル、C2G又はCat2ケーブル、Cat5/Cat5e/Cat6/Cat6aケーブル、トークンリングケーブル(Cat4)、VGAケーブル、HDMI(登録商標)ケーブル、RCAケーブル、光ファイバケーブルなどの市販のケーブルを含むが、これらに限定されず、あらゆる適切な及び適当な有線データ接続が、本明細書で説明される場合の説明したシステムのコンポーネントを接続する際の使用を見出し得る。或る場合には、例えば、データの安全保護があまり心配ないならば、例えば、無線周波数接続(例えば、PAN/LAN/MAN/WAN無線ネットワーキング、UHF無線接続など)、赤外線データ伝送接続、無線光学データ接続などを含むが、これらに限定されず、無線データ接続が採用されてよい。
【0167】
本開示の装置及びシステムは、情報をコンピュータにより後日にアクセス可能及び検索可能であるように記憶することができる「メモリ」をさらに含み得る。記憶された情報にアクセスするのに用いられる手段に基づいて、任意の便利なデータストレージ構造が選択されてよい。或る態様では、情報は、「永続メモリ」(すなわち、コンピュータ又はプロセッサへの電気供給の途絶により消去されないメモリ)又は「非永続メモリ」に記憶されてよい。コンピュータハードドライブ、CD-ROM、フロッピーディスク、ポータブルフラッシュ・ドライブ、及びDVDはすべて、永続メモリの例である。ランダムアクセスメモリ(RAM)が、非永続メモリの例である。永続メモリにおけるファイルは、編集可能且つ再書き込み可能であり得る。
【0168】
実質的にあらゆる回路を本明細書で開示される方法を行うための装置及びシステム内の機能的配置に構成することができる。例えば、専用に構成されたコンピュータを含む、このような回路のハードウェアアーキテクチャは当業者に良く知られており、1つ以上のプロセッサ(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、内部又は外部データ記憶媒体(例えば、ハードディスクドライブ)を含むハードウェアコンポーネントを備えることができる。このような回路はまた、グラフィカル情報を処理し、表示手段へ出力するための1つ以上のグラフィックボードを備えることができる。上記のコンポーネントは、例えば、特定用途コンピュータの内部の、回路内のバスを介して適切に相互接続することができる。回路は、モニタ、キーボード、マウス、ネットワークなどの汎用外部コンポーネントと通信するための適切なインターフェースをさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、回路は、本方法及びプログラムに関する処理能力を増加させるべく並列処理が可能なものとすることができ、又は並列又は分散計算するために構成されたネットワークの一部とすることができる。いくつかの実施形態では、記憶媒体から読み出されるプログラムコードは、回路内に挿入される増設ボードに設けられたメモリ又は回路に接続される増設ユニットに書き込むことができ、増設ボード又は増設ユニットに設けられたCPUなどが、説明した機能を達成するべくプログラミングの命令に従って動作の一部又はすべてを実際に行うことができる。
【0169】
本開示の装置及びシステムのコンポーネントに加えて、例えば、前述のように、本開示のシステムは、データ出力装置、例えば、モニタ及び/又はスピーカ、データ入力装置、例えば、インターフェースポート、キーボードなど作動可能コンポーネント、電源などのいくつかのさらなるコンポーネントを含み得る。
【0170】
コンピュータ可読媒体
本開示は、本明細書で説明される方法に関する命令を記憶する一時的でないコンピュータ可読媒体を含むコンピュータ可読媒体を含む。本開示の態様は、コンピューティング装置によって実行されるときに、本明細書で説明される方法の1つ以上のステップをコンピューティング装置に行わせる命令を記憶するコンピュータ可読媒体を含む。本開示の態様はまた、コンピュータ可読媒体上に記憶され得る。本明細書で説明される方法のうちの1つ以上を行う際にコンピューティング装置によりアクセスされ得る参照値及び/又は参照シグネチャを含む。
【0171】
或る実施形態では、本明細書で説明される方法に係る命令は、「プログラミング」の形態でコンピュータ可読媒体上にコード化することができ、本明細書で用いられる場合の「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行及び/又は処理するための命令及び/又はデータをコンピュータに提供することに関与する任意のストレージ又は伝送媒体を指す。記憶媒体の例は、このような装置がコンピュータの内部又は外部にあるか否かに関係なく、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、ソリッドステートディスク、及びネットワークアタッチトストレージ(NAS)を含む。情報を含んでいるファイルは、コンピュータ可読媒体上に「記憶」することができ、「記憶すること」は、情報をコンピュータにより後日にアクセス可能及び検索可能であるように記録することを意味する。
【0172】
本明細書で説明されるコンピュータで実施される方法は、あらゆる数のコンピュータプログラミング言語のうちの1つ以上で書くことができるプログラミングを用いて実行することができる。このような言語は、例えば、Java(登録商標)(カリフォルニア州サンタクララ所在のSun Microsystems, Inc.)、Visual Basic(ワシントン州レッドモンド所在のMicrosoft Corp.)、及びC++(ニュージャージー州ベッドミンスター所在のAT&T Corp.)、並びに任意の多くの他の言語を含む。
【0173】
以下の実施例は、限定するためではなく例示として与えられる。
【実施例
【0174】
実施例1:染色したブランクスライドからのパラメータのキャラクタライゼーション
ブランクスライド、すなわち、検体を有していないスライドを、自動スライド作製装置での検体の染色のために用いられる通常の組織学的染色手順に従って組織学的染色のために処理した。次いで、染色したブランクスライドを、デジタル顕微鏡を用いて分析した。各スライドの顕微鏡表面上の種々の経路に沿って複数の画像をとった。画像は、スライド染色剤の品質の分析に用いられる種々のパラメータを生成するべくソフトウェアを用いて処理した。
【0175】
3つの異なる染色したブランクスライド(図11図12、及び図13)と1つの染色していないスライド(図14)から得られる例示的なヒストグラムが提供される。ヒストグラムで描かれているように、例えば、平均強度値(染色強度の尺度に対応する)、標準偏差(染色均一性の尺度に対応する;例えば、より一様に染色したスライドは、一般に、より低い標準偏差値を有することになる)、染色していないスライドに関して測定されるベースライン透過に対して求められ得る光透過(「T」)(比透明度の尺度に対応する(透過パーセントとして報告される);例えば、より暗く染色したスライドは、一般に、光透過に関するより低い値を有することになる)を含む種々の統計的尺度が得られ得る。これらのパラメータは、取得したカラー(例えば、RBG)画像におけるすべてのチャンネルに関して総合的に評価されてよく、又は1つ以上の特定のカラーチャンネル(R、B、G、又はこれらの組み合わせ)に関して個々に評価されてよい。本実施例では、染色したブランクスライドから得られたパラメータを、染色していないブランクスライドから得られた対応するパラメータの参照値と比較した。
【0176】
パラメータの比較及び分析の結果に基づいて、自動スライド染色機器を制御するソフトウェアは、例えば、浴(単数または複数)を空にすること、浴(単数または複数)を清掃すること、1つ以上の試薬を置換すること、1つ以上の試薬を補充することなどを含む、1つ以上の試薬浴の1つ以上の調節の必要性を示す又はトリガする。
【0177】
検体の染色の測定した強度に対するバックグラウンド染色の影響の例として、スライドの底部をメタノールで清掃する前に及び清掃した後に、検体の同じ染色された細胞をイメージングし、分析した(図15参照;左側は、オリジナルの得られた画像及びヒストグラムであり、右側は、スライドの底部をメタノールで清掃した後に得られた画像及びヒストグラムである)。組織学的染色手順では、検体を支えるスライドガラスは、検体を有する表面上と検体を有していない表面(すなわち、「背面」又は「底面」)上との両方で染色される。これらの表面の両方は、分析される細胞の測定される染色強度に寄与する。細胞核又は細胞質のいずれが測定されるかに関係なく起こる、この染色へのバックグラウンド寄与の影響が、図15において実証される。オリジナルのスライドと背面がクリーンにされたスライドとの差異は、代表的な細胞の測定される染色強度への背面バックグラウンドの寄与を表す。この実施例で実証されるように、染色の連続するラウンドを通じて、試薬浴又はバッファは、過剰の残留染色剤で汚染されることになり得る。したがって、バックグラウンド染色の或る時点で、スライドの背面上であっても検体の染色の強度に影響することがある。
【0178】
実施例2:染色したブランクスライドを用いるストリークの識別
ブランクスライド、すなわち、検体を有していないスライドを、自動スライド作製装置での通常の組織学的染色手順に従って組織学的染色のために処理した。染色したブランクスライドの長軸及び短軸に沿って画像を収集した。長軸(「長」)と短軸(「短」)との両方が識別されている染色したブランクスライドの例が図16に提供される。長軸及び短軸のそれぞれに沿って複数の画像をとり、対応するモンタージュへ一緒にスティッチングした(例えば図17及び図18参照)。ヒストグラムは、長軸及び短軸のそれぞれに関するスティッチングしたモンタージュ画像から生成され、ストリークの存在を識別するのに用いられる。
【0179】
バックグラウンド染色の均一性に関する情報を提供し、ストリーク及び汚れなどの局在化した欠陥の存在を識別するための強度プロットの使用をさらに実証するために、染色したブランクスライドを横並びに配列し、スライドの短軸に沿って強度プロフィールをとった(図19)。強度プロフィール(1900)をとった経路(1901)が図19に示されている。スライド上に存在する局在化した欠陥(1902)は、検出可能な変動(例えば、ピーク)(1903)として強度プロフィールに現れる。したがって、この実施例は、染色したブランクスライドの画像を取得し、スライドの軸に沿った画像パラメータ(例えば、グレー値又は強度)の変動に関して画像を処理及び分析することことにより、染色の際の局在化した欠陥を自動的に識別することができ、バックグラウンド染色の均一性が評価され得ることを実証する。
【0180】
上記の発明は理解を明確にする目的での例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、付属の請求項の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変化及び修正が本発明に加えられてよいことが、この発明の教示に照らせば当業者には明らかである。
【0181】
したがって、上記は本発明の原理を単に例示するだけである。本明細書で明示的に説明又は図示されないが、本発明の原理を具体化する、本発明の精神及び範囲内に含まれる種々の構成を当業者は考案できることが理解されるであろう。さらに、本明細書に列挙されるすべての例及び条件付きの文言は、当該技術分野を進展させるために本発明者らによって提供される本発明の原理及び概念を読者が理解するのを助けることを主として意図され、このような具体的に列挙される例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体例を列挙する本明細書でのすべての文は、その構造の均等物と機能の均等物との両方を包含することを意図される。加えて、このような均等物は、現在公知の均等物と将来開発される均等物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を果たす開発される任意の要素との両方を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書で図示及び説明される例示的な実施形態に限定されることを意図されない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の請求項によって具体化される。
図1
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図3
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