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特許7012736ギ酸生成能に優れた菌株を有効成分として含む肥満または肥満によって惹起された代謝症候群の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】ギ酸生成能に優れた菌株を有効成分として含む肥満または肥満によって惹起された代謝症候群の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20220204BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220204BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220204BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K35/744
A61K35/74 A
A23L33/135
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P9/10
A61P9/00
A61P1/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019547566
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2017013297
(87)【国際公開番号】W WO2018093238
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】10-2016-0154978
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 13135BP
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 13136BP
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 13137BP
(73)【特許権者】
【識別番号】518405821
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティチュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA FOOD RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】245, Nongsaengmyeong-ro, Iseo-myeon, Wanju-gun, Jeollabuk-do, 55365, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー ミュン キ
(72)【発明者】
【氏名】リム サン ドン
(72)【発明者】
【氏名】イ サン フン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨン サン
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヨン ド
(72)【発明者】
【氏名】バエ ジン ジュ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/045492(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/045493(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1611829(KR,B1)
【文献】国際公開第2010/098131(WO,A1)
【文献】特開昭63-280027(JP,A)
【文献】国際公開第2005/077390(WO,A1)
【文献】Molecules (Aug 2016) vol.21, issue 8, 1026
【文献】先天代謝異常症候群(第2版)下-病因・病態研究,診断・治療の進歩-,第2版,2012年12月20日,p.223-229
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/744
A23L 33/135
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、またはその破砕物を有効成分として含む、肥満または肥満によって惹起された代謝症候群の予防または治療用薬剤学的組成物であって、前記菌株は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)KR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)NKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカー
リス(Enterococcus faecalis)TN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択
された1種以上であることを特徴とする、薬剤学的組成物。
【請求項2】
前記代謝症候群は、肥満、糖尿、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肝疾患、脳卒中、心筋梗塞、虚血性疾患及び心血管疾患からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項3】
前記菌株は、組成物総重量に対して10~1012cfu/gの含量で含まれることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の薬剤学的組成物。
【請求項4】
ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、またはその破砕物を有効成分として含む、肥満または肥満によって惹起された代謝症候群の予防または改善用食品組成物であって、前記菌株は、エンテロコッカス・フェシウムKR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ペントサセウスNKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリスTN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、食品組成物。
【請求項5】
前記代謝症候群は肥満、糖尿、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肝疾患、脳卒中、心筋梗塞、虚血性疾患及び心血管疾患からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記菌株は組成物総重量に対して10~1012cfu/gの含量で含まれることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記菌株は体重脂肪を減少させ、血中コレステロール及び中性脂肪数値を減少させることを特徴とする、請求項4から請求項6のうちのいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項8】
ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、またはその破砕物を有効成分として含む、肥満または肥満によって惹起された代謝症候群の予防または改善用健康機能食品であって、前記菌株は、エンテロコッカス・フェシウムKR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ペントサセウスNKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリスTN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、ギ酸生成能に優れた菌株を有効成分として含む肥満または肥満によって惹起された代謝症候群の予防または治療用組成物;上記有効成分を含む食品組成物及び健康機能食品に関するものである。
【0002】
[背景技術]
最近、経済発展に伴う生活水準の向上により衛生環境が改善され、頻繁なインスタント食品の摂取や肉中心の食生活変化などは過多な熱量摂取を誘発している。このような現代人の食生活変化と共に全然足りない運動などによって消費熱量が少ないことから肥満人口の増加傾向が続いている。肥満は単純に外観上の問題だけではなく肥満の持続に伴って様々な疾患、つまり、高血圧、糖尿、高脂血症、冠状動脈疾患などのような成人病を含めて乳房癌、子宮癌及び大膓癌などを引き起こすことが報告され、致命的な疾病の一つとして取り扱われている[J. Biol. Chem., 273, 32487~32490(1998);Nature, 404, 652~660 (2000)]。
【0003】
肥満は1980年以後全世界的に約75%が増加し、アメリカでは人口の33%及び26%がそれぞれ過体重及び肥満であると報告されている(Ahn IS, Park KY, Do MS. 2007. Weight control mechanisms and antiobesity functional agents. J Korean Soc Food Sci Nutr 36:503-513.)。韓国でも肥満人口が増え続けており、2007年国民健康栄養調査の結果、肥満人口は1998年には26.3%であったものが、2005年には31.7%と急増している。
【0004】
このような肥満はエネルギーの摂取と消費との不均衡によって惹起され、余分なエネルギーは脂肪細胞の形態に転換されて体内に蓄積される。蓄積された脂肪細胞から分泌される遊離脂肪酸及びサイトカインなどはインスリン抵抗性を誘発し、炎症反応を増加させて代謝症侯群、糖尿病、心臓血管疾患及び癌などの慢性疾患発病の直接的な原因となっている。このような肥満を治療するために運動、食餌療法による食生活習慣の改善、薬物療法、手術治療法などが紹介されており、これらのうち肥満を抑制する抗肥満薬品の開発はアメリカで100種以上の治療薬が販売または開発中であり、市場規模はますます拡大する見込みである。
【0005】
現在肥満を治療する治療剤は、中枢神経系に作用して食欲に影響を及ぼす薬剤と胃腸管に作用して吸収を阻害する薬物とに大別される。中枢神経系に作用する薬物には、それぞれのメカニズムによって、セロトニン(5HT)神経系を阻害するフェンフルラミン、デクスフェンフルラミンなどの薬物、ノルアドレナリン神経系を介したエフェドリン及びカフェインなどの薬物、及び最近はセロトニン及びノルアドレナリン神経系に同時作用して肥満を阻害するシブトラミン(Sibutramine)などの薬物等が市販されている。それら以外にも、胃腸管に作用して肥満を阻害する薬物には、代表的に、膵膓で生成されるリパーゼを阻害して脂肪の吸収を減らすことで最近肥満治療剤として許可されたオルリスタット(Orlistat)などがある。
【0006】
しかし、既存に使われてきた薬物の中でフェンフルラミンなどは原発性肺高血圧や心臓弁膜病変のような副作用を起こして最近使用が禁止されており、シブトラミンは血圧を高める副作用があり、オルリスタットは消化器障害、脂肪便、便失禁、脂溶性ビタミン吸収妨害などの副作用が報告されている。また、他の化学合成薬物等も血圧減少や乳酸血症などの問題点が発生するため、心不全、腎疾患などの患者には使うことができないという問題点がある。
【0007】
従って、副作用が小さくてより優れた肥満治療及び予防法を捜すために、最近は天然由来の化合物など体脂肪の蓄積を抑制するように作用する天然素材の肥満治療剤または抗肥満健康機能食品に対する関心が増加している実情がある。
【0008】
一方、代謝症侯群(Metabolic Syndrome)は、高中性脂肪血症、高血圧、糖代謝異常、血液凝固異常及び肥満のような危険因子が一緒に現れる症侯群を指称する。症状それ自体は致命的ではないが、糖尿病や虚血性心血管系疾患のような深刻な疾病に発展する素因があるため、現代人を最も大きく脅かす疾患となっている。
【0009】
代謝症候群の原因及び治療と関わって知られている因子を見れば、運動、食事習慣、体重、血糖、中性脂肪、コレステロール、インシュリン抵抗性、アディポネクチン(adiponectin)、レプチン(leptin)、AMPK活性、エストロゲンのような性ホルモン、遺伝的因子、malonyl-CoA生体内濃度などが直接的・間接的に関与する。
【0010】
このような代謝性症侯群の症状改善のための最善の方法は、運動、食事制限及び体重減量であると知られている。このような方法が代謝性症侯群に対して効果を発揮する共通分母は、エネルギー代謝を促進させて体内の余剰エネルギーを最大限消費し蓄積を抑制することである。加工食品及びパストフードのような高熱量のエネルギー摂取に比べて運動不足による余剰エネルギーが、脂肪で蓄積されながら代謝性疾患を含めた多様な疾病の原因となる。このような余剰エネルギーを効果的に除去する方法が代謝性疾患治療の方法であろうと判断される。余剰エネルギーを効果的に除去するためには、代謝の活性を高めるのが必須であると判断され、そのためには脂肪合成抑制、糖新生抑制、糖消費促進、脂肪酸化促進、エネルギー代謝の核心となるミトコンドリアの生成促進及び活性化に関与する因子等を活性化させるのが必須であろうと判断される。
【0011】
そこで、本発明者等は、生体に副作用がなく抗肥満活性に優れた物質を捜そうと模索していたところ、50代の韓国人を対象として正常群と肥満群との糞便で差異を示す多様な有機酸を分析し、その結果、肥満群に比べて正常群でギ酸が他の有機酸対比で顕著に高いことを確認した。また、本発明者等は、有機酸を生産する多様な菌株を対象として優れたギ酸生成能を示す菌株を選別し、最終選別された3種の菌株を肥満動物モデルに経口投与した実験群において体重減少及び臓器における脂肪蓄積抑制の効果を奏するだけでなく、血中中性脂肪及びコレステロールの数値を効果的に低めることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
従って、本発明の目的は、体内脂肪蓄積を抑制し、血中脂肪及びコレステロール数値を効果的に低めることができる代謝症候群の予防または治療用組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、体内脂肪蓄積を抑制し、血中脂肪及びコレステロール数値を効果的に低めることができる代謝症候群の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、体内脂肪蓄積を抑制し、血中脂肪及びコレステロール数値を効果的に低めることができる代謝症候群の予防または改善用健康機能食品を提供することにある。
【0014】
[課題を解決するための手段]
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む代謝症候群の予防または治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0015】
本発明の一実施例において、上記菌株は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)KR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)NKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)TN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0016】
本発明の一実施例において上記代謝症候群は、肥満、糖尿、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肝疾患、脳卒中、心筋梗塞、虚血性疾患及び心血管疾患からなる群より選択されることができる。
【0017】
本発明の一実施例において上記菌株は、組成物総重量に対して10~1012cfu/gの含量で含まれることができる。
また、本発明は、ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む代謝症候群の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0018】
本発明の一実施例において、上記菌株は、エンテロコッカス・フェシウムKR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウスNKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリスTN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0019】
本発明の一実施例において、上記代謝症候群は肥満、糖尿、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肝疾患、脳卒中、心筋梗塞、虚血性疾患及び心血管疾患からなる群より選択されることができる。
【0020】
本発明の一実施例において、上記菌株は組成物総重量に対して10~1012cfu/gの含量で含まれることができる。
本発明の一実施例において、上記菌株は体重脂肪を減少させ、血中コレステロール及び中性脂肪数値を減少させることができる。
【0021】
また、本発明は、ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む代謝症候群の予防または改善用健康機能食品を提供する。
[発明の効果]
本発明によるギ酸生成能に優れた菌株は、体重減少及び臓器における脂肪蓄積抑制の効果を奏するだけでなく、血中中性脂肪及びコレステロールの数値を効果的に低める活性を有するため、これを有効成分として含む組成物は肥満または肥満によって惹起される代謝症候群を予防/改善又は治療が可能な組成物として有用である。従って、本発明によるギ酸生成能に優れた菌株は、医薬品または健康食品素材として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】高脂肪食餌で肥満が誘導された実験動物の、多様な菌株給与による飼育期間別体重変化を測定してグラフで示すものである(A:一般食餌群、B:高脂肪食餌群、C:高脂肪食餌+エンテロコッカス・フェシウムKR127給与群、D:高脂肪食餌+ペディオコッカス・ ペントサセウスNKR654給与群、E:高脂肪食餌+エンテロコッカス・フェカーリスTN3給与群)。
図2】高脂肪食餌で肥満が誘導された実験動物の、多様な菌株給与による副睾丸脂肪組職細胞の大きさを測定した写真である(A:一般食餌群、B:高脂肪食餌群、C:高脂肪食餌+エンテロコッカス・フェシウムKR127給与群、D:高脂肪食餌+ペディオコッカス・ ペントサセウスNKR654給与群、E:高脂肪食餌+エンテロコッカス・フェカーリスTN3給与群)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明で使われた用語を説明する。
本発明で使われる用語“培養物”とは、微生物を公知の液体培地または固体培地で培養させて収得した産物を意味し、微生物が含まれる概念である。
【0024】
本発明で“薬剤学的に許容可能な”とは、生物体を刺激しないながら投与活性物質の生物学的活性及び特性を阻害しないことを意味する。
本発明で使われる用語“予防”は、本発明の組成物の投与で特定疾患(例えば、肥満または代謝症侯群)の症状を抑制させるか進行を遅らせる全ての行為を意味する。
【0025】
本発明で使われる用語“治療”は、本発明の組成物の投与で特定疾患(例えば、肥満または代謝症侯群)の症状を好転させるか有利に変更させる全ての行為を意味する。
本発明で使われる用語“改善”は、治療状態に係るパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為を意味する。
【0026】
本発明で使われる用語“投与”は、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。この時、個体は本発明の組成物の投与により特定疾患の症状が好転可能な疾患を有する人間、猿、犬、山羊、豚または鼠など全ての動物を意味する。
【0027】
本発明で用語“薬学的に有効な量”は、医学的治療に適用可能な合理的な利益または危険比率(reasonable benefit/risk ratio)で疾患を治療するに十分な量を意味し、これは個体の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使われる薬物を含む要素、及びその他医学分野においてよく知られた要素によって決められる。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物又はその抽出物を有効成分として含む代謝症候群の予防または治療用薬剤学的組成物を提供することにその特徴がある。
【0029】
本明細書で言及する“ギ酸(formic acid)”は、蟻酸、hydrogen carboxylic acidとも言う。化学式HCOOH、分子量は46.0でカルボン酸類の中で最も少なく、沸点100.5℃、融点8.4℃、比重1.220である。このようなギ酸は天然でも存在し、合成でも得られる流動性の無色液体で、空気に晒される場合には若干発煙され刺激臭及び腐食性がある。染色・タンニング・ラテックスの凝固・防腐剤として医薬用または有機合成に使われる。
【0030】
本発明による上記ギ酸(formic acid)は、塩、望ましくは薬剤学的に許容可能な塩(formate)の形態であってもよい。
本発明の下記実施例では肥満誘導動物モデルに対するギ酸生成能に優れた菌株の経口投与による体重減少効果、臓器組織における脂肪蓄積抑制効果、血中中性脂肪及びコレステロールの濃度を低める効果を確認するとともに、ギ酸生成能に優れた菌株を経口投与した群で副睾丸脂肪細胞の大きさが小さいことを最初に確認した。
【0031】
従って、本発明はギ酸生成能を有する菌株を有効成分として含む肥満または代謝症候群の予防または治療用組成物を提供する。
本発明で上記“代謝症侯群”は、肥満によって惹起される代謝性疾患やその他原因によって惹起される代謝性疾患であり、代謝症候群の例示としては肥満、糖尿、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肝疾患、脳卒中、心筋梗塞、虚血性疾患及び心血管疾患からなる群より選択されることができるが、これらに限るものではない。
【0032】
本発明で上記“肥満”は、単純肥満、症侯性肥満、小児肥満、成人肥満、細胞増殖型肥満、細胞肥大型肥満、上体肥満、下体肥満、内臓脂肪型肥満及び皮下脂肪型肥満を含むが、必ずしもこれらに限るものではない。
【0033】
本発明の一実施例において、本発明のギ酸生成能を有する菌株は、エンテロコッカス・フェシウムKR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウスNKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリスTN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上の菌株であってもよい。
【0034】
本発明の薬剤学的組成物は、上記有効成分の以外に薬剤学的に適合で生理学的に許容される補助剤を使って製造されてもよく、このような補助剤には賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などを使うことができる。
【0035】
上記薬剤学的組成物は投与されるために、上記した有効成分以外に追加で薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含めて薬剤学的組成物に望ましく製剤化することができる。
上記薬剤学的組成物の剤形は、顆粒剤、散剤、錠剤、被覆錠、カプセル剤、坐剤、液剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤などであってもよい。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分はエタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合されることができる。また、望むか必要な場合、適した結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物で含まれてもよい。適した結合剤は制限されるものではないが、澱粉、ゼラチン、グルコースまたはベーターラクトースのような天然糖、とうもろこし甘味剤、アカシア、トラガカントまたはオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は制限されるのではないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液に製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体には、滅菌及び生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうち一つ以上の成分を混合して使うことができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加してもよい。また希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化してもよい。更に該当分野の適切な方法としてRemington's Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PAに開示されている方法を用いて、各疾患又は成分に応じて望ましく製剤化してもよい。
【0036】
本発明の一具体例において、本発明のギ酸生成能を有する菌株は組成物総重量に対して10~1012cfu/gの含量で含まれることができる。
また、本発明は、ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む代謝症候群の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0037】
本発明で上記‘代謝症侯群’は、肥満によって惹起される代謝性疾患やその他原因によって惹起される代謝性疾患であり、代謝症候群の例示としては肥満、糖尿、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肝疾患、脳卒中、心筋梗塞、虚血性疾患及び心血管疾患からなる群より選択されることができるが、これらに限るものではない。
【0038】
本発明の一実施例において、本発明のギ酸生成能を有する菌株は、エンテロコッカス・フェシウムKR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウスNKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリスTN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上の菌株であってもよい。
【0039】
本発明の一実施例によると、本発明の上記ギ酸生成能を有する菌株は、プロバイオティックス乳酸菌として使用されるか、多様な乳製品及びその他発酵製品に使用可能であり、動物飼料添加剤としても使用可能である。
【0040】
上記食品組成物は、食品、健康機能食品(nutraceutical)、補充剤(supplement)、生菌剤または共生剤(symbiotics)である。
本発明で“食品組成物”という用語は、これを摂取する対象体に提供される栄養素に関係なく、その生物の一つ以上の機能に有利に作用してより良好な健康状態を提供する食品を意味する。結果的に、上記食品組成物は疾病または疾病-誘発因子の予防、改善または治療のために使われることができる。
【0041】
従って、本発明の“食品組成物”との用語は、機能性食品または特定栄養目的のための食品または医薬食品の同義語として使われてもよい。本明細書で‘生菌剤’とは、適した量で供給される場合、宿主生物の健康に有益な生きた微生物を意味する。本明細書で‘共生剤’とは、プレバイオティックス(prebiotics)及び生菌剤の混合物を含む食品等を意味する。
【0042】
本発明の食品組成物は、本発明のギ酸生成能を有する菌株の他に、ラクトバチルス・サリヴァリゥス (Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、 ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブリュッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johonsonii)、ラクトバチルス・ケフィア(Lactobacillus kefir)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・プソイドロングム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・テルモフィルム (Bifidobacterium themophilum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス (Bifidobacterium adolescentis)で構成される群から選択される1種以上のプロバイオティックス乳酸菌を更に含んでもよい。
【0043】
本発明のギ酸生成能を有する菌株は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使って通常の条件下で培養することで増殖し回収することができる。培養後に得られる培養物をそのまま使っても良く、ひいては必要に応じて遠心分離などによる粗精製及び/または濾過などによる固液分離や滅菌操作を行っても良い。望ましくは、遠心分離を行って乳酸菌の菌体のみを回収する。尚、本発明で使う乳酸菌は湿潤菌体であっても乾燥菌体であってもよい。例えば、凍結乾燥によって生菌剤形態に製造して用いることができる。
【0044】
本発明の組成物は、有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)の他に通常薬剤学的に許容可能な担体または賦形剤を更に含んでもよく、これら以外にもバインダー、分解剤、コーティング剤、潤滑剤など製薬学的で通常使われる多様な添加剤と共に剤形化して調剤してもよい。
【0045】
本発明の一実施例において、本発明のギ酸生成能を有する菌株は、食品組成物総重量に対して10~1012cfu/gの含量で含まれることができる。
本発明の食品組成物は有効成分であるギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物の他に、通常の食品組成物と同様に様々な香味剤や天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。
【0046】
上述した天然炭水化物の例は、単糖類、例えば、葡萄糖、果糖など;二糖類、例えばマルトース、シュクロースなど;及び多糖類、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述した香味剤は、天然香味剤(ソーマチン)、ステビア抽出物(例えばレバウデ-オシドA、グリシルヒジンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルタムなど)を好ましく使うことができる。
【0047】
また、本発明の食品組成物は、上記した有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)の他に追加で食品学的に又は薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含めて食品組成物として望ましく製剤化することができる。
【0048】
上記食品組成物の剤形には、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液状、丸剤、液剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、または点滴剤などが挙げられる。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分はエタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合されることができる。また、望むか必要な場合、適した結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物で含まれてもよい。適した結合剤は、制限されるのではないが、澱粉、ゼラチン、グルコースまたはベーターラクトースのような天然糖、とうもろこし甘味剤、アカシア、トラガカントまたはオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、制限されるものではないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液に製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうち一つ以上の成分を混合して使うことができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0049】
上記のような方式で製剤化された本発明の食品組成物は、機能性食品に利用しても各種食品に添加してもよい。
本発明の組成物が添加可能な食品には例えば、飲料類、肉類、チョコレート、食品類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、キャンディー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤及び健康補助食品類などがある。
【0050】
また、上記食品組成物は、有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)の他にさまざまな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有してもよい。その他本発明の食品組成物は天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。
【0051】
本発明の有効成分であるギ酸生成能を有する菌株は食品由来菌ではあるが、腸内でよく発見される種で、体重減少効果、臓器組織における脂肪蓄積抑制効果、血中中性脂肪及びコレステロールの濃度を低める効果に優れており、化学薬品のような副作用が殆どないため、抗肥満または代謝症侯群改善などのような機能性の付与を目的として長期服用する際にも安心して使用することができる。
【0052】
本発明はまた、ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む代謝症侯群の予防または改善用の健康機能食品を提供する。
本発明の一実施例において、本発明のギ酸生成能を有する菌株は、エンテロコッカス・フェシウムKR127(寄託番号:KCTC 13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウスNKR654(寄託番号:KCTC 13137BP)及びエンテロコッカス・フェカーリスTN3(寄託番号:KCTC 13136BP)からなる群より選択された1種以上の菌株であってもよい。
【0053】
本発明の健康機能食品は、代謝症候群の予防または改善を目的として、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの形態に製造及び加工することができる。
本発明で“健康機能食品”とは、健康機能食品に関する法律に基づく人体に有用な機能性を有する原料や成分を使って製造及び加工した食品のことを言い、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得る目的で摂取するものを意味する。
【0054】
本発明の健康機能食品は、通常の食品添加物を含んでもよく、食品添加物としての適否は他の規定がない限り、韓国食品医薬品安全庁で承認した韓国食品添加物公典(Korean Food Additives Codex)の総則及び一般試験法などに則って該当品目に関する規格及び基準によって判定する。
【0055】
上記“食品添加物公典”に収載された品目には例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カルシウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成物;柿色素(persimmon color)、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素(Kaoliang color)、グアガムなどの天然添加物;L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類などが挙げられる。
【0056】
例えば、錠剤形態の健康機能食品は、本発明の有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)を賦形剤、結合剤、崩壊剤及び他の添加剤と混合した混合物を通常の方法で顆粒化した後、滑沢剤などを入れて圧縮成形するか、上記混合物を直接圧縮成形することができる。また、上記錠剤形態の健康機能食品は必要に応じて矯味剤などを含有してもよい。
【0057】
カプセル形態の健康機能食品のうち硬カプセル剤は、通常の硬質カプセルに本発明の有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)を充填して製造することができ、軟カプセル剤は、上記抽出物を賦形剤などの添加剤と混合した混合物をゼラチンのようなカプセル基剤に充填して製造することができる。上記軟カプセル剤は必要に応じてグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含んでもよい。
【0058】
丸剤形態の健康機能食品は、本発明の有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)と賦形剤、結合剤、崩壊剤などを混合した混合物を既に公知となった方法で成形して調剤することができ、必要に応じて白糖やその他のコーティング剤で剤皮を施してもよいし、または澱粉、タルクのような物質で表面をコーティングしてもよい。
【0059】
顆粒形態の健康機能食品は、本発明の有効成分(ギ酸生成能を有する菌株、その培養物、その破砕物またはその抽出物)と賦形剤、結合剤、崩壊剤などとを混合した混合物を既に公知となった方法で粒状に製造することができ、必要に応じて着香剤、矯味剤などを含んでもよい。
【0060】
上記健康機能食品は飲料類、肉類、チョコレート、食品類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、キャンディー類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤及び健康補助食品類などであってもよい。
【0061】
以下、実施例を通して本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限るものではない。
[実施例]
統計処理
肥満群と正常対照群との糞便中の有機酸の統計分析はSPSS system(statistical Package For Social Science,SPSS Inc., Chicago,IL,USA)software package(version 12.0)を用いて、p<0.05水準でT-testで試料間の有意差検定を行った。体重、臓器重量、血液の統計分析は、 SPSS system(statistical Package For Social Science,SPSS Inc., Chicago,IL,USA)software package (version 12.0)を用いてDuncan’s multiple range testでp<0.05水準で試料間の有意差検定を行った。
【0062】
<実施例1>
正常対照群と肥満群との糞便収集及び有機酸分析
本研究で使われた50代男性の正常対照群(n=33)と肥満群(n=44)との糞便はIRB審議(ソウル聖母病院IRB獲得:KC14TISI0325)を経てカトリック大学ソウル聖母病院(Seocho,Korea)から獲得した試料である。糞便の有機酸分析はソウル大学校農生命科学共同機器研究院(NICEM,Korea)に依頼して進行した。有機酸分析のために、試料は3次蒸溜水に10倍希釈し、3000rpmで10分間遠心分離した後、0.22μmメンブレンフィルターを用いて濾過しHPLC(Ultimate3000,Dionex,USA)分析の試料に用いた。この時に用いたHPLCのカラムはAminex 87H column(300×7.8mm)で、温度は40℃に維持し、移動相は 0.01 N HSOを用いて0.5ml/minで流し、試料の1回注入量は10lで、detectorはRI(Shodex RI-101,Japan)、UV(210nm)を用いて30分間分析した。
【0063】
その結果、下記表1に示されているように、正常人及び肥満人から共通的に検出された有機酸はギ酸(Formic acid)、酢酸(Acetic acid)、酪酸(Butyric acid)であった。ギ酸(Formic acid)の場合、肥満群に比べて正常対照群が 0.22mMolであり、2.4倍高くて、有意差があることが分かった。酢酸(Acetic acid)及び酪酸(Butyric acid)の場合、正常対照群が肥満群に比べてそれぞれ0.9倍、0.8倍であった。
【0064】
一方、このような含量差は肥満と高い関連性を有する糖尿、高血圧、高脂血症疾患者を含めて分析した結果であることから、これらの疾患者を除いて再び分析した。
その結果、下記表2に示されているように、ギ酸(Formic acid)の場合、正常群が肥満群に比べて約6.8倍高い0.27mMolであり、有意差があることが分かった。その反面、酢酸(Acetic acid)及び酪酸(Butyric acid)の場合は、正常対照群が肥満群に比べてそれぞれ0.82倍、0.66倍であり、有意差はなく、プロピオン酸(Propionic acid)はそれぞれ検出されなかった。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
上記のような結果から、糞便から検出された有機酸のうち、正常対照群が肥満群より有意に高いのはギ酸(Formic acid)のみであることを確認し、ギ酸(Formic acid)が腸内環境で抗肥満効果があると考えられた。
【0067】
参考までに、上記のような本発明の結果は韓国人50代男性の糞便を用いて導き出された結果である点で意味がある。なぜならば、従来の肥満関連研究は韓国人向けではなく他の人種や民族を対象として行われてきたものであり、研究対象の年齢も成人対象ではない場合(肥満の研究対象を幼児や青少年とした場合)は成人肥満に最適化された結果を導き出すことができないからである。人体生理も思春期と更年期とにおいて大きな差があるが、糞便の菌叢も子供と成人とで菌叢に大きな差があるのはよく知られており、糞便の代謝物にも差があるのは自明な事実である。
【0068】
従って、韓国人成人肥満に最適化された研究を行うために、本発明者は韓国人成人50代男性を対象とした糞便収集及び有機酸分析を通して正常成人との差異点を確認することにより、韓国人成人肥満と直接的な連関性を持つ因子を最初に発掘した点で意味のある結果を奏する。
【0069】
本発明者は実際にギ酸が抗肥満効果を持つかどうかを確認するためにギ酸塩(formate)を高脂肪食餌で肥満が誘導された動物モデルに経口投与し、その結果、高脂肪食餌対照群に対してギ酸塩を経口投与した実験群で体重増加が抑制され;腎臓脂肪重量の数値が低くなり;血中中性脂肪及びコレステロールの含量が有意に減少し;脂肪細胞の大きさが小さくなることを客観的な実験を通して確認し、本発明とは別途に特許出願を進行した状態である。
【0070】
また、本発明者は上記のような結果に基づき、実際にギ酸を多量生成する菌株を生菌剤にして摂取させた場合に抗肥満効果を奏するかどうかを確認するために、下記実験ではギ酸を多量生産する新規な菌株を総3種選抜し、これらを生菌剤として用いて肥満動物モデルに給与した場合の抗肥満効果を確認する動物実験を行った。
【0071】
<実施例2>
実験菌株の準備及び選抜
ギ酸塩(Formate)生成優秀菌を選別するために本実験室に保管中の腸内微生物及び食品由来菌30種が培養されたbrothを吸光光度計を用いて660nmでabsorbance値を測定した。測定値約1.4で、培養液1mLを遠心分離機を用いて遠心分離(7000rpm、1分)した上で上澄液を取ってnylon syringe filter 0.22μmで濾過して有機酸分析を行った。
【0072】
下の表3では菌株30種がそれぞれ生産する有機酸(Lactic acid,Propionic acid,Acetic acid,Formic acid)の生成量を比較した。
【0073】
【表3】
その結果、上記表3に示されているように、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis TN3)はギ酸を2.16mmol生産し、ペディオコッカス・ ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus NKR654)はギ酸を2.41mmol生産し、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium KR127)はギ酸を6.72mmol生産することと調査された。一方、これらを除いた27種の菌株の場合はギ酸が検出されないか極めて少量検出された。
【0074】
参考までに、上記ギ酸塩(Formate)の生成に優れた3種の菌株は、本発明者が韓国伝統の食材(麹、キムチ、乾酪)から純粋分離した後マクロジェン(Macrogen Inc.)に依頼して16S rDNA region Sequencing Analysisを通して同定した新規な菌株であって、本発明では上記のようにそれぞれ‘エンテロコッカス・フェカーリス TN3’、‘ペディオコッカス・ ペントサセウス NKR654’、‘エンテロコッカス・フェシウム KR127'と名付けた。
【0075】
マクロジェンで使った16S rDNA region Sequencing Analysisは要するに以下の通りである。すなわち、菌株ゲノムDNA試料をInstaGenetm Matrix(BIO-RAD.)を用いて抽出した後、プライマーに27F 5'(AGA GTT TGA TCM TGG CTC AG)3' 及び1492R 5'(TAC GGY TAC CTT GTT ACG ACT T)3'を用いてPCRを進行した。PCR反応は鋳型鎖にgenomic DNA 20ngを用いてEF-Taq(SolGent,Korea)30μl反応混合物で行った(反応条件:activation of Taq polymerase at 95℃ for 2minutes,35cycles of 95℃ for 1minutes,55℃,and 72℃ for 1minutes each were performed,finishing with a 10-minute step at 72℃)。増幅された産物はマルチスクリーンフィルタープレート(Millipore Corp.,Bedford,MA,USA)を用いて精製した。シークエンシング反応はPRISM BigDye Terminator v3.1 Cycle sequencing Kitを用いて行った。延長産物(extension products)を含むDNA試料にHi-Diformamide(Applied Biosystems、Foster City,CA)を添加した。この混合物を95℃で5分間反応させ、5分間氷状態で反応させた後、ABI Prism 3730XL DNA analyzer(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて分析した。
【0076】
また、上記選別されたギ酸塩(Formate)の生成に優れた3種の菌株は2016年10月18日付けでKCTC(生物資源センター)に寄託し、それぞれKCTC 13135BP、KCTC 13136BP、KCTC 13137BPの寄託番号を受けた。
【0077】
上記ギ酸塩(Formate)の生成に優れた3種の菌株を下記の動物実験に用いた。
<実施例3>
肥満動物モデル準備
<3-1>実験動物及び食餌
本実験では5週齢のC57BL/6Jマウスを株式会社セロンバイオ(Uiwang,Korea)から購入し、1週間適応させた上で実験に用いた。実験期間中、飼育室温度は20±2℃、湿度は55±10%、明暗は12時間周期で調節した。実験動物は1週間の正常食餌後に卵塊法に基づいて5つの群に分離した。実験群はA群(正常食餌群;n=10)、B群(高脂肪食餌対照群;n=10)、C群(高脂肪食餌+ Enterococcus faecium(10CFU/g/day);n=8)、D群(高脂肪食餌+ Pediococcus pentosaceus(10 CFU/g/day);n=8)、E群(高脂肪食餌+ Enterococcus faecalis(10 CFU/g/day);n=9)に区分した。
【0078】
<3-2>実験動物の処置
水及び飼料は自由に摂取させ、A群及びB群には生理食塩水を、他の群にはそれぞれの菌希釈液を一日一回ずつ経口投与した(2μg/g bodyweight)。試験群は高脂肪食餌で13週間肥満を誘導し、実験に使われた高脂肪食餌はアメリカのResearch diet社から購入したhigh fat diet(D12492;60% of the calories)であった。本研究におけるあらゆる動物実験は韓国食品研究院実験動物運営委員会 (Institutional Animal Care and Use Committee,IACUC)の承認(KFRI-M-16043(263))の下で行われた。
【0079】
<実施例4>
実験動物の体重と臓器重量との測定及び血液分析
実験期間における実験動物の体重は週に一回一定時間に測定した。実験動物を犠牲前に12時間節食させ、エーテル(ether)で痲酔させた動物の眼球から血液を採取した。採血後、凝固を防止するために凝固防止チューブに入れて、氷浴(ice bath)中に20分間放置した。採血試料は3000rpmで10分間遠心分離して血清を分離し、実験前までに冷蔵保管した後、盈東製薬(YD Diagnostics;yongin,Korea)から酵素法によるキットを購買して血中脂質(Triglyceride,Cholesterol,HDL-Cholesterol,LDL Cholesterol)を測定した。臓器は摘出して生理食塩水で洗浄した後、濾過紙で水気を取り除いて秤量した。
【0080】
<4-1>体重変化
エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウス NKR654(KCTC13137BP)、エンテロコッカス・フェカーリス TN3(KCTC13136BP)の菌体を生理食塩水で希釈し、高脂肪食餌で肥満が誘導された実験動物(C57BL/6J mice)に13週間経口投与した。飼育期間中にマウスの体重を週に1回測定し、それによる体重変化を測定した。
【0081】
その結果、図1に示されているように、飼育13週後に一般食餌対照群であるA群の平均重量は31.00g、高脂肪食餌対照群であるB群の平均重量は41.09g、エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)(10CFU/g/day)菌株を経口投与したC群は35.67g、ペディオコッカス・ ペントサセウス NKR654(KCTC13137BP)(10 CFU/g/day)菌株を経口投与したD群は40.33g、エンテロコッカス・フェカーリス TN3(KCTC13136BP)(10 CFU/g/day)菌株を経口投与したE群は41.38gと測定された。結果的に、C群は高脂肪食餌対照群に比べて有意に13.19%低い値を示した。D群及びE群は高脂肪食餌対照群と類似の値を示して有意差はなかった。
【0082】
本実験を通して、ギ酸塩(formate)を多量生成する菌株エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)が体重増加抑制及び抗肥満効果において最も効果的であることが分かった。
【0083】
<4-2>臓器重量に及ぼす影響
高脂肪食餌の給与は白マウスの肝及び副睾丸脂肪の重量を顕著に増加させる(Handjieva-Daelenska T,Boyajieva N.)。長期に亘る高脂肪食餌の摂取は脂肪を血液へ流入させて肝への脂肪の蓄積を誘導し、高脂肪食餌は糖代謝の不均衡をもたらして葡萄糖流入の増加により肝に異常が生じるようになる(Buettner R et al.2006, Gregoire FM.2002)。副睾丸脂肪は体内の余剰エネルギーが脂肪で貯蔵された白色脂肪であり、マウスで内臓肥満の主要な指標として血中脂質含量などの代謝的変化をもたらす(Avram AS et al 2005,Handgieva-Daelenska T et al.2007)。
【0084】
各対照群と実験群との腎臓脂肪、副睾丸脂肪、皮下脂肪、褐色脂肪、前立腺、肝、脾臓は採血後直ちに摘出して、生理食塩水で洗って表面の水気を取り除いて重量を測定し、その結果を下記表4に示した。
【0085】
腎臓脂肪重量の場合、高脂肪食餌対照群(0.84±0.12g)が一般食餌対照群(0.43±0.14g)より有意に高く、C群、D群、E群がそれぞれ0.69g、0.74g、0.82gで高脂肪食餌対照群に比べてC群のみが有意に(p<0.05)低く、D群及びE群は有意差はなかったが、低い値を示した。これはエンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)菌株の給与が、腎臓脂肪の蓄積を抑制した結果であると考えられた。
【0086】
副睾丸脂肪重量の場合、食餌による影響が他の脂肪よりも大きいことが分かった。また、菌株処理群(C、D、E群)の全てが高脂肪食餌対照群(B群)に比べて低い値で、C群は18.4%、D群は15.2%、E群は4%低い値を示し、エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)は有意に低い値を示した。
【0087】
皮下脂肪の重量も食餌による影響が大きく、C群は1.32g、D群は1.58g、E群は1.74gで高脂肪食餌対照群に比べてC群は16.46%低い値を示して有意差はなく、D群及びE群も有意差はなかった。腎臓脂肪及び副睾丸脂肪でエンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)菌株の給与は脂肪蓄積を抑制したことが考えられた。
【0088】
褐色脂肪の場合、菌株処理群(C、D、E群)の全てが高脂肪食餌対照群(B群)に比べて22.22%高い値を示したが有意差はなく、食餌による影響が少ない臓器と思われた。
【0089】
前立腺の場合、一般食餌対照群と高脂肪食餌対照群とが約1.9倍の差があって食餌による影響が大きい組織であることが分かった。前立腺の重量においてC群が高脂肪食餌対照群に比べて高い重量を示したが有意差はなかった。
【0090】
肝重量及び脾臓重量もまた群別に有意差はなかった。マウスで内臓肥満の主要な指標と思われる副睾丸脂肪の重量結果から、ギ酸塩(formate)を多く生成する菌株エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)の投与が体重減少及び抗肥満に効果があると考えられた。
【0091】
【表4】
<4-3>血液分析
肥満は脂肪代謝及び糖代謝の異常により異常脂質血症を伴うことが多い。LEE等とJANGとCHOIとは高脂肪食餌によって肥満が誘導された白マウスで血中中性脂肪及びコレステロールは増加しHDL-コレステロールは減少したと報告した。
【0092】
エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)、ペディオコッカス・ ペントサセウス NKR654(KCTC13137BP)、及びエンテロコッカス・フェカーリス TN3(KCTC13136BP)菌株それぞれの投与が血清脂質濃度に及ぼす影響を下記表5に示した。
【0093】
血清の中性脂肪(TG)の濃度は正常食餌群(A)の場合に86.64±4.21mg/dLであり、これに対して高脂肪食餌対照群(B)は130.10±7.69mg/dLで正常食餌群に比べて高かった。エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)投与群(C)は98.89±7.14mg/dLで高脂肪食餌対照群に比べて23.99%低い値を示し、ペディオコッカス・ ペントサセウス NKR654(KCTC13137BP)投与群(D)は148.33±8.35mg/dL、エンテロコッカス・フェカーリス TN3(KCTC13136BP)投与群(E)は145.45±4.96mg/dLの値を示した。このような結果から、エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)の投与が血中中性脂肪の濃度減少に影響を及ぼしたことが考えられた。
【0094】
コレステロールの含量は正常食餌群(A)に比べて高脂肪食餌給与対照群で61.2%増加したが、菌株投与時に高脂肪食餌給与対照群に比べて有意に減少し、高脂肪食餌給与群に比べてエンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)投与群であるC群は36.8%、D群は29.67%、E群は37.64%低い値を示した。
【0095】
HDL-コレステロールは、抗動脈硬化の指標としてコレステロールを末梢血管から肝へ輸送して動脈硬化を進行させない方向にコレステロールを運んで冠状動脈性心臓疾患に対する防御作用を持っている。本実験におけるHDL-コレステロールの濃度は、高脂肪食餌群(B)に比べて菌株投与群が有意に低い値を示した。
【0096】
LDL-コレステロールは、血中コレステロールの主な運搬型で動脈血管壁にコレステロールを蓄積させて動脈硬化を促進させるため、血漿LDL-コレステロール濃度と心臓循環器系疾患の発生とは密接な相関関係がある。LDL-コレステロール含量は正常食餌群(A)に比べて高脂肪食餌対照群(B)が23.62%高く、菌株投与群のうちD群が高脂肪食餌対照群より低い値を示した。
【0097】
【表5】
以上の結果で、脂質の中で特に成人病の原因物質として作用する中性脂肪と総コレステロールの含量はエンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)の投与によって減少したことから、抗肥満及び脂肪食餌摂取による心血管疾患の予防に有効であると考えられた。
【0098】
<実施例5>
副睾丸脂肪組職細胞の大きさ測定
副睾丸脂肪細胞の大きさを測定するためにHirsch及びGallian(Hirsch,J. and Gallian, E. 1968. Methods for the determination of adipose cell size in man and animals. J. Lipid Res. 9:110-119.)の方法に従って摘出された副睾丸脂肪組職を10%ホルマリンで固定した後、250μmのナイロンフィルターに通過させて纎維組織及び小さな組織を取り除いた上でPBSで洗浄し完全に除去した。固定された組織は凍結切片機を用いて18μmに切片し、H&E(Hematoxylin and Eosin)脂肪染色方法で脂肪細胞を染色した。染色後60%イソプロパノールを用いて脱色した後、顕微鏡下でデジタルカメラを用いてイメージを測定した。脂肪細胞の大きさ分析のために、Image J Software(National Institute of Health,Maryland,USA)を用いて脂肪細胞の面積を測定した。
【0099】
参考までに、脂肪細胞の大きさの測定は、抗肥満効能が立証可能な効果的な方法であると知られており、高脂肪食餌摂取の場合に脂肪細胞の中性脂肪蓄積を増加させて脂肪細胞の大きさが増加するようになる(Park,S.H., Ko, S. K. and Chung, S. H. 2005. Euonymus alatus prevents the hyperglycemia and hyperlipidemia induced by high-fat diet in ICR mice. J. Ethnophamacol. 102:326-335)。
【0100】
本実験で副睾丸脂肪細胞の大きさを測定した結果を図2に示した。脂肪細胞の平均面積の分布を察した結果、B群が4600.18μmと最も大きくA群に比べて55.9%大きかった。菌株経口投与群のうちペディオコッカス・ペントサセウス NKR654(KCTC13137BP)の場合に脂肪細胞の大きさが最も小さく、エンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)、エンテロコッカス・フェカーリス TN3(KCTC13136BP)の順に大きかった。菌株投与群の全てが高脂肪食餌対照群に比べて脂肪細胞の大きさが小さいことから、菌株の給与が高脂肪食餌による脂肪細胞の蓄積を抑制したことが考えられた。H&E染色液で染色された脂肪細胞を顕微鏡で観察した際に脂肪細胞の大きさが異なることが肉眼でも確認できた。
【0101】
向後更なる研究が必要であるが、調査結果の通りに菌株処理群のうちギ酸塩(formate)を多く生成するエンテロコッカス・フェシウム KR127(KCTC13135BP)が抗肥満効果及び高脂血症改善剤としての開発可能性を提示する。
【0102】
以上、本発明を望ましい実施例を中心として説明したが、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者ならば本発明をその本質的な特性から逸脱しない範囲内で変形された形態で具現可能であることが理解できるであろう。よって、開示された実施例は限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮しなければならない。本発明の範囲は上述した説明ではなく特許請求範囲に示されており、これと同等な範囲内のあらゆる差異点は本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
【0103】
[産業上利用可能性]
本発明によるギ酸生成能に優れた菌株は医薬品または健康食品素材として有用である。
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13135BP
受託日:2016.10.18.
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13136BP
受託日:2016.10.18.
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13137BP
受託日:2016.10.18.
図1
図2