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特許7012746検体評価中にラベル補正する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】検体評価中にラベル補正する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
G01N35/02 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019555668
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026948
(87)【国際公開番号】W WO2018191295
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】62/485,262
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】クルックナー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスマン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤオ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,テレンス
(72)【発明者】
【氏名】ポラック,ベンジャミン エス.
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223914(JP,A)
【文献】特開2016-008927(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072358(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/133908(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0138674(US,A1)
【文献】国際公開第2016/133900(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のラベルがあって血清又は血漿部分を含む検体容器の画像を複数の視点から1つ以上取得し、
前記複数の視点からの1つ以上の画像を処理し、前記視点ごとに、ラベル含有領域の識別情報を含むセグメンテーションデータを提供し、
多数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを提供し、
前記ラベル含有領域を前記参照ラベル形態データベースと照合し、該参照ラベル形態データベースに含まれている前記多数の参照ラベル形態から前記ラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択し、
前記ラベル含有領域の前記セグメンテーションデータに前記選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせて統合表現を生成
前記統合表現を用いて前記1つ以上のラベルを考慮することにより前記血清又は血漿部分の全体表現を得て、前記血清又は血漿部分の溶血性、黄疸性、脂血性の1つ以上、又は正常性の少なくとも1つを判定する、ことを含む評価方法
【請求項2】
前記統合表現を生成するために、前記ラベル含有領域の前記セグメンテーションデータに前記選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせるときに、前記選択した参照ラベル形態に対する前記ラベル含有領域の差、比、又はそれらの連結を画素ベースで計算することを含む、請求項1に記載の評価方法
【請求項3】
前記参照ラベル形態データベースに含まれる前記多数の参照ラベル形態に関する参照画像データとして、様々な形態の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の評価方法
【請求項4】
前記多数の参照ラベル形態に関する参照画像データは、前記検体容器の画像を複数の視点から1つ以上取得するよりも前に前記参照ラベル形態データベースに入力される、請求項3に記載の評価方法
【請求項5】
前記参照ラベル形態データベースは、インデクサにより索引付け可能なサブデータベースから構成される、請求項3又は4に記載の評価方法
【請求項6】
前記参照ラベル形態データベースは、管サイズによって索引付けしたサブデータベースから構成される、請求項3又は4に記載の評価方法
【請求項7】
前記参照ラベル形態データベースは、ラベルサイズによって索引付けしたサブデータベースから構成される、請求項3又は4に記載の評価方法
【請求項8】
前記参照ラベル形態データベースは、ラベル位置によって索引付けしたサブデータベースから構成される、請求項3又は4に記載の評価方法
【請求項9】
前記ラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択するときに、前記ラベル含有領域と参照ラベル形態データベースに含まれている前記多数の参照ラベル形態とを比較して最も近い前記参照ラベル形態を選択することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の評価方法
【請求項10】
前記ラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別するために、前記ラベル含有領域の前記セグメンテーションデータをダウンスケーリングして前記参照ラベル形態データベースの相対的スケールに一致させることを含む、請求項9に記載の評価方法
【請求項11】
前記セグメンテーションデータを、前記ラベル含有領域を通して前記血清又は血漿部分について生成する、請求項1~10のいずれか1項に記載の評価方法
【請求項12】
前記複数の視点それぞれの前記セグメンテーションデータからセマンティックマップを生成することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の評価方法
【請求項13】
前記セマンティックマップから、前記血清又は血漿部分の最大可視性を有する合成視点を選択することを含む、請求項12に記載の評価方法
【請求項14】
前記複数の視点から前記画像を1つ以上取得するときに、R、G、B、白色光、IR、近IRの1つ以上のスペクトルを含む光源によってバックライト照明することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の評価方法
【請求項15】
前記複数の視点から前記画像を1つ以上取得するときに、前記1つ以上のスペクトルごとに異なる露光時間で露光することを含む、請求項14に記載の評価方法
【請求項16】
撮像位置の周囲に配置され、1つ以上のラベルがあって検体の血清又は血漿部分を含む検体容器の画像を複数の視点から複数取得するように構成された複数の画像取得装置と、
該複数の画像取得装置に接続され、前記複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータとを備えた品質チェックモジュールであって、
前記コンピュータは
前記複数の視点からの前記複数の画像を処理して、前記視点ごとに、ラベル含有領域の識別情報を含むセグメンテーションデータを提供し、
多数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを保存し、
前記ラベル含有領域を前記参照ラベル形態データベースと照合し、該参照ラベル形態データベースに含まれている前記多数の参照ラベル形態から前記ラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択し、
前記ラベル含有領域の前記セグメンテーションデータに前記選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせて統合表現を生成し、
該統合表現を使用して、HILN分類器を用い、前記ラベル含有領域を考慮に入れて前記血清又は血漿部分のHILNを判定するように構成されて作動可能である、品質チェックモジュール。
【請求項17】
トラックと、
該トラックに沿って移動可能であり、1つ以上のラベルがあって検体の血清又は血漿部分を含む検体容器を収容するように構成されたキャリアと、
前記トラックに対し配置され、複数の視点から前記検体容器及び前記検体の複数の画像を取得するように構成された複数の画像取得装置と、
前記複数の画像取得装置に接続され、前記複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータとを備えた検体検査装置であって、
前記コンピュータは、
前記複数の視点からの前記複数の画像を処理して、前記視点ごとに、ラベル含有領域の識別情報を含んだセグメンテーションデータを提供し、
多数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを保存し、
前記ラベル含有領域を前記参照ラベル形態データベースと照合し、該参照ラベル形態データベースに含まれている前記多数の参照ラベル形態から前記ラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択し、
前記ラベル含有領域の前記セグメンテーションデータに前記選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせて統合表現を生成し、
該統合表現を使用して、HILN分類器を用い、前記ラベル含有領域を考慮に入れて前記血清又は血漿部分のHILNを判定するように構成されて作動可能である、検体検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2017年4月13日出願の米国仮出願62/485,262の優先権を主張し、該出願の全内容は本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、検体を評価する方法及び装置に関し、具体的には、検体が溶血性(H)、黄疸性(I)、脂血性(L)の1つ以上に該当するか、又は正常(N)かどうかを判定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自動化検査システムは、尿、血清、血漿、間質液、脳脊髄液などの検体中の分析物や他の成分を同定するために、1つ以上の試薬を用いる臨床化学検査又はアッセイ検査を実施するために使用される。便宜上と安全上の理由から、これら検体は検体容器(例えば、採血管)内に収納される。アッセイ又は検査反応が様々な変化を生み出し、当該変化を読み取ったり操作したりすることで、検体に存在する分析物や他の成分の濃度を判定する。その検体容器には、1つ、時には2つ以上のラベルが貼られている。ラベルは、製造業者のラベルや、検体の識別と場合によっては検体に実施される検査の識別に役立つ情報を含むラベルである。ほとんどの場合、ラベルにおいて情報は印刷されたバーコードとして提供される。ラベルは紙ラベルであることが多い。
【0004】
自動化検査技術の進歩に伴い、分析前の検体の調製及び取り扱い作業、例えば、ソーティング、バッチ処理調製、検体成分を分離するための検体容器の遠心分離、検体へのアクセスを容易にするためのキャップの取り外し、自動化システム(ラボラトリーオートメーションシステム(LAS)の一部であり得る)などの、相応の進歩がみられる。LASは、検体容器内の検体を、臨床化学分析装置かアッセイ機器もしくはその両方を含む分析装置ステーション(まとめて「分析装置」ともいう)に加えて、1つ以上の分析前検体処理ステーションにも自動的に搬送することができる。
【0005】
LASは、一度に多数の各種検体の処理を扱うことができ、その追跡及びルーティングのためにラベルのバーコード又は他の識別子を使用する。ラベルは、検査指定や他の情報と共に、病院のラボラトリーインフォメーションシステム(LIS)に入力される人口統計情報と相関させることのできる受付番号を含むか、又はバーコードに受付番号が符号化されている。オペレータがラベルの付いた検体容器をLASに配置し、該LASは、遠心分離、脱キャップ、及びアリコート調製などの1つ以上の分析前操作のために検体容器を自動的に搬送する。これらは全て、LASの一部とした1つ以上の分析装置による臨床分析又はアッセイに実際に検体が送られる前に行われる。
【0006】
H、I、Lのうちの1つ以上など干渉物の検出を行ったりする特定の検査では、分画(例えば、遠心分離)によって全血から得られた血清又は血漿部分に対し、分析前検査を実施する。一例では、ゲルセパレータが検体容器に追加してあって、血清又は血漿部分と沈降血液部分との分離を補助する。分画とその後の分析前検査の後、一例では、検体容器は該当する分析装置へ搬送され、該分析装置において、検体容器から血清又は血漿部分が吸引により抽出され、この血清又は血漿部分が反応容器(例えば、キュベット又は他の容器)で1つ以上の試薬と組み合わせられる。分析測定は、例えば、照会放射のビームを使用したり、測光測定や蛍光測定の吸収読み取り値などを使用したりして実行されることが多い。測定値は終点又は速度値の判定を可能にし、これに基づいて分析物又は他の成分の濃度が周知の技術を用いて判定される。
【0007】
残念ながら、患者の状態又は検体処理の結果として、検体中に干渉物(例えば、H、I、Lなど)が存在すると、分析物の検査結果又は分析装置から得られる成分測定値に影響を及ぼす可能性がある。例えば、患者の病態とは無関係である検体中の溶血の存在は、患者の病態の間違った解釈を引き起こすことがある。さらに、検体中に黄疸や脂血症が存在すると、患者の病態の解釈が違うことにもなり得る。
【0008】
従来技術において、検体の血清又は血漿部分の完全性は、熟練した検査技師によって視覚的に検査され、H、I、Lのいずれか1つ以上の程度又は正常(N)について(例えば、指標を割り当てることによって)評価される。これには、既知の基準に対する検体の血清又は血漿部分の色の評定が含まれる。正常(N)な血清又は血漿部分は淡黄色~淡褐色である。溶血(H)を含む血清又は血漿部分は赤みを帯びた色を呈する。黄疸(I)を含む血清又は血漿部分はビリルビンの上昇により暗黄色を呈し、脂血症(L)を含む血清又は血漿部分は白色又は乳白色の外観を呈する。色に応じて検査技師は指標値を割り当てる。しかし、このような人による目視検査は、非常に主観的で、労力がかかり、人為的ミスの可能性を伴う。
【0009】
手作業の検査には上記のような問題点があるため、検査技師による目視検査ではなく、分析前検査(「事前スクリーニング」ともいう)の際の自動視覚検査法を用いて検体の完全性を評価する努力がなされてきた。しかしながら、上述のとおり1つ以上のラベルが検体容器に直接付けられる例がある。このラベルが検体の特定の視点を部分的に遮って不明瞭にする結果、血清又は血漿部分を視覚的に観察する明白な機会を提供できるのが1つの回転配向しかない場合がある。すなわち、この場合の分析前検査の自動化は、例えば、検体を回転させて配向し、HILNの自動化事前スクリーニングを可能にすることを含む。
【0010】
一例として、特許文献1に記載されているようなシステムにおいては、検体容器を回転させてラベルにより妨害されない視界を見つけ、撮像を実行する。しかしながら、当該システムでは自動化を進めるのが簡単ではなく、他にも問題がある。さらに、血清又は血漿部分のごく一部しか見えない場合もあり、その結果、血清又は血漿部分に関する読み取り値の信頼レベルが高くないことがある。また、複数のラベルが検体の視界を完全に不明瞭にする、すなわち、検体容器の周囲を360°包み込むような例もある。
【0011】
以上のとおり、血清又は血漿部分が1つ以上のラベルによって部分的又は完全に閉塞されている場合でも、HILNの存在と場合によってはその程を判定することができるように、検体の血清又は血漿部分を評価するべく構成された方法及び装置に対する要請が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許9,322,761;Miller;Methods And Apparatus For Ascertaining Interferents And Physical Dimensions in Liquid Samples And Containers To Be Analyzed By A Clinical Analyzer
【発明の概要】
【0013】
第1の態様により、評価方法が提供される。本評価方法は、血清又は血漿部分を含む検体容器であって1つ以上のラベルが付いた検体容器の画像を複数の視点から1つ以上取得し、該複数の視点からの1つ以上の画像を処理してラベル含有領域の識別を含むセグメンテーションデータを視点ごとに提供し、複数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを提供し、ラベル含有領域を該参照ラベル形態データベースと照合し、参照ラベル形態データベースにある複数の参照ラベル形態からラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択し、ラベル含有領域のセグメンテーションデータにその選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせて統合表現を生成し、この統合表現を用いて1つ以上のラベルを考慮することにより血清又は血漿部分の全体表現を得て、血清又は血漿部分の溶血性、黄疸性、脂血性の1つ以上、又は正常性の少なくとも1つを判定することを含む。
【0014】
別の態様により、品質チェックモジュールが提供される。本品質チェックモジュールは、検体の血清又は血漿部分を含む検体容器であって1つ以上のラベルが付いた検体容器の画像を複数の視点から複数取得するように撮像位置の周囲に配置された複数の画像取得装置と、該複数の画像取得装置に接続されて複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータとを有する。そのコンピュータは複数の視点からの複数の画像を処理してラベル含有領域の識別を含むセグメンテーションデータを視点ごとに提供し、複数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを保存し、ラベル含有領域を該参照ラベル形態データベースと照合し、参照ラベル形態データベースにある複数の参照ラベル形態からラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択し、ラベル含有領域のセグメンテーションデータにその選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせて統合表現を生成し、該統合表現を使用して、HILN分類器を用い、ラベル含有領域を考慮に入れて血清又は血漿部分のHILNを判定するように構成されて作動する。
【0015】
別の態様により、検体容器に入った検体における干渉物の存在を判定するように構成された検体検査装置が提供される。本検体検査装置は、トラックと、該トラックに沿って移動可能であって、検体の血清又は血漿部分を含むと共に1つ以上のラベルの付いた検体容器を収容するように構成されたキャリアと、トラックに対し配置され、複数の視点から検体容器及び検体の複数の画像を取得するように構成された複数の画像取得装置と、該複数の画像取得装置に接続され、複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータとを含む。そのコンピュータは、複数の視点からの複数の画像を処理してラベル含有領域の識別を含むセグメンテーションデータを視点ごとに提供し、複数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを保存し、ラベル含有領域を該参照ラベル形態データベースと照合し、参照ラベル形態データベースにある複数の参照ラベル形態からラベル含有領域に対する最適合致の参照ラベル形態を識別して選択し、ラベル含有領域のセグメンテーションデータにその選択した参照ラベル形態の参照画像データを組み合わせて統合表現を生成し、該統合表現を使用して、HILN分類器を用い、ラベル含有領域を考慮に入れて前記血清又は血漿部分のHILNを判定するように構成されて作動する。
【0016】
本発明のさらに他の態様、特徴及び利点については、本発明を実施するために考えられる最良の形態を含む実施形態を例示する以下の説明から明らかである。本発明は、その他の様々な実施形態も可能であり、その詳細の一部は、本発明の範囲から逸脱することなく様々に変更することができる。ここに開示する事項は、特許請求の範囲に入る全ての修正、等価の形態、及び代替の形態に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の図面は説明を目的とするものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。図面及び説明は、本質的に例示的であると見なされるべきであり、限定的とみなされるべきではない。図面は、本発明の範囲を限定するものではない。
図1】本明細書に説明してある実施形態に係る方法を実行するように構成された1つ以上の品質チェックモジュールを含む検体検査装置の概略平面図を示す。
図2A】干渉物を含有する血清又は血漿部分をもつ分離後の検体を含む検体容器の側面図を示す。検体容器にはラベル(例えば、バーコードラベル)が貼り付けられている。
図2B】ラベル、干渉物を含有する血清又は血漿部分を含む分離後の検体、さらにゲルセパレータを含む検体容器の側面図を示す。
図3A】は、ラベル、血清又は血漿部分に干渉物を含有する分離後の検体、及びゲルセパレータを含む検体容器の側面図を示す。図示の検体容器はホルダ内で直立姿勢に保持されている。
図3B】1つの側方視点から血清又は血漿部分を遮って不明瞭にする複数のラベルのある検体容器の側面図を示す。
図3C】少なくとも2つの側方視点から血清又は血漿部分の少なくとも一部を遮って不明瞭にする複数のラベルのある検体容器の側面図を示す。
図3D】検体容器を囲繞し、いずれの視点からも血清又は血漿部分を遮って不明瞭にしてしまう複数のラベルのある検体容器の正面図を示す。
図3E】検体容器を囲繞し、いずれの視点からも血清又は血漿部分を遮って不明瞭にしてしまう複数のラベルのある検体容器の背面図を示す。
図4A】複数の視点をもち、複数のバックライト画像を取得して分析することで検体の評価を可能にし、干渉物の存在を判定するように構成された、実施形態に係る品質チェックモジュールの概略平面図(天井が取り除かれている)を示す。
図4B図4Aの実施形態に係る品質チェックモジュールの、切断線4B-4Bに沿って切り取った概略側面図(前方囲繞壁が取り除かれている)を示す。
図5】検体を評価するように構成され、検体中のH、I、Lの1つ以上の存在、又はNを決定するために使用される、実施形態に係る品質チェックモジュールの機能的構成要素のブロック図を示す。
図6A】実施形態に係るセマンティックマップの第1の視点からの第1のセグメント化画像を示す。
図6B】実施形態に係るセマンティックマップの第2の視点からの第2のセグメント化画像を示す。
図6C】実施形態に係るセマンティックマップの第3の視点からの第3のセグメント化画像を示す。
図6D】実施形態に係る品質チェックモジュールの各視点を示す概略平面図を示す。
図6E】実施形態に係る合成視点からのセマンティック背面図を示す。
図6F】実施形態に係る合成視点からのセマンティック正面図を示す。
図6G】実施形態に係る参照ラベル形態データベースのインデクシングスキームを例示する。
図6H】ラベル含有領域をもつ実施形態に係る検体容器の各視点に対するラベル方向の例を示す上から見た図を示す。
図7】実施形態に係る評価方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
検体容器に入った検体の分析前評価(事前スクリーニング)の際に、検体容器及び検体の様々な領域を分類する方法が提供される。特に血清及び血漿部分が分類され、同定され、そして他の領域(例えば、沈降血液部分や、使用される場合のゲルセパレータ)と区別されるように設定される。さらに、1つ以上のラベル、検体容器(例えば、チューブ)、空気、キャップ、又はホルダも評価される。1つ以上のラベルは、検体容器を様々な程度で囲繞し、1枚、2枚、又は3枚以上のラベルが互いに重なって貼られていることもあるため、1つ以上のラベルを含む領域からの血清及び血漿部分の識別は、やっかいな問題である。場合によってラベルはある程度互いに重なり合っていることがある。したがって、1つ以上のラベルが1つ以上の視野、さらに容器によっては血清又は血漿部分の全ての視野を遮って不明瞭にし、血清又は血漿部分の明瞭な視野を得ることが困難にすることがある。場合によっては、血清又は血漿部分のごくわずかな部分しか見えない。
【0019】
血清又は血漿部分の分類は、1つ以上のラベルの配置及び数が、前の検体容器と次の検体容器との間で実質的に変化することから、困難である。特に、1つ以上のラベルが検体容器の互いに反対側に現れ、複数の層が関与することを考慮すると、1つ以上のラベルによって引き起こされる閉塞は、各視点からのスペクトル応答に大きく影響する。
【0020】
以上の課題を考慮すると、第1の広い態様において、本実施形態により、検体容器にある1つ以上のラベルの存在と範囲(すなわち、形態)を判定するように構成された方法、装置、及びシステムが提供される。さらに、ラベルが存在する場合に、当該方法、装置、及びシステムは、ラベルの影響を評価して除去できるように、スペクトル応答に対する適切な調整を可能にする。これにより、血清又は血漿部分のより広い領域が利用可能となり、評価され、H、I、Lの1つ以上の程度の判定、又はNであることの判定のために使用できる。
【0021】
一実施形態において、評価方法が提供される。この評価方法は、血清又は血漿部分を含むと共に1つ以上のラベルがある検体容器の画像を複数の視点から1つ以上取得することを含む。複数の視点からの1つ以上の画像をコンピュータによって処理し、視点ごとにセグメンテーションデータを提供する。セグメンテーションデータは、検体容器のラベル含有領域の識別を含み、また、血清又は血漿部分の位置、及び沈降血液部分、管、空気、キャップ、ホルダのいずれかの位置に関するセグメンテーション情報も含む。本評価方法は、複数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含む参照ラベル形態データベースを提供することを含む。参照ラベル形態は、例えば、1つのラベル、2つのラベル、3つのラベル、又は画像中で実際に遭遇する可能性のある複数のあり得る形態(向き)に配置されたさらに多くのラベルを含む、多数のあり得るラベル形態である。参照ラベル形態データベースは、インデックス化が可能なサブデータベースから構成され得る。
【0022】
別の態様において、本評価方法は、参照ラベル形態データベースにある複数の参照ラベル形態から選択された参照ラベル形態に対する、ラベル含有領域の最も近いラベルの一致(最適合致)を判定する。セグメンテーション情報とその最適合致に基づいて、組み合わせ(統合)表現が生成される。ラベルの影響が補償されているので、この統合表現をHILN分類器に供給して血清又は血漿部分のより良い評価を提供することができる。結果として、血清又は血漿部分のHILNの改善された評価が、本評価方法を用いて得られる。さらに、改善されたHILレベルの評価が達成される。
【0023】
[定義]
「干渉物」は、検体の血清又は血漿部分における溶血(H)、黄疸(I)、脂血(L)のうちの少なくとも1つの存在を意味する。溶血性(H)、黄疸性(I)、及び脂血性(L)は、まとめて「HIL」とも呼ぶ。
【0024】
「溶血」は、処理中に赤血球が破壊されて赤血球から血清又は血漿部分にヘモグロビンが放出し、血清又は血漿部分が赤みを帯びた色を呈する、血清又は血漿部分における状態として定義される。溶血の程度は、溶血指数を割り当てることによって定量化することができる。
【0025】
「黄疸」は、胆汁色素(ビリルビン)の蓄積により血清又は血漿部分が変色して暗黄色になる血液の状態と定義される。黄疸の程度は、黄疸指数を割り当てることによって定量化することができる。
【0026】
「脂血」は、血清又は血漿部分が白っぽい又は乳状の外観を含むような、異常に高濃度の乳化脂肪の血中存在として定義される。脂血の程度は、脂血指数を割り当てることによって定量化することができる。
【0027】
「血清又は血漿部分」は血液の液体成分である。これは、分画後に(例えば、遠心分離によって)沈降した血液部分の上に見出される。血漿及び血清は、凝固成分、主にフィブリノーゲンの含有量が異なる。血漿は凝固していない液体であり、血清は内因性酵素又は外因性成分の影響下で凝固した血漿を意味する。
【0028】
「沈降血液部分」とは、白血球、赤血球、血小板などの血球が凝集し、血清又は血漿部分から分離され、半固形物として凝集したものをいう。沈降血液部分は、分画後の血清又は血漿部分の下にある検体容器の底部に見出される。
【0029】
「画像取得装置」は、デジタルカメラ、CCD(電荷結合素子)及びCMOS(相補型金属酸化物半導体)、センサアレイなど、分析のために画素化画像(例えば、デジタル画像)を取得することができる装置である。
【0030】
ここに言う「画素化画像」は、1画素以上を含むスーパーピクセル又は画像パッチのような画素の群を含む画像を意味する。11個の個々の画素×11個の個々の画素のサイズをもつスーパーピクセル又は画像パッチは、画像データの効率的な処理のために良好に機能することが分かっている。
【0031】
「ラベル」は、識別情報(すなわち、標識)を含むように構成された検体容器の外側表面の領域として定義される。ラベルは、不透明な紙、プラスチック、塗料、又は検体容器の外面に塗布(例えば、接着)された他の材料である。ラベルは、バーコード、アルファベット、数字、又はそれらの組み合わせである。ラベルは、製造業者のラベル、あるいは瀉血士や後続の検体処理組織によって後貼りされたラベルであり得る。
【0032】
「LA」は、液体-空気界面として定義され、血清又は血漿部分と血清又は血漿部分より上の空気との間の境界線(側方から見た)である。
【0033】
「SB」は、血清-血液界面であり、血清又は血漿部分と沈降血液部分との間の境界線(側方から見た)である。
【0034】
「TC」は、管-キャップ界面であり、空気とキャップの界面における境界線(側方から見た)である。
【0035】
「HT」は、管の高さで、管の下端からキャップの下端までの高さとして定義される。
【0036】
「HSP」は、血清又は血漿部分の高さであり、ゲルセパレータが使用されていない場合、沈降血液部分の上端から血清又は血漿部分の上端までの高さ、すなわち、LAからSBまでの高さと定義される。
【0037】
「HSP」は、血清又は血漿部分の高さであり、ゲルセパレータが使用されている場合(図2B)、血清又は血漿部分の上端LAからゲルセパレータの上端SGまでの高さ、すなわち、LAからSGまでの高さとして定義される。
【0038】
「HSB」は、沈降血液部分の高さであり、ゲルセパレータが使用されていない場合、沈降血液部分の下端から沈降血液部分の上端SBまでの高さとして定義される。
【0039】
「HSB」は、沈降血液部分の高さであり、ゲルセパレータが使用されている場合、沈降血液部分の下端からゲルセパレータの下端BGまでの高さとして定義される。
【0040】
「HTOT」は、検体の全高であり、ゲルセパレータが使用されていない場合、HSP+HSBに等しい。
【0041】
「HTOT」は、検体の全高であり、ゲルセパレータが使用されている場合、HSP+HSB+ゲルセパレータの高さに等しい。
【0042】
「Tw」は、検体容器の壁厚である。
【0043】
「W」は、検体容器の外径である。
【0044】
「Wi」は、検体容器の内径である。
【0045】
「キャリア」は、例えばラボラトリーオートメーションシステム(LAS)において検体容器を保持し搬送するように構成された装置である。
【0046】
「VSP」は、検体容器中の血清又は血漿部分の量(ボリューム)である。
【0047】
「VSB」は、検体容器中の沈降血液部分の量(ボリューム)である。
【0048】
ここで使用する「溶血指数」は、血清又は血漿部分に存在する溶血の判定された含有量(程度又は量)に基づいて検体に与えられる等級を意味する。
【0049】
ここで使用する「黄疸指数」は、血清又は血漿部分に存在する黄疸の判定された含有量(程度又は量)に基づいて検体に与えられる等級を意味する。
【0050】
ここで使用する「脂血指数」は、血清又は血漿部分に存在する脂血の判定された含有量(程度又は量)に基づいて血清又は血漿部分に与えられる等級を意味する。
【0051】
上述のように、血清又は血漿部分における1つ以上の干渉物(HIL)の存在は、1つ以上の分析装置によるその後の検査(例えば、臨床化学又は分析検査)の結果の解釈に影響する。したがって、1つ以上の分析装置による分析の前にHILNを事前スクリーニングする能力は、分析に不適切な品質の検体を分析してしまう無駄な時間を最小限に抑えることができる利点をもつ。さらに、一実施形態において、H、I、Lのいずれか1つ以上が見つかった事前スクリーニングの後に、是正処置を行うことができる。
【0052】
本実施形態の検体は、採血管などの検体容器に収集され、分画(例えば、遠心分離による分離)後に、沈降血液部分と血清及び血漿部分とを含有する。小さなゲルセパレータが使用されている検体容器もあり、当該ゲルセパレータは、遠心分離に際し沈降血液部分と血清又は血漿部分との間に位置する。ゲルセパレータは、2つの部分(液体及び半固体の沈降血球)の間の物理的障壁として働き、それらの再混合を最小限に抑えることができる。検体容器はサイズの異なることがあり、したがって、多くの異なる形態で分析装置に供給されることがある。例えば、検体容器は、13mm×75mm、13mm×100mm、16mm×100mm、16mm×125mmなどのサイズをもつ。他の適切なサイズも使用される。
【0053】
一実施形態において、本評価方法は、ラベルの評価、すなわち、ラベルによって閉塞された血清又は血漿部分の評価を改善する。改良されたラベルの評価は、バックライトがラベルによって妨害される領域における血清又は血漿部分の分類を改善するべく使用され、これにより、干渉物検出及び定量化法の結果を改善する。改良された評価方法は、ラベル外乱/閉塞に基づいて光強度の変化を補償するために分類器をより良く誘導するのに役立つ統合表現を提供する。
【0054】
本実施形態の評価及び干渉物検出方法は、事前スクリーニングの一部として、すなわち、分析装置(例えば、臨床化学又はアッセイ機器)で分析を行う前に行うことができる。干渉物検出方法は、ここに説明するように、H、I、Lか、又はNを検出するために有用である。本干渉物検出方法は、一実施形態において、検体容器及び血清又は血漿部分のハイダイナミックレンジ(HDR)画像処理を使用して、干渉物(H、I、L、又はN)の存在を判定する。一実施形態において、血清又は血漿部分及びラベル含有領域の物理的境界の同定は、HDR画像処理を使用することによるセグメンテーションプロセスで行うこともできる。
【0055】
1つ以上の実施形態において、品質チェックモジュールが評価方法を実行するように構成される。品質チェックモジュールは、ロボット機構(例えば、トラック又はグリッパーフィンガーロボット)が検体容器に入った検体を品質チェックモジュールへ容易に搬送できる適切な区域に提供される。一実施形態において、品質チェックモジュールは、検体検査装置のトラック中又はトラックに沿って提供され、この場合のトラックは、検体の事前スクリーニングが正常(N)の判定であった場合、分析装置での分析(例えば、臨床化学検査又はアッセイ)のために、検体を離れた位置へ搬送する。一実施形態において、品質チェックモジュールは、トラックに滞在している間に検体を評価し、干渉物の存在について検査することができるように、トラックに直接設けられる。
【0056】
一実施形態において、検体容器は、検体容器ホルダ(「ホルダ」ともいう)によって直立姿勢で保持される。ホルダは、画像データの取得中に検体容器を保持するフィンガー又は他の適切なパーツを含む。
【0057】
一実施形態において、取得した画像データは、アーチファクト検出(例えば、血清又は血漿部分中の凝血塊、気泡、又は発泡の検出)などの他の目的のためにも使用され得る。場合によっては、アーチファクトを含むことが分かった画素は、アーチファクト位置及びその範囲が分かっているので、処理されたセグメンテーションデータに基づいてHILNの判定を実行する際に単に無視され得る。
【0058】
検体がH、I、Lのうちの1つ以上を含むことが見出された場合、オペレータに通知され、これに加えて又はこれとは別に、H、I、Lのさらなる定量化のためにH、I、又はLのうちの1つ以上を是正する改善処置を実行すべくオフラインにされ、存在する干渉物の程度をより正確に測定し、再吸引する、別の容器へ移送する、又は他の処理を行う。
【0059】
検体のHILN評価が疑わしい(例えば、ラベルが多すぎる)と判断されるほどに検体容器がラベルによって閉塞されていると評価方法で判定した場合、検体を取り出すか、又は別の検体容器に移して再度事前スクリーニングすることができるように、オペレータに通知(警報、信号、又は他の任意フラグ)することができる。
【0060】
本実施形態に係る評価方法は、画像ベース、すなわち、画素化画像(例えば、デジタル画像)に基づく。画像は、複数の視点から画像を取得するように配置される複数の画像取得装置によって得る。複数の画像は、品質チェックモジュールで取得され、異なる公称波長をもつ複数のスペクトルで照明しつつ、複数の露光時間で取得される。照明の複数のスペクトルは、例えば、赤、緑、青、白、赤外線、及び近赤外線とする。照明は、バックライト照明(画像取得装置が片側にあり、バックライト光源が検体容器を挟んで反対側にある)を含む。露光時間は、使用される照明強度及びスペクトルと、画像取得装置の特性に基づいて変えることができる。スペクトル及び画像取得装置ごとに複数の露光時間を使用することができる。
【0061】
特定のスペクトル(異なる露光時間)における複数の取得画像の各対応する画素について、最適な画像強度を示す画素を選択する。結果として、異なるスペクトル(例えば、赤、緑、青、白、赤外、近赤外)ごとに複数の統合カラー画像データセットが得られ、該データセットでは全ての画素に最適露光が適用されている(例えば、スペクトルごとに1つの画像データセット)。統合カラー画像データセットからのデータを統計分析の対象として、その各画素に関する統計データ(例えば、平均、標準偏差、及び共分散行列)を判定する。共分散は、2つ以上のカラー画素が一緒に変化する程度の尺度である。この統計データは、1つ以上のデータ行列の様式で、画像データセットを所定のクラスにセグメント化するために、複数クラスの分類器によって操作することができる(「セグメンテーション」ともいう)。
【0062】
セグメンテーションは、画像中の血清又は血漿部分の領域の境界と共に、他の領域(例えば、ラベル、沈降血液部分、ゲルセパレータ、管、キャップ、ホルダ、空気の1つ以上)のクラスを判定して同定する。複数クラスの分類器は、複数のトレーニングセットから事前に訓練された、サポートベクターマシン(SVM)又はランダム決定木である。他の種類のセグメンテーションも利用可能である。Matlab、各種のC++ツール、又はクラウドベースのプログラムなど、分類及び訓練タスクによるセグメンテーションには、適切なプログラム又はツールボックスを使用することができる。
【0063】
血清又は血漿部分を含む領域及びラベル含有領域が適切に同定されれば、本評価方法の一部として統合表現を生成することができる。その後、干渉物の存在(例えば、H、I、Lの1つ以上)又は正常(N)を直接同定して分類するために、1つ以上の干渉物分類器を使用する。1つ以上の干渉物分類器は、各画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)をそれぞれH、I、又はL、又はNとして分類することができる個別に訓練された2値モデルとすることができる。他の実施形態では、干渉物分類器は、複数クラス分類器である。干渉物分類器モデルは、それぞれサポートベクターマシン(SVM)又はランダム決定木でもあるが、他の適切な分類器を使用してもよい。
【0064】
複数の視点からの画像を使用することによって、血清又は血漿部分の十分な領域が視認できて閉塞されていなければ、HILNの適切な評価に関して満足のいく結果を提供することができるが、発明者は、検体容器に1つ以上のラベルがあると、取得画像の強度値が影響を受けることを知見した。例えば、1つの視点から見て、ラベルが検体容器の背面に位置する場合、該ラベルの存在は、血清又は血漿部分を透過するバックライトを遮り、該視点において画像取得装置により測定される画像強度に影響を及ぼす。本実施形態は、当該ラベルの存在を考慮し、血清又は血漿部分に関する画像強度のより良好でより正確な評価を提供する。この改善された評価から、HILNのより正確な判定が提供される。
【0065】
さらに、より正確な評価に基づいて、干渉物タイプに関する干渉レベルの改善された判定もまた、選択的に提供される。干渉レベルは、例えば、1つ以上の追加のモデル(例えば、1つ以上の回帰モデル)に基づく。回帰モデルは、多様な干渉レベルを示すサンプル検体に基づいて、干渉物タイプごとに訓練することができる。2つ以上の干渉物タイプがこの方法によって判定され、干渉物タイプごとに干渉指数を特定し得る。
【0066】
本実施形態の評価方法、この評価方法を実行するように構成された品質チェックモジュール、1つ以上の品質チェックモジュールを有する検体検査装置の詳細について、図1図7を参照してさらに説明する。
【0067】
図1は、多数の検体容器102(例えば、図2A図3E参照)を自動的に処理することができる検体検査装置100を示す。検体容器102は、1つ以上の分析装置(例えば、検体検査装置100の周囲に配置された第1、第2、第3の分析装置106,108,110)へ搬送されそこで分析される前に、装填区域105において1つ以上のラック104に収容される。より多数の又はより少数の分析装置を使用することもできる。分析装置は、臨床化学分析装置やアッセイ機器などの組み合わせであってもよい。検体容器102は、検体212を収容し撮像することができる、採血管、検査管、サンプルカップ、キュベット、又は他の透明か不透明のガラス又はプラスチック容器など、適切な透明又は半透明の容器とすることができる。検体容器102のサイズは様々であってよい。
【0068】
自動的に事前スクリーニングされ、次いで処理される検体212(図2A~3E)は、キャップ214で蓋をされる検体容器102に入れられて検体検査装置100に提供される。キャップ214は、異なる形状と色(例えば、赤、ロイヤルブルー、ライトブルー、青、灰色、黄褐色、黄色、又は色の組み合わせ)のどちらか又は両方を備え、検体容器102に適用される検査、容器がゲルセパレータを含むかどうか、容器中に含まれる添加剤のタイプなどに関して提示する。他の色を使用してもよい。
【0069】
検体容器102の各々には、検体検査装置100に沿った様々な位置で機械読み取り可能なバーコード、アルファベット、数字、又はそれらの組み合せわなどの識別情報218i(すなわち、標識)を含むラベル218が提供される。機械読み取り可能な情報は、容易に画像化されるように、ラベル材料(例えば、白紙)よりも暗い(例えば、黒)。識別情報218iは、例えば、患者の識別と検体212に実施される検査、又は他の情報を示すか、あるいは、ラボラトリーインフォメーションシステム(LIS)147を介してそれらと相関する。この識別情報218iは、管215の外面に貼り付けたラベル218で提供される。ラベル218は、検体容器102の全周又は検体容器102の全長にわたって延在するものではない。しかしながら、複数のラベル218A,218B,218Cが(検体容器102を取り扱った複数の施設で)貼り付けられることがあり、ある程度重なっていることがある。例えば、図3Bに示される実施形態においては、2つのラベル(例えば、ラベル218A,218B)が少なくとも1つの視点で重なり、該視点を閉塞している。図3Cに示される実施形態では、3つ以上のラベル(例えば、ラベル218A~218C)が互いの上に又は互いに重なり合って、又はその両方で提供されており、2つ以上の視点、あるいは側方視点の全てを遮蔽している。
【0070】
一実施形態において、ラベル218が検体212の一部を閉塞する一方、検体212の他の部分と共に血清及び血漿部分212SPは、少なくとも1つの視点から見ることができる(図2A及び図2Bを参照)。他方、他の実施形態において、ラベル218は、2つの視点を閉塞するように、又はいずれの側面方向からも視野を妨害して検体212の血清又は血漿部分212SPを完全に閉塞するように、検体容器102の周囲を完全に又は全体的に囲繞する。この完全閉塞の場合と、血清又は血漿部分212SPのごく一部のみを1つの視点で見ることしかできない場合は、本実施形態により、血清又は血漿部分212SPの改善された評価が提供される場合である。ただし、本評価方法は、たとえ1つの視点のみが1つ以上のラベルによって不明瞭である場合であっても、評価を改善する。
【0071】
再び図2Aを参照すると、検体212は、管215に入った血清又は血漿部分212SPと沈降血液部分212SBとを含有する。空気216が血清及び血漿部分212SPの上方に存在し、その間の境界線が液体-空気界面LAとして定義される。血清又は血漿部分212SPと沈降血液部分212SBとの間の境界線を血清-血液界面SBと定義する。空気216とキャップ214との間の界面は管-キャップ界面TCとして定義される。管の高さHTは、管215の下端からキャップ214の下端までの高さであり、管のサイズを判定するために使用される。血清又は血漿部分212SPの高さはHSPであり、沈降血液部分212SBの上端SBから血清又は血漿部分212SPの上端LAまでの高さとして定義される。沈降血液部分212SBの高さはHSBであり、沈降血液部分212SBの下端から沈降血液部分212SBの上端SBまでの高さとして定義され、検体212の全高HTOTは、HSP+HSBに等しい。
【0072】
ゲルセパレータ313が使用される場合(図2B)、血清又は血漿部分212SPの高さHSPは、血清又は血漿部分212SPの上端LAからゲルセパレータ313の上端SGまでの高さ、すなわち、LAからSGまでの高さとして定義される。沈降血液部分212SBの高さHSBは、沈降血液部分212SBの下端からゲルセパレータ313の下端BGまでの高さとして定義される。検体212の総高さHTOTは、HSP+HSB+ゲルセパレータ313の高さに等しい。いずれの場合も、Twは壁の厚さであり、Wは管のサイズを判定するために使用できる外径であり、Wiは検体容器102の内径である。
【0073】
より詳細に、検体検査装置100は、トラック121を搭載する基盤120(例えば、フレーム、床、又は他の構造)を含む。トラック121は、レールトラック(例えば、モノレール又は複軌条)、コンベヤベルトの集合体、コンベヤチェーン、可動プラットフォーム、又は他の適切なタイプの搬送機構である。トラック121は、円形又は他の適切な形状で、一実施形態では、閉鎖トラック(例えば、無限軌道)である。稼働中のトラック121は、キャリア122内の検体容器102の各々を、トラック121に沿って離れた位置へ搬送する。
【0074】
キャリア122は、トラック121に沿って1つの検体容器102を搬送するように構成される、モータのない受動パックであるか、又は、トラック121に沿って移動し、事前にプログラムされた位置で停止するようにプログラムされたリニアモータなどのオンボード駆動モータを含む自動式キャリアである。キャリア122のそれぞれは、検体容器102を規定された直立姿勢及び向きで保持するように構成されたホルダ122H(図3A)を有する。ホルダ122Hは、検体容器102をキャリア122に固定するものであって、異なるサイズの検体容器102を収容するために可動又は可撓性とした複数のフィンガー又は板バネを含む。一実施形態において、キャリア122は、1つ以上のラック104から取り出された後に装填区域105から離れていく。一実施形態において、装填区域105は、分析が完了した後に、キャリア122から装填区域105へ検体容器102を再装填することも可能にするという二重の機能を果たす。
【0075】
ロボット124が装填区域105に設けられ、1つ以上のラック104から検体容器102を把持し、該検体容器102を、例えばトラック121の投入レーンにあるキャリア122に装填するように構成される。ロボット124はまた、検査の完了後に、キャリア122から1つ以上のラック104に検体容器102を再装填するように構成される。ロボット124は、X(横方向)-Z(垂直)、Y-Z、X-Y-Z、又はr(半径方向)-θ(回転)の運動が可能な1つ以上(例えば、少なくとも2つ)のロボットアーム又は構成要素を含む。ロボット124は、ガントリロボット、関節ロボット、R-シータロボット、又は他の適切なロボットであり、ロボット124は、検体容器102をピックアップして配置するように方向付けられ、サイズ決定され、構成されたロボットグリッパフィンガーを備える。
【0076】
トラック121に投入されると、キャリア122によって搬送される検体容器102は、第1の前処理ステーション125に進む。例えば、第1の前処理ステーション125は、検体212の分画を行うように構成された自動遠心分離機である。検体容器102を運ぶキャリア122は、流入レーン又は他の適切なロボットによって、第1の前処理ステーション125へ方向転換する。遠心分離後、検体容器102は、流出レーンから出ていくか、又はロボットによって取り出され、トラック121に沿って搬送が継続される。図示の実施形態では、キャリア122内の検体容器102は、次に、図4A及び図4Bを参照して説明する品質チェックモジュール130へ搬送される。
【0077】
品質チェック・モジュール130は、事前スクリーニングを行って本実施形態に係る評価方法を実行するように構成され、検体212に含まれるH、I、Lのいずれかの存在と場合によってはその程度、又はNを自動的に判定するように構成され、正常(N)とみなせる程度に十分に少量のH、I、Lしか含有しないことが分かった場合、該検体212は、トラック121で引き続き搬送され、1つ以上の分析装置(例えば、第1、第2、第3の分析装置106,108,110)によって分析される。分析後、検体容器102は、1つ以上のラック104に再装填するために、装填区域105へ戻される。一実施形態において、検体212は、品質チェックモジュール130においてアーチファクト(例えば、凝血塊、気泡、又は発泡)の存在についても検査される。アーチファクトの存在に関する検査は、2016年1月28日出願の米国仮特許出願62/288,358「Methods And Apparatus For Classifying An Artifact In a Specimen」に開示されるとおりである。
【0078】
一実施形態において、HILN検出に加えて検体212の定量化を、品質チェックモジュール130で行うことができる(すなわち、HSP、HSB、HTOTの判定と、SB又はSGとLAの位置の判定)。一実施形態において、検体容器102の物理的属性(例えば、サイズ)の評価を品質チェックモジュール130で行うことができる。該評価は、HT及びWを判定することを含み、また、キャップの色、キャップのタイプ、TC、Wiのいずれか1つ以上を判定することもできる。この特性から検体容器のサイズを抽出することができる。サイズは、以下に説明される参照ラベル形態データベースへのインデクサの一部として使用される。
【0079】
一実施形態において、遠隔ステーション132が検体検査装置100に提供され、この遠隔ステーション132は、トラック121に直接連結されていない。例えば、独立したロボット133(破線で示す)が、検体212を含む検体容器102を遠隔ステーション132へ運び、検査/前処理後にそれらを戻す。場合によっては、検体容器102は、手動で取り出して戻すこともできる。遠隔ステーション132は、溶血レベルなどの特定の成分について検査するために使用されるか、又は、例えば1つ以上の添加物とさらなる処理のどちらか又は両方によって脂血レベルを低下させるため、あるいは、凝血塊、気泡、発泡を除去するためなど、別処理に使用される。本実施形態に係る評価方法とHILN検出方法のどちらか又は両方を使用する事前スクリーニングを含む他の検査又は処理が、遠隔ステーション132で実行可能とされる。
【0080】
他の遠隔ステーションを、トラック121に又はこれに沿って1つ以上の位置に設けることができる。追加のステーションは、デキャッピングステーション、1つ以上の追加の品質チェックモジュール130などを含む。
【0081】
検体検査装置100は、トラック121を取り巻く1つ以上の位置に、多数のセンサ116を含む。センサ116は、検体容器102に付された識別情報218i又はキャリア122にある類似の情報(図示せず)を読み取ることによって、トラック121に沿った検体容器102の位置を検出するために使用される。一実施形態において、例えば個別のRFIDチップを各キャリア122に埋め込むことができ、既存のRFIDリーダシステムを追跡動作で使用することができる。位置を追跡する他の手段、例えば近接センサなどを使用してもよい。センサ116の全ては、各検体容器102の位置を常に適切に知ることができるように、コンピュータ143と接続する。
【0082】
第1の前処理ステーション125及び分析装置106,108,110のそれぞれは、キャリア122をトラック121から取り出すように構成されたロボット機構や流入レーン、そして、キャリア122をトラック121へ戻すように構成されたロボット機構や流出レーンを装備する。
【0083】
検体検査装置100は、マイクロプロセッサベースの中央処理ユニットCPUであるコンピュータ143によって制御され、コンピュータ143は、様々なシステムコンポーネントを作動させるために適切なメモリと適切な調整用電子機器及びドライバを有する。コンピュータ143は、検体検査装置100の基盤120の一部として、又はこれとは別に収容される。コンピュータ143は、キャリア122の、装填区域105に対する移動、トラック121に沿った移動、第1の前処理ステーション125への移動及び第1の前処理ステーション125からの移動と第1の前処理ステーション125の動作(例えば、遠心分離機)、品質チェックモジュールに対する移動と品質チェックモジュール130の動作、そして、各分析装置106,108,110への移動及び各分析装置106,108,110からの移動と種々のタイプの検査(例えば、アッセイ又は臨床化学)を実行するための各分析装置106,108,110の動作を制御するように作動する。
【0084】
品質チェックモジュール130を除く他の全てについて、コンピュータ143は、ニューヨーク州タリタウンのSiemens Healthcare Diagnostics Inc.によって販売されているDimension(登録商標)臨床化学分析装置で使用されるものなどのソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアコマンド又は回路、これらの組み合わせに従って、検体検査装置100を制御する。当該制御は、コンピュータベースの電子機械制御プログラミングの当業者には典型的なものであり、ここではこれ以上詳しくは説明しない。他の適切な装置を使用して検体検査装置100を制御してもよい。ここに説明する本実施形態の方法に従う品質チェックモジュール130の制御もコンピュータ143によって行うことができる。
【0085】
本実施形態は、ユーザが様々な制御及び状態表示画面に容易且つ迅速にアクセスできるようにコンピュータインターフェースモジュール(CIM)145を使用して実施される。これら制御及び状態表示画面で、検体212の調製及び分析に使用される複数の相互に関係する自動化装置のいくつか又は全ての様子を示すことができる。CIM145を採用して複数の相互に関係する自動化装置の作動状態についての情報を提供することもでき、また、検体212の位置を記述する情報及び検体212に実施すべき又は実施中の検査の状態を記述する情報を提供することもできる。CIM145は、オペレータと検体検査装置100との間の相互作用を容易にするように構成される。CIM145は、オペレータが検体検査装置100とインターフェースするためのアイコン、スクロールバー、ボックス、及びボタンを含むメニューを表示するように構成された表示画面を含む。メニューは、検体検査装置100の機能的な態様を表示するようにプログラムされた多数の機能ボタンを含んでいる。
【0086】
図4A図4Bを参照すると、品質チェックモジュール130の実施形態が示されている。品質チェックモジュール130は、本実施形態に係る評価方法を実行するように構成され、また、1つ以上の分析装置106,108,110による分析の前に、検体212(例えば、その血清又は血漿部分212SP)中の干渉物(例えば、H、I、Lのいずれか1つ以上)の存在を自動的に判定するために使用される。本方法における事前スクリーニングは、貴重な分析装置資源を無駄にすることなく、又は場合によっては検査結果の信憑性に影響を及ぼす干渉物が存在する、検体212のさらなる処理、さらなる定量化又は評価、廃棄、又は再吸引を可能にする。
【0087】
本実施形態に係る評価方法及び干渉物検出方法に加えて、他の検出方法も、検体容器102に入っている検体212に対し、品質チェックモジュール130で行われ得る。例えば、品質チェックモジュール130において、検体212を定量化するために、すなわち、検体212の特定の物理的寸法属性を判定(例えば、LAとSBや、HSP、HSB、HTOTのいずれかの判定)するための方法を実行することができる。この定量化は、例えば、血清又は血漿部分の量VSPと沈降血液部分の量VSBのどちらか又は両方を推定することも含む。
【0088】
さらに、品質チェックモジュール130は、検体容器102の幾何学的形状を定量化する、すなわち、検体容器102のTC、HT、W又はWiのいずれかの位置、さらにはキャップ214の色やタイプなど、検体容器102の特定の物理的寸法属性を定量化するために使用され得る。
【0089】
図1図4A及び図4Bを参照すると、品質チェックモジュール130の実施形態は、複数の画像取得装置440A~440Cを含む。3つの画像取得装置440A~440Cが図示されているが、2つ又は4つ以上を使用することもできる。画像取得装置440A~440Cは、画素化画像を取得することができる既存のデジタルカメラ、電荷結合素子(CCD)、光検出器アレイ、1つ以上のCMOSセンサなど、明瞭に画定されたデジタル画像を取得するための適切なデバイスとすることができる。例えば、3つの画像取得装置440A,440B,440Cが図4Aに示されており、3つの異なる側方視点から画像を取得するように構成されている。一例としてd画像サイズは、2560×694画素程度であある。他の例では、画像取得装置440A,440B,440Cは、1280×387画素の画像サイズを取得する。他の画像サイズ及び画素密度を使用してもよい。
【0090】
各画像取得装置440A,440B,440Cは、検体容器102の少なくとも一部と検体212の少なくとも一部の側方画像を取得するように構成される。例えば、画像取得装置440A~440Cは、ラベル218の一部と血清又は血漿部分212SPの一部又は全部とを取得する(ラベル218によって部分的に又は完全に閉塞されている場合でも)ことができる。画像取得装置440A~440Cはまた、キャップ214の一部又は全てと管215の一部又は全てとを取得することもできる。最終的に、複数の画像から、検体容器102の検体212の複合モデルを展開することができる。複合モデルは、一実施形態において3Dセマンティックモデルであり、検体212に関する最終判定を行うために使用される。本実施形態において、セマンティックデータは、透過光に影響を及ぼし得るラベル218の存在を考慮するか又はそれを補償するために使用される。セマンティックモデルは任意選択であり、評価は、1つ以上の視点から得られた画像データのみを使用して行われ得ることは明らかである。
【0091】
図示の実施形態では、複数の画像取得装置440A,440B,440Cが検体212の周囲に配置され、複数の視点から撮像位置432にある検体容器102及び検体212の側方画像を取得するように構成される。視点は、3つの画像取得装置440A,440B,440Cを使用する場合、例えば互いに120度など、図示のように互いにほぼ等しく間隔を置くように配置される。図示の画像取得装置440A,440B,440Cはトラック121の周囲に配置されている。複数の画像取得装置440A,440B,440Cについて他の構成も使用され得る。この構造により、キャリア122内にある検体容器102の検体212の画像を撮像する。画像取得装置440A,440B,440Cによって得られる複数の画像の視野は、円周方向にわずかに重なり合う。
【0092】
一実施形態において、キャリア122は、品質チェックモジュール130内の所定の位置、例えば撮像位置432、すなわち、画像取得装置440A,440B,440Cの各々からの法線ベクトルが互いに交差する点で停止する。ゲート又はキャリア122のリニアモータが、撮像位置432にキャリア122を停止させるために提供され、当該位置で複数の品質の画像が取得される。品質チェックモジュール130にゲートがある実施形態では、(センサ116のような)1つ以上のセンサを使用して、品質チェックモジュール130におけるキャリア122の存在を判別する。
【0093】
画像取得装置440A,440B,440Cは、撮像位置432に近接して提供され、撮像位置432において画像ウィンドウを捕捉するように訓練するか又は焦点を合わせる。画像ウィンドウは、検体容器102の予定位置を含む領域である。検体容器102は、その視野ウィンドウのほぼ中央に位置するように停止する。取得された画像に1つ以上の参照データが存在してもよい。参照データは、検体212の定量化を助ける。参照データは、TC又は管215の下端、あるいは、例えば少なくとも1つの視点又は全ての視点から見える検体容器102の既知の位置に置かれたマークである。
【0094】
稼働中に各画像は、コンピュータ143から通信線443A,443B,443Cを通し送信されるトリガ信号に応答して取得開始される。取得された画像の各々は、本実施形態において説明する方法のいずれかに従って処理される。特に有効な方法の1つは、ハイデータレート(HDR)処理を用いて画像を取得し処理することである。他の撮像処理方法を用いてもよいのは当然である。
【0095】
より詳細に、一実施形態において、1つ以上の異なるスペクトルで照明されている間に、複数の異なる露光時間で、品質チェックモジュール130において検体212の複数の画像が取得される。例えば、各画像取得装置440A,440B,440Cは、1つ以上のスペクトルのそれぞれにおいて異なる露光時間で、4~8枚の画像を取得する。
【0096】
一実施形態において、複数のスペクトル画像は、異なるスペクトル照明を放射するそれぞれの光源444A~444Cを使用して達成される。光源444A~444Cは、検体容器102(図示)をバックライトで照らす。一実施形態において、光源444A~444Cと併せて光ディフューザを使用することができる。複数の異なるスペクトル光源444A~444Cは、634nm±35nm(赤色)、537nm±35nm(緑)、及び455nm±35nm(青)の公称波長などの2つ以上の異なるスペクトルを発するLEDなどのRGB光源である。他の実施形態では、光源444A~444Cは、700nm~1200nm程度の公称波長を有する1つ以上のスペクトルを発する。他の実施形態では、光源444A~444Cは、白色光源である。ラベル218が複数の視点を遮る場合、IRバックライト又は近IRバックライトを使用することができる。複数のラベル(図3D及び図3E参照)が血清又は血漿部分212SP全体を遮る場合、光源444A~444Cを赤外線又は近赤外線光源とすることで、ラベル218A,218Cを通してでも血清又は血漿部分212SPに関する適切なセグメンテーション情報が生成され得る。
【0097】
一つの非限定的な例として、第1の波長で画像を取得するために、3つの赤色光源(634nm±35nm程度の波長)を使用して、3つの側方位置から検体212を照射することができる。光源444A~444Cによる赤色照明で、異なる露光時間における複数の画像(例えば、4~8枚以上の画像)が、各画像取得装置440A~440Cによって取得される。一実施形態において、露光時間は、0.1ms~256msほどの間である。他の露光時間を使用してもよい。一実施形態では、各画像取得装置440A~440Cの画像は、それぞれ、例えば連続的に撮像される。
【0098】
一実施形態において、品質チェックモジュール130は、外部照明の影響を最小限に抑えるためにトラック121を少なくとも部分的に取り囲むか又は覆うハウジング446を含む。検体容器102は、撮像シーケンスの間、ハウジング446の内側に位置する。ハウジング446は、キャリア122がハウジング446に出入りできるように、1つ以上のドア446Dをもつ。一実施形態では、天井は、上方から移動可能なロボットフィンガーを含むロボットによって検体容器102をキャリア122へ装填できるように、開口4460を含む。
【0099】
赤色照明による画像が図4A図4Bの実施形態において取得されると、別の光スペクトル、例えば、緑色スペクトル光源444A~444C(±35nmほどの帯域幅をもつ537nm程度の公称波長)をオンにし、異なる露光時間で複数の画像(例えば、4~8枚以上の画像)を各画像取得装置440A,440B,440Cによって連続的に取得する。同じことを、青色スペクトル光源444A~444C(455nm程度の公称波長で±35nmほどの帯域幅)を用いて、各画像取得装置440A,440B,440Cについて繰り返す。複数の公称波長スペクトル光源444A~444Cは、例えば、選択的にオン及びオフに切り替えることができる複数のスペクトル光源のバンクを含む光パネルによって達成可能である。他のバックライト照明手段も使用可能である。
【0100】
波長スペクトルごとに複数の露光時間で取得した複数の画像は、複数の視点からの検体212の画像の集合全体が、例えば数秒未満で得られるように、迅速に連続して得ることができる。一例では、画像取得装置440A,440B,440C及びRGB光源444A~444Cによるバックライト照明を使用する3つの視点において波長ごとに4種の露光とすると、4画像×3スペクトルx3カメラ=36画像をもたらす。別の例において、画像取得装置440A,440B,440CとR、G、B、W、IR及びNIR光源444A~444Cによるバックライト背面照明を使用する3つの視点で波長ごとに4種の露光とすると、4画像×6スペクトル×3カメラ=72画像をもたらす。
【0101】
訓練プロセスの一部として、参照画像を、検体212を含まないラベル付き検体容器102で取得することができる。参照画像は数千枚の規模とし、検体容器102にあり得るほぼ全てのラベル形態のサンプルをなす。
【0102】
本実施形態の評価方法に従って、画像データの処理では、例えば、波長スペクトル及び視点ごとに最適露光の画像データを生成するように、波長スペクトル及び画像取得装置440A~440Cごとに異なる露光時間の複数の取得画像から最適露光の画素を選択する。これを、ここでは「画像統合」と呼ぶ。各対応する画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)について、画像取得装置440A~440Cからの各画像ごとに最適な画像強度を示す画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を、視点ごとの異なる露光時間の画像のそれぞれから選択する。一実施形態において、最適画像強度は、所定の強度範囲(例えば、0~255のスケールで180~254の間)に入る画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)である。別の実施形態では、最適画像強度は、例えば0~255のスケールで16~254の間である。2つの画像の対応する位置における2つ以上の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)が最適露光と判定される場合、当該2つのうちの高い方が選択される。最適画像強度を示す選択画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)は、それぞれの露光時間によって正規化される。その結果、画像取得装置440A~440Cごとの照明スペクトル(例えば、R、G、B、白色光源、IR、近IRの1つ以上)に対する複数の正規化及び統合スペクトル画像データセットが得られ(例えば、スペクトルごとに1つの画像データセット)、その画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)のすべては最適露光である。
【0103】
最適露光の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を含む画像データセットごとに、検体212の血清又は血漿部分212SPとして分類される画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を同定するために評価プロセスが行われる。加えて、ラベル218に分類される画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)も分類される。血清又は血漿部分212SPの識別は、最適露光の画像データにおける各画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を分類することに基づく。ラベル含有領域を構成する血清又は血漿部分212SP及びラベル218の分類は、複数のトレーニングセットから生成された複数クラスの分類器の操作に基づく。複数クラスの分類器は、例えば、サポートベクターマシン(SVM)又はランダム決定木を備える。他の適切なプログラム又はツールボックスが、血清又は血漿部分212SP及びラベル含有領域618の程度を分類することによるセグメンテーションのために使用可能である。
【0104】
一実施形態において、分類を実行するために、上述のような第1の統計データが、画像取得装置440A~440Cごとに、異なるスペクトル(例えば、R、G、B、白色光源、IR、近IRの1つ以上)における最適露光の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)のそれぞれについて計算される。統計データは、例えば、二次までの平均値及び共分散を含む。計算された統計的属性が、オブジェクトクラスの特定の特性を符号化し、したがってクラスラベルを割り当てることによる複数のオブジェクトクラス間の識別のために使用される。生成されると統計データは、複数クラス分類器515に提示されて操作される。この分類器は、画像中の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を、1-血清又は血漿部分、2-沈降血液部分、3-管、4-空気、5-キャップ、6-ラベル、7-ホルダ、及び8-ゲルセパレータ(使用される場合)などの複数のクラスのうちの1つに属するものとして分類する。これから、液体領域(すなわち、血清及び血漿部分212SP)及びラベル218を含むラベル含有領域を構成する画素(又はスーパーピクセル)を同定することができる。ラベル含有領域は、例えば、ラベル218、又は複数のラベル218A,218B、又は複数のラベル218A,218B,218Cを含むものとして識別される領域である。
【0105】
複数クラス分類器515は、線形又は非線形である適切なタイプの教師あり分類モデルとすることができる。例えば、複数クラス分類器515は、線形かカーネルベースのいずれかであるサポートベクターマシン(SVM)である。任意選択で、複数クラス分類器515は、適応型ブースティング分類器(例えば、AdaBoost、LogitBoostなど)、人工ニューラルネットワーク、ツリーベースの分類器(例えば、決定木、ランダムフォレスト)、及び分類器としてのロジスティック回帰などのブースティング分類器とすることができる。サポートベクターマシンSVMは、検体212の分析において見られるような、液体と非液体との間の分類に特に有効である。SVMは、データを分析してパターンを認識する関連する学習アルゴリズムを備えた教師あり学習モデルである。SVMは分類及び回帰分析に用いられる。
【0106】
訓練サンプルの複数のセットが複数クラス分類器515を訓練するために使用され、そして画像データセットが複数クラス分類器515によって操作され、各画素(又はスーパーピクセル)が分類される。複数クラス分類器515は、様々な検体条件、ラベル218による様々な程度の閉塞、ホルダ122Hによる閉塞、血清又は血漿部分212SP及び沈降血液部分212SBのレベルなどをもつ検体容器102の多数のサンプルにおける様々な領域の輪郭を描くことによって訓練される。500以上の画像を使用して複数クラス分類器515の訓練を行う。各訓練画像は、各クラスに属する領域を識別し、複数クラス分類器515に教えるために、手動で輪郭を描い得る。
【0107】
訓練アルゴリズムは、クラスのうちの1つに、撮像された新しい検体の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を割り当てる複数クラス分類器515を構築する。SVMモデルは、空間における点としてのサンプルを表し、その別々のクラスのサンプルは、可能な限り広い明確な隙間で分割されるようにマッピングさている。画像データセットからの新しい画素は、同じ空間にマッピングされ、ギャップのどの側面に位置するかに基づいて特定のクラスに属すると予測される。一実施形態において、SVMは、いわゆるカーネルトリック(例えば、カーネルベースのSVM分類器)を使用して非線形分類を効率的に行うことができ、その入力を高次元特徴空間に無条件にマッピングする。サポートベクターマシン及びブースティングが特に好ましい。他の種類の分類モデルを用いてもよい。
【0108】
ブロック516における画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)のクラス識別情報から、セマンティックマップを任意選択でブロック524において生成することができる。セマンティックマップは、コンピュータ143のデータベースに格納される3Dマップで、位置(例えば、検体容器102の半径方向及び軸方向の位置)に応じて、全ての分類(例えば、1-血清又は血漿部分、2-沈降血液部分、3-管、4-空気、5-キャップ、6-ラベル、7-ホルダ、及び8-ゲルセパレータ(使用される場合))を統合する。セマンティックマップは、一実施形態において、グラフィカル表示することができる。
【0109】
セマンティックマップから、ブロック525で合成視点を選択する。一実施形態において、合成視点は、画像取得装置440A~440Cを用いて画像を取得した視点の1つ(例えば、視点1~3)であり得る。別の実施形態では、合成視点は、画像取得装置440A~440Cによって画像を取得した複数の側方視点(例えば、図6Dに示される視点1~3)のいずれか2つの間にある別の視点(例えば、図6Dに示される視点4)である。合成視点は、血清又は血漿部分212SPとして分類された最大数の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を含む視点である。合成視点が、画像取得装置440A~440Cによって撮像を行った視点のうちの1つである場合、選択された合成視点は、血清又は血漿部分212SPとして分類される画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)の最大数を示す視点として選択される。
【0110】
場合によっては、2つの隣接する視点がそれぞれ、血清又は血漿部分212SPとして識別される隣接した画像部分に位置する画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)をいくつか含む。この場合、画像取得装置440A~440Cのある2つの視点の間に合成視点を選択し、各視点のセグメンテーションデータを集約して、各視点から血清又は血漿部分212SPに分類される領域を含む合成視点を構築する。このようにして、合成視点において血清又は血漿部分212SPを反映する各領域は、個々の視点のいずれかと比較して拡大される。したがって、以下のことから明らかなように、より多数の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)が分類されるので、HILNのより良い評価が実行される。
【0111】
ブロック525において合成視点が選択されると、ブロック526において、合成視点に対する正面視野データ及び背面視野データが識別される。背面視野データは、背面視野に関する分類及び対応する位置データである。背面視野データは、ブロック511のセグメンテーションの間に、ラベル218又は血清又は血漿部分212SPのいずれかとして分類された画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)に関するデータである。
【0112】
各視点における光源444A~444Cから検体容器102の背面へのバックライトは、背面に位置するラベル218の存在によって妨害され得るため、ラベル218を含む背面視野領域に対応する前面視野領域において画像取得装置440A~440Cによって取得される前面視野画像の強度が影響を受ける。したがって、これらの領域の強度は疑わしい(例えば、不自然に低い)可能性があり、HILN検出のためにそのまま直接使用するべきではなく、適切に調整し、補償するべきである。そこで、一実施形態において、本評価方法は背面視野データを考慮に入れる。
【0113】
当然ながら、読み取り値が疑わしいため、背面視野データを考慮に入れる1つのアプローチとして、HILN分類器529によってHILNを判定するときに、背面視野セマンティックデータにおいてラベル218として分類された領域について、前面視野セマンティックデータにおける対応する領域を使用しないことも採用し得る。一例として、図6Aに、画像取得装置440A(図6D)の第1の視点1からの前面セマンティック画像640Aを示す。図示のように、血清及び血漿部分212SPの一部が図6Aにおいて現れている一方、ラベル218によって遮られている部分もあり、光源444A(図4A)から放射されるバックライトの一部が、背面ラベル部分218B(すなわち、図6Aの検体容器102の背面視野の一部に位置して閉塞するラベル218の部分)によって遮られる。このとき、場合によっては、分析のために血清又は血漿部分212SPとして分類される領域がほとんど残らないことがある。
【0114】
図6Bは、画像取得装置440B(図6D)の第2の視点2からの前面セマンティック画像640Bを示す。図6Bでは、血清又は血漿部分212SPの一部がラベル218によって閉塞されており、光源444B(図6D)から放射されるバックライトの一部も、背面ラベル部分218B(すなわち、図6Bにおいて検体容器102の裏側に位置するラベル218の部分)によって遮られている。
【0115】
図6Cは、画像取得装置440C(図6D)の視点3からの前面セマンティック画像640Cを示す。図6Cにおいて、血清又は血漿部分212SPの全てがラベル218によって視点3から隠されている。この場合、評価方法のブロック525において、これら3つの視点(1,2,3)のうちの1つであるように合成視点を選択する場合、図6Bの第2の視点2が選択される。すなわち、図6Bに示されるように、当該視点は、ブロック524で生成されたセマンティックマップから又は個々の画像からのセマンティックデータから判定される、血清又は血漿部分212SPとして分類された最も多くの画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を有するためである。この場合、ラベルによって閉塞された血清又は血漿部分212SPの前面セマンティック画像640Bにおける対応する領域(点線で示される領域)は、以下に説明する評価方法によって強度調整される。当該合成視点は、3つの視点(1,2,3)の全てから収集され統合された強度データ、分類データ、及び位置データを含む背面視点のセマンティックマップ又は画像データを構築することによって判定される。言い換えれば、背面視野データが考慮される、すなわち、ラベル218の配置情報が既知であり、第2のセマンティック前面視界2の対応する領域を修正するために使用される。視点2Bからの仮想背面セマンティックマップ640Dを図6Eに示す。これは、視点2B(図6D)からの背面視野データを表し、視点2(図6B)からの正面視野セマンティック画像の中の点線部分を強度調整するために使用される。実際には、セマンティック背面視野マップ(図6Eのような)はなく、評価方法において使用される背面視野セマンティックデータだけが存在する。
【0116】
ブロック525で選択した合成視点が複数の視点(1~3)のうちの1つ以外の場合、他の2つの視点の集合である視点を選択することができる。例えば、図6Cの視点3が、ラベル218によって完全に閉塞された血清又は血漿部分212SPを有する場合、視点1と視点2との間にある視点が選択される。図6Fに示されるこの合成視点4は、合成正面視界である。これは、視点1及び視点2の編集物であり、したがって、血清又は血漿部分212SPとして分類される画素を(図示のとおり)約2倍の数有する、すなわち、血清又は血漿部分212SPとして分類されるより多くの領域が、分析のために利用可能である。上述のように、1つのアプローチでは、合成背面視点4Bからの対応する背面ラベル部分218B(図6Fに点線で示す)に関連するデータは、評価方法に従って強度を調整することができる。この場合、血清又は血漿部分212SP(2つの点線領域の間)として分類された残りの領域に対応するデータと点線領域の組み合わせ表示を、HILN分類器521に送ることができる。
【0117】
本実施形態に係る評価方法によると、特徴記述子は、ラベル評価517からの組み合わせ表現として提供される。例えば、組み合わせ表現の生成では、ラベル含有領域618のセグメンテーション511からの情報と、参照ラベル形態データベース522から抽出された情報とを入れることができる。参照ラベル形態データベース522は、検体を含んでいない(すなわち、空である)検体容器102の異なるラベル形態をもった多数の検体容器102に関する訓練フェーズで取得された数百又は数千の画像に関するデータを含む。訓練フェーズは、事前スクリーニングの前に品質チェックモジュール130において実行可能であり、検体容器102のサイズ及び異なるラベル形態ごとに、ホルダ122Hに保持した状態で異なる向き(回転の)とした多数の画像が提供される。
【0118】
例えば、参照画像の一部は、1枚のラベル218が付いた小さな検体容器102(例えば、13mm×75mm)を含む。訓練は、小/1枚ラベルの向きを含む多くの参照サンプルについて実行される。他の訓練例では、複数のラベル(218A,218Bや218A~218Cなど)と異なる管サイズを含む。その形態は、異なる数のラベル、異なる重なりの程度、及び異なる位置を含む。ラベルデータは、比較的大量のラベル形態データへのアクセス速度を改善するために、参照ラベル形態データベース522で適切に索引付けする。
【0119】
インデックスは、例えば、図6Gに示されるように、管サイズ624、ラベルサイズ625、ラベル位置626のいずれかなど、2つ以上のインデックスフィーチャ623を含む。より多数の又はさらに多くの種類のインデックスフィーチャも使用可能である。検体容器102の管サイズ624は、訓練プロセスの一貫として参照ラベル形態データベース522に入力され、訓練中に評価され得るW及びHT(図2A)と相関させる。任意選択で、管サイズ624は、訓練プロセス中に手動で入力することもできる。ラベルサイズ625は、参照ラベル形態データベース522に提供され、一実施形態では、図6Hに示されるように、ラベル含有領域618の水平面内で測定された半径方向スパンを定量化する弧角φとして評価することができる。このラベル含有領域618は、1枚のラベル218又は複数枚(2枚、3枚、それ以上)の重なったラベルを含み得る。図示の実施形態では、2つの重なり合ったラベルが示されている。例えば、ラベルサイズ625は、手動で、又は訓練中に行われるセグメンテーションプロセスの一部として、図示の例では約150度に等しい弧角φで、参照ラベル形態データベース522に入力される。検体容器102の周囲で測定された測定長など、ラベルサイズ625の他の指標を使用することもできる。
【0120】
ラベル位置626は、1つ以上の視点(例えば、視点1~3)がラベル含有領域618を含む場合にインデックスとして参照ラベル形態データベース522に入力される。例えば、図示の実施形態では、視点1,2,3からの画像データは全て、ラベルとして評価済みの画素を含み得る。多数の訓練サンプルのラベル位置626に関するデータは、手動で、又は訓練中に行われるセグメンテーションプロセスの一部として入力することができる。1枚のラベルは、1つの視点でのみ、又は場合によっては2つの視点で提供され得る。ラベル位置626の他のインデックスも使用可能である。また、参照ラベル形態データベース522のデータへのアクセスを改善するために、より多くのインデックスを使用することもできる。
【0121】
図5に示されるように、事前スクリーニング中、検体容器102及び検体212は、ブロック502において、品質チェックモジュール130に、特定のラベル形態を含んだ状態で特定の回転向きで提供される。ブロック504において、検体容器102及び検体212の画像が取得され、セグメンテーション511においてセグメント化される。ブロック516において識別された画素クラスから、ブロック516Aにおいてラベル含有領域618を識別する。ラベル含有領域618は、例えば、全体が1つの視点内に包含されていることも、複数の視点で識別されることもあり、又は3つの視点全てで識別されることもある。さらに、セグメンテーション511の結果から、ブロック518において1つ以上のインデックスフィーチャが評価(識別及び定量化)される。インデックスフィーチャは、例えば、上述のように、管サイズ、ラベルサイズ、及びラベル位置を含む。他の又はより多数の又はより少数のインデックスフィーチャも使用可能である。これらインデックスフィーチャの各々は、管215及びラベル218を含む画像データにおいて、管215及びラベル218のそれぞれの縁(エッジ)の画素位置間の差を見つけることによって定量化される。ブロック518において、インデックスフィーチャが識別され、定量化されると、インデクサ519によって、参照ラベル形態データベース522において、種々の選択インデックスに属するラベルサブデータが識別される。
【0122】
インデクサ519は、参照ラベル形態データベース522の索引付けされたラベルサブデータの検索に集中するように作動する。参照ラベル形態データベース522に保存されたこのラベルサブデータの集合は、ブロック516Aでその前に識別されているラベル含有領域618に関する画像データとコンパレータ(比較器)520を使用して比較される。コンパレータ520は、撮像データを比較する適切なプログラム又はスキームである。コンパレータ520による比較の結果、参照ラベル形態データベース522に保存されている多数の参照ラベル形態から1つの参照ラベル形態が識別され、選択される。選択された1つの参照ラベル形態は、ブロック516Aで同定されたラベル含有領域618に対する最適合致(最も近いラベル一致)521である。計算負荷をより低減するために、一実施形態では、最適合致521の判定は、参照ラベル形態データベース522の相対スケール(例えば、画素密度)と一致させるために、ラベル含有領域618のセグメンテーションデータのダウンスケーリングを含む。
【0123】
コンパレータ520は、適切なアルゴリズムを使用することで、ラベル含有領域618を、参照ラベル形態データベース522に保存されているラベル領域形態の集合に関するラベルサブデータと迅速に比較することができる。コンパレータ520は、画素ごと又はパッチごとの比較を行い、類似性の検出を補助するために、適切な重み付けフィーチャと是正フィーチャの1つ以上を含む。さらに、角部検出又は小塊検出アルゴリズムを使用することもできる。
【0124】
一実施形態では、ブロック524において、一緒に収集された各種視点からのデータの3D表現であるセマンティックマップが生成される。このデータは、各視点(例えば、視点1~3)間のセグメンテーションを改善するために、グラフィカル表示されるか、又は他の方法で使用される。ブロック525において、3つの視点1~3のうちの1つ、又は場合によっては視点1~3のうちのいずれか2つの間にある1つの合成視点が選択される。合成視点は、セグメンテーション511によって血清又は血漿部分212SPであると評価された最も大きな領域(最も多くのピクセル又はスーパーピクセル/パッチ)を有する視点(例えば、図6Fの視点4)である。
【0125】
これから、合成視点に沿った前面視野及び背面視野を識別することができ、ブロック526において、関連する前面視野及び背面視野セマンティックデータを識別することができる。正面視野データは、各画像取得装置440A~440Cに最も近い検体容器102の側面に関するデータであり、一方、背面視野データは、各光源444A~444Cに最も近い検体容器102の側面に関するデータである。
【0126】
ブロック521においてラベルの最適合致が見つかると、評価方法500は、ブロック523において統合表現を生成する。統合表現は、ラベル含有領域618のセグメンテーション情報及びラベルの最適合致に関するデータによって導かれる。統合表現の生成は、画素ごとの特徴記述子(場合によっては、血清又は血漿部分212SPの前面と背面のいずれか又はその両方にある遮蔽ラベル領域に対応する)の生成を含む。統合表現の生成は、画素ベース(又はスーパーピクセルベース)で、多数の参照ラベル形態から選択された参照ラベル形態に対するラベル含有領域618の差、比、又はそれらの連結を計算することを含む。ラベル218が前面視野又は背面視野を隠さない場合、ラベル含有領域(前面視野と背面視野のどちらか又は両方)の統合表現と、血清又は血漿部分212SPの評定/分類された特徴表現との評定が、評価方法及び最終HILN判定に用いられる。これらの表現は、ブロック527における血清又は血漿部分の全体表現として((もしあれば)閉塞部分及び非閉塞部分の両方)、干渉物評価器528に供給される。
【0127】
表現生成において、バーコードを含む領域が無視されることがある。バーコードデータ領域及びその位置は、セグメンテーション511と適切なバーコード読み取りアルゴリズムのいずれか又は両方に基づいて容易に判定することができる。当然ながら、バーコードデータは、上述のように、検体212の識別のために使用され得る。
【0128】
干渉物評価器528は、H、I、Lの1つ以上が血清又は血漿部分に存在するかどうかと、血清又は血漿部分212SPにHILが存在しない、つまり正常(N)であるかどうか、を識別するように構成される、HILN分類器529を含む。干渉物評価器528は、以下で説明するように、干渉物指数生成器530をさらに含む。したがって、事実上、干渉物分類器(例えば、HILN分類器529)は、セマンティックデータ及び供給された特徴表現に基づいて、干渉物が血清又は血漿部分212SPに存在するか、又はそこに存在しないかを分類するように作動する。さらに、干渉物評価器528は、検出された干渉物(H、I、L)の指数を判定する。一実施形態において、HILN分類器529は、溶血性を識別するように適応させた溶血性分類器529H、黄疸性を識別するように適応させた黄疸性分類器529I、脂血性を識別するように適応させた脂血性分類器529L、及び正常性を識別するように適応させた正常性分類器529Nなど、1つ以上異なる干渉物タイプ分類器として実施される。各分類器は、2進分類モデルであり得る。セマンティックデータに対する操作の結果は、血清又は血漿部分212SPにおける1つ以上の干渉物(H、I、L)の存在、又は干渉物(N)の欠如である。
【0129】
「溶血性検出」
広い態様に係る評価方法の実施形態では、検体容器102に含まれた遠心分離後の血液の検体212が溶血しているかどうかを検出するために使用され得る方法及び装置を対象とする。本方法は、複数の視点で複数の画像取得装置440A~440Cを使用し、複数の露光(例えば、4~8回以上の露光)及び複数のスペクトル照明(例えば、R、G、B、白色光源、IR、近IR)を利用して、複数の画素化スペクトル画像を取得する。次いで、視点に結びついた画像を分析し、操作して、セグメンテーションを提供し、上述のように血清又は血漿部分212SPを同定し、ラベル含有領域618を識別516Aし、ラベル含有領域の統合表現を生成523する。この統合表現は、セマンティックデータと、セグメンテーションによって識別されたラベル含有領域618に対する最適合致の参照ラベル形態データベース522からの参照ラベルデータを使用することから得られる。このデータがHILN分類器529によってブロック529Hでさらに操作され、溶血指数の異なる多数の溶血検体により予め訓練した分類器モデルに基づいて、溶血性が識別される。
【0130】
溶血性の程度(範囲)は、干渉物指数発生器530のブロック530Hで判定される溶血指数によって評価される。ここで言う「溶血指数」は、血清又は血漿部分212SPに存在する溶血の判定した含有量に基づいて該当検体212に与えられる等級を意味する。観察範囲の採点スケールは、最小測定値から最大測定値まである。例えば、測定値は、ゼロから所定の有限値(例えば、0~4)までの離散測定値で、このときのゼロは実質的に溶血がないことを表し、4は有意な溶血を表す。あるいは、0~10、0~20、A~F、又は他の範囲の採点スケールを使用することができる。品質チェックモジュール130による判定が十分に高かった溶血指数(例えば、所定のH閾値を超える)をもつ検体212は、はじかれる。通常の手順では、患者から別の検体212を再吸引して、良好な品質の検体212が確実に分析装置106,108,110(図1)の1つ以上に提供されるようにする。比較的高い溶血指数を示す検体212は、品質チェックモジュール130での事前スクリーニングの後に、それ以上検査されることなく、装填区域105で排除され取り出される。任意選択で、該検体212は、品質チェックモジュール130又は別のステーションで再検査に付すこともできる。いずれにしても、指示された検査に応じて、溶血指数が、1つ以上の分析装置106、108、110からの検査結果と共に報告される。ブロック530Hで検体212に十分に高いレベルの指数をもつ溶血性があることが分かった場合、警告が検体検査装置100のコンピュータ143又はCIM145のディスプレイ(例えば、コンピュータスクリーン)に表示され、これにより検査室職員は、検体212が干渉する可能性のある量の溶血を含むことが検出されたときに、さらなる検証を指示し、検体の再吸引を指示し、さらなる判定を行うことができる。
【0131】
溶血を含む検体212の評価を検査室職員に伝達する能力を向上させるために、溶血を含む検体212の入った検体容器102の画像をコンピュータ143又はCIM145のディスプレイに表示することができる。この画像は、種々の既知の溶血性検体の参照画像、比較のための色スペクトル、検体212の溶血性評価後の指数レベル、検査室職員が講じるべき提案処置の1つ以上など、ただしこれらに限定されない、他の共同情報と共に表示することができる。
【0132】
[黄疸性検出]
広い態様に係る評価方法の実施形態では、遠心分離後の血液の検体容器102に含まれた血清又は血漿部分212SPの黄疸性を検出するために使用される方法及び装置を対象とする。黄疸性干渉物は、例えば、壊れた赤血球が脾臓でビリルビンに変換されることに起因するビリルビンの過剰から生じることがある。2~3mg/dlを超えるビリルビン濃度は、明らかに暗黄色又は褐色を帯びており、分析装置(例えば、分析装置106,108,110)で実施される酵素ベースのイムノアッセイに悪影響を及ぼす可能性がある。このような状態はビリルビン血症とも呼ばれる。
【0133】
黄疸性検出方法は溶血性検出方法と同様である。画像を取得し画素化画像の分析を実行してセグメンテーション511を提供した後、ラベルによる閉塞を考慮に入れた改良された特徴の評価を含むデータを、黄疸性の存在について分析する。この方法によれば、溶血性検出のために操作されたのと同じデータを、黄疸性分類器529Iの黄疸性識別に供給することができる。この解析では、適切に訓練された2値分類器を用いて、黄疸の有無を判定することができる。溶血性検出に関して述べたように、黄疸が検出された場合、干渉物レベル検出器(529I)は、黄疸指数として干渉物レベルを判定する。ここで言う「黄疸指数」とは、存在する黄疸の判定した含有量に基づいて該当検体212に与えられる等級を意味する。観察の採点スケールは、ゼロから最大値まで(例えば、0~4)などの最小値から最大値までの範囲である。ゼロは実質的に黄疸がないことを表し、4は黄疸の有意な存在を表す。あるいは、0~10、0~20、A~F、又は他の範囲など、他の採点スケールを使用することができる。
【0134】
[脂血性検出]
広い態様に係る評価方法の実施形態は、遠心分離後の血液の検体容器102に入った検体212の脂血性を検出するために使用される方法及び装置を対象とする。血清又は血漿部分212SPに白っぽい外観を呈する脂血性干渉物は、血液中の過剰な脂質の存在から生じる。50mg/dl程度を超える脂質レベルは、免疫アッセイ検査における抗体結合を妨害し、つまり、分析装置106,108,110からの免疫アッセイ結果に影響する。
【0135】
脂血性検出方法は、溶血性や黄疸性の検出法と同様である。この方法では、検体容器102を品質チェックモジュール130に収容し、そして、画像取得装置440A~440Cが複数の視点から検体212の画素化画像を取得する。次いで、コンピュータ143が上述のように画像の分析を実行し、検体容器102及び検体212をセグメント化511する。上述のセグメンテーション及びラベル合致操作から、統合表現を含むデータを操作して、脂血性分類器529Lで脂血の存在を判定する。この方法に従えば、溶血性及び黄疸性検出に用いたのと同じセマンティックデータを操作して、脂血性の存在を判定することができる。この分析では、訓練したL分類モデルを用いて脂血性識別定529Lを行うことによって、脂血性干渉物が存在するかどうかを判定することができる。サポートベクターマシンなどの適切な分類器を使用することができる。
【0136】
脂血性(L)の識別529Lの後、脂血指数として干渉物レベルを判定530Lする。脂血指数は、血清又は血漿部分212SPにおける脂血の判定した含有量に基づいて等級が与えられる。採点スケールは、最小値から最大値まで(例えば、0~4)の範囲であり得る。ゼロは実質的に脂血性がないことを表し、4は脂血性の有意な存在を表す。あるいは、0~10、0~20、A~F、又はの他の範囲など、他の採点スケールを使用することもできる。他の悪性度分類尺度を用いてもよい。脂血性は特殊な検体品質の変色欠陥であり、特別な処理によって解決される。したがって、品質チェックモジュール130でそうと識別された検体212は、分析装置(例えば、分析装置106,108,110)で検査又は分析される前に、さらなる処理のために、別の位置(例えば、遠隔ステーション132)に送られる。
【0137】
検体212の追加処理は、血清又は血漿部分212SPの脂質の量を除去又は減少させるための1つ以上の処置を含む。例えば、当該処理では、脂血量を減らすために溶媒又は他の材料を導入することができる。脂血性レベルを下げる(すなわち、脂血指数を下げる)ためのさらなる処理の後には検体212をトラック121に戻すことができ、分析のために分析装置(例えば、分析装置106,108,110)に直接分配することができる。場合によっては、検体212は、ここに開示する方法に従って脂血性について検体を再スクリーニングするために、品質チェックモジュール130へ再送される。脂血指数が十分に低く、正常(N)と判定できた場合、検体212は、トラック121でルーティングされて直接1つ以上の分析装置(例えば、分析装置106,108,110)で分析される。その後、検体212は、トラック121から取り出すために、装填区域105へ戻す。
【0138】
[正常性検出]
一実施形態において、検体212は、最初に、正常性分類器529Nを介し、品質チェックモジュール130で、血清又は血漿部分212SPが正常(N)、すなわち、H、I、Lのいずれの徴候もないと識別できるかどうかを判定するために処理される。場合によっては、方法500は、血清及び血漿部分212SPが正常性分類器529Nで正常(N)であると識別された場合、H、I、Lの分析を省略することができる。Nである場合、検体212は、その中に干渉物が含まれていないことを確認するまでもなく、1つ以上の分析装置(例えば、分析装置106,108,110)で順調に分析される。
【0139】
このNの識別は、複数の視点から検体212の画素化画像を取得すること、セグメンテーション511、及びラベル評価517においてラベル含有領域618の改善された評価を提供することを含む。方法500によると、上述のH、I、L検出のための使用で説明したのと同じデータセットを操作して、Nを判定することができる。訓練した正常性分類器を使用して正常性を判定529Nする。サポートベクターマシンなどの適切な分類器を使用することができる。
【0140】
本実施形態によれば、検体212の遠心分離後の最初の可能なインスタンスにおいて、H、I、Lの1つ以上、又はNを検出できる。プロセスのこの時点でH、I、Lの1つ以上、又はNを検出することによって、検体212が無駄にならず、誤った検査結果の防止につながり、貴重な分析装置の時間が無駄にならず、患者の検査結果の遅延が最小限に抑えられる。
【0141】
一実施形態において、血清又は血漿部分212SPに存在するH、I、Lの1つ以上のレベルをさらに正確に測定するために、アーチファクト検出方法を用いて、血清又は血漿部分212SPの凝血塊、気泡、発泡などのアーチファクトの存在を同定してもよい。血清又は血漿部分212SPに1つ以上のアーチファクトを含むとして識別された画素は、合成視点のデータでは無視され、HILN分類器529において使用されない。アーチファクト検出方法は、2016年1月28日出願の米国仮特許出願62/288,358「Methods And Apparatus For Classifying An Artifact In A Specimen」に詳しく開示されている。
【0142】
方法500によると、溶血性識別529H、黄疸性識別529I、脂血性識別529L、及び正常性識別529Nは、複数のトレーニングセットに基づいて訓練されるHILN分類器529による入力データの操作によって実行される。一実施形態において、H、I、L、Nのそれぞれに対して個々のバイナリ分類器を使用する。場合に応じてに、H、I、L、Nのうちのいずれか1つ以上を識別するために複数クラス分類器を使用することができる。複数クラス分類器(例えば、4クラス分類モデル)は、サポートベクターマシン(SVM)、サポートベクターネットワーク、又はブースティングクラスアルゴリズムとすることができる。サポートベクターマシン及びネットワークの例は、論文「Support-vector Networks」;C. Cortes, V. Vapnik;機械学習20巻-3号-273~297ページ、論文「Additive Logistic Regression: A Statistical View of Boosting」;J. Friedman, T. Hastie, R. Tibshirani(1998)及び「A Short Introduction to Boosting」;Y. Freund, R. E. Schapire(1999)に開示されている。
【0143】
血清又は血漿部分212SPを、全体として、H、I、Lを含むか、又はNと評価する判定は、HILN分類器529によってN、H、I、又はLであるとして分類された多数の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を血清又は血漿部分212SPに加えることによって達成される。正常性(N)又は干渉物を含有するという分類は、各クラスにおける最大数の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)に基づくか、又は一実施形態においては適切な重み付けスキームに基づく。
【0144】
一実施形態において、画素の大部分(又はスーパーピクセル/画像パッチ)がNに分類される場合、該血清又は血漿部分212SPは正常(N)であると分類してもよい。画素の大部分(又はスーパーピクセル/画像パッチ)がHに分類される場合、該血清又は血漿部分212SPは溶血性(H)を含むと分類される。同様に、画素の大部分(又はスーパーピクセル/画像パッチ)がI又はLに分類される場合、該血清又は血漿部分212SPはそれぞれ黄疸性(I)又は脂血性(L)と分類される。他の実施形態では、重み付け多数決スキームが、重みとしてHILN分類器529からの確率を使用して、検体212を分類するために使用され得る。全体として、血清又は血漿部分212SPを評価するための他の手段が使用され得る。
【0145】
データセットが、2つ以上の干渉物クラス(例えば、H及びI、H及びL、I及びL、又はH、I及びL)に分類される比較的多数の画素(又はスーパーピクセル/画像パッチ)を含む場合、干渉検出方法は、複数の干渉物タイプが存在することを報告する。検体212が複数の干渉物タイプ(例えば、H、I、L)を含むと評価されると、干渉物レベル検出器530が、血清又は血漿部分212SPの複数の干渉物タイプに対する干渉物レベルを提供するために使用される。干渉レベル検出器530は、教師あり回帰モデルなどのレベル評価モデルにデータセットを通すことによって、各干渉物に対する干渉指数を得る。サポートベクター回帰(SVR)、ニューラルネットワーク回帰、ツリーベース回帰などの適切な回帰モデルを使用することができる。
【0146】
溶血性回帰モデル530H、黄疸性回帰モデル530I、及び脂血性回帰モデル530Lなどの異なる回帰モデルを複数の干渉物タイプに対して使用することができる。一実施形態において、回帰モデルの各々はSVRマシンであり、該当するタイプの干渉物タイプ(例えば、H、I、又はL)を示す液体領域を用いて訓練される。例えば、溶血性回帰モデル530Hは、予想される溶血レベルの多様な程度にわたって溶血レベルをもつ広範囲の検体212で訓練することができる。同様に、黄疸性回帰モデル530Iは、予想されるレベルの多様な範囲にわたる黄疸レベルをもつ広範囲の検体212で訓練することができる。同様に、脂血性回帰モデル530Lは、多様な範囲の予想レベルにわたって脂血レベルをもつ広範囲の検体212を用いて訓練することができる。一実施形態において、干渉物レベルは離散化することができる。例えば、4つの別個のレベルを使用することができる。4つより多い又は少ない離散レベルも可能である。モデルの干渉物レベルが離散化されている場合、回帰モデルからの出力も、最も近いターゲットレベルにマッピングすることによって離散化される。いずれにしても、一実施形態によれば、検出された干渉物のタイプごとに干渉指数を提供することができる。
【0147】
品質チェックモジュール130によって実行される方法によって、正常性Nであるか、又は1つ以上の干渉物HILを含むかのいずれかとして、検体212を迅速に評価できることが明らかである。検体212が1つ以上の干渉物を含む場合、本方法により、存在する干渉物のタイプをさらに判定することもでき、存在する各干渉物タイプに関する干渉指数を判定することもできる。
【0148】
図7は、評価方法700のフローチャートを示す。評価方法700は、ここに説明する品質チェックモジュールを用いて実行される。特に評価方法は、一実施形態において、検体212の干渉物を判定する方法の一部とすることができる。評価方法700は、ステップ702において、検体(例えば、検体212)の血清又は血漿部分(例えば、血清又は血漿部分212SP)を含む検体容器(例えば、検体容器102)の画像を複数の視点(例えば、視点1、2及び3)から1つ以上取得することを含みむ。検体容器には1つ以上のラベル(例えば、ラベル218,218A,218B,218C)がある。1つ以上の画像は、1つ以上の画像取得装置(例えば、画像取得装置440A~440C)を使用して取得したデジタル画素化画像である。
【0149】
評価方法700は、ステップ704において、複数の視点からの1つ以上の画像を処理して複数の視点ごとにセグメンテーションデータを提供する。該セグメンテーションデータは、ラベル含有領域(例えば、ラベル含有領域618)の識別情報を含む。画像には、異なる露光時間とスペクトル(例えば、R、G、B、白色光源、IR、近赤外線の1つ以上)のいずれか又は両方を適用した各視点における複数の画像が含まれる。例えば、一実施形態では、同じ照明条件において、複数の露光時間で4~8回以上露光することができる。一実施形態では、画像の一部は、バックライト光源444A~444Cとして白色光を使用して取得され、別の一部は、バックライト光源444A~444Cとして赤、青、及び緑などの複数の単一波長ピーク狭帯域スペクトル光源を使用して取得される。任意選択で、IR又は近IR光源をバックライト源として使用することもできる。
【0150】
セグメンテーションデータは、ここに説明するようなHDR撮像を使用して得ることができ、セグメンテーション(例えば、セグメンテーション511)は、ここに説明する分類方法のような適切なモデルベースの方法によって達成される。画像データは、1-血清又は血漿部分、2-沈降血液部分、3-管、4-空気、5-キャップ、5-ラベル、6-ホルダ、及び7ゲルセパレータ(使用される場合)など、種々のクラスにセグメント化される。特に、ラベルを含むラベル含有領域618がセグメンテーション511において識別され、評価方法700によって使用される。
【0151】
本評価方法は、ステップ706において、多数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含んだ参照ラベル形態データベース(例えば、参照ラベル形態データベース522)を提供する。多数の参照ラベル形態は、訓練プロセスの一貫として検体容器に提供される数百又は数千のラベル形態について得られる。多数の参照ラベル形態は、品質チェックモジュール130で得ることができるが、このときの検体容器102には検体がない。ラベル形態は、検体容器102に付される、接着ラベル218などの、1つのラベル218、複数のラベル(例えば、2つのラベル218A,218B)、3つのラベル(218A,218B,218C)の形態を含み得る。ラベル形態は、様々なレベルのラベル重複を含み得る。一実施形態では視点全体、又は複数の視点を隠す。一実施形態において、ラベル218A,218B,218Cで全体的に覆われて全ての視点が隠される。
【0152】
評価方法700は、ステップ708において、参照ラベル形態データベース(例えば、参照ラベル形態データベース522)に含まれた多数の参照ラベル形態から選択される参照ラベル形態に対するラベル含有領域(例えば、ラベル含有領域618)の最適合致を識別し、選択する(例えば、ラベルの最適合致521を選択する)。最適合致を明らかにするために、適切な比較方法を使用することができる。例えば、管サイズ、ラベルサイズ、ラベル位置などの特徴の索引で参照ラベル形態データベース522をインデクシングすることによって、比較中に検索するデータ量を削減するべく、インデクシングが使用される。他のインデックスの使用も可能である。
【0153】
評価方法700は、ステップ710において、ラベル含有領域(例えば、ラベル含有領域618)に関するセグメンテーション情報及び最適合致に基づいて、統合表現を生成する。
【0154】
続いて、統合表現は、血清又は血漿部分(例えば、血清又は血漿部分212SP)に関するセマンティックデータと共にHILN分類器(例えば、HILN分類器529)に送られる。評価方法700は、ステップ712において、血清又は血漿部分212SPのHILNを判定することを含む。HILN判定は、ラベル含有領域618において閉塞されている血清又は血漿部分212SPの部分を考慮し、HILN分類器529によって処理される正面視野セマンティックデータに基づく。
【0155】
任意選択で、ステップ714において、回帰モデルなどの干渉指数モデルの使用などによって、干渉レベル(例えば、H、I、Lの1つ以上の指数)を検出する。上述したとおり、画像データを調整して1つ以上の視点を遮る可能性があるラベルを考慮することによって、血清又は血漿部分212SPをより良好に評価できる、改良された評価方法700が提供されることが明らかである。改良された評価は、検体212のH、I、Lの1つ以上の存在、又はNの迅速且つロバストな評価を提供するべく使用され、干渉物(例えば、H、I、L)が検出された場合、該干渉物のレベルを評価し報告することもできる。
【0156】
説明したように、以上の評価方法は、品質チェックモジュール(例えば、品質チェックモジュール130)を使用して実行される。品質チェックモジュールは、撮像位置(例えば、撮像位置432)の周囲に配置され、1つ以上のラベル218、ラベル218A,218B、ラベル218A~218Cがあって検体212の血清又は血漿部分212SPを含む検体容器102の画像を複数の視点(例えば、複数の視点1~3)から複数取得するように構成された複数の画像取得装置(例えば、画像取得装置440A~440C)と、該複数の画像取り込み装置に接続され、複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータ(例えば、コンピュータ143)と備える。そのコンピュータ(例えば、コンピュータ143)は、複数の視点(例えば、視点1~3)からの複数の画像を処理して視点ごとにセグメンテーションデータを提供するように構成される。セグメンテーションデータは、ラベル含有領域(例えば、1つ以上のラベル218を含むラベル含有領域618)の識別情報を含む。コンピュータはさらに、多数の参照ラベル形態に関する参照画像データを含んだ参照ラベル形態データベース(例えば、参照ラベル形態データベース522)をメモリに保存し、該参照ラベル形態データベースに含まれる多数の参照ラベル形態から選択した参照ラベル形態に対するラベル含有領域の最適合致を判定し、セグメンテーション情報及び最適合致に基づいて統合表現を生成する。
【0157】
さらに、評価方法700は、品質チェックモジュール130を含む検体検査装置100においても実行可能である。検体検査装置100は、トラック121と、トラック121に沿って移動可能なキャリア122とを含む。キャリア122は、ラベル含有領域618をなす1つ以上のラベル218があって検体212の血清又は血漿部分212SPを含む検体容器102を収容して保持し、検体容器102を品質チェックモジュール130へ搬送して、干渉物の存在の評価及び事前スクリーニングを達成するように構成される。
【0158】
本明細書において、種々の選択構成要素、特徴、具体例について個別に説明した。これら構成要素、特徴、具体例は、実施に際し、別の個別に説明した構成要素、特徴、具体例と置き換えて使用することも、あるいは、本明細書に説明した他の構成要素、特徴、具体例と組み合わせて用することも、当然ながら可能である。本発明には、様々な派生形態及び代替形態が許容されるが、特定の装置、システム、及び方法について一例として図示してここで詳細に説明した。しかしながら、開示した特定の装置、システム、及び方法に本発明を限定することは意図されておらず、特許請求の範囲に含まれる全ての修正、等価の形態、及び代替の形態に本発明が及ぶことは当然である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7