(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】ボンディングワイヤ垂直相互接続の構造
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020036965
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2020-04-13
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエム・テクノロジー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モウ・ファット・ゴ
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤ・ピン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チ・クワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ケン・ユー・ソン
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533258(JP,A)
【文献】特表2012-523118(JP,A)
【文献】特開平05-013493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤボンディング方法であって、
ボンディングワイヤを細管から或る長さ延ばしてワイヤテールを形成する工程と、
前記ワイヤテールと前記細管内にある残りのボンディングワイヤとの間に弱化部を形成すべく、前記
ボンディングワイヤの一つの点を変形させる工程と、
前記ワイヤテールをボンディングパッド及び基板の少なくとも一方に接合する前に
、前記ワイヤテールの少なくとも一部
および前記弱化部を前記細管の内部に引き戻す工程と、
を有してなる、ワイヤボンディング方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記ワイヤテールおよび前記弱化部が前記細管の内部に引き戻されていないとき、前記ワイヤテールが前記細管から遠位の自由端を有し、かつ、
前記ボンディングワイヤ上の前記弱化部が前記細管の近位にある、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールを、前記細管と共に、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に押し付けることを含む、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記変形させる工程が、前記ワイヤテール上の前記点を、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に押し付けることを含む、方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法において、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールを前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に向けて並進移動させ、
前記ワイヤテールの前記自由端を前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に接触させることを含み、
前記ワイヤテールの連続的な並進移動によって、前記自由端が、前記細管内にある残りのボンディングワイヤに対する軸線方向の整列状態から外れて、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方の表面上を動く、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記変形させる工程が、前記細管を、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に向けて変位方向にずらすことを含み、かつこの細管のずらしが、該細管を前記変位方向と交差する方向に並進移動させる間になされる、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールの断面を圧縮して前記弱化部を形成することを含む、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールを前記細管の先端の周りに形成する工程をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記引き戻す工程が、前記ワイヤテールを、接合する前に、前記細管内にある残りのボンディングワイヤに対し軸線方向に整列させる工程をさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項
2記載の方法において、接合の前に、前記ワイヤテールの前記自由端にボンドボールを形成することを含む、方法。
【請求項11】
請求項
10記載の方法において、前記ボンドボールをずらして
ボンディングパッドに接合して、ボールワイヤボンドを形成することを含む、方法。
【請求項12】
請求項6記載の方法において、前記弱化部を
さらに弱めるために、前記細管を前記変位方向と交差する方向に繰り返し並進移動させることを含む、方法。
【請求項13】
請求項
12記載の方法において、前記弱化部を
さらに弱めるために、前記細管を前記変位方向と交差する方向に繰り返し並進移動させる間、接合されたワイヤが貫通して延びる前記細管の開口を前記弱化部
またはその近位に
位置させることを含む、方法。
【請求項14】
請求項
11記載の方法において、残りのボンディングワイヤを前記弱化部において前記ボールワイヤボンドから外すために、該残りのボンディングワイヤをずらし、かつ該残りのボンディングワイヤを把持することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法を実施するよう構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージのためのワイヤ相互接続構造を形成するための技術に係わり、特に垂直方向に構成されたワイヤ相互接続構造の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンダは、基板上の異なる位置に、アレイによる接合 (bond via array: BVA) ワイヤ相互接続を形成するのに用いることができる。通常、ボンディングワイヤは細管を通して運ばれる。ボンディングワイヤの自由端が、前記細管を用いて、前記基板上の第1の場所においてボンディングパッドに接合される。その後、細管がその場所から移動し、接合された前記端部が、細管を通してより多くのボンディングワイヤを搬送する。次に、細管は基板上の第2の場所に到着し、該ワイヤを第1の場所から第2の場所までアーチ状にし、かつその場所を押してボンディングワイヤを弱める。細管が前記ボンディングパッドの上の位置に戻った後、ワイヤを掴んで引っ張り、ワイヤの相互接続を残す。このワイヤの相互接続は、ボンディングパッドの一端でボンディングされ、ボンディングパッドから垂直に延びて自由端で終端する。このプロセスは、必要なワイヤ相互接続を形成するために他の場所で繰り返される。そのようなアプローチは、「ワイヤ相互接続構造を形成する方法」と題された特許文献1により詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のアプローチは垂直ワイヤ相互接続を提供する上で役に立つが、望ましくない結果をもたらす。特に、このアプローチで結合できるデバイスの形式には制限がある。したがって、垂直ワイヤ相互接続構造を形成する改善された方法を提供することが望ましい。
【0005】
したがって、本発明の目的は、先行技術の前述の問題の少なくともいくつかを克服するアプローチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様により、
ボンディングワイヤを細管から或る長さ延ばしてワイヤテールを形成する工程と、
前記ワイヤテールと前記細管内にある残りのボンディングワイヤとの間に弱化部を形成すべく、前記ワイヤテールの一つの点を変形させる工程と、
前記ワイヤテールをボンディングパッド及び基板の少なくとも一方に接合する前に、前記弱化部を含む前記ワイヤテールの少なくとも一部を前記細管の内部に引き戻す工程と、
を有してなる、ワイヤボンディング方法、が提供される。
【0007】
この第1の態様では、既知の手法の問題は、ワイヤテールが最初にその自由端でボンディングパッド又は基板に接合され、細管を新たな場所に並進移動させることにより弱化部が生じ、かつこの新たな場所で前記細管の先端を前記基板に押し付けることにあると認識である。これにより前記ボンディングワイヤが二つの場所の間にアーチを形成し、これが前記ボンディングワイヤの長さ方向に沿って曲げを導入する。またこのことは、前記ワイヤテールを所望の長さ延ばすのに、基板上の二つの場所間に基板上の充分な空間を必要とし、かつ、前記細管が基板上の異なる位置間を並進移動することを要求する。さらに、第1のボンドネックは、種々の曲げの動きの間にダメージを受けるおそれがあり、前記ワイヤテールの曲がりが直線的な垂直な向きを維持することを困難とし、前記細管を新たな位置に押し付けた際にこの新たな場所に疑似的なマーキングが生じ、また、二つの場所を必要とすることが各ワイヤテールの高さに実用上の制限を課す。
【0008】
よって、一つの方法が提供される。この方法はワイヤボンディング方法であって良い。この方法は、細管から或る長さのボンディングワイヤを延ばし、あるいは提供して、結合されていないワイヤテールを形成又は提供する工程を含むことができる。この方法は、前記ワイヤテール上の一つの点 (point)、場所 (location)、又は位置 (position) を変形させて、前記ワイヤテールと、前記細管を貫通した前記ボンディングワイヤの残りの部分との間に弱化部を形成する工程を含むことができる。前記ワイヤテールにおける少なくとも前記弱化部を含む部分を前記細管の内部に後退させる又は引き戻す工程を備えることが出来る。この方法では、前記細管を異なる場所間で並進移動させずに前記ワイヤテールの長さを選択できる。また、前記ワイヤテールと前記残りのボンディングワイヤとの間における前記弱化部を、前記細管を異なる二つの場所の表面に接触させる必要なく形成でき、かつ、それら二つの場所間にアーチワイヤを形成することなく、あるいはボンディングワイヤに長手方向長さに沿った曲がりを導入することなく形成可能である。さらに、前記弱化部を形成する間の前記ボンディングワイヤの曲がりは、前記ワイヤテールを前記ボンディングパッド及び/又は基板に結合する前に真っ直ぐにすることができる。
【0009】
一実施形態では、ワイヤテールは前記細管から遠位の自由端を有し、かつ、前記弱化部が前記細管の近位にある。従って、前記ワイヤテールは自由端及び弱化部を備えていてよい。前記弱化部は前記細管に向けて設けられ、かつ前記自由端は前記細管から離れて設けられることができる。
【0010】
一実施形態では、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールを、前記細管と共に、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に押し付けることを含む。したがって、前記弱化部は、前記ワイヤテール上の前記点を前記細管で前記基板及び/又は前記ボンディングパッドに押し付け又は押圧することによって形成され得る。
【0011】
一実施形態では、前記変形させる工程が、前記ワイヤテール上の前記点を前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に押し付けることを含む。
【0012】
一実施形態では、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールを前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に向けて並進移動させて前記自由端を前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に接触させ、ワイヤテールの連続的な並進移動によって、前記自由端が、前記細管内にある残りのボンディングワイヤとの軸線整列から外れて、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方の表面上を動くことを含む。したがって、前記ワイヤテールは前記基板及び/又はボンディングパッドに向かって動くことができる。これにより、前記自由端が前記基板及び/又はボンディングパッドに対して接触する。前記ワイヤテールが引き続き動くと、前記自由端は前記基板及び/又はボンディングパッドの表面にわたって移動する。これにより、ワイヤテールは、細管内にある残りのボンディングワイヤとの軸線方向の整列から外れる。
【0013】
一実施形態では、前記変形させる工程が、前記細管を、前記基板及び前記ボンディングパッドの少なくとも一方に向けて変位方向にずらすこと、かつその間に該細管を前記変位方向と交差する方向に並進移動させることを含む。変位方向に移動しながら細管を一方向に並進移動させることにより、ワイヤテールが細管との軸方向整列状態から外れるのに役立つ。
【0014】
一実施形態では、前記変形させる工程が、前記ワイヤテールの断面を圧縮して前記弱化部を形成することを含む。したがって、前記弱化部は、ワイヤテールを圧縮すること又は圧迫することによって形成され得る。
【0015】
一実施形態では、前記変形させる工程がさらに、前記細管の先端の周りに前記ワイヤテールを形成する工程を備えている。したがって、細管の先端は、前記ワイヤテールの軸方向の整列から外れる動きを容易にするよう、及び前記弱化部の形成を容易にするよう成形され得る。
【0016】
一実施形態では、前記引き戻す工程がさらに、前記ワイヤテールを、接合する前に、前記細管内にある残りのボンディングワイヤに対し軸線方向に整列させる工程をさらに含んでいる。したがって、前記ワイヤテールを前記細管の内部に引き戻すことによって、前記ワイヤテールが、前記残りのボンディングワイヤ及び前記細管との軸方向整列を回復するのを助ける。
【0017】
一実施形態では、前記引き戻すこと工程が、前記弱化部を前記細管の内部に引き戻すことを含む。
【0018】
一実施形態では、方法は、前記ワイヤテールの前記自由端に、接合の前にボンドボールを形成することを含む。
【0019】
一実施形態では、方法は、前記ボンドボールをずらして前記ボンドパッドに接合して、ボールワイヤボンドを形成することを含む。
【0020】
一実施形態では、方法は、前記弱化部を弱めるために、前記細管を前記変位方向と交差する方向に繰り返し並進移動させることを含む。細管を並進移動させることにより、前記弱化部をさらに弱めることができる。
【0021】
一実施形態では、方法は、前記弱化部を弱めるために、前記細管を前記変位方向と交差する方向に繰り返し並進移動させる間、接合されたワイヤが貫通して延びる前記細管の開口を前記弱化部の近位に整列させることを含む。弱化部を細管の開口の外側の隣に位置させることで、弱化部の弱化を最大化できる。
【0022】
一実施形態では、前記弱化部(における前記点)において前記ボールワイヤボンドから外すために、前記残りのボンディングワイヤをずらし、かつ該残りのボンディングワイヤを把持することを含む。
【0023】
第二の態様によれば、前記第1の態様及びその実施形態を実施すべく構成された装置が提供される。
【0024】
これらの及び他の特徴、態様、および利点は、発明の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面を参照してよりよく理解されるであろう。
【0025】
以下、本発明の実施形態を、例示により、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ワイヤ相互接続を形成するのに用いられる一実施形態によるワイヤボンディング装置の主要部品を示す概略図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図6】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図7】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【
図9】本発明の好ましい実施形態に従ってワイヤボンド相互接続を作製するときのワイヤボンディング装置の作動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
こららの図において、同様の部材には同様の符号を付してある。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態をより詳細に説明する前に、まず概要を説明する。一実施形態では、ある長さのワイヤが細管から解放され、また、非結合ワイヤは、第1の接合位置で事前に切断(変形)される(通常は、圧縮により変形して楔を形成する)。次に、ワイヤはワイヤテールを残して引き込まれ、かつ該ワイヤテールに、最初の接合を行うために自由空気ボールが形成される。最初の接合がなされると、細管が引き上げられ、ワイヤは破断される。
【0029】
図1は、ワイヤ相互接続を形成するために使用される、一実施形態によるワイヤボンディング装置100の主要構成要素群を示したものである。該ワイヤボンディング装置100の他の構成要素は、明確化のため省略してある。細管103には、近位ワイヤクランプ102及び遠位ワイヤクランプ101といったワイヤ保持機構が軸方向を整列させた状態で設けられている。ボンディングワイヤリール(図示せず)から提供された連続した長さのボンディングワイヤ105が、前記ワイヤクランプ101,102及び前記細管103を貫通している。ボンディングワイヤ105は細管103を自由に貫通するが、ワイヤクランプ101,102はボンディングワイヤ105を個別に掴んだり離したりするよう操作可能である。遠位ワイヤクランプ101はほぼ固定された高さにある一方、近位ワイヤクランプ102は、ボンディングワイヤ105の軸方向に沿って独立して位置を変えることができる。これについては以下で詳述する。
【0030】
図1に示すように、このボンディング装置100は、例えば基板201のボンディングパッド202の上方といった、ワイヤ相互接続がなされる結合場所の上に位置している。遠位クランプワイヤ101はボンディングワイヤ105を把持していないが、近位ワイヤクランプ102はボンディングワイヤ105を把持している。ボンディングワイヤ105はある長さ分(リセットレベルに位置している)細管103を貫通しており、これによりボンディングワイヤ105は細管103の先端106から延びてワイヤテール104を形成している。そのようなワイヤテール104は、例えば従前のワイヤボンディング操作を実行することで得ることができる。従って、ワイヤテール104は、ボンディングパッド202に向けて方向Aに搬送されるよう準備されて、ボンディングパッド202の上方に位置される。
【0031】
図2に移ると、近位ワイヤクランプ102及び細管103が共に、基板201に向けて、ほぼ方向Aに移動する。遠位ワイヤクランプ101はワイヤが移動できるよう把持を解いた状態となっている。
図2に示すように、近位ワイヤクランプ102と細管103は、方向Aを横切る方向に細管103が移動することにより、湾曲した軌道に沿ってボンディングパッド202に向かって移動し、細管103の移動中にワイヤテール104が基板201に接触したときにワイヤテール104が曲がるのを容易にする。
【0032】
従って、先端106から延在するワイヤテール104の自由端107が基板201に接触すると、この接触によってワイヤテール104は曲がり、基板201の表面にほぼ沿うように横たわる。ボンディングワイヤ105の機械的特性は、先端106のところでは鋭く曲がるが、テール104は略直線的に保った状態となるといったものである。従って、ワイヤテール104と、細管103内の残りのボンディングワイヤ105との間に、肘状にきつく曲がった屈曲部110が生ずる。これによって、先端106の近傍に略直角の屈曲部が形成される。この肘状の屈曲部110は、先端106の回りに形成され、かつ該先端106の形状に沿ったものとなる。先端106は面取りされており、かつ、角部の曲がりの成形を助ける環状突出部108を規定するよう形状付けされている。
【0033】
随意、曲げを容易にするためにワイヤテール104がより傾いた角度で基板201に接触できるように、細管103の向きを軸線から外れるよう変更してもよい。
【0034】
細管103が方向Aに連続して動いて、環状突出部108の近傍に窪み、圧縮、凹所又はくさびを作成することにより、環状突出部108がボンディングワイヤ105を変形させ、ワイヤテール104と細管103の内部の残りのボンディングワイヤ105との間に弱化部又は弱化点が提供される。換言すれば、細管103が降下して、チェリーピット結合 (cherry-pit bonding) を用いてワイヤテールを曲げかつ変形させる。あるいは、ボンディングワイヤ105の変形は、細管103の環状突出部108を用いずに、外部ツール(図示せず)の導入によっても達成し得る。
【0035】
従って、
図2から解るように、ワイヤテール104は、細管103内にある残りのボンディングワイヤ105の軸線から外れて曲げられている。さらに、双方の間には弱化部が形成されている。
【0036】
図3から解るように、遠位ワイヤクランプ101は把持解放の状態のままとされ、かつ細管103及び近位ワイヤクランプ102は共に方向Bに移動し、基板202から離れる。これによりワイヤテール104は基板202から離れて上昇し、細管はリセットレベルに戻る。
【0037】
図4に示すように、今度は遠位ワイヤクランプ101がボンディングワイヤ105を掴み、近位ワイヤクランプ102はボンディングワイヤ105を離す。近位ワイヤクランプ102及び細管103が遠位ワイヤクランプ101から、方向Aに沿って下降する間に、遠位ワイヤクランプ101はボンディングワイヤを掴むように作動可能である。これによりワイヤテール104は、少なくとも一部が細管103の内部に受けられるか、完全に引き戻される。とりわけ、前記屈曲部110の前記弱化部が細管103の内部に引き込まれ、そうなることにより、ワイヤテール104は再び直線状とされ、残りのボンディングワイヤ105と整列する。従って、ボンディングワイヤは
図1に示した形態に戻るが、この状態にあっては、所望の長さに形成されたワイヤテール104を備え、かつ細管103の内部には弱化部が位置している。
【0038】
さて、
図5では、先端106から突出したワイヤテール104の遠位部が、従来の技術により形成されたボンドボール501を有している。遠位ワイヤクランプ101はボンディングワイヤ105を把持しておらず、一方、近位ワイヤクランプ102は同部材を把持する。そして、近位ワイヤクランプ102は、細管と共に、基板201上のボンディングパッド202に向けて方向Aに動く。
【0039】
図6に示すように、ボンドボール501がボンディングパッド202と接触し、ワイヤボンドを形成する。次いで、近位ワイヤクランプ102はボンディングワイヤ105を離す。
【0040】
図7に示すように、近位ワイヤクランプ102がボンディングワイヤに沿って方向Bに細管103と共に戻るときには、遠位ワイヤクランプ101が、ボンディングワイヤ105が動かないよう把持する。従って、細管103は、ボンディングパッド202に接合されたワイヤテール104をそのままにしてボンディングワイヤ105に沿って引き戻される。ワイヤテール104とボンディングワイヤ105の残りの部分との間の弱化部120もワイヤテールと共に残る。細管103が弱化部120の位置に来ると、細管103は、方向Bと交差する方向に並進移動をさらに繰り返し、弱化部120をさらに弱めることを助長する。その後、近位ワイヤクランプ102は、後続のワイヤボンディング操作を行うために必要な長さのワイヤテール104を形成すべく、細管103と共にさらに上方に動く。
【0041】
図8に示すように、次いで、近位ワイヤクランプ102がボンディングワイヤ105を把持し、かつ近位ワイヤクランプ102は細管103と共に方向Bにさらに動く。この動きによって、ワイヤテール104が前記ボールワイヤボンドによってボンディングパッド202上に保持されている間、ボンディングワイヤ105の残りの部分が動く。これにより、ワイヤが前記弱化部120において破断し、ワイヤテール104が、その位置に、垂直状態に残る。
【0042】
図9に示すように、この工程が繰り返され、基板201上の異なる位置に、隣接するワイヤテール104が接合される。
【0043】
理解されるように、既存のやり方とは異なり、これらワイヤテール104は、基板201の二点間で弧を描くワイヤとして曲げられていないため、各ワイヤテール104は長さ方向にカーブしていない。また、
図2に示すように形成された鋭い肘状に曲げられた肘屈曲110は、接合が生ずる前に、
図4に示すようにさらに真っ直ぐにされる。さらに、ワイヤテール104は、2つの場所間に弧状のワイヤを形成しなければならないということがなく、どのような単一場所でも形成されかつ曲げられることが可能であるため、接合点の周囲に障害物を有する基板、すなわち接合点周りの第2の位置に変形を作る際に邪魔となる障害物がある基板への接合の制限を回避できる。さらに、並進移動がより少なくて済むので、相互接続の垂直方向における配向精度が向上する。また、ワイヤボンディングの後に弱化部120を形成するためにワイヤボンドのネックに曲がりを作り出すことが不要であるため、ワイヤボンドにおけるネックストレスを回避できる。
【0044】
実施形態は、従来のやり方で観察されるものとは異なり、ワイヤテールのネックに損傷を与えない。ワイヤテールの真直度も、従来のやり方と比較して改善される。ワイヤテールの配置の精度(具体的には、変位方向A/Bを横切る直交方向のX及びYオフセット)は、従来のやり方と比較して約50%向上する可能性がある。ワイヤの切断位置と最初のボンディング位置は同じであってもよく、その場合、ワイヤを切断/変形するための追加スペースは不要になる。従って、従来のアプローチと比較して、ワイヤテールの高さをより広い範囲で異ならせることが可能である。
【0045】
以上、いくつかの実施形態を参照して本発明を詳細に説明したが、その他の実施形態も可能である。
【0046】
従って、添付の請求の範囲の精神及び範囲はこれら実施形態の記述に限定されるべきでない。
【符号の説明】
【0047】
1 ワイヤボンディング装置
2
100 ボンディング装置
101 遠位ワイヤクランプ
102 近位ワイヤクランプ
103 細管
104 ワイヤテール
105 ボンディングワイヤ
106 先端
107 自由端
110 屈曲部
120 弱化部
201 基板
202 ボンディングパッド
501 ボンドボール