IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤン, クエン・デルの特許一覧

特許7012768対象物質を単離するためのデバイス及び方法
<>
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図1A
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図1B
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図2
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図3
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図4
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図5
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図6
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図7
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図8
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図9
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図10
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図11
  • 特許-対象物質を単離するためのデバイス及び方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】対象物質を単離するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20220121BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20220121BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220121BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220121BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
C12M1/26
C12Q1/24
G01N30/88 E
G01N1/28 J
G01N1/10 B
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020045136
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2020162588
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】62/818756
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520091270
【氏名又は名称】ヤン, クエン・デル
【氏名又は名称原語表記】YANG, Kuen-Der
【住所又は居所原語表記】14F., No. 77, Shuanglian St., Datong Dist., Taipei City 103, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, クエン・デル
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/018707(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140183(WO,A1)
【文献】特表2017-509360(JP,A)
【文献】特表2014-519331(JP,A)
【文献】特表2014-519340(JP,A)
【文献】Rong Xu,Methods,2015年,Vol.87,11-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルから対象物質(MOI)を単離するための、カートリッジを具備するデバイスであって、直径1.0~20μm、0.20~1.0μmおよび0.05~0.20μmのサイズをそれぞれ有する少なくとも3個の個体群のMOIを保持するように、相互に直列接続され、直径約0.8~1μm、0.20~0.22μm及び0.03~0.05μmの複数の孔をそれぞれ具備する第1、第2及び第3のフィルターを具備するデバイス。
【請求項2】
前記第1、第2及び第3のフィルターそれぞれが多孔質膜である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
直径1.0~20μmのサイズを有するMOIの前記個体群は細胞を含み、
直径0.20~1.0μmのサイズを有するMOIの前記個体群は微小小胞体を含み、
直径0.05~0.20μmのサイズを有するMOIの前記個体群はエクソソームを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記生物学的サンプルを収容するために前記カートリッジの上流側に配置された第1の貯蔵容器と、
直径0.05μm未満の可溶性分子を含む濾過液を収集するために前記カートリッジの下流側に配置された第2の貯蔵容器と、
をさらに具備する請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記MOI及び前記可溶性分子が、DNA、RNA、タンパク質、グリカン、脂質又はその組合せを独立して含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のデバイスの使用によって尿サンプルから対象物質(MOI)を単離する方法であって、
(a)前記フィルターにおいて直径1.0~20μm、0.20~1.0μm又は0.05~0.20μmのサイズを独立して有する少なくとも3個の個体群のMOIを保持するように、前記尿サンプルを請求項1に記載のデバイスの前記カートリッジに通過させるステップと、
(b)前記カートリッジから溶出された濾過液を収集するステップであって、前記濾過液は0.05μm未満の可溶性分子を含む、ステップと、
(c)前記第1、第2及び第3のフィルターから、及び前記ステップ(b)において収集された前記濾過液からMOIをそれぞれ収穫するステップと、
を具備する方法。
【請求項7】
前記第1、第2及び第3のフィルターそれぞれが多孔質膜である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(c)において収穫された前記MOI、前記ステップ(b)において可溶性高分子を含む前記濾過液、又は前記ステップ(a)においてMOIがそこに保持された前記第1、第2及び第3のフィルターに対して、その上又はその中の少なくとも1つのバイオマーカーを検知するための免疫ブロット法、チップ分析、蛍光プローブ分析、酵素又は電気化学反応が行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカーは、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、脳由来神経栄養因子(BNDF)、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、IGFBP2、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL1-ra)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子受容体1(IGFR1)、線維芽細胞増殖因子1(FGF-1)、FGF-2、レプチン、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)、VEGF-C、VEGF-D、肝細胞増殖因子(HGF)、E-カドヘリン、ロイシンリッチアルファ-2-糖タンパク質1(LRG1)、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、8-オキソヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、α-シヌクレイン、L1細胞接着分子(L1CAM)、S100カルシウム結合タンパク質A8(S100A8)、β4インテグリン、ムチン5AC(Muc5AC)、アンフィレグリン(AREG)、細胞接着分子1(CADM1)、コクリン、アルギナーゼ1(Arg-1)、β-ガラクトシダーゼ、インターフェロンガンマ-誘導タンパク質10(IP-10)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、成長制御アルファタンパク質(GRO-α)、シンデカン1、シンデカン4、単球走化性タンパク質-3(MCP-3)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ゾヌリン、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)、高移動度群ボックス1(HMGB1)又は核酸のいずれか1つである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年3月15日に出願の米国仮特許出願第62/818756号に関するとともにその利益を主張し、同出願の内容がその全体において参照によりここに取り込まれる。
【0002】
本開示は、概略として、生物学的サンプルから対象物質(MOT)を分離及び単離する分野に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞、エクソソーム(Exo)及び微小小胞体(MV)を含む細胞外小胞(EV)並びに可溶性分子は、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、羊水、気管支肺胞洗浄液及び唾液などの種々の組織液源に存在する。細胞、MV、Exo及び/又は可溶性分子のタンパク質及び/又は核酸レベルは組織のヒト生理学及び病理学の状況を反映するので、細胞、Exo及び/又は可溶性分子は疾患の予測、診断及び予防のための好適な手段であり、細胞、MV、Exo及び/又は可溶性分子のタンパク質及び/又は核酸レベルが検出されて正常な健常被検体のものと比較され得る。
【0004】
細胞、MV、Exo及び/又は可溶性分子は、病気であっても正常であっても、種々の種類の細胞(例えば、内皮細胞、上皮細胞、白血球など)に由来し得るものであり、遠隔組織(例えば、脳、心臓、肝臓、骨髄、肺、腎臓、並びに胎児、母体及び胎盤組織を含む生殖組織)から放出され得ることから、関連技術において被検体の生物学的サンプルから細胞、MV、Exo及び/又は可溶性分子を単離するための手段の必要性が存在するので、単離された細胞、MV、Exo及び/又は可溶性分子は単離された細胞、MV、Exo及び/又は可溶性分子におけるバイオマーカーのインサイチュ又はエクスサイチュの指定された生体分析を受け得ることになり、被検体の分析されるバイオマーカーに関する疾患及び/又は状態に診断又は予防を与え得る。好ましくは、分析されたバイオマーカーに基づいて、適切な治療が被検体に施されて、疾患及び/又は状態に関連する症状を緩和及び/又は改善し得る。
【発明の概要】
【0005】
以下に、基本的な理解を読者に与えるために開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示の詳細な概観ではなく、本発明の鍵となる/重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を詳述するものでもない。その専らの目的は、ここに開示される幾つかの概念を、後述のさらに詳細な説明の序章としての簡略な形態で提示することである。
【0006】
ここに具現化され、広く記載されるように、本開示の一態様は、尿サンプルからの対象物質(MOI)を単離するためのデバイスに向けられる。該デバイスは、直径1.0~20μm、0.20~1.0μm又は0.05~0.02μmのサイズを独立して有する少なくとも3つの個体群のMOIを保持するように構成された少なくとも1つのフィルターを具備するカートリッジを具備する。
【0007】
本開示の実施形態によると、前記フィルターは、サイズ排除カラム、アフィニティーカラム、エルトリエーター又は多孔質膜であり得る。好適な一実施形態では、前記カートリッジは、アニオン交換カラムであるアフィニティーカラムを具備する。他の好適な実施形態では、前記カートリッジは、相互に直列接続された3段のフィルターを具備し、第1、第2及び第3のフィルターは、それぞれ直径約0.8~1μm、0.20~0.22μm及び0.03~0.05μmの複数の孔を独立して具備する多孔質膜である。
【0008】
本開示の好適な実施形態によると、直径1.0~20μmのサイズを有するMOIの前記個体群は細胞を含み、直径0.20~1.0μmのサイズを有するMOIの前記個体群は微小小胞体(MV)を含み、直径0.05~0.02μmのサイズを有するMOIの前記個体群はエクソソーム(Exo)を含む。
【0009】
代替的又は選択的に、前記デバイスは、前記尿サンプルを収容するために前記カートリッジの上流側に配置された第1の貯蔵容器と、直径0.05μm未満の可溶性分子を含む濾過液を収集するために前記カートリッジの下流側に配置された第2の貯蔵容器とをさらに含み得る。
【0010】
本開示の実施形態によると、直径0.05μm未満の前記可溶性分子は、DNA、RNA、タンパク質、グリカン、脂質又はその組合せを含む。
【0011】
本開示の実施形態によると、前記フィルターは、セラミック、樹脂、金属、ポリマー、中空繊維又はその組合せで構成される。
【0012】
本開示の実施形態によると、前記セラミックは、ゼオライト、シリカ、シリコンカーバイド、アルミナ、チタン酸アルミニウム、スピネル、ムライト、リン酸ジルコニウム、ペロブスカイト及びその組合せからなる群から選択される材料で構成される。
【0013】
本開示の実施形態によると、前記樹脂は、有機化合物、合成化合物及びその組合せからなる群から選択される材料で構成される。
【0014】
本開示の実施形態によると、前記金属は、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銀、金、カドミウム、コバルト、鉄、モリブデン、ニオブ、銅、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、合金及びその組合せからなる群から選択される。
【0015】
本開示の実施形態によると、前記ポリマーは、ポリセルロース、ポリエステル、ポリエーテル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリウレア、ポリエステル-アミド、ポリエチレン-テレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリエステル-ウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びその組合せからなる群から選択さる。
【0016】
本開示の実施形態によると、前記中空繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維又はその組合せである。
【0017】
本開示の第2の態様は、上記デバイスの使用によって尿サンプルから対象物質(MOI)を単離する方法を提供することを目的とする。方法は、
(a)前記フィルターにおいて直径1.0~20μm、0.20~1.0μm又は0.05~0.02μmのサイズを独立して有する少なくとも3個の個体群のMOIを保持するように、前記尿サンプルを請求項1に記載のデバイスの前記カートリッジに通過させるステップと、
(b)前記カートリッジから溶出された濾過液を収集するステップであって、前記濾過液は0.05μm未満の可溶性分子を含む、ステップと、
(c)前記フィルターから、及び前記ステップ(b)において収集された前記濾過液からMOTをそれぞれ収穫するステップと、
を含む。
【0018】
本開示の好適な実施形態によると、直径1.0~20μmのサイズを有するMOIの前記個体群は細胞を含み、直径0.20~1.0μmのサイズを有するMOIの前記個体群は微小小胞体(MV)を含み、直径0.05~0.02μmのサイズを有するMOIの前記個体群はエクソソーム(Exo)を含み、直径0.05μm未満の前記可溶性分子はDNA、RNA、タンパク質、グリカン、脂質又はその組合せを含む。
【0019】
本開示の実施形態によると、前記ステップ(c)において収穫された前記MOI、前記ステップ(b)において可溶性高分子を含む前記濾過液、又は前記ステップ(a)においてMOIがそこに保持された前記フィルターに対して、その上又はその中の少なくとも1つのバイオマーカーを検知するための免疫ブロット法、チップ分析、蛍光プローブ分析、酵素又は電気化学反応が行われる。
【0020】
前記MOIの前記バイオマーカーの例は、これに限定されないが、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、脳由来神経栄養因子(BNDF)、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、IGFB2、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL1-ra)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子受容体1(IGFR1)、線維芽細胞増殖因子1(FGF-1)、FGF-2、レプチン、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)、VEGF-C、VEGF-D、肝細胞増殖因子(HGF)、E-カドヘリン、ロイシンリッチアルファ-2-糖タンパク質1(LRG1)、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、8-オキソヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、α-シヌクレイン、L1細胞接着分子(L1CAM)、S100カルシウム結合タンパク質A8(S100A8)、β4インテグリン、ムチン5AC(Muc5AC)、アンフィレグリン(AREG)、細胞接着分子1(CADM1)、コクリン、アルギナーゼ-1(Arg-1)、β-ガラクトシダーゼ、インターフェロンガンマ-誘導タンパク質10(IP-10)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、成長制御アルファタンパク質(GRO-α)、シンデカン1、シンデカン4、単球走化性タンパク質-3(MCP-3)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ゾヌリン、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)、高移動度群ボックス1(HMGB1)又は核酸を含む。
【0021】
本開示の更なる態様は、本デバイスの補助によって被検体の尿サンプルから疾患の診断又は予後推測を行う方法を提供することを目的とする。尿サンプルは、細胞、微小小胞体、エクソソーム及び可溶性高分子を含み、前記細胞、前記微小小胞体、前記エクソソーム及び前記可溶性分子の各々は、その上及び/又はその中に発現した標的分子を有する。前記方法は、
(a)前記尿サンプルを本デバイスのカートリッジに通過させることにより、前記細胞、前記微小小胞体及び前記エクソソームを少なくとも1つのフィルターによって保持するステップと、
(b)前記カートリッジの、可溶性分子を含む濾過液を収集するステップと、
(c)捕捉分子を、ステップ(b)で収穫された前記可溶性分子に、並びにステップ(a)で前記少なくとも1つのフィルターによってそれぞれ保持された前記細胞、前記微小小胞体及び前記エクソソームに添加するステップであって、各捕捉分子はレポーター分子に結合され、前記標的分子に対する結合親和性を示す、ステップと、
(d)ステップ(c)における前記標的分子に結合された前記レポーター分子のレベルを検出するステップと、
(e)ステップ(d)における前記レポーター分子の検出レベルに基づいて診断又は予後推測を行うステップであって、前記レポーター分子の前記検出レベルが健常被検体から得られた基準サンプルのものと異なる場合に、前記被検体は疾患を有し、又は疾患が進行するリスクにある、ステップと、
を具備する。
【0022】
本開示の実施形態によると、前記レポーター分子は、タグ分子、放射性分子、蛍光分子、燐光分子、化学発光分子及び酵素からなる群から選択される。
【0023】
本開示の実施形態によると、ステップ(d)において、前記レポーター分子のレベルは電気化学分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、フローサイトメトリーアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、チップアレイ、ビーズアレイ、ウエスタンブロット解析又はキナーゼアッセイによって検出される。
【0024】
本開示の実施形態によると、前記捕捉分子は、アプタマー、グリカン、抗体又はその組合せである。
【0025】
本開示の実施形態によると、前記標的分子は、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、脳由来神経栄養因子(BNDF)及びインスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、IGFBP2、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL1-ra)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子受容体1(IGFR1)、線維芽細胞増殖因子1(FGF-1)、FGF-2、レプチン、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)、VEGF-C、VEGF-D、肝細胞増殖因子(HGF)、E-カドヘリン、ロイシンリッチアルファ-2-糖タンパク質1(LRG1)、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、8-オキソヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、α-シヌクレイン、L1細胞接着分子(L1CAM)、S100カルシウム結合タンパク質A8(S100A8)、β4インテグリン、ムチン5AC(Muc5AC)、アンフィレグリン(AREG)、細胞接着分子1(CADM1)、コクリン、アルギナーゼ-1(Arg-1)、β-ガラクトシダーゼ、インターフェロンガンマ-誘導タンパク質10(IP-10)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、成長制御アルファタンパク質(GRO-α)、シンデカン1、シンデカン4、単球走化性タンパク質-3(MCP-3)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ゾヌリン、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)、高移動度群ボックス1(HMGB1)又は核酸のいずれかである。
【0026】
本開示の実施形態によると、前記核酸は、DNA又はRNAであり得る。
【0027】
本開示の実施形態によると、前記疾患は、癌、炎症性疾患、変性疾患、感染症疾患又は生殖疾患であり得る。
【0028】
前記癌の例は、これに限定されないが、胃癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、膵臓癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、前立腺癌、肝細胞癌、黒色腫、食道癌、多発性骨髄腫及び頭頸部癌を含む。
【0029】
前記炎症性疾患の例は、これに限定されないが、乾癬、大腸炎、火傷、急性腎障害、外傷性脳損傷、皮膚損傷、関節炎及び自己免疫疾患を含む。
【0030】
前記変性疾患の例は、これに限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、脳卒中、慢性腎臓病、慢性肺疾患、良性前立腺肥大及び難聴を含む。
【0031】
前記感染症疾患の例は、これに限定されないが、バクテリア、ウイルス又は菌類によってもたらされる感染を含む。
【0032】
前記生殖疾患の例は、これに限定されないが、自然流産、子宮内遅延、子宮内感染、先天性異常、早期分娩、子癇前症及び妊婦糖尿病を含む。
【0033】
本方法の前記被検体は、好ましくは哺乳類である。本開示の幾つかの実施例によると、前記被検体はヒトである。
【0034】
本開示の付随する構成及び効果の多くは、添付図面との関連で検討される以下の詳細な説明を参照してより深く理解されることになる。
【0035】
特許又は出願は、カラーで示された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を有するこの特許公報又は特許出願公開公報の複製は、要求及び必要な料金の支払に応じて特許庁によって提供されることになる。本記載は、添付図面を考慮して読まれる以下の詳細な説明からより深く理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A図1Aは、本開示の一実施形態によって構築された生物学的サンプルからMOIを単離するためのデバイス100を示す模式図である。
図1B図1Bは、本開示の選択的実施形態による図1Aのデバイス100を示す模式図である。
図2図2は、本開示の一実施形態による、尿MOI間のE-カドヘリンの差次的発現を示す写真である。
図3図3は、本開示の一実施形態によるアニオン交換クロマトグラフィーによるEVの単離を示す写真である。
図4図4は、本開示の一実施形態による、若年被検体(Y)と高齢被検体(O)との間の細胞、MV、EV間の(A)神経細胞接着分子L1(LICAM)、(B)神経特異的エノラーゼ(NSE)及び(C)好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)の差次的発現を示す写真である。
図5図5は、本開示の一実施形態による、正常分娩(N)又は早期分娩(P)の妊娠女性間での本デバイスによって独立して単離された細胞、MV、Exo(EV)及び可溶性濾過液(Soln)間の種々の血管伝達物質及びサイトカインの差次的発現を示す棒グラフである。
図6図6は、本開示の一実施形態による、MV、Exo及び可溶性濾過液(Soln)間の種々のバイオマーカーの差次的発現を示す棒グラフである。
図7図7は、本開示の一実施形態による、若年成人被検体(AVG-Young)と高齢成人被検体(AVG-Old)との間のMV、Exo及び可溶性濾過液(Soln)間の種々のバイオマーカーの差次的発現を示す棒グラフである。
図8図8は、本開示の一実施形態による、パーキンソン病を有する成人(AVG-PD)と同年齢の健常な成人(AVG-C)との間のMV、Exo及び可溶性濾過液(Soln)間の種々のバイオマーカーの差次的発現を示す棒グラフである。
図9図9は、本開示の一実施形態による、若年被検体(Y1、Y2)、高齢被検体(O1、O2、O3及びO4)及びPD被検体(PD1、PD2)の間のロイシンリッチアルファ-2-糖タンパク質1(LRG1)の発現を示す写真である。
図10図10は、本開示の一実施形態による、若年成人被検体と高齢(Old)成人被検体との間のMV、Exo及び濾過液(Soln)間のDNAレベルを示す棒グラフである。
図11図11は、本開示の一実施形態による、PDを有する又は有さない高齢被検体間のMV、Exo及び可溶性濾過液(Soln)間の8OHdGのレベルを示す棒グラフである。
図12図12は、本開示の一実施形態による、デングウイルス感染に罹患した被検体におけるMV、Exo及び可溶性濾過液(Soln)間のデングウイルスNS1抗原、タンパク質バイオマーカー及びDNAのレベルのデータを示し、(A)はNS1抗原のウエスタンブロット解析であり、(B)及び(C)は(B)臨床的前兆を示さなかったデング被検体及び(C)臨床的前兆を示したデング被検体におけるMV及びExo間のバイオマーカーの差次的発現をそれぞれ示す棒グラフであり、(D)は健常な被検体とデングウイルス感染した被検体との間のMV及びExo間の8OHdGのレベルを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る形態のみを示すものではない。その説明は、実施例の機能及び実施例を構成して動作させるためのステップのシーケンスを説明する。ただし、同一又は同等の機能及びシーケンスは、異なる実施例によっても実現され得る。
【0038】
1.定義
便宜上、明細書、実施例及び付随する特許請求の範囲において採用される所定の用語をここにまとめる。ここで特に断りがない限り、本開示で採用される科学的及び技術的専門用語は、一般的に当業者に理解及び使用される意味を有するものとする。また、文脈によってそれ以外が必要とされない限り、単数形の語はその複数形を含むものとし、複数形の語は単数形を含むものとすることが理解される。具体的には、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」及び「an」は、それ以外を文脈が明示しない限り、複数の参照を含む。また、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、用語「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、同じ意味を有し、1、2、3又はそれ以上を含む。
【0039】
発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは概数であるものの、特定の実施例で説明される数値は可能な限り厳密に報告される。ただし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的にもたらされる所定の誤差を本来的に含む。また、ここで使用されるように、用語「約」は、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%内を一般に意味する。あるいは、用語「約」は、当業者によって検討される場合の平均の許容標準誤差内を意味する。有効な/効果的な実施例以外においても、明示の断りがない限り、ここに開示されるその材料の量、継続時間、温度、動作条件、量の比率などに対するものなどの数値範囲、量、値及び割合の全ては、いずれの場合においても用語「約」によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは、所望のように変化し得る概数である。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効数字の数を考慮してかつ通常の四捨五入手段を適用して少なくとも解釈されるべきである。
【0040】
ここで使用される用語「対象物質(MOI)」とは、本開示のデバイスによって保持され得る細胞、小胞体、微小小胞体(MV)及びエクソソーム(Exo)のような物質のことをいい、特に、直径0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.67、0.66、0.67、0.68、0.069、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99及び1.0μmなど、少なくとも直径0.05μmの物質、そして、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカインなどと同様の可溶性分子のような、本デバイスの濾過液に存在する直径0.05μm未満の可溶性分子(すなわち、デバイスを通過して最終濾過液となる分子)のことをいう。
【0041】
ここで使用される用語「診断」とは、当業者が 患者が所与の疾患又は状態を患っているか否かの確率(可能性)を推定及び/又は特定することができる方法のことをいう。本開示の場合では、「診断」は、サンプルが取得及び測定される被検体について、本発明の特異的な標的分子の発現レベルを選択的に他の臨床的特徴とともに用いて、癌、変性疾患、感染症疾患又は老化の診断(すなわち、発生又は未発生)に帰着することを含む。そのような診断が「特定される」ことは、診断が100%正確であることを示唆することを意味しない。多数のバイオマーカーが、複数の状態を示す。熟練臨床医は情報空白時にはバイオマーカーの結果を用いるのではなく、試験結果が他の臨床的インディシアとともに用いられて診断に帰着する。したがって、所定の診断閾値の一方の側の測定バイオマーカーレベルは、所定の診断閾値の他方の側の測定レベルに対して、被検体における疾患の発生のより大きな可能性を示す。
【0042】
ここでの用語「リスク」とは、結果が、望まれない結果、例えば、疾患又は状態の発生、進行又は再発、例えば、早期分娩、変性疾患、感染症疾患、老化などをもたらさない可能性のことをいう。
【0043】
用語「投与され」、「投与する」又は「投与」は、本発明の薬剤(例えば、抗変性、抗感染症又は抗老化薬剤)を、限定することなく、静脈内に、筋肉内に、関節内に、腫瘍内に、腹腔内に、動脈内に、頭蓋内に、又は皮下に投与することを含む送達のモードをいうのにここでは互換可能に使用される。
【0044】
ここで使用される「治療/処置(treatment)」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患又は状態の防止的(例えば、予防的)、治癒的又は緩和的な治療/処置を含み、(1)疾患又は状態に罹患しやすいが未だにそれを有していると診断されていない個人において、疾患又は状態(例えば、癌、変性疾患、感染症疾患又は老化)が発生することの防止的(例えば、予防的)、治癒的又は緩和的な治療、(2)疾患又は状態を(例えば、その進行を阻止することによって)阻害すること、又は(3)疾患又は状態を(例えば、その疾患又は状態に関連する症状を軽減して)緩和することを含む。
【0045】
ここでいう用語「有効量」は、所望の反応をもたらすのに充分な量の成分を示す。治療の目的のため、有効量は、治癒的に有益な効果が成分の任意の毒性又は有害な効果を上回る量でもある。薬剤の有効量は、疾患又は状態を治癒することは要件とされないが、疾患若しくは状態の発症が遅延、阻害若しくは予防され、又は疾患若しくは状態の症状が改善されるように、疾患又は状態に対する治療を与えることになる。有効量は、指定期間を通じて1、2又はそれ以上の回数で投与されるように適切な形態で1、2、又はそれ以上の用量に分けられてもよい。具体的な有効な又は充分な量は、治療されている特定の状態、患者の肉体的状態(例えば、患者の体重、年齢又は性別)、治療されている哺乳類又は動物の種類、治療の継続期間、(それがある場合には)同時に行われる治療の性質、並びに採用される具体的調剤及び化合物又はその誘導体の構造といった要因とともに変化することになる。有効量は、例えば、細胞数、グラム、ミリグラム若しくはマイクログラムで、又は体重の1キログラムあたりのミリグラム(mg/Kg)として表現され得る。あるいは、有効量は、細胞濃度、モル濃度、質量濃度、体積濃度、重量モル濃度、モル分率、質量分率及び混合比のような活性成分(例えば、本開示の抗変性又は抗感染症薬剤)の濃度で表現されることもある。当業者であれば、動物モデルから決定された用量に基づいて(本抗変性又は抗感染症薬剤などの)医薬品についてのヒト等価用量(HED)を計算できるはずである。例えば、ヒト被検体での使用に対する最大安全投与量を推定する際に、米国食品医薬品局(FDA)によって発行された工業用ガイダンス「Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」に従うことができる。
【0046】
本開示においてここで使用される用語「被検体」とは、哺乳類、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、サル及びウマのことをいう。用語「被検体(被検者)」は、ある性別が具体的に示されない限り、雄/男性及び雌/女性の両方をいうものとする。好適な実施形態によると、被検体はヒトである。
【0047】
用語「健常被検体(被検体)」とは、疾患又は状態を有さない被検体、例えば、早期分娩の症状、変性疾患若しくは感染症疾患を有さない被検体又は老化状態にない被検体(すなわち、30歳前後又はそれ未満の被検体)のことをいう。一般に、用語「健常被検体(被検体)」とは、疾患又は状態を有するものと診断されていない被検体のことをいい、疾患又は状態に関連する1以上(例えば、2、3、4又は5個)の症状を示さない被検体のことをいう。
【0048】
II.本発明の説明
1.生物学的サンプルからMOIを単離するためのデバイス及び方法
この発明の全体的な概念は、生物学的サンプルからMOI(例えば、細胞、微小小胞体、エクソソームなど)を単離することにあり、単離は、サイズ排除、親和性又はイオン強度の変化によって達成される。したがって、デバイスは、サイズ排除カラム、アフィニティーカラム、エルトリエーター又は多孔質膜であり得る少なくとも1つのフィルターの使用によって構成される。そして、結果として単離されたMOIはその中に又はその上に存在するバイオマーカーに対する分析を受けることになるので、生物学的サンプルが由来する被検体の疾患及び/又は状態の診断及び/又は予防が、健常な正常被検体に由来するサンプルであり得る対照サンプルのものとの比較として、バイオマーカーの検出レベルに基づいて行われ得る。
【0049】
1.1 サイズ排除によるMOIの単離
図1Aは、本開示の実施例1.1によって構築された生物学的サンプルからMOIを単離するためのデバイス100を示す模式図である。デバイス100は、3個の直列接続されたフィルター120130及び140を内部に備えるカートリッジ110を備える。3個のフィルター120130及び140は、それぞれ多孔質膜であり、降順の孔径で並べられる。具体的には、カートリッジ110の注入口101から排出口102にかけて、1つのフィルターの孔径が後続のフィルターのものよりも大きくなる。言い換えると、第1のフィルターにおける孔径は第2のフィルターのものよりも大きく、それは第3のフィルターのものよりも大きい。本開示の好適な一実施形態によると、第1のフィルター120は直径約0.8~1μmの孔を備え、第2のフィルター130は直径約0.20~0.22μmの孔を備え、第3のフィルター140は直径約0.03~0.05μmの孔を備える。このフィルターの配置によって、直径1.0~20μm、0.20~1.0μm又は0.05~0.02μmのサイズを独立して有するMOIの少なくとも3個の個体群が単離され得る。
【0050】
動作中、カートリッジ110は、好ましくは、カートリッジ110の注入口101を上向きにし、カートリッジ110の排出口102を下向きにして直立位置に配置される。生物学的サンプル(例えば、尿サンプル)のアリコートは、注入口101から供給され、第1のフィルター120を通過して下方に流れ、そこでは直径1.0~20μm、好ましくは少なくとも直径0.8μmの生物学的サンプルにおけるMOI(例えば、細胞)が第1のフィルター120に保持され、サンプルの残りが下方に第2のフィルター130に流れ続けて、そこでは直径0.2~1.0μm、好ましくは少なくとも直径0.2μmのMOI(例えば、MV)が第2のフィルター130に保持され、その後にサンプルの残りが下方に第3のフィルター140に流れ続けて、そこでは直径0.2~0.05μm、好ましくは少なくとも直径0.05μmのMOI(例えば、エクソソーム)が保持される。3個のフィルター120130及び140のいずれによっても保持できない物質を含有するサンプルの残りは濾過液となり、それはカートリッジ110の排出口102から収集される。一般に、カートリッジ110に供給されるとサンプルのアリコートは、重力の作用によって自然にカートリッジ110を通過して流れる。代替的又は選択的に、サンプルは、ポンプ、シリンジなどの補助によって手動的又は自動的に、力の補助によって押し出されてもよい。
【0051】
代替的又は選択的に、図1Bに示すように、デバイス100は、動作前及び/又は動作中に生物学的サンプルを収容するためにカートリッジ110の上流側に配置された第1の貯蔵容器160をさらに含んでいてもよい。代替的又は選択的に、生物学的サンプルにおける直径20μm超の分子がカートリッジ110に浸入しないようにするために、追加のフィルター150(すなわち、第4のフィルター150)が、第1の貯蔵容器160の後段であってカートリッジ110の前段に配置されてもよい。代替的又は選択的に、第2の貯蔵容器170が、デバイス100から溶出された濾過液を収集するためにカートリッジ110の排出口102の下流側に配置されてもよい。
【0052】
本開示の実施形態によると、第1のフィルターによって保持される少なくとも0.8μmのMOIは細胞であり、第2のフィルターによって保持される少なくとも0.2μmのMOIは微小小胞体(MV)であり、第3のフィルターによって保持される少なくとも0.05μmのMOIはエクソソーム(Exo)である。カートリッジの排出口102から収集される濾過液は、直径0.05μm未満のMOI(すなわち、可溶性高分子)を含む。直径0.05μm未満のMOI(すなわち、可溶性分子)は、DNA、RNA、タンパク質、グリカン、脂質又はその組合せを含む。
【0053】
第1、第2及び第3のフィルターによってそれぞれ保持されたMOI、その他濾過液に存在するMOIは、当業者に周知の被分析バイオマーカーに特異的な適切な手段によってその上又はその中に発現したバイオマーカーのレベル及び/又はパターンについて、独立して収穫及び分析され得る。
【0054】
1.2 親和性又はイオン強度の変化によるMOIの単離
本開示の代替的実施形態によると、生物学的サンプルからのMOIの単離は、アフィニティーカラムの使用によって達成される。したがって、デバイスは、MOIを単離するためのフィルターとして作用するアニオン交換カラムを備える。この特定の実施形態では、生物学的サンプル(例えば、尿サンプル)のアリコートが、アニオン交換カラムを備える本デバイスに供給され、そして所望のサイズのMOIが高濃度の塩類溶液によって溶出される。この態様によって、直径1.0~20μm、0.20~1.0μm又は0.05~0.20μmのサイズを独立して有するMOIの少なくとも3個の個体群が単離される。具体的には、直径1.0~20μmのサイズを有するMOIの個体群は細胞を含み、直径0.20~1.0μmのサイズを有するMOIの個体群は微小小胞体(MV)を含み、直径0.05~0.20μmのサイズを有するMOIの個体群はエクソソーム(Exo)を含む。
【0055】
1.3 本デバイスのフィルター
本開示の実施形態によると、本デバイス及び/又は方法の使用に適したフィルターは、フィルターで構成される材料は所望のサイズ及び特性のMOIを保持することができることを条件として、セラミック、樹脂、金属、ポリマー、中空繊維又はその組合せによって構成され得る。
【0056】
本デバイスのフィルターを構成するのに適したセラミックの例は、これに限定されないが、ゼオライト、シリカ、シリコンカーバイド、アルミナ、チタン酸アルミニウム、スピネル、ムライト、リン酸ジルコニウム、ペロブスカイト及びその組合せを含む。
【0057】
本デバイスのフィルターを構成するのに適した樹脂の例は、これに限定されないが、有機化合物、合成化合物及びその組合せを含む。
【0058】
本デバイスのフィルターを構成するのに適した金属の例は、これに限定されないが、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銀、金、カドミウム、コバルト、鉄、モリブデン、ニオビウム、銅、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、合金及びその組合せを含む。
【0059】
本デバイスのフィルターを構成するのに適したポリマーの例は、これに限定されないが、ポリセルロース、ポリエステル、ポリエーテル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリウレア、ポリエステル-アミド、ポリエチレン-テレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリエステル-ウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びその組合せを含む。
【0060】
本デバイスのフィルターを構成するのに適した中空繊維の例は、これに限定されないが、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維及びその組合せを含む。
【0061】
本開示の実施形態によると、MOIを単離するのに適した生物学的サンプルの例は、これに限定されないが、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、羊水、気管支肺胞洗浄液、血液又は唾液を含む。好ましくは、MOIを単離するのに尿が用いられる。
【0062】
2.本方法及び/又はデバイスによって保持及び/又は単離されたMOIの使用
本デバイスは、上記の1個のアフィニティーカラム又は上述の3個の直列接続された多孔質膜フィルターのいずれかを備え、手動的又は自動的に動作するように設計され得る。手動モードでは、所望のMOIがそこに保持された各フィルターが、カートリッジから手動で分解され、ユーザのニーズ及び/又はインストラクションに応じて、DNA、バイオマーカーなどのレベルの測定などの後の分析を受け得る。代替的又は選択的に、デバイスは自動的に動作するように設定されてもよく、そこではデバイスは適切な分析器に結合されてもよく、それにより、MOIの単離が完了すると、所望のMOIがそこに保持された各フィルターは、ユーザのニーズ及び/又はインストラクションに応じて、免疫測定法、クロマトグラフィー分析、チップアレイ分析、電気化学分析などのような予め指定されたアッセイを自動的に受ける。
【0063】
フィルターに保持されたMOI及び濾過液に存在するMOIを含む、本方法及び/又はデバイスによって単離されたMOIは、当業者に周知の被分析バイオマーカーに特異的な適切な手段によってその上又はその中に発現したバイオマーカーのレベル及び/又はパターンについて、独立して収穫及び分析され得る。MOIにおけるバイオマーカーの検出されたレベル及び/又はパターンは、被検体における病理学上の状態の診断及び/又は予防のためのインジケーターとして作用し得る。
【0064】
本開示の一実施形態では、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)のような血管伝達物質のレベル及び発現パターン、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、脳由来神経栄養因子(BNDF)及びインスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、IGFBP2、その他IL-6、IL-8、IL-10、IL-8、IL-10、C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)及びインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL1-ra)を含むサイトカインが、妊娠女性の尿サンプルから単離されたMOI(本デバイスに保持された細胞、MV及びエクソソームを含む)においてそれぞれ検出される。本開示の実施形態によると、sFlt1/IL-10、PAPPA/IL-10又はIL-1ra/IL-10の比が比較的高いほど、妊娠女性の早期分娩のリスクは高くなる。
【0065】
他の実施形態では、線維芽細胞増殖因子1(FGF-1)、FGF-2、レプチン、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、血管内皮増殖因子D(VEGF-D)及び肝細胞増殖因子(HGF)などのバイオマーカーのレベル及び/又は発現パターンは、若年又は高齢被検体の尿サンプルから単離されたMOI(フィルターに保持された細胞、MV及びエクソソーム並びにカートリッジから溶出された濾過液を含む)においてそれぞれ検出される。好適な実施形態によると、高齢被検体は高いレベルの、MVにおけるFGF-1、エクソソームにおけるVEGF-D及び可溶性フラクション(すなわち、本方法及び/又はデバイスの最終濾過液)におけるPLGFを有する一方で、若年被検体は高いレベルの、MVにおけるFGF-2を有する。
【0066】
更なる実施形態では、FGF-1、HB-EGF及びレプチンなどのバイオマーカーのレベル及び/又は発現パターンは、パーキンソン病(PD)を有する又を有さない高齢被検体の尿サンプルから単離されたMOI(フィルターに保持された細胞、MV及びエクソソーム並びにカートリッジから溶出された濾過液を含む)においてそれぞれ検出される。好適な一実施形態によると、PD被検体の単離されたエクソソームは、高いレベルのレプチンを示したが、同年齢の健常な成人においては無視できる量のレプチンしか見られなかった。
【0067】
更なる実施形態では、デングウイルスNS1抗原のレベル、そしてEGF、G-CSF、VEFG-A、レプチンなどのようなバイオマーカーのレベル及び/又は発現パターンが、デングウイルス感染を患う被検体の尿サンプルから単離されたMOI(フィルターに保持された細胞、MV及びエクソソーム並びにカートリッジから溶出された濾過液を含む)においてそれぞれ検出される。好適な一実施形態によると、著しいレベルのNS1抗原が、デング患者から単離されたMVで見られた。また、デング患者の尿MV及びExoは著しく高いレベルのEGFを有したが、尿エクソソームだけはG-CSFの発現を有した。また、臨床的前兆を示すデング被検体は、前兆のないデング患者のものと比較して、高いレベルのレプチン及びVEGF-Aを有したが、低いレベルのG-CSFを有した。
【0068】
2.1 本デバイス及び/又は方法の補助による被検体の病理学的状態の予後推測
そこで、本開示はまた、生物学的サンプルが本デバイス及び/又は方法によって単離されたMOIを備える被検体の生物学的サンプルから疾患の診断又は予後推測を行う方法を提供する。したがって、単離されるMOIは細胞、微小小胞体、エクソソーム及び可溶性高分子の場合があり、細胞、微小小胞体、エクソソーム及び可溶性分子の各々はその上及び/又はその中に発現した標的分子を有する。方法は、
(a)生物学的サンプルを本デバイスのカートリッジに通過させることにより、細胞、微小小胞体及びエクソソームをそれぞれ保持するステップと、
(b)カートリッジの、可溶性分子を含む濾過液を収集するステップと、
(c)捕捉分子を、ステップ(b)で収穫された可溶性分子に、並びにステップ(a)で本デバイスによってそれぞれ保持された細胞、微小小胞体及びエクソソームに添加するステップであって、各捕捉分子はレポーター分子に結合され、標的分子に対する結合親和性を示す、ステップと、
(d)ステップ(c)における標的分子に結合されたレポーター分子のレベルを検出するステップと、
(e)ステップ(d)におけるレポーター分子の検出レベルに基づいて診断又は予後推測を行うステップであって、レポーター分子の検出レベルが健常被検体から得られた基準サンプルのものと異なる場合には、被検体は疾患を有し又は疾患が進行するリスクにある、ステップと、
を備える。
【0069】
本方法における使用に適したレポーター分子の例は、これに限定されないが、タグ分子、放射性分子、蛍光分子、燐光分子、化学発光分子及び酵素を含む。
【0070】
本開示の実施形態によると、ステップ(d)において、レポーター分子のレベルは電気化学分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、フローサイトメトリーアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、チップアレイ、ビーズアレイ、ウエスタンブロット解析又はキナーゼアッセイによって検出される。
【0071】
本開示の実施形態によると、捕捉分子は、アプタマー、グリカン、レクチン、抗体又はその組合せであり得る。
【0072】
MOIにおける標的分子の例は、これに限定されないが、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、脳由来神経栄養因子(BNDF)及びインスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、IGFBP2、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL1-ra)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子受容体1(IGFR1)、線維芽細胞増殖因子1(FGF-1)、FGF-2、レプチン、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)、VEGF-C、VEGF-D、肝細胞増殖因子(HGF)、E-カドヘリン、ロイシンリッチアルファ-2-糖タンパク質1(LRG1)、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、8-オキソヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、α-シヌクレイン、L1細胞接着分子(L1CAM)、S100カルシウム結合タンパク質A8(S100A8)、β4インテグリン、ムチン5AC(Muc5AC)、アンフィレグリン(AREG)、細胞接着分子1(CADM1)、コクリン、アルギナーゼ-1(Arg-1)、β-ガラクトシダーゼ、インターフェロンガンマ-誘導タンパク質10(IP-10)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、成長制御アルファタンパク質(GRO-α)、シンデカン1、シンデカン4、単球走化性タンパク質-3(MCP-3)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ゾヌリン、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)、高移動度群ボックス1(HMGB1)及び核酸(例えば、DNA及びRNA)を含む。
【0073】
本開示の実施形態によると、適切な方法(例えば、免疫ブロット法、チップ分析、蛍光プローブ分析、酵素又は電気化学反応)を介して検知された、種々の特異的なマーカーの発現パターン及び/又は特定のマーカーの発現レベルの比が、疾患の診断及び/又は予後推測を行うのに使用可能である。
【0074】
本開示の実施形態によると、本方法によって診断され得る疾患は、これに限定されないが、癌、炎症性疾患、変性疾患、感染症疾患又は生殖疾患を含む。
【0075】
本方法によって診断され得る癌の例は、これに限定されないが、胃癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、膵臓癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、前立腺癌、肝細胞癌、黒色腫、食道癌、多発性骨髄腫及び頭頸部癌を含む。
【0076】
本方法によって診断され得る炎症性疾患の例は、これに限定されないが、乾癬、大腸炎、火傷、急性腎障害、外傷性脳損傷、皮膚損傷、関節炎及び自己免疫疾患を含む。
【0077】
本方法によって診断され得る変性疾患の例は、これに限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、脳卒中、慢性腎臓病、慢性肺疾患、良性前立腺肥大及び難聴を含む。
【0078】
本方法によって診断され得る感染症疾患の例は、これに限定されないが、バクテリア、ウイルス又は菌類によってもたらされる感染を含む。
【0079】
本方法によって診断され得る生殖疾患の例は、これに限定されないが、自然流産、子宮内遅延、子宮内感染、先天性異常、早期分娩、子癇前症及び妊婦糖尿病を含む。
【0080】
2.2 疾患及び/又は状態の治療の方法
ここに開示するのは、本開示の方法の予後又は診断結果に基づいて被検体における早産、変性疾患又は感染症疾患を治療する方法でもある。具体的には、被検体における早産、変性疾患又は感染症疾患を治療する方法は、
(a)被検体から生物学的サンプルを取得するステップと、
(b)本デバイスの使用によって生物学的サンプルからMOIを単離するステップと、
(c)MOIの少なくとも1つの標的分子の発現レベルを検出するステップと、(d)ステップ(c)において検出された少なくとも1つの標的分子の発現レベルに基づいて被検体を治療するステップと、
(d)MOIの少なくとも1つの標的分子の発現レベル又は2つの標的分子の発現レベルの比が、健常被検体から得られた基準サンプルのものとは異なる(すなわち、より高い又はより低い)場合に、有効量の治療薬剤を被検体に投与するステップと、
を備える。
【0081】
治療方法のステップ(a)~(c)は、本開示の1.1又は1.2章において説明した方法のステップと同様であるので、説明の簡明化のため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0082】
ステップ(d)において、当業者又は臨床医は、ステップ(c)で検出された発現レベルに応じて有効量の治療薬剤(例えば、抗変性薬剤又は抗感染症薬剤)を、それを必要とする被検体に投与することができる。具体的には、上述したように、基準サンプルの物とは異なる、1以上の標的分子の発現レベル又は2つの標的分子の発現レベルの比を有する被検体は、被検体が変性疾患又は感染症疾患を有し又はそれを進行させるリスクにあることを示し、それに従って、当業者又は臨床医は、適切な治療をそのような被検体に施すことにより、変性疾患又は感染症疾患の発生又はそれに関連する症状を予防、軽減及び/又は改善することができる。
【0083】
本開示では、治療薬剤は、健常被検体の物とは異なるMOI(例えば、MV)における1以上の標的分子の発現パターンを有する被検体に投与され、ここで治療薬剤は被検体のMOIにおける1以上の標的分子の発現パターンを取り戻し得るアゴニスト又はアンタゴニストであり得る。
【0084】
早産を予防し得る治療薬剤の例は、これに限定されないが、プロゲステロン、コルチコステロイド、ニフェジピンなどを含む。
【0085】
変性疾患を治療する際に有効な治療薬剤の例は、これに限定されないが、クルクミン、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリンを含む、BCAA)、コリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル(Aricept)、ガランタミン(Razadyne)及びリバスチグミン(Exelon))、メマンチン(Namenda)、オメガ-3脂肪酸、イチョウ、ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEを含む)、レボドパ、カルビドパ、ドーパミンアゴニスト(プラミペキソール(Mirapex)、ロピニロール(Requip)、ロチゴチン(Neupro)及びアポモルヒネ(Apokyn)など)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(セレギリン(Eldepryl、Zelapar)、ラサギリン(Azilect)、サフィナミド(Xadago)などのMAO阻害剤)、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤(エンタカポン(Comtan)及びトルカポン(Tasmar)など、COMT阻害剤)、抗コリン薬(ベンザトロピン(Cogentin)及びトリヘキシフェニジルなど)及びアマンタジンを含む。
【0086】
感染症を治療する際に有効な治療薬剤の例は、これに限定されないが、抗ウイルス抗体、抗生物質、インターフェロンアルファ、アプタマーなどを含む。
【0087】
治療薬剤は、適切な経路、例えば、局所的、粘膜的(例えば、結膜内、鼻腔内、気管内)、経口、脊髄内(例えば、髄腔内)、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、関節内、心室内、脳室内、腹腔内、腫瘍内及び中耳内投与によって被検体に投与され得る。
【0088】
理解されるように、本方法は、単独で、又は変性疾患、感染症疾患若しくは早期分娩の治療に何らかの有益な効果を有する追加の療法と組み合わせて、被検体に適用可能である。意図される目的に応じて、本方法は、追加の療法の投与前、投与中又は投与後に被検体に適用可能である。
【0089】
2.3 標的分子の使用
本開示の他の態様は、キットの製造のためのバイオマーカーとして作用する標的分子の使用に向けられる。本開示の使用は、
バイオマーカーは、MOI内又はMOI上に発現する標的分子であり、
キットは、被検体が早産、変性疾患又は感染症疾患を有し又はその進行のリスクにあるかの診断又は予後推測を行うのに有用であり、
早産の予後推測又は診断においては、標的分子は、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、IL-6、IL-10、IL-1ra及びその組合せからなる群から選択され、
変性疾患の予後推測又は診断においては、標的分子は、EGF-1、レプチン、HB-EGF、EGF-2、VEGF-2、HGF、DPP4、CD90、EphA2、IL-2、IL-12、BDNF、B2M、IGFBP1、IGFBP2、CTGF、NFL、L1CAM、α-シヌクレイン、フラクタルキン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10、MCP-3、核酸(DNAなど)及びその組合せからなる群から選択され、
感染症疾患の診断又は予後推測においては、標的分子は、NS-1であり、
MOIの標的分子の発現レベル又は2つの標的分子の発現レベルの比が、健常被検体から取得された基準サンプルのものとは異なる(すなわち、より高い又はより低い)場合に、被検体は、早産、変性疾患又は感染症疾患を有し又はその進行のリスクにあることを示すことを特徴とする。
【0090】
以下の実施例は、本発明の所定の態様を明瞭にして本発明の実施の際に当業者を補助するために提供される。これらの実施例は、いかなる態様においても発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。更なる詳述なしに、当業者であれば、ここでの説明に基づいて、本発明をその最大の範囲で利用することができるはずである。ここに引用される全ての刊行物は、その全体において参照によってここに取り込まれる。
【実施例
【0091】
材料及び方法
MOIにおけるプロテオミクスプロファイルの検出
尿サンプルに由来するMOI(すなわち、MV又はExo)のタンパク質ペプチドに、ITRAQ(登録商標)(相対及び絶対定量化のための等圧タグ)のアッセイを行った。各MOIにおけるタンパク質濃度を、検討の前に測定及び等化した。ITRAQ(登録商標)法は、LC/MS-MS分光測定から取得されるタンパク質サンプル間のペプチドの比較に適した等圧フラグメントを生成する化合物で標識化するペプチドに基づくタンパク質定量法である。ITRAQ(登録商標)試薬114、ITRAQ(登録商標)試薬115、ITRAQ(登録商標)試薬116及びITRAQ(登録商標)試薬117の4個の等圧試薬のセットとして与えられたアプライドバイオシステムズITRAQ(登録商標)試薬(Applied Biosystems Inc.、米国)を採用して各MOIのタンパク質を標識化し、4個のサンプルを作製し、それにより4-プレックスサンプル分析をLC/MS-MS実験において行った。各サンプルをトリプシンによってペプチドに消化させ、標準化された個々の等圧フラグメントで標識化し、LC/MS-MS分析によって読み取った。
【0092】
E-カドヘリンレベルの検出
各サンプル(例えば、細胞、MV、Exo及びSoln)におけるE-カドヘリンのレベルを1mlのトリス緩衝液(TBS)において2時間にわたってビオチン標識化アプタマー(100μM)と混合することによって検出した。5mlのTBS-tween20(0.1%)で3回洗浄した後に、サンプルをストレプトアビジン-HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)溶液で2時間プローブ分析した。5mlの0.1%TBS-tween20で3回洗浄した後、サンプルをHRP基質試薬に曝露し、化学発光露光スクリーンが装備されたmyECLイメージャーによって読み取った。
【0093】
好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)レベルの検出
各サンプル(例えば、細胞、MV、Exo及びSoln)におけるNGALのレベルを1mlのトリス緩衝液(TBS)において2時間にわたってビオチン標識化特異的抗体(1:500)によって検出し、その後に5mlのTBS-tween20で3回洗浄してから、サンプルをストレプトアビジン-HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)溶液で2時間プローブ分析した。5mlの0.1%TBS-tween20で3回洗浄した後、サンプルをHRP基質試薬に曝露し、化学発光露光スクリーンが装備されたmyECLイメージャーによって読み取った。
【0094】
ウエスタンブロットアッセイ
尿サンプルに由来するMOIの総タンパク質の20マイクログラムに、変性条件下でSDS-PAGEを行った。タンパク質ゲルを、電気泳動後に、半乾燥転写装置によってニトロセルロース膜に転写した。トリス緩衝液(50mM)における非特異的結合のブロッキングのためにその膜を脱脂粉乳とともにインキュベートし、その後、抗体(1:2000希釈)又はアプタマー(100nM、例えば、それぞれE-カドヘリン及びムチン5Acに特異的な、配列番号(SEQ ID NO:)1又は2のアプタマー)とともにインキュベーションを行った。トリス緩衝液で洗浄して未結合の抗体又はアプタマーを除去した後、特異的なタンパク質の発現レベルをストレプトアビジン-HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)化学発光反応を介して検知した。
【0095】
尿におけるクレアチニンレベルの検出
尿におけるバイオマーカーレベルは様々な病理学的状態(例えば、空腹時又は食後の状態)において尿の濃度に影響を受けることになるので、尿クレアチニンレベルを測定して病理学的状態におけるばらつきからもたらされる変化を補正及び/又は補償した。各サンプル(例えば、細胞、MV、Exo及びSoln)における総タンパク質を、放射性免疫沈降法アッセイバッファー(RIPAバッファー、Merck KGaA、ダルムシュタット)による溶解の後に、標準分光光度計又は562nmにおけるプレートリーダーによって、Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific、米国)を用いた比色検出法によって測定した。尿クレアチニンレベルをアルカリ性ピクリン酸溶液の比色アッセイキットによって測定した。尿サンプルを希釈し(10μLのサンプルが190μLの脱イオン水で希釈された1:20の希釈)、50μlの希釈サンプルを100μlのアルカリ性ピクリン酸溶液に添加し、30分間反応させた。クレアチニン濃度を、マイクロプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific、米国)を用いた490nmの光学密度における標準曲線(0.3mg/dL-20mg/dL)との比較によって検出した。
【実施例1】
【0096】
実施例1 本デバイスの構築及び試験
1.1 直列接続されたフィルターを備えるデバイスによるMOIの単離
この実施例では、本デバイスのプロトタイプを構築及び試験した。簡単に説明すると、各々が孔径0.8μm、0.2μm及び/又は0.05μmを有する2又は3個のフィルターを直列接続した。フィルターは細胞(サイズ約0.8~1μm)、微小小胞体(サイズ約0.2~0.8μm)及びエクソソーム(サイズ約0.05~0.20μm)を捕捉するように独立して設計され、これらフィルターに保持されない物質はいずれもデバイスを通過した濾過液に収集されることになる。
【0097】
処理を開始するために、生物学的サンプルを第1のフィルター(0.8μm)の注入口から供給し、デバイス全体を(例えば、シリンジの使用によって)滴下して通過させ又は押し出して通過させ、各フィルターに保持された物質、そして最終濾過液(すなわち、第3のフィルター(0.05μm)の濾過液)を収集した。さらに、各フィルターを通過した濾過液、そして各フィルターに保持された物質を後の検出のためにサンプリングした。
【0098】
デバイスを試験するため、尿サンプル(約30mL)をデバイスに通過させてから、各フィルターを通過した濾過液、そして各フィルターに保持された物質を独立して収集し、デバイスによって単離されたMOIの各個体群に発現したE-カドヘリンのレベルを検出する分析を行った。E-カドヘリンのレベルをビオチン標識化アプタマーによってモニタリングし、「材料及び方法」の章で説明した化学発光検知によって増幅した。
【0099】
E-カドヘリンは細胞、微小小胞体及びエクソソーム間で異なる態様で発現するが、E-カドヘリンは可溶性高分子が収集された濾過液には見られないことが分かった(図2)。
【0100】
1.2 イオンクロマトグラフィーによる尿EVの単離
この実施例では、イオン交換カラムを採用して尿EVを単離した。簡単に説明すると、尿サンプル(約30mL)をアニオン交換カラム(すなわち、AIEXクロマトグラフィー)に通過させ、それを塩化ナトリウム溶液(1M)で溶出し、単離されたエクソソームをその上のCD9の発現をモニタリングすることによって確認した(図3参照)。
【実施例2】
【0101】
実施例2 若年及び高齢被検体におけるMOI間の神経特異的バイオマーカーの発現パターン及びプロテオミクス表示
MOIを、「材料及び方法」の章で説明したようにMOI間の好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、神経特異的エノラーゼ(NSE)及び神経細胞接着分子L1(LICAM)の発現をビオチン標識化特異的抗体によってモニタリングし、化学発光検知によって増幅したことを除き、実施例1.1で説明した手順に従って若年被検体(30歳未満)及び高齢被検体(60歳超)から採取された尿サンプルから単離した。
【0102】
LICAMはExo及びMVに存在し、高レベルのNSEが若年成人よりも高齢成人に見られることが分かった。また、若年被検体ではNGALのレベルはMVにおいてより高いが、高齢被検体ではNGALの発現が、細胞、MV及びエクソソーム間で顕著に同様に見られた(図4)。
【0103】
若年被検体と高齢被検体の間でのMV及びExoにおけるプロテオミクス表示のために、合計1902個のタンパク質がiTRAQ(相対及び絶対定量化のための等圧タグ)質量分光測定によって同定され、62個が若年被検体(30歳未満)と高齢被検体(60歳超)に由来するエクソソーム間で大幅に異なった。データを表1にまとめる。
【0104】
表1 若年被検体と高齢被検体の間のMV及びExoにおけるタンパク質の差次的表示
【表1】
【実施例3】
【0105】
実施例3 正常出産又は早産の妊娠女性におけるMOI間の血管伝達物質及びサイトカインの差次的発現
妊娠女性における早期分娩を誘発し得る要因を同定するために、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、妊娠関連血漿タンパク質A(PAPPA)、脳由来神経栄養因子(BNDF)及びインスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、その他IL-6、IL-8、IL-10、IL-8、IL-10、C-X-Cモチーフケモカインリガンド13(CXCL13)及びインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL1-ra)を含む種々の血管伝達物質レベルを、妊娠女性から採取された尿サンプルにおけるMOI間でそれぞれ検出した。
【0106】
合計150人の妊娠女性を、事前の書類による同意の下で本研究のために採用した。尿サンプル(各40mL)を妊娠期間(GA)12週と16週の間で採取し、150人の妊娠女性のうちの10人が平均32週間と5日のGA(22週間と5日から35週間と5日のGA)において早期分娩となった。この10個の尿サンプル(すなわち、早期分娩の女性)を、同じ分娩期間中の正常分娩の女性から採取された他の10個の尿サンプルと照合した。全ての尿サンプル(各40mL)に、実施例1.1.1で説明したMOI(すなわち、細胞、MV、Exo(EV)及びSoln)の分離を行った。そして、各MOIに、成長因子(すなわち、sFlt1、PAPPA、BNDF、IGFBP1)及びサイトカイン(IL-6、IL-8、IL-10、CXCL13、IL1ra)のそれぞれのレベルの検出のためにマイクロ流体チップアッセイを行った。結果を図5に示す。
【0107】
早期分娩の妊娠女性(P)の尿サンプルから単離された細胞、MV、Exo及び/又はSolnは、正常分娩の妊娠女性(N)からのものと比較して、高いレベルのsFlt1、PAPPA及びIL-1ra並びに低いレベルのIL-10を有することが分かった。全てのMOIにおけるsFlt1のレベルは早期分娩のグループにおいて非常に高く、MV又はExoフラクションにおけるIL-10のレベルは早期分娩のグループにおいて非常に低かった(図5の左パネル参照)。
【0108】
また、sFlt1/IL-10、PAPPA/IL-10及びIL-1ra/IL-10を含む、成長因子(すなわち、sFlt1及びPAPPA)とサイトカイン(すなわち、IL-10)との比を計算し、図5の右パネルに示した。sFlt1/IL-10、PAPPA/IL-10又はIL-1ra/IL-10の比が高いほど、女性の早期分娩のリスクは高くなることが分かった。
【実施例4】
【0109】
実施例4 若年及び高齢被検体又はパーキンソン病(PD)の被検体におけるMOI間の血管伝達物質及び/又はDNAの差次的発現
4.1 若年被検体と高齢被検体の間でのMOI間の成長因子の差次的発現
この実施例では、若年成人被検体(すなわち、30歳)又は高齢被検体(すなわち、60歳)から採取した尿サンプルからMOIが単離され、線維芽細胞増殖因子1(FGF-1)、FGF-2、レプチン、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、血管内皮増殖因子D(VEGF-D)及び肝細胞増殖因子(HGF)の発現、そしてDNAレベルを独立して検出した。結果を図6及び7に示す。
【0110】
まず、FGF-1、VEGF-D及びHGFの発現がExoにおいて排他的に見られるがMV又は可溶性高分子を含有するフラクションには見られない一方で、レプチン、FGF-2及びHB-EGFの発現はMV及びExoの双方で見られることが分かった。
【0111】
また、分析によって、高齢被検体(すなわち、AVG-Old)は正常被検体(すなわち、AVG-Young)のものと比較して(MVにおける)FGF-1及び(可溶性高分子フラクションにおける)PLGFの顕著な発現を有するが、若年被検体には、より高い(MVにおける)FGF-2の発現があることが分かった。
【0112】
4.2 パーキンソン病(PD)を有する又は有さない高齢被検体の間でのMOI間の成長因子の差次的発現
この実施例では、PDを有する又は有さない高齢被検体の尿サンプルからMOIが単離され、FGF-1、HB-EGF及びレプチンの発現をそれぞれ検出した。結果を図8に示す。
【0113】
MVにおけるFGF-1及びExoにおけるFGF-2は正常高齢被検体(すなわち、AVG-C)においてのみ発現する一方で、レプチンはPD被検体(すなわち、AVG-PD)において排他的に発現することが分かった。また、正常高齢被検体は、PD被検体のものと比較して(MVにおいて)比較的高いレベルのHB-EGFを有していた。
【0114】
4.3 若年被検体、高齢被検体及びPD被検体の間のロイシンリッチアルファ-2-糖タンパク質1(LRG1)及びCD9の発現
若年被検体、高齢被検体及びPD被検体の尿サンプルからエクソソームが単離され、LRG1及びCD9のレベルをそれぞれウエスタンブロット解析によって検出した。結果を図9に示す。
【0115】
データは、若年成人(Y)及び高齢成人(O)は同様の発現レベルのエクソソームCD9を有するが、高齢成人(60歳超)は顕著に高いレベルのLRG1発現を有することを示した。PD被検体(すなわち、ケース1(PD1)、ケース2(PD2))は同様の発現レベルのCD9を有する一方で、LRG1のレベルは正常高齢成人(O1、O2、O3及びO4)のものよりも低かった。
【0116】
4.4 若年被検体及び高齢被検体におけるMOI間の差次的DNAレベル
実施例1.1の手順に従って、若年及び高齢成人被検体の尿サンプル、そしてPD被検体からMOIが単離された。各MOIにおける総DNAレベル及びDNA損傷のマーカーである8-ヒドロキシ-2´-デオキシグアノシン(8OHdG)のレベルを検出した。総DNAレベルをナノドロップ分光測定によって検出した。8OHdGのレベルを、製造者(Thermo Fisher Scientific、米国)によって提供されたプロトコルに従って酵素結合免疫測定法によって検出した。
【0117】
高齢被検体はエクソソーム及び可溶性フラクション(すなわち、可溶性高分子を含有するフラクション)の双方において比較的高い合計レベルのDNAを有することが分かった(図10)。また、正常高齢被検体に由来するExoは、MVよりも大幅に高い8OHdGのレベルを有したが、MV又はExoにおける8OHdGのレベルは正常高齢被検体とPD被検体の間で大幅には異ならなかった(図11)。
【実施例5】
【0118】
実施例5 デング感染症の被検体のMOI間のNS1抗原、血管伝達物質及び8OHdGの差次的発現
実施例1.1の手順に従って、臨床的前兆(例えば、不安定なバイタルサイン、血液濃縮、血小板減少など)のある又はないデング感染症を有する被検体の尿サンプルからMOIを単離した。デングウイルスNS1抗原のレベル、種々の血管伝達物質及び8OHdGを検出した。結果を図12に示す。
【0119】
デング被検体から単離されたMVに顕著なレベルのNS1抗原が見られ、Exo部分にある程度のものが見られた(図11、パネル(A))。血管伝達物質の発現について、デング被検体の尿MV及びExoは非常に高いレベルのEGFを有した一方で、尿エクソソームのみがG-CSFの発現を有した(図11、パネル(B))。また、臨床的前兆を示すデング被検体(すなわち、AVG-W)は、前兆のないデング被検体(すなわち、AVG-C)のものと比較して高いレベルのレプチン及びVEGF-Aを有するが低いレベルのG-CSFを有した(図11、パネル(C))。さらに、正常被検体のものと比較してデング被検体のMVにも高いレベルの8OHdGが見られた。
【0120】
結論として、本開示は、病理学的状態(例えば、老化、ウイルス感染、変性疾患、早期分娩など)を患う被検体における細胞、微小小胞体、エクソソーム及び可溶性フラクションにおいて種々のバイオマーカーが異なる態様で発現することを示した。細胞、微小小胞体、エクソソーム及び/又は可溶性因子は、本開示のデバイス及び/又は方法の使用によって容易に単離されて、そのような被検体の容易な特定を可能とし、それにより、適切な医薬品及び/又は測定がそのような被検体に施されて被検体における疾患状態に関連する症状を予防及び/又は緩和することができる。
【0121】
実施形態の上記説明は例示のみのために与えられること及び種々の変形が当業者によってなされ得ることが理解されるはずである。上記仕様、実施例及びデータは、発明の例示的実施形態の構造及び使用の完全な説明を与える。発明の種々の実施形態がある程度の特殊性で又は1以上の個別の実施形態を参照して上述されたが、当業者であれば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して多数の変更を行うことができるはずである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12