(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】光学材料用重合性組成物、光学材料用重合性組成物の製造方法および光学物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/50 20060101AFI20220121BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220121BHJP
C08G 18/24 20060101ALI20220121BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220121BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
C08G18/50 021
C08G18/10
C08G18/24
C08G18/32 037
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2020506668
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010785
(87)【国際公開番号】W WO2019177141
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018048936
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】龍 昭憲
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/006606(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006605(WO,A1)
【文献】特表2009-520057(JP,A)
【文献】特表2005-509703(JP,A)
【文献】特表2009-536255(JP,A)
【文献】特表2003-514934(JP,A)
【文献】特開平10-306210(JP,A)
【文献】国際公開第2004/108786(WO,A1)
【文献】特開昭60-184514(JP,A)
【文献】特開平06-093073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/50
C08G 18/10
C08G 18/24
C08G 18/32
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)と、ポリイソシアネート化合物(C)との反応生成物であるプレポリマー、
第一のポリチオール化合物(D1)、および
触媒、を含み、
前記第一のアミン化合物(A1)が、ポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つであり、
前記ポリエーテルアミンの重量平均分子量は、230を超え4000未満であり、
前記芳香族アミンは、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第一のジオール化合物(B1)の分子量は、50以上350以下であり、
前記第一のポリチオール化合物(D1)が、2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む、光学材料用重合性組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルアミンが、式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学材料用重合性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
3~R
5はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。pは0~49の整数を示し、qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4同士またはR
5同士は同一でも異なっていてもよい。)
【化2】
(式(2)中、R
6、R
8、R
9はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6同士、R
8同士またはR
9同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項3】
第二のジオール化合物(B2)をさらに含む、請求項1
または2に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項4】
400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)をさらに含む、請求項1
または2に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項5】
400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)および第二のジオール化合物(B2)をさらに含む、請求項1
または2に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項6】
前記第一のジオール化合物(B1)が、脂肪族直鎖ジオールを含む、請求項1~
5のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項7】
前記第一のジオール化合物(B1)が、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する、請求項1~
6のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項8】
前記第二のジオール化合物(B2)が、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有する、請求項
3または
5に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項9】
前記触媒が、ジメチル錫クロライド、ジブチル錫クロライド、およびジブチル錫ジラウリレートから選択される少なくとも1つを含む、請求項1~
8のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項10】
第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)とを混合して、第一の混合物を得る第一の工程であって、前記第一のアミン化合物(A1)がポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つであ
り、前記ポリエーテルアミンの重量平均分子量は、230を超え4000未満であり、前記芳香族アミンは、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第一のジオール化合物(B1)の分子量は、50以上350以下である、第一の工程と、
前記第一の混合物と、ポリイソシアネート化合物(C)とを混合して、プレポリマーを得る第二の工程と、
前記プレポリマーと、触媒とを混合し、次いで2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する第三の工程と、を含む、光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項11】
前記ポリエーテルアミンが、式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
10に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化3】
(式(1)中、R
3~R
5はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。pは0~49の整数を示し、qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4同士またはR
5同士は同一でも異なっていてもよい。)
【化4】
(式(2)中、R
6、R
8、R
9はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6同士、R
8同士またはR
9同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項12】
前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで前記第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合した後、第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含む、請求項
10または11に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項13】
前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで、400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)および前記第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する工程を含む、請求項
10または11のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項14】
前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで、前記第二のアミン化合物(A2)、前記第一のポリチオール化合物(D1)、および第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含む、請求項
10または11に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項15】
前記第一のジオール化合物(B1)が、脂肪族直鎖ジオールを含む、請求項
10~
14のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項16】
前記第一のジオール化合物(B1)が、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する、請求項
10~
15のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項17】
前記第二のジオール化合物(B2)が、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有する、請求項
12または
14に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学物品を得る工程を含む光学物品の製造方法。
【請求項19】
請求項
10~
17のいずれかに記載の方法により光学材料用重合性組成物を得る工程と、
前記光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学物品を得る工程と、を含む光学物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用重合性組成物、光学材料用重合性組成物の製造方法および光学物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能であるため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として急速に普及してきている。
光学材料として用いられる素材は古来ガラスが主であったが、近年では光学材料用のプラスチックが種々開発され、ガラスの代替として利用が広がっている。眼鏡レンズなどの光学材料としても、優れた光学特性を有し、軽量で割れず、成形性にも優れることから、アクリル樹脂、脂肪族カーボネート樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタンなどのプラスチック材料が主として用いられるようになっている。
中でもポリウレタン含有材料は、屈折率等の光学的特性および耐衝撃性等の機械的特性が良好であることから、光学材料を製造するための有用なポリマーとして開発されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0003】
特許文献1では、ポリイソシアネート、アミノ基を含まないポリオール、ポリオールおよび/またはポリチオール、ならびにアミノアルコールを反応させてポリウレタン尿素含有組成物を製造する方法が提案されている。特許文献1では、アミノアルコールを用いることにより、イソシアネートの反応を穏やかにするとともに、得られる最終生成物に所望の物理学的性質を付与している。
特許文献2では、特定の第1級アミン末端ポリエーテル、脂肪族ポリイソシアナート、ポリオールおよび芳香族ジアミンを一段階プロセスで反応させて耐衝撃性ポリウレタンポリマーを製造するための経済性に優れた方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-502119号公報
【文献】特表2016-507626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐衝撃性等の機械的特性に優れたチオウレタンウレア樹脂を製造するためにポリエーテルアミン等のアミンを用いた場合、材料を一段階プロセスで反応させると、イソシアネートとの反応性が高く、均一なプレポリマー溶液が得られず、プレポリマーが析出し、その結果、透明なチオウレタンウレア樹脂が得られない場合があった。
本発明者らは、製造法を調整することにより、プレポリマーの析出を防止し、透明であり耐衝撃性に優れたチオウレタンウレア樹脂が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下に示すことができる。
[1]
第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)と、ポリイソシアネート化合物(C)との反応生成物であるプレポリマー、
第一のポリチオール化合物(D1)、および
触媒、を含み、
前記第一のアミン化合物(A1)が、ポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つであり、
前記ポリエーテルアミンの重量平均分子量は、230を超え4000未満であり、
前記芳香族アミンは、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第一のジオール化合物(B1)の分子量は、50以上350以下であり、
前記第一のポリチオール化合物(D1)が、2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む、光学材料用重合性組成物。
[2] 前記ポリエーテルアミンが、式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
3~R
5はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。pは0~49の整数を示し、qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4同士またはR
5同士は同一でも異なっていてもよい。)
【化2】
(式(2)中、R
6、R
8、R
9はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6同士、R
8同士またはR
9同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)。
[
3] 第二のジオール化合物(B2)をさらに含む[1]
または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[
4]
400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)をさらに含む、[1]
または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[
5]
400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)および第二のジオール化合物(B2)をさらに含む、[1]
または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[
6] 前記第一のジオール化合物(B1)が、脂肪族直鎖ジオールを含む、請求項[1]~[
5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[
7] 前記第一のジオール化合物(B1)が、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する、[1]~[
6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[
8] 前記第二のジオール化合物(B2)が、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有する、[
3]または[
5]に記載の光学材料用重合性組成物。
[
9]前記触媒が、ジメチル錫クロライド、ジブチル錫クロライド、およびジブチル錫ジラウリレートから選択される少なくとも1つを含む、[1]~[
8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[
10] 第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)とを混合して、第一の混合物を得る第一の工程であって、前記第一のアミン化合物(A1)がポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つであ
り、前記ポリエーテルアミンの重量平均分子量は、230を超え4000未満であり、前記芳香族アミンは、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第一のジオール化合物(B1)の分子量は、50以上350以下である、第一の工程と、
前記第一の混合物と、ポリイソシアネート化合物(C)とを混合して、プレポリマーを得る第二の工程と、
前記プレポリマーと、触媒とを混合し、次いで2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する第三の工程と、を含む、光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
11] 前記ポリエーテルアミンが、式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[
10]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化3】
(式(1)中、R
3~R
5はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。pは0~49の整数を示し、qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4同士またはR
5同士は同一でも異なっていてもよい。)
【化4】
(式(2)中、R
6、R
8、R
9はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6同士、R
8同士またはR
9同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。).
[
12] 前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで前記第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合した後、第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含む
[10]または[11]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
13] 前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)および前記第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する工程を含む
[10]または[11]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
14] 前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで前記第二のアミン化合物(A2)、前記第一のポリチオール化合物(D1)、および第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含む、
[10]または[11]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
15] 前記第一のジオール化合物(B1)が、脂肪族直鎖ジオールを含む、[
10]~[
14]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
16] 前記第一のジオール化合物(B1)が、1mPa・s以上100mPa・s未満の粘度(25℃)を有する、[
10]~[
15]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
17] 前記第二のジオール化合物(B2)が、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有する、[
12]または[
14]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[
18] [1]~[
9]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学物品を得る工程を含む光学物品の製造方法。
[19] [
10]~[
17]のいずれかに記載の方法により光学材料用重合性組成物を得る工程と、
前記光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学材料を得る工程と、を含む光学材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレポリマーの析出を防止し、透明であり耐衝撃性に優れたチオウレタンウレア樹脂を製造するために用いられる重合性樹脂組成物、およびこの重合性組成物を製造するための方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光学材料用重合性組成物およびその製造方法を、以下の実施の形態に基づいて説明する。
(光学材料用重合性組成物)
本発明の光学材料用重合性組成物(以下、「重合性組成物」とも称する)は、4000未満の重量平均分子量を有する第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)と、ポリイソシアネート化合物(C)との反応生成物であるプレポリマー、
第一のポリチオール化合物(D1)、および
触媒、を含み、
第一のアミン化合物(A1)が、ポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つであり、
前記第一のポリチオール化合物(D1)が、2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む。
【0009】
本実施形態の重合性組成物に用いられるプレポリマーは、第一のアミン化合物(A1)と、第一のジオール化合物(B1)と、ポリイソシアネート化合物(C)とを反応させて得られる反応生成物である。
【0010】
本実施形態の重合性組成物に用いられるアミン化合物(A1)は、4000未満の重量平均分子量を有し、ポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1種である。このようなアミン化合物(A1)を用いることにより、得られる重合性組成物の硬化物が、改善された耐衝撃性を有する。
【0011】
一実施形態において、アミン化合物(A1)として用いられるポリエーテルアミンは、以下の式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンから選択される少なくとも1種を含む。
【化5】
式(1)において、R
3~R
5はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。pは0~49の整数を示し、qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4同士またはR
5同士は同一でも異なっていてもよい。
【化6】
式(2)中、R
6、R
8、R
9はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6同士、R
8同士またはR
9同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
ここで、R
7で表される炭素数1~20の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n-オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などが、炭素数3~20の分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、イソデシル基などが、炭素数3~20の環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0012】
一実施形態において、式(1)で表されるポリエーテルアミンとして、式(1a)で表される化合物が用いられる。
【化7】
式(1a)において、R
3、R
5およびrは、それぞれ一般式(1)のR
3、R
5およびrと同義である。
【0013】
アミン化合物(A1)の重量平均分子量は、4000未満であり、好ましくは、3000以下であり、より好ましくは、2000以下であり、より好ましくは、1000以下であり、さらに好ましくは、800以下であり、さらにより好ましくは、600以下である。
【0014】
一実施形態において、アミン化合物(A1)として用いられる芳香族アミンは、アミノ基が直接芳香環に結合している1級アミンまたは2級アミンを言う。芳香族アミンとしては、例えば、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、または3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンを使用できる。
【0015】
アミン化合物(A1)として上述のポリエーテルアミンを用いる場合、このポリエーテルアミンの重量平均分子量は、好ましくは、230を超え、より好ましくは、250以上であり、さらに好ましくは、280以上であり、特に好ましくは、300以上である。このような重量平均分子量を有するポリエーテルアミンを用いることにより、このアミン化合物(A1)から得られるプレポリマーを含む重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂は優れた耐衝撃性を有する。
【0016】
第一のアミン化合物(A1)と後述する第二のアミン化合物(A2)は同じであっても異なっていてもよいが、異なるアミン化合物であることが好ましい。
【0017】
本実施形態の光学材料用重合性組成物に用いられるジオール化合物(B1)は、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有し、好ましくは、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する。ジオール化合物(B1)は、好ましくは、分子量が、50~350の範囲であることが好ましい。このようなジオール化合物(B1)としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、などの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本実施形態の光学材料用重合性組成物に用いられるポリイソシアネート化合物(C)としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、複素環ポリイソシアネート化合物等を用いることができる。より具体的には、ポリイソシアネート化合物(C)として、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0019】
中でも、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートから選択される少なくとも一種を用いることができる。
さらに好ましくは、m-キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、および2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンから選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0020】
本実施形態の光学材料用重合性組成物に用いられるポリチオール化合物(D1)は、2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む。
【0021】
ジチオール化合物(d1)としては、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル;
ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物;等が挙げられる。
【0022】
ジチオール化合物(d1)として、これを含む重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂の光学的特性の観点から、好ましくは、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、およびビス(2-メルカプトエチル)スルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0023】
中でも、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、およびビス(2-メルカプトエチル)スルフィドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が特に好ましく用いられる。
【0024】
3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)としては、例えば、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、
1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン等の芳香族ポリチオール化合物;
2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン等の複素環ポリチオール化合物;等が挙げられる。
【0025】
ポリチオール化合物(d2)として、これを含む重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂の光学的特性の観点から、好ましくは、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0026】
中でも、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンおよび4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく用いられる。
【0027】
一実施形態において、重合性樹脂組成物は、上記プレポリマーと第一のポリチオール化合物(D1)に加え、第二のジオール(B2)を含む。
【0028】
第二のジオール化合物(B2)は、上述の第一のジオール(B1)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、第二のジオール化合物は、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有し、より好ましくは、100mPa・sより大きく30000mPa・s以下の粘度(25℃)を有する。第二のジオール化合物(B2)は、分子量が100~3000の範囲であることが好ましい。このようなジオール化合物(B2)としては、ポリエチレングリコール、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-ジメタノール、ビシクロ[4.3.0]-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、ビシクロ[4.3.0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5.3.1.1]ドデカノール、スピロ[3.4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールF、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA-ビス-(2-ヒドロキシエチルエーテル)、ポリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アルコールエトキシレート、ポリカプロラクトンジオール、エトキシ化ビスフェノールA;
ビス-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルフィド、ビス-[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス-[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス-[4-(4-ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル]スルフィド、ビス-[2-メチル-4-(ヒドロキシエトキシ)-6-ブチルフェニル]スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物;および
ジ-(2-ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2-ビス-(2-ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ジオール、ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4-ヒドロキシ-2-チアブチル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチルチオエチル)-シクロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
上述の第二のジオール(B2)を用いることにより、これを含む重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂は、低いhazeを有するとともに、優れた耐熱性を有する。
【0030】
一実施形態において、重合性樹脂組成物は、上記プレポリマーと第一のポリチオール化合物(D1)に加え、第二のアミン化合物(A2)を含む。ここで第二のアミン化合物(A2)は、400以上4000未満の重量平均分子量を有することが好ましい。第二のアミン化合物(A2)は、第一のアミン化合物(A1)と同じであっても異なっていてもよいが、異なるアミン化合物であることが好ましく、重量平均分子量が、400以上4000未満であることが好ましく、600以上2000以下であることがさらに好ましい。このようなアミン化合物(A2)としては、ポリエーテルアミン化合物が好ましく、具体的には(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、(プロピレングリコール)トリス(2-アミノプロピルエーテル)、(エチレングリコール)トリス(2-アミノプロピルエーテル)等が挙げられ、市販品としてはJeffamineDシリーズ、JeffamineEDシリーズ、JeffamineTシリーズ(HUNTSMAN社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。第二のアミン化合物(A2)を用いることにより、得られる重合性組成物の粘度(25℃)やポットライフを調整できる。また、第二のアミン化合物(A2)を用いることにより、これを含む重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂の光学物性、耐衝撃性、比重等の諸物性を目的の用途に応じて調整できる。
【0031】
一実施形態において、重合性樹脂組成物は、上記プレポリマーと第一のポリチオール化合物(D1)に加え、第二のアミン化合物(A2)と第二のジオール化合物(B2)とを含む。第二のアミン化合物(A2)および第二のジオール化合物(B2)を用いることにより、得られる重合性組成物の粘度(25℃)やポットライフを調整することができる。また、これらを用いることにより、重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂の、光学物性、耐衝撃性、比重等の諸特性を目的の用途に応じて調整することができる。
【0032】
本実施形態の重合性組成物は、上記成分に加え、重合触媒を含むことが好ましい。用いられる重合触媒としては、ジメチル錫クロライド、ジブチル錫クロライド、ジブチル錫ジラウリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。触媒の配合量は、重合性組成物100重量部に対して、0.005重量部~0.5重量部が好ましく、0.005重量部~0.3重量部がより好ましい。
【0033】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、当該組成物が適用される用途で所望される特性に応じて、内部離型剤、樹脂改質剤、光安定剤、ブルーイング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、フォトクロミック色素等の添加剤を含んでもよい。
【0034】
(重合性組成物の製造方法)
本発明の光学材料用重合性組成物の製造方法を、以下の実施の形態に基づいて説明する。
本発明の光学材料用重合性組成物の製造方法は、
4000未満の重量平均分子量を有する第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)とを混合して、第一の混合物を得る第一の工程と、
前記第一の混合物と、ポリイソシアネート化合物(C)とを混合して、プレポリマーを得る第二の工程と、
前記プレポリマーと、触媒とを混合し、次いで2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する第三の工程と、を含む。ここで、第一のアミン化合物(A1)はポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1種である。
【0035】
本実施形態の重合性組成物の製造に用いられるアミン化合物(A1)は、ジオール化合物(B1)およびポリイソシアネート化合物(C)、ならびにポリチオール化合物(D1)は、上述のとおりである。
【0036】
本実施形態の重合性組成物の製造において、第一の工程で作製されるアミン化合物(A1)とジオール化合物(B1)との混合物が、第二の工程において、ポリイソシアネート化合物(C)との反応に供される。当該工程を採用することにより、上記反応により生じるプレポリマーが反応溶液中に析出することなく、プレポリマーが均一に溶解したプレポリマー溶液が得られる。これにより、続く、ポリチオール化合物(D1)との反応により得られるチオウレタンウレア樹脂は、所望の光学特性を有する。
アミン化合物(A1)として上述のポリエーテルアミンを用いることにより、本実施形態の第二の工程において、プレポリマーの析出がなく、また得られるチオウレタンウレア樹脂は優れた耐衝撃性を有する。
【0037】
第一のアミン化合物(A1)と後述する第二のアミン化合物(A2)は同じであっても異なっていてもよいが、異なるアミン化合物であることが好ましい。重量平均分子量が400未満のアミン化合物を用いる場合は、均一なプレポリマーを得るために、第一のアミン化合物(A1)として、第一の工程で添加することが好ましい。重量平均分子量が400以上4000未満のアミン化合物は、第一のアミン化合物(A1)として第一の工程で添加しても、第二のアミン化合物(A2)として第三の工程で添加してもよい。
【0038】
本実施形態の光学材料用重合性組成物の製造に用いられるジオール化合物(B1)は、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有し、好ましくは、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する。ジオール化合物(B1)は、好ましくは、分子量が、50~350の範囲であることが好ましい。このようなジオール化合物(B1)を用いることにより、第二の工程におけるアミン化合物(A1)とポリイソシアネート化合物(C)との反応が穏やかに進み、均一なプレポリマー溶液が生成し得る。
【0039】
本実施形態の光学材料用重合性組成物の製造方法の第三の工程では、触媒を用いてもよい。用いられる触媒としては、ジメチル錫クロライド、ジブチル錫クロライド、ジブチル錫ジラウリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
一実施形態において、上記第三の工程は、さらに第二のジオール(B2)を添加する工程を含んでもよい。換言すると、上記第三の工程は、第二の工程で得られたプレポリマーと、触媒とを混合し、次いで、ポリチオール化合物(D1)を添加した後、第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含み得る。
【0041】
第二のジオール化合物(B2)は、上記のとおり第一のジオール(B1)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
上述の第二のジオール(B2)を用いることにより、得られるチオウレタンウレア樹脂は、低いhazeを有するとともに、優れた耐熱性を有する。
【0043】
一実施形態において、上記第三の工程は、第二の工程で得られたプレポリマーと、触媒とを混合し、次いで、第二のアミン化合物(A2)およびポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する工程を含んでもよい。ここで第二のアミン化合物(A2)は、400以上4000未満の重量平均分子量を有することが好ましい。第二のアミン化合物(A2)は、第一のアミン化合物(A1)と同じであっても異なっていてもよいが、異なるアミン化合物であることが好ましい。第二のアミン化合物(A2)は、ポリチオール化合物(D1)と同時にまたは別個にプレポリマーに添加されるが、好ましくは、第二のアミン化合物(A2)は、ポリチオール化合物(D1)の添加前に、プレポリマーに添加されることが好ましい。第二のアミン化合物(A2)を用いることにより、得られる重合性組成物の粘度(25℃)やポットライフを調整できる。また、第二のアミン化合物(A2)を用いることにより、重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂の光学物性、耐衝撃性、比重等の諸物性を目的の用途に応じて調整できる。
【0044】
一実施形態において、上記第三の工程は、第二の工程で得られたプレポリマーと、触媒とを混合し、次いで、第二のアミン化合物(A2)、ポリチオール化合物(D1)、および第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含んでもよい。第二のアミン化合物(A2)、ポリチオール化合物(D1)、および第二のジオール化合物(B2)の添加は同時であっても別個であってもよいが、好ましくは、プレポリマーにまず第二のアミン化合物(A2)を添加し、次いでポリチオール化合物(D1)および第二のジオール化合物(B2)を添加することが好ましい。このように第二のアミン化合物(A2)、第二のジオール化合物(B2)を用いることにより、得られる重合性組成物の粘度(25℃)やポットライフを調整することができる。また、これらを用いることにより、重合性組成物を硬化して得られるチオウレタンウレア樹脂の、光学物性、耐衝撃性、比重等の諸特性を目的の用途に応じて調整することができる。
【0045】
<用途>
本実施形態の重合性組成物は、光学物品の製造に用いることができる。詳細には、上記の方法により光学材料用重合性組成物を得る工程と、得られた光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学物品を得る工程とにより、光学物品を製造することができる。ここで、光学物品としては、プラスチック眼鏡レンズ、ゴーグル、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズなどの各種プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズなどに用いる反射防止膜、液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティングまたは、車のフロントガラスやバイクのヘルメットに貼り付けるシートやフィルム、透明性基板等を挙げることができる。
【0046】
本実施形態において、たとえば、光学物品の製造方法は、例えば、以下の工程を含む。
工程a1:本実施形態の光学材料用重合性組成物を鋳型内に注型する。
工程b1:前記光学材料用重合性組成物を加熱し、該組成物を重合硬化して硬化物(チオウレタンウレア樹脂成形体)を得る。
【0047】
工程a1において、はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド(鋳型)内に重合性組成物を注入する。この時、得られる光学物品に要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0048】
工程b1において、注型重合が実施される。モールドについては、重合性組成物の組成、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、-50~150℃の温度で1~50時間かけて行われる。場合によっては、10~150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1~25時間で硬化させることが好ましい。
【0049】
本実施形態のチオウレタンウレア樹脂からなる光学物品は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50~150℃の間で行われるが、90~140℃で行うことが好ましく、100~130℃で行うことがより好ましい。
【0050】
本実施形態の方法により得られる光学物品は、例えば眼鏡レンズ用のレンズ基材として使用することができる。このレンズ基材には、必要に応じて、片面または両面にコーティング層を施してもよい。コーティング層としては、ハードコート層、反射防止層、防曇コート膜層、防汚染層、撥水層、プライマー層、フォトクロミック層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0051】
本実施形態の光学物品を眼鏡レンズ用のレンズ基材に適用する場合、本実施形態の重合性組成物を硬化させて得られる光学物品(レンズ基材)の少なくとも一方の面上に、ハードコート層および/または反射防止コート層とを形成する。
【0052】
本実施形態の光学物品はまた、プレスチック偏光レンズのレンズ基材として使用することができる。プレスチック偏光レンズは、偏光フィルムの両面に、あらかじめ製造したレンズ基材を貼り合わせる方法、または偏光フィルムの両面に重合性組成物を注型重合する方法により製造される。以下に、注型重合によるプラスチック偏光レンズの製造方法を説明する。
【0053】
注型重合によるプラスチック偏光レンズの製造方法は、以下の工程を含む。
工程a2:レンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面がモールドから離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する。
工程b2:前記偏光フィルムと前記モールドとの間の空隙に、本実施形態の重合性組成物を注入する。
工程c2:前記重合性組成物を加熱し、該組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に本実施形態の重合性組成物の硬化物からなる基材層を積層する。
【0054】
工程a2において、レンズ注型用鋳型の空間内に、熱可塑性ポリエステル等からなる偏光フィルムを、フィルム面の少なくとも一方が対向するモールド内面と並行となるように設置する。偏光フィルムとモールドとの間には、空隙部が形成される。偏光フィルムは予め附形されていてもよい。
【0055】
続く工程b2において、レンズ注型用鋳型の空間内において、モールドと偏光フィルムとの間の空隙部に、所定の注入手段により本実施形態の光学材料用重合性組成物を注入する。
【0056】
続く工程c2において、光学材料用重合性組成物が注入された偏光フィルムが固定されたレンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて数時間から数十時間かけて加熱して硬化成型する。
【0057】
重合硬化の温度は、重合性組成物の組成、触媒の種類、モールドの形状等によって条件が異なるため限定できないが、0~140℃の温度で1~48時間かけて行われる。
【0058】
硬化成形終了後、レンズ注型用鋳型から取り出すことで、偏光フィルムの少なくとも一方の面に本実施形態の重合性組成物の硬化物からなる層が積層された、プラスチック偏光レンズを得ることができる。
【0059】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で様々な態様をとることができる。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 4000未満の重量平均分子量を有する第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)と、ポリイソシアネート化合物(C)との反応生成物であるプレポリマー、
第一のポリチオール化合物(D1)、および
触媒、を含み、
前記第一のアミン化合物(A1)が、ポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つであり、
前記第一のポリチオール化合物(D1)が、2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む、光学材料用重合性組成物。
2. 前記ポリエーテルアミンが、式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、1.に記載の光学材料用重合性組成物。
【化8】
〔式(1)中、R3~r5はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。Pは0~49の整数を示し、Qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4
同士またはR
5
同士は同一でも異なっていてもよい。)
【化9】
(式(2)中、R
6
、R
8
、R
9
はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7
は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6
同士、R
8
同士またはR
9
同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)。
3. 前記ポリエーテルアミンが、230を超える重量平均分子量を有する、2.に記載の光学材料用重合性組成物。
4. 前記芳香族アミンが、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンからなる群から選択される少なくとも1つである、1.に記載の光学材料用重合性組成物。
5. 第二のジオール化合物(B2)をさらに含む、1.~4.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
6. 400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)をさらに含む、1.~4.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
7. 400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)および第二のジオール化合物(B2)をさらに含む、1.~4.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
8. 前記第一のジオール化合物(B1)が、脂肪族直鎖ジオールを含む、1.~7.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
9. 前記第一のジオール化合物(B1)が、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する、1.~8.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
10. 前記第二のジオール化合物(B2)が、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有する、5.または7.に記載の光学材料用重合性組成物。
11. 前記触媒が、ジメチル錫クロライド、ジブチル錫クロライド、およびジブチル錫ジラウリレートから選択される少なくとも1つを含む、1.~10.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
12. 4000未満の重量平均分子量を有する第一のアミン化合物(A1)と、100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する第一のジオール化合物(B1)とを混合して、第一の混合物を得る第一の工程であって、前記第一のアミン化合物(A1)がポリエーテルアミンおよび芳香族アミンから選択される少なくとも1つである、第一の工程と、
前記第一の混合物と、ポリイソシアネート化合物(C)とを混合して、プレポリマーを得る第二の工程と、
前記プレポリマーと、触媒とを混合し、次いで2つのメルカプト基を有するジチオール化合物(d1)および3つ以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物(d2)を含む第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する第三の工程と、を含む、光学材料用重合性組成物の製造方法。
13. 前記ポリエーテルアミンが、式(1)で表されるポリエーテルアミンおよび式(2)で表されるポリエーテルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、12.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化10】
(式(1)中、R
3
~R
5
はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。pは0~49の整数を示し、qは0~65の整数を示し、rは1~50の整数を示し、p+rは1~99の整数を満たす。複数存在するR
4
同士またはR
5
同士は同一でも異なっていてもよい。)
【化11】
(式(2)中、R
6
、R
8
、R
9
はそれぞれ水素原子またはメチル基を示す。R
7
は炭素数1~20の直鎖アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基又は炭素数3~20の環状アルキル基を示す。x+y+zは1~50の整数を示す。nは0~10の整数を示す。複数存在するR
6
同士、R
8
同士またはR
9
同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)。
14. 前記ポリエーテルアミンが、230を超える重量平均分子量を有する、13.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
15. 前記芳香族アミンが、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンおよび3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンからなる群から選択される少なくとも1つである、12.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
16. 前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで前記第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合した後、第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含む、12.~15.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
17. 前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで、400以上4000未満の重量平均分子量を有する第二のアミン化合物(A2)および前記第一のポリチオール化合物(D1)を添加してこれらを混合する工程を含む、12.~15.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
18. 前記第三の工程が、前記プレポリマーと、前記触媒とを混合し、次いで、前記第二のアミン化合物(A2)、前記第一のポリチオール化合物(D1)、および第二のジオール化合物(B2)を添加してこれらを混合する工程を含む、12.~15.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
19. 前記第一のジオール化合物(B1)が、脂肪族直鎖ジオールを含む、12.~18.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
20. 前記第一のジオール化合物(B1)が、1mPa・s以上100mPa・s以下の粘度(25℃)を有する、12.~19.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
21. 前記第二のジオール化合物(B2)が、100mPa・s以上の粘度(25℃)を有する、16.または18.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
22. 1.~11.のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学物品を得る工程を含む光学物品の製造方法。
23. 12.~21.のいずれかに記載の方法により光学材料用重合性組成物を得る工程と、
前記光学材料用重合性組成物を、注型重合法により重合硬化して光学物品を得る工程と、を含む光学物品の製造方法。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明の実施例で得られる樹脂の評価方法を以下に示す。
<評価方法>
・透明性:得られた樹脂を暗所にてプロジェクターに照射して、曇り(テープからの溶出を含む)、不透明物質の有無を目視にて判断した。曇り(テープからの溶出を含む)、不透明物質が確認されないものを「○」(透明性あり)、確認されたものを「×」(透明性なし)とした。
・HAZE:日本電色工業株式会社製のヘイズメーター(型番:NDH 2000)を使用し、2.5mm厚の平板の樹脂のHAZE値を測定した。
・歪み(脈理):得られたレンズを高圧UVランプに投影して、レンズ内に歪みが見られないものを「◎」(脈理なし)、目視観察にてレンズ内に歪みが見られないものを「○」、目視観察にてレンズ内に歪みが見られるものを「×」(脈理あり)とした。
・屈折率(ne)、アッベ数(νe):プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
・耐熱性:TMAペネートレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/min)でのガラス転移温度Tgを測定した。
・比重:アルキメデス法により測定した。
・耐衝撃性:中心厚1mmのレンズに、米国FDAに準拠する、127cmの高さより軽い鋼球から重い鋼球へ、破断するまで順に落下させて、破断した鋼球重量により耐衝撃性を評価した。鋼球は8g→16g→28g→33g→45g→67g→95g→112g→174g→225g→530gの順で実施した。なお、表中、「>530g」の表記のものは、530gの鋼球を落下させても破断しなかったことを示す。
・耐光性:2mm厚平板を用いてQ-Lab製促進耐光性試験機にてQUV試験(光源:UVA-340、強度:0.50W/m2、試験条件:50℃×200時間)を実施し、照射前後の色相変化を測定した。
・耐溶剤性:得られたレンズの表面に、アセトンを染み込ませた不織布を10秒間押し当て、レンズ表面に膨潤の跡が確認されないものを「○」(耐溶剤性あり)、膨潤の跡が確認されるものを「×」(耐溶剤性なし)とした。
【0061】
[実施例1]
・(第一工程)
20mlのガラス製ビーカーに、A1-1を7.00重量部と、B1-1を5.00重量部温度25℃において30分かけて混合溶解させた。混合溶解し得られた第一の混合物の粘度(25℃)は32mPa・sであった。
・(第二工程)
C-1の57.90重量部に、第一工程により得られた第一の混合物を25℃において1時間かけて滴下反応させ、プレポリマーを得た。
・(第三工程)
第二工程により得られたプレポリマーに、触媒としてジブチルスズジクロライド0.10重量部、内部離型剤(三井化学社製;商品名MR用内部離型剤)0.30重量部を混合溶解し均一溶液とした。得られた均一溶液に、d-1を14.55重量部、d2-1を15.55重量部添加し、25℃で10分混合溶解させ、第二の混合物を得た。
・成形体の製造
第三工程により得られた第二の混合物を400Paの減圧条件下にて脱泡を行った後、ガラス製の成型モールドへ注入した。これを重合オーブンへ投入して、25℃~120℃まで24時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンから取り出して成型モールドからの離型作業を行った。得られた成形体を更に120℃で1時間アニール処理を行った。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例2~6、22~25]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を得た。成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例7]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で、第三工程における均一溶液を得て、C-2を10.10重量部、d-1を15.25重量部、d2-1を16.25重量部添加し、25℃で10分混合溶解させ、第二の混合物を得た。続いて、各化合物の重量部を表1の通り変えた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造した。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例8]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で、第三工程における均一溶液を得て、A2-1を6.00重量部、d-1を16.81重量部、d2-1を17.97重量部添加し、25℃で10分混合溶解させ、第二の混合物を得た。続いて、各化合物の配合量を表1の通り変えた以外は、実施例6と同様の方法で成形体を製造した。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例9~12]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例8と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例13]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で第三工程における均一溶液を得て、B2-1を7.50重量部、d-1を20.60重量部、d2-1を9.45重量部添加し、25℃で10分混合溶解させ、第二の混合物を得た。続いて各化合物の配合量を表1の通り変えた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造した。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例14~18、21、26~31]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例13と同様の方法で成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例19]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で第三工程における均一溶液を得て、A2-1を2.5重量部、B2-1を5.00重量部、d-1を21.63重量部、d2-1を9.91重量部添加し、25℃で10分混合溶解させ、第二の混合物を得た。続いて各化合物の配合量を表1の通り変えた以外は、実施例1と同様の方法で成形体を製造した。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例20]
用いる化合物の重量部を表1記載の通り変えた以外は実施例19と同様の方法で処理した。結果は表-1の通りであった。
[比較例1]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で、第二工程により得られたプレポリマーに、触媒としてジブチルスズジクロライド0.10重量部、内部離型剤(三井化学社製;商品名MR用内部離型剤)0.30重量部を混合溶解し均一溶液とした。得られた均一溶液に、d-1のみを36.55重量部添加し、25℃で10分混合溶解させ、第二の混合物を得た。第三工程により得られた第二の混合物を400Paの減圧条件下にて脱泡を行った後、ガラス製の成型モールドへ注入した。これを重合オーブンへ投入して、25℃~120℃まで24時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンから取り出して成型モールドからの離型作業を行い、成形体を得たが、得られた成形体は多量の気泡が発生混入しており物性データの取得ができなかった。
[比較例2~3]
ジオール化合物(B-1)を用いずに、ポリイソシアネート化合物(C-1)にアミン化合物(A1)を滴下反応し第二工程のプレポリマーの合成を試みたが、アミン化合物(A1)滴下と同時にポリマーが析出し、均一なプレポリマーが得られず調合を中止した。
[比較例4~9、13]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で、第二工程のプレポリマーの合成を試みたが、第一工程で得られた第一の混合物の滴下と同時にポリマーが析出し、均一なプレポリマーが得られず調合を中止した。
[比較例10]
用いる化合物の配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で成形体を作製した。得られた成形体の評価結果を表1に示す。比較例10の成形体は、実施例1と比較し耐衝撃性が劣る結果となった。
[比較例11および12]
用いる化合物の重量部を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で成形体を作製した。しかしながら、得られた成形体は多量の気泡が発生混入しており物性データの取得ができなかった。
[参考例1~3]
用いる化合物の種類と配合量を表1記載の通り変えた以外は実施例1と同様の方法で、第二工程のプレポリマーの合成を試みたが、第一工程で得られた第一の混合物の滴下と同時にポリマーが析出し、均一なプレポリマーが得られず調合を中止した。
【0062】
【0063】
表中の記号は以下の意味を表す。
(アミン化合物(A1))
・A1-1:重量平均分子量400の(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(Hunstman社製のJeffamine D-400)
・A1-2:ジエチルトルエンジアミン(Albemarle Corporation社製のEthacure 100)
・A1-3:重量平均分子量230の(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(Hunstman社製のJeffamine D-230)
・A1-4:重量平均分子量4000の(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(Hunstman社製のJeffamine D-4000)
・A1-5:m-キシリレンジアミン
・A1-6:ヘキサメチレンジアミン
(アミン化合物(A2))
・A2-1:重量平均分子量2000の(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(Hunstman社製のJeffamine D-2000)
(ジオール化合物(B1))
・B1-1:プロピレングリコール
・B1-2:ジプロピレングリコール
・B1-3:トリプロピレングリコール
・B1-4:エチレングリコール
・B1-5:ジエチレングリコール
・B1-6:トリエチレングリコール
・B1-7:ポリプロピレングリコール、ジオール型400
・B1-8:トリシクロデカンジメタノール
(ジオール化合物(B2))
・B2-1:1,4-シクロヘキサンジメタノール
・B2-2:トリシクロデカンジメタノール
・B2-3:ポリエーテルポリオール(重量平均分子量2000、三井化学社製、アクトコール ED-56)
・B2-4:ポリカプロラクトンジオール(重量平均分子量500、ダイセル化学社製)
・B2-5:ポリカーボネートジオール(重量平均分子量500、宇部興産社製)
・B2-6:ポリカーボネート(重量平均分子量1000、ジオール宇部興産社製)
・B2-7:ビスフェノールAエトキシレート(数平均分子量492、アルドリッチ試薬EO/phenol,3)
(ポリイソシアネート化合物(C))
・C-1:2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物
・C-2:ヘキサメチレンジイソシアネート
(ポリチオール化合物(D1)
・d1:ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド
・d2-1:4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン
・d2-2:5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンと4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンと4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンとの混合物
【0064】
実施例の方法では、プレポリマー合成時にポリマーが析出することなく、光学特性と機械的特性のバランスに優れた樹脂が得られた。一方、比較例の方法では、プレポリマー合成時にポリマーが析出し樹脂の調製ができなかった。
【0065】
この出願は、2018年3月16日に出願された日本出願特願2018-048936号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。