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特許7012855二次電池用正極活物質前駆体の製造方法およびこれを利用した製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質前駆体の製造方法およびこれを利用した製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220121BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220121BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020532992
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2018006921
(87)【国際公開番号】W WO2019117411
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0173202
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 キ スン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、 ファン ヨル
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0013674(KR,A)
【文献】特表2004-521060(JP,A)
【文献】特開2013-202475(JP,A)
【文献】特開2004-210560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共沈反応後に生成された共沈濾液を共沈濾液貯蔵タンクに移動する段階と、
前記共沈濾液にフィルターを通過させて金属水酸化物を除去する段階と、
前記金属水酸化物が除去された共沈濾液を硫酸または硝酸と反応させて前記金属水酸化物が除去された共沈濾液のアンモニアを除去しながら硫酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムを生成する段階と、
前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液を冷却して結晶化して硫酸ナトリウムを析出する段階と、
前記析出された硫酸ナトリウムを濾過して前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液から前記析出された硫酸ナトリウムを分離する段階と、
前記共沈濾液から分離された硫酸ナトリウムを乾燥させ、前記硫酸ナトリウムと分離された共沈濾液を循環濃縮タンクに移動させる段階と、
再利用のために前記循環濃縮タンク内に貯蔵した前記共沈濾液を一定温度まで昇温させ、Nパージング(purging)またはバブリング(bubbling)する段階と
を含む
二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記共沈濾液貯蔵タンク内の前記共沈濾液にNaOHを追加して前記共沈濾液のpHを11.8以上に増加させる段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記共沈濾液にフィルターを通過させて金属水酸化物を除去する段階で、前記金属水酸化物は、共沈濾液に残留した金属水酸化物と共沈濾液にNaOHが追加されながら新しく生成された金属水酸化物を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属水酸化物が除去された共沈濾液を硫酸または硝酸と反応させて前記金属水酸化物が除去された共沈濾液のアンモニアを除去しながら硫酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムを生成する段階で、前記アンモニアはNH気体状態である、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液を冷却して結晶化して硫酸ナトリウムを析出する段階で、前記共沈濾液を10℃まで冷却する、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記再利用のために循環濃縮タンク内に貯蔵した共沈濾液を一定温度まで昇温させる段階で、前記一定温度は45℃以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記共沈反応は、金属硫酸塩を蒸溜水で溶解して金属溶液を製造し、前記金属溶液をNaOHおよびNHOHと共に反応器に注入して進行させ、
前記共沈反応のNHOHの代わりに前記アンモニアを除去しながら生成された前記硫酸アンモニウムを再溶解して使用する、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
共沈反応後に生成された共沈濾液を貯蔵する共沈濾液貯蔵タンクと、
前記共沈濾液で金属水酸化物を除去するフィルターと、
前記金属水酸化物が除去された共沈濾液でアンモニアを除去するアンモニア除去用メンブレン接触器と、
前記アンモニア除去用メンブレン接触器にアンモニアと接触する硫酸または硝酸を供給する硫酸タンクまたは硝酸タンクと、
前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液を冷却して結晶化して硫酸ナトリウムを析出する冷却結晶化タンクと、
前記析出された硫酸ナトリウムを濾過して前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液から前記析出された硫酸ナトリウムを分離する濾過器と、
前記共沈濾液から分離された硫酸ナトリウムを乾燥させる乾燥機と、
前記硫酸ナトリウムと分離された共沈濾液を貯蔵する循環濃縮タンクと、
再利用のために前記循環濃縮タンク内に貯蔵した前記共沈濾液を一定温度まで昇温させ、Nパージング(purging)またはバブリング(bubbling)する初期溶液製造タンクと
を含む
二次電池用正極活物質前駆体の製造装置。
【請求項9】
前記共沈濾液貯蔵タンク内の前記共沈濾液にNaOHを追加して前記共沈濾液のpHを11.8以上に増加させる、請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記フィルターは、共沈濾液に残留した金属水酸化物と共沈濾液にNaOHが追加されながら新しく生成された金属水酸化物を除去する、請求項8又は9に記載の製造装置。
【請求項11】
前記アンモニア除去用メンブレン接触器で、アンモニアはNH気体状態で存在する、請求項8から10のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項12】
前記冷却結晶化タンクは、温度を10℃まで冷却する、請求項8から11のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項13】
前記初期溶液製造タンクは、貯蔵した共沈濾液を45℃以上に昇温する、請求項8から12のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項14】
前記共沈反応は、金属硫酸塩を蒸溜水で溶解して金属溶液を製造し、前記金属溶液をNaOHおよびNHOHと共に反応器に注入して進行させ、
前記共沈反応のNHOHの代わりに前記アンモニアを除去しながら生成された硫酸アンモニウムを再溶解して使用するために前記硫酸アンモニウムを貯蔵する硫酸アンモニウム供給タンクをさらに含む、請求項8から13のいずれか1項に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極活物質前駆体の製造方法およびこれを利用した製造装置に関し、より詳細には、共沈濾液再利用工程を含む二次電池用正極活物質前駆体の製造方法および前記製造方法を実現した製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の急速な発展に伴い、最近は多くの電子製品、通信機器だけでなく、大容量貯蔵装置を必要とする電気自動車などが発売されており、これらの動力源である二次電池の需要が急激に増加している。
【0003】
一般に、二次電池用正極活物質前駆体を製造するための最も進歩した技術は、共沈法を利用して製造する技術であるが、共沈反応のためにはNiSO、CoSO、MnSOを適切な比率で混合した高濃度金属溶液をNaOHとNHOHと共に反応器に注入して核を生成し、長時間反応させることによって一定の粒径を有する前駆体を得る。
【0004】
共沈法は、連続攪拌タンク反応器(CSTR、Continuous Stirred Tank Reactor)、クエットテイラー反応器、回分式(Batch)反応器などを活用するが、pH、温度、攪拌条件により前駆体の形状や粒度、モフォロジーが変わるようになる。一般に前駆体を大量生産しなければならない場合には連続攪拌タンク反応器を利用して生産しており、前駆体品質が要求される場合には回分式反応器を使用している。
【0005】
一般に共沈法による反応でニッケル、コバルト、マンガンなどの金属イオンのpHによる共沈速度差を克服するためにキレート剤としてアンモニアを投入するが、pH条件により金属イオン(特に、ニッケル)がアンモニアと配位結合により溶出されて一定量が溶液内に残っているようになる。この時、ニッケルの溶出量が増加することによって上澄液が青色に変わるようになる。このような溶出されたニッケルは共沈後に圧搾式濾過器(filter press)を通じて濾過された後にも残った共沈濾液に溶解されており、別途の廃水処理をしなければならないため、前駆体製造時に原材料費の上昇を誘発する要因となる。
【0006】
一般に共沈反応後の生成物である前駆体は、圧搾式濾過器を通じて濾過され、2~3回水洗工程を経て乾燥過程を経るようになる。この時、所要する水洗液を含めば前駆体1トン生産時に廃水は50トン程度発生し、廃水にはアンモニア、溶出された金属イオン、硫酸ナトリウムなどが含まれて別途の廃水処理施設が必要となり、費用が発生するようになる。大部分のアンモニア、溶出された金属イオン、硫酸ナトリウムは共沈濾液で濾過後に残った溶液に残っており、水洗時に発生される水洗液には微量のアンモニア、硫酸ナトリウムなどが含まれている。共沈濾液および水洗液などの廃水でアンモニアは硫酸などを利用して湿式スクラバーを通じて除去され、金属イオンは重金属処理槽で触媒を通じた析出および沈殿され、残りは廃水処理するようになる。
【0007】
従来技術や文献では、連続攪拌タンク反応器、クエットテイラー反応器、回分式反応器などが公知となっているが、共沈工程中に溶出された金属イオンの収率を向上させ、廃水発生量を低減したり、共沈濾液を再利用することができる共沈工程は提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、二次電池用正極活物質前駆体を製造するに当たり、反応中に生成される共沈濾液内に含まれている金属イオンを再利用し、共沈反応時に収率を向上し、廃水発生量を画期的に減らす方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例による二次電池用正極活物質前駆体の製造方法は、共沈反応後に生成された共沈濾液を共沈濾液貯蔵タンクに移動する段階、前記共沈濾液にフィルターを通過させて金属水酸化物を除去する段階、前記金属水酸化物が除去された共沈濾液を硫酸または硝酸と反応させて前記金属水酸化物が除去された共沈濾液のアンモニアを除去しながら硫酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムを生成する段階、前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液を冷却して結晶化して硫酸ナトリウムを析出する段階、前記析出された硫酸ナトリウムを濾過して前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液から前記析出された硫酸ナトリウムを分離する段階、前記共沈濾液から分離された硫酸ナトリウムを乾燥させ、前記硫酸ナトリウムと分離された共沈濾液を循環濃縮タンクに移動させる段階、および再利用のために前記循環濃縮タンク内に貯蔵した前記共沈濾液を一定温度まで昇温させ、Nパージング(purging)またはバブリング(bubbling)する段階を含むことができる。
【0010】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造方法は、前記共沈濾液貯蔵タンク内の前記共沈濾液にNaOHを追加して前記共沈濾液のpHを11.8以上に増加させる段階をさらに含むことができる。
【0011】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造方法で、前記共沈濾液にフィルターを通過させて金属水酸化物を除去する段階において、前記金属水酸化物は、共沈濾液に残留した金属水酸化物と共沈濾液にNaOHが追加されながら新しく生成された金属水酸化物を含むことができる。
【0012】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造方法で、前記金属水酸化物が除去された共沈濾液を硫酸または硝酸と反応させて前記金属水酸化物が除去された共沈濾液のアンモニアを除去しながら硫酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムを生成する段階において、前記アンモニアはNH気体状態であってもよい。
【0013】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造方法で、前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液を冷却して結晶化して硫酸ナトリウムを析出する段階において、前記共沈濾液を10℃まで冷却することができる。
【0014】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造方法で、前記再利用のために循環濃縮タンク内に貯蔵した共沈濾液を一定温度まで昇温させる段階において、前記温度は45℃以上であってもよい。
【0015】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造方法で、前記共沈反応は、金属硫酸塩を蒸溜水で溶解して金属溶液を製造し、前記金属溶液をNaOHおよびNHOHと共に反応器に注入して進行させるが、前記共沈反応のNHOHの代わりに前記アンモニアを除去しながら生成された前記硫酸アンモニウムを再溶解して使用することができる。
【0016】
本発明の一実施例による二次電池用正極活物質前駆体の製造装置は、共沈反応後に生成された共沈濾液を貯蔵する共沈濾液貯蔵タンク、前記共沈濾液で金属水酸化物を除去するフィルター、前記金属水酸化物が除去された共沈濾液でアンモニアを除去するアンモニア除去用メンブレン接触器、前記アンモニア除去用メンブレン接触器にアンモニアと接触する硫酸または硝酸を供給する硫酸タンクまたは硝酸タンク、前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液を冷却して結晶化して硫酸ナトリウムを析出する冷却結晶化タンク、前記析出された硫酸ナトリウムを濾過して前記金属水酸化物とアンモニアが除去された共沈濾液から前記析出された硫酸ナトリウムを分離する濾過器、前記共沈濾液から分離された硫酸ナトリウムを乾燥させる乾燥機、前記硫酸ナトリウムと分離された共沈濾液を貯蔵する循環濃縮タンク、および再利用のために前記循環濃縮タンク内に貯蔵した前記共沈濾液を一定温度まで昇温させ、Nパージングまたはバブリングする初期溶液製造タンクを含むことができる。
【0017】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造装置で、前記共沈濾液貯蔵タンク内の前記共沈濾液にNaOHを追加して前記共沈濾液のpHを11.8以上に増加させることができる
【0018】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造装置で、前記フィルターは、共沈濾液に残留した金属水酸化物と共沈濾液にNaOHが追加されながら新しく生成された金属水酸化物を除去することができる。
【0019】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造装置で、前記アンモニア除去用メンブレン接触器で、アンモニアはNH気体状態で存在することができる。
【0020】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造装置で、前記冷却結晶化タンクは、温度を10℃まで冷却することができる。
【0021】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造装置で、前記初期溶液製造タンクは、貯蔵した共沈濾液を45℃以上に昇温することができる。
【0022】
前記二次電池用正極活物質前駆体の製造装置で、前記共沈反応は、金属硫酸塩を蒸溜水で溶解して金属溶液を製造し、前記金属溶液をNaOHおよびNHOHと共に反応器に注入して進行させ、前記共沈反応のNHOHの代わりに前記アンモニアを除去しながら生成された前記硫酸アンモニウムを再溶解して使用するための前記硫酸アンモニウムを貯蔵する硫酸アンモニウム供給タンクをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施例による製造方法によれば、二次電池用正極活物質前駆体などを製造するための共沈反応で発生される共沈濾液の成分中のアンモニアは、硫酸アンモニウムあるいは硝酸アンモニウムで濃縮する過程を経て除去され、硫酸ナトリウムは冷却結晶化を通じて析出され、残った共沈濾液は再び金属溶液を形成するために再利用され得る。したがって、このような共沈反応プロセスを通じて硫酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなど副産物を追加的に生産することができ、収率を極大化することができる。
【0024】
また、本発明の他の実施例によれば、前記製造方法を実現して、共沈反応で生成される共沈濾液を再利用する工程を含む二次電池用正極活物質前駆体の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例による共沈濾液再利用工程を含む回分式共沈方法を示した図面である。
図2】温度による硫酸ナトリウムと硫酸ニッケルの溶解度差を示す曲線である。
図3】本発明の一実施例による製造方法の共沈濾液再利用工程で析出された硫酸ナトリウムの成分を分析した結果である。
図4】温度とpHによるNH/NH 比率を示す。
図5】本発明の一実施例によるアンモニア除去用メンブレンでアンモニアが気体状態でメンブレンを通過して硫酸と反応して硫酸ナトリウムで濃縮される反応を示す。
図6】本発明の一実施例による共沈方法を使用して共沈濾液を数回循環して使用する場合、一定の回数を越えて循環時、一定量の硫酸ナトリウムが析出されることを示す曲線である。
図7】本発明の一実施例による共沈方法中のアンモニア除去のためのメンブレン接触器内工程を細分化して図式化した図面である。
図8】本発明のまた他の一実施例による共沈濾液再利用工程を含む回分式共沈方法を示した図面であって、メンブレンを通じて濃縮された硫酸アンモニウムをキレート触媒として使用するために再溶解し、供給準備する硫酸アンモニウム供給槽が追加された図面である。
図9】本発明の一実施例によるアンモニア除去用メンブレンで共沈濾液の流量、pH、温度によるアンモニア除去率を示すグラフである。
図10】本発明の一実施例による冷却結晶化段階前の共沈濾液に含まれている成分と冷却結晶化後に析出された硫酸ナトリウムの成分とを比較したものである。
図11】50℃の等温状態でNaSO-NiSO-HOシステムでNaNi(SO・4HO化合物が生成され得る条件を示すNaNi(SO・4HO等温溶解度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明を説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現することができ、したがってここで説明する実施例に限定されない。
【0027】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施例による共沈濾液再利用工程を含む回分式共沈方法を示した図面である。図1を参照すると、一般的な共沈反応のために金属硫酸塩を蒸溜水で溶解してNiSO、CoSO、MnSOなどを混合した金属溶液を製造し、これをNaOHおよびNHOHと共に反応器に注入して共沈反応させる。従来の共沈反応の場合には、共沈反応後に生成された前駆体は、濾過段階で圧搾式濾過器を通じて濾過された後、水洗工程を経て乾燥過程を経るようになる。この時、圧搾式濾過器で濾過後に残った溶液と前記濾過器で濾過された前駆体を水洗するのに使用された水洗溶液が共沈濾液で残るようになるが、このような共沈濾液には溶出された金属イオン(ニッケル、コバルト、マンガン)、5μm以下の微細金属水酸化物(水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化マンガン)、Na2+、SO 2-、NHなどが含まれている。本発明の一実施例では前記圧搾式濾過器で濾過後に残った共沈濾液を共沈濾液貯蔵タンクに貯蔵するが、この時、共沈濾液のNa2+、SO 2-モル比を合わせるためにNaOHを追加してpHを11.8以上に増加させる。このようにpHが調整された共沈濾液をフィルター(F2)を通じて通過させるが、フィルター(F2)は共沈濾液に残留されていた微細金属水酸化物と共沈濾液貯蔵タンクでNaOHを追加する時に新しく生成された金属水酸化物を濾過する役割を果たす。共沈濾液をフィルター(F2)を通じて濾過することによって、後で硫酸ナトリウムを冷却結晶化する時、金属水酸化物や金属イオンが不純物に入らないように濾過する役割を果たす。フィルター(F2)を経て金属水酸化物が除去された共沈濾液をアンモニア除去用メンブレン接触器に移して気体状態で存在するNHを薄い硫酸や硝酸と接触させるとアンモニアが除去されながら硫酸アンモニウム((NHSO)を副産物として生成するようになる。アンモニア除去用メンブレン接触器を通過してアンモニアを除去した共沈濾液を冷却結晶タンクに移す。冷却結晶タンクに移された共沈濾液は、10℃まで冷却して硫酸ナトリウムを析出するが、この時、冷却のために熱交換機および冷却器が使用される。濾過器を通じて析出された硫酸ナトリウムを共沈濾液と分離させた後、析出された硫酸ナトリウムを乾燥機で乾燥させ、析出された硫酸ナトリウムと分離された共沈濾液は循環濃縮タンクを経て再び金属溶液を形成するために初期溶液製造タンクと金属溶液形成タンクに移動させる。前記初期溶液製造タンクで共沈濾液を45℃まで昇温させ、初期共沈反応時に金属イオンの酸化を防止するためにNパージング(purging)またはNバブリング(bubbling)を実施する。
【0029】
本発明の一実施例による前記共沈濾液再利用工程を利用する場合、ニッケル83%のNCM前駆体を例に挙げると、前駆体1トン生産時に発生される共沈濾液で3.1トン程度の硫酸ナトリウム(NaSO・7HO)を獲得することができ、メンブレンおよび硫酸を利用してアンモニアを濃縮する場合、1.3トン程度の硫酸アンモニウム((NHSO)を副産物として獲得することができる。アンモニアなどにより溶出された金属イオンは、pH条件により共沈濾液に1,000ppm以上残っているようになるが、これは全体投入された金属イオン量に対して0.1~数%に該当する。
【0030】
図2は温度による硫酸ナトリウム(NaSO)と硫酸ニッケル(NiSO)の溶解度差を示す曲線であって、本発明の一実施例による共沈濾液再利用段階でアンモニアが除去された共沈濾液を10℃まで冷却する場合、硫酸ナトリウムを析出させることができることを示す。
【0031】
図3を参照すると、本発明の一実施例による製造方法の共沈濾液再利用工程で前記アンモニアが除去された共沈濾液を10℃まで冷却して析出された硫酸ナトリウムの成分を分析した結果を示し、図2で提示されたとおり、10℃で硫酸ニッケルの溶解度が硫酸ナトリウムの溶解度に比べて顕著に高いため、析出された硫酸ナトリウムに硫酸ニッケルなどの不純物が流入していないことが分かる。
【0032】
一般に、NCM前駆体を生産するための共沈反応後の共沈濾液の温度は45℃以上、pHは11以上であり、この時、アンモニアは大部分NHガス状態で存在する(図4参照)。本発明の一実施例で共沈濾液に5,000ppm以上のアンモニアが含まれているが、共沈濾液再利用時に共沈反応に影響を与えないながらも、共沈濾液に含まれているアンモニアを除去するために、NHガス状態で存在するアンモニアを硫酸または硝酸と反応させて硫酸ナトリウムまたは硝酸ナトリウムで濃縮して除去する。この時、前記NHガスは以下に提示されたヘンリーの法則(Henry’s Law)により気体状態でメンブレンを通過しながら硫酸または硝酸と反応する。
【0033】
ヘンリーの法則(P=Hx)
P=溶液と接触するガスの部分圧力
H=ガスのヘンリー比例定数
x=溶液に溶解されているガスの濃度
【0034】
図4に提示されたとおり、pHが高いほどアンモニア除去効率が高まることが分かり、また共沈濾液の温度が高いほどアンモニア除去効率が高まることが分かる。したがって、本発明の一実施例で共沈反応時に48℃以上で反応が終了した後、圧搾式濾過工程を経ながら共沈濾液の温度が落ちると共沈濾液槽のヒーターを通じて温度補償をする。共沈反応後の共沈濾液のpHは11以上に高いため、Na2+とSO4-のモル比を合わせるために少量のNaOHを印加するとpHが11.8以上に高まり、したがってアンモニア除去効率が非常に高い状態を維持することができる。
【0035】
アンモニアが除去された共沈濾液には、Na2+とSO4-、Ni2+などがイオン状態で存在する。このような共沈濾液を10℃まで冷却するとNa2+とSO4-が硫酸ナトリウム(NaSO・7HO)水和物形態で析出され(図2参照)、溶解度以下のNa2+とSO4-がNi2+と共に共沈濾液に残るようになる。前記段階を経てアンモニアが除去され、Na2+とSO4-の濃度が落ちた共沈濾液は金属溶液を形成したり初期溶液製造タンクに供給されて共沈反応に再利用される。図6を参照すると、本発明の一実施例による製造工程が数回繰り返された後、Na2+およびSO4-は濃縮されて結局一定の循環回数を超えるように共沈濾液が再利用された後は、冷却結晶化以降、一定量の硫酸ナトリウムが析出され、循環する共沈濾液のNa2+とSO4-イオン濃度が一定に維持されて共沈反応時に工程条件が安定化するようになる。
【0036】
図7は本発明の一実施例による共沈方法中のアンモニア除去のためのメンブレン接触器内工程を細分化して図式化した図面である。
【0037】
図7を参照すると、メンブレン接触器に薄い硫酸を供給すればアンモニア気体と反応して硫酸アンモニウムが生成され、薄い硝酸を供給すればアンモニア気体と反応して硝酸アンモニウムが生成される。この時、メンブレン接触器で硫酸あるいは硝酸は、前述のように共沈濾液と分離された状態でNHガスだけが移動して反応するようになる。硫酸貯蔵槽に濃縮された硫酸アンモニウムは、密度を測定して一定程度以上濃縮されると硫酸アンモニウム貯蔵槽に移送される。メンブレン接触器でアンモニアを除去する工程を通じてアンモニアが大部分除去されると沈澱濾過槽内の共沈濾液を熱交換機および冷却器を利用して10℃まで冷却させ、冷却時に共沈濾液内のNa2+とSO4-は飽和溶液度以下の量の分、硫酸ナトリウム水和物形態で析出される。析出された硫酸ナトリウムは、濾過を通じて共沈濾液と分離され、残った共沈濾液は循環濃縮タンクに貯蔵される。
【0038】
貯蔵された共沈濾液は、再び初期溶液製造タンクと金属溶液形成タンクに供給されて再循環するようになり、Na2+とSO4-は共沈濾液再利用工程が数回以上繰り返される場合、濃度が濃縮される。
【0039】
図8を参照すると、図1に示された本発明の一実施例による共沈濾液再利用工程を含む回分式共沈方法において、メンブレンを通じて生成、濃縮された硫酸アンモニウムをキレート触媒として使用するために再溶解して共沈反応時にアンモニアの代わりに投入する段階を追加できることが分かる。
【0040】
図9は本発明の一実施例によるアンモニア除去用メンブレンで共沈濾液の流量、pH、温度によるアンモニア除去率を示すグラフであり、共沈濾液の温度とpHが高いほどアンモニア除去効率が増加することが分かる。
【0041】
図10は本発明の一実施例による冷却結晶化段階前の共沈濾液に含まれている成分と冷却結晶化後に析出された硫酸ナトリウムの成分とを比較したものであり、共沈濾液に含まれているニッケル、コバルト、マンガンのような金属イオンが析出された硫酸ナトリウムにはほとんど含まれないことが分かる。
【0042】
図11は50℃の等温状態でNaSO-NiSO-HOシステムでNaNi(SO・4HO化合物が生成され得る条件を示すNaNi(SO・4HO等温溶解度グラフであり、本発明の一実施例による共沈濾液再利用工程内で硫酸ナトリウムおよび硫酸ニッケル化合物の生成の可能性が非常に低いことを示す。図11を参照すると、初期条件は50℃以上でNaSOが17.78wt%であり、NiSOが18.24wt%であり、HOが63.98wt%であるM地点でNaSOおよびNiSO化合物であるNaNi(SO・4HOが生成されることを示すが、図10に提示されたとおり、本発明の一実施例による共沈濾液に含まれている硫酸ニッケルの濃度は非常に低いため、図11のM地点で形成されるNaSOおよびNiSO化合物形態はほとんど存在しない。
【0043】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11