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特許7012864送信方法、コンピュータプログラム製品、及び送信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】送信方法、コンピュータプログラム製品、及び送信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20220121BHJP
【FI】
H04B7/0456 110
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020545189
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2019019598
(87)【国際公開番号】W WO2019225485
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】18305635.7
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】エクスポシト、ビクター
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0156125(US,A1)
【文献】国際公開第2017/069510(WO,A1)
【文献】Balasubramanian Gopalakrishnan et al.,High Performance Adaptive Algorithms for Single-Group Multicast Beamforming,IEEE Transactions on Signal Processing,2015年06月03日,VOL.63, NO.16,pp.4373-4384
【文献】Eleftherios Karipidis et al.,Quality of Service and Max-Min Fair Transmit Beamforming to Multiple Cochannel Multicast Groups,IEEE Transactions on Signal Processing,2008年02月12日,VOL.56, NO.3,pp.1268-1279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO(多入力多出力)方式を用いる無線通信システムにおいて、NTx個のアンテナを備える送信機によって、1<Nである一組のN個のプリコーダWを用いて少なくともK個の端末にデータDを送信する方法であって、
/a/前記N個のプリコーダWに基づいて、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’を求め、前記一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’に基づいて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することであって、前記N’個の最適化されたプリコーダW’は前記N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)にそれぞれ対応することと、
/b/N’個のデータDを送信することであって、前記N’個のデータのそれぞれは前記データDの一部分であり、i=1~N’について、Dは、前記最適化されたプリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上へプリコーディングされるT’(i)個のリソースユニットにおいて送信されるようになっていることと、
を含み、
前記一組の最適化されたプリコーダを求めることは、前記プリコーダ
【数1】
及び前記プリコーダ
【数2】
を結合することによって取得される結合されたプリコーダ
【数3】
を取得することを含む、方法。
【請求項2】
前記結合されたプリコーダ
【数4】
は、以下のように求められ、
【数5】
μは、1よりも小さくかつ0よりもに大きな数であり、||X||は、ベクトルXの2乗ノルムである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記一組のN’個の最適化されたプリコーダW’を求めることは、
/a/p<qである、
【数6】
の各対(p,q)について、i=1...N及びi≠qであるN-1個の最適化されたリソースユニット量T’p,q(i)を、N-2個のプリコーダ
【数7】
及び前記結合されたプリコーダMWp,qに基づいて計算することと、
/a/fが性能メトリックであり、H(k)が、前記送信機を前記K個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であるとして、
【数8】
を求めることと、
/a/集合
【数9】
を前記一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義し、集合
【数10】
を前記N’個の最適化されたリソースユニット量として定義することであって、MWm,m’はT’m,m’(m)に対応し、N’はN-1に等しいことと、
を含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
各対(p,q)について、N-1個の最適化されたリソースユニット量を計算することは、
/a11
【数11】
であるような、
【数12】
の係数Bp,q(i,k)を有するN-1×Kのサイズの行列Bp,qと、Bp,qのムーア・ペンローズ擬似逆行列Bp,q とを計算することと、
/a12/ベクトル[S’p,q(1),...,S’p,q(N-1)]を
【数13】
となるように計算することと、
/a13/γが0よりも厳密に大きい数であるとして、
【数14】
の場合に、T’p,q(i)=γ・max(min(S’p,q(i),1),0)を計算し、
【数15】
の場合に、T’p,q(i)=γ・max(min(S’p,q(i-1),1),0)を計算することと、
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記/a12/において実行される計算及び前記/a13/において実行される計算はループで繰り返され、前記/a12/において実行される計算が繰り返されるとき、前記N-1のサイズのベクトル
【数16】
が、ベクトル
【数17】
に置き換わる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記一組のN’個の最適化されたプリコーダW’を求めることは、
fが性能メトリックであり、H(k)が、前記送信機を前記K個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であるとして、
【数18】
を求めることであって、ここで、
【数19】
であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダWに対応することと、
集合
【数20】
を前記一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義することと、
を含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項7】
MIMO(多入力多出力)方式を用いる無線通信システムにおいて、NTx個のアンテナを備える送信機によって、1<Nである一組のN個のプリコーダWを用いて少なくともK個の端末にデータDを送信する方法であって、
/a/前記N個のプリコーダWに基づいて、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’を求め、前記一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’に基づいて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することであって、前記N’個の最適化されたプリコーダW’は前記N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)にそれぞれ対応することと、
/b/N’個のデータDを送信することであって、前記N’個のデータのそれぞれは前記データDの一部分であり、i=1~N’について、Dは、前記最適化されたプリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上へプリコーディングされるT’(i)個のリソースユニットにおいて送信されるようになっていることと、
を含み、
前記一組の最適化されたプリコーダを求めることは、
各iについて、
【数21】
となるように、前記最適化されたプリコーダW’ を計算すること、
を含み、
W’は、W’=[W’ ,...,W’ である行列であり、Wは、W=[W ,...,W である行列であり、fは性能メトリックであり、H(k)は、前記送信機を前記K個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であり、e =[0,...,1,...,0]であり、この数値1は第iの位置にあり、ρは、1よりも小さくかつ0よりも大きい数であり、τは-1よりも小さな数であり、X は行列Xの共役転置行列であり、X は前記行列Xの転置行列であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダW に対応する、方法。
【請求項8】
前記N’個の最適化されたプリコーダW’に対応する前記N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)は、
/a
【数22】
の係数B(i,k)=f(||W’*H(k)||)を有するN’×Kのサイズの行列Bと、Bのムーア・ペンローズ擬似逆行列Bとを計算することと、
/a/ベクトル[S’(1),...,S’(N’)]を
【数23】
となるように計算することと、
/a/γが0よりも大きい数であるとして、T’(i)=γ・max(min(S’(i),1),0)を計算することと、
によって取得される、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
前記/a/において実行される計算及び前記/a/において実行される計算はループで繰り返され、前記/a/において実行される計算が繰り返されるとき、前記ベクトル
【数24】
が、前記ベクトル
【数25】
に置き換わる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
i=1~Nである前記リソースユニット量T(i)は事前に計算され、この計算することは、
/I
【数26】
の係数A(i,k)=f(||W*H(k)||)を有するN×Kのサイズの行列Aと、Aのムーア・ペンローズ擬似逆行列Aとを計算することと、
/I/ベクトル[S(1),...,S(N)]を
【数27】
となるように計算することと、
/I/γが0よりも大きい数であるとして、T(i)=γ・max(min(S(i),1),0)を計算することと、
を含む、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記/I/において実行される計算及び前記/I/において実行される計算はループで繰り返され、前記/I/において実行される計算が繰り返されるとき、ベクトル
【数28】
が、ベクトル
【数29】
に置き換わる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記/a/において実行される計算はループで繰り返され、前記/a/において実行される計算が繰り返されるとき、前記N’個の最適化されたプリコーダW’が前記N個のプリコーダWに置き換わる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記コード命令は、少なくともプロセッサによって実行されると、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
MIMO(多入力多出力)方式を用いる無線通信システムにおいて、1<Nである一組のN個のプリコーダWを用いて少なくともK個の端末にデータDを送信する送信機であって、前記送信機は、
Tx個のアンテナと、
プロセッサと、
記憶された命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備え、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
/a/前記N個のプリコーダWに基づいて、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’を求め、前記一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’に基づいて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することであって、前記N’個の最適化されたプリコーダW’は前記N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)にそれぞれ対応することと、
/b/N’個のデータDを送信することであって、前記N’個のデータのそれぞれは前記データDの一部分であり、Dは、前記最適化されたプリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上へプリコーディングされるT’(i)個のリソースユニットにおいて送信されるようになっていることと、
を行うように構成されており、
前記一組の最適化されたプリコーダを求めることは、前記プリコーダ
【数30】
及び前記プリコーダ
【数31】
を結合することによって取得される結合されたプリコーダ
【数32】
を取得することを含む、送信機。
【請求項15】
MIMO(多入力多出力)方式を用いる無線通信システムにおいて、1<Nである一組のN個のプリコーダWを用いて少なくともK個の端末にデータDを送信する送信機であって、前記送信機は、
Tx個のアンテナと、
プロセッサと、
記憶された命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備え、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
/a/前記N個のプリコーダWに基づいて、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’を求め、前記一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダW’に基づいて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することであって、前記N’個の最適化されたプリコーダW’は前記N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)にそれぞれ対応することと、
/b/N’個のデータDを送信することであって、前記N’個のデータのそれぞれは前記データDの一部分であり、Dは、前記最適化されたプリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上へプリコーディングされるT’(i)個のリソースユニットにおいて送信されるようになっていることと、
を行うように構成されており、
前記一組の最適化されたプリコーダを求めることは、
各iについて、
【数33】
となるように、前記最適化されたプリコーダW’ を計算すること、
を含み、
W’は、W’=[W’ ,...,W’ である行列であり、Wは、W=[W ,...,W である行列であり、fは性能メトリックであり、H(k)は、前記送信機を前記K個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であり、e =[0,...,1,...,0]であり、この数値1は第iの位置にあり、ρは、1よりも小さくかつ0よりも大きい数であり、τは-1よりも小さな数であり、X は行列Xの共役転置行列であり、X は前記行列Xの転置行列であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダW に対応する、送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロードキャスト、又は、より詳細には、多入力多出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)方式を用いる無線通信システムにおけるデータのマルチキャストに関する。
【0002】
本発明は、より正確には、データがマルチキャストされるときのこのデータの送信の最適化に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、ブロードキャストサービスを提供するネットワークは、カバレッジエリアの範囲を定めて、決められたサービス品質を定義している。例えば、DVB規格では、信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)の最小レベルが定義されている。この最小値を上回るSNRである無線リンク状態を経験する受信機は、DVB信号を受信して復調することができる。この最小値を下回るSNRである無線リンク状態を経験する受信機は、DVB信号を復調することができない。
【0004】
しかしながら、この手法は、特に、送信機が各ユーザによって観測されるチャネル品質を認識している場合、スペクトル効率の点で効率的ではない。
【0005】
近年のLTEのような規格では、ブロードキャストサービス、すなわち、進化型マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービス(eMBMS:Evolved Multimedia Broadcast Multicast Service)は動的である。実際、基地局とも呼ばれる送信機は、各ユーザによって観測されるチャネル品質を受信し、これによって、基地局は、そのセル内の受信機に向けたデータの送信を、これらの受信機の瞬時の移動に従って適応させることが可能になる。したがって、基地局は、ブロードキャスト(又はマルチキャスト)をユニキャストに動的に切り替えることができる。すなわち、或るデータのブロードキャストが、各受信機(以下では端末とも呼ばれるユーザ機器)に個々に割り当てられたリソース上で同じデータを送信するよりも効率が劣ることになると、基地局は、ユニキャスト送信モードに切り替わる。
【0006】
しかしながら、ユニキャストモードを用いて幾つかのユーザ機器に同じデータを送信すると、リソース共有の優位性が減少する。したがって、そのような手法は、スペクトル帯域の使用の点で非効率的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ブロードキャスト送信(又はマルチキャスト)、又は、より一般的には、無線通信ネットワークにおける幾つかの受信機へ同じデータの送信を行う場合のスペクトル効率を高める必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記状況を改善することを目的とする。
本発明は、MIMO(多入力多出力)方式を用いる無線通信システムにおいて、NTx個のアンテナを備える送信機によって、一組のN個のプリコーダ(W)を用いて少なくともK個の端末に公衆データ(public data:公用データ、公共データ)を送信する方法に関し、上記方法は、
/a/N個のプリコーダ(W)に基づいて、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダ(W’)を求め、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダ(W’)に基づいて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することであって、N’個の最適化されたプリコーダ(W’)はN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)にそれぞれ対応すること;
/b/N’個のデータDを送信することであって、N’個のデータのそれぞれは公衆データの一部分であり、i=1~N’について、Dは、プリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上へプリコーディングされるT’(i)個のリソースユニットにおいて送信されるようになっていること、
を含む。
【0009】
これによって、MIMO方式を用いる無線通信システムにおいて、スペクトル効率を高めることが可能になるとともに、K個の端末への公衆データの送信を最適化することが可能になる。
【0010】
実際、本発明は、異なるプリコーダを用いて、すなわち、異なるプリコーディング行列を用いて、公衆データの複数の部分を送信機を介して送信することを可能にする。したがって、公衆データの各部分は、異なるプリコーディング行列を用いてK個の端末にブロードキャスト(又はマルチキャスト)され、これによって、K個の端末の瞬時の移動に適応することが可能になる。このため、端末によって返されたチャネル品質に従って、プリコーダ(別称として、プリコーディング行列と呼ばれる)と、それらのプリコーダのそれぞれを用いて送信されるデータの量とを最適化し、公衆データをK個の端末に送信するのに必要とされる無線リソースを削減することができる。
【0011】
したがって、公衆データは、N’個の最適化されたリソースユニット量(T’(i))に従って分割され、公衆データの各部分(D)は、最適化されたプリコーダ(W’)のうちの1つに従って送信される。最適化されたリソースユニット量T’(i)は、K個の端末に関するブロードキャスト/マルチキャスト送信容量を高めるために、最適化されたプリコーダW’に基づいて計算される。
【0012】
したがって、本方法は、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信のスペクトル効率を高め、電力消費を改善することを可能にする。
【0013】
本方法は、次の2つの最適化を行う。第1の最適化は、プリコーダWを最適化して、最適化されたプリコーダW’にするものであり、第2の最適化は、最適化された各プリコーダW’を用いてデータを送信するのに用いられるリソースユニットの分配の最適化である。したがって、計算されるリソースユニットは、求められたプリコーダW’に依存する。これは、ブロードキャスト/マルチキャスト送信容量を大幅に高める。
【0014】
特に、複数のアンテナ技術が用いられるときに、各ユーザが経験するチャネル状態の知識に従って送信容量を動的に最適化して、送信機において行うことができるマルチキャストサービスのスペクトル効率を高めることは利点である。
【0015】
送信機は、MIMO方式を用いる無線通信システムの一部分である。したがって、送信機は、複数の送信アンテナ(NTx個のアンテナ)を用い、受信機、すなわち、端末は、幾つかの受信アンテナを用いることができる。NTx個のアンテナを通した送信は、プリコーディングモジュールの構成を介して、すなわち、特定のプリコーダ又はプリコーディング行列を実施することによって規定される。
【0016】
リソースユニットは、ダウンリンク送信に無線リソースを割り当てるために送信機によって用いられるユニットに対応する。例えば、LTEでは、リソースユニットは、リソースブロックと呼ばれる時間周波数リソースである。
【0017】
リソースユニットの量は、リソースユニットの数であると理解されている。したがって、最適化されたリソースユニットの量T’(i)は、最適化されたプリコーダW’を用いてデータD(公衆データの一部分である)を送信するのに用いられるリソースユニットの数である。リソースユニット量の総量は、公衆データを送信するのに必要とされるリソースユニットの数Tpubdataと等しくなるように選択される。リソースユニットのサイズTpubdataは、公衆データを送信するのに用いられる変調符号化方式(MCS:modulation and coding scheme)に特に依存する。これは、各リソースユニット量にTpubdata/ΣT’(i)を乗算することによって容易に取得することができる。
【0018】
公衆データの1つの部分Dを送信するのに用いられるリソースユニットは、時間、周波数又はそれらの双方において同時に分配することができる。
【0019】
リソースユニット量及びプリコーダは最適化される。この最適化は、K個の端末に従って、すなわち、公衆データの送信の対象である端末に従って行われる。より具体的には、最適化は、送信機をK個の端末のそれぞれとリンクするチャネルのチャネル品質に従って行われる。
【0020】
このチャネル品質は、複素係数の行列H(k)(1≦k≦K)によって表すことができる。各複素係数は、送信機のアンテナのうちの1つと第kの受信機のアンテナのうちの1つとの間の無線チャネルの瞬時の信号対雑音比を表す。この瞬時の信号対雑音比は、無線伝播チャネルの小規模フェージングに従って高速に変動する可能性がある。小規模フェージング変動は、端末が移動しているときの移動する散乱体及びドップラー効果に主に起因する。この瞬時の信号対雑音比の平均は、大規模フェージングに従ってのみ変動する、すなわち、端末位置が送信信号の数個の波長よりも大きく変化するときにのみ変動する、長期信号対雑音比である。このように、行列H(k)は、第kの端末を送信機とリンクするチャネルのチャネル品質を表す。
【0021】
送信機は、各端末によって与えられるフィードバックに基づいて、各端末のチャネル品質を、例えば、プリコーダコードブックインデックスの形で取得することができる。LTEでは、このプリコーダコードブックインデックスは、プリコーディング行列インジケーター(PMI:Pre-coding Matrix Indicator)である。チャネル品質を求める他の方法を適用することができる。例えば、送信機は、第kの端末を送信機とリンクするアップリンクチャネルのチャネル品質を解析することができる。
【0022】
各端末によって観測されるチャネル品質は、公衆データを送信するのに用いられる帯域幅において一定であると仮定される。
【0023】
前述したように、リソースユニット量の最適化及び一組のプリコーダの最適化は、より大きな全体送信容量(全体チャネル容量)、すなわち、各端末が経験する送信容量(又はチャネル容量)のより大きな総量を取得するように行われる。最適化されたリソースユニット量及び最適化されたプリコーダは、一般に、最良の送信容量を保証するリソースユニット量及びプリコーダの組み合わせではないが、少なくとも、それらは、送信機とK個の端末との間のブロードキャスト/マルチキャスト送信容量を高めることを可能にする。
【0024】
これらの最適化は、以下の式を最大にする一組のプリコーダと一組のプリコーダに対応する一組のリソースユニット量とをそれぞれ推定することによって数学的に表すことができる。
【数1】
【0025】
前述したように、計算される一組のプリコーダ及び一組のリソースユニット量は、一般に、上記式を最大にする解ではなく、近い評価、すなわち、近似にすぎない。
【0026】
最適化されたリソースユニット量は、(W’)が既知である以下の式を最大にする解の評価である一組のリソースユニット量であると理解されている。
【数2】
【0027】
一組のN’個の最適化されたプリコーダ及び一組のN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)は、(T(i))及び(W)が既知である以下の式を最大にする解の評価である一組のプリコーダ及び一組のリソースユニット量であると理解されている。
【数3】
【0028】
本発明によって実行される最適化、すなわち、リソースユニット量の最適化及びプリコーダの最適化は、K個の端末が経験するブロードキャスト/マルチキャスト送信容量を高める。実際、以下の不等式
【数4】
(T(i)は、最適化されていないリソースユニット量又はWに従って最適化されたリソースユニット量である)を解く一組のリソースユニット量T’(i)及び一組のプリコーダW’を知ることは、これらの最適化された組を用いることがブロードキャスト/マルチキャスト送信の容量を高めることを伴っている。
【0029】
実際、プリコーダWが送信に用いられる場合には、||W*H(k)||に適用される性能メトリックfは、端末が経験するチャネル容量の推定値である。選ばれた性能メトリックがf(x)=log(1+x)である場合には、
【数5】
が、シャノン・ハートレー(Shannon-Hartley)定理に規定されたチャネル容量に近い。したがって、第kの端末が経験するチャネル容量は、T(i)個のリソースブロックに関して、
【数6】
によって表すことができ、第kの端末が経験する全体のチャネル容量は、
【数7】
によって表すことができる。このように、上記不等式を満たすN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)及び複数組の最適化されたプリコーダは、K個の端末のうちの1つが経験する最低のチャネル容量を高める。公衆データの送信はブロードキャスト(又はマルチキャスト)形式で行われるので、最低のチャネル容量を高めることは、送信の容量を高めることと同等である。
【0030】
送信容量を高めることは、送信に用いられる同じ量のリソースユニットに基づいて、この量のリソースユニットを用いて送信されるデータの量が高められることであると理解されている。したがって、最適化は、一定の全リソースユニット量
【数8】
に基づいて評価される。ただし、リソースユニット量の総量は、公衆データを送信するのに必要とされるリソースユニットの数と等しくなるように選ばれる。
【0031】
最適化を行うために、送信機は、各端末が経験するチャネル品質を求めることが必要な場合がある。このチャネル品質は、第kの端末について、行列H(k)によって定義することができる。したがって、送信機は、各端末のH(k)又はH(k)を近似したものを求めることを可能にする情報を受信することができる。例えば、端末は、コードブックからのプリコーダを示すインデックス(LTEでは、PMI-プリコーディング行列インジケーター)を受信することができる。
【0032】
公衆データは、K個の端末への送信の対象とされているデータであると理解されている。すなわち、K個の端末のそれぞれは公衆データの受信者である。i=1~N’である公衆データの部分Dは、編成されると、公衆データを復元することができる。したがって、Dは、公衆データを分割したものを構成することができる。
【0033】
本発明の一態様によれば、一組の最適化されたプリコーダを求めることは、プリコーダ
【数9】
及び
【数10】
を結合することによって取得される結合されたプリコーダ
【数11】
を取得することを含む。有利には、結合されたプリコーダ
【数12】
は、以下のように求められ、
【数13】
μは、1よりも厳密に小さくかつ0よりも厳密に大きな数であり、||X||は、ベクトルXの2乗ノルムである。これによって、複雑度を低減することが可能になり、したがって、一組の最適化されたプリコーダを取得するのに必要とされる計算を削減することが可能になる。
【0034】
【数14】

【数15】
及び
【数16】
は、プリコーダを表す行列である。プリコーダを表す行列における行の数はNTxに等しい。簡略にするために、以下で用いるプリコーディング行列は、1行のみを有する行列である。すなわち、1つの受信アンテナを有する端末に関する場合のみが説明される。当業者であれば、本発明のこの実施態様を、端末が2つ以上の受信アンテナを有する場合に容易に適応させることができる。
【0035】
本発明の一態様によれば、一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることは、
/a/p<qである、
【数17】
の各対(p,q)について、i=1...N及びi≠qであるN-1個の最適化されたリソースユニット量T’p,q(i)を、N-2個のプリコーダ
【数18】
及び結合されたプリコーダMWp,qに基づいて計算すること;
/a/fが性能メトリックであり、H(k)が、送信機をK個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であるとして、
【数19】
を求めること;
/a/集合
【数20】
を一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義し、集合
【数21】
をN’個の最適化されたリソースユニット量として定義することであって、MWm,m’はT’m,m’(m)に対応し、N’はN-1に等しいこと、
を含む。
【0036】
これによって、元の一組のN個のプリコーダの中の2つのプリコーダを結合することのみによってそれぞれ取得される複数組のN-1個のプリコーダの中から効率的に選択することが可能になる。したがって、複雑度は、取得される一組のN-1個のプリコーダのそれぞれのN-1個の最適化されたリソースユニット量の計算に低減される。したがって、これによって、複雑な問題を幾つかの単純な問題に置き換えることによって計算の複雑度を低減するとともに、一組のプリコーダ及びリソースユニット量を最適化することが可能になる。
【0037】
関数のArgmaxは、この関数の最大値の引数を表す。
【0038】
都合のよいことに
【数22】
である場合に、集合
【数23】
は、一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義され、集合
【数24】
は、N’個の最適化されたリソースユニット量として定義される。
【0039】
これによって、選択される一組のプリコーダが元のものよりも良好な全体の送信容量を提供する場合にのみ、この一組のプリコーダを選択することが可能になる。
本発明の一態様によれば、各対(p,q)について、N-1個の最適化されたリソースユニット量を計算することは、
/a11
【数25】
であるような、
【数26】
の係数Bp,q(i,k)を有するN-1×Kのサイズの行列Bp,qと、Bp,qのムーア・ペンローズ(Moore-Penrose)擬似逆行列Bp,q とを計算すること;
/a12/ベクトル[S’p,q(1),...,S’p,q(N-1)]を
【数27】
となるように計算すること;
/a13/γが0よりも厳密に大きい数であるとして、
【数28】
の場合に、T’p,q(i)=γ・max(min(S’p,q(i),1),0)を計算し、
【数29】
の場合に、T’p,q(i)=γ・max(min(S’p,q(i-1),1),0)を計算すること、
を含む。
【0040】
行列Bのムーア・ペンローズ擬似逆行列(B)は、例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Moore-Penrose_inverseに定義されている。特に、K≦N-1であり、BBがフルランクを有するときは、B=(BB)-1であり、K≧N-1であり、BBがフルランクを有するときは、B=B(BB-1である。
【0041】
は行列Bの共役転置行列である。
【0042】
これによって、元の一組のN個のプリコーダの中の2つのプリコーダを結合することのみによって取得される各一組のN-1個のプリコーダに従ってN-1個の最適化されたリソースユニット量を計算することが可能になる。この計算によって、以下の式を最大にする解の良好な評価であるN-1個のリソースユニット量を取得することが可能になる。
【数30】
【0043】
(V)は、元の一組のN個のプリコーダの中の2つのプリコーダを結合することのみによって取得される組のうちの1つである。
【0044】
N-1個の最適化されたリソースユニット量の計算は、本発明では、低複雑度の計算であり、したがって、必要とされる計算リソースを削減することを可能にする。
【0045】
本発明の一態様によれば、/a12/において実行される計算及び/a13/において実行される計算はループで繰り返され、/a12/において実行される計算が繰り返されるとき、N-1のサイズのベクトル
【数31】
が、ベクトル
【数32】
に置き換わる。
【0046】
これによって、以下の式を最大にする解のより良好な評価(又は近似)を取得することが可能になる。
【数33】
【0047】
すなわち、/a12/及び/a13/の計算を繰り返すことによって、計算されたN-1個の最適化されたリソースユニット量は、上記式を最大にする正確な解に近づく。
本発明の一態様によれば、一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることは、
- fが性能メトリックであり、H(k)が、送信機をK個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であるとして、
【数34】
を求めることであって、ここで、
【数35】
であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダWに対応すること;
- 集合
【数36】
を一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義すること、
を含む。
【0048】
これによって、元の一組のN個のプリコーダの中の2つのプリコーダを結合することのみによってそれぞれ取得される複数組のN-1個のプリコーダの中で最良の最適化された一組のプリコーダを、これらの複数組のプリコーダのそれぞれについて対応するN-1個の最適化されたリソースユニット量を計算することなく選択することが可能になる。したがって、必要とされる計算は削減されるか、又は、計算はより高速に行うことができ、これは、各端末が経験するチャネル品質が高速に変動するときに重要である。
【0049】
これによって、解放されていないリソースユニットに関して同じ送信容量を維持しながら、より多くのリソースユニット(最適化されていない一組のN個のプリコーダと比較してより多い)を解放する組に基づいて、複数組のN-1個のプリコーダ(元の一組のN個のプリコーダの中の2つのプリコーダを結合することのみによってそれぞれ取得される)の中で最良の最適化された一組のプリコーダを選択することが可能になる。これは、より良好なスペクトル効率を示す。選択された組に基づいて計算されるN-1個の最適化されたリソースユニット量は、その後、解放されたソースユニットを含む全てのリソースユニットを、選択された組のN-1個のプリコーダに最適化された方法でそれぞれ再分配する。
【0050】
有利には、
【数37】
である場合に、集合
【数38】
は、一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義される。
【0051】
これによって、選択される一組のプリコーダが元のものよりも良好な全体の送信容量を提供する場合にのみ、この一組のプリコーダを選択することが可能になる。
本発明の一態様によれば、一組の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることは、
- 各iについて、
【数39】
となるように、W’を計算すること、
を含み、W’は、W’=[W’ ,...,W’ である行列であり、Wは、W=[W ,...,W である行列であり、fは性能メトリックであり、H(k)は、送信機をK個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であり、e=[0,...,1,...,0]であり、この数値1は第iの位置にあり、ρは、1よりも厳密に小さくかつ0よりも厳密に大きい数であり、τは-1よりも小さな数であり、Xは行列Xの共役転置行列であり、Xは行列Xの転置行列であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダWに対応する。
【0052】
これによっても、一組の最適化されたリソースユニット量を計算することなく一組の最適化されたプリコーダを求めることが可能になる。これによって、必要とされる計算が限定される。加えて、この一組の最適化されたプリコーダを求めることは、プリコーダの数を削減することなく行われ、したがって、N個の最適化されたリソースユニット量が、この一組の最適化されたプリコーダに基づいて計算されるとき、送信容量の改善がより大きくなる可能性がある。実際、計算は、以下の式を最大にすることを目的とする。
【数40】
【0053】
この式は、N個の未知数を有するので、一組のN-1個のプリコーダを用いて取得される式よりも1つ多い自由度を有する。したがって、この式は、より多くの極大値及びより大きな全体の最大値を潜在的に有する可能性がある。これは、送信機によって最初の用いられるプリコーダの数Nが小さいか又は方法の反復の数が大きいときに一層当てはまる。
【0054】
で表される行列Xの共役転置行列は、転置を取り、次いで、各エントリの複素共役を取ることによって、Xから取得される。
本発明の一態様によれば、N’個の最適化されたプリコーダ(W’)に対応するN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)は、
/a
【数41】
の係数B(i,k)=f(||W’*H(k)||)を有するN’×Kのサイズの行列Bと、Bのムーア・ペンローズ擬似逆行列Bとを計算すること;
/a/ベクトル[S’(1),...,S’(N’)]を
【数42】
となるように計算すること;
/a/γが0よりも厳密に大きい数であるとして、T’(i)=γ・max(min(S’(i),1),0)を計算すること、
によって取得される。
【0055】
これによって、一組のN’個の最適化されたプリコーダに従ってN’個の最適化されたリソースユニット量を計算することが可能になる。この計算によって、以下の式を最大にする解の良好な評価(近似)である一組のN’個のリソースユニット量を取得することが可能になる。
【数43】
【0056】
本発明の一態様によれば、/a/において実行される計算及び/a/において実行される計算はループで繰り返され、/a/において実行される計算が繰り返されるとき、ベクトル
【数44】
が、ベクトル
【数45】
に置き換わる。
【0057】
これによって、以下の式を最大にする解のより良好な評価を取得することが可能になる。
【数46】
【0058】
すなわち、/a/及び/a/の計算を繰り返すことによって、計算されたN’個の最適化されたリソースユニット量は、上記式を最大にする正確な解に近づく。
本発明の一態様によれば、i=1~Nであるリソースユニット量T(i)は事前に計算され、上記計算することは、
/I
【数47】
の係数A(i,k)=f(||W*H(k)||)を有するN×Kのサイズの行列Aと、Aのムーア・ペンローズ擬似逆行列Aとを計算すること;
/I/ベクトル[S(1),...,S(N)]を
【数48】
となるように計算すること;
/I/γが0よりも厳密に大きい数であるとして、T(i)=γ・max(min(S(i),1),0)を計算すること、
を含む。
【0059】
これによって、送信機によって最初に用いられた一組のN個のプリコーダに従ったN個のリソースユニット量の計算を最適化することが可能になる。この計算によって、以下の式を最大にする解の良好な評価である一組のN個のリソースユニット量を取得することが可能になる。
【数49】
【0060】
本発明におけるこの計算は、低複雑度の計算であり、したがって、必要とされる計算を削減することを可能にする。取得されたこれらのN個のリソースユニット量は、ステップ/a/において実行されるプリコーダの最適化の効率を高めることを可能にする。
【0061】
本発明の一態様によれば、/I/において実行される計算及び/I/において実行される計算はループで繰り返され、/I/において実行される計算が繰り返されるとき、ベクトル
【数50】
が、ベクトル
【数51】
に置き換わる。
【0062】
これによって、以下の式を最大にする解のより良好な評価を取得することが可能になる。
【数52】
【0063】
すなわち、/I/及び/I/の計算を繰り返すことによって、計算されたN個のリソースユニット量は、上記式を最大にする正確な解に近づく。
【0064】
本発明の一態様によれば、/a/において実行される計算はループで繰り返され、/a/において実行される計算が繰り返されるとき、N’個の最適化されたプリコーダ(W’)がN個のプリコーダ(W)に置き換わる。
【0065】
/a/において実行される計算を繰り返すことによって、取得された一組のN’個の最適化されたプリコーダ及び一組のN’個の最適化されたリソースユニット量は、以下の式を最大にする理論的解をより良く近似したものとなる。
【数53】
【0066】
これによって、送信容量を高めることが可能になる。
【0067】
本発明の第2の態様は、コード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、この命令は、プロセッサによって実行されると、前述したような方法を実行する、コンピュータプログラム製品に関する。
本発明の第3の態様は、MIMO(多入力多出力)方式を用いる無線通信システムにおいて、少なくともK個の端末にデータを送信する送信機に関し、送信機は、
Tx個のアンテナと、
プロセッサと、
記憶された命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備え、
命令は、プロセッサによって実行されると、
/a/N個のプリコーダ(W)に基づいて、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダ(W’)を求め、一組のN’≦N個の最適化されたプリコーダ(W’)に基づいて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することであって、N’個の最適化されたプリコーダ(W’)はN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)にそれぞれ対応すること;
/b/N’個のデータDを送信することであって、N’個のデータのそれぞれは公衆データの一部分であり、Dは、プリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上へプリコーディングされるT’(i)個のリソースユニットにおいて送信されるようになっていること、
を行うように送信機を構成する。
【0068】
本発明は、添付図面の図に、限定としてではなく例として示される。添付図面において、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明による送信機及びK個の端末を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による、リソースユニットの特定のスケジューリング及びプリコーダモジュールの対応する構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による、リソースユニットの別の特定のスケジューリング及びプリコーダモジュールの対応する構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による最適化ステップを表すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による最適化ステップを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1を参照すると、無線信号を幾つかの受信機1.2に送信する送信機1.1が示されている。受信機1.2は送信機1.1のセル内に存在する。この送信は、例えば、LTEベースのシステムでは、OFDMベースの送信とすることができる。この例では、受信機1.2は端末とも呼ばれるモバイル端末であり、送信機1.1は固定局であり、固定局はLTEでは基地局である。本発明では、幾つかの端末への公衆データの送信が対象とされている。すなわち、少なくとも2つの端末1.2が送信機のセル内に存在する。
【0071】
送信機1.1は、1つの通信モジュール(COM_trans)1.3と、1つの処理モジュール(PROC_trans)1.4と、メモリユニット(MEMO_trans)1.5とを備える。MEMO_trans1.5は、コンピュータプログラム及び最適化アルゴリズムを取り出す不揮発性ユニットと、最適化されたプリコーダ及び最適化されたリソースユニット量を記憶することができる揮発性ユニットとを備える。PROC_trans1.4は、行列H(k)を求め、N’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求め、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算し、COM_trans1.3を構成し、プリコーダモジュール2.0を構成し、公衆データをN’個のデータDに分割し、公衆データの複数の部分DをCOM_trans1.3に転送するように構成することができる。COM_trans1.3は、受信機1.2にN’個のデータDを送信するように構成されている。N’個のデータのそれぞれは公衆データの一部分である。COM_trans1.3は、プリコーダモジュール2.0を含むことができる。処理モジュール1.4及びメモリユニット1.5は、送信機のプロセッサ及び非一時的コンピュータ可読媒体を備えることができる。処理モジュール1.4及びメモリユニット1.5は、最適化されたリソースユニット量の計算と、最適化されたプリコーダの特定と(/a/及び/b/)に専用化することもできるし、例えば、一組の最適化されたプリコーダに従って送信機1.1のプリコーダモジュール2.0を構成することと、それに応じてリソースを割り当てることと、最適化されたリソースユニット量に従って公衆データを分割することと、チャネル品質に従って変調方式を適応させることとによって、公衆データを送信する無線信号を処理するような送信機の他の機能に用いることもできる。
【0072】
図2を参照すると、リソースユニットと、プリコーダモジュール2.0の入力における幾つかのシンボルを各アンテナポート上の幾つかのシンボルに変換するプリコーダモジュール2.0との特定のスケジューリングが示されている。
【0073】
本発明に従って、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)が計算され、一組のN’個の最適化されたプリコーダが求められると、リソースユニットの量T’(1)が、公衆データの一部分Dを送信するのに用いられる。図2の例では、LTEベースのシステムが示されており、したがって、リソースユニットはリソースブロックである。T’(1)個のリソースブロックのシンボルが、プリコーダW’を用いて構成されたプリコーダモジュール2.0を用いてNTx個のアンテナポート上へプリコーディングされる。T’(1)個のリソースブロックを含むスロットの全てのシンボルがプリコーディングされると、プリコーダモジュール2.0は、プリコーダW’を用いて構成される。プリコーダモジュール2.0は、構成されると、公衆データの別の部分Dを送信するのに用いられるT’(2)個のリソースブロックを含む次のスロットのシンボルをNTx個のアンテナポート上へプリコーディングする。このプロセスは、最後のグループのT’(N’)個のリソースブロックのシンボルが、プリコーダW’N’を用いて構成されたプリコーダモジュール2.0を用いてNTx個のアンテナポート上へプリコーディングされるまで繰り返される。したがって、プリコーディングモジュール2.0は、各グループのリソースブロック(T’(i)個のリソースブロック)のシンボルを、異なる構成、すなわち、異なるプリコーダを用いてプリコーディングする。したがって、リソースブロックのスケジューリングは、プリコーディングモジュール2.0の構成の変化と同期されるこの方式に従って行う必要がある。
【0074】
プリコーダモジュール2.0の構成は、PROC_trans1.4によって行うことができる。公衆データ部分Dを送信するのに用いられるリソースブロックの量T’(i)は、1つのスロット内のリソースブロックの最大数よりも多い場合があり、その場合、T’(i)個のリソースブロックは2つ以上のスロットに分散され、プリコーダモジュール2.0の構成は、その場合、それに応じて行われる。すなわち、プリコーダモジュール2.0がこれらのスロットに関連したシンボルをプリコーディングするとき、プリコーダモジュール2.0は同じ構成W’を有する。
【0075】
しかしながら、プリコーダモジュール2.0のスケジューリング及び構成は、時間形式で実施される。すなわち、プリコーダモジュール2.0は、同じスロットの全てのリソースブロックについて同じ方法で構成される。逆に、2つの異なるグループのリソースブロックからのリソースブロック(例えば、公衆データのD部分を送信するのに用いられるグループのT’(m)個のリソースブロック、及び、公衆データのD部分を送信するのに用いられるグループのT’(n)個のリソースブロック)は、同じスロット内にスケジューリングされない。
【0076】
1~N’のiを有する(D)に公衆データを分割する方法は、一組の最適化されたリソースユニット量T’(i)と、各グループのリソースブロック内のデータを符号化するのに用いられる変調符号化方式(MCS)とに依存する。実際、シンボルが、f(||W’*H(k)||)の低い値を有するプリコーダW’を用いてプリコーディングされるグループのリソースブロックでは、選ばれるMCSインデックスは、正しい送信を可能にするために小さなものでなければならない。すなわち、変調方式はよりロバストであり、符号化速度はより小さく、したがって、不十分なチャネル品質は補償されるが、送信速度は低く、これは、チャネル容量が不十分であることを表している。逆に、シンボルが、f(||W’*H(k)||)の高い値を有するプリコーダW’を用いてプリコーディングされるグループのリソースブロックでは、選ばれるMCSインデックスは、高い送信速度を有することを可能にするために大きなものとすることができる。すなわち、変調方式は低ロバストであり、符号化速度はより大きく、したがって、高いチャネル品質によって、高い送信速度を有することが可能になり、これは、チャネル容量が十分であることを表している。
【0077】
したがって、K個の端末の中でプリコーダW’に関して最も良好でないチャネル送信を有する端末がデータを受信することを可能にするように十分小さなMCSインデックスを用いて、データDをT’(i)個のリソースユニット上で符号化することができる。すなわち、T’(i)個のリソースユニットのMCSインデックスは、minf(||W’*H(k)||)に従って設定される。したがって、リソースユニットの総数ΣT’(j)は、公衆データのサイズと、T’(i)個のリソースユニットからなるグループごとにそれぞれ選ばれたMCSインデックスとに従って設定される。T’(i)個のリソースユニットからなるN’個のグループを用いて送信することができるデータの総数は、T’(j)個のリソースユニットに用いられるMCSインデックスに依存するγを用いてΣγT’(j)によって表すことができ、γT’(j)は、T’(j)個のリソースユニットがプリコーダW’を用いて送信することができるデータ(ペイロードデータ)の総量を表す。公衆データは、その後、γT’(j)に従って分割される。
【0078】
実際には、全てのDが、全てのリソースユニットを通して1つのMCSを用いて共同で符号化される。すなわち、選ばれたMCSは、K個の端末の中で最も良好でない全体的なチャネル送信を有する端末がデータを受信することを可能にするように十分小さなものである。すなわち、データDの合計のビット数(すなわち、公衆データのサイズ)を公衆データの送信に用いられるリソースユニットの数(すなわち、
【数54】
)によって除算したものが、
【数55】
に等しくなるように、ΣT’(j)個のリソースユニットのMCSインデックスは設定される。
【0079】
の符号化を共同で実施する方法は、当業者によって既知である。
【0080】
したがって、公衆データは、各グループのリソースブロックが送信することができる最大ペイロードデータに従ってデータのN’個の部分に分割される。各グループのリソースブロックが送信することができる最大ペイロードデータの合計が公衆データのサイズ未満である場合には、量T’(i)は、ΣT’(j)によって除算するとともに十分大きな値λを乗算することができる。
【0081】
加えて、本発明は、直交周波数分割多重化(OFDM:Orthogonal frequency-division multiplexing)方式以外の別の方式を実施するアンテナポートを用いて実施することができる。
【0082】
図3を参照すると、リソースユニットと、プリコーダモジュール2.0の入力における幾つかのシンボルを各アンテナポート上の幾つかのシンボルに変換するプリコーダモジュール2.0との別の特定のスケジューリングが示されている。
【0083】
図2の実施形態と同様に、本発明に従って、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)が計算され、一組のN’個の最適化されたプリコーダが求められると、プリコーダモジュール2.0は、PROC_trans1.4によって構成され、リソースブロックは、以下で詳述するようにスケジューリングされる。
【0084】
図2の実施形態と対照的に、公衆データのN’個のデータ部分Dを送信するのに用いられるリソースブロックは、同時に、すなわち、LTEベースのシステムの場合には同じスロットにおいて処理される。加えて、プリコーダモジュール2.0は、入力帯域幅に応じて異なるプリコーダ又は異なるプリコーダ行列を用いて併せて構成される。プリコーダモジュール2.0は、リソースブロックが存在する帯域幅の部分に従って、それらのリソースブロックを処理する。
【0085】
より具体的には、i=1~N’であるサブ帯域幅BWに分割される帯域幅を考えると、第1の帯域幅BWにおいてサブキャリアによって搬送されるシンボルの部分はプリコーダW’を用いて処理され、第iの帯域幅BWにおいてサブキャリアによって搬送されるシンボルの部分はプリコーダW’を用いて処理され、第N’の帯域幅BWN’においてサブキャリアによって搬送されるシンボルの部分はプリコーダW’N’を用いて処理される。各帯域幅BWのサイズは、同じスロットにおいて、Dを送信するのに用いられるT’(i)個のリソースブロックを搬送するのに必要とされるサイズ以上である。
【0086】
換言すれば、T’(i)個のリソースブロックは、BWに含まれる周波数を有するサブキャリアによって搬送される。したがって、BWを通じて送信されるT’(i)個のリソースブロックは、プリコーダW’を用いて処理される。
【0087】
プリコーダモジュール2.0の出力では、各グループのT’(i)個のリソースブロックのシンボルのプリコーディングの出力が、各アンテナポートにおいて互いに多重化される。すなわち、アンテナポートのうちの1つにおけるシンボルは、同じアンテナポートへのT’(i)個のリソースブロックを含むシンボルの部分のプリコーディングの結果と、BWにおけるサブキャリアに関して同一である。
【0088】
したがって、プリコーディングモジュール2.0は、各グループのリソースブロックのシンボルを単一の構成を用いてプリコーディングする。このように、リソースブロックのスケジューリングは、説明した方式に従って行う必要がある。すなわち、T’(i)個のリソースブロックは、BWにおいてスケジューリングされなければならない。
【0089】
プリコーダモジュール2.0の構成は、PROC_trans1.4によって行うことができる。リソースブロックの量T’(i)は、1つのスロット内のBWにおけるリソースブロックの最大数よりも大きい場合があり、この場合、T’(i)個のリソースブロックは、同じBWにおいて2つ以上のスロットに分散される。
【0090】
図3の実施態様では、プリコーダモジュール2.0のスケジューリング及び構成は周波数形式で実施される。すなわち、プリコーダモジュール2.0の構成及び各T’(i)個のリソースブロックのスケジューリングは、全帯域幅のサブ帯域幅(BW)への分割に従って行われる。
【0091】
1~N’のiを有する(D)に公衆データを分割する方法は、図2の実施態様におけるものと同一である。すなわち、公衆データの分割は、一組の最適化されたリソースユニット量T’(i)と、各グループのリソースブロック内にデータを符号化するのに用いられる変調符号化方式(MCS)(実際には、1つのMCSのみが、公衆データの送信に用いられる全てのリソースユニットにおける符号化に選ばれる)とに依存する。各グループのリソースブロックが送信することができる最大ペイロードデータの合計が公衆データのサイズ未満である場合には、量T’(i)は、ΣT’(j)によって除算するとともに十分大きな値λを乗算することができる。
【0092】
時間形式の実施態様である図2の実施態様及び周波数形式の実施態様である図3の実施態様は、組み合わせることができる。すなわち、プリコーダモジュール2.0の構成は、時間とともに変化することができ、1つのスロット内のリソースブロックを処理するのに用いられる構成は、一組の最適化されたプリコーディング行列の中の全ての又は少なくとも幾つかの最適化されたプリコーディング行列を用いることができる。
【0093】
図4を参照すると、本発明の一実施形態による最適化ステップのフローチャートが示されている。
【0094】
ステップS10において、送信機がパラメーター化される。すなわち、一組のN個のプリコーダ(W)及び最適化アルゴリズムが、送信機1.1のメモリ、例えばMEMO_trans1.5に記憶される。
【0095】
初期の一組のプリコーダは、例えば、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)行列から生成される。例えば、初期の一組のプリコーダは、以下によって取得することができる。
- サイズmax(NTx,N)×max(NTx,N)のDFT行列を生成すること。例えば、DFT行列は、要素
【数56】
を有する行列MDFTとすることができる。
- NTx<Nであるとき、第iのプリコーダは、MDFTの先頭からNTx個の列のみを保持することによって取得される行列の第i行である。
- NTx≧Nであるとき、第iのプリコーダは、MDFTのN個の行のみを保持することによって取得される行列の第i行である。これらのN個の行は、可能な限り等間隔にされたインデックスを用いて選ばれる。
【0096】
初期の一組のプリコーダは、N=Kであるときは、各第kの端末について、第kのプリコーディング行列Wを固有ビームフォーミングベクトルとして、すなわち、第kの端末に向かうポイントツーポイント容量を最大にするプリコーディング行列として定義することによって取得することもできる。例えば、Wは、整合フィルター
【数57】
として設定することができる。
【0097】
ステップS11において、PROC_trans1.4は、行列H(k)を求めることができる。実際、前述したように、送信機は、K個の端末のそれぞれが経験するチャネル品質を求めることが必要な場合がある。これらのチャネル品質は、行列H(k)によって各第kの端末について定義することができる。このために、送信機は、H(k)行列を求めることを可能にする情報を受信することができ、例えば、送信機は、LTEシステムにおけるPMIであるコードブックからのプリコーダを示すインデックスをK個の送信機のそれぞれから受信することができる。前述したように、他の方法を用いてチャネル品質を求めることができ、例えば、送信機は、第kの端末とのアップリンクチャネルのチャネル品質を解析することができる。
【0098】
ステップS12において、PROC_trans1.4は、i=1...N’及びN’≦Nである一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求め、i=1~N’であるN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することができる。(W’)はそれぞれT’(i)に対応する。
【0099】
N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)の計算及び一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)の特定は、N個のプリコーダ(W)に基づいて行われる。
【0100】
加えて、一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)の特定及びN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)の計算は、以下によって実行することができる。
- p<qである
【数58】
の各対(p,q)について、i=1...N及びi≠qであるN-1個の最適化されたリソースユニット量T’p,q(i)を、N-2個のプリコーダ
【数59】
及び結合されたプリコーダMWp,qに基づいて計算すること;

【数60】
を求めること。ただし、fは性能メトリックであり、H(k)は、K個の端末の中の第kの端末に送信機をリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列である;
- 集合
【数61】
を、一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義し、
【数62】
を、N’個の最適化されたリソースユニット量として定義すること。ただし、MWm,m’はT’m,m’(m)に対応し、N’はN-1に等しい。
【0101】
結合されたプリコーダMWp,qは、プリコーダW及びWを結合することによって取得される。例えば、結合されたプリコーダMWp,qは、以下のように求められる。
【数63】
ただし、μは、1よりも厳密に小さくかつ0よりも厳密に大きい数であり、||X||はベクトルXの2乗ノルムである。
【0102】
N-2個のプリコーダ
【数64】
及び結合されたプリコーダMWp,qに基づいて、i=1...N及びi≠qであるN-1個の最適化されたリソースユニット量T’p,q(i)を計算するステップは、以下によって実行することができる。

【数65】
であるような、
【数66】
の係数Bp,q(i,k)を有するN-1×Kのサイズの行列Bp,qと、Bp,qのムーア・ペンローズ擬似逆行列Bp,q とを計算すること;

【数67】
となるようにベクトル[S’p,q(1),...,S’p,q(N-1)]を計算すること;

【数68】
の場合に、T’p,q(i)=γ・max(min(S’p,q(i),1),0)を計算し、
【数69】
の場合に、T’p,q(i)=γ・max(min(S’p,q(i-1),1),0)を計算すること。ただし、γは0よりも厳密に大きい数である。
【0103】
これらのステップは、ループで繰り返すことができる。すなわち、第2のステップ及び第3のステップは、ベクトル
【数70】
に置き換わるN-1のサイズのベクトル
【数71】
、すなわち、i=1,...,N-1である以前に計算された一組のT’(i)を用いて繰り返される。
【0104】
ステップS12は、ループで繰り返すことができ、ステップS12が繰り返されると、N-1個の最適化されたプリコーダ(W’)がN個のプリコーダ(W)に置き換わる。
【0105】
ステップS13において、PROC_trans1.4は、求められた一組の最適化されたプリコーダ(W’)と、最適化されたリソースユニット量T’(i)とに従ってCOM_trans1.3を構成する。例えば、PROC_trans1.4は、プリコーダモジュール2.0を構成することができる。
【0106】
PROC_trans1.4は、公衆データをN’個のデータDに分割する。公衆データのこの分割は、一組の最適化されたリソースユニット量T’(i)と、各グループのリソースブロック内にデータを符号化するのに用いられる変調符号化方式(MCS)(実際には、1つのMCSのみが、公衆データの送信に用いられる全てのリソースユニットにおける符号化に選ばれる)とに従って行われる。
【0107】
公衆データの送信に用いられる全てのリソースユニットについて唯一のMCSが選ばれるとき、そのMCSは、有利には、データDの合計のビット数を公衆データの送信に用いられるリソースの数によって除算したものが
【数72】
に等しくなるように選ぶことができる。
【0108】
リソースユニットの総数(ΣT’(i))が、公衆データを送信するのに十分でない場合には、各T’(i)は、ΣT’(j)によって除算するとともに十分大きな値λを乗算することができる。
【0109】
PROC_trans1.4は、公衆データの部分DをCOM_trans1.3に転送する。各Dは、プリコーダモジュール2.0の構成に従ってスケジューリングされたi=1....N’であるT’(i)個のリソースブロックのグループのリソースブロックにそれぞれ設定される。したがって、データDは、プリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上にプリコーディングされるT’(i)個のリソースブロックにおいて送信される。
【0110】
図5を参照すると、本発明の一実施形態による最適化ステップのフローチャートが示されている。
【0111】
ステップS20において、送信機がパラメーター化される。すなわち、一組のN個のプリコーダ(W)及び最適化アルゴリズムが、送信機1.1のメモリ、例えばMEMO_trans1.5に記憶される。
【0112】
ステップS21において、PROC_trans1.4は、行列H(k)を求めることができる。実際、前述したように、送信機は、K個の端末のそれぞれが経験するチャネル品質を求めることが必要な場合がある。これらのチャネル品質は、行列H(k)によって各第kの端末について定義することができる。このために、送信機は、H(k)行列を求めることを可能にする情報を受信することができ、例えば、送信機は、LTEシステムにおけるPMIであるコードブックからのプリコーダを示すインデックスをK個の送信機のそれぞれから受信することができる。前述したように、他の方法を用いてチャネル品質を求めることができ、例えば、送信機は、第kの端末とのアップリンクチャネルのチャネル品質を解析することができる。
【0113】
ステップS22において、PROC_trans1.4は、i=1...NであるN個のリソースユニット量T(i)を計算することができ、これらのリソースユニット量T(i)のそれぞれは、第iのプリコーダWに対応する。i=1...NであるT(i)のこの計算は、N個のプリコーダ(W)に基づいている。
【0114】
この計算は、以下によって行うことができる。

【数73】
の係数A(i,k)=f(||W*H(k)||)を有するN×Kのサイズの行列Aと、Aのムーア・ペンローズ擬似逆行列Aとを計算すること;
- ベクトル[S(1),...,S(N)]を
【数74】
となるように計算すること;
- T(i)=γ・max(min(S(i),1),0)を計算すること。ただし、γは0よりも厳密に大きい数である。
【0115】
これらのステップは、ループで繰り返すことができる。すなわち、第2のステップ及び第3のステップは、ベクトル
【数75】
に置き換わるベクトル
【数76】
、すなわち、i=1...Nである以前に計算された一組のT(i)を用いて繰り返される。
【0116】
ステップS23において、PROC_trans1.4は、i=1...N’及びN’≦Nである一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることができる。
【0117】
一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることは、N個のリソースユニット量及びN個のプリコーダ(W)に基づいて行われる。
【0118】
加えて、一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることは、以下によって行うことができる。
- fが性能メトリックであり、H(k)が、送信機をK個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であるとして、
【数77】
を求めることであって、ここで、
【数78】
であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダWに対応すること;
- 集合
【数79】
を一組のN’個の最適化されたプリコーダとして定義すること。
【0119】
結合されたプリコーダMWm,m’は、プリコーダW及びWm’を結合することによって取得される。例えば、結合されたプリコーダMWm,m’は、以下のように求められる。
【数80】
ただし、μは、1よりも厳密に小さくかつ0よりも厳密に大きい数であり、||X||はベクトルXの2乗ノルムである。
【0120】
代替形態では、一組のN’個の最適化されたプリコーダ(W’)を求めることは、以下によって行うことができる。
- 各iについて、
【数81】
となるように、W’を計算すること。
ただし、W’は、W’=[W’ ,...,W’ である行列であり、Wは、W=[W ,...,W である行列であり、fは性能メトリックであり、H(k)は、送信機をK個の端末の中の第kの端末にリンクするチャネルのチャネル品質を表す行列であり、e=[0,...,1,...,0]であり、この数値1は第iの位置にあり、ρは、1よりも厳密に小さくかつ0よりも厳密に大きい数であり、τは-1よりも小さな数であり、Xは行列Xの共役転置行列であり、Xは行列Xの転置行列であり、i=1~NであるT(i)はN個のリソースユニット量であり、第iのリソースユニット量T(i)は第iのプリコーダWに対応する。ここでN’はNに等しい。
τは、絶対値が大きい値、例えば-10を有することが望ましい。アルゴリズムの収束に影響を与えるρは、非常に小さなものが選ばれることが望ましい。
【0121】
ステップS24において、PROC_trans1.4は、i=1~N’であるN’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)を計算することができる。
【0122】
N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)の計算は、N’個のプリコーダ(W’)に基づいて行われる。
【0123】
加えて、N’個の最適化されたリソースユニット量T’(i)の計算は、以下によって行うことができる。

【数82】
の係数B(i,k)=f(||W’*H(k)||)を有するN’×Kのサイズの行列Bと、Bのムーア・ペンローズ擬似逆行列Bとを計算すること;
- ベクトル[S’(1),...,S’(N’)]を
【数83】
となるように計算すること;
- γが0よりも厳密に大きい数であるとして、T’(i)=γ・max(min(S’(i),1),0)を計算すること。
【0124】
これらのステップは、ループで繰り返すことができる。すなわち、第2のステップ及び第3のステップは、ベクトル
【数84】
に置き換わるN’のサイズのベクトル
【数85】
、すなわち、i=1,...,N-1である以前に計算された一組のT’(i)を用いて繰り返される。
【0125】
ステップS23及びS24は、ループで繰り返すことができ、ステップS23が繰り返されるとき、最適化されたプリコーダ(W’)がプリコーダ(W)に置き換わり、T’(i)がT(i)に置き換わる。
【0126】
ステップS25において、PROC_trans1.4は、求められた一組の最適化されたプリコーダ(W’)と、最適化されたリソースユニット量T’(i)とに従ってCOM_trans1.3を構成する。例えば、PROC_trans1.4は、プリコーダモジュール2.0を構成することができる。
【0127】
PROC_trans1.4は、公衆データをN’個のデータDに分割する。公衆データのこの分割は、一組の最適化されたリソースユニット量T’(i)と、各グループのリソースブロック内にデータを符号化するのに用いられる変調符号化方式(MCS)(実際には、1つのMCSのみが、公衆データの送信に用いられる全てのリソースユニットにおける符号化に選ばれる)とに従って行われる。
【0128】
リソースユニットの総数(ΣT’(i))が、公衆データを送信するのに十分でない場合には、各T’(i)は、ΣT’(j)によって除算するとともに十分大きな値λを乗算することができる。
【0129】
PROC_trans1.4は、公衆データの部分DをCOM_trans1.3に転送する。各Dは、プリコーダモジュール2.0の構成に従ってスケジューリングされたi=1....N’であるT’(i)個のリソースブロックのグループのリソースブロックにそれぞれ設定される。したがって、データDは、プリコーダW’を用いてNTx個のアンテナ上にプリコーディングされるT’(i)個のリソースブロックにおいて送信される。
【0130】
当然、本発明は、上記で詳細に説明された実施形態の例には限定されず、更なる代替の実施形態も含む。
【0131】
例えば、ステップS13を繰り返すときは、本発明は、ステップS13をステップS23及びS24に置き換え、したがって、図4の実施形態及び図5の実施形態を交互にすることによって実施することができる。逆に、ステップS23及びS24を繰り返すときは、本発明は、ステップS23及びS24をステップS13に置き換えることによって実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5