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特許7012893土質改良状況監視システムおよび土質改良状況監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】土質改良状況監視システムおよび土質改良状況監視方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021093158
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2021-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185972
【氏名又は名称】小野田ケミコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】坂牧 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 行弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 文彦
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144703(JP,A)
【文献】特開2017-089159(JP,A)
【文献】特開2017-101498(JP,A)
【文献】特許第5490301(JP,B1)
【文献】特開2014-181526(JP,A)
【文献】特開2007-217963(JP,A)
【文献】特開2021-067113(JP,A)
【文献】特開2019-073941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ロッドと、前記回転ロッドに対して固定されて取り付けられている掘削翼および攪拌翼と、前記回転ロッドに対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼と、を備え、セメント系スラリーを固化材として用いる深層混合処理施工機による改良土の土質改良状況を検知するシステムであって、
前記剪断補助翼に取り付けられている第1状況監視モジュールと、地上において前記深層混合処理施工機の周囲に配置される第2状況監視モジュールと、を備え、
前記第1状況監視モジュールが、
前記剪断補助翼の回転数を測定する状況監視センサと、
前記状況監視センサにより測定された前記剪断補助翼の回転数の時系列を記憶保持する第1記憶装置と、
第1指定条件が満たされた場合、前記第1記憶装置に記憶されている前記剪断補助翼の回転数の時系列を無線方式で送信する第1無線通信機器と、を備え
前記第2状況監視モジュールが、
前記第1指定条件が満たされた場合、前記第1無線通信機器から送信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を受信する第2無線通信機器と、
前記第2無線通信機器を通じて受信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を記憶保持する第2記憶装置と、を備え、
前記第2状況監視モジュールが、前記第2無線通信機器を通じて状況確認信号を無線方式で送信し、前記第1状況監視モジュールにおいて前記第1無線通信機器を通じて当該状況確認信号が受信されたことを前記第1指定条件として、前記第1無線通信機器から送信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を、前記第2無線通信機器を通じて受信し、かつ、前記第2記憶装置に記憶保持させ、
前記第2状況監視モジュールが、第2指定条件が満たされた場合、前記第2無線通信機器を通じて前記状況確認信号を無線方式で送信する
地盤改良状況監視システム。
【請求項2】
請求項に記載の地盤改良状況監視システムにおいて、
前記第2状況監視モジュールが、前記剪断補助翼または前記第1状況監視モジュールの高さが地表高さ以上になったこと、および、前記剪断補助翼または前記第1状況監視モジュールに付着した対象土が除去されたこと、のうち少なくとも一方を前記第2指定条件として、前記第2無線通信機器を通じて状況確認信号を無線方式で送信する
地盤改良状況監視システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地盤改良状況監視システムにおいて、
前記第2状況監視モジュールが、前記第2記憶装置に記憶保持されている前記剪断補助翼の回転数の時系列に応じた、対象土の改良状況を表わす情報または画像を出力する出力インターフェースを備えている
地盤改良状況監視システム。
【請求項4】
請求項に記載の地盤改良状況監視システムにおいて、
前記第2状況監視モジュールが、前記第2記憶装置に記憶保持されている前記剪断補助翼の回転数の時系列に応じた、対象土の改良工程ごとに地中に形成される改良体の各深度範囲における局所的な品質の高低を表わす画像を前記出力インターフェースに出力させる
地盤改良状況監視システム。
【請求項5】
回転ロッドと、前記回転ロッドに対して固定されて取り付けられている掘削翼および攪拌翼と、前記回転ロッドに対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼と、を備え、セメント系スラリーを固化材として用いる深層混合処理施工機による改良土の土質改良状況を、前記剪断補助翼に取り付けられている第1状況監視モジュールと、地上において前記深層混合処理施工機の周囲に配置される第2状況監視モジュールと、を用いて検知する方法であって、
前記剪断補助翼に設けられた状況監視センサを用いて前記剪断補助翼の回転数を測定する工程と、
測定された前記剪断補助翼の回転数の時系列を、前記第1状況監視モジュールを構成する第1記憶装置に記憶保持させる工程と、
第2指定条件が満たされた場合、前記第2状況監視モジュールを構成する第2無線通信機器を通じて前記状況確認信号を無線方式で送信させる工程と、
前記第1状況監視モジュールを構成する第1無線通信機器を通じて当該状況確認信号が受信されたという第1指定条件が満たされた場合、前記第1記憶装置に記憶されている前記剪断補助翼の回転数の時系列を無線方式で当該第1無線通信機器に送信させる工程と、
前記第1無線通信機器から送信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を、前記第2状況監視モジュールを構成する第2無線通信機器に受信させる工程と、
前記第2無線通信機器を通じて受信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を、前記第2状況監視モジュールを構成する第2記憶装置に記憶保持させる工程と、を含んでいる
地盤改良状況監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系固化材スラリーを用いた深層混合処理工法における混合撹拌翼による対象土の土質改良状況を検知するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系固化材スラリーを用いた深層混合処理工法においては、改良対象土が粘性の大きい土である場合に、撹拌翼に改良対象土が付着し、撹拌翼と改良対象土とが一体となって回転し、固化材スラリーと改良対象土とが混合できなくなるいわゆる共回り現象が起きる場合がある。
【0003】
この共回り現象を防止するために、共回り防止翼(剪断補助翼)を備えている地盤改良機が提案されている(特許文献1参照)。この地盤改良機においては、撹拌領域内にある改良対象土が撹拌翼と共に回転しているか否かが施工中に地上で検知される。具体的には、剪断補助翼およびロッドのそれぞれにカウントセンサを設け、回転ロッド回転数に対する剪断補助翼の相対回転数を検出して地中の共回り状況がリアルタイムに判断される。
【0004】
前記地盤改良機によれば、回転ロッド回転数に対する剪断補助翼回転数(相対回転数)を検出するために、掘削翼より長い板で構成される剪断補助翼が、回転ロッドに回転自在に取り付けられ、掘削範囲外の地盤に食い込んだ部分の抵抗力によって静止するという機構を採用している。
【0005】
そして、共回り現象が起きていないならば撹拌翼が回転しても、剪断補助翼地中で静止しているはずであるから、ロッドの回転数と相対回転数は等しいと検知される、という前提で共回り現象が検知される。
【0006】
前記地盤改良機によれば、ロッド先端部の混合撹拌装置近傍で検知されるロッドまたは撹拌翼と剪断補助翼の相対回転数に係わる信号を地上に伝達される。具体的には、通信ケーブルによる方法のほか、無線により地中部と地上のカウンター装置間の通信手段として、地中部に発信装置を地上に受信装置をそれぞれ備えた磁気伝送装置を利用する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-144703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ロッドまたは撹拌翼と剪断補助翼の相対回転数を表わす信号を地上に伝達するために通信ケーブルが用いられる場合、回転しつつ上下動もするロッドから相対回転数を表わす信号を地上の受信手段に取り込む手段が複雑になり、通信ケーブルの接続・取り外しのほか、ロッドおよびスイベル等の回転部分から静止する受信手段への接続に耐久性および操作の困難性があった。
【0009】
そこで、本発明は、無線通信効率の向上を図りながら、地盤改良施工の品質を確認しうるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の深層混合処理工法における地盤改良状況監視システムは、
回転ロッドと、前記回転ロッドに対して固定されて取り付けられている掘削翼および攪拌翼と、前記回転ロッドに対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼と、を備え、セメント系スラリーを固化材として用いる深層混合処理施工機による改良土の土質改良状況を検知するシステムであって、
前記剪断補助翼に取り付けられている第1状況監視モジュールと、地上において前記深層混合処理施工機の周囲に配置される第2状況監視モジュールと、を備え、
前記第1状況監視モジュールが、
前記剪断補助翼の回転数を測定する状況監視センサと、
前記状況監視センサにより測定された前記剪断補助翼の回転数の時系列を記憶保持する第1記憶装置と、
第1指定条件が満たされた場合、前記第1記憶装置に記憶されている前記剪断補助翼の回転数の時系列を無線方式で送信する第1無線通信機器と、を備え
前記第2状況監視モジュールが、
前記第1指定条件が満たされた場合、前記第1無線通信機器から送信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を受信する第2無線通信機器と、
前記第2無線通信機器を通じて受信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を記憶保持する第2記憶装置と、を備え、
前記第2状況監視モジュールが、前記第2無線通信機器を通じて状況確認信号を無線方式で送信し、前記第1状況監視モジュールにおいて前記第1無線通信機器を通じて当該状況確認信号が受信されたことを前記第1指定条件として、前記第1無線通信機器から送信された前記剪断補助翼の回転数の時系列を、前記第2無線通信機器を通じて受信し、かつ、前記第2記憶装置に記憶保持させ、
前記第2状況監視モジュールが、第2指定条件が満たされた場合、前記第2無線通信機器を通じて前記状況確認信号を無線方式で送信する
【0011】
当該構成の地盤改良状況監視システムによれば、第1指定条件が満たされた場合、剪断補助翼の回転数の時系列(地盤改良施工中の剪断補助翼の回転数の時系列データ)が第1状況監視モジュールから外部機器に対して無線方式で送信される。この送信処理は、第1指定条件が満たされた後、第1指定条件の充足性とは無関係に、外部機器による剪断補助翼の回転数の時系列の受信が完了するまで周期的または断続的に繰り返されてもよい。このため、無条件で当該無線送信処理が実行される場合と異なり、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュールから外部機器に対して無線方式で送信される確度の向上、ひいては無線通信効率の向上を図りながらも、剪断補助翼の回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0013】
また、剪断補助翼に設けられた第1状況監視モジュールと、地上において深層混合処理施工機の周囲に配置された外部機器としての第2状況監視モジュールと、の間の無線通信効率の向上を図りながらも、剪断補助翼の回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0015】
さらに、第2状況監視モジュールから送信された状況確認信号が第1状況監視モジュールにより受信されることが「第1指定条件」として定義されている。このため、両状況監視モジュールの無線通信が確立される確度が高い状況で、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュールから第2状況監視モジュールに対して無線方式で送信される。よって、無線通信効率の向上を図りながらも、剪断補助翼の回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0017】
また、第2指定条件が満たされた場合、状況確認信号が第2状況監視モジュールから第1状況監視モジュールに対して無線方式で送信される。この送信処理は、第2指定条件が満たされた後、第2指定条件の充足性とは無関係に、第1状況監視モジュールによる状況確認信号の受信が完了するまで周期的または断続的に繰り返されてもよい。このため、無条件で当該無線送信処理が実行される場合と異なり、状況確認信号が第2状況監視モジュールから第1状況監視モジュールに対して無線方式で送信される確度の向上が図られる。
【0018】
さらに、前記のように第1指定条件が満たされた場合、剪断補助翼の回転数の時系列(地盤改良施工中の剪断補助翼の回転数の時系列データ)が第1状況監視モジュールから第2状況監視モジュールに対して無線方式で送信される。このため、無条件で当該無線送信処理が実行される場合と異なり、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュールから第2状況監視モジュールに対して無線方式で送信される確度の向上が図られる。そして、無線通信効率の向上を図りながらも、剪断補助翼の回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0019】
前記構成の地盤改良状況監視システムにおいて、
前記第2状況監視モジュールが、前記剪断補助翼または前記第1状況監視モジュールの高さが地表高さ以上になったこと、および、前記剪断補助翼または前記第1状況監視モジュールに付着した対象土が除去されたこと、のうち少なくとも一方を前記第2指定条件として、前記第2無線通信機器を通じて状況確認信号を無線方式で送信することが好ましい。
【0020】
当該構成の地盤改良状況監視システムによれば、剪断補助翼または第1状況監視モジュールの高さが地表高さ以上になったことおよび/または剪断補助翼または第1状況監視モジュールに付着した対象土が除去されたことが「第2指定条件」として定義されている。このため、両状況監視モジュールの無線通信が確立される確度が高い状況で、状況確認信号が第2状況監視モジュールから第1状況監視モジュールに対して無線方式で送信される。よって、無線通信効率の向上を図りながらも、剪断補助翼の回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0021】
前記構成の地盤改良状況監視システムにおいて、
前記第2状況監視モジュールが、前記第2記憶装置に記憶保持されている前記剪断補助翼の回転数の時系列に応じた、対象土の改良状況を表わす情報または画像を出力する出力インターフェースを備えていることが好ましい。
【0022】
当該構成の地盤改良状況監視システムによれば、前記のように無線通信効率の向上を図りながらも、出力インターフェースに出力される剪断補助翼の回転数の時系列に応じた情報または画像を通じて地盤改良施工の品質をユーザに確認させることができる。
【0023】
前記構成の地盤改良状況監視システムにおいて、
前記第2状況監視モジュールが、前記第2記憶装置に記憶保持されている前記剪断補助翼の回転数の時系列に応じた、対象土の改良工程ごとに地中に形成される改良体の各深度範囲における局所的な品質の高低を表わす画像を前記出力インターフェースに出力させることが好ましい。
【0024】
当該構成の地盤改良状況監視システムによれば、前記のように無線通信効率の向上を図りながらも、出力インターフェースに出力される剪断補助翼の回転数の時系列に応じた対象土の改良工程ごとに地中に形成される改良体の各深度範囲における局所的な品質の高低を表わす画像を通じて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】深層混合処理施工機の構成説明図。
図2図1のII-II線に沿った深層混合処理施工機の断面視図。
図3】土質改良状況監視システムの構成説明図。
図4】土質改良状況監視システムの機能説明図。
図5】改良体の各深度範囲における品質の高低を表わす画像の例示図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(深層混合処理施工機の構成)
図1に示されているように、本発明の土質改良状況監視システムが適用される深層混合処理施工機1は、回転ロッド10と、掘削翼11と、攪拌翼12と、剪断補助翼14と、を備えている。
【0027】
回転ロッド10は、略円筒状のロッド本体部101と、ロッド本体部101の下端部に同軸に接続されている略有底円筒状のヘッド部102と、により構成されている。ロッド本体部101がオーガーモータ等により回転駆動されることにより、回転ロッド10が全体的に回転駆動される。回転ロッド10の内部には、回転ロッド10の下端部に設けられた吐出口104に連通する固化材流路(図省略)が設けられている。固化材(例えば、セメント系スラリー)が固化材流路を介して地上から回転ロッド10の先端部まで送り込まれ、吐出口104から改良対象土に対して吐出される。
【0028】
掘削翼11は、ヘッド部102の先端部から略水平方向に突出するようにヘッド部102の先端部に対して固定して取り付けられている。掘削翼11は、回転ロッド1とともに一体的に回転することにより土を掘削する役割を担う。例えば、図2に示されているように、掘削翼11は、時計回りに回転駆動される回転ロッド1とともに一体的に時計回りに回転駆動される。
【0029】
攪拌翼12は、掘削翼11よりも上側でヘッド部102から略水平方向に突出するようにヘッド部10に対して固定して取り付けられている。攪拌翼12は、掘削翼11と同様、回転ロッド1とともに一体的に回転することにより、掘削翼11で掘削された対象土と、ロッド10の下端部の吐出口104から対象土に供給された固化材と、を攪拌・混合する役割を担う。例えば、図2に示されているように、攪拌翼12は、時計回りに回転駆動される回転ロッド1とともに一体的に時計回りに回転駆動される。
【0030】
剪断補助翼14は、掘削翼11と攪拌翼12との間にヘッド部10に対して遊嵌または挿嵌されて回動自在に取り付けられている。剪断補助翼14は、回転ロッド10が回転している状態で、通常は回転ロッド10に対して相対的に静止することにより対象土と固化材との攪拌および混合を補助するとともに、対象土が攪拌翼12に塊状に付着して攪拌翼12と一緒に回転してしまう共回りを防止する役割を担う。例えば、図2に示されているように、剪断補助翼14は、時計回りに回転駆動される回転ロッド1に対して静止することにより相対的に反時計回りに回転する状態になる。
【0031】
回転ロッド1の軸線方向について間隔をおいて配置された攪拌翼12および剪断補助翼14の複数の組が、回転ロッド1の軸線方向について間隔をおいてヘッド部102に対して交互に取り付けられていてもよい。
【0032】
(土質改良状況監視システムの構成)
図3に示されているように、本発明の一実施形態としての土質改良状況監視システム2は、第1状況監視モジュール21と、第2状況監視モジュール22と、を備えている。図1および図2に示されているように、第1状況監視モジュール21は、剪断補助翼14の根本部位に設けられているハウジングに収容されている。
【0033】
ハウジングは、第1状況監視モジュール21を保護する観点から、ステンレス等の堅牢な材料により構成されている。ハウジングは、容器部から蓋部が取り外されることによってその内部空間にアクセス可能に構成されている。容器部および蓋部の間には、ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するためにシール部材が設けられている。電磁波透過性がある材料によってシール部材が構成されることにより、容器部および蓋部の間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間との間での無線通信が可能に構成されている。
【0034】
第1状況監視モジュール21は、その構成要素の小型化および/または近接配置、配線量の低減等により、ハウジングともども可能な範囲に小型化されたうえで、剪断補助翼14の基部に形成された凹部に収容された形態で組み込まれてもよい。図1に示されているように、第2状況監視モジュール22は、地上において深層混合処理施工機1の周囲の適当な箇所に配置されている。
【0035】
図3に示されているように、第1状況監視モジュール21は、第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214を備えている。第1演算処理装置210は、コンピュータを構成する演算処理装置(CPU、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ)により構成されている。第1記憶装置212は、状況監視センサ211の出力信号または当該出力信号により表わされる剪断補助翼14の回転数の時系列を記憶保持する。第1記憶装置212は、HDDもしくはSSDまたはメモリ(RAM、ROMなど)により構成されている。第1無線通信機器214は、例えば、近距離無線通信方式(例えば、Bluetooth(「Bluetooth」は登録商標))または遠距離無線通信方式(例えば、Wi-Fi(「Wi-Fi」は登録商標))の無線通信機器により構成されている。第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214のそれぞれに共通のまたは別個の電源としてのバッテリが第1状況監視モジュール21に含まれていてもよい。
【0036】
状況監視センサ211は、剪断補助翼14の回転数を測定するためのセンサであり、例えば、世界座標系における剪断補助翼14の回転数を測定するためのジャイロセンサ、磁気センサおよび/または地磁気センサにより構成されている。状況監視センサ211は、回転ロッド10において軸線方向について剪断補助翼14に近接し、かつ、軸線から径方向に外れた位置で周方向に配置された一または複数のマグネットに対向して配置される磁気式近接スイッチにより構成されていてもよい。マグネットおよび磁気式近接スイッチが近接することにより、非接触方式で回転ロッド10に対する剪断補助翼14の相対的な回転数が測定される。
【0037】
図3に示されているように、第2状況監視モジュール22は、第2演算処理装置220、第2記憶装置222、第2無線通信機器224および出力インターフェース226を備えている。第2演算処理装置220は、コンピュータを構成する演算処理装置(CPU、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ)により構成されている。第2記憶装置212は、第2無線通信機器224を通じて受信されたデータを記憶保持する。第2記憶装置222は、HDDもしくはSSDまたはメモリ(RAM、ROMなど)により構成されている。第2無線通信機器224は、第1無線通信機器214と共通の無線通信方式の無線通信機器により構成されている。出力インターフェース226は、画像表示装置(モニタ)および必要に応じて音響出力機器(スピーカ)により構成されている。第2演算処理装置220、第2記憶装置222、第2無線通信機器224および出力インターフェース226のそれぞれの電源としてバッテリのほか商用電源が採用されてもよい。
【0038】
(土質改良状況監視システムの機能)
掘削翼11が回転ロッド1とともに一体的に回転することにより改良対象土が掘削される。また、回転ロッド10の下端部の吐出口104から固化材が対象土に対して吐出され、攪拌翼12が回転ロッド1とともに回転することにより、対象土と固化材とが攪拌かつ混合される。さらに、攪拌翼12が回転している間、剪断補助翼14が周辺地盤の抵抗により、回転ロッド1に対し相対的に静止していることにより、共回りが抑えられ、掘削土と固化材との攪拌・混合が促進される。
【0039】
この際、第1状況監視モジュール21において、第1演算処理装置210により、状況監視センサ211を通じて剪断補助翼14の回転数を表わすセンサデータが取得され、かつ、第1記憶装置212に時系列的に記憶保持させる(図4/STEP211)。通常は、回転ロッド10に対して回動自在に取り付けられている剪断補助翼14の回転数は0またはほぼ0である。その一方、回転ロッド10および剪断補助翼14に付着した塊状の対象土によって、剪断補助翼14に回転ロッド10の回転力が伝達される場合、その回転数が回転ロッド10の回転数に近くなる傾向がある。
【0040】
第2状況監視モジュール22において、第2演算処理装置210により、第2無線通信機器224を通じて状況確認信号が第1状況監視モジュール21に宛てて送信される(図4/STEP221)。
【0041】
第1状況監視モジュール21において、第1演算処理装置210により、状況確認信号が、第1無線通信機器214を通じて受信されたか否かが判定される(図4/STEP212)。
【0042】
当該判定結果が否定的である場合(図4/STEP212‥NO)、第1演算処理装置210により、センサデータの取得および第1記憶装置212への記憶保持処理(図4/STEP211)以降の処理が繰り返される。
【0043】
その一方、当該判定結果が肯定的である(第1指定条件が満たされている)場合(図4/STEP212‥YES)、第1演算処理装置210により、センサデータの時系列(センサデータログ)が第1記憶装置212から読み取られたうえで、第1無線通信機器214を通じて、第2状況監視モジュール22に宛てて送信される(図4/STEP214)。
【0044】
第2状況監視モジュール22において、第2演算処理装置220により、状況確認信号が、第2無線通信機器224を通じて受信されたか否かが判定される(図4/STEP222)。
【0045】
当該判定結果が否定的である場合(図4/STEP222‥NO)、第2演算処理装置220により、状況確認信号の送信処理(図4/STEP221)以降の処理が繰り返される。
【0046】
その一方、当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP222‥YES)、第2演算処理装置220により、センサデータの時系列(センサデータログ)が第2記憶装置222に記憶保持される(図4/STEP224)。
【0047】
そして、第2演算処理装置220により、センサデータの時系列が第2記憶装置222から読み取られ、当該センサデータの時系列に応じた対象土の改良状況を表わす情報または画像が出力インターフェースを通じて出力される(図4/STEP226)。
【0048】
これにより、例えば、図5に示されているように、1回の地盤改良工程ごとに地中に形成される各改良体Qi(i=1,2,‥)が矩形または円柱により表現され、各改良体Qiの深さ方向の各箇所における改良体の品質の高低が明度の高低により表現されているモデル画像が出力インターフェース226に出力される。剪断補助翼14の回転数が低いほど改良体の品質が高く評価され、剪断補助翼14の回転数が高いほど改良体の品質が低く評価される。各深度範囲は、施工時間帯または深度センサにより測定される剪断補助翼14の深度により定められてもよい。このモデル画像の生成のため、GPS等を用いて得られる、深層混合処理施工機1および/または回転ロッド10の測位データが用いられてもよい。
【0049】
図5に示されている画像から、例えば、第1改良体Q1は、深度範囲Q11における品質が中程度であり、深度範囲Q11よりも上方にある深度範囲Q12における品質が低いことがわかる。また、第2改良体Q2は、深度範囲Q22における品質が著しく低いことがわかる。さらに、第3改良体Q2は、全体的に品質が高いことがわかる。明度の高低に代えてまたは加えて、矩形または円柱の太さの軸線方向についての変化態様により、各改良体Qiの深さ方向の各箇所における改良体の品質の高低が表現されていてもよい。
【0050】
図5に示されているような画像に加えてまたは代えて、状況監視センサ211により測定された剪断補助翼14の回転数(世界座標系における絶対回転数または回転ロッド10に対する相対回転数)の時系列を表わす、ダイアグラム(例えば、横軸が時刻を表わし、縦軸が回転数を表わすダイアグラム)が出力インターフェース226に出力されてもよい。
【0051】
(作用効果)
当該構成の地盤改良状況監視システムによれば、第1指定条件が満たされた場合、剪断補助翼14の回転数の時系列(地盤改良施工中の剪断補助翼14の回転数の時系列データ)が第1状況監視モジュール21から無線方式で送信される(図4/STEP212‥YES→STEP214参照)。第2状況監視モジュール22から送信された状況確認信号(図4/STEP221参照)が第1状況監視モジュール21により受信されることが「第1指定条件」として定義されている。このため、両状況監視モジュール21、22の無線通信が確立される確度が高い状況で、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される。よって、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される確度の向上、ひいては無線通信効率の向上が図られる。
【0052】
第2状況監視モジュール22において、第2記憶装置224に記憶保持されている剪断補助翼の回転数の時系列に応じた、対象土の改良工程ごとに地中に形成される改良体Qiの各深度範囲Qijにおける局所的な品質の高低を表わす画像を出力インターフェース226に出力させる(図4/STEP226および図5参照)。当該画像を通じて地盤改良施工の品質をユーザ・施工者に確認させることができる。
【0053】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、第1状況監視モジュール21により状況確認信号が受信されたことが「第1指定条件」として定義されている。他の実施形態として、第1状況監視モジュール21または剪断補助翼14の高さが地表高さ以上になったこと、および/または、回転ロッド10の引き上げが開始されたこともしくは地盤改良の施工中にタイマにより計時される回転ロッド10の引き上げ開始からの経過時間が指定時間以上になったことが「第1指定条件」として定義されていてもよい。当該他の実施形態においては、第2状況監視モジュール22による状況確認信号の送信処理(図4/STEP221参照)が省略されてもよい。あるいは、第1指定条件および第2指定条件が併存する場合、重複を回避する観点から第2指定条件とは相違している条件が第1指定条件として定義されていてもよい。
【0054】
また、第1指定条件が満たされていると判定された後、当該第1指定条件の充足性の判定が省略され、第1状況監視モジュール21によるセンサデータログ(剪断補助翼14の回転数の時系列データ)の送信処理が、第2状況監視モジュール22による当該センサデータログの受信が完了するまで周期的または断続的に繰り返されてもよい。深度センサにより測定される第1状況監視モジュール21または剪断補助翼14の地表からの深さが減少するほど、当該送信周期が断続的または連続的に短くなるように調節されてもよい。
【0055】
第2状況監視モジュール22を構成する第2演算処理装置220が、第2指定条件が満たされた場合、第2無線通信機器222を通じて状況確認信号を無線方式で送信してもよい(図4/STEP221参照)。
【0056】
当該構成の地盤改良状況監視システムによれば、第2指定条件が満たされた場合、状況確認信号が第2状況監視モジュール22から第1状況監視モジュール21に対して無線方式で送信される。この送信処理は、第2指定条件が満たされた後、第2指定条件の充足性とは無関係に、第1状況監視モジュール21による状況確認信号の受信が完了するまで周期的または断続的に繰り返されてもよい。
【0057】
剪断補助翼14または第1状況監視モジュール21の高さが地表高さ以上になったことおよび/または剪断補助翼14または第1状況監視モジュール21に付着した対象土または混合土が除去されたことが「第2指定条件」として定義されていてもよい。剪断補助翼14または第1状況監視モジュール21に付着した対象土または混合土が除去されたことは、撮像装置を通じて取得された剪断補助翼14または第1状況監視モジュール21の撮像画像の画像解析によって第2状況監視モジュール22により認識されてもよく、そのことを確認した者により操作される指定端末装置(例えば、スマートホン、パーソナルコンピュータなど)から第2状況監視モジュール22が指定信号を受信したことにより認識されてもよい。
【0058】
無条件で当該無線送信処理が実行される場合と異なり、状況確認信号が第2状況監視モジュール22から第1状況監視モジュール21に対して無線方式で送信される確度の向上が図られる。さらに、前記のように第1指定条件が満たされた場合、剪断補助翼の回転数の時系列(地盤改良施工中の剪断補助翼の回転数の時系列データ)が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される。このため、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される確度の向上が図られる。そして、無線通信効率の向上を図りながらも、剪断補助翼14の回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0059】
地盤改良の施工中に回転ロッド10の引き上げが開始されたことまたは地盤改良の施工中にタイマにより計時される回転ロッド10の引き上げ開始からの経過時間が指定時間以上になったこと、が「第2指定条件」として定義されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1‥深層混合処理施工機、2‥土質改良状況監視システム、10‥回転ロッド、11‥掘削翼、12‥攪拌翼、14‥剪断補助翼、21‥第1状況監視モジュール、22‥第2状況監視ユニット、210‥第1演算処理装置、211‥状況監視センサ、212‥第1記憶装置、214‥第1無線通信機器、220‥第2演算処理装置、222‥第2記憶装置、224‥第2無線通信機器、226‥出力インターフェース。
【要約】
【課題】無線通信効率の向上を図りながら、地盤改良施工の品質を確認しうるシステム等を提供する。
【解決手段】状況監視センサ211により、剪断補助翼14の回転数が時系列的に測定され、地盤改良施工中の剪断補助翼14の回転数の時系列データが第1記憶装置212に記憶保持される。第1指定条件が満たされた場合、剪断補助翼14の回転数の時系列(地盤改良施工中の剪断補助翼14の回転数の時系列データ)が第1記憶装置212から読み出されて第1状況監視モジュール21から無線方式で第2状況監視モジュール22に宛てて送信される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5