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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】抗菌化合物としての複素環誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20220207BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 31/536 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C07D471/08
A61K31/439
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/536
A61K31/545
A61K31/546
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019546278
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2017052330
(87)【国際公開番号】W WO2018158619
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】201721007393
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】506224012
【氏名又は名称】ウォックハート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】パティル ヴィジャイクマール ジャグディシュワー
(72)【発明者】
【氏名】タディパルティ ラヴィクマール
(72)【発明者】
【氏名】パテル ピユシュ アンバラル
(72)【発明者】
【氏名】ブニヤ ラジブ
(72)【発明者】
【氏名】バグワット サチン
(72)【発明者】
【氏名】タカルカー スワプナ シュリパド
(72)【発明者】
【氏名】チャヴァン ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】パテル アヌスヤ
(72)【発明者】
【氏名】ラネ ヴィプル
(72)【発明者】
【氏名】パテル マヘシュ ヴィタルバイ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0225554(US,A1)
【文献】国際公開第2015/063714(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079329(WO,A1)
【文献】特表2015-529652(JP,A)
【文献】特表2016-537386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、
【化1】
またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
またはそれらの立体異性体もしくは薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
またはそれらの立体異性体から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容されるをさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗菌剤が、ベータラクタム抗菌剤である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗菌剤が、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペナム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、セフェム、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、ケトライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサセフェム、オキサペナム、オキサゾリジノン、ペナム、ペネム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、またはテトラサイクリン抗菌剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗菌剤が、セファセトリル、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファマンドール、セファピリン、セファトリジン、セファザフルール、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカペン、セフクリジン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフルプレナム、セフメノキシム、セフメタゾール、セフミノクス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォセリス、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォベシン、セフォキシチン、セフォキシチン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロキサジン、セフスロジン、セフタロリン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトビプロール、セフトロザン、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファロリジン、セフラジン、CXA-101、フロモキセフ、ラタモキセフ、ロラカルベフ、モキサラクタム、またはそれらの薬学的に許容されるからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗菌剤が、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セフジニル、セフィキシム、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフラジン、セフチブテン、セフロキシム、ロラカルベフ、またはそれらの薬学的に許容されるからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
細菌感染の処置または予防のための医薬を調製するための、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
細菌感染の処置または予防のための医薬を調製するための、請求項4から9までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容されるをさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗菌剤が、ベータラクタム抗菌剤である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗菌剤が、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフロキシム、またはそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種または複数である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
細菌感染の処置または予防のための医薬を調製するための、請求項12に記載の化合物の使用。
【請求項18】
細菌感染の処置または予防のための医薬を調製するための、請求項13から16までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
式(Ia)の化合物の調製のためのプロセスであって、
【化2】
(a)式(IIa)の化合物を、フッ素化剤の存在下で、式(IIIa)の化合物に変換するステップと、
【化3】
(b)式(IIIa)の化合物を式(IVa)の化合物に変換するステップと、
【化4】
(c)式(IVa)の化合物を式(Va)の化合物に変換するステップと、
【化5】
(d)式(Va)の化合物を式(VIa)の化合物に変換するステップと、
【化6】
(e)式(VIa)の化合物を式(VII)の化合物と反応させて、式(VIIIa)の化合物を得るステップと、
【化7】
(f)式(VIIIa)の化合物を式(IXa)の化合物に変換するステップと、
【化8】
(g)式(IXa)の化合物を式(Xa)の化合物に変換するステップと、
【化9】
(h)式(Xa)の化合物を式(Ia)の化合物に変換するステップと
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願)
本出願は、2017年3月2日に出願されたインド仮特許出願第201721007393号に対する優先権およびその利益を主張し、その開示は、本明細書に完全に再記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、フッ素含有化合物、それらの調製、ならびに細菌感染の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の抗菌剤に対する細菌耐性の出現は、細菌感染の処置における大きな難題となりつつある。細菌感染、特に耐性菌により引き起こされる細菌感染を処置する今後の1つのやり方は、細菌耐性を克服できる新規抗菌剤を開発することである。Coates et al. (Br. J. Pharmacol. 2007; 152(8), 1147-1154)は、新規抗生物質の開発に対するアプローチについて概説している。しかし、新規抗菌剤の開発は、挑戦的な課題である。例えば、Gwynn et al. (Annals of the New York Academy of Sciences, 2010, 1213: 5-19)は、抗菌剤の発見における難題について概説している。先行技術にはいくつかの抗菌剤が記載されている。しかし、既知の抗菌剤のうちの1種または複数に対する耐性を獲得した細菌により引き起こされる細菌感染を含む、細菌感染の処置および/または予防に使用するための強力な抗菌剤が依然として求められている。本発明者らは、驚くべきことに、抗菌性を有するある特定のフッ素含有化合物を発見した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、フッ素含有化合物、これらの化合物の調製のための方法、これらの化合物を含む医薬組成物、ならびにこれらの化合物を使用して対象における細菌感染を処置および/または予防するための方法が提供される。
1つの一般的態様において、式(I)の化合物、
【化1】
またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩が提供される。
別の一般的態様において、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物が提供される。
別の一般的態様において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が提供される。
さらに別の一般的態様において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
別の一般的態様において、(a)式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を含む、医薬組成物が提供される。
別の一般的態様において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
別の一般的態様において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を投与することを含む、方法が提供される。
別の一般的態様において、対象における抗菌剤の抗菌有効性を高めるための方法であって、前記抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩とともに共投与することを含む、方法が提供される。
別の一般的態様において、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を調製するためのプロセスが提供される。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、特許請求の範囲を含む以下の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0004】
ここで、例示的な実施形態に言及するが、これを記載するために特定の用語が本明細書において使用される。それにもかかわらず、これにより本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。関連分野の当業者であり、本開示を把握している者であれば想到するであろう、本明細書に例証される本発明の特徴の変更およびさらなる改変、ならびに本明細書に例証される通りの本発明の原理の追加的応用は、本発明の範囲内にあるとみなされるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈により明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。本明細書において引用される特許、特許出願、および文献を含むすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
本発明者らは、驚くべきことに、抗菌性を有するある特定のフッ素含有化合物を発見した。
【0005】
「立体異性体」という用語は、本明細書で使用される場合、同一の化学組成を有するが、空間における化合物の原子または基の配置に関しては異なる化合物を指し、これを含む。式(I)の化合物は、不斉中心またはキラル中心(「*」で印を付けたものを含む)を含有しており、したがって、異なる立体異性体形態で存在する。別段の指定がない限り、式(I)の化合物のすべての立体異性体形態、ならびにラセミ混合物を含むそれらの混合物は、本発明の一部を形成することが意図される。加えて、すべての幾何異性体および位置異性体(cisおよびtrans形態を含む)ならびにそれらの混合物も、本発明の範囲内に包含される。一般に、化合物に対する言及は、その立体異性体、および様々な立体異性体の混合物を包含することが意図される。
【0006】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、遊離化合物の所望の薬理学的活性を有し、生物学的にもその他の点でも望ましくないということがない、所与の化合物の1種または複数の塩を指す。一般に、「薬学的に許容される塩」は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、合理的な利益/リスク比と釣り合った塩を指し、これを含む。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、S. M. Berge, et al. (J. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977))は、様々な薬学的に許容される塩について詳細に記載する。
一般に、本発明による化合物は、塩基性部分(例えば窒素原子)および酸部分(例えばSO3H基)を含有する。したがって、このような化合物が、酸性塩(無機および/または有機酸で形成される)、ならびに塩基性塩(無機および/または有機塩基で形成される)を形成できることを、当業者であれば理解するであろう。このような塩は、当技術分野で記載されている手順を使用して調製することができる。例えば、塩基性部分は、化合物を適切な量の酸で処理することにより、その塩に変換することができる。このような適切な酸の典型的な非限定的な例としては、塩酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸などが挙げられる。代替的に、酸部分を、適切な塩基で処理することにより、その塩に変換してもよい。このような塩基の典型的な非限定的な例としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウムなどが挙げられる。塩に変換することができる2つ以上の官能基を化合物が含有する場合、このような各官能基は独立して塩に変換され得る。例えば、化合物が2個の塩基性窒素原子を含有する場合、塩基性窒素のうちの1個が1つの酸と塩を形成することができる一方、他方の塩基性窒素は別の酸と塩を形成することができる。本発明による化合物は、酸性部分および塩基性部分の両方を含有しており、したがって分子内塩または対応する双性イオンを形成することができる。一般に、酸付加塩、塩基付加塩、双性イオンなどを含む、本発明による式(I)の化合物のすべての薬学的に許容される塩の形態は、本発明の範囲内であることが企図され、薬学的に許容される塩と総称される。
【0007】
「感染」または「細菌感染」という用語は、本明細書で使用される場合、その成長が阻害されるならば対象の利益となる細菌が、対象内または対象上に存在することを指し、これを含む。このように、「感染」という用語は、細菌の存在を指すことに加えて、望ましくない常在菌叢も指す。「感染」という用語には、細菌により引き起こされる感染が含まれる。
【0008】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」という用語は、本明細書で使用される場合、医薬組成物または1種もしくは複数の薬学的に活性な成分を含む医薬を、予防および/または治療目的で投与することを指す。「予防的処置」という用語は、まだ感染していないが、感染しやすいか、そうでなければ感染のリスクがある対象を処置すること(細菌感染を予防すること)を指す。「治療的処置」という用語は、既に感染に罹患している対象に処置を施すことを指す。「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で述べる組成物または1種もしくは複数の薬学的に活性な成分を、追加の薬学的に活性もしくは不活性な成分とともに、またはそれらなしで、(i)細菌感染または細菌感染の1つもしくは複数の症状のいずれかを軽減または除去するため、あるいは(ii)細菌感染または細菌感染の1つもしくは複数の症状の進行を遅らせるため、あるいは(iii)細菌感染または細菌感染の1つもしくは複数の症状の重症度を軽減するため、あるいは(iv)細菌感染の臨床的発現を抑制するため、あるいは(v)細菌感染の有害な症状の発現を抑制するために投与することも指す。
【0009】
「薬学的有効量」または「治療的有効量」または「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、治療効果を有する量、または対象において治療効果を生じさせるのに必要な量を指す。例えば、抗菌剤または医薬組成物の治療的または薬学的有効量は、臨床試験結果、モデル動物感染研究、および/またはインビトロでの研究(例えば寒天またはブロス培地中での)により判断され得るような所望の治療効果を生じさせるのに必要な抗菌剤または医薬組成物の量である。薬学的有効量は、限定するものではないが、関与する微生物(例えば細菌)、対象の特性(例えば身長、体重、性別、年齢および病歴)、感染の重症度、および使用する抗菌剤の特定の種類を含む、いくつかの要因に依存する。予防的処置については、治療的または予防的有効量は、微生物(例えば細菌)感染の予防に有効となる量である。本発明による化合物および/または医薬組成物は、所望の治療効果または結果をもたらすのに有効な量で使用される。
【0010】
「投与」または「投与すること」という用語には、例えば、組成物またはその活性成分または他の薬学的に活性な成分を感染部位に送達するのに役立つ任意の適切な方法によるものを含む、対象への組成物または1種もしくは複数の薬学的に活性な成分の送達が含まれる。投与の方法は、例えば、医薬組成物の構成成分、または薬学的に活性もしくは不活性な成分の性質、潜在的なもしくは実際の感染の部位、関与する微生物、感染の重症度、対象の年齢および体調などの様々な要因に応じて異なり得る。本発明による、対象に組成物または薬学的に活性な成分を投与するやり方のいくつかの非限定的な例としては、経口、静脈内、局所、呼吸器内、腹腔内、筋肉内、非経口、舌下、経皮、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、経膣、遺伝子銃、皮膚パッチ、点眼、点耳または洗口が挙げられる。2種以上の成分(活性または不活性)を含む医薬組成物の場合、このような組成物を投与するやり方のうちの1つは、成分を混合し(例えば錠剤、カプセル剤、液剤、散剤などの適切な単位剤形の形態で)、次いで剤形を投与することによる。代替的に、組成物が全体として相乗効果および/または所望の効果をもたらすような有益な治療レベルに、これらの成分が達する限り、成分を別々に(同時にまたは順次に)投与してもよい。
【0011】
「成長」という用語は、本明細書で使用される場合、1種または複数の微生物の成長を指し、微生物(例えば細菌)の繁殖または集団拡大を含む。「成長」という用語には、微生物の生存を保つプロセスを含む、微生物(例えば細菌)の継続的な代謝プロセスの維持も含まれる。
「有効性」という用語は、本明細書で使用される場合、処置または組成物または1種もしくは複数の薬学的に活性な成分が対象において所望の生物学的効果を生じさせる能力を指す。例えば、組成物または抗菌剤の「抗菌有効性」という用語は、組成物または抗菌剤が対象における微生物(例えば細菌)感染を処置または予防する能力を指す。
「相乗的」または「相乗作用」という用語は、本明細書で使用される場合、それらの組み合わせた効果がそれらの個々の効果よりも大きくなるような2種以上の薬剤の相互作用を指す。
【0012】
「抗菌剤」という用語は、本明細書で使用される場合、(i)細菌の成長を阻害するか、低下させるか、もしくは予防すること、(ii)対象において感染を生じさせる細菌の能力を阻害するか、もしくは低下させること、または(iii)環境において増殖するか、もしくは感染力を持続する細菌の能力を、阻害するか、もしくは低下させることができる、任意の物質、化合物、または物質の組合せ、または化合物の組合せを指す。「抗菌剤」という用語はまた、細菌の感染力またはビルレンスを低減させることができる化合物も指す。
【0013】
「ベータラクタム抗菌剤」という用語は、本明細書で使用される場合、抗菌性を有し、その分子構造内にベータラクタム核を含有する化合物を指す。
「ベータラクタマーゼ」という用語は、本明細書で使用される場合、ベータラクタム環を分解する、任意の酵素もしくはタンパク質または任意の他の物質を指す。「ベータラクタマーゼ」という用語には、細菌により産生される酵素であって、ベータラクタム化合物におけるベータラクタム環を部分的にまたは完全に加水分解する能力を有する酵素が含まれる。
「ベータラクタマーゼ阻害剤」という用語は、本明細書で使用される場合、1種または複数のベータラクタマーゼ酵素の活性を部分的にまたは完全に阻害することができる化合物を指す。
「薬学的に不活性な成分」または「担体」または「賦形剤」という用語は、化合物の投与を容易にするため、例えば化合物の溶解性を高めるために使用される化合物または物質を指す。固体担体の典型的な非限定的な例としては、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム、スクロース、およびカオリンなどが挙げられる。液体担体の典型的な非限定的な例としては、滅菌水、生理食塩水、緩衝液、非イオン界面活性剤、ならびに食用油、例えば油、ラッカセイ油およびゴマ油などが挙げられる。加えて、当技術分野で一般に使用される様々なアジュバントが含まれてもよい。これらおよび他のこのような化合物は、文献、例えば、Merck Index (Merck & Company, Rahway, N.J.)に記載されている。医薬組成物に様々な構成成分を含めることについての考察は、例えば、Gilman et al. (Eds.) (1990); Goodman and Gilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press.に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、哺乳動物を含む、脊椎動物または無脊椎動物を指す。「対象」という用語には、ヒト、動物、鳥、魚、または両生類が含まれる。「対象」の典型的な非限定的な例としては、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、雌ウシ、ブタ、子ヒツジ、ラット、マウスおよびモルモットが挙げられる。
【0015】
「薬学的に許容される誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、対象への投与の際に親化合物を(直接的または間接的に)提供することができる、本明細書に記載の化合物の任意の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、代謝産物、エステル、エーテル、水和物、多形、溶媒和物、錯体、エナンチオマーまたは付加物を指し、これらを含む。例えば、「抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体」という用語には、対象への投与の際に抗菌化合物を(直接的または間接的に)提供することができる、抗菌剤のすべての誘導体(例えば塩、プロドラッグ、代謝産物、エステル、エーテル、水和物、多形、溶媒和物、錯体、エナンチオマーまたは付加物)が含まれる。
【0016】
1つの一般的態様において、式(I)の化合物、
【化2】
またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩が提供される。
【0017】
本発明による化合物の典型的な非限定的な例としては、
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;および
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩が挙げられる。
【0018】
本発明の化合物は、スキーム1に示した一般手順に従って調製することができる。個々の立体異性体は、適切な出発物質および試薬を使用して調製することができる。所望および関連の化合物を得るために、記載の方法をさらに変更および/または最適化できることは、当業者であれば理解するであろう。
【0019】
【化3】
【0020】
典型的には、式(II)の化合物を、適切なフッ素化剤の存在下で、式(III)の化合物に変換する。適切なフッ素化剤の典型的な非限定的な例としては、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST試薬)が挙げられる。次いで、式(III)の化合物を、適切な還元剤の存在下で、式(IV)の化合物に変換する。適切な還元剤の典型的な非限定的な例としては、水素化ホウ素リチウムが挙げられる。式(IV)の化合物を、適切な試薬を使用して、式(V)の化合物に変換する。式(V)の化合物を、適切な試薬の存在下で、式(VI)の化合物に変換する。次いで、式(VI)の化合物を(2S,5R)-6-ベンジルオキシ-7-オキソ-1,6-ジアザ-ビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボン酸(VII)のナトリウム塩と反応させて、式(VIII)の化合物を得る。次いで、式(VIII)の化合物を、適切な脱ベンジル化剤の存在下で、式(IX)の化合物に変換する。適切な脱ベンジル化剤の典型的な非限定的な例としては、パラジウム炭素などの遷移金属触媒の存在下の水素ガスが挙げられる。式(IX)の化合物を、適切なスルホン化剤の存在下で、式(X)の化合物に変換する。適切なスルホン化剤の典型的な非限定的な例としては、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド錯体が挙げられる。スルホン化反応に続いて、テトラブチルアンモニウムアセテートで処理して、式(X)の化合物を得る。式(X)の化合物を、適切な脱保護剤の存在下で、式(I)の化合物に変換する。適切な脱保護剤の典型的な非限定的な例としては、トリフルオロ酢酸が挙げられる。これらの官能基変換をもたらし得る多種多様な他の試薬も使用することができる。
【0021】
一部の実施形態において、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物が提供される。
一部の実施形態において、(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩である化合物を含む、医薬組成物が提供される。
一部の実施形態において、(a)式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を含む、医薬組成物が提供される。
一部の実施形態において、(a)(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を含む、医薬組成物が提供される。
【0022】
一部の実施形態において、(a)(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフロキシム、またはそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種または複数を含む、医薬組成物が提供される。
一部の他の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、本発明による化合物または医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
一部の他の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が提供される。
一部の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
他の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0023】
少数の他の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を投与することを含む、方法が提供される。
一部の実施形態において、対象における抗菌剤の抗菌有効性を高めるための方法であって、前記抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩とともに共投与することを含む、方法が提供される。
一部の実施形態において、本発明による化合物および/または組成物は、細菌感染の処置または予防に使用される。
一部の実施形態において、細菌感染の処置または予防における、(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩である化合物の使用が提供される。
一部の実施形態において、(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩である化合物は、細菌感染を処置または予防するための医薬の調製に使用される。
【0024】
一部の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩である化合物を投与することを含む、方法が提供される。
一部の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0025】
一部の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0026】
一部の実施形態において、対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフロキシム、またはそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種または複数を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0027】
本発明による組成物および方法は、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体と組み合わせて使用する。多種多様な抗菌剤を、本発明による化合物と組み合わせて使用することができる。抗菌剤は、それらの構造または作用様式に応じて分類されることが多い。
抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペナム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、セフェム、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、ケトライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサセフェム、オキサペナム、オキサゾリジノン、ペナム、ペネム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリンなどの抗菌剤の群に属するものが挙げられる。
一部の実施形態において、抗菌剤は、ベータラクタム抗菌剤である。
ベータラクタム抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、カルバセフェム、カルバペナム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、セフェム、モノバクタム、オキサセフェム、オキサペナム、ペナム、ペネム、ペニシリンなどとして一般に知られているものが挙げられる。
【0028】
抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、セファセトリル、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファマンドール、セファピリン、セファトリジン、セファザフルール、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカペン、セフクリジン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフルプレナム、セフメノキシム、セフメタゾール、セフミノクス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォセリス、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォベシン、セフォキシチン、セフォキシチン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロキサジン、セフスロジン、セフタロリン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトビプロール、セフトロザン、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファロリジン、セフラジン、CXA-101、フロモキセフ、ラタモキセフ、ロラカルベフ、モキサラクタムなどが挙げられる。
【0029】
一部の実施形態において、抗菌剤は、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セフジニル、セフィキシム、セフポドキシム、セフプロジル、セフラジン、セフチブテン、セフロキシム、ロラカルベフまたはそれらの薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1種である。
アミノグリコシド抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、アルベカシン、ストレプトマイシン、アプラマイシンなどが挙げられる。
アンサマイシン抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、ゲルダナマイシン、ハービマイシンなどが挙げられる。
カルバペネム抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム、ビアペネム、テビペネム、レナペネム、トモペネムなどが挙げられる。
リンコサミド抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、クリンダマイシン、リンコマイシンなどが挙げられる。
マクロライド抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、ソリスロマイシンなどが挙げられる。
モノバクタム抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、アズトレオナムなどが挙げられる。
ニトロフラン抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、フラゾリドン、ニトロフラントインなどが挙げられる。
【0030】
ペニシリン抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンg、ペニシリンv、ピペラシリン、テモシリン、チカルシリンなどが挙げられる。
ポリペプチド抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンBなどが挙げられる。
キノロン抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、レボナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、フレロキサシン、ペフロキサシン、シタフロキサシンなどが挙げられる。
スルホンアミド抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、マフェニド、スルホンアミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリムなどが挙げられる。
テトラサイクリン抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、チゲサイクリンなどが挙げられる。
オキサゾリジノン抗菌剤の典型的な非限定的な例としては、テジゾリド、リネゾリド、ランベゾリド、トレゾリド、ラデゾリドなどが挙げられる。
【0031】
本発明による医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容される担体または賦形剤などを含んでもよい。このような担体または賦形剤の典型的な非限定的な例としては、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤、滑沢剤、安定化剤、結合剤などが挙げられる。
本発明による医薬組成物は、様々な形態で存在し得る。一部の実施形態において、医薬組成物は、粉末または溶液の形態をとる。一部の他の実施形態において、本発明による医薬組成物は、非経口投与前に相溶性のある再構成希釈剤の添加により再構成することができる粉末の形態をとる。このような相溶性のある再構成希釈剤の非限定的な例としては、水が挙げられる。
一部の他の実施形態において、本発明による医薬組成物は、非経口投与前に相溶性のある希釈剤で希釈することができる凍結組成物の形態をとる。
一部の他の実施形態において、本発明による医薬組成物は、非経口投与にすぐに使用できる形態をとる。
【0032】
本発明による方法において、本明細書に開示される医薬組成物および/または他の薬学的に活性な成分は、組成物もしくはその構成物または活性成分を所望の部位に送達するのに役立つ任意の適切な方法により投与することができる。投与の方法は、例えば、医薬組成物の構成成分、および活性成分の性質、潜在的なまたは実際の感染の部位、関与する微生物(例えば細菌)、感染の重症度、対象の年齢および体調などの様々な要因に応じて異なり得る。本発明による、対象への組成物の投与のいくつかの非限定的な例としては、経口、静脈内、局所、呼吸器内、腹腔内、筋肉内、非経口、舌下、経皮、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、経膣、遺伝子銃、皮膚パッチ、点眼、点耳または洗口が挙げられる。
【0033】
本発明による組成物は、活性成分および/または賦形剤が一緒に(例えば混合物として)または別々の構成成分として存在し得る様々な剤形に製剤化することができる。組成物中の様々な成分を混合物として製剤化する場合、このような組成物は、このような混合物を投与することにより送達することができる。成分が混合物として提供されるのではなく、別々の構成成分として提供される組成物または剤形の場合、このような組成物/剤形はいくつかのやり方で投与され得る。1つの可能なやり方では、成分を所望の割合で混合することができ、次いで混合物を必要に応じて投与する。代替的に、構成成分または成分(活性または不活性)は、同等の混合物の投与により達成されるであろう治療レベルまたは効果と同一または同等の治療レベルまたは効果を達成するような適切な割合で、別々に(同時にまたは順次に)投与してもよい。
【0034】
同様に、本発明による方法において、本明細書に開示される活性成分を必要に応じていくつかのやり方で対象に投与してもよい。一部の実施形態において、活性成分を適切な量で混合し、次いで混合物を対象に投与する。一部の他の実施形態において、活性成分を別々に投与する。本発明は、活性成分薬剤が別々に投与され得ることを企図するので、本発明は、キット形態での別々の医薬組成物の組合せをさらに提供する。キットは、それぞれが1種または複数の活性成分を含む1種または複数の別々の医薬組成物を含み得る。このような別々の組成物のそれぞれは、瓶、バイアル、シリンジ、箱、袋などの別々の容器内に存在してもよい。典型的には、キットは、別々の構成成分の投与のための指示書を含む。キット形態は、別々の構成成分を、好ましくは異なる剤形(例えば経口および非経口)で投与するか、または異なる投与間隔で投与する場合に特に有利である。活性成分を別々に投与する場合、それらは同時にまたは順次に投与してもよい。
【0035】
本発明による医薬組成物または活性成分は、様々な剤形に製剤化することができる。剤形の典型的な非限定的な例としては、固形、半固形、液体およびエアロゾルの剤形;例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁液剤、坐剤、エアロゾル剤、顆粒剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤などが挙げられる。
【0036】
一般に、本明細書に開示される化合物、医薬組成物および方法は、細菌感染を処置および/または予防するのに有用である。有利なことに、本明細書に開示される化合物、組成物および方法はまた、既知の抗菌剤またはそれらの既知の組成物のうちの1種または複数に対して感受性がより低いか、または感受性でないと考えられる細菌により引き起こされる感染の処置または予防にも有効である。様々な抗菌剤に対して耐性を発達させてきたことが知られているこのような細菌のいくつかの非限定的な例としては、アシネトバクター(Acinetobacter)、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロバクター(Enterobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)などが挙げられる。本発明による化合物、組成物および/または方法を使用して処置または予防され得る感染の他の非限定的な例としては、皮膚および軟組織感染、発熱性好中球減少症、尿路感染、腹腔内感染、気道感染、肺炎(院内)、菌血症、髄膜炎、外科感染などが挙げられる。
驚くべきことに、本発明による化合物、組成物および方法はまた、1種または複数のベータラクタマーゼ酵素を産生する細菌により引き起こされる細菌感染の処置および/または予防にも有効である。本発明による化合物、組成物および/または方法が典型的なベータラクタム抗生物質とともにこのような耐性菌を処置する能力は、当技術分野における有意な改善を示す。
【0037】
一般に、本発明による式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩はまた、対象における抗菌剤の抗菌有効性を高めるのにも有用である。1種または複数の抗菌剤の抗菌有効性は、例えば、前記抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を、本発明による式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩とともに共投与することにより、高めることができる。
【0038】
一部の実施形態において、式(Ia)の化合物の調製のためのプロセスであって、
【化4】
(a)式(IIa)の化合物を、フッ素化剤の存在下で、式(IIIa)の化合物に変換するステップと、
【0039】
【化5】
(b)式(IIIa)の化合物を式(IVa)の化合物に変換するステップと、
【化6】
(c)式(IVa)の化合物を式(Va)の化合物に変換するステップと、
【0040】
【化7】
(d)式(Va)の化合物を式(VIa)の化合物に変換するステップと、
【化8】
(e)式(VIa)の化合物を式(VII)の化合物と反応させて、式(VIIIa)の化合物を得るステップと、
【0041】
【化9】
(f)式(VIIIa)の化合物を式(IXa)の化合物に変換するステップと、
【0042】
【化10】
(g)式(IXa)の化合物を式(Xa)の化合物に変換するステップと、
【化11】
(h)式(Xa)の化合物を式(Ia)の化合物に変換するステップと
を含む、プロセスが提供される。
【0043】
一部の実施形態において、式(IIa)の化合物を、適切なフッ素化剤の存在下で、式(IIIa)の化合物に変換する。適切なフッ素化剤の典型的な非限定的な例としては、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST試薬)が挙げられる。
一部の他の実施形態において、式(IIIa)の化合物を、適切な還元剤の存在下で、式(IVa)の化合物に変換する。適切な還元剤の典型的な非限定的な例としては、水素化ホウ素リチウムが挙げられる。
一部の他の実施形態において、式(IVa)の化合物を、適切な試薬の存在下で、式(Va)の化合物に変換する。これらの試薬の典型的な非限定的な例としては、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、トリフェニルホスフィン、およびN-ヒドロキシフタルイミドが挙げられる。
一部の実施形態において、式(Va)の化合物を、適切な試薬を使用して、式(VIa)の化合物に変換する。これらの試薬の典型的な非限定的な例としては、ヒドラジン水和物が挙げられる。
【0044】
一部の他の実施形態において、式(VIa)の化合物を、適切な試薬の存在下で、(2S,5R)-6-ベンジルオキシ-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボン酸(VII)のナトリウム塩と反応させることにより、式(VIIIa)の化合物を得る。これらの試薬の典型的な非限定的な例としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)およびN-メチルモルホリン(NMM)が挙げられる。
一部の実施形態において、式(VIIIa)の化合物を、適切な脱ベンジル化剤の存在下で、式(IXa)の化合物に変換する。適切な脱ベンジル化剤の典型的な非限定的な例としては、パラジウム炭素などの遷移金属触媒の存在下の水素ガスが挙げられる。
【0045】
一部の実施形態において、式(IXa)の化合物を、適切なスルホン化剤の存在下で、式(Xa)の化合物に変換し、続いてテトラブチルアンモニウムアセテートで処理する。適切なスルホン化剤の典型的な非限定的な例としては、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド錯体が挙げられる。スルホン化反応に続いて、テトラブチルアンモニウムアセテートで処理して、式(Xa)の化合物を得る。
一部の実施形態において、式(Xa)の化合物を、適切な脱保護剤の存在下で、式(Ia)の化合物に変換する。適切な脱保護剤の典型的な非限定的な例としては、トリフルオロ酢酸が挙げられる。
これらの官能基変換をもたらし得る多種多様な他の試薬を使用することができる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に対して様々な置換および改変をなし得ることは、当業者には容易に明らかになるであろう。例えば、記載された一般的記載内で様々な異なる化合物を使用して本発明を実施できることを当業者は認識するであろう。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕式(I)の化合物、

またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩。
〔2〕(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド;
またはそれらの立体異性体もしくは薬学的に許容される塩から選択される、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩;
またはそれらの立体異性体から選択される、前記〔1〕に記載の化合物。
〔4〕前記〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
〔5〕少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体をさらに含む、前記〔4〕に記載の医薬組成物。
〔6〕抗菌剤が、ベータラクタム抗菌剤である、前記〔5〕に記載の医薬組成物。
〔7〕抗菌剤が、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペナム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、セフェム、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、ケトライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサセフェム、オキサペナム、オキサゾリジノン、ペナム、ペネム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、またはテトラサイクリン抗菌剤からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔5〕に記載の医薬組成物。
〔8〕抗菌剤が、セファセトリル、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファマンドール、セファピリン、セファトリジン、セファザフルール、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカペン、セフクリジン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフルプレナム、セフメノキシム、セフメタゾール、セフミノクス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォセリス、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォベシン、セフォキシチン、セフォキシチン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロキサジン、セフスロジン、セフタロリン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトビプロール、セフトロザン、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファロリジン、セフラジン、CXA-101、フロモキセフ、ラタモキセフ、ロラカルベフ、モキサラクタム、またはそれらの薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔5〕に記載の医薬組成物。
〔9〕抗菌剤が、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セフジニル、セフィキシム、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフラジン、セフチブテン、セフロキシム、ロラカルベフ、またはそれらの薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔5〕に記載の医薬組成物。
〔10〕細菌感染の処置または予防における、前記〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
〔11〕細菌感染の処置または予防における、前記〔4〕から〔9〕までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
〔12〕対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、前記〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
〔13〕対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、前記〔4〕から〔9〕までのいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
〔14〕対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、(a)前記〔1〕に記載の式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体を投与することを含む、方法。
〔15〕式(I)の化合物が、
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
またはそれらの立体異性体もしくは薬学的に許容される塩から選択される、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕式(I)の化合物が、
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのカリウム塩
またはそれらの立体異性体から選択される、前記〔14〕に記載の方法。
〔17〕抗菌剤が、ベータラクタム抗菌剤である、前記〔14〕から〔16〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔18〕抗菌剤が、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペナム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、セフェム、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、ケトライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサセフェム、オキサペナム、オキサゾリジノン、ペナム、ペネム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン抗菌剤からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔14〕から〔16〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔19〕抗菌剤が、セファセトリル、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファマンドール、セファピリン、セファトリジン、セファザフルール、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカペン、セフクリジン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフルプレナム、セフメノキシム、セフメタゾール、セフミノクス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォセリス、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォベシン、セフォキシチン、セフォキシチン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロキサジン、セフスロジン、セフタロリン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトビプロール、セフトロザン、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファロリジン、セフラジン、CXA-101、フロモキセフ、ラタモキセフ、ロラカルベフ、モキサラクタム、またはそれらの薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔14〕から〔16〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔20〕抗菌剤が、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セフジニル、セフィキシム、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフラジン、セフチブテン、セフロキシム、ロラカルベフ、またはそれらの薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔14〕から〔16〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔21〕(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩である、化合物。
〔22〕前記〔21〕に記載の化合物を含む、医薬組成物。
〔23〕少なくとも1種の抗菌剤またはその薬学的に許容される誘導体をさらに含む、前記〔22〕に記載の医薬組成物。
〔24〕抗菌剤が、ベータラクタム抗菌剤である、前記〔23〕に記載の医薬組成物。
〔25〕抗菌剤が、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフロキシム、またはそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種または複数である、前記〔23〕に記載の医薬組成物。
〔26〕細菌感染の処置または予防における、前記〔21〕に記載の化合物の使用。
〔27〕細菌感染の処置または予防における、前記〔22〕から〔25〕までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
〔28〕対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、前記〔21〕に記載の化合物を投与することを含む、方法。
〔29〕対象における細菌感染を処置または予防するための方法であって、前記対象に、前記〔22〕から〔25〕までのいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
〔30〕式(Ia)の化合物の調製のためのプロセスであって、
(a)式(IIa)の化合物を、フッ素化剤の存在下で、式(IIIa)の化合物に変換するステップと、
(b)式(IIIa)の化合物を式(IVa)の化合物に変換するステップと、
(c)式(IVa)の化合物を式(Va)の化合物に変換するステップと、
(d)式(Va)の化合物を式(VIa)の化合物に変換するステップと、
(e)式(VIa)の化合物を式(VII)の化合物と反応させて、式(VIIIa)の化合物を得るステップと、
(f)式(VIIIa)の化合物を式(IXa)の化合物に変換するステップと、
(g)式(IXa)の化合物を式(Xa)の化合物に変換するステップと、
(h)式(Xa)の化合物を式(Ia)の化合物に変換するステップと
を含む、プロセス。
【実施例
【0046】
以下の例は、現在最もよく知られている本発明の実施形態を例証する。しかし、以下は、本発明の原理の応用の例示または例証にすぎないことを理解されたい。多くの改変および代替な組成物、方法、およびシステムが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者により案出され得る。添付の特許請求の範囲は、このような改変および修飾を包含することが意図される。したがって、本発明について上記で詳細に記載してきた一方で、以下の例は、本発明の最も実用的かつ好ましい実施形態であると現時点で考えられるものに関してさらに詳述するものである。
(例1)
(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(Ia)
【化12】
【0047】
ステップ1:1-tert-ブチル-2-メチル(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(IIIa)の合成。
ジクロロエタン(100ml)中の1-tert-ブチル-2-メチル(2S,4R)-4-ヒドロキシピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(IIa)(10g、40.8mmol)の撹拌溶液を-78℃に冷却し、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(8.2ml、61.2mmol)を溶液に添加した。反応内容物をこの温度で2時間撹拌し、その後、NaHCO3の飽和水溶液(10ml)を添加することによりクエンチした。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥させた有機層を減圧下で濃縮して、化合物(IIIa)を濃厚な油状物(7g、収率:69%)として得た。
分析:
質量: 248.2 (M+H);
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.20 (dm, 2JH-F =53.2 Hz, 1H), 4.55 - 4.42 (m, 1H), 3.89-3.79 (m, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.70-3.61 (m, 1H), 2.53-2.31 (m, 2H), 1.48および1.43 (2s, 9H).
【0048】
ステップ2:tert-ブチル(2S,4S)-4-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(IVa)の合成。
テトラヒドロフラン(70ml)およびメタノール(70ml)中の化合物(IIIa)(7g、28.3mmol)の撹拌溶液に、無水塩化リチウム(2.61g、62.3mmol)、続いて水素化ホウ素ナトリウム(2.69g、70.8mmol)を室温で添加した。反応内容物をこの温度で6時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。このようにして得られた残留物を酢酸エチル(100ml)と水(100ml)との間で分配した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60~120メッシュサイズ;溶離液:アセトン:ヘキサン 30:70v/vの混合物)により精製した。合わせた画分を濃縮して、化合物(IVa)を油状物(6g、収率:97%)として得た。
分析:
質量: 220.3 (M+H);
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.22 (dm, J = 52.8 Hz, 1H), 4.17-4.09 (m, 2 H), 3.87-3.82 (m, 1 H), 3.74-3.49 (m, 3H), 2.35-2.19 (m, 1H), 2.05-1.97 (m, 1H), 1.48 (s, 9H).
【0049】
ステップ3:tert-ブチル(2S,4S)-2-{[(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)オキシ]メチル}-4-フルオロピロリジン-1-カルボキシレート(Va)の合成。
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(8.3g、41mmol)を、テトラヒドロフラン(100ml)中の化合物(IVa)(6g、27mmol)の溶液に添加し、続いて室温で撹拌しながらトリフェニルホスフィン(10.76g、41mmol)およびN-ヒドロキシフタルイミド(4.46g、27mmol)を添加した(発熱反応、温度は水冷により制御)。添加が完了した後、室温で16時間撹拌を続けた。反応進行を、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用してモニターした。次いで、反応内容物を減圧下で濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60~120メッシュサイズ;溶離液:アセトン:ヘキサン 30:70v/vの混合物)により精製した。合わせた画分を濃縮して、化合物(Va)を白色固体(9g、収率:90%)として得た。
分析:
質量: 365.3 (M+H);
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.83-7.75 (m, 4H), 5.27 (dm, 2JH-F = 51.2 Hz, 1H), 5.01-4.95 (m, 1H), 4.51-4.46 (m, 1H), 4.32-4.20 (m, 2H), 3.75-3.45 (m, 2H), 2.82-2.74 (m, 1H), 2.32-2.17 (m, 1H), 1.42および1.39 (2s, 9H).
【0050】
ステップ4:tert-ブチル(2S,4S)-2-[(アミノオキシ)メチル]-4-フルオロピロリジン-1-カルボキシレート(VIa)の合成。
ヒドラジン水和物(2.4g、48mmol)を、室温で撹拌しながらジクロロメタン(100ml)中の化合物(Va)(9g、24mmol)の溶液に添加した。室温で2時間撹拌をさらに続け、反応進行を、TLCを使用してモニターした。反応混合物を吸引下でセライトベッドに通して濾過し、残留物を新たなジクロロメタン(20ml)で洗浄した。合わせた濾液を10%NaHCO3水溶液(2×50ml)、続いてブライン(50ml)で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで減圧下で濃縮して、化合物(VIa)を油状物(5.7g、収率:約100%)として得た。
【0051】
ステップ5:(2S,5R)-N-{[1-tert-ブトキシカルボニル(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メトキシ}-6-ベンジルオキシ-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(VIIIa)の合成。
N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl、7.87g、41.2mmol)、N-メチルモルホリン(NMM、8.32g、82.4mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(Hydrxybenzotriazole)(HOBT、3.7g、27.4mmol)を、DMF(100ml)中の(2S,5R)-6-ベンジルオキシ-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボン酸(VII)のナトリウム塩(8.21g、27.4mmol)の撹拌溶液に室温で連続的に添加した。化合物(VII)は、国際特許出願第PCT/IB2013/059264号に開示されている手順を使用して調製した。この溶液に、DMF(15ml)中の化合物(VIa)(5.7g、24.3mmol)の溶液をさらに添加し、16時間撹拌をさらに続けた。反応混合物を水(500ml)に注ぎ入れ、よく撹拌し、酢酸エチル(2×200ml)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで減圧下で濃縮して、油状残留物を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60~120メッシュサイズ;溶離液:アセトン:ヘキサン 40:60v/vの混合物)を使用して精製した。合わせた画分を蒸発させて、化合物(VIIIa)を白色固体(9.0g、収率:75%)として得た。
分析:
質量: 493.3 (M+H);
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.14 (bs, 1H), 7.36-7.26 (m, 5H), 5.23 (dm, 1H, J = 59.6 Hz), 5.05 (d, 1H, J =11.2 Hz), 4.90 (d, 1H, J =11.2 Hz), 4.29-4.28 (m, 1H), 3.94-3.83 (m, 3H), 3.72-3.56 (m, 2H), 3.32-3.3.29 (m, 1H), 3.07-2.89 (m, 2H), 2.29-1.82 (m, 6H), 1.46 (s, 9H)
【0052】
ステップ-6:(2S,5R)-N-{[1-tert-ブトキシカルボニル(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メトキシ}-6-ヒドロキシ-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(IXa)の合成。
化合物(VIIIa)(5g、10.1mmol)を、25~30℃の温度で、触媒としての10%パラジウム炭素(2g、50%湿潤)および溶媒としてのジクロロメタン(25ml)とジメチルホルムアミド(25ml)との1:1混合物の存在下、水素ガスをパージすることにより水素化した。反応の進行をTLC(酢酸エチル:ヘキサン、1:1)の補助によりモニターした。反応の完了後、反応内容物をセライトベッドに通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗化合物(IXa)(4g、収率:約100%)を得た。
【0053】
ステップ-7:(2S,5R)-N-{[1-tert-ブトキシカルボニル(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メトキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(Xa)のテトラブチルアンモニウム塩の合成。
ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体(3.1g、20.2mmol)を、DMF(30ml)中の化合物(IXa)(4.0g、10.1mmol)の撹拌溶液にアルゴン雰囲気下、25℃で添加した。25℃で1時間撹拌を続け、反応を、TLCを使用してモニターした。水(15ml)中のテトラブチルアンモニウムアセテート(7.64g、25mmol)の溶液を反応混合物に添加し、1時間撹拌をさらに続け、得られた混合物を減圧下、40℃で濃縮した。残留物を水(50ml)で希釈し、混合物を(2×50ml)ジクロロメタン中に抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で蒸発させて、油状物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60~120メッシュサイズ;溶離液:ジクロロメタン:メタノール、95:5v/vの混合物)により精製し、合わせた画分を減圧下で蒸発させて、化合物(Xa)を白色泡状物(4g、収率:54%)として得た。
分析:
質量: 481.4(M-H).
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.22 (bs, 1H), 5.23 (dm, 1H, J=54Hz), 4.34-4.35 (m, 2H), 3.91-4.14 (m, 4H), 3.59-3.73 (m, 2H), 3.25-3.36 (m, 9H), 2.95 (d, 1H, J=9.2Hz), 2.08-2.34 (m, 4H), 1.89-1.91 (m, 1H), 1.63-1.77 (m,12H), 1.40-1.53 (m, 16H), 0.98-1.02 (t, 12H) .
【0054】
ステップ-8:(2S,5R)-N-{[(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(Ia)の合成。
化合物(Xa)(4g、5.52mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、溶液を-15℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(20ml)を溶液に-10℃~-15℃で滴下添加した。反応をES-MS分析によりモニターした。溶液の温度を-10~-5℃に1時間維持した。反応の完了後、ヘキサン(200ml)を反応混合物に添加した。ヘキサン層をデカントし、油状残留物をヘキサン(2×100ml)およびジエチルエーテル(50ml)により十分に洗浄した。形成された固体残留物をアセトニトリルおよびジエチルエーテル(各20ml)でさらに洗浄した。残留物を減圧下で乾燥させて、生成物を白色固体として得、これを、イソプロパノールおよび水の混合物を使用して再結晶して、式(Ia)の化合物を白色固体(1.7g、収率:80%)として得た。
分析:
質量: 381.2 (M-H); 分子量: 382.2; 分子式: C12FH19N4O7S.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.67 (bs, 1H), 9.22 (bs, 1H), 5.43 (dm, 2JH-F = 53.2 Hz, 1H), 4.05-3.95 (m, 4H), 3.81 (d, J = 6 Hz, 1H), 3.62-3.32 (m, 4H), 3.06-2.95 (m, 2H), 2.07-1.67 (m, 5H).
融点: 180-183℃ (分解).
【0055】
(例2)
(2S,5R)-N-{[(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(Ib)
【化13】
式(Ib)の化合物は、1-tert-ブチル-2-メチル(2S,4S)-4-ヒドロキシピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(化合物(IIb))から出発し、例1に記載した手順に従って、全収率約24%で調製した。
【0056】
【化14】
分析:
質量: 381.2 (M-H); 分子量: 382.2; 分子式: C12FH19N4O7S.
1H NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 11.72 (brs, 1 H), 9.37 (brs, 1 H), 5.45 (d, 2JH-F = 52.8 Hz, 1 H), 4.11 - 3.92 (m, 4 H), 3.82 (d, J = 4.4 Hz, 1 H), 3.62 - 3.43 (m, 3 H), 3.05 - 2.96 (m, 2 H), 2.42 - 2.32 (m, 1 H), 2.15 - 1.82 (m, 3 H), 1.75 - 1.63 (m, 2 H).
融点: 160-163℃ (分解).
【0057】
(例3)
(2S,5R)-N-{[(2R,4S)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
【化15】
式(Ic)の化合物は、1-tert-ブチル-2-メチル(2R,4R)-4-ヒドロキシピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(化合物(IIc))から出発し、例1に記載した手順に従って、全収率約16%で調製した。
【0058】
【化16】
分析:
質量: 381.2 (M-H); 分子量: 382.2; 分子式: C12FH19N4O7S.
1H NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 11.74 (bs, 1H), 9.21 (bs, 1H), 5.42 (dm, 2JH-F = 52.4 Hz, 1H), 4.11-3.95 (m, 4H), 3.79-3.73 (m, 2H), 3.53-3.42 (m, 4H), 3.11-2.95 (m, 1H), 2.01-1.62 (m, 5H).
融点: 175-178℃ (分解).
【0059】
(例4)
(2S,5R)-N-{[(2R,4R)-4-フルオロピロリジン-2-イル]メチルオキシ}-7-オキソ-6-(スルホオキシ)-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
【化17】
式(Id)の化合物は、1-tert-ブチル-2-メチル(2R,4S)-4-ヒドロキシピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(化合物(IId))から出発し、例1に記載した手順に従って、全収率約16%で調製した。
【0060】
【化18】
分析
質量: 381.2 (M-H); 分子量: 382.2; 分子式: C12FH19N4O7S.
1H NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 11.27 (bs, 1H), 9.18 (bs, 1H), 5.42 (dm, 2JH-F = 53.2 Hz, 1H), 4.02-3.92 (m, 4H), 3.80 (d, J = 6Hz, 1H ), 3.59-3.31 (m, 4H), 3.05-2.98 (m, 1H), 2.45-2.38 (m, 1H), 2.03-1.65 (m, 5H).
融点: 207-209℃ (分解).
【0061】
(生物学的活性)
様々な細菌株に対する本発明による代表的な化合物の生物学的活性を調査した。典型的な研究では、一夜成長させた細菌培養物を適切に希釈し、試験化合物の2倍希釈物を含有する寒天培地に接種した。周囲空気中、35±2℃で16~20時間インキュベートした後、成長の有無についての観察を行った。手順全体は、臨床・検査標準協会(CLSI:Clinical and Laboratory Standards Institute)勧告(Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI), Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing, 20th Informational Supplement, M 100 - S20, Volume 30, No. 1, 2010)に従って行った。これらの研究の結果を表1にまとめる。
【0062】
【表1】
【0063】
見て分かるように、本発明による化合物は、既存の抗菌剤のうちの1種または複数に耐性であることが知られているものを含む様々な細菌株に対して抗菌活性を示す。本発明による化合物の抗菌活性はまた、セフェピム、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、およびセフチブテンを含む、いくつかの抗菌剤との組合せでも調査した。例えば、様々な抗菌剤と組み合わせた例1による化合物の抗菌活性を、表2にまとめる。
【0064】
これらの研究において、初期細菌数(0時間の時点の)は7.18log10CFU/mlであった。一般に、初期数に対する1、2および3対数の細菌殺傷は、99%、99.9%および99.99%の殺菌効果に相当する。典型的な時間依存細菌殺傷研究では、新たに成長させた細菌培養物を、陽イオン調整ミューラーヒントンブロス培地(BD、米国)中で標的細胞密度(初期出発接種物)まで希釈した。必要とされる濃度の抗菌剤(単独または組合せのいずれかの)を、培養物含有培地中に添加した。試料フラスコを振とう条件(120rpm)下、37℃でインキュベートした。試料を通常の生理食塩水に希釈し、トリプシンダイズ寒天プレート(BD、米国)上にプレーティングすることにより、生存細菌数の計数を定期的に行った。プレートを24時間インキュベートして、生存細菌数を推定した。結果は1ml当たりのLog10CFUに換算して表す。
【0065】
本発明による化合物を単独および抗菌剤との組合せで含有する、いくつかの組成物も調製した。
【表2】