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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】溶接支援システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/133 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
B23K9/133 502A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018044161
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019155406
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸田 旨南
(72)【発明者】
【氏名】小野 直洋
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和義
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515317(JP,A)
【文献】特表2002-511342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端の載置台を前記アームの旋回もしくは上下回転若しくは伸縮により移動するアーム式ハンドリング装置を用いて、溶接ワイヤを溶接場所に供給する溶接支援システムにおいて、
前記溶接ワイヤを収容しているワイヤホルダーを着脱可能に備える前記溶接ワイヤ送給装置に加えて、前記溶接ワイヤ送給装置から供給された前記溶接ワイヤを溶接機に送り出す溶接ワイヤ送り出し装置を備えると共に、
この溶接ワイヤ送り出し装置を複数台、前記載置台に載置し
前記載置台に前記溶接ワイヤ送り出し装置を駆動するための駆動用電気供給コンセントを設けて、この駆動用電気供給コンセントから前記溶接ワイヤ送り出し装置に電力を供給すると共に、前記溶接ワイヤ送り出し装置を前記載置台に対して着脱可能に設けていることを特徴とする溶接支援システム。
【請求項2】
溶接電源装置からの電力を前記溶接機に供給する溶接用電力供給線を前記載置台経由で配線していることを特徴とする請求項に記載の溶接支援システム。
【請求項3】
前記アーム式ハンドリング装置を、支柱とこの支柱に第1関節を介して接続された第1アームと、この第1アームの先端に第2関節を介して接続された第2アームと、この第2アームの先端に配置された前記載置台とから構成し、前記第1アームを前記第1関節により水平面内で旋回可能に取り付けると共に、前記第2アームを前記第2関節により先端側が水平面内で首振り可能でかつ前記載置台16を上下移動可能に構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接支援システム。
【請求項4】
前記アーム式ハンドリング装置に前記溶接ワイヤ送給装置を取り付けて構成していることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の溶接支援システム。
【請求項5】
前記アーム式ハンドリング装置を、溶接場所の基盤に対して着脱可能に構成していることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の溶接支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接支援システム及び溶接支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接作業の自動化のために、溶接棒の代わりに溶接ワイヤが使用され、この溶接ワイヤを自動溶接機などの溶接機に継続して送り届けるために、様々な溶接ワイヤ送給装置が使用されている。例えば、ワイヤ送給部が設けられた送給部フレームと、ワイヤリールが搭載されるワイヤリール支持部材が取り付けられるワイヤリール支持フレームを有する溶接ワイヤ送給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、数個の関節を有する上アームの先端部の手首作用部に溶接用トーチを装着し、この上アームの基端部に溶接ワイヤ送給装置を装着して、さらに、この上アームを支持する下アームの基部にワイヤリールを配設したアーク溶接ロボットも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-119116号公報
【文献】特開2006-289503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、造船業界においては、溶接ワイヤが使用されているが、長い溶接継手が多く、自動溶接や半自動溶接などのために、アーク溶接ロボットのような、溶接長さに比べて溶接用トーチの到達範囲が比較的小さい装置を使用しても、溶接作業の効率向上には限界がある。
【0006】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、アーム式ハンドリング装置を使用して、ある程度の範囲の溶接範囲で溶接する場合に、一基のアーム式ハンドリング装置で複数の溶接機を使用することができて、省スペースかつ抵コストで溶接ワイヤを効率よく複数の溶接機に送給でき、溶接作業の効率を著しく向上できる溶接支援システム及び溶接支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の溶接支援システムは、アームの先端の載置台を前記アームの旋回もしくは上下回転若しくは伸縮により移動するアーム式ハンドリング装置を用いて、前記溶接ワイヤを溶接場所に供給する溶接支援システムにおいて、前記溶接ワイヤを収容しているワイヤホルダーを着脱可能に備える溶接ワイヤ送給装置に加えて、前記溶接ワイヤ送給装置から供給された前記溶接ワイヤを溶接機に送り出す溶接ワイヤ送り出し装置を備えると共に、この溶接ワイヤ送り出し装置を複数台、前記載置台に載置し
前記載置台に前記溶接ワイヤ送り出し装置を駆動するための駆動用電気供給コンセントを設けて、この駆動用電気供給コンセントから前記溶接ワイヤ送り出し装置に電力を供給すると共に、前記溶接ワイヤ送り出し装置を前記載置台に対して着脱可能に設けて構成されている。
【0008】
この構成によれば、25~30kgの溶接ワイヤ送給装置に比べて、5kg程度と軽量な溶接ワイヤ送り出し装置を載置台に載置するので、2~6台程度の溶接ワイヤ送り出し装置を載置台に載置でき、これらの溶接ワイヤ送り出し装置により、一基のアーム式ハンドリング装置で、2~6台の溶接機を使用できるようになり、著しく、省スペースかつ低コストを維持しながら溶接作業の効率を向上できる。また、溶接ワイヤ送給装置と溶接ワイヤ送り出し装置との二段階の溶接ワイヤの送り出しを行うことにより、より遠方まで円滑に溶接ワイヤを供給できるようになる。
【0009】
特に、手動溶接機にも溶接ワイヤを供給している場合には、手動溶接機を用いて手作業で仮付け作業を行ってから自動溶接機もしくは半自動溶接機をセットしてから自動溶接もしくは半自動溶接を行うことが多いので、また、自動溶接もしくは半自動溶接した後で手直し溶接したりすることもあるので、これらの作業のために、溶接ワイヤをいちいち手動溶接機にセットし直す手間が省け、溶接作業の効率を向上させることができる。
【0010】
なお、ここでは、手動溶接は、溶接範囲及び溶接方向の設定と溶接行為を人が行う溶接方法のことをいい、半自動溶接とは、溶接範囲と溶接方向の設定は人が決め、溶接行為は(溶接台車等)機械が行う溶接方法のことをいう。また、自動溶接は、溶接範囲及び溶接方向の設定と溶接行為を機械(溶接ロボット等)が行う溶接方法のことをいう。
【0011】
上記の溶接支援システム、前記載置台に前記溶接ワイヤ送り出し装置を駆動するための駆動用電気供給コンセントを設けて、この駆動用電気供給コンセントから前記溶接ワイヤ送り出し装置に電力を供給すると共に、前記溶接ワイヤ送り出し装置を前記載置台に対して着脱可能に設けて構成しているので、溶接の作業場所によっては、必要に応じて溶接ワイヤ送り出し装置を載置台から取り外して、溶接現場により近い場所に移動できるようになる。また、載置台の溶接ワイヤ送り出し装置に加えて、溶接現場により近い場所にさらに溶接ワイヤ送り出し装置を加えることができるようになる。従って、二段又は多段の中継及び送り出しで、溶接ワイヤをより遠方の溶接作業場所に供給することができるようになるので、溶接作業をより向上させることができる。
【0012】
上記の溶接支援システムにおいて、溶接電源装置からの電力を前記溶接機に供給する溶接用電力供給線を前記載置台経由で配線して構成されていると、溶接に必要な溶接ワイヤの供給路と溶接用電力の供給路をほぼ同じ場所にすることができるようになり、溶接準備作業や点検作業や終了作業をまとめて行えるようになるので作業効率をより向上できる。
【0013】
上記の溶接支援システムにおいて、前記アーム式ハンドリング装置を、支柱とこの支柱に第1関節を介して接続された第1アームと、この第1アームの先端に第2関節を介して接続された第2アームと、この第2アームの先端に配置された前記載置台とから構成し、前記第1アームを前記第1関節により水平面内で旋回可能に取り付けると共に、前記第2アームを前記第2関節により先端側が水平面内で首振り可能でかつ前記載置台16を上下移動可能に構成されていると、載置台を比較的簡単な構成で支柱回りに旋回及び上下で来て、作業員が操作し易い位置に配置することができるようになる。
【0014】
上記の溶接支援システムにおいて、前記アーム式ハンドリング装置に前記溶接ワイヤ送給装置を取り付けて構成されていると、溶接ワイヤの供給経路の配置が単純化し、また、載置台を移動しても溶接ワイヤ送給装置及び溶接ワイヤが邪魔にならなくなる。
【0015】
上記の溶接支援システムにおいて、前記アーム式ハンドリング装置を、溶接場所の基盤に対して着脱可能に構成されていると、造船場のような非常に大きな被溶接体(建造ブロック)に対して、溶接支援システムを比較的簡単に移動できるようになるので、被溶接体の溶接の進行具合に応じて、溶接支援システムをその建造時期における最も溶接に適した場所に移動できるので、溶接作業の効率をより向上することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の溶接支援システム及び溶接支援方法によれば、アーム式ハンドリング装置を使用して、ある程度の範囲の溶接範囲で溶接する場合に、溶接ワイヤ送給装置に加えて、溶接ワイヤ送り出し装置を複数備えることにより、一基のアーム式ハンドリング装置で複数の溶接機を使用して二段構えで送り出しすることができて、省スペースかつ抵コストで溶接ワイヤを効率よく複数の溶接機に送給でき、溶接作業の効率を著しく向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る実施の形態の溶接支援システムの構成を模式的に示す説明図である。
図2図1の溶接支援システムで溶接ワイヤ送り出し装置を載置台から取り外した場合と溶接ワイヤ送り出し装置を載置台と手元の2段階に配置した場合を模式的に例示する説明図である。
図3】溶接ワイヤ送り出し装置の構成を模式的に示す説明図である。
図4】比較例の溶接支援システムの構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態の溶接支援システムについて図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示すように、本発明に係る実施の形態の溶接支援システム1は、アーム式ハンドリング装置10を用いて、溶接ワイヤWを溶接場所に供給する溶接支援システム1である。
【0022】
図1及び図2に示すように、このアーム式ハンドリング装置10では、支柱11とこの支柱11に第1関節12を介して接続された第1アーム13と、この第1アーム13の先端に第2関節14を介して接続された第2アーム15と、この第2アーム15の先端に配置された載置台16とから構成されている。
【0023】
この第1アーム13は第1関節12により水平面内で旋回可能に取り付けられ、また、第2アーム15は、第2関節14により先端側が水平面内で首振り可能とされ、さらに、シリンダ15aにより載置台16を上下移動可能に構成している。また、さらに、必要に応じて、第1アーム13はテレスコピック構造にして伸縮可能すると、支柱11を中心にしてより広い範囲まで、載置台16を移動して配置することができるようになる。これらの構成により、このアーム式ハンドリング装置10では、載置台16を比較的簡単な構成で水平面内で旋回及び垂直面内で上下できて、作業員が操作し易い位置に配置することができる。
【0024】
そして、この溶接支援システム1では、溶接ワイヤWを収容しているワイヤホルダー31を着脱可能に備える溶接ワイヤ送給装置30に加えて、溶接ワイヤ送給装置30から供給された溶接ワイヤWを自動溶接機51、半自動溶接機52、及び手動溶接機53に送り出す溶接ワイヤ送り出し装置40を備えると共に、この溶接ワイヤ送り出し装置40を複数台(図1では3台)、載置台16に載置して構成する。つまり、二段階で溶接ワイヤWを溶接場所に送給する構成とする。また、載置台16から、溶接ワイヤWに加えて溶接用の電力供給配線Eと、溶接台車を駆動するための駆動用の電気配線eが、自動溶接機51及び半自動溶接機52のそれぞれに接続されている。
【0025】
なお、ここでは、手動溶接は、溶接範囲及び溶接方向の設定と溶接行為を人が行う溶接方法のことをいい、半自動溶接とは、溶接範囲と溶接方向の設定は人が決め、溶接行為は(溶接台車等)機械が行う溶接方法のことをいう。また、自動溶接は、溶接範囲及び溶接方向の設定と溶接行為を機械(溶接ロボット等)が行う溶接方法のことをいう。
【0026】
この構成によれば、25~30kgの溶接ワイヤ送給装置30に比べて、5kg程度と軽量な溶接ワイヤ送り出し装置40を載置台16に載置するので、2~6台程度の溶接ワイヤ送り出し装置40を特別な補強なしに載置することができる。
【0027】
また、この溶接機50としては、自動溶接機51、半自動溶接機52、手動溶接機53等があるが、特に、自動溶接機51若しくは半自動溶接機52と共に、並行して手動溶接機53にも溶接ワイヤWを供給するように構成した場合には、次のような効果を発揮できる。
【0028】
つまり、手動溶接機53を用いて手作業で仮付け作業を行ってから自動溶接機51もしくは半自動溶接機52をセットしてから、自動溶接もしくは半自動溶接を行うことが多い。また、自動溶接もしくは半自動溶接した後で手直し溶接したりすることもある。これらの手作業に対して、手動溶接機53にも溶接ワイヤWを供給することにより、これらの手動溶接機による溶接作業のために、溶接ワイヤ送給装置30からの溶接ワイヤWを自動溶接機51若しくは半自動溶接機52から手動溶接機53にセットし直したり、再度、手動溶接機53から自動溶接機51若しくは半自動溶接機52にセットし直したりすることが不要になる。これにより、溶接ワイヤWを、いちいち、自動溶接機51若しくは半自動溶接機52と、手動溶接機53との間でセットし直す手間が省けるので、溶接作業を向上させることができる。
【0029】
ここで、溶接ワイヤ送給装置30は、市販されている溶接ワイヤ送給装置を使用でき、溶接ワイヤWを挟持したローラー(図示しない)を電動モータ(図示しない)で回転させる溶接ワイヤWを引っ張り出して、ワイヤホルダー31の回転軸に巻回された溶接ワイヤWを繰り出す構造となっているため、15~20kgの溶接ワイヤWを収容しているワイヤホルダー31を備え、さらに、ローラーと電動モータがあるため、その重量は25kg~30kg程度となる。
【0030】
また、溶接ワイヤ送り出し装置40は、図3に示すように、バネ41の力Fsにより溶接ワイヤWを挟持したローラー42を電動モータ43で回転させることで溶接ワイヤWを送り出す構造であり、溶接ワイヤ送給装置30に比べて送り出す力も少なくてよいので、ローラー42及び電動モータ43が小さくて済み、その上に、ワイヤホルダー31を備えていないので、5kg程度の重さとなる。なお、図3では、電動モータ43の回転をモータ側プーリー43aからローラー側プーリー42aに伝動ベルト44で伝えているが、歯車機構など他の手段であってもよい。
【0031】
また、載置台16に溶接用電力供給コネクタ16aと駆動用電気供給コンセント16bを設けて、この溶接用電力供給コネクタ16aを経由して溶接機50に溶接用電力を供給し、また、この駆動用電気供給コンセント16bを経由して駆動用電源4から溶接ワイヤ送り出し装置40に電気(100V)を供給する。それと共に、溶接ワイヤ送り出し装置40を載置台16に対して着脱可能に設けて構成する。これにより、溶接の作業場所によっては、必要に応じて溶接ワイヤ送り出し装置40を載置台16から取り外して溶接現場により近い場所に移動して、溶接作業をより向上させる。
【0032】
また、溶接機50で消費する溶接用電力を供給する溶接電源装置(電流・電圧変換器)20は、100kg~200kg程度と重く、各溶接機50毎に1台必要であるので、溶接機50の溶接用電源(配電盤等)3を得易く、かつ、溶接工場などの溶接場所で邪魔にならない場所に配設される。そして、この溶接電源装置20からの溶接用電力を溶接機50に供給する溶接用電力供給線を載置台16経由で配線することが好ましい。これにより、溶接に必要な溶接ワイヤWの供給路と溶接用電力の供給路をほぼ同じ場所にすることができるようになり、溶接準備作業や点検作業や終了作業をまとめて行えるようになる。その結果、作業効率をより向上できる。
【0033】
そして、アーム式ハンドリング装置10を、溶接工場の基盤5に対して着脱可能に構成することが好ましい。この構成は、例えば、アーム式ハンドリング装置10の支柱11の下部の固定用突起11aを挿入固定できる支柱固定用孔2を幾つかの移動可能性のある場所に設けておき、クレーン(図示しない)でアーム式ハンドリング装置10を吊上げて固定用突起11aを支柱固定用孔2から抜き取り、次の場所の支柱固定用孔2に固定用突起11aを挿入して固定する構成等で容易に実現できる。
【0034】
この構成にすると、造船場のような非常に大きな被溶接体(建造ブロック)に対して、溶接支援システム1を比較的簡単に移動できるようになる。その結果、被溶接体の溶接の進行具合に応じて、溶接支援システム1をその時期の溶接場所に適した場所に移動できるようになるので、溶接作業の効率をより向上することができるようになる。
【0035】
また、溶接ワイヤ送給装置30は、アーム式ハンドリング装置10に取り付けて構成することが好ましく、これにより、溶接ワイヤWの供給経路の配置が単純化し、また、載置台16を移動しても溶接ワイヤ送給装置30及び溶接ワイヤWが邪魔にならなくなる。また、アーム式ハンドリング装置10をクレーンで移動するときに、同時に移動できるので、アーム式ハンドリング装置10の移動作業時の手間を少なくすることができる。
【0036】
図1の構成では、支柱11に取り付けている。この取り付け位置は第1アーム13より下の位置にすることにより、溶接ワイヤWを第1アーム13の下側に沿って這わせることが容易にできるようになる。また、第1アーム13は作業員がその下を通過できるように作業員の高さよりも高い位置に設けられることが多いので、溶接ワイヤ送給装置30のワイヤホルダー31の高さを作業員が着脱し易い位置に設け易くなる。
【0037】
そして、本発明の実施の形態の溶接支援方法は、第2アーム15の先端の載置台16を第1アーム13及び第2アーム15の旋回もしくは上下回転若しくは伸縮により移動するアーム式ハンドリング装置10を用いて、溶接ワイヤWを溶接場所に供給する溶接支援方法である。この溶接支援方法において、複数の溶接ワイヤ送給装置30のワイヤホルダー31から溶接ワイヤWを供給すると共に、これらの溶接ワイヤWを、載置台16に載置され、かつ、溶接ワイヤ送給装置30と同じ数の溶接ワイヤ送り出し装置40で中継及び送り出しを行うことにより、これらの溶接ワイヤWを溶接機50に送り出す方法である。
【0038】
上記の構成の溶接支援システム及び溶接支援方法によれば、一基のアーム式ハンドリング装置10の載置台16に一括で載置した2~6台程度の軽量な溶接ワイヤ送り出し装置40により中継及び送り出しを行って、複数の溶接ワイヤ送給装置30から供給される各溶接ワイヤWを各溶接機50に送ることができる。
【0039】
従って、これらの複数台の溶接ワイヤ送り出し装置40により、一基のアーム式ハンドリング装置10で、2~6台の溶接機50を使用できるようになる。そのため、図4の比較例に示すような、一基のアーム式ハンドリング装置10の載置台16に一台の溶接ワイヤ送給装置30を載置した溶接支援システム1Xに比べて、著しく、省スペースかつ低コストを維持しながら溶接作業の効率を向上できる。
【0040】
特に、手動溶接機53にも溶接ワイヤWを供給している場合には、手動溶接機53を用いて手作業で仮付け作業を行ってから、自動溶接機51もしくは半自動溶接機52をセッティングして自動溶接もしくは半自動溶接を行うことが多いので、また、自動溶接もしくは半自動溶接した後で、手直し溶接したりすることもあるので、これらの作業のために、いちいち手動溶接機53をセットし直す手間が省け、溶接作業を向上させることができる。
【0041】
次に、本発明の効果をより明確にするために、図4に示すような、アーム式ハンドリング装置10を用いた溶接支援システム1Xを比較例として示す。この溶接支援システム1Xのアーム式ハンドリング装置10は、本発明のアーム式ハンドリング装置10と同じである。
【0042】
このアーム式ハンドリング装置10では、載置台16の上に一台の溶接ワイヤ送給装置30を載置している。この溶接ワイヤ送給装置30は、溶接電源装置20からの電気供給を受けて、駆動モータ(図示しない)を駆動して溶接ワイヤWを挟持するローラー(図示しない)を回転させて溶接ワイヤWをワイヤホルダー31から繰り出させて、溶接機50に溶接ワイヤWを供給している。
【0043】
しかしながら、溶接作業の効率を向上させるために2台以上の溶接ワイヤ送給装置30をアーム式アンドリング装置10の載置台16に配置しようとすると、溶接ワイヤ送給装置30の重量が、10kg~15kgとなるワイヤホルダー31を備えているので約25kg~30kgとなっているため、構造的な強度が不足して載置できないという問題が生じる。これに対して、アーム式ハンドリング装置10を複数台配置しようとすると、隣接し合うアーム式ハンドリング装置10の第1アーム13及び第2アーム15が互いに干渉しないように大きな作業スペースが必要になるという問題が生じる。
【0044】
つまり、もっとも一般的に使用されているアーム式ハンドリング装置10を使用した場合には、低コスト、優れた省スペース性など多くのメリットがある反面、載置台16における許容荷重が小さく、搭載できる重量の制限があるというデメリットが存在する。そのため、ある溶接範囲内に複数の溶接機50を使用する場合には、使用する溶接機50の台数に比例して、アーム式ハンドリング装置10を溶接範囲の周辺に増設する必要があり、その分だけコスト増加及び占有スペースの増加に繋がり、このアーム式ハンドリング装置10のメリットを最大限に発揮できない。
【0045】
この図4の比較例の溶接支援システム1Xに比べて、本発明の構成の溶接支援システム1及び溶接支援方法では、複数の溶接ワイヤ送給装置30と、同じ数の溶接ワイヤ送り出し装置40を複数備えて、溶接ワイヤ送り出し装置40を載置台16に載置することにより、一基のアーム式ハンドリング装置10で複数の溶接機50を広範囲で使用することができて、省スペースかつ抵コストで溶接ワイヤWを効率よく複数の溶接機50に送給でき、溶接作業の効率を著しく向上できる。
【符号の説明】
【0046】
1、1X 溶接支援システム
2 支柱固定用孔
3 溶接用電源(配電盤等)
4 駆動用電源
5 基盤
10 アーム式ハンドリング装置
11 支柱
11a 固定用突起
12 第1関節
13 第1アーム
14 第2関節
15 第2アーム
15a シリンダ
16 載置台
16a 溶接用電力供給コネクタ
16b 駆動用電気供給コンセント
20 溶接電源装置(電流・電圧変換器)
30 溶接ワイヤ送給装置
31 ワイヤホルダー
40 溶接ワイヤ送り出し装置
50 溶接機
51 自動溶接機(溶接機)
52 半自動溶接機(溶接機)
53 手動溶接機(溶接機)
E 溶接用の電力供給配線
e 駆動用の電気配線
W 溶接ワイヤ
図1
図2
図3
図4