(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 45/06 20060101AFI20220124BHJP
B63B 27/14 20060101ALI20220124BHJP
B63B 45/04 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B63B45/06
B63B27/14 101A
B63B27/14 102
B63B45/04
(21)【出願番号】P 2018137688
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤田 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】藤原 行久
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-104983(JP,A)
【文献】特開2015-085910(JP,A)
【文献】実開昭62-016594(JP,U)
【文献】特開昭61-257390(JP,A)
【文献】特開平03-266792(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104670433(CN,A)
【文献】特開2005-186752(JP,A)
【文献】特開2017-105229(JP,A)
【文献】特開2017-095043(JP,A)
【文献】特開2017-095042(JP,A)
【文献】米国特許第05416670(US,A)
【文献】米国特許第02341866(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1698728(KR,B1)
【文献】中国実用新案第205168821(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 45/06
B63B 27/14
B63B 45/04
B63B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船橋と、暴露甲板上に設けられた車両通行路と、信号灯を備え、前記船橋から見た前記信号灯に対する見通し線を含む鉛直面と前記車両通行路とが交差する船舶において、
前記車両通行路に、車両が前記車両通行路を通行する場合には、車両が通行可能な位置で、かつ、前記信号灯を使用する際には、前記船橋から視認可能な位置に前記信号灯が設けられ
、
前記信号灯を備える前記車両通行路は、ランプウェイであり、
前記信号灯は、前記ランプウェイの格納時に船内側となる車両通行面に設けられていることを特徴とする、船舶。
【請求項2】
船橋と、暴露甲板上に設けられた車両通行路と、信号灯を備え、前記船橋から見た前記信号灯に対する見通し線を含む鉛直面と前記車両通行路とが交差する船舶において、
前記車両通行路に、車両が前記車両通行路を通行する場合には、車両が通行可能な位置で、かつ、前記信号灯を使用する際には、前記船橋から視認可能な位置に前記信号灯が設けられ、
前記
信号灯を備える前記車両通行路は、複数枚の橋板の端部をヒンジ結合した折り畳み式のランプウェイであり、
前記ランプウェイの折り畳み状態で上側となる少なくとも一つのヒンジで、
一方側の前記橋板のヒンジ結合された一方の端部に、前記信号灯を備えるトーチが設けられると共に、前記ランプウェイの折り畳み状態では前記トーチが前記一方の端部の上部に突出し、前記ランプウェイの展開状態では前記トーチが他方側の前記橋板の凹部に収容されることを特徴とす
る船舶。
【請求項3】
前記信号灯は、該信号灯と前記船橋を結ぶ線が平面視で自船の中心線と平行になる位置であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記信号灯は、自船の船首方向を示す操舵目標灯であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記信号灯は、自船の目標とする針路又は実際の移動方向である進路を示す信号灯であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
船橋と、暴露甲板上に設けられた車両通行路と、信号灯を備え、前記船橋から見た前記信号灯に対する見通し線を含む鉛直面と前記車両通行路とが交差する船舶において、
前記車両通行路に、車両が前記車両通行路を通行する場合には、車両が通行可能な位置で、かつ、前記信号灯を使用する際には、前記船橋から視認可能な位置に前記信号灯が設けられ、
複数の前記信号灯を有し、複数の前記信号灯は、文字又は図形を表示するように配列されていることを特徴とす
る船舶。
【請求項7】
船体の上下動に対して前記信号灯の上下動を減衰する減衰機構を有する保持部を備えることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶に関する。特に暴露甲板上に設けられた車両通行路と、船橋から見た信号灯に対する見通し線を含む鉛直面とが交差する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
揚陸用の船舶、カーフェリー、RO-RO(Roll-On/Roll-Off)船のように、車両を自走で搭載/揚陸する船舶では、甲板上に車両通行路を備えている。揚陸用の船舶においては、車両通行路として、船首側に車両甲板および自船と岸壁等との間を橋渡しする架橋構造の傾斜路であるランプウェイを備えた構造が知られている(特許文献1)。
【0003】
船舶には、マスト灯、舷灯、船尾灯のような、夜間航行時に自船の位置や進行方向等を相手船に知らせるための信号灯が設けられる。操舵目標灯のように、夜間航行時に、操船者が操舵の目標にして自船の位置方向を目測するための信号灯も設けられる(特許文献2)。
【0004】
車両通行路を備える船舶においては、船橋から見た信号灯に対する見通し線を含む鉛直面が車両通行路と交差する場合、車両の通行を妨げない位置(車両が通行可能な位置)に信号灯を設ける必要がある。車両通行路が船内の甲板に設けられる場合、当該船内の甲板の上方の暴露甲板上に信号灯を設ければ車両の通行を妨げる恐れはない。しかしながら、車両通行路が暴露甲板に設けられている場合、車両の通行を妨げない位置に信号灯を設けるための構造が必要となる。
【0005】
このような構造としては、車両通行路の上方に橋を架け渡し、橋の上に信号灯を設けた構造が知られている。
図11の比較例の模式的な図で示すように、船首101側の暴露甲板109にランプウェイ103を備えた揚陸用船舶100を例に、このような構造を説明する。
【0006】
図11では、船橋105から見て船首101側に信号灯としての操舵目標灯107が設けられている。具体的には、船首側両舷に対向する構造物109a、109bを跨ぐように門型の橋111を架け渡たし、その上にマスト113を設け、マスト113の頂上に操舵目標灯107を設けている。夜間航行時には、操船者は操舵目標灯107からの照明を視認することにより、操舵の目標とする灯火を把握しながら操船する。
揚陸の際は、ランプウェイ103を展開して岸壁に接地し、暴露甲板109およびランプウェイ103上を、車両を通行させることで、車両を揚陸させる。この際、暴露甲板109と橋111の間を車両が通行できるので、操舵目標灯107が車両の通行を妨げることはない。
【0007】
しかしながら、
図11のように、橋111を架け渡して操舵目標灯107を設ける構造では、橋111の重量分だけ、船体の重量が増えるという問題があった。また、橋111を車両通行路としての暴露甲板109の上方に設ける必要があるため、船橋105からの船首101方向の前方視界が悪化するという問題があった。加えて、最大車高が暴露甲板109から橋111までの高さ以上の車両は橋111の下を通行できないため、搭載できる車両にも最大車高の制限が設けられる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-094999号公報
【文献】実開昭59-128495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、船橋から見た信号灯に対する見通し線を含む鉛直面が車両通行路と交差する場合であっても、重量の増加や、船橋視界の悪化を抑制できる船舶の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の船舶は、船橋と、暴露甲板上に設けられた車両通行路と、信号灯を備え、前記船橋から見た前記信号灯に対する見通し線を含む鉛直面と前記車両通行路とが交差する船舶において、前記車両通行路に、車両が前記車両通行路を通行する場合には、車両が通行可能な位置で、かつ、前記信号灯を使用する際には、前記船橋から視認可能な位置に前記信号灯が設けられ、前記信号灯を備える前記車両通行路は、ランプウェイであり、前記信号灯は、前記ランプウェイの格納時に船内側となる車両通行面に設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、この信号灯は車両が通行可能な位置にあり、信号灯を使用する際には、船橋から視認可能な位置にあるため、車両通行路よりも上方に、信号灯を設置するための橋等の構造物を設ける必要がなく、船橋視界の悪化を抑制できる。
また、信号灯を車両通行路に設置するため、信号灯を設置するための橋等の構造物を別途設ける必要がない、そのため、信号灯を設けたことによる重量の増加を抑制できる。
加えて、車両通行路の上方に構造物を設ける必要がないので、このような構造物の高さに起因する、搭載できる車両の最大車高制限をなくすことができる。
さらに、この構成によれば、航行時に格納されたランプウェイは、通常、暴露甲板よりも高い位置に保持されるため、信号灯の位置を高い位置に配置することができ、船橋からの信号灯の視認性を向上させることができる。
また、この構成によれば、信号灯がランプウェイの格納時にランプウェイの船内側となる車両通行面に設けられているため、信号灯を船橋からより視認し易い位置に配置することができるようになる。
さらに、信号灯が、ランプウェイの船内側の車両通行面に設けられているため、信号灯が発する光がランプウェイや両舷の船体構造物によって遮られることで、容易に船橋からは視認できるが、他船からは他の信号灯と区別するため、ランプウェイに設けた信号灯を視認しがたい状態にすることができる。信号灯の用途によっては他船からは視認し難いようにした用途もあるため、他船に視認されたくない信号灯を設ける場合に特にこの構成は有利である。
【0013】
本発明の船舶は、船橋と、暴露甲板上に設けられた車両通行路と、信号灯を備え、前記船橋から見た前記信号灯に対する見通し線を含む鉛直面と前記車両通行路とが交差する船舶において、前記車両通行路に、車両が前記車両通行路を通行する場合には、車両が通行可能な位置で、かつ、前記信号灯を使用する際には、前記船橋から視認可能な位置に前記信号灯が設けられ、前記信号灯を備える前記車両通行路は、複数枚の橋板の端部をヒンジ結合した折り畳み式のランプウェイであり、前記ランプウェイの折り畳み状態で上側となる少なくとも一つのヒンジで、一方側の前記橋板のヒンジ結合された一方の端部に、前記信号灯を備えるトーチが設けられると共に、前記ランプウェイの折り畳み状態では前記トーチが前記一方の端部の上部に突出し、前記ランプウェイの展開状態では前記トーチが他方側の前記橋板の凹部に収容されていることを特徴とする。
この構成によれば、ランプウェイの折り畳み時に、高い位置となるヒンジ結合された一方の端部の上方にトーチが突出するように信号灯を設けているため、ランプウェイが折り畳み状態では、ランププウェイの最上部等の高い位置となるヒンジ結合された端部から、トーチの長さ分だけ高い位置に信号灯が設けられる。そのため、信号灯を暴露甲板および折り畳み状態のランプウェイのヒンジ結合された端部より高い位置に設けることができ、船橋からの視認性を向上させられる。
また、折り畳み式のランプウェイを設けることにより、揚陸可能な岸壁の高さの範囲が単板ランプウェイよりも広くなり、揚陸船としての用途を拡大できる。
【0014】
本発明では、前記信号灯は、該信号灯と前記船橋を結ぶ線が平面視で自船の中心線と平行になる位置に設けてもよい。
この構成によれば、信号灯による指示方向が自船の針路を示すため、信号灯が操舵目標灯のように、自船の船首方向を示すのが好ましい照明である場合に、特に有利である。
【0015】
本発明では、前記信号灯は、自船の船首方向を示す操舵目標灯であってもよい。
この構成によれば、船橋から見た操舵目標灯の指示方向は船首側の幅方向に関しての中央になる場合が多いので、車両通行路と重なる場所に設けられる場合が多い。そのため、信号灯が、車両が通行可能な位置でかつ、信号灯を使用する際には、船橋から視認可能な位置に配置された本発明の構成は、信号灯が操舵目標灯である場合に特に有利である。
【0016】
本発明では、前記信号灯は、自船の目標とする針路又は実際の移動方向である進路を示す信号灯であってもよい。
この構成によれば、信号灯が針路又は進路を示すため、操舵の際の前方監視時に、コンパスやジャイロなどを見なくても、自船の針路又は進路を確認することができるようになる。
【0017】
本発明の船舶は、船橋と、暴露甲板上に設けられた車両通行路と、信号灯を備え、前記船橋から見た前記信号灯に対する見通し線を含む鉛直面と前記車両通行路とが交差する船舶において、前記車両通行路に、車両が前記車両通行路を通行する場合には、車両が通行可能な位置で、かつ、前記信号灯を使用する際には、前記船橋から視認可能な位置に前記信号灯が設けられ、複数の前記信号灯を有し、複数の前記信号灯は、文字又は図形を表示するように配列されていることを特徴とする。
この構成によれば、信号灯は、文字又は図形を表示するように配列されるため、単独で点灯させる場合と比べて、何らかの要因で一部の信号灯に対して船橋からの視界が遮られても、残りの信号灯を船橋から視認することにより、信号灯の指示方向を確認し続けることができる。さらに、より多くの情報を船橋の操船者に提供できる。また、点灯させる信号灯の組み合わせを変えることにより、文字や図形を変化させることができるため、船舶の航行状況に応じて必要な情報を、その都度船橋の操船者に提供できる。
【0018】
本発明では、船体の上下動に対して前記信号灯の上下動を減衰する減衰機構を有する保持部を備えてもよい。
本発明では信号灯の上下動が減衰されるため、荒天で船舶の揺れが大きくなった場合でも、信号灯の上下位置が極端に大きく変動することがない。そのため、操舵者が信号灯を視認し易くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、船橋から見た信号灯に対する見通し線を含む鉛直面が車両通行路と交差する場合であっても、重量の増加や、船橋視界の悪化を抑制できる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る船舶の構成を模式的に示す側面断面図である。
【
図2】
図1の船首付近の斜視図であって、右舷上方から船首側を見た図である。
【
図3】
図2の信号灯近傍のランプウェイの厚さ方向断面図であって、信号灯は側面図で表す。
【
図6】
図2に示す状態からランプウェイを展開した状態を示す斜視図であって、右舷上方から船尾側を見た図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る船舶の船首付近の斜視図であって、右舷上方から船首側を見た図である。
【
図8】
図7に示す状態から折り畳み式のランプウェイを展開した状態を示す斜視図であって、右舷上方から船尾側を見た図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る船舶の船首付近の斜視図であって、右舷上方から船首側を見た図である。
【
図11】従来技術に係る船舶の構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず、
図1および
図2を参照して、第1の実施形態に係る船舶の構成の概要を説明する。
図1では、揚陸用の船舶1が例示されている。船舶1は海岸や川岸等の陸地に対して船首側から乗り上げるようにしてビーチング(揚陸)して、船首が乗り上げた状態、又は接岸した状態で、搭乗員や車両を船首から揚陸させる揚陸船である。
【0022】
図1に示すように、船舶1は、船体3、船橋5、暴露甲板7、ランプウェイ9、信号灯11等を備える。
船体3は、船底14、側壁12、および車両通行路としての暴露甲板7およびランプウェイ9を備えて、これらに囲まれて構成されている。
暴露甲板7は上側に天井が無く解放されている甲板であり、ここでは船橋5から船首2に達し、車両200を積載及び車両200の通行に使用される車両甲板として構成されている。
【0023】
ランプウェイ9は、揚陸時に陸地にかけられる可動式の橋であり、この第1の実施形態の船舶1では、船首端に設けられた1枚の橋板からなる単板ランプウェイである。ランプウェイ9は、ここでは、暴露甲板7の船首2側前端と、ヒンジ20で、
図1のA1、A2の向きに回動可能に連結される。
ランプウェイ9の船体3側の表面は、
図2に示すように、揚陸時に車両200が通行する車両通行面16となる。
ランプウェイ9の車両通行面16には信号灯11が設けられる。
図1に示すように、信号灯11は、船橋5から見た信号灯11に対する見通し線Bを含む鉛直面と車両通行路とが交差する位置になるように設けられる。見通し線Bが船幅方向中央部に沿った方向である場合、当該鉛直面は
図1の紙面に平行な面になる。
【0024】
船橋5は船員が操船する場所であり、ここでは、暴露甲板7より上方で、船尾4側に設けられる。
【0025】
船体3の船橋5よりも船尾4側には、船体3を推進するためのプロペラ13が、また、プロペラ13の後方には舵15が設けられる。
以上が船舶1の構成の概要の説明である。
【0026】
次に、
図1~
図6を参照して、信号灯11の構成について、より詳細に説明する。
図2に示すように、信号灯11はランプウェイ9の格納時に船内側となる車両通行面16に設けられている。信号灯11は、
図3に示すように、光源が収められた点灯部11aと、点灯部11aをランプウェイ9に保持する保持部11bを備える。
【0027】
図3に示すように、信号灯11は、ランプウェイ9の車両通行面16側に設けられた窪み9a内に、保持部11bを介して、設けられる。ランプウェイ9に窪み9aを設けるだけで信号灯11を設置できるので、信号灯11を設けることによる重量の増加や、船橋視界の悪化を抑制できる。
信号灯11の高さHsは、
図3に示すように窪み9aの高さHcを超えない高さであり、揚陸時にランプウェイ9を展開して車両200がランプウェイ9の車両通行面16を通行する場合には、車両通行面16の表面から信号灯11が突出しない構成となっているのが好ましい。このような構成とすることにより、車両200がランプウェイ9を通過する際に、信号灯11と接触するのを防ぐことができる。
ただし、信号灯11は必ずしも車両通行面16の表面から突出しない構成にする必要はない。車両通行面16の表面からの信号灯11の突出高さが車両200の最低地上高未満であり、かつ車両200のタイヤや履帯と接触しない位置に信号灯11を設ける場合は、信号灯11が車両通行面16の表面から突出した構成でもよい。
【0028】
信号灯11の位置は、船橋5から見た信号灯11に対する見通し線Bを含む鉛直面と車両通行路とが交差し、かつ信号灯11を使用する際に船橋5から視認可能な位置であれば、特に限定されない。
図2では、信号灯11は、該信号灯11と船橋5を結ぶ線が平面視で船舶1の中心線Lcと平行になる位置に設けられている。この位置とすることにより、信号灯11が自船の船首方向を示す操舵目標灯のように、車両通行路と重なりやすい場所に設けられることが多い照明の場合に、特に有利である。
信号灯11の高さ方向の位置は、ある程度高い方が船橋5から視認しやすいので、ランプウェイ9の船首側端部10aの近傍が好ましい。航行時に格納された状態のランプウェイ9は、船首側端部10aが持ち上がるように暴露甲板7よりも高い位置に保持されるため、船首側端部10aが最も高い位置になるためである。
【0029】
信号灯11の種類は特に限定されない。マスト灯、舷灯、船尾灯のような、夜間航行時に自船の位置や進行方向等を相手船に知らせるための照明でもよいし、夜間航行時に、操船者が操舵の目標にして自船の船首方向を目測するための照明でもよい。
【0030】
信号灯11の数は特に限定されない。
図2では信号灯11の数は1つであるが、複数あってもよい。1つの信号灯11のみを設ける場合と比べて、積載した車両200の突出部やゴミ等が信号灯11に被さる等の、何らかの要因で、一部の信号灯11に対して船橋5からの視界が遮られても、残りの信号灯11を船橋5から視認することにより、信号灯11の指示方向を確認し続けることができる。
【0031】
信号灯11を複数設ける場合、
図4に示すように、水平方向に複数配列し、自船の船首方向に加えて、あるいは、これとは別に、自船の目標とする針路と、自船の実際の移動方向である進路を各々点灯する構成としてもよい。
図4では、複数配列された信号灯11のうち、水平方向中央に位置する中央信号灯12aが自船の船首方向を示す操舵目標灯として、夜間航行時は常時点灯する。中央信号灯12a以外の複数の信号灯12bは、自船の目標とする針路又は/及び自船の実際の移動方向である進路を示すものであり、針路又は/及び進路に対応する位置にあるそれぞれ1つの信号灯12bが点灯し、他の信号灯12bは消灯する。自船の船首方向が自船の目標とする針路又は/及び実際の移動方向である進路が一致する場合は、針路又は/及び進路を示すいずれの信号灯12bも点灯しない。
図4では、中央信号灯12aから数えて右舷側2つめの信号灯12bが針路を示して点灯しているため、目標針路が自船の船首方向よりも右舷側であることがわかる。
このように、信号灯11が自船の目標とする針路又は/及び実際の移動方向である進路を示す構成とすることにより、操船者が夜間航行の際の前方監視時に、コンパスやジャイロなどを見なくても、自船の針路又は進路を確認することができるようになる。
【0032】
信号灯11を複数設ける場合、
図5に示すように、所望の文字や図形、ここでは船橋5から見た船舶1の船首方向(自船の移動方向)を示す矢印等を描くような配列としてもよい。より多くの情報を船橋5の操船者に提供できる。
信号灯11をマトリクス状に配列し、点灯する信号灯11の組み合わせを変更することにより、表示される文字や図形を変化させてもよい。点灯させる信号灯11の組み合わせを変えることにより、船舶1の航行状況に応じて必要な情報を、その都度、船橋5の操船者及び車両200の運転者などの搭乗者に提供できる。
【0033】
信号灯11の光源は特に限定されない。LEDでもよいし、白熱電球やハロゲンランプでもよい。
信号灯11の大きさや光源の出力も特に限定されない。船橋5から視認できる程度の光を照射する大きさや出力を備えていればよい。
【0034】
信号灯11は、車両200がランプウェイ9を通行する場合に、車両200の通行を妨げなければ、必ずしもランプウェイ9と一体化して固定する必要はない。例えば、保持部11bに、船体3の上下動に対して信号灯11の上下動を減衰する、ダンパー等の減衰機構を有してもよい。
保持部11bが減衰機構を有することにより、信号灯11の上下動が減衰されるため、荒天で船舶1の揺れが大きくなった場合でも、信号灯11の上下位置が極端に変動することがない。そのため、操舵者が信号灯11を視認しやすくなる。
以上が信号灯11の構成の詳細な説明である。
【0035】
次に、航行時および揚陸時のランプウェイ9の動作について、簡単に説明する。
航行時のランプウェイ9は、
図2に示すように、格納された状態となる。具体的には、搬送口9d(
図6参照)を塞ぐように、
図2のA2の向きにヒンジ20を中心に回転し、所定の回転角で保持される。
信号灯11は、ランプウェイ9の船内側の車両通行面16に設けられているため、ランプウェイ9が格納された状態では、信号灯11は船尾側を向く。そのため、信号灯11が発する光は、船尾側に設けられた船橋5から容易に視認できる。
【0036】
一方で、信号灯11が発する光は、ランプウェイ9、および両舷の船体構造物である側壁12によって遮られることで、他船からは視認しがたい。
信号灯11の用途によっては他船から他の信号灯と区別するため、ランプウェイ9に設けた信号灯11を視認し難いようにした用途もあるため、他船に視認されたくない信号灯11を設ける場合に特にこの構成は有利である。
【0037】
揚陸時のランプウェイ9は、
図2の状態からヒンジ20を中心にA1の向きに回転して、図示しない岸壁に接地する。
この状態では、
図6に示すように搬送口9dが開くため、暴露甲板7およびランプウェイ9上を、船内の車両200を通行させることにより、揚陸させる。この際、車両200は信号灯11の上方を通過するが、信号灯11は、車両通行面16の表面から突出しない位置にあるため、車両200が信号灯11に接触する恐れはない。
【0038】
このように、第1の実施形態によれば、信号灯11がランプウェイ9において、車両200がランプウェイ9を通行する場合に、船橋5から見た信号灯11に対する見通し線Bを含む鉛直面がランプウェイ9の車両通行面16と交差する場合でも、車両200の通行を妨げない位置(車両200が通行可能な位置)に設けられている。そのため、
図11に示す従来技術の揚陸用船舶100のように、ランプウェイ9よりも上方に、信号灯11を設置するための橋111等の構造物を設ける必要がなく、船橋視界の悪化を抑制できる。
また、信号灯11を設置するための橋111等の構造物を別途設ける必要がないため、信号灯11を設けたことによる重量の増加を抑制できる。
加えて、車両通行路の上方に構造物を設ける必要がないので、このような構造物の高さに起因する、搭載できる車両200の最大車高制限をなくすことができる。
【0039】
次に、第2の実施形態について、
図7~
図9を参照して説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において、ランプウェイ9に代えて、2枚の橋板21a、21bの端部をヒンジ結合した折り畳み式のランプウェイ21を備え、橋板21aのヒンジ結合した端部に信号灯11を設けたものである。
なお、第2の実施形態については、ランプウェイ21以外の船舶1aの構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の番号を付して、説明を省略する。
【0040】
まず、ランプウェイ21の構成について、説明する。
図7および
図8に示すように、第2の実施形態に係る船舶1aは、ランプウェイ21を備える。
このランプウェイ21は折り畳み式で、ランプウェイ21の折り畳み状態で上側となるヒンジ26の両側で、橋板21a(一方の橋板とも称す)、および橋板21b(他方の端板とも称す)を備える。
【0041】
橋板21aは、
図8に示す搬送口9dを塞ぐことができる、搬送口9dと同程度の寸法の矩形の部材であり、ランプウェイ9の展開時に船尾側となる船尾側端部23が、暴露甲板7の船首端にヒンジ(図示せず)で
図7および
図8のA1、A2の向きに回動可能に連結される。船尾側端部23と対向する端部である船首側端部25は、橋板21bとヒンジ26で
図7のA1、A2の向きに回動可能に連結される。
【0042】
図8に示すように、船首側端部25には、柱状のトーチ17が、ランプウェイ21を展開した状態での船首方向に向けて突設されている。トーチ17の先端には信号灯11が設けられている。トーチ17は、橋板21aの車両通行面16よりも窪んだ位置に設けられる。
【0043】
橋板21bは、橋板21aと同程度の寸法の矩形の部材であり、橋板21aの船首側端部25と対向する船尾側端部27が、橋板21bの船首側端部25とヒンジ26で
図7のA1、A2の向きに回動可能に連結される。船尾側端部27は、
図8に示すようにランプウェイ21を展開した状態でトーチ17と重なる位置に、トーチ17を収納する凹部30を備える。凹部30は、トーチ17を収容可能な寸法の切欠き又は窪みである。
図7および
図8のランプウェイ21は2枚の橋板21a、21bをヒンジ結合しているが、3枚以上の橋板をヒンジ結合してもよい。この場合、ヒンジ結合された橋板の端部が複数組設けられるが、そのうち、ランプウェイ21が収納された状態で上側に位置する端部にトーチ17が設けられる。
以上がランプウェイ21の構成の説明である。
【0044】
次に、航行時および揚陸時のランプウェイ21の動作について、簡単に説明する。
航行時のランプウェイ9は、
図7に示すように、橋板21aと橋板21bが折り畳み状態となる。具体的には、橋板21aが
図8に示す搬送口9dを塞ぐように、図示しないヒンジを中心にA2の向きに回転し、所定の回転角で保持される。さらに、橋板21bがヒンジ26を中心に、
図7のA1の向きに回転して、ヒンジ結合された部分(船首側端部25と船尾側端部27)が上を向くように固定される。
【0045】
この状態では、トーチ17は船首側端部25から上方に突出した位置で保持されるため、信号灯11が発する光は、船尾側に設けられた船橋5から視認できる。
また、ランプウェイ21が閉じて格納された状態では最上部となる船首側端部25から、トーチ17の長さ分だけ高い位置に信号灯11が設けられる。そのため、信号灯11を暴露甲板7およびランプウェイ21より高い位置に設けることができ、船橋5からの視認性を向上させることができる。
【0046】
揚陸時のランプウェイ21は、
図7の格納状態から橋板21aが図示しないヒンジを中心にA1の向きに回転する。さらに、橋板21bがヒンジ26を中心にA2の向きに回転して、
図8に示すように、橋板21a、21bの車両通行面16が上を向いた状態となり、橋板21bが図示しない岸壁に接地する。この状態を展開状態ともいう。この際、トーチ17は凹部30に収容され、橋板21a、21bの車両通行面16よりも窪んだ位置に保持される。
【0047】
この展開状態では、搬送口9dが開くため、船内の車両200は暴露甲板7およびランプウェイ21の橋板21a、21b上を通行して揚陸できる。揚陸の際に、車両200は信号灯11の上方を通過する。この際、
図9に示すように、信号灯11を含むトーチ17の高さDtは、橋板21bの凹部30の深さDcよりも低く構成されているので、信号灯11は車両通行面16から突出しない。そのため、車両200は信号灯11の上方を通過する際に車両200が信号灯11に接触する恐れはない。
以上が航行時および揚陸時のランプウェイ21の動作の説明である。
【0048】
このように、第2の実施形態によれば、信号灯11がランプウェイ21の車両通行面16から突出しない位置に設けられており、第1の実施形態と同等の効果を奏する。
また、複数枚の橋板21a、21bをヒンジ結合した折り畳み式のランプウェイ21を設けることにより、揚陸可能な岸壁の高さの範囲が単板のランプウェイ9よりも広くなり、揚陸船としての用途を拡大できる。
【0049】
次に、第3の実施形態について、
図10を参照して説明する。
第3の実施形態では、ランプウェイ9ではなく、船首艤装品のクレーン31に信号灯11を一体化したものである。
なお、第3の実施形態については、クレーン31以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の番号を付して、説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、第3の実施形態に係る船舶1bは、左舷側の側壁12の、船首2付近の上面にクレーン31が設けられている。クレーン31は、ここではジブクレーンが例示されており、信号灯11が設けられている。
図10のクレーン31は、基部33、マスト35、ジブ37、吊り上げ装置39を備える。
【0051】
基部33はクレーン31を側壁12に保持する部材であり、マスト35を水平方向(
図10のD1、D2の向き)に旋回させる図示しない旋回機構を備える。マスト35は基部33から鉛直方向に立ち上がるように設けられた柱状の部材であり、ジブ37を保持する。ジブ37はマスト35の上端から水平方向に突き出すように設けられた梁であり、吊り上げ装置39を保持する。
吊り上げ装置39は、荷役の吊り上げに用いる装置であり、図示しないウインチ等の巻き上げ機構を備える。
【0052】
ジブ37の先端には、信号灯11が一体化される。ジブ37の旋回角度を調整することによって、信号灯11は、車両通行路の上方に移動することも、車両通行路の上方から外れる位置に移動することもできる。
【0053】
たとえば、
図10の実線で示す位置にジブ37を移動させた場合、信号灯11は、車両通行路の上方に移動する。
図10の破線に示す位置にジブ37を移動させた場合、信号灯11は車両通行路の上方から外れた位置に移動する。
以上がクレーン31の構成の説明である。
【0054】
次に、航行時および揚陸時のランプウェイ9およびクレーン31の動作について、簡単に説明する。
航行時のランプウェイ9は、
図10に示すように、収納された状態となる。
この状態では、クレーン31のジブ37を旋回させ、
図10の実線で示す位置に移動させる。この状態では、信号灯11の位置が、車両通行路の上方で保持されるため、信号灯11が発する光は、船尾側に設けられた船橋5から視認できる。
【0055】
この状態では、車両通行路を車両200が通行すると信号灯11と接触する可能性があるが、航行時の車両200は、船舶1の揺れによって転倒したり、他の車両200や船体構造物に衝突したりするのを防ぐために、航行時には移動しない。ロープやワイヤ等で車両200を暴露甲板7に固定し、移動できない状態にする場合も多い、そのため、実際には信号灯11と接触する恐れはない。
【0056】
揚陸時には、ランプウェイ9を、
図10の状態から、第1の実施の形態の船舶1と同様に、
図1、
図2及び
図6に示すように、ヒンジ20を中心にA1の向きに回転させ、図示しない岸壁に接地させる。
この状態では、搬送口9dが開くため、船内の車両200は、暴露甲板7およびランプウェイ9上を通行して揚陸できる状態になる。
さらに、車両200が通行する前に、クレーン31のジブ37を図示しない旋回機構を用いて旋回させ、
図10の破線で示す位置に移動させる。その後、車両200を揚陸させる。
この状態では、信号灯11の位置が、車両通行路(暴露甲板7およびランプウェイ9)の上方から外れるため、通行中の車両200が信号灯11に接触する恐れはない。
【0057】
信号灯11が操舵目標灯のように、航行中は車両通行路の上方に位置するべき照明である場合、夜間航行中に破線で示す位置に信号灯11が位置すると、破線で示す位置が車両通行路の上方であると操船者が誤認し、船舶1の進路を誤認する可能性がある。しかしながら、揚陸時の船舶1bは航行中ではなく停船しており、操舵の目標は必要ないので、通常は、信号灯11は消灯する。そのため、破線で示す位置に信号灯11が位置しても、揚陸に支障はない。
【0058】
このように、信号灯11はランプウェイ9、21ではなく、クレーン31のような艤装品と一体化してもよい。
以上が航行時および揚陸時のランプウェイ9およびクレーン31の動作の説明である。
【0059】
このように、第3の実施形態によれば、信号灯11がクレーン31に設けられているので、第1の実施形態と同等の効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 :船舶
1a :船舶
1b :船舶
2 :船首
3 :船体
4 :船尾
5 :船橋
7 :暴露甲板
9 :ランプウェイ
9a :窪み
9d :搬送口
10a :船首側端部
11 :信号灯
11a :点灯部
11b :保持部
12 :側壁
12a :中央信号灯
12b :信号灯
13 :プロペラ
14 :船底
15 :舵
16 :車両通行面
17 :トーチ
20 :ヒンジ
21 :ランプウェイ
21a :橋板
21b :橋板
23 :船尾側端部
25 :船首側端部
26 :ヒンジ
27 :船尾側端部
30 :凹部
31 :クレーン
33 :基部
35 :マスト
37 :ジブ
39 :吊り上げ装置
100 :揚陸用船舶
101 :船首
103 :ランプウェイ
105 :船橋
107 :操舵目標灯
109 :暴露甲板
109a :船体構造物
109b :構造物
111 :船体橋
113 :マスト
200 :車両