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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】洗浄器
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
B08B3/02 Z
B08B3/02 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017212182
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019084468
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 俊郎
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-220005(JP,A)
【文献】特開2000-051135(JP,A)
【文献】特開2002-000532(JP,A)
【文献】特開2006-204325(JP,A)
【文献】特開平11-047064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00- 3/14
A47L15/00-15/50
A61L 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物が収容される洗浄槽と、この洗浄槽内の被洗浄物へ液体を噴射する洗浄ノズルと、前記洗浄槽の底面を構成する傾斜面の下端縁と連接された液貯留部とを備え、
前記液貯留部の開口縁の高さよりも上方および下方へ延出したバッフル板が前記液貯留部の開口縁から所定間隔をあけて設けられることで、前記洗浄槽の底面の傾斜面を介して前記液貯留部へ流れ込む前記液体を前記液貯留部の壁側に制限させ、
前記洗浄槽と前記液貯留部との間は、網材または多孔板から構成される仕切材で仕切られ、
この仕切材に、前記バッフル板が保持されている
ことを特徴とする洗浄器。
【請求項2】
前記洗浄槽の底面は、前記液貯留部の開口縁の全周または全辺と連接されており、
前記バッフル板は、前記液貯留部の開口縁の全周または全辺と対向して設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄器。
【請求項3】
前記液貯留部の底面の中心より偏心した位置には、前記液貯留部の液体を前記洗浄ノズルへ循環供給する循環口が形成され、
前記バッフル板は、前記液貯留部の循環口に近い位置のみ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄器。
【請求項4】
前記液貯留部には、前記仕切材よりも下方にストレーナが設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物に液体を噴射して洗浄する洗浄器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、噴射式の洗浄器が知られている。当該文献の図面に基づき説明すると、洗浄器は、被洗浄物が収納される洗浄槽(211)と、被洗浄物が載置されるラック(30)と、洗浄水の噴射口(341)が設けられてラックの中央部で回転する洗浄ノズル(34)とを備える。送水ポンプ(221)を作動させると、貯水槽(222)の洗浄水は、洗浄ノズル(23,34)へ供給され、洗浄ノズル(23,34)の噴射口(341)から噴射されることで、被洗浄物を洗浄すると共に、洗浄ノズル(23,34)を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-149013号公報(請求項1、段落[0027]-[0029]、図1図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の洗浄器において、洗浄水の使用量を減らすことができれば、単に給水量を削減できるだけでなく、給水に薬液を投入する場合には薬液投入量を削減できる他、給水を加熱して温水とする場合には加熱量を削減することもできる。
【0005】
ところが、洗浄槽下部の液貯留部(貯水槽)の貯水量を単に減らすと、循環ポンプにエアがみを起こすおそれがある。特に、前記特許文献1に開示される洗浄器では、洗浄槽内の下部全体が液貯留部とされ、洗浄ノズルからの噴射液の全量が液面に直に落ちることになり、液貯留部で気泡が生じやすく、その気泡を循環ポンプが吸い込むことでエアがみが生じやすい。そのため、エアがみ防止の観点から、液貯留部の貯水量を削減することができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、ポンプでのエアがみを防止しつつ、水や薬液などの使用量を削減できる洗浄器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被洗浄物が収容される洗浄槽と、この洗浄槽内の被洗浄物へ液体を噴射する洗浄ノズルと、前記洗浄槽の底面を構成する傾斜面の下端縁と連接された液貯留部とを備え、前記液貯留部の開口縁の高さよりも上方および下方へ延出したバッフル板が前記液貯留部の開口縁から所定間隔をあけて設けられることで、前記洗浄槽の底面の傾斜面を介して前記液貯留部へ流れ込む前記液体を前記液貯留部の壁側に制限させ、前記洗浄槽と前記液貯留部との間は、網材または多孔板から構成される仕切材で仕切られ、この仕切材に、前記バッフル板が保持されていることを特徴とする洗浄器である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、洗浄槽の底面に液貯留部が連接されているので、洗浄ノズルから噴射された液体は、洗浄槽の底面を介して液貯留部へ流れ込むことになる。洗浄槽の底面全体が液貯留部とならないので、その分だけ気泡の発生位置を限定することができる。しかも、液貯留部の開口部には、液貯留部の開口縁から所定間隔をあけてバッフル板が設けられているので、洗浄槽の底面を介して液貯留部へ流れ込む液体は、液貯留部への落水位置を制限されることになる。従って、液貯留部内での気泡の発生位置を限定することで、液貯留部での気泡の発生を抑えることができる。このようにして、液貯留部での気泡の発生を抑えることで、ポンプでのエアがみを防止しつつ、液体(水および/または薬液)の使用量を削減することができる。
請求項1に記載の発明によれば、洗浄槽と液貯留部との間を、網材または多孔板からなる仕切材で仕切ることで、被洗浄物の液貯留部への落下を防止することができる。そして、仕切材にバッフル板を保持して、液貯留部へのバッフル板の設置を容易に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記洗浄槽の底面は、前記液貯留部の開口縁の全周または全辺と連接されており、前記バッフル板は、前記液貯留部の開口縁の全周または全辺と対向して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄器である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、液貯留部の開口縁の全周または全辺と対向して、バッフル板が設けられているので、液貯留部へ流れ込む液体による気泡の発生を確実に抑えて、ポンプでのエアがみを防止しつつ、使用液量を削減することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記液貯留部の底面の中心より偏心した位置には、前記液貯留部の液体を前記洗浄ノズルへ循環供給する循環口が形成され、前記バッフル板は、前記液貯留部の循環口に近い位置のみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄器である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、液貯留部の底面には、洗浄ノズルへの液体の循環口が偏心して設けられ、この循環口に近い位置にだけ、バッフル板が設けられる。循環口に近い位置にはバッフル板を設けることで、気泡の発生を抑えて、ポンプでのエアがみを防止することができる。一方、循環口から遠い位置には、バッフル板を設けなくても、循環口へ到達するまでの距離があるので、その間に気泡の消滅が図られる。
【0017】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記液貯留部には、前記仕切材よりも下方にストレーナが設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄器である。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、液貯留部には、仕切材よりも下方にストレーナが設けられる。ストレーナを設けることで、液中の夾雑物を除去できると共に、液中の気泡の除去も図ることができる。これにより、ポンプでのエアがみを一層確実に防止しつつ、使用液量を削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄器によれば、簡易な構成で、ポンプでのエアがみを防止しつつ、水や薬液などの使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例の洗浄器を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
図2図1の洗浄器の下部を示す正面視の縦断面図である。
図3図1の洗浄器の下部を示す側面視の縦断面図である。
図4図1の洗浄器の下部のバッフル板を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の洗浄器1を示す概略図であり、一部を断面にして示している。また、図2および図3は、図1の洗浄器1の下部を示す概略図であり、図2は正面視の縦断面図、図3は右側面視の縦断面図である。なお、図2および図3では、一部構成を省略して示している。
【0022】
以下、説明の便宜上、図1における左右方向を洗浄器1の左右方向とし、図1における上下方向を洗浄器1の上下方向とし、図1における紙面と直交方向を洗浄器1の前後方向(手前側が前方)として説明する。
【0023】
本実施例の洗浄器1は、被洗浄物が収容される洗浄槽2と、この洗浄槽2内の被洗浄物へ液体を噴射する洗浄ノズル3と、洗浄槽2内の底面と連接された液貯留部4と、液貯留部4の開口部に設けられるバッフル板5と、液貯留部4への給水手段6と、液貯留部4からの排水手段7と、液貯留部4への薬液供給手段8と、液貯留部4の液体を洗浄ノズル3へ供給する循環手段9と、液貯留部4の液体を加熱する加熱手段10と、これら各手段6~10を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0024】
被洗浄物は、特に問わないが、たとえば鉗子などの医療器具である。洗浄槽2内には、上下複数段に洗浄ノズル3が設けられるが、被洗浄物は上下の洗浄ノズル3間に配置される。この際、被洗浄物は、格子状または網状の棚(図示省略)に載せられる。また、被洗浄物は、所望によりバスケットなどに収容されていてもよい。
【0025】
洗浄槽2は、被洗浄物が収容される中空容器である。洗浄槽2は、本実施例では略矩形の中空ボックス状である。洗浄槽2は、ドア(図示省略)により開閉可能とされる。ドアを開けることで、洗浄槽2に対し被洗浄物を出し入れすることができる。ドアは、洗浄槽2の正面に設けられるが、洗浄槽2の正面および背面の双方に設けられてもよい。
【0026】
洗浄ノズル3は、洗浄槽2内の被洗浄物へ液体を噴射する。洗浄ノズル3は、洗浄槽2内に、上下複数段に設けられる。本実施例では、洗浄槽2の前後方向中央部の一側部に、上下複数段にアーム状の支持部材11の基端部が保持され、各支持部材11は、洗浄槽2の一側部から左右方向中央部へ向けて延出する。そして、その延出先端部に、洗浄ノズル3の長手方向中央部が縦軸まわりに回転可能に保持される。
【0027】
洗浄ノズル3は、支持部材11内を介して供給される液体を噴射させる噴射口(図示省略)が複数形成されている。支持部材11を介して洗浄ノズル3内に液体が供給されると、その液体は洗浄ノズル3の噴射口から噴射される。この噴流により、洗浄ノズル3が水平方向に回転する。なお、洗浄槽2内の上端部に設けられる洗浄ノズル3は、下方へのみ液体を噴射し、洗浄槽2内の下端部に設けられる洗浄ノズル3は、上方へのみ液体を噴射し、上下両端部以外の洗浄ノズル3は、上下両方へ液体を噴射する。
【0028】
ところで、図1において一点鎖線で示すように、洗浄槽2に対し洗浄ラック12を出し入れ可能としてもよい。図示例では、上下両端部に設けられる洗浄ノズル3は、洗浄槽2自体に設けられ、それ以外の洗浄ノズル3は、洗浄ラック12に設けられている。洗浄ラック12には、一側部に配水部材13が設けられており、その配水部材13に上下複数段に支持部材11が設けられ、各支持部材11に洗浄ノズル3が回転可能に保持される。また、洗浄ラック12には、各洗浄ノズル3の上部と洗浄ラック12の下部とに、被洗浄物の載置棚が設けられている。洗浄槽2内に洗浄ラック12を格納すると、後述する循環ポンプ14からの配管が、配水部材13に接続される。
【0029】
洗浄槽2の下部には、液貯留部4が連接される。具体的には、洗浄槽2の底面には、下方へ凹んで液貯留部4が形成されている。逆にいえば、液貯留部4は、洗浄槽2の底面に、上方へ開口して設けられている。なお、洗浄槽2の底面は、液貯留部4の開口縁に近づくについて下方へ傾斜して形成されるのが好ましい。
【0030】
本実施例では、洗浄槽2の底面は、左右両端部が左右方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面2a(図2)に形成されると共に、前後両端部が前後方向内側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面2b(図3)に形成されている。そして、洗浄槽2の左右方向中央部で且つ前後方向中央部には、下方へ略矩形状に凹んで液貯留部4が形成されている。
【0031】
バッフル板5は、液貯留部4の開口部に設けられ、液貯留部4の開口縁から液貯留部4の内側へ所定間隔をあけて設けられる。本実施例では、図2に示すように、洗浄槽2下部の左右の傾斜面2aの下端縁(液貯留部4側の端辺、言い換えれば液貯留部4の左右側面4aの上端縁)から、液貯留部4の左右方向内側へ所定間隔(第一隙間X1)をあけて、液貯留部4の左右に第一バッフル板5Aが設けられる。また、図3に示すように、洗浄槽2下部の前後の傾斜面2bの下端縁(液貯留部4側の端辺、言い換えれば液貯留部4の前後側面4bの上端縁)から、液貯留部4の前後方向内側へ所定間隔(第二隙間X2)をあけて、液貯留部4の前後に第二バッフル板5Bが設けられる。
【0032】
なお、洗浄槽2下部における前後左右の各傾斜面2a,2bの傾斜角度は、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。また、上述した第一隙間X1と第二隙間X2とは、同じ寸法であってもよいし、異なる寸法であってもよい。しかも、場合により、左右の第一隙間X1同士の大きさを変えたり、前後の第二隙間X2同士の大きさを変えたりしてもよい。
【0033】
前後左右の各バッフル板5(5A,5B)は、液貯留部4の前後左右の各側面4a,4bと平行に、液貯留部4の上端縁の高さよりも、上方および/または下方へ延出して設けられる。本実施例では、各バッフル板5は、平板状とされ、液貯留部4の上端縁の高さよりも、上方および下方へ延出して設けられる。
【0034】
図4は、前後左右のバッフル板5(5A,5B)の組立状態の概略平面図である。この図に示すように、左右一対の第一バッフル板5Aと、前後一対の第二バッフル板5Bとにより、全体として略矩形の短筒状の枠体が構成される。この際、第二バッフル板5Bの左右両端部は、第一バッフル板5Aの接続位置よりも左右方向外側へ延出してもよい。言い換えれば、第一バッフル板5Aの前後両端部は、第二バッフル板5Bの左右両端部よりも左右方向内側へ入った位置に接続されてもよい。あるいは、場合により、第一バッフル板5Aの前後両端部は、第二バッフル板5Bの接続位置よりも前後方向外側へ延出してもよい。
【0035】
液貯留部4の開口縁からのバッフル板5の離隔距離(液貯留部4の左右側面4aと第一バッフル板5Aとの間の第一隙間X1の寸法、あるいは液貯留部4の前後側面4bと第二バッフル板5Bとの間の第二隙間X2の寸法)は、次のように設定されるのが好ましい。すなわち、洗浄器1の運転中、洗浄ノズル3からの噴射液は洗浄槽2下部の傾斜面2a,2bを介して液貯留部4へ流れ込むが、傾斜面2a,2bからの液流がバッフル板5(5A,5B)に当たる位置に、バッフル板5を配置(あるいはバッフル板5の大きさを決定)するのが好ましい。これにより、傾斜面2a,2bから液貯留部4へ流れ込む液体は、各バッフル板5と液貯留部4の側面4a,4bとの隙間を介して液貯留部4へ供給されることになる。なお、循環ポンプ14の作動中における液貯留部4の液位に対し、バッフル板5の下端部は、液面よりも下方(つまりバッフル板5の下端部が液中に差し込まれた状態)にあってもよい。
【0036】
洗浄槽2と液貯留部4との間は、網材または多孔板から構成される仕切材15で仕切られるのが好ましい。たとえば、洗浄槽2と液貯留部4とは、金網またはパンチングメタルから構成される仕切材15で仕切られる。この場合、この仕切材15に、バッフル板を保持して設けることができる。具体的には、仕切材15の上面および/または下面に、仕切材15と略垂直に(あるいは傾斜させて)各バッフル板5を固定すればよい。
【0037】
液貯留部4には、仕切材15よりも下方に、ストレーナ16が設けられるのが好ましい。ストレーナ16の目の粗さは、仕切材15よりも十分に細かいものが採用される。液貯留部4に設定液位まで給水後、循環手段9を作動させると、液貯留部4の液位は低下するが、その状態において、ストレーナ16は、液面よりも上方にあってもよいし、液面あるいはそれよりも下方(つまり液中)にあってもよい。ストレーナ16を比較的上方に配置する場合、液貯留部4に加熱手段10を設置しやすい。ストレーナ16を比較的下方(特に液中)に設置する場合、循環ポンプ14への液中の気泡を除去しやすい。
【0038】
給水手段6は、給水路17を介して、液貯留部4に水を供給する。給水路17には、給水弁18が設けられている。給水弁18を開けることで、液貯留部4に給水することができる。図示例では、洗浄槽2に給水路17を接続することで、給水は洗浄槽2を介して液貯留部4に供給されるが、液貯留部4に給水路17を接続することで、給水は液貯留部4に直接に供給されてもよい。なお、給水手段6は、複数種の水(たとえば水道水、温水、膜濾過水など)から選択された水を供給可能に構成されてもよい。
【0039】
排水手段7は、液貯留部4から排水路19を介して水を排出する。排水路19には、排水弁20が設けられている。排水弁20を開けることで、洗浄槽2や液貯留部4から排水することができる。
【0040】
薬液供給手段8は、薬液タンク21から給液路22を介して、液貯留部4に薬液を供給する。給液路22には、薬液ポンプ23が設けられている。薬液ポンプ23を作動させることで、設定量の薬液を液貯留部4に供給することができる。図示例では、液貯留部4に給液路22を接続することで、薬液は液貯留部4に直接に供給されるが、洗浄槽2に給液路22を接続することで、薬液は洗浄槽2を介して液貯留部4に供給されてもよい。なお、薬液供給手段8は、複数種の薬液(たとえばアルカリ性洗剤、酵素配合洗剤、潤滑防錆剤、乾燥促進剤など)から選択された薬液を供給可能に構成されてもよい。
【0041】
循環手段9は、液貯留部4の液体を洗浄ノズル3へ循環供給する。具体的には、循環手段9は、循環配管24と循環ポンプ14とを備える。循環配管24は、液貯留部4から各洗浄ノズル3の支持部材11への配管であり、その途中に循環ポンプ14が設けられている。なお、図示例では、循環配管24の内、液貯留部4から循環ポンプ14への配管は、上流側において、排水路19と共通管路とされている。また、循環配管24の内、循環ポンプ14の出口側には、逆止弁25が設けられている。循環ポンプ14を作動させると、液貯留部4の液体を、循環配管24および支持部材11を介して洗浄ノズル3へ供給して噴射し、洗浄槽2下部の液貯留部4へ戻すことができる。
【0042】
加熱手段10は、本実施例では、液貯留部4に設けられたヒータ26から構成される。ヒータ26は、図示例では電気ヒータであるが、場合により蒸気ヒータであってもよい。電気ヒータの場合、典型的にはオンオフ制御されるが、場合により出力を調整されてもよい。一方、蒸気ヒータの場合、蒸気管内に蒸気が供給可能とされ、蒸気の凝縮水は蒸気トラップを介して外部へ排出される。そして、給蒸路に設けた給蒸弁の開閉または開度が制御される。
【0043】
液貯留部4には、液位検出器27が設けられる。液位検出器27は、その構成を特に問わないが、たとえば、液貯留部4の底部に設置した圧力センサから構成される。この場合、液貯留部4や洗浄槽2内の液位に応じて、水圧が変わることを利用して液位を把握する。
【0044】
液貯留部4には、温度センサ28が設けられる。温度センサ28の検出温度に基づきヒータ26を制御することで、液貯留部4の貯留液の温度を調整することができる。
【0045】
その他、洗浄器1には、所望により、超音波振動子29が設けられる。図示例では、洗浄槽2下部の左右の傾斜面2aに、それぞれ超音波振動子29が設けられている。超音波振動子29は、超音波発振器に接続されて、発振を制御される。被洗浄物を浸漬した状態で超音波振動子29を作動させることで、被洗浄物を超音波洗浄することができる。
【0046】
制御手段は、前記各手段6~10の他、液位検出器27および温度センサ28などに接続された制御器(図示省略)である。具体的には、給水弁18、排水弁20、薬液ポンプ23、循環ポンプ14、ヒータ26、超音波発振器(29)、液位検出器27および温度センサ28などは、制御器に接続されている。そして、制御器は、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽2内の被洗浄物の洗浄を図る。この際、少なくとも、次に述べるシャワー洗浄動作を実行可能とされる。
【0047】
シャワー洗浄動作では、液貯留部4内に液体を貯留し、その液体を循環手段9により洗浄ノズル3へ循環供給して、洗浄ノズル3から被洗浄物に噴射する。具体的には、まず、液位検出器27が設定水位を検出するまで、給水手段6により液貯留部4に給水する。のちに循環ポンプ14を作動させると水位は下がるので、初期給水時の設定水位は、仕切材15よりも上方にあってもよく、たとえば傾斜面2aの上端縁付近まで給水される。この場合でも、循環ポンプ14の作動中の水位は、液貯留部4内に収まることになる。
【0048】
液貯留部4への給水後、必要に応じて、薬液供給手段8により液貯留部4に所望の薬液を投入する。薬液供給手段8による薬液は、給水手段6による給水に対し、設定濃度になるように設定量だけ投入される。さらに、同じく必要に応じて、加熱手段10により、液貯留部4内の貯留水を設定温度まで加熱する。薬液の投入や貯留水の加熱は、循環手段9の作動前に限らず、循環手段9の作動中に行ってもよい。
【0049】
いずれにしても、液貯留部4に所望量の液体を貯留した状態で、循環ポンプ14を作動させて、貯留液を循環配管24および支持部材11を介して洗浄ノズル3へ供給して噴射し、洗浄ノズル3を回転させながら被洗浄物を洗浄する。そして、各洗浄ノズル3から噴射された液体は、洗浄槽2下部の液貯留部4へ戻される。所定の終了条件(たとえば設定時間の経過)を満たすと、循環ポンプ14を停止して、液貯留部4内の液体を排水手段7により排出する。
【0050】
典型的には、このようなシャワー洗浄動作を繰り返して、被洗浄物を洗浄および濯ぎする。たとえば、薬液を投入しない常温水による予備洗浄、所望により洗剤を投入した温水による本洗浄(典型的には複数回)、所望により濯ぎ剤を投入した温水による濯ぎ洗浄(典型的には複数回)などが順次になされる。
【0051】
本実施例の洗浄器1によれば、洗浄ノズル3から噴射された液体は、洗浄槽2下部の傾斜面2a,2bを介して、液貯留部4へ流れ込むことになる。液貯留部4の開口部には、液貯留部4の開口縁から内側へ隙間をあけてバッフル板5が設けられているので、傾斜面2a,2bを介して液貯留部4へ流れ込む液体は、液貯留部4への落水位置を制限されることになる。特に、本実施例では、バッフル板5は液貯留部4の開口縁の全周(全辺)と対向して設けられている(つまり液貯留部4の開口部の内側に連続的に設けられている)ので、各傾斜面2a,2bから液貯留部4へ流れ込む液体による気泡の発生位置は、液貯留部4の壁側に限定されることになる。
【0052】
このようにして、液貯留部4内での気泡の発生位置を限定することで、液貯留部4での気泡の発生を抑え、循環ポンプ14でのエアがみを防止することができる。なお、洗浄ノズル3から噴射された液体は、傾斜面2a,2bに落ちる以外に、洗浄槽2の平面視中央部では傾斜面2a,2bを介さずに液貯留部4に落ち得るが、傾斜面2a,2bを流れ落ちる液流ほどの水量はなく、気泡を発生させる要因としては小さい。
【0053】
さらに、本実施例では、液貯留部4には、仕切材15よりも下方にストレーナ16が設けられる。ストレーナ16を設けることで、液中の夾雑物を除去できると共に、液中の気泡の除去も図ることができる。これにより、循環ポンプ14でのエアがみを一層確実に防止することができる。
【0054】
このようにして、液貯留部4での気泡の発生を抑えることで、循環ポンプ14に気泡が到達する量を減少させることができる。その分だけ、洗浄器1は、より低水位で運転可能となり、初期給水量(洗浄器1全体の保有水量)を削減することができる。そして、給水量を削減することは、薬液投入量や加熱量の削減にもつながるので、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0055】
ところで、液貯留部4の底面には、液貯留部4の液体を洗浄ノズル3へ循環供給する循環口4c(循環ポンプ14の吸込口)が設けられる。この循環口4cは、平面視において、液貯留部4の中心部に設けられてもよいが、中心から偏心した位置に設けられてもよい。偏心して設けられる場合、バッフル板5は、液貯留部4の循環口4cに近い位置のみ設けられてもよい。
【0056】
たとえば、図3では、循環口4cは、液貯留部4の前方部に設けられる。この場合、液貯留部4の前後に設けられた第二バッフル板5Bの内、循環口4cに近い前方の第二バッフル板5Bは設置するが、循環口4cから遠い後方の第二バッフル板5Bの設置は省略してもよい。また、液貯留部4の左右に設けられた第一バッフル板5Aは、それぞれ前後方向へ沿って設けられるが、循環口4cに近い前方部(たとえば前半分)にのみ設け、循環口4cから遠い後方部(たとえば後半分)の設置は省略してもよい。循環口4cに近い位置にはバッフル板5を設けることで、気泡の発生を抑えて、循環ポンプ14でのエアがみを防止することができる。一方、循環口4cから遠い位置には、バッフル板5を設けなくても、循環口4cへ到達するまでの距離があるので、その間に気泡の消滅が図られる。
【0057】
本発明の洗浄器1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、被洗浄物が収容される洗浄槽2と、この洗浄槽2内の被洗浄物へ液体を噴射する洗浄ノズル3と、洗浄槽2の底面と連接された液貯留部4とを備え、液貯留部4の開口部には、液貯留部4の開口縁から所定間隔をあけてバッフル板5が設けられているのであれば、その他の構成は、適宜に変更可能である。
【0058】
たとえば、洗浄槽2および/または液貯留部4の平面視形状は、略矩形状に限らず、円形または楕円形の他、矩形以外の多角形状などであってもよい。その場合も、好ましくは、洗浄槽2の底面は、液貯留部4の開口縁に近づくにつれて下方へ傾斜すると共に、液貯留部4の開口縁の全周または全辺と連接されている。そして、バッフル板5は、液貯留部4の開口縁の全周または全辺と対向して設けられるのが好ましい。また、液貯留部4の底面の中心より偏心した位置に、洗浄ノズル3への循環口4cを設ける場合には、バッフル板5は、液貯留部4の循環口4cに近い位置のみ設けられてもよい。
【0059】
さらに、前記実施例において、洗浄後の被洗浄物を乾燥可能に、送風機をさらに備えてもよい。この場合、洗浄後の濡れた被洗浄物は、洗浄槽2へ供給される温風により乾燥を図られる。
【符号の説明】
【0060】
1 洗浄器
2 洗浄槽(2a,2b:傾斜面)
3 洗浄ノズル
4 液貯留部(4a:左右側面、4b:前後側面、4c:循環口)
5 バッフル板(5A:第一バッフル板、5B:第二バッフル板)
6 給水手段
7 排水手段
8 薬液供給手段
9 循環手段
10 加熱手段
11 支持部材
12 洗浄ラック
13 配水部材
14 循環ポンプ
15 仕切材
16 ストレーナ
17 給水路
18 給水弁
19 排水路
20 排水弁
21 薬液タンク
22 給液路
23 薬液ポンプ
24 循環配管
25 逆止弁
26 ヒータ
27 液位検出器
28 温度センサ
29 超音波振動子
図1
図2
図3
図4