(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/193 20060101AFI20220124BHJP
H01R 13/10 20060101ALI20220124BHJP
H01R 13/18 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H01R13/193
H01R13/10 A
H01R13/18 B
(21)【出願番号】P 2018089453
(22)【出願日】2018-05-07
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2018042166
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-050892(JP,A)
【文献】特開2017-183270(JP,A)
【文献】実開昭49-028186(JP,U)
【文献】特開平07-335193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/193
H01R 13/10
H01R 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子と導通接続される接続部を含む雌端子金具と、
前記雌端子金具に設けられており、前記雄端子が圧入され内面によって前記接続部を構成する雄端子挿通筒部と、
前記雄端子挿通筒部の周方向の一か所が軸方向全長に亘って分離されることによって設けられた一対の第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部と、
前記雌端子金具に保持されて、前記一対の重ね板部を相互に重ね合せる方向に付勢して前記雄端子挿通筒部を縮径状態に保持する付勢手段とを備え、
前記付勢手段の付勢力により前記雄端子挿通筒部に縮径方向の力が加えられており、
前記雄端子挿通筒部に前記雄端子が圧入される際には、前記付勢手段の付勢力に抗して前記雄端子挿通筒部が拡径方向に弾性変形されて前記雄端子の前記雄端子挿通筒部への圧入が許容されるようになって
おり、
前記雌端子金具が、前記雄端子挿通筒部の前記周方向の他の一か所において、前記軸方向全長に亘って延びる第二分離部と、該第二分離部に連接して外方に突出する一対の延出板部とをさらに含んでおり、該一対の延出板部が相互に重ね合されることにより電線接続部が構成されている雌端子。
【請求項2】
前記雌端子金具が帯状の金属平板を含んで構成されており、前記一対の重ね板部の一方を構成する該金属平板の長手方向の一端部が他端部に向かって折り返されて、該他端部側に設けられた前記一対の重ね板部の他方に重ね合されることにより、該金属平板の長手方向の中間部分が湾曲されて前記雄端子挿通筒部が設けられている請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記雌端子金具を構成する前記金属平板の前記他端部が電線接続部とされており、該電線接続部と前記雄端子挿通筒部の間に前記一対の重ね板部を接近方向に付勢する前記付勢手段が配設保持されるようになっている請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記雌端子金具の長手方向において、前記電線接続部と前記一対の重ね板部の間に、前記雄端子挿通筒部が設けられている請求項
1に記載の雌端子。
【請求項5】
前記雌端子金具が、前記第一分離部の一方に連接する前記一対の重ね板部の一方と、前記第一分離部の一方から前記第二分離部の一方に延びる前記雄端子挿通筒部の周壁と、前記第二分離部の一方から延び出す前記延出板部の一方とを一体的に構成する第一板金具と、前記第一分離部の他方に連接する前記一対の重ね板部の他方と、前記第一分離部の他方から前記第二分離部の他方に延びる前記雄端子挿通筒部の前記周壁と、前記第二分離部の他方から延び出す前記延出板部の他方とを一体的に構成する第二板金具とを含んでおり、前記第一板金具と前記第二板金具が相互に重ね合されることにより、前記第一および第二板金具の長手方向の中央部分に前記雄端子挿通筒部が構成され、前記長手方向の基端側に前記電線接続部が構成され、前記長手方向の先端側に前記一対の重ね板部を相互に重ね合せて付勢する前記付勢手段が配設されており、
前記第一板金具と前記第二板金具の板厚寸法が相互に異なっている請求項
1または
4に記載の雌端子。
【請求項6】
前記第一板金具が平板形状とされ、該第一板金具に重ね合される前記第二板金具が、前記長手方向の両端部が平板形状で、前記長手方向の中央部分に前記雄端子挿通筒部の前記周壁を構成して前記第一板金具から離隔する方向に凸となる凸形断面で板幅方向に亘って突出する凸状部を含んでおり、前記第一板金具が前記第二板金具よりも板厚寸法が大きくされている請求項
5に記載の雌端子。
【請求項7】
前記第一板金具が平板形状とされ、該第一板金具に重ね合される前記第二板金具が、前記長手方向の両端部が平板形状で、前記長手方向の中央部分に前記雄端子挿通筒部の前記周壁を構成して前記第一板金具から離隔する方向に凸となる凸形断面で板幅方向に亘って突出する凸状部を含んでおり、前記第一板金具が前記第二板金具よりも板厚寸法が小さくされている請求項
5に記載の雌端子。
【請求項8】
前記雄端子挿通筒部が菱形断面形状を有している請求項1~
7の何れか1項に記載の雌端子。
【請求項9】
前記雄端子挿通筒部の前記内面が前記雄端子の圧入方向における先端側に向かって次第に小径となるテーパ形状とされている請求項1~
8の何れか1項に記載の雌端子。
【請求項10】
雄端子と導通接続される接続部を含む雌端子金具と、
前記雌端子金具に設けられており、前記雄端子が圧入され内面によって前記接続部を構成する雄端子挿通筒部と、
前記雄端子挿通筒部の周方向の一か所が軸方向全長に亘って分離されることによって設けられた一対の第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部と、
前記雌端子金具に保持されて、前記一対の重ね板部を相互に重ね合せる方向に付勢して前記雄端子挿通筒部を縮径状態に保持する付勢手段とを備え、
前記付勢手段の付勢力により前記雄端子挿通筒部に縮径方向の力が加えられており、
前記雄端子挿通筒部に前記雄端子が圧入される際には、前記付勢手段の付勢力に抗して前記雄端子挿通筒部が拡径方向に弾性変形されて前記雄端子の前記雄端子挿通筒部への圧入が許容されるようになっており、
前記雌端子金具が、前記一対の第一分離部に連接して外方に突出する前記一対の重ね板部の突出端部からそれぞれさらに外方に延び出す一対の延出板部をさらに含んでおり、該一対の延出板部が相互に重ね合されることにより電線接続部が構成されており、
前記雄端子挿通筒部の前記周方向の他の一か所において、前記軸方向全長に亘って延びる第二分離部が設けられてい
る雌端子。
【請求項11】
前記雌端子金具に組み付けられた収容空所を有するケースをさらに有しており、該収容空所が前記重ね板部の上方に配設されており、
前記付勢手段がばね部材を含んで構成されて前記ケースの前記収容空所に収容されることにより、前記雌端子金具に保持さ
れ、前記重ね板部と前記ケースの前記重ね板部への対向壁との間で前記ばね部材が圧縮状態に保持されている請求項1~1
0の何れか1項に記載の雌端子。
【請求項12】
前記付勢手段がコイルばねを含んでいる請求項1~1
1の何れか1項に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子に係り、特に、大きな接圧で雄端子との導通接続が可能な雌端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の電装系に使用される雌端子として、例えば、特開2011-238558号公報(特許文献1)に記載のように、側縁部に開口部を有する箱状のケースと、ケースの内部に向かって突出する撓み変形可能な一対の接続部を備えたものが知られている。このような雌端子は、特許文献1の
図8に示されているように、雄端子を開口部からケースの内部に挿入した後に、一対の接続部に接近する方向の付勢力を付与する別体のばね部材を取り付けることにより、大きな接圧で雄端子と雌端子の接続部の電気的接続が図られるようになっている。
【0003】
ところで、このような従来構造の雌端子においては、雄端子を開口部からケースの内部に挿入した後に別体のばね部材を取り付ける必要があることから、作業工程が増加して作業性が悪化するおそれがあった。そこで、例えば一対の接続部に接近する方向の大きな付勢力を予め与えておくことが考えられるが、この場合は雄端子を開口部からケースの一対の接続部に間に挿入する際の挿入力が大きくなることから、挿入が困難になったり挿入時に雌端子のケースや雄端子を損傷するおそれがあった。
【0004】
加えて、雄端子あるいは雌端子に何らかの外力が加わった際には、かかる外力がばね部材の弾性変形方向で伝達されるようになっていることから、雌端子の接続部と雄端子間の接圧が変動するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、雌雄端子間の大きな接圧を確保しつつ、挿入力の低減や作業の容易性を図ると共に接圧の変動を抑えることができる、新規な構造の雌端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、雄端子と導通接続される接続部を含む雌端子金具と、前記雌端子金具に設けられており、前記雄端子が圧入され内面によって前記接続部を構成する雄端子挿通筒部と、前記雄端子挿通筒部の周方向の一か所が軸方向全長に亘って分離されることによって設けられた一対の第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部と、前記雌端子金具に保持されて、前記一対の重ね板部を相互に重ね合せる方向に付勢して前記雄端子挿通筒部を縮径状態に保持する付勢手段とを備え、前記付勢手段の付勢力により前記雄端子挿通筒部に縮径方向の力が加えられており、前記雄端子挿通筒部に前記雄端子が圧入される際には、前記付勢手段の付勢力に抗して前記雄端子挿通筒部が拡径方向に弾性変形されて前記雄端子の前記雄端子挿通筒部への圧入が許容されるようになっており、前記雌端子金具が、前記雄端子挿通筒部の前記周方向の他の一か所において、前記軸方向全長に亘って延びる第二分離部と、該第二分離部に連接して外方に突出する一対の延出板部とをさらに含んでおり、該一対の延出板部が相互に重ね合されることにより電線接続部が構成されている雌端子である。
【0008】
本態様の雌端子によれば、雌端子金具に設けられた雄端子挿通筒部が、周方向の一か所において軸方向全長に亘って分離された一対の第一分離部を備え、かかる第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部を有している。そして、雌端子金具に保持された付勢手段により、かかる一対の重ね板部を相互に接近して重ね合される方向に付勢することにより、雄端子挿通筒部の一対の第一分離部が相互に接近して重ね合される方向に弾性変形され、付勢手段の付勢力によって、雄端子挿通筒部が縮径状態に保持されるようになっている。その上で、雄端子挿通筒部に雄端子が圧入される際には、付勢力に抗して、雄端子挿通筒部が拡径方向に弾性変形可能であることから、雄端子挿通筒部への雄端子の圧入が許容される。このような構造の本態様の雌端子においては、付勢手段の付勢力により、雄端子挿通筒部には縮径方向の力が加えられていることから、雄端子挿通筒部に圧入された雄端子に対して、雄端子挿通筒部の内面によって構成される接続部を、大きな接圧で圧接することが可能となるのである。
【0009】
しかも、付勢手段は、雌端子金具に保持されていることから、従来構造のように雄端子を雌端子に導通接続した後に、別体のばね部材等を導通接続部分を挟持するように取り付ける必要がない。それゆえ、作業工程の簡素化を図ることができ、雌雄端子間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。
【0010】
また、雄端子挿通筒部に雄端子が圧入される際に、付勢手段の付勢力に抗して雄端子挿通筒部の拡径方向の弾性変形が許容されるようになっていることから、雄端子を雌端子の接続部に向けて挿入する際の挿入力を有利に低減しつつ接圧状態を安定して保持することが可能となっている。
【0011】
加えて、雄端子に何らかの外力が加わった際には、かかる外力は雄端子挿通筒部の径方向外方に伝達されることとなる。したがって、付勢手段による一対の重ね板部の付勢方向である重ね合わせ方向とは外力の伝達方向が異ならされている。それゆえ、雄端子に伝達された外力により雌雄端子間の接圧が変動することを有利に低減乃至は防止することができ、雌雄端子間の導通安定性の向上も確保することができる。また、雄端子挿通筒部に設けられた第二分離部から延び出す一対の延出板部が相互に重ね合されることにより、電線接続部が設けられている。これにより、一対の第二分離部の両方から延び出す一対の延出板部を電流経路とすることができ、一対の延出板部が相互に重ね合されて構成された電線接続部の断面積を有利に確保することができ、より多くの電流を流すことができる。それゆえ、雄端子挿通筒部の板厚寸法を小さくしても、電線接続部の断面積を大きく確保することができることから、雄端子挿通筒部の板厚寸法を小さくして雄端子挿通筒部の弾性変形を容易にして雄端子の雄端子挿通筒部への挿入力の低減を図りつつ、導体断面積を大きく確保することが可能となる。なお、雄端子挿通筒部に設けられる第二分離部の周方向位置は雌端子の配設領域等の条件により任意に設定することができ、例えば、第一分離部に軸直角方向で対向する位置に設けられてもよいし、第一分離部と第二分離部が周方向で90°離隔する位置に設けられて、重ね板部と延出板部が直交方向に突出するように構成することも可能である。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具が帯状の金属平板を含んで構成されており、前記一対の重ね板部の一方を構成する該金属平板の長手方向の一端部が他端部に向かって折り返されて、該他端部側に設けられた前記一対の重ね板部の他方に重ね合されることにより、該金属平板の長手方向の中間部分が湾曲されて前記雄端子挿通筒部が設けられているものである。
【0013】
本態様によれば、帯状の金属平板の一端部を他端部側に折り返すという簡単な構造により、周方向の一か所において軸方向全長に亘って分離された一対の第一分離部を備え、かかる第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部が有する雄端子挿通筒部を備えた雌端子金具を容易且つ歩留まりよく製造することができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具を構成する前記金属平板の前記他端部が電線接続部とされており、該電線接続部と前記雄端子挿通筒部の間に前記一対の重ね板部を接近方向に付勢する前記付勢手段が配設保持されるようになっているものである。
【0015】
本態様によれば、金属平板の他端部が電線接続部とされて、かかる電線接続部と雄端子挿通筒部の間に付勢手段を配設保持することにより、電線接続部からの雄端子挿通筒部の離隔距離が確保されるようになっている。これにより、電線接続部に対して外部電線の端末に露呈された芯線が溶接等により接続固定される際の熱影響から雄端子挿通筒部を有利に保護することができ、熱影響によるめっき特性への影響等を低減乃至は回避することができる。
【0019】
本発明の第四の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具の長手方向において、前記電線接続部と前記一対の重ね板部の間に、前前記雄端子挿通筒部が設けられているものである。
【0020】
本態様によれば、雌端子金具において、雄端子挿通筒部を間に挟んだ両側に電線接続部と一対の重ね板部が設けられていることから、雄端子が圧接される接続部と電線接続部の間に一対の重ね板部を付勢する付勢手段を配設する必要がなく、雌端子の接続部と電線接続部間の電流経路を短くすることができる。これにより、導体抵抗も小さくすることができ、雌端子の性能向上を図ることができる。
【0021】
本発明の第五の態様は、前記第一または第四の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具が、前記第一分離部の一方に連接する前記一対の重ね板部の一方と、前記第一分離部の一方から前記第二分離部の一方に延びる前記雄端子挿通筒部の周壁と、前記第二分離部の一方から延び出す前記延出板部の一方とを一体的に構成する第一板金具と、前記第一分離部の他方に連接する前記一対の重ね板部の他方と、前記第一分離部の他方から前記第二分離部の他方に延びる前記雄端子挿通筒部の前記周壁と、前記第二分離部の他方から延び出す前記延出板部の他方とを一体的に構成する第二板金具とを含んでおり、前記第一板金具と前記第二板金具が相互に重ね合されることにより、前記第一および第二板金具の長手方向の中央部分に前記雄端子挿通筒部が構成され、前記長手方向の基端側に前記電線接続部が構成され、前記長手方向の先端側に前記一対の重ね板部を相互に重ね合せて付勢する前記付勢手段が配設されている一方、前記第一板金具と前記第二板金具の板厚寸法が相互に異なっているものである。
【0022】
本態様によれば、第一板金具と第二板金具を相互に重ね合せることにより、雄端子挿通筒部とその両側に設けた電線接続部と一対の重ね板部の付勢部分を設けることができることから、本発明の雌端子を容易に製造することができる。しかも、雌端子金具が第一板金具と第二板金具を含んで構成されていることから、各板金具の板厚寸法を相互に異ならせることができる。それゆえ、要求される特性に応じて第一板金具と第二板金具の板厚を調整することができ、雌端子の設計自由度の向上を図ることができる。
【0023】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に記載のものにおいて、前記第一板金具が平板形状とされ、該第一板金具に重ね合される前記第二板金具が、前記長手方向の両端部が平板形状で、前記長手方向の中央部分に前記雄端子挿通筒部の前記周壁を構成して前記第一板金具から離隔する方向に凸となる凸形断面で板幅方向に亘って突出する凸状部を含んでおり、前記第一板金具が前記第二板金具よりも板厚寸法が大きくされているものである。
【0024】
本態様によれば、全体が平板形状とされて、板厚が大きい第一板金具に対して、板厚が小さく且つ長手方向両側が平板形状で長手方向中央部分が雄端子挿通筒部の周壁を構成する凸状部とされた第二板金具が重ね合されて、雌端子金具が構成されている。それゆえ、雄端子が雄端子挿通筒部に挿通された際に、板厚の小さい凸状部を優位に弾性変形させることができ、雄端子の挿入力の低減を有利に図ることができる。しかも、第一板金具の板厚寸法は大きく確保できることから、電線接続部の断面積は有利に保持することができ、電流量も確保することができる。
【0025】
本発明の第七の態様は、前記第五の態様に記載のものにおいて、前記第一板金具が平板形状とされ、該第一板金具に重ね合される前記第二板金具が、前記長手方向の両端部が平板形状で、前記長手方向の中央部分に前記雄端子挿通筒部の前記周壁を構成して前記第一板金具から離隔する方向に凸となる凸形断面で板幅方向に亘って突出する凸状部を含んでおり、前記第一板金具が前記第二板金具よりも板厚寸法が小さくされているものである。
【0026】
本態様によれば、全体が平板形状とされて、板厚が小さい第一板金具に対して、板厚が大きく且つ長手方向両側が平板形状で長手方向中央部分が雄端子挿通筒部の周壁を構成する凸状部とされた第二板金具が重ね合されて、雌端子金具が構成されている。それゆえ、雄端子が雄端子挿通筒部に挿通された際に、板厚の大きい凸状部の雄端子への密着性を向上させることができ、雌雄端子間の低抵抗化を図ることができ、雌端子の性能向上を図ることができる。
【0027】
本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記雄端子挿通筒部が菱形断面形状を有しているものである。
【0028】
本態様によれば、雄端子挿通筒部が菱形断面形状を有している。これにより、雄端子挿通筒部に挿通された雄端子を菱形の4辺で安定して保持できる。それゆえ、雄端子挿通筒部が円形断面形状である場合に比して接点の位置を固定することができることから、かかる位置で雄端子を安定保持でき且つかかる位置のバラツキを観測することにより製造管理を容易に行うことが可能となる。
【0029】
本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記雄端子挿通筒部の前記内面が前記雄端子の圧入方向における先端側に向かって次第に小径となるテーパ形状とされているものである。
【0030】
本態様によれば、雄端子挿通筒部の内面が雄端子の圧入方向における先端側に向かって次第に小径となるテーパ形状を有していることから、雄端子の雄端子挿通筒部への挿入当初の挿入力を低減させることができる。特に、雄端子の先端部が雄端子挿通筒部の内面と相似のテーパ形状とされている場合には、雄端子が雄端子挿通筒部に完全に圧入されるまでは挿入力は発生しない一方、雄端子が雄端子挿通筒部から抜く際には少し引っ張るだけで可能であることから、雄端子の雄端子挿通筒部に対する挿抜力を大幅に低減することができる。
【0031】
本発明の第十の態様は、雄端子と導通接続される接続部を含む雌端子金具と、前記雌端子金具に設けられており、前記雄端子が圧入され内面によって前記接続部を構成する雄端子挿通筒部と、前記雄端子挿通筒部の周方向の一か所が軸方向全長に亘って分離されることによって設けられた一対の第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部と、前記雌端子金具に保持されて、前記一対の重ね板部を相互に重ね合せる方向に付勢して前記雄端子挿通筒部を縮径状態に保持する付勢手段とを備え、前記付勢手段の付勢力により前記雄端子挿通筒部に縮径方向の力が加えられており、前記雄端子挿通筒部に前記雄端子が圧入される際には、前記付勢手段の付勢力に抗して前記雄端子挿通筒部が拡径方向に弾性変形されて前記雄端子の前記雄端子挿通筒部への圧入が許容されるようになっており、前記雌端子金具が、前記一対の第一分離部に連接して外方に突出する前記一対の重ね板部の突出端部からそれぞれさらに外方に延び出す一対の延出板部をさらに含んでおり、該一対の延出板部が相互に重ね合されることにより電線接続部が構成されており、前記雄端子挿通筒部の前記周方向の他の一か所において、前記軸方向全長に亘って延びる第二分離部が設けられている雌端子である。
【0032】
本態様によれば、一対の重ね板部の突出端部からさらに一対の延出板部が延び出してそれらを重ね合されることにより、電線接続部が構成されている。加えて、重ね板部や電線接続部から離隔した雄端子挿通筒部の他の周方向の一か所に第二分離部が設けられて分離されている。それゆえ、優れた電線との導通安定性を確保しつつ、雄端子の雄端子挿通筒部への挿入力の低減を有利に図ることができる。
【0033】
本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第十の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具に組み付けられた収容空所を有するケースをさらに有しており、該収容空所が前記重ね板部の上方に配設されている一方、前記付勢手段がばね部材を含んで構成されて前記ケースの前記収容空所に収容されることにより、前記雌端子金具に保持されていると共に、前記重ね板部と前記ケースの前記重ね板部への対向壁との間で前記ばね部材が圧縮状態に保持されているものである。
【0034】
本態様によれば、付勢手段をケースの収容空所内に収容したばね部材によって構成し、ケースの収容空所が雌端子金具の相互に重ね合された一対の重ね板部の上方に配設された状態で組み付けられていることから、雌端子に対して付勢手段を安定して保持することができる。しかも、かかる付勢手段は、雄端子と導通接続される雌端子の接続部の構造には影響を与えないことから、雌端子の接続部の構造の自由度を高めることができる。ここで、ばね部材としては、例えば、コイルばねや板ばねや皿ばねなどが利用可能である。
【0035】
本発明の第十二の態様は、前記第一乃至第十一の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記付勢手段がコイルばねを含んでいるものである。
【0036】
本態様によれば、付勢手段がコイルばねを含んで構成されていることから、一対の重ね板部を重ね合せ方向に付勢する付勢手段のたわみ量を大きく確保することができる。それゆえ、限られたケースの収容空間内に付勢手段を配設してコンパクトな構成を実現しつつばね定数を小さくすることができ、部品等の寸法誤差が生じても雌雄端子間の接圧の変化を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、雌端子金具に設けられた雄端子挿通筒部が、周方向の一か所において分離された一対の第一分離部を備え、かかる第一分離部に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部を有している。そして、雌端子金具に保持された付勢手段により、かかる一対の重ね板部を相互に接近して重ね合される方向に付勢することにより、雄端子挿通筒部の一対の第一分離部が相互に接近して重ね合される方向に弾性変形され、付勢手段の付勢力によって、雄端子挿通筒部が縮径状態に保持されている。その上で、雄端子挿通筒部に雄端子が圧入される際には、付勢力に抗して、雄端子挿通筒部が拡径方向に弾性変形可能であることから、雄端子挿通筒部への雄端子の圧入が許容される。本態様においては、付勢手段の付勢力により、雄端子挿通筒部には縮径方向の力が加えられていることから、雄端子挿通筒部に圧入された雄端子に対して、雄端子挿通筒部の内面によって構成される接続部を、大きな接圧で圧接することが可能となる。しかも、付勢手段は、雌端子金具に保持されていることから、従来の如き別体のばね部材等を取り付ける必要がないことから、雌雄端子間の高い接圧を優れた作業性により実現できる。加えて、雄端子に何らかの外力が加わった際には、かかる外力は雄端子挿通筒部の径方向外方に伝達されることから、付勢手段による一対の重ね板部の付勢方向である重ね合わせ方向とは外力の伝達方向が異ならされている。それゆえ、かかる外力により雌雄端子間の接圧が変動することを有利に低減乃至は防止でき、雌雄端子間の導通安定性の向上も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図5】
図4に示す雌端子金具の断面図であって、一対の重ね板部が付勢手段によって付勢される前の状態を示す図。
【
図7】本発明の第二の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図11】
図10に示す雌端子金具の断面図であって、一対の重ね板部が付勢手段によって付勢される前の状態を示す図。
【
図13】本発明の第三の実施形態としての雌端子を示す断面図であって、
図10に相当する図。
【
図14】本発明の第四の実施形態としての雌端子を示す断面図であって、
図13に相当する図。
【
図15】本発明の第五の実施形態としての雌端子を示す断面図であって、
図10に相当する図。
【
図16】本発明の第六の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図18】本発明の第七の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図20】
図19に示す雌端子金具の断面図であって、一対の重ね板部が付勢手段によって付勢される前の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1~6には、本発明の第一の実施形態としての雌端子10が、示されている。雌端子10は、略円筒状のピン形状を有する雄端子12と導通接続される接続部14を含む雌端子金具16を有している。さらに、雌端子10は、雌端子金具16に組み付けられる、収容空所18を有するケース20を有している。なお、以下の説明において、上方とは、
図1,4~6中の上方、下方とは、
図1,4~6中の下方を言い、また前方とは、
図2~4中の左方、後方とは、
図2~4中の右方を言い、さらに長手方向とは、
図2~4中の左右方向、幅方向とは、
図2~3中の上下方向を言うものとする。
【0041】
図1および
図4に示されているように、雌端子金具16は、帯状の金属平板22を用いて構成されており、一対の重ね板部25a,25bの一方25aを構成する金属平板22の長手方向の一端部23が他端部24側(
図4~5中、右側)に向かって折り返されている。かかる一端部23が他端部24側(
図4~5中、中央部分)に設けられた一対の重ね板部25a,25bの他方25bに重ね合わされることにより金属平板22の長手方向(
図4~5中、左右方向)の中間部分が湾曲されて、雄端子12の最大外径寸法:tよりも小さな最大内径寸法:rを有し幅方向(
図4~5中、紙面に垂直な方向)両側に開口する略円筒状の雄端子挿通筒部26が形成されている。すなわち、雄端子挿通筒部26は、雄端子12が圧入されるように構成されている。そして、かかる雄端子挿通筒部26の内面28によって、接続部14が構成されている。また、この結果として、雄端子挿通筒部26の周方向の一か所(
図4中、右斜め下方側)が軸方向(
図4~5中、紙面に垂直な方向)全長に亘って分離されて一対の第一分離部29,29が形成されており、かかる一対の第一分離部29,29に連接して相互に離隔して外方(
図4~5中、右方)に向かって突出する一対の重ね板部25a,25bが設けられているのである。さらに、金属平板22の長手方向の他端部24側(
図4~5中、右側)には、電線接続部30が設けられている。このような構造とされた雌端子金具16は、導電性を有しており、かつプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。
【0042】
かかる雌端子金具16は、電線接続部30において、雌端子金具16に対して電線32の芯線34が導通接続されている。より詳細には、電線32は、導体である銅やアルミニウムその他の金属線の複数を束ね合わせた芯線34が、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆36で覆われた構造とされている。そして、電線32の端末において絶縁被覆36を剥いで露呈された芯線34を、例えば抵抗溶接等の公知の技術を用いて雌端子金具16の電線接続部30に固着することにより電線32の芯線34が雌端子金具16に対して導通接続されるようになっている。
【0043】
一方、
図1~3に示されているように、雌端子金具16を構成する金属平板22の一対の重ね板部25a,25bの他方25bにおける幅方向(
図2~3中、上下方向)の両側縁部には、長手方向に離隔した2箇所において幅方向外方に向かって突出する略矩形平板状の一対の係合突起38,38が設けられている。
【0044】
このような構成とされた雌端子金具16に対してケース20が組み付けられている(例えば、
図4参照)。かかるケース20は、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等を用いて形成されている。そして、ケース20は、雌端子金具16の一対の重ね板部25a,25bの一方25aの上方に収容空所18が配設されるように、雌端子金具16に対して組み付けられている。より詳細には、かかる組み付け状態において、ケース20は、収容空所18を介して一対の重ね板部25a,25bの一方25aに対向する略矩形平板形状の対向壁40を有している。また、ケース20は、対向壁40の幅方向(
図2中、上下方向)の両側縁部から下方に向かって延び出す略矩形平板状の一対の壁部42,42を有しており、対向壁40と一対の壁部42,42によって収容空所18が構成されている。さらに、ケース2
0は、一対の壁部42,42の延出端部において、下方に向かって突設された略矩形平板状の加締め部44と、一方側(
図2中、下側)の壁部42において一対の重ね板部25a,25bの他方25b上(
図5参照)に位置する幅方向(
図2中、左右方向)の両側縁部から幅方向外方に向かって突出後に板厚方向(
図2中、上下方向)外方に向かって突出する略平板状の係合突起46と、を有している。加えて、対向壁40の長手方向(
図2中、左右方向)の両側縁部には、幅方向(
図2中、上下方向)の略全長に亘って下方に向かって突出するコイルばね保持壁48が設けられている(
図1,4参照)。
【0045】
このような構成とされたケース20は、収容空所18に対して付勢手段を構成するばね部材である金属製のコイルばね50が収容配置された状態で、一対の重ね板部25a,25bの一方25a上に保持されている(例えば、
図4参照)。より詳細には、コイルばね50をケース20の収容空所18内に配置した状態で、ケース20が、雌端子金具16の一対の重ね板部25a,25bの一方25aの上方に載置されている。そして、ケース20の加締め部44を一対の重ね板部25a,25bの他方25bの側縁部に設けられた一対の係合突起38,38の間に挿通した後、幅方向(
図3中、上下方向)内方に折り曲げて加締める。これにより、ケース20が、一対の壁部42,42の延出端部が一対の係合突起38,38上に載置された状態で固定されて、ケース20に収容されたコイルばね50が間接的に雌端子金具16に保持されるようになっている。しかも、一対の重ね板部25a,25bの一方25aとケース20の対向壁40との間でコイルばね50が圧縮状態に保持されている。このように圧縮状態に保持されているコイルばね50によって、一対の重ね板部25a,25bが相互に接近する方向(
図4,6中、矢印の方向)に向かって付勢されている。すなわち、電線接続部30と雄端子挿通筒部26の間に一対の重ね板部25a,25bを接近方向に付勢する付勢手段であるコイルばね50が配設保持されるようになっている。
【0046】
本実施形態では、このように付勢手段を構成するばね部材がコイルばね50を用いて構成されていることから、たわみ量を大きく確保することができる。それゆえ、ばね定数の小さいコイルばね50を限られたケース20の収容空間である収容空所18内にコンパクトに配設することができることから、金属平板22の板厚、最大内径寸法:r等がばらついても雌端子10と雄端子12間の接圧の変化を小さく抑えることができる。また、電線接続部30と雄端子挿通筒部26の間に付勢手段であるコイルばね50が配設保持されていることから、電線接続部30からの雄端子挿通筒部26の離隔距離が確保されている。これにより、電線接続部30に対して電線32の端末に露呈された芯線34が溶接等により接続固定される際の熱影響から雄端子挿通筒部26を有利に保護することができ、熱影響による雄端子挿通筒部26のめっき特性への影響等を低減乃至は回避することができるようになっている。
【0047】
このような構成とされた雌端子10に対して、雄端子12が導通接続されるようになっている。より詳細には、雌端子10の雄端子挿通筒部26に対して雄端子12が圧入されると、まず、コイルばね50によって一対の重ね板部25a,25bを相互に接近する方向に付勢している付勢力に抗して、一対の重ね板部25a,25bの一方25aが他方25bに対して雄端子挿通筒部26側に向かってスライド変位される。これにより、雄端子挿通筒部26が拡径方向に弾性変形して雄端子12の雄端子挿通筒部26への圧入が許容される。そして、挿入後は、雄端子挿通筒部26の弾性復帰力によって、接続部14を構成する雄端子挿通筒部26の内面28が雄端子12に高い接圧をもって接続状態に圧接保持されるようになっている。すなわち、付勢手段を構成するコイルばね50によって、拡径方向に弾性変形可能な雄端子挿通筒部26が縮径状態に保持されているのである。なお、かかる雌端子10と雄端子12間の接圧は、コイルばね50の強さによって変えることができる。
【0048】
このような構造とされた本実施形態の雌端子10によれば、付勢手段を構成するばね部材であるコイルばね50は、雌端子金具16に保持されていることから、従来のように雄端子12を雌端子10に導通接続した後に別体のばね部材等を取り付ける必要がない。それゆえ、作業工程の簡素化を図ることができ、雌端子10と雄端子12間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。また、雌端子10の雄端子挿通筒部26に雄端子12が圧入される際に、付勢手段であるコイルばね50の付勢力に抗して一対の重ね板部25a,25bの一方25aが他方25bに対して雄端子挿通筒部26側に向かってスライド変位されることにより、雄端子挿通筒部26が拡径方向に弾性変形して雄端子12の雄端子挿通筒部26への圧入が許容される。そして、雄端子挿通筒部26の弾性復帰力により雄端子挿通筒部26の内面28によって構成される接続部14が雄端子12に圧接されることとなり、雌端子10と雄端子12間の大きな接圧が確保されるようになっている。かかるスライド変位の方向(
図4中、左方向)とコイルばね50による付勢方向(
図4,6中、矢印の方向)が異ならされていることから、雄端子12を雌端子10の接続部14を構成する雄端子挿通筒部26の内面28に挿入する際の挿入力を有利に低減しつつ接圧状態を安定して保持することが可能となっている。さらに、雄端子12に何らかの外力が加わった場合でも、かかる外力は雌端子10の雄端子挿通筒部26の径方向外方に伝達され、一対の重ね板部25a,25bが相互にスライド変位する方向に伝達されることから、外力の伝達方向とコイルばね50による付勢方向(
図4,6中、矢印の方向)が異ならされている。それゆえ、かかる外力によって雌端子10と雄端子12間の接圧が変動することを有利に低減乃至は防止することができることから、雌端子10と雄端子12間の導通安定性の向上も確保することができる。
【0049】
加えて、ケース20が、収容空所18に対して付勢手段を構成するばね部材であるコイルばね50が収容配置された状態で、一対の重ね板部25a,25b上に保持されていることから、雌端子10に対して付勢手段を安定して保持することができるようになっている。しかも、かかる付勢手段は、雄端子12に対して導通接続される雌端子10の接続部14の構造には影響を与えないことから、雌端子10の接続部14の構造の設計自由度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、帯状の金属平板22の一端部23を他端部24側に折り返すという簡単な構造により、雄端子挿通筒部26の周方向の一か所において軸方向全長に亘って分離された一対の第一分離部29,29を備えており、かかる一対の第一分離部29,29に連接して相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部25a,25bを有している。それゆえ、かかる雄端子挿通筒部26を備えた雌端子金具16を容易且つ歩留まりよく製造することができる。
【0051】
次に、
図7~12を用いて、本発明の第二の実施形態としての雌端子52について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、雌端子金具54が、雄端子挿通筒部56の周方向の他の一か所において、軸方向全長に亘って延びる一対の第二分離部58,58がさらに設けられている点に関して、上記第一の実施形態と異なる実施形態を示すものである。より詳細には、雌端子金具54において雄端子挿通筒部56の周方向の一か所(
図10中、左側)に一対の第一分離部29,29が形成されており、かかる一対の第一分離部29,29に連接して外方(
図10中、左方)に向かって突出する一対の重ね板部25a,25bが設けられている。一方、一対の第一分離部29,29に対して雄端子挿通筒部56の径方向で対向する雄端子挿通筒部56の周方向の他の一か所には一対の第二分離部58,58が形成されており、かかる一対の第二分離部58,58に連接して外方(
図10中、右方)に向かって突出する一対の延出板部60,60がさらに設けられている。そして、一対の重ね板部25a,25bが相互に接近する方向(
図10,12中、矢印の方向)に向かって付勢されている一方、一対の延出板部60,60が相互に重ね合されることにより電線接続部30が構成されている。本実施形態では、一対の延出板部60,60が抵抗溶接等の公知の任意の手段を用いて相互に固着されて一体化されている。この結果、雌端子金具54の長手方向(
図10中、左右方向)において、電線接続部30と一対の重ね板部25a,25bの間に、雄端子挿通筒部56が配設されているのである。なお、本実施形態では、雌端子金具54は、帯状の金属平板22を用いて構成されており、金属平板22の長手方向の一端部23が他端部24(
図10中、左側)上に向かって2つ折り状に折り重ねられている。かかる一端部23が他端部24(図
10中、
左側)上に折り重ねられた状態で重ね合わせ面の長手方向(
図10中、左右方向)の中間部分が相互に離隔する方向に向かって湾曲されることにより、略円筒状の雄端子挿通筒部26が構成されるようになっている。なお、一対の延出板部60,60は相互に重ね合せた状態で電線接続部30を構成することができ、かかる電線接続部30に対して電線32の芯線34を溶接する際に、同時に相互に溶接することで作業性の効率化を図ることができる。
【0052】
このような構造とされた本実施形態の雌端子52においても、上記第一の実施形態と同様に、付勢手段を構成するばね部材であるコイルばね50は、雌端子金具54に保持されていることから、従来のように雄端子12を雌端子52に導通接続した後に別体のばね部材等を取り付ける必要がない。それゆえ、作業工程の簡素化を図ることができ、雌端子52と雄端子12間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。また、雌端子52の雄端子挿通筒部56に雄端子12が圧入される際に、付勢手段であるコイルばね50の付勢力に抗して一対の重ね板部25a,25bの一方25aが他方25bに対して雄端子挿通筒部56側に向かってスライド変位されることにより、雄端子挿通筒部56が拡径方向に弾性変形して雄端子12の雄端子挿通筒部56への圧入が許容される。そして、雄端子挿通筒部56の弾性復帰力により雄端子挿通筒部56の内面28によって構成される接続部14が雄端子12に圧接されることとなり、雌端子52と雄端子12間の大きな接圧が確保されるようになっている。
【0053】
本実施形態によれば、雄端子挿通筒部56に設けられた一対の第二分離部58,58から延び出す一対の延出板部60,60が相互に重ね合されることにより、電線接続部30が設けられている。これにより、一対の第二分離部58,58から延び出す一対の延出板部60,60の双方を電流経路とすることができることから、一対の延出板部60,60が相互に重ね合された電線接続部30の断面積を有利に確保することができ、より多くの電流を流すことができる。それゆえ、雄端子挿通筒部56の板厚寸法を薄くしつつ電線接続部30の断面積を確保することができることから、雄端子挿通筒部56の弾性変形を容易にして雄端子12の雄端子挿通筒部56への挿入力の低減を可能にしつつ電流経路の断面積を確保することが可能となる。また、電線接続部30と一対の重ね板部25a,25bの間に、雄端子挿通筒部56が構成配置されていることから、上記第一の実施形態のように雄端子12が圧接される雄端子挿通筒部56と電線接続部30の間に付勢手段であるコイルばね50を配設する必要がないことから、雌端子52の接続部14と電線接続部30間の電流経路を短くすることができ、抵抗の低減を図ることができる。
【0054】
続いて、
図13を用いて、本発明の第三の実施形態としての雌端子62について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、雌端子金具64が第一板金具66と第二板金具68とを含んでおり、第一板金具66と第二板金具68の板厚寸法が相互に異なっている点に関して、上記第二の実施形態と異なる実施形態を示すものである。より詳細には、第一板金具66は、一対の第一分離部29,29の一方側(
図13中、
下側)に連接する一対の重ね板部25a,25bの一方25
bと、一対の第一分離部29,29の一方側から一対の第二分離部58,58の一方側(
図13中、
下側)に延びる雄端子挿通筒部70の周壁と、一対の第二分離部58,58の一方側から延び出す一対の延出板部60,60の一方側(
図13中、
下側)とを一体的に構成することにより形成されている。一方、第二板金具68は、一対の第一分離部29,29の他方側(
図13中、
上側)に連接する一対の重ね板部25a,25bの一方25
aと、一対の第一分離部29,29の他方側から一対の第二分離部58,58の他方側(
図13中、
上側)に延びる雄端子挿通筒部70の周壁と、一対の第二分離部58,58の他方側から延び出す一対の延出板部60,60の他方側(
図13中、
上側)とを一体的に構成することにより形成されている。そして、かかる第一板金具66と第二板金具68が相互に重ね合されることにより、第一板金具66と第二板金具68の長手方向(
図13中、左右方向)の中央部分に雄端子挿通筒部70が構成され、長手方向の基端側(
図13中、右側)に第一板金具66と第二板金具68が固着された電線接続部30が構成され、長手方向の先端側(
図13中、左側)に一対の重ね板部25a,25bを相互に重ね合せて付勢する付勢手段を構成するコイルばね50が配設されている。なお、本実施形態では、第一板金具66と第二板金具68はそれぞれ平板状の金属平板72a,72bを用いて構成されており、金属平板72aが金属平板72bよりも板厚寸法が大きくされている。そして、第一板金具66が略平板形状のままとされている一方、かかる第一板金具66に重ね合される第二板金具68は、長手方向(
図13中、左右方向)の両端部が平板形状のままとされていると共に、長手方向の中央部分において雄端子挿通筒部70の周壁を構成して第一板金具66から離隔する方向に凸となる凸形断面で板幅方向に亘って突出する凸状部74を含んで構成されている。
【0055】
このような構造とされた本実施形態の雌端子62においても、上記第一の実施形態と同様に、付勢手段を構成するばね部材であるコイルばね50は、雌端子金具64に保持されていることから、従来のように雄端子12を雌端子62に導通接続した後に別体のばね部材等を取り付ける必要がない。それゆえ、作業工程の簡素化を図ることができ、雌端子62と雄端子12間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。また、雌端子62の雄端子挿通筒部70に雄端子12が圧入される際に、付勢手段であるコイルばね50の付勢力に抗して一対の重ね板部25a,25bの一方25aが他方25bに対して雄端子挿通筒部70側に向かってスライド変位されることにより、雄端子挿通筒部70が拡径方向に弾性変形して雄端子12の雄端子挿通筒部70への圧入が許容される。そして、雄端子挿通筒部70の弾性復帰力により雄端子挿通筒部70の内面28によって構成される接続部14が雄端子12に圧接されることとなり、雌端子62と雄端子12間の大きな接圧が確保されるようになっている。
【0056】
本実施形態によれば、第一板金具66と第二板金具68を相互に重ね合せることにより、雄端子挿通筒部70とその両側に設けた電線接続部30および付勢手段であるコイルばね50を配設する一対の重ね板部25a,25bを設けることができることから、本発明の雌端子62を容易に製造することができる。また、第一板金具66と第二板金具68の板厚寸法を相互に異ならせることができることから、要求される特性に応じて第一板金具66と第二板金具68の板厚を調整することができ、雌端子62の設計自由度の向上を図ることができる。さらに、板厚寸法が大きい平板形状の第一板金具66に対して、板厚寸法が小さく且つ長手方向両側が平板形状で長手方向中央部分が雄端子挿通筒部70の周壁を構成する凸状部74とされた第二板金具68が重ね合されて、雌端子金具64が構成されている。それゆえ、雄端子12が雄端子挿通筒部70に挿通された際に、板厚寸法の小さい凸状部74を優位に弾性変形させることができることから、雄端子12の挿入力の低減を有利に図ることができる。しかも、第一板金具66の板厚寸法は大きく確保できることから、電線接続部30の断面積は有利に維持することができ、電流量も確保することができる。
【0057】
加えて、
図14に示す本発明の第四の実施形態としての雌端子76のように、第一板金具78が第二板金具80よりも板厚寸法が小さくされていてもよい。すなわち、第一板金具78が平板形状とされている一方、かかる第一板金具78に重ね合される第二板金具80は、長手方向(
図14中、左右方向)の両端部が平板形状されており、長手方向の中央部分に雄端子挿通筒部82の周壁を構成して第一板金具78から離隔する方向に凸となる凸形断面で板幅方向に亘って突出する凸状部84を含んで構成されていてもい。本実施形態のように、板厚寸法が大きい第二板金具80に雄端子挿通筒部82の周壁を構成する凸状部84が形成されている場合には、雄端子12を雄端子挿通筒部82に挿通した際に密着する凸状部84の板厚寸法が大きくされていることから、雌端子76と雄端子12間の低抵抗化を図ることができる。
【0058】
さらに、
図15に示す本発明の第五の実施形態としての雌端子86のように、雄端子挿通筒部88が角が丸くされた略菱形断面形状を有していてもよい。これにより、雄端子挿通筒部88に挿通された雄端子12を内面28を構成する菱形の4辺の中央部で安定して保持できる。すなわち、上記第二の実施形態のように雄端子挿通筒部56が円形断面形状である場合に比して、挿通された雄端子12を保持する接点の位置を固定することができることから、かかる位置で雄端子12を安定的に保持でき且つかかる位置のバラツキを観測することにより製造管理を容易に行うことが可能となっているのである。なお、さらに接点の位置を明確にするために、雄端子挿通筒部88の内面28に周知のエンボスを突出してもよく、本実施形態の場合、菱形の4辺の中央部にそれぞれエンボスを設けてもよい。
【0059】
あるいはまた、
図16~17に示す本発明の第六の実施形態としての雌端子90のように、雄端子挿通筒部92の内面28が雄端子94の圧入方向(
図17中、左方向)における先端側(
図17中、左側)に向かって次第に小径となるテーパ形状とされていてもよい。これにより、雄端子94が雄端子挿通筒部92へ挿入された当初には内面28に当接しないようになっていることから、かかる挿入された当初の挿入力を低減させることができる。特に、本実施形態のように、雄端子94の先端部の先端面96が雄端子挿通筒部92の内面28と相似のテーパ形状とされている場合には、雄端子94が雄端子挿通筒部92に完全に圧入されるまでは挿入力は発生しない一方、雄端子94を雄端子挿通筒部92から引き抜く際には少し引っ張るだけで可能であり、雄端子94の雄端子挿通筒部92に対する挿抜力を大幅に低減することができるようになっている。
【0060】
続いて、
図18~20を用いて、本発明の第七の実施形態としての雌端子98について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、雌端子金具100が、雄端子挿通筒部102の周方向の他の一か所において、軸方向全長に亘って延びる一対の第二分離部104,104が設けられている点に関して、上記第二の実施形態と異なる実施形態を示すものである。より詳細には、雌端子金具100が、一対の第一分離部29,29に連接して外方(
図19中、右方)に突出する一対の重ね板部25a,25bが設けられており、一対の重ね板部25a,25b上にケース20に収容されたコイルばね50が配設保持されている。かかる一対の重ね板部25a,25bの突出端部からそれぞれさらに外方(
図19中、右方)に延び出す一対の延出板部106,106をさらに含んでおり、かかる一対の延出板部106,106が相互に重ね合されており、例えば電線32の芯線34を電線接続部30に溶接する際に、一対の延出板部106,106も相互に固着されて一体化されている。しかも、雄端子挿通筒部102の周方向の他の一か所において、軸方向全長に亘って延びる一対の第二分離部104,104が設けられており、かかる一対の第二分離部104,104はいずれも自由端とされている。
【0061】
このような構造とされた本実施形態の雌端子98においても、上記第一の実施形態と同様に、付勢手段を構成するばね部材であるコイルばね50は、雌端子金具100に保持されていることから、従来のように雄端子12を雌端子98に導通接続した後に別体のばね部材等を取り付ける必要がない。それゆえ、作業工程の簡素化を図ることができ、雌端子98と雄端子12間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、雄端子挿通筒部102の周方向の他の一か所において、軸方向全長に亘って延びる一対の第二分離部104,104が設けられており、かかる一対の第二分離部104,104はいずれも自由端とされている。これにより、雄端子挿通筒部102に雄端子12が圧入される際に、一対の第二分離部104,104が離隔する方向に変位することにより雄端子挿通筒部102が拡径方向に弾性変形して雄端子12の雄端子挿通筒部102への圧入が許容されることから、雄端子12の雄端子挿通筒部102への挿入力の低減を有利に図ることができるようになっている。
【0063】
以上、本発明の複数の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されない。例えば、上記実施形態では、付勢手段としてコイルばね50を例示して説明を行ったが、付勢手段はこれに限定されず、例えば板ばねや皿ばね等のばね部材や、ゴム弾性体等の弾性体などの周知の付勢力を付与する部材の何れも採用可能である。また、上記実施形態では、コイルばね50はケース20を介して雌端子金具16,54,64,100に間接的に保持されていたが、直接的に保持されていてもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、雄端子挿通筒部26,56,70,82,88,92,102の軸方向に直交する方向に電線接続部30に固着された電線32が延び出していたが、雄端子挿通筒部26,56,70,82,88,92,102の軸方向に電線32が延び出すように電線接続部30に固着されていてもよい。加えて、上記実施形態においては、ケース20は金属製であったが、十分な剛性を有する部材であればよく、合成樹脂等の採用が可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、雄端子挿通筒部26,56,70,82,92,102が略円筒状を有する例や雄端子挿通筒部88が略菱形状を有する例を示したが、これに限定されず、雄端子挿通筒部26,56,70,82,88,92,102の断面形状は、挿入される雄端子の断面形状に合わせて矩形や楕円形や多角形等で構成することも可能である。そして、それら任意の形状の雄端子挿通筒部26,56,70,82,88,92,102の内面28には、任意の箇所にエンボスを突設することにより雄端子12,94に対する接点の位置を明確化するようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記第二~第七の実施形態では、第二分離部58,104の周方向位置は、第一分離部29に軸直角方向で対向する位置に設けられていたが、これに限定されない。例えば、第一分離部29と第二分離部58,104が周方向で90°離隔する位置に設けられて、重ね板部25a,25bと延出板部60,106が直交方向に突出するように構成されていてもよい。これにより、雌端子52,62,76,86,90の設計自由度を向上することができる。
【符号の説明】
【0067】
10,52,62,76,86,90,98:雌端子、12,94:雄端子、14:接続部、16,54,64,100:雌端子金具、18:収容空所、20:ケース、22,72a,b:金属平板、23:一端部、24:他端部、25a,b:重ね板部、26,56,70,82,88,92,102:雄端子挿通筒部、28:内面(接続部)、29:第一分離部、30:電線接続部、40:対向壁、50:コイルばね(付勢手段,ばね部材)、58,104:第二分離部、60,106:延出板部、66,78:第一板金具、68,80:第二板金具、74,84:凸状部