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  • 特許-光学式レベル検出装置及びその計量方法 図1
  • 特許-光学式レベル検出装置及びその計量方法 図2
  • 特許-光学式レベル検出装置及びその計量方法 図3
  • 特許-光学式レベル検出装置及びその計量方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】光学式レベル検出装置及びその計量方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/292 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
G01F23/292 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020043730
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143971
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2020-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】池上 幸紀
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6049088(US,A)
【文献】特開昭57-136123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子(7)、受光素子(8)及びプリズム(9)を用いて容器(1)内の液体(2)の量を検出する光学式レベル検出装置において、
前記プリズム(9)を保持する筐体(21)と、前記プリズム(9)の外側に位置し、前記プリズム(9)を覆うように前記筐体(21)に設けられ、アルミ板金又は金属板金よりなるフロントカバー(20)と、前記フロントカバー(20)の上部及び下部に形成された上部開口(20a)及び下部開口(20b)と、を有し、
前記容器(1)内における前記液体(2)の揺れによる液面高さの変動を、前記フロントカバー(20)によって抑制させる構成とした光学式レベル検出装置において、
前記フロントカバー(20)の前記プリズム(9)側の内面(20c)は、光沢のないように形成された表面処理面(20cA)よりなり、前記液体(2)中に位置する前記プリズム(9)から透過した光が、前記フロントカバー(20)の表面処理面(20cA)で反射して前記プリズム(9)内に戻ることのないように構成され、
前記フロントカバー(20)の表面処理面(20cA)は、(A)、アルミ板金クロム酸陽極処理(重クロム酸封孔処理)、(B)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理、(D)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理艶消し、(E)、アルミ板金クロム酸陽極処理(酢酸ニッケル封孔処理)、(F)、金属板金塗装〔エピライト(登録商標)#1000〕茶色、のいずれかひとつよりなり、
前記フロントカバー(20)は、断面でみて凹型をなし、かつ、前記プリズム(9)を覆っていることを特徴とする光学式レベル検出装置。
【請求項2】
発光素子(7)、受光素子(8)及びプリズム(9)を用いて容器(1)内の液体(2)の量を検出する光学式レベル検出装置において、
前記プリズム(9)を保持する筐体(21)と、前記プリズム(9)の外側に位置し、前記プリズム(9)を覆うように前記筐体(21)に設けられ、アルミ板金又は金属板金よりなるフロントカバー(20)と、前記フロントカバー(20)の上部及び下部に形成された上部開口(20a)及び下部開口(20b)と、を有し、
前記容器(1)内における前記液体(2)の揺れによる液面高さの変動を、前記フロントカバー(20)によって抑制させる光学式レベル検出装置の計量方法において、
前記フロントカバー(20)の前記プリズム(9)側の内面(20c)は、光沢のないように形成された表面処理面(20cA)よりなり、前記液体(2)中に位置する前記プリズム(9)から透過した光が、前記フロントカバー(20)の表面処理面(20cA)で反射して前記プリズム(9)内に戻ることのないようにし、
前記フロントカバー(20)の表面処理面(20cA)は、(A)、アルミ板金クロム酸陽極処理(重クロム酸封孔処理)、(B)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理、(D)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理艶消し、(E)、アルミ板金クロム酸陽極処理(酢酸ニッケル封孔処理)、(F)、金属板金塗装〔エピライト(登録商標)#1000〕茶色、のいずれかひとつを用い、
前記フロントカバー(20)は、断面でみて凹型をなし、かつ、前記プリズム(9)を覆っていることを特徴とする光学式レベル検出装置の計量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式レベル検出装置及びその計量方法に関し、特に、プリズムの前面側にフロントカバーを設けて、容器内の液面高さの変動を抑制させると共に、フロントカバーの内面に光の反射を抑える表面処理面を形成することにより、計量の誤判定を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリズムを用いて容器内の液体の量の検出を行うことは、例えば、特許文献1にも開示されているように周知のことである。
例えば、一般に用いられている従来構成の一例を示すと、図3及び図4で示されるように構成されていた。すなわち、図3の構成において、燃料からなる液体2が収容されたタンク等の容器1内には、この容器1とほぼ同じ長さで構成された光学式レベル検出装置3が設けられている。
【0003】
前記光学式レベル検出装置3は、複数のフォトセル4が基板5の一面に整列配置されており、図の構成では、上部フォトセル4aと下部フォトセル4bとが、取り出されて拡大図示されている。
前記各フォトセル4a、4bは、いずれも同じ構成で、基板5において、互いに独立してLEDからなる発光素子7とフォトトランジスタ等からなる受光素子8がプリズム9に設けられている。
【0004】
前記上部フォトセル4aは、前記容器1の空気10に対応して複数配置され、前記下部フォトセル4bは、前記容器1の液体2に対応して複数配置されている。
従って、図3の構成において、空気10に対応する前記上部フォトセル4aの発光素子7からプリズム9へ入射された光11は、プリズム9の内面で直角に反射し、受光素子8に戻るため、前記上部フォトセル4aが空気(又は、水、氷、等)に対応していることが分かる。
【0005】
一方、前記下部フォトセル4bが前記燃料からなる液体に対応する場合には、前記光11が前記プリズム9の斜面で反射することなく、透過して前記発光素子8に戻ることはないため、下部フォトセル4bが燃料2に対応していることが分り、燃料2の残量を確認することができる。
尚、図4は、周知のスネルの法則を示すもので、空気及び燃料等の異なる媒質n、nに対する入射光11の入射角θと屈折光11の屈折角γを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-51109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の光学式レベル検出装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図に示した光学式レベル検出装置においては、空気に対応する各プリズム9において、発光素子7からの光11は、プリズム9の内面で反射して受光素子8内に入光し、この受光素子8から出力する出力信号によって、空気10の範囲を検出することができる。
また、液体2に対応して位置する各プリズム9においては、発光素子7からの光11は、プリズム9では反射せず、直線状に透過して液体2内に入光するため、受光素子8からは、出力信号が発生することはない。
従って、各受光素子8からの出力信号の有無によって、容器1内における液体2の液量を計量することができるが、図3から明らかであるように、プリズムが外から見える構造であるため、容器1内の振動によって液面が揺れると、検出する液面高さが変動し、検出の安定性に欠けていた。
また、外部からの振動によって、容器1内でスプラッシュが発生して、液体2の液面より離れた位置のプリズム9に液体がかかった場合、光が透過し、受光素子8からの出力信号が出力されず、発光素子7であるLEDが故障したものと誤判定されることがあった。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、プリズムの前面側にフロントカバーを設けて、容器内の液面高さの変動を抑制させると共に、アルミ板金又は金属板金よりなるフロントカバーの内面に光の反射を抑える表面処理面を形成することにより、スプラッシュによる発光素子の故障によるものとする誤判定を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光学式レベル検出装置及びその計量方法は、発光素子、受光素子及びプリズムを用いて容器内の液体の量を検出する光学式レベル検出装置において、前記プリズムを保持する筐体と、前記プリズムの外側に位置し、前記プリズムを覆うように設けられ、アルミ板金又は金属板金よりなるフロントカバーと、前記フロントカバーの上部及び下部に形成された上部開口及び下部開口と、を有し、前記容器内における前記液体の揺れによる液面高さの変動を、前記フロントカバーによって抑制させ、前記フロントカバーの前記プリズム側の内面は、光沢のないように形成された表面処理面よりなり、前記液体中に位置する前記プリズムから透過した光が、前記フロントカバーの表面処理面で反射して前記プリズム内に戻ることのないようにし、前記フロントカバーの表面処理面は、(A)、アルミ板金クロム酸陽極処理(重クロム酸封孔処理)、(B)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理、(D)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理艶消し、(E)、アルミ板金クロム酸陽極処理(酢酸ニッケル封孔処理)、(F)、金属板金塗装〔エピライト(登録商標)#1000〕茶色、のいずれかひとつよりなり、前記フロントカバーは、断面でみて凹型をなし、かつ、前記プリズムを覆っている構成と方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による光学式レベル検出装置及びその計量方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、プリズムの外側を覆うように、アルミ板金又は金属板金よりなるフロントカバーが設けられ、このフロントカバーの上部と下部に各々開口を有しているため、容器内の液面揺れ(スロッシング)により、検出する液面高さが変動することを抑制することができ、液面位置の検出を平滑化できる。
また、フロントカバーの内面に、前記段落0009で述べた(A)、(B)、(D)、(E)、(F)のいずれかひとつに光沢のないようにした表面処理面が設けられているため、発光素子からの光がフロントカバーで反射してプリズム内に戻ることのないようにし、誤検出の防止を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による光学式レベル検出装置を示す図2の(B)のA-A拡大横断面図である。
図2】(A)は図1の光学式レベル検出装置の正面図である。(B)は(A)の左側面図である。(C)は(B)の底面図である。
図3】従来の光学式液量計の構成図である。
図4】スネルの法則を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による光学式レベル検出装置及びその計量方法は、プリズムの前面側にフロントカバーを設けて、容器内の液面高さの変動を抑制させると共に、フロントカバーの内面に光の反射を抑える表面処理面を形成することにより、計量の誤判定を防止することである。
【実施例
【0013】
以下、図面と共に、本発明による光学式レベル検出装置及びその計量方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、図で示す従来構成は、本発明の実施の形態の構成とほぼ同一であり、異なる構成は、フロントカバー20が追加されていることであるため、図の構成を本発明の実施の形態に援用するものとする。
図1において符号1で示されるものは図の容器1であり、この容器1の内壁1a図3に示す)には、図2の(A)及び(B)で示される縦長形状の光学式レベル検出装置3が設けられている。
【0014】
図1で示される光学式レベル検出装置3は、図2の(B)のA-A横断面図を拡大して示している。
前記光学式レベル検出装置3の四角枠状の筐体21には、複数の支柱22を介して縦長状の基板5が設けられている。
前記基板5の一面には、ゴム等からなる筒状の光遮蔽体23が設けられ、この光遮蔽体23に一対の保持孔24が設けられている。
前記各保持孔24内には、LED等の発光素子7及びフォトトランジスタ等の受光素子8が各々設けられており、前記光遮蔽体23には、前記発光素子7及び受光素子8に面して、プリズム9が設けられている。尚、この光遮蔽体23は光を反射することのないような黒いゴム等で構成されている。
【0015】
前記筐体21には、前記各プリズム9を覆い、かつ、その外側に位置するように断面凹状のフロントカバー20が設けられ、このフロントカバー20は、その端部20Aがボルト、ピン等の接続部材25を介して前記筐体21に接続されている。前記フロントカバー20は、光を反射することのない表面処理面を有するアルミ板金又は金属板金で構成されている。
【0016】
図1で示す筐体21、基板5及びフロントカバー20は、図2の(A)、(B)で示されるように、図1の紙面と直交する垂直方向Eに沿って延設されている。
前記各素子7、8は、図2の(A)で示されるように、前記基板5の長手方向(前述の垂直方向Eと同じ)に沿って、所定間隔毎に配設されている。
前記フロントカバー20の長手方向の両端には、図2のように、上部開口20aと下部開口20bとが形成され、前記光学式レベル検出装置3を図3のように、前記液体2が収容されている容器1内に設置した場合には、容器1内における前記液体2の揺れによる液面高さの変動を、前記フロントカバー20の各開口20a、20bから液体2を案内することによって防止することができるように構成されている。
【0017】
すなわち、前記フロントカバー20によりプリズム9を囲うことで、フロントカバー20の外面の液面の波(スロッシング)を防波することで抑制している。
【0018】
前記フロントカバー20の内面20cには、前記液体2中に位置するプリズム9から透過した光が、前記フロントカバー20の内面20cで反射して再び前記プリズム9内に戻るような事態が発生することのないように、光沢、かつ、光反射のない表面処理面20cAを有する非反射材料で形成されている。
【0019】
前記表面処理面20cAに関しては、種々の処理によってフロントカバー表面処理による光の反射検証結果が得られている。
すなわち、種々実験の結果、前記フロントカバー20の前記プリズム9側の内面20cは、光沢のないように形成された表面処理面20cAよりなり、前記液体2中に位置する前記プリズム9から透過した光が、前記フロントカバー20の表面処理面20cAで反射して前記プリズム9内に戻ることのないように構成され、前記フロントカバー20の表面処理面20cAは(A)、アルミ板金クロム酸陽極処理(重クロム酸封孔処理)、(B)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理、(D)、アルミ板金黒色着色クロム酸陽極処理艶消し、(E)、アルミ板金クロム酸陽極処理(酢酸ニッケル封孔処理)、(F)、金属板金塗装〔エピライト(登録商標)#1000〕茶色、のいずれかひとつを用いれば、前記受光素子8から正常な状態の出力電圧が得られ、従来のような誤検出が行われることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による光学式レベル検出装置は、プリズムの外側にアルミ板金又は金属板金よりなる断面凹状のフロントカバーを設けているため、液体の揺れによる液面高さの変動を抑制させ、かつ、フロントカバーの内面に光沢、かつ、光反射のない陽極処理又は塗装からなる表面処理面が形成されていることにより、フロントカバーで反射した光がプリズム内に戻ると云うこともなく、光学式レベル検出装置の精度を向上できる。
【符号の説明】
【0021】
1 容器
1a 内壁
2 液体
3 光学式レベル検出装置
5 基板
7 発光素子
8 受光素子
9 プリズム
10 空気
20 フロントカバー
20A 端部
0a 上部開口
20b 下部開口
20c 内面
20cA 表面処理面
21 筐体
22 支柱
23 光遮蔽体
24 保持孔
25 接続部材
図1
図2
図3
図4