(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】カメラモジュール製造装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220124BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20220124BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220124BHJP
G03B 43/00 20210101ALI20220124BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H04N5/232
G02B7/02 Z
G03B17/02
G03B43/00
H04N5/225
(21)【出願番号】P 2020543235
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007682
(87)【国際公開番号】W WO2021171412
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】596041928
【氏名又は名称】株式会社PFA
(73)【特許権者】
【識別番号】521126427
【氏名又は名称】テクノホライゾン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 典
(72)【発明者】
【氏名】浅野 富士夫
(72)【発明者】
【氏名】今川 幸司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀穂
(72)【発明者】
【氏名】高垣 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】真玉 光二
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0201744(US,A1)
【文献】特開2016-092761(JP,A)
【文献】特開2012-058139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 5/225
G03B 43/00
G02B 7/02
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズが組み込まれたレンズユニットと、前記撮影レンズが結像した像を画像信号に変換する撮像素子が取付けられたセンサ基板との相対位置を調整し、相対位置が調整された状態で前記レンズユニットと前記センサ基板とを接合するカメラモジュール製造装置であって、
中央コリメータレンズと前記中央コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置された中央測定チャートとを含み、前記中央測定チャートの像を前記中央コリメータレンズと前記撮影レンズとを通して前記撮像素子の中央部に結像させる中央光学ユニットと、
周辺コリメータレンズと前記周辺コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置された周辺測定チャートとを含み、前記周辺測定チャートの像を前記周辺コリメータレンズと前記撮影レンズとを通して前記撮像素子の異なる周辺部にそれぞれ結像させる少なくとも2つの周辺光学ユニットと、
を含む光学モジュールと、
前記中央光学ユニットによって前記撮像素子の中央部に結像させた前記中央測定チャートの像を前記撮像素子が変換した中央画像信号と、各前記周辺光学ユニットによって前記撮像素子の各周辺部に結像させた各前記周辺測定チャートの像を前記撮像素子が変換した各周辺画像信号と、に基づいて、前記レンズユニットと前記センサ基板との相対位置を調整する制御部と、を備え、
各前記周辺光学ユニットは、各前記周辺コリメータレンズの各光軸が前記中央光学ユニットの前記中央コリメータレンズの光軸に対して傾斜するように配置され、その傾斜角度が変更可能となっていること、
を特徴とするカメラモジュール製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラモジュール製造装置であって、
各前記周辺光学ユニットは、前記中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内における隣接する前記周辺コリメータレンズの光軸が交差するように配置されていること、
を特徴とするカメラモジュール製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラモジュール製造装置であって、
前記撮像素子は長方形であり、
各前記周辺光学ユニットは、前記中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内における隣接する前記周辺コリメータレンズの光軸のなす角度が前記撮像素子の2つの対角線のなす角度となるように配置されていること、
を特徴とするカメラモジュール製造装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のカメラモジュール製造装置であって、
前記撮像素子が取付けられた前記センサ基板を保持するセンサ基板保持部を備え、
センサ基板保持部は、前記撮像素子の対角線の方向が前記中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内における各前記周辺コリメータレンズの光軸の方向となるように、前記中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内に前記センサ基板を保持すること、
を特徴とするカメラモジュール製造装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載のカメラモジュール製造装置であって、
前記レンズユニットを保持するレンズユニット保持部を備え、
各前記周辺光学ユニットは、各前記周辺コリメータレンズの焦点位置が前記中央光学ユニットの前記中央コリメータレンズの焦点位置と同一位置となるように配置されており、
前記レンズユニット保持部は、前記撮影レンズの入射瞳の位置に前記中央コリメータレンズの焦点位置と各前記周辺コリメータレンズの各焦点位置とが重なるように前記レンズユニットを保持し、
前記中央光学ユニットの前記中央コリメータレンズは、前記中央測定チャートの像を前記撮影レンズの前記入射瞳を通して前記撮像素子の中央部に結像させ、
前記周辺光学ユニットの各前記周辺コリメータレンズは各前記周辺測定チャートの像を前記撮影レンズの前記入射瞳を通して前記撮像素子の異なる周辺部にそれぞれ結像させること、
を特徴とするカメラモジュール製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のカメラモジュール製造装置であって、
前記レンズユニット保持部が、前記撮影レンズの光軸と前記中央コリメータレンズの光軸とが同一軸となり、且つ、前記撮影レンズの前記入射瞳の中心位置に前記中央コリメータレンズの焦点位置と各前記周辺コリメータレンズの各焦点位置とが重なるように前記レンズユニットを保持すること、
を特徴とするカメラモジュール製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットと、撮像素子が取付けられたセンサ基板と、を接合するカメラモジュール製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズが組み込まれたレンズユニットと、CCDやCMOS等の撮像素子が取付けられたセンサ基板とを一体化したカメラモジュールが知られている。このようなカメラモジュールでは、撮像素子の撮像面がレンズユニットの結像面に略一致するように、レンズユニットに対するセンサ基板の位置調整を行い、位置調整ができた状態でセンサ基板をレンズユニットに紫外線硬化樹脂により接着している(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5460406号明細書
【文献】特許第4960308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載された従来技術のカメラモジュール製造装置では、レンズユニットに対するセンサ基板の位置を移動させながら測定チャートの画像を撮像し、センサ基板の位置に対する画像の合焦評価値の変化を検出し、合焦評価値の変化に応じてセンサ基板の位置を調整している。このため、センサ基板の多数の異なる位置で測定チャートの画像を取得することが必要となるため、位置調整に時間が掛かってしまうという問題があった。また、特許文献1,2に記載された従来技術のカメラモジュール製造装置では、当初の設計と画角が異なるレンズユニットを用いてカメラモジュールを製造しようとする場合には、周辺の測定チャートの画像が撮像素子の周辺部に結像するように、レンズユニットの画角に合わせて測定チャートを交換したり、レンズユニットに光を導く光学ユニットを交換したりすることが必要となる。このため、特許文献1,2に記載された従来技術のカメラモジュール製造装置では、製造するカメラモジュールの機種を切替えるのに時間と手間が掛かってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、カメラモジュール製造装置において、レンズユニットとセンサ基板との相対位置の調整を短時間で行い、生産性の向上を図ると共に、簡便な方法で製造するカメラモジュールの機種の変更に対応可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカメラモジュール製造装置は、撮影レンズが組み込まれたレンズユニットと、撮影レンズが結像した像を画像信号に変換する撮像素子が取付けられたセンサ基板との相対位置を調整し、相対位置が調整された状態でレンズユニットとセンサ基板とを接合するカメラモジュール製造装置であって、中央コリメータレンズと中央コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置された中央測定チャートとを含み、中央測定チャートの像を中央コリメータレンズと撮影レンズとを通して撮像素子の中央部に結像させる中央光学ユニットと、周辺コリメータレンズと周辺コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置された周辺測定チャートとを含み、周辺測定チャートの像を周辺コリメータレンズと撮影レンズとを通して撮像素子の異なる周辺部にそれぞれ結像させる少なくとも2つの周辺光学ユニットと、を含む光学モジュールと、中央光学ユニットによって撮像素子の中央部に結像させた中央測定チャートの像を撮像素子が変換した中央画像信号と、各周辺光学ユニットによって撮像素子の各周辺部に結像させた各周辺測定チャートの像を撮像素子が変換した各周辺画像信号と、に基づいて、レンズユニットとセンサ基板との相対位置を調整する制御部と、を備え、各周辺光学ユニットは、各周辺コリメータレンズの各光軸が中央光学ユニットの中央コリメータレンズの光軸に対して傾斜するように配置され、その傾斜角度が変更可能となっていること、を特徴とする。
【0007】
このように、中央及び周辺測定チャートがそれぞれ中央及び周辺コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置されているので、撮影レンズの各測定チャートの結像面の高さが撮影レンズの光軸からの光軸に直交方向の距離に対して変化する。このため、撮影レンズの結像面の高さが異なる複数の測定チャートの像を一度の撮像で取得することができ、一度の撮像で、撮影レンズの結像面と撮像素子の撮像面との高さずれに対する空間周波数応答などの合焦評価値の変化特性を取得し、レンズユニットとセンサ基板との相対位置の調整を行うことができる。これにより、レンズユニットとセンサ基板との相対位置の調整を短時間に行うことができ、生産性を向上させることができる。また、各周辺光学ユニットの周辺コリメータレンズの光軸の中央コリメータレンズの光軸に対する傾斜角度が変更可能となっているので、撮影レンズの画角に合わせて傾斜角度を変更することにより、周辺測定チャートの画像を撮像素子の周辺部に結像させることができ、簡便な方法で製造するカメラモジュールの機種の変更に対応することができる。
【0008】
本発明のカメラモジュール製造装置において、各周辺光学ユニットは、中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内における隣接する周辺コリメータレンズの光軸が交差するように配置されていることとしてもよい。また、撮像素子は長方形であり、各周辺光学ユニットは、中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内における隣接する周辺コリメータレンズの光軸のなす角度が撮像素子の2つの対角線のなす角度となるように配置されてもよい。また、撮像素子が取付けられたセンサ基板を保持するセンサ基板保持部を備え、センサ基板保持部は、撮像素子の対角線の方向が中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内における各周辺コリメータレンズの光軸の方向となるように、中央コリメータレンズの光軸に垂直な面内にセンサ基板を保持してもよい。
【0009】
これにより、撮影レンズの画角が変わった場合でも、周辺測定チャートの画像を撮像素子の隅部に結像させることができ、レンズユニットとセンサ基板との相対位置の調整を高精度に行うことができる。
【0010】
本発明のカメラモジュール製造装置において、レンズユニットを保持するレンズユニット保持部を備え、各周辺光学ユニットは、各周辺コリメータレンズの焦点位置が中央光学ユニットの中央コリメータレンズの焦点位置と同一位置となるように配置されており、レンズユニット保持部は、撮影レンズの入射瞳の位置に中央コリメータレンズの焦点位置と各周辺コリメータレンズの各焦点位置とが重なるようにレンズユニットを保持し、中央光学ユニットの中央コリメータレンズは、中央測定チャートの像を撮影レンズの入射瞳を通して撮像素子の中央部に結像させ、周辺光学ユニットの各周辺コリメータレンズは各周辺測定チャートの像を撮影レンズの入射瞳を通して撮像素子の異なる周辺部にそれぞれ結像させてもよい。また、レンズユニット保持部が、撮影レンズの光軸と中央コリメータレンズの光軸とが同一軸となり、且つ、撮影レンズの入射瞳の中心位置に中央コリメータレンズの焦点位置と各周辺コリメータレンズの各焦点位置とが重なるようにレンズユニットを保持してもよい。
【0011】
このように、撮影レンズの入射瞳の位置に中央コリメータレンズの焦点位置と各周辺コリメータレンズの各焦点位置とが重なるようにレンズユニットを保持することにより、中央コリメータレンズと撮影レンズとが中央測定チャート側光学系を構成し、各周辺コリメータレンズと撮影レンズとがそれぞれ周辺測定チャート側光学系を構成する。そして、中央コリメータレンズが撮影レンズの入射瞳を通して撮像素子の撮像面に中央測定チャートの像を結像させ、中央測定チャートを中央コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置することにより、撮像素子の撮像面には中央コリメータレンズの光軸からの光軸に直交方向の距離に従って結像高さの異なる像が結像される。同様に、周辺コリメータレンズが撮影レンズの入射瞳を通して撮像素子の撮像面に周辺測定チャートの像を結像させ、周辺測定チャートを周辺コリメータレンズの光軸に垂直な面に対して傾斜して配置することにより、撮像素子の撮像面には周辺コリメータレンズの光軸からの光軸に直交方向の距離に従って結像高さの異なる像が結像される。このため、1回の撮像で、空間周波数応答などの合焦評価値の算出を精度よく行うことができる。これにより、レンズユニットとセンサ基板とを短時間に調整を行うことができ、生産性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカメラモジュール製造装置は、レンズユニットとセンサ基板との相対位置の調整を短時間で行い、生産性の向上を図ると共に、簡便な方法で製造するカメラモジュールの機種の変更に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態のカメラモジュール製造装置の側面図である。
【
図2】実施形態のカメラモジュール製造装置の中央光学ユニットの構造を示す斜視図である。
【
図3】実施形態のカメラモジュール製造装置の周辺光学ユニットの構造を示す斜視図である。
【
図4】実施形態のカメラモジュール製造装置の中央光学ユニットと複数の周辺光学ユニットの配置を示す斜視図である。
【
図5】実施形態のカメラモジュール製造装置に保持されたセンサ基板に取付けられた撮像素子と周辺コリメータレンズの光軸の方向との関係を示す平面図である。
【
図6】実施形態のカメラモジュール製造装置の光学モジュールの平面図である。
【
図7】実施形態のカメラモジュール製造装置の光学モジュールを
図6に示すB-Bから見た立面図である。
【
図8】中央測定チャートのパターンを示す平面図である。
【
図9】周辺測定チャートのパターンを示す平面図である。
【
図10】実施形態のカメラモジュール製造装置によって組み立てられるカメラモジュールを示す斜視図である。
【
図11】中央光学ユニットと周辺光学ユニットからの光が撮影レンズを通って撮像素子の撮像面に至る光路を示す立面図であって、光路を
図6に示すB-Bから見た図である。
【
図12】撮像素子の撮像面に結像した中央測定チャートの像と、周辺測定チャートの像とを示す平面図である。
【
図13】実施形態のカメラモジュール製造装置の中央光学ユニットの全体光路図(a)と撮像面近傍の部分詳細光路図(b)である。
【
図14】
図12に示す中央測定チャートの像の拡大平面図である。
【
図15】
図14に示す中央測定チャートの計測点位置に対する空間周波数応答の変化を示すグラフである。
【
図16】実施形態のカメラモジュール製造装置の周辺光学ユニットの全体光路図(a)と撮像面近傍の部分詳細光路図(b)である。
【
図17】
図12に示す周辺測定チャートの像の拡大平面図である。
【
図18】
図17に示す周辺測定チャートの計測点位置に対する空間周波数応答の変化を示すグラフである。
【
図19】撮影レンズの結像面と撮像素子の撮像面との間に高さずれと傾斜がある場合の撮像素子の中央部と周辺部とにおける撮影レンズの結像面と撮像素子の撮像面との高さずれΔHに対する空間周波数応答の変化を示すグラフである。
【
図20】撮影レンズの結像面と撮像素子の撮像面とが略同一面に調整された場合の撮像素子の中央部と周辺部とにおける撮影レンズの結像面と撮像素子の撮像面との高さずれΔHに対する空間周波数応答の変化を示すグラフである。
【
図21】他の実施形態の中央測定チャートのパターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態のカメラモジュール製造装置100について説明する。最初に
図1~
図10を参照しながらカメラモジュール製造装置100の構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、カメラモジュール製造装置100は、撮影レンズ41が組み込まれたレンズユニット40と、撮像素子52が取付けられたセンサ基板51とを接合してカメラモジュール50を製造するものである。カメラモジュール製造装置100は、光学モジュール10と、レンズユニット40を保持するロボットアーム45と、上面にセンサ基板51を保持するステージ55と、ステージ55の位置を6軸方向に移動させる6軸アクチュエータ56と、6軸アクチュエータ56を制御する制御部57とを含んでいる。ここで、ロボットアーム45はレンズユニット保持部を構成し、ステージ55はセンサ基板保持部を構成する。以下の説明では、
図2に示すように、中央光学ユニット30に組み込まれている中央測定チャート32の傾斜方向をX方向、水平面でX方向に直交する方向をY方向、垂直方向をZ方向とし、Z方向+側を上側、Z方向-側を下側として説明する。
【0016】
図1に示すように、光学モジュール10は、ベース11と、ベース11の下側の面に取付けられたガイド板12と、ベース11の中央の下面に取付けられた中央光学ユニット30と、ガイド板12にブラケット15を介して取付けられた4つの周辺光学ユニット35とで構成されている。
【0017】
図2に示すように中央光学ユニット30は円筒状のケーシングの中に、中央コリメータレンズ31と、中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面に対して傾斜して配置された中央測定チャート32と、LED等で構成された光源36とを配置して一体としたものである。また、
図3に示すように、周辺光学ユニット35も円筒状のケーシングの中に、周辺コリメータレンズ33と、周辺コリメータレンズ33の光軸33aに垂直な面に対して傾斜して配置された周辺測定チャート34と、LED等で構成された光源36とを配置して一体としたものである。中央測定チャート32、周辺測定チャート34については後で詳しく説明する。なお、以下の説明では、周辺コリメータレンズ33の光軸33aに沿って周辺測定チャート34の表面で光学モジュール10の中心から外周に向かって延びる方向をR1~R4、周辺測定チャート34の表面でR1~R4と直交する方向をS1~S4とする。
【0018】
図4に示すように、中央光学ユニット30は、光学モジュール10の中心で、中央コリメータレンズ31の光軸31aの延びる方向がZ方向となるように配置されている。各周辺光学ユニット35は、各周辺コリメータレンズの各光軸33aが中央光学ユニット30の中央コリメータレンズ31の光軸31aに対して傾斜するように配置されている。また、中央光学ユニット30と、周辺光学ユニット35とは、中央光学ユニット30に組み込まれている中央コリメータレンズ31の光軸31aと各周辺光学ユニット35に組み込まれている各周辺コリメータレンズ33の各光軸33aとが一点29で交差し、且つ、一点29に中央コリメータレンズ31と周辺コリメータレンズ33の各焦点31f、33fが位置するようにベース11とガイド板12とにそれぞれ取付けられている。ここで、詳細については後で説明するが、各周辺光学ユニット35は、
図1に矢印101,102で示すように、各周辺コリメータレンズ33の光軸33aが中央コリメータレンズ31の光軸に対する傾斜角度が変更可能にガイド板12に取付けられている。
【0019】
図4、
図5に示すように、各周辺光学ユニット35は、中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における隣接する周辺コリメータレンズ33の光軸33aのなす角度が長方形の撮像素子の2つの対角線52a,52bのなす角度θ1、θ2となるように配置されている。ここで、角度θ1、角度θ2は、2つの対角線52a,52bのなす角度の内の小さい方の角度と大きい方の角度である。このため、4つの周辺光学ユニット35のそれぞれの周辺コリメータレンズ33の各光軸33aの延びる方向をT1~T4とすると、撮像素子52の中心が中央コリメータレンズ31の光軸31aの通り、撮像素子52の長辺と短辺とがそれぞれX方向、Y方向となるように撮像素子52をセットすると、撮像素子52の2つの対角線52a,52bの延びる方向は中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における各方向T1~T4となる。
【0020】
図6に示すように2つのガイド板12は、四角いベース11の下面に、互いのなす角度がθ1、θ2となるように取付けられている。ここで、四角いベース11の各辺は、X方向とY方向とに向かって延びるように配置されている。従って、四角いベース11の各辺の方向と、撮像素子52の長辺と短辺との各方向とが合うように撮像素子52をセットすると、2つのガイド板12の延びる方向は、撮像素子52の2つの対角線52a,52bの延びる方向であり、中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における各方向T1~T4となる。
【0021】
図7に示すように、各ガイド板12は、下面が一点29を中心にした円弧状に切り欠かれた平板で、円弧状の切欠きに沿って一点29を中心にした円弧上に延びるガイド溝13が設けられている。また、ガイド溝13の外周側には、周辺光学ユニット35が取付けられたブラケット15の位置を固定するピン孔14が円弧状に並べて設けられている。周辺光学ユニット35が取付けられたブラケット15は、ピン16がガイド溝13に嵌まり込んでガイド溝13にガイドされて、円弧状に移動する。また、固定ピン17をブラケット15に設けた穴とガイド板12のピン孔14に通すことによって所定の角度位置に固定される。
【0022】
ガイド溝13は、一点29を中心とした円弧状に配置されている。また、ガイド板12は、撮像素子52の2つの対角線52a,52bの延びる方向に延びている。このため、周辺光学ユニット35は、撮像素子52の2つの対角線52a,52bを含む垂直面内で、周辺コリメータレンズ33の光軸33aが一点29を通る状態で撮影レンズ41の上部を矢印101,102で示すように円弧状に移動する。
【0023】
次に中央測定チャート32と周辺測定チャート34について説明する。
図8に示すように、中央測定チャート32は、光が透過する透明のガラス板の表面に光を遮光する遮光部32sを設けたものである。中央測定チャート32は、Y方向の+側半分が光が透過する透光部32tとなっており、Y方向の-側の半分が光が透過しない遮光部32sとなっている。遮光部32sは、例えば、黒色のクロムエッチングで構成してもよいし、黒色の塗料を塗布することにより構成してもよい。透光部32tと遮光部32sとの間には、X方向に延びる中央エッジ32eが構成される。
【0024】
図2に示すように、中央測定チャート32は、X方向の中央の中心位置32iを中央コリメータレンズ31の光軸31aが通り、遠位端32fが傾斜方向上側、近位端32nが傾斜方向下側となるように中央光学ユニット30の筐体の内部に傾斜して取付けられている。従って、
図8に示す中央エッジ32eは、中央コリメータレンズ31の光軸31aを通り傾斜方向に向かって延びるエッジとなる。
【0025】
図9に示すように、周辺測定チャート34は、三角形の透光部34tと三角形の遮光部34sをR1~R4方向、及び、直交するS1~S4方向に交互に隣接するように配置されたものである。遮光部34sは、例えば、黒色のクロムエッチングで構成してもよいし、黒色の塗料を塗布することにより構成してもよい。R1~R4軸の両側に隣接して配置された三角形の遮光部34sと透光部34tの間には、R1~R4方向に延びる第1エッジ34e1が形成される。また、三角形の遮光部34sとR1~R4方向に隣接する三角形の透光部34tとの間には、S1~S4方向に延びる第2エッジ34e2が形成される。また、三角形の透光部34tのR1~R4に対して45度傾斜した方向には、第3エッジ34e3が形成される。
【0026】
図3に示すように、各周辺測定チャート34は、各周辺コリメータレンズ33の各光軸33aがR1~R4方向の中央の各中心位置34iを通り、遠位端34fが傾斜方向上側、近位端34nが傾斜方向下側となるように周辺光学ユニット35の筐体の内部に傾斜して取付けられている。従って、
図9に示すように、第1エッジ34e1は、周辺コリメータレンズ33の光軸33aを通り傾斜方向に向かって延びるエッジとなり、第2エッジ34e2と第3エッジ34e3とは、第1エッジ34e1と交差する方向に延びるエッジとなる。
【0027】
図10に示すように、カメラモジュール50は、撮影レンズ41が組み込まれたレンズユニット40と、撮像素子52が取付けられたセンサ基板51とを紫外線硬化型の接着剤で接合したものである。
【0028】
レンズユニット40に組み込まれた撮影レンズ41の上面の入射瞳42は、中央コリメータレンズ31と各周辺コリメータレンズ33からの光が入射する領域である。
【0029】
撮像素子52は、撮影レンズ41が撮像面53の上に結像した像を電気的な画像信号に変換するものである。センサ基板51には、撮像素子52からの画像信号を出力する出力端子54が取付けられている。出力端子54は、制御部57に接続されており、撮像素子52が出力した画像信号は、制御部57に入力される。
【0030】
図1に示すように、光学モジュール10の下側には、基台110の上に取付けられた6軸アクチュエータ56と、6軸アクチュエータ56の上側に取付けられて上面にセンサ基板51を保持するステージ55と、ステージ55の上側と光学モジュール10の下側との間に配置されてレンズユニット40を保持するロボットアーム45とが設けられている。なお、光学モジュール10は、図示しないフレームを介して基台110に取付けられている。
【0031】
6軸アクチュエータ56は、内部に6つのステッピングモータを備え、各ステッピングモータを駆動して上側に取付けられたステージ55をX方向,Y方向,Z方向及びX軸周り、Y軸周り、Z軸周りの6方向に移動させるものである。6軸アクチュエータ56は、制御部57に接続され、各ステッピングモータは制御部57からの指令によって動作する。なお、ステッピングモータに限らず、サーボモータによってステージ55の駆動を行うようにしてもよい。
【0032】
ステージ55は、上面にセンサ基板51を保持する図示しないホルダを備えており、上面にセンサ基板51を保持する。なお、ステージ55は、上面にセンサ基板51を真空吸着するようにしてもよい。ステージ55のホルダは、撮像素子52の中心が中央コリメータレンズ31の光軸31aを通り、撮像素子52の長辺と短辺とがそれぞれX方向、Y方向となるようにセンサ基板51をステージ55の上面に保持する。このため、センサ基板51をステージ55の上にセットすると、撮像素子52の2つの対角線52a,52bの延びる方向は中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における4つの周辺光学ユニット35のそれぞれの周辺コリメータレンズ33の各光軸33aの延びる方向T1~T4となる。
【0033】
ロボットアーム45は、先端にレンズユニット40を挟み込んで保持するチャック46を備えている。ロボットアーム45は、チャック46と共に図示しない駆動装置によってX,Y,Z方向に移動する。ロボットアーム45は、レンズユニット40のストレージにおいて先端のチャック46を動作させてレンズユニット40を挟み込んでピックアップし、ステージ55の上に保持されたセンサ基板51の上まで移動させ、センサ基板51の上側の位置にレンズユニット40を保持するものである。
【0034】
制御部57は、内部に情報処理を行うCPU58と動作プログラムやデータ等を格納するメモリ59とを有するコンピュータである。6軸アクチュエータ56、ロボットアーム45、光源36は、制御部57に接続されて制御部57の指令によって動作する。また、撮像素子52は、制御部57に接続されて、撮像素子52が出力する画像信号は制御部57に入力される。
【0035】
制御部57は、ロボットアーム45によってレンズユニット40をセンサ基板51の上側の所定の位置に保持し、6軸アクチュエータ56によってステージ55の上面のX方向,Y方向,Z方向及びX軸周り、Y軸周り、Z軸周りの位置を調整して、レンズユニット40とセンサ基板51とのX方向,Y方向,Z方向及びX軸周り、Y軸周り、Z軸周りの相対位置を調整する。
【0036】
次に、
図11~20を参照しながら、以上のように構成されたカメラモジュール製造装置100の動作について説明する。
【0037】
図1に示すように、最初にステージ55の上面にセンサ基板51を載置し、ステージ55の上面にセンサ基板51を保持させる。センサ基板51のレンズユニット40との接合部に紫外線硬化型の接着剤を塗布しておく。
【0038】
制御部57は、ロボットアーム45によってストレージでレンズユニット40をピックアップし、ステージ55の上面に保持されたセンサ基板51の上まで移動させる。制御部57は、撮影レンズ41の光軸41aが中央コリメータレンズ31の光軸31aと同一軸となり、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に、中央コリメータレンズ31の焦点31fと各周辺コリメータレンズ33の各焦点33fとが位置する一点29とが重なるようにロボットアーム45でレンズユニット40を保持する。
【0039】
次に、制御部57は、6軸アクチュエータ56を動作させて撮像素子52の撮像面53の位置が所定の初期位置となるように設定する。所定の初期位置は、例えば、設計寸法の位置でもよい。
【0040】
先に説明したように、ステージ55のホルダは、撮像素子52の2つの対角線52a,52bの延びる方向が中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における4つの周辺光学ユニット35のそれぞれの周辺コリメータレンズ33の各光軸33aの延びる方向T1~T4となるようにセンサ基板51を保持する。このため、センサ基板51がステージ55の上にセットされると、各周辺光学ユニット35の各周辺コリメータレンズ33の各光軸33aは、撮像素子52の2つの対角線52a,52bを含む垂直面内に位置する。
【0041】
図11は、
図6に示すB-Bから見た光学モジュール10の側面図であり、撮像素子52の対角線52aを含む垂直面内における光路を示す図である。
図11に示すように、中央光学ユニット30の中央測定チャート32に入射した光は、中央コリメータレンズ31を通って入射瞳42から撮影レンズ41に入射して撮像素子52の中央部分に達し、
図12に示すように撮像素子52の撮像面53の中央部分に中央測定チャート32の像81を結像させる。像81は、中央測定チャート32の透光部32tを透過した白い半円の像82と、遮光部32sで光が遮光された黒い像83と、白い半円の像82と黒い像83との境界線の像84とを含んでいる。像84は、中央測定チャートの中央エッジ32eの画像である。
【0042】
画角がα1の撮影レンズ41を用いたカメラモジュール50を組み立てる際には、撮影レンズ41の焦点距離が長いため、撮像素子52は撮影レンズ41とのZ方向の距離が長いP1の高さにセットされる。また、周辺光学ユニット35は、光軸33aの方向であるT1とT3とのなす角度が撮影レンズ41の画角と同一のα1となるようにセットされる。このように撮像素子52と周辺光学ユニット35をセットすることにより、周辺光学ユニット35の周辺測定チャート34の画像は、撮像素子52の四隅に結像される。すなわち、4つの周辺光学ユニット35の各周辺コリメータレンズ33に入射した光は、
図12に示すように、各周辺コリメータレンズ33を通って入射瞳42から撮影レンズ41に入射し、撮像素子52の四隅の周辺部分に達し、
図12に示すように撮像素子52の撮像面53の4つの周辺部分に周辺測定チャート34の像91を結像させる。像91は、周辺測定チャート34の透光部34tを透過した白い三角形の像92と、遮光部34sで光が遮光された黒い像93と、白い像92と黒い像93との境界線の像94~96とを含んでいる。像94~96は、周辺測定チャート34の第1エッジ34e1~第3エッジ34e3の画像である。
【0043】
また、画角がα2の撮影レンズ411を用いたカメラモジュール50を組み立てる際には、撮影レンズ411の焦点距離が短いため、撮像素子52は撮影レンズ41とのZ方向の距離が短いP2の高さにセットされる。また、周辺光学ユニット35は、光軸33aの方向であるT1とT3とのなす角度が撮影レンズ41の画角と同一のα2となるようにセットされる。これにより、撮影レンズ41よりも画角が広い撮影レンズ411を用いたカメラモジュール50を組み立てる場合にも、画角α1の撮影レンズ41を用いた場合と同様、周辺光学ユニット35の周辺測定チャート34の画像を、撮像素子52の四隅の周辺部に結像させることができる。
【0044】
ここで、中央光学ユニット30の詳細と中央光学ユニット30によって撮像面53の中央部に結像する像81の詳細について説明する。
【0045】
図13(a)に示すように、中央コリメータレンズ31は、撮影レンズ41の側に焦点31fがある。レンズユニット40は、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に中央コリメータレンズ31の焦点31fが重なるように保持されている。これによって、中央コリメータレンズ31と撮影レンズ41は中央測定チャート側テレセントリック光学系を構成している。そして、中央測定チャート32を透過した主光線は、中央コリメータレンズ31で焦点31fに向かって収束して撮影レンズ41の入射瞳42から撮影レンズ41に入射し、中央測定チャート32のパターンは
図13(b)に示すように結像面65に結像する。
【0046】
中央コリメータレンズ31の光軸31aが通る中央測定チャート32の中心位置32iを透過した光線は、
図13(a)、
図13(b)に実線で示す光路61のように進み、中心位置32iのパターンは、基準結像面65iの光軸31aの近傍の中心部に結像する。
【0047】
一方、中央測定チャート32は中央コリメータレンズ31の光軸31aに直交する面に対して傾斜して配置されているので、中央測定チャート32の遠位端32fを透過した光線は、
図13(a)、
図13(b)に破線で示す光路62のように進み、遠位端32fのパターンは、基準結像面65iよりも上側の上端結像面65nで光軸31aから光軸31aと直交するX方向に-ΔXだけずれた位置に結像する。
【0048】
また、中央測定チャート32の近位端32nを透過した光線は、
図13(a)、
図13(b)に一点鎖線で示す光路63のように進み、近位端32nのパターンは、基準結像面65iよりも下側の下端結像面65fで光軸31aから光軸31aと直交するX方向に+ΔXだけずれた位置に結像する。
【0049】
従って、撮像面53が基準結像面65iの高さとなるように6軸アクチュエータ56によってセンサ基板51の高さが調整されている場合、
図14の中央部のように、中央測定チャート32の中心位置32iの中央エッジ32eはボケが無いシャープな像84iとして撮像面53に結像し、遠位端32fと近位端32nの中央エッジ32eはぼけた像84f,84nとして撮像面53に結像する。
【0050】
図14に示すように、撮像面53に結像した中央測定チャート32の像81は、撮像素子52によって中央画像信号に変換されて制御部57に入力される。制御部57は、
図14に示すようにX方向に沿って所定の間隔で中央エッジ32eの部分の像に計測点85を設定する。そして、制御部57は、各計測点85において焦点が合っているかどうかを評価する合焦評価値を算出する。本実施形態では、合焦評価値として空間周波数応答を用いることとして説明するが、これに限らず、例えば、コントラストなどの他の合焦評価値を用いるようにしてもよい。
【0051】
制御部57は、算出した各計測点85の空間周波数応答を用いて、
図15に示すように撮像面53の中央部における計測点85のX方向の位置に対する空間周波数応答の変化を示す線aを含む中央部スルーフォーカスグラフを生成する。
【0052】
このように、中央光学ユニット30では、中央測定チャート32が中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面に対して傾斜して配置されているので、撮影レンズ41の中央測定チャート32の結像面65の高さが撮影レンズ41の光軸41aからの光軸41aに直交方向の距離に対して上端結像面65n、基準結像面65i、下端結像面65fのように変化する。このため、撮影レンズ41の結像面65の高さが異なる複数の中央測定チャート32の像81を一度の撮像で取得することができ、一度の撮像で、
図15に示すような中央部スルーフォーカスグラフを生成することができる。
【0053】
次に、周辺光学ユニット35の詳細と周辺光学ユニット35によって撮像面53の周辺部に結像する像91の詳細について説明する。以下、画角がα1で焦点距離が長い撮影レンズ41を用いた場合について説明するが、画角がα2で焦点距離が短い撮影レンズ411を用いた場合も同様である。
【0054】
中央光学ユニット30と同様、周辺光学ユニット35の周辺コリメータレンズ33は、撮影レンズ41の側に焦点33fが位置しており、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に周辺コリメータレンズ33の焦点33fが重なり、周辺コリメータレンズ33と撮影レンズ41とが周辺測定チャート側テレセントリック光学系を構成している。
図16(a)に示すように、周辺測定チャート34を透過した主光線は、周辺コリメータレンズ33で焦点33fに向かって収束して撮影レンズ41の入射瞳42から撮影レンズ41に入射し、周辺測定チャート34のパターンは
図16(b)に示すように結像面75に結像する。
【0055】
周辺コリメータレンズ33の光軸33aが通る周辺測定チャート34の中心位置34iを透過した光線は、
図16(a)、
図16(b)に実線で示す光路71のように進み、中心位置34iのパターンは、基準結像面75iに結像する。
【0056】
一方、周辺測定チャート34は周辺コリメータレンズ33の光軸33aに直交する面に対して傾斜して配置されているので、周辺測定チャート34の遠位端34fを透過した光線は、
図16(a)、
図16(b)に破線で示す光路72のように進み、遠位端32fのパターンは、基準結像面75iよりも上側の上端結像面75nで、中心位置34iのパターンが結像する位置よりも周辺部に向かって+ΔRだけずれた位置に結像する。
【0057】
また、周辺測定チャート34の近位端34nを透過した光線は、
図16(a)、
図16(b)に一点鎖線で示す光路73のように進み、近位端34nのパターンは、基準結像面75iよりも下側の下端結像面75fで、中心位置34iのパターンが結像する位置よりも中央部側に向かって-ΔRだけずれた位置に結像する。
【0058】
従って、撮像面53が基準結像面75iの高さとなるように6軸アクチュエータ56によってセンサ基板51の高さが調整されている場合、
図17に示すように、中心位置34iの近傍の第1エッジ34e1はボケが無いシャープな像94iとして周辺部の撮像面53に結像し、遠位端32fと近位端32nの第1エッジ34e1はぼけた像94f,94nとして撮像面53に結像する。
【0059】
制御部57は、
図17に示すように、R1の方向に沿って所定の間隔で第1エッジ34e1~第3エッジ34e3の部分の像94~96にそれぞれ計測点97を設定する。そして、制御部57は、各計測点97において空間周波数応答を算出し、
図18に示すように撮像面53の周辺部における計測点97のR1方向の位置に対する空間周波数応答の変化を示す線b1を生成する。同様に、制御部57は、R2~R4の各方向延びる各周辺部についても同様のスルーフォーカスグラフを生成する。そして、R1~R4の各方向についての各線b1~b4を重ね合わせて、
図18に示すような周辺部スルーフォーカスグラフを生成する。
【0060】
中央光学ユニット30と同様、周辺光学ユニット35でも各周辺測定チャート34が各周辺コリメータレンズ33の各光軸33aに垂直な面に対して傾斜して配置されているので、撮影レンズ41の各周辺測定チャート34の結像面75の高さが撮影レンズ41の光軸41aからの光軸41aに直交方向の距離に対して上端結像面75n、基準結像面75i、下端結像面75fのように変化する。このため、撮影レンズ41の結像面75の高さが異なる複数の周辺測定チャート34の像91を一度の撮像で取得することができ、一度の撮像で、
図18に示すような周辺部スルーフォーカスグラフを生成することができる。
【0061】
制御部57は、
図15に示す中央部スルーフォーカスグラフと
図13(b)に示す結像面65の高さとX方向の距離の関係とを用いて、
図11の線aを
図19(a)に示す線cに変換する。ここで線cは、中央部における撮影レンズ41の結像面65と撮像素子52の撮像面53との高さずれΔHに対する空間周波数応答の変化を示す線である。また、同様に、
図18に示す線b1~b4を
図19(a)に示す線d1から線d4に変換する。ここで線d1~線d4は、各周辺部における撮影レンズ41の結像面75と撮像素子52の撮像面53との高さずれΔHに対する空間周波数応答の変化を示す線である。
【0062】
図19(a)を参照すると、線cは、高さずれΔH1において空間周波数応答が最大値となっており、ΔH1がマイナスであることから、
図19(b)に示すように撮像面53の中央部は撮影レンズ41の結像面65に対してΔH1だけ低くなっていると判断できる。また、線d1,d3も高さずれΔH1において空間周波数応答が最大値となっているので、R1、R3方向の周辺部では、撮像面53が撮影レンズ41の結像面75に対してΔH1だけ低くなっていると判断することができる。同様に、線d2,d4はそれぞれ高さずれΔH3、ΔH2において、空間周波数応答が最大となっているので、R2、R4方向の周辺部では、撮像面53が撮影レンズ41の結像面75に対してそれぞれΔH3、ΔH2だけ低くなっていると判断することができる。
【0063】
ここで、撮影レンズ41の結像面65、75は同一面で、
図19(b)に示すように、ΔH3の絶対値>ΔH1の絶対値>ΔH2の絶対値であるから、
図19(b)に示すように、撮像面53は、撮影レンズ41の結像面65,75に対して中央部で高さΔH1だけ低くなっており、R2-R4方向でR2側が低くなるように傾斜していることがわかる。
【0064】
制御部57は、
図19(a)、
図19(b)に示すデータに基づいて撮像面53を少し上昇させると共にR2-R4方向の傾斜を解消するように6軸アクチュエータ56を動作させる。
【0065】
この動作により、
図20(b)に示すように、撮像面53が撮影レンズ41の結像面65,75と略同一面となった場合には、
図20(a)に示すように、線c、d1~d4は全て高さずれΔHがゼロの位置において最大値となる。
【0066】
このように、撮像素子52の撮像面53と撮影レンズ41の結像面65,75とが略同一面となったら、その状態を保持したまま、制御部57は、図示しない紫外線発光装置によって紫外線を接着剤に向かって照射し、接着剤を硬化させてレンズユニット40とセンサ基板51とを接合してカメラモジュール50の組立を完了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のカメラモジュール製造装置100では、制御部57は、撮影レンズ41の結像面65、75の高さが異なる中央測定チャート32の像81と複数の周辺測定チャート34の像91を一度の撮像でそれぞれ中央画像信号、周辺画像信号として撮像素子52から取り込む。そして、
図15に示す中央部スルーフォーカスグラフと
図18に示す周辺部スルーフォーカスグラフの生成、
図19に示す撮影レンズ41の結像面65,75と撮像素子52の撮像面53との高さずれΔHに対する空間周波数応答の変化を示す曲線の生成を行い、撮像面53の高さと傾斜の調整を行うことができる。このように、本実施形態のカメラモジュール製造装置100は、一度の撮像で、撮像素子52の中央部と複数の周辺部とにおいて、撮影レンズ41の結像面65,75と撮像素子52の撮像面53との高さずれΔHに対する空間周波数応答の変化特性を取得し、レンズユニット40とセンサ基板51との高さ方向、及び、傾斜方向の調整を同時に行うことができる。これにより、レンズユニット40とセンサ基板51との相対位置の調整をより短時間に行うことができ、生産性をより向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態のカメラモジュール製造装置100は、周辺光学ユニット35は、撮像素子52の2つの対角線52a,52bを含む垂直面内で、周辺コリメータレンズ33の光軸33aが一点29を通る状態で撮影レンズ41の上部を矢印101,102で示すように円弧状に移動可能に構成されている。このように、各周辺光学ユニット35の周辺コリメータレンズ33の光軸33aの中央コリメータレンズ31の光軸31aに対する傾斜角度が変更可能となっているので、撮影レンズ41の画角に合わせて傾斜角度を変更することにより、周辺測定チャート34の画像を撮像素子52の四隅の周辺部に結像させることができ、簡便な方法で、画角、或いは焦点距離の異なる撮影レンズ41を組み込んだカメラモジュール50の製造に対応することができる。
【0069】
また、本実施形態のカメラモジュール製造装置100では、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に中央コリメータレンズ31の焦点31fの位置と周辺コリメータレンズ33の焦点33fの位置とが重なるようにレンズユニット40を保持することにより、中央コリメータレンズ31と撮影レンズ41とが中央測定チャート側テレセントリック光学系を構成し、周辺コリメータレンズ33と撮影レンズ41とが周辺測定チャート側テレセントリック光学系を構成する。そして、中央コリメータレンズ31、周辺コリメータレンズ33が撮影レンズ41の入射瞳42を通して撮像素子52の中央部、周辺部に中央測定チャート32、周辺測定チャート34の像を結像させる構成としている。このため、中央測定チャート32、周辺測定チャート34を光軸31a,33aに垂直な面に対してそれぞれ傾斜して配置しても、撮像素子52の撮像面53に結像する中央測定チャート32の像81、周辺測定チャート34の像91の大きさが変化しない。このため、誤差要因が減って精度を向上させることができ、空間周波数応答の算出を精度よく行うことができる。
【0070】
なお、中央コリメータレンズ31と撮影レンズ41、及び、周辺コリメータレンズ33と撮影レンズ41は、それぞれテレセントリック光学系を構成しなくてもよい。この場合でも、中央コリメータレンズ31、周辺コリメータレンズ33が撮影レンズ41の入射瞳42を通して撮像素子52の中央部、周辺部に中央測定チャート32、周辺測定チャート34の像を結像させ、中央測定チャート32、周辺測定チャート34をそれぞれ中央コリメータレンズ31の光軸31a、周辺コリメータレンズ33の光軸33aに垂直な面に対して傾斜して配置することにより、撮像素子52の撮像面には中央コリメータレンズ31の光軸31aからの光軸31aに直交方向の距離に従って結像高さの異なる像が結像され、周辺コリメータレンズ33の光軸33aからの光軸33aに直交方向の距離に従って結像高さの異なる像が結像される。このため、1回の撮像で、空間周波数応答などの合焦評価値の算出を精度よく行うことができる。これにより、レンズユニットとセンサ基板とを短時間に調整を行うことができ、生産性をより向上させることができる。
【0071】
また、この場合、
図21に示すように、中央測定チャート32に絶対位置のわかる目盛り32mを取付け、周辺測定チャート34にも同様の目盛りを取付け、この目盛り32mを参照して空間周波数応答の算出を行うことでテレセントリック光学系としたと同様の精度とすることができる。
【0072】
なお、
図13(a)に示す、中央測定チャート32の遠位端32fと近位端32nとの間の中央コリメータレンズ31の光軸31aに沿った高さの差A1と、上端結像面65nと下端結像面65fとの間の高さの差A2の比率(A1/A2)と、中央コリメータレンズ31の焦点距離f1と撮影レンズ41の焦点距離f2との比率とは下記の式(1)のような関係になる。
A1/A2=(f1/f2)
2 --- (1)
【0073】
同様に
図16(a)に示す周辺測定チャート34の遠位端34fと近位端334nとの間の周辺コリメータレンズ33の光軸33aに沿った距離の差B1と、上端結像面75nと下端結像面75fとの間の高さの差Bの比率(B1/B2)と、周辺コリメータレンズ33の焦点距離g1と撮影レンズ41の局部的焦点距離f3との比率とのは下記の式(2)のような関係になる。
B1/B2=(g1/f3)
2 --- (2)
ここで、局部的焦点距離f3は、例えば、光軸41aに対する画角をθとして、f3=f2/cos(θ)で示されるような局部的な焦点距離である。
【0074】
ここで、上端結像面65n,75nと下端結像面65f,75fとの間の高さの差A2,B2は、センサ基板51の高さ調整範囲である。従って、撮影レンズ41の焦点距離f2、局部的焦点距離f3に基づいて中央測定チャート32、周辺測定チャート34の光軸31a,33aに垂直な面に対する角度と長さを変化させることによって高さの差A2、B2を調整し、センサ基板51の高さ調整範囲を撮影レンズ41に合わせて調整することができる。
【0075】
また、本実施形態のカメラモジュール製造装置100では、制御部57が、撮影レンズ41の光軸41aが中央コリメータレンズ31の光軸31aと同一軸で、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に中央コリメータレンズ31の焦点31fの位置と各周辺コリメータレンズ33の各焦点33fの位置とが重なるようにレンズユニット40を保持することとして説明したが、これに限らない。入射瞳42の中心位置に各焦点31f,33fの位置が重なっていれば、撮影レンズ41の光軸41aが中央コリメータレンズ31の光軸31aと同一軸からずれていてもよい。また、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に限らず、入射瞳42の領域の範囲に中央コリメータレンズ31の焦点31fの位置と各周辺コリメータレンズ33の各焦点33fの位置とが重なるようにレンズユニット40を保持するようにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態のカメラモジュール製造装置100では、各周辺光学ユニット35は、中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における隣接する周辺コリメータレンズ33の光軸33aのなす角度が長方形の撮像素子の2つの対角線52a,52bのなす角度θ1、θ2となるように配置されていることとして説明したが、これに限らず、対角線52a,52bのなす角度θ1、θ2に概ね合っていれば必ずしも角度θ1、θ2と一致していなくてもよい。例えば、中央コリメータレンズ31の光軸31aに垂直な面内における隣接する周辺コリメータレンズ33の光軸33aが交差するように配置されていれば、各光軸のなす角度が対角線52a,52bのなす角度θ1、θ2でなくてもよい。
【0077】
また、本実施形態のカメラモジュール製造装置100では、6軸アクチュエータ56によってステージ55のX方向、Y方向、Z方向、X軸周り、Y軸周り、Z軸周りの6方向の位置を調整し、レンズユニット40に対するセンサ基板51の相対的な位置を調整することとして説明したが、これに限らない。中央光学ユニット30によって撮像素子52の中央部に結像された中央測定チャート32の像を撮像素子52が変換した中央画像信号と、複数の周辺光学ユニットによって撮像素子52の異なる周辺部にそれぞれ結像された周辺測定チャート34の像を撮像素子52が変換した各周辺画像信号とに基づいて、レンズユニット40とセンサ基板51との相対位置の調整を行うことができれば、ロボットアーム45を6軸方向に移動させてセンサ基板51に対するレンズユニット40の相対的な位置を調整することとしてもよい。この場合、ロボットアーム45は、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置に限らず、入射瞳42の領域の範囲に中央コリメータレンズ31の焦点31fの位置と各周辺コリメータレンズ33の各焦点33fの位置とが重なるようにレンズユニット40を保持してセンサ基板51に対するレンズユニット40の相対的な位置を調整する。なお、撮影レンズ41の入射瞳42の中心位置と中央コリメータレンズ31の焦点31fの位置と各周辺コリメータレンズ33の各焦点33fの位置とのずれが所定の閾値よりも大きくなってしまう場合には、相対位置の調整を中止するようにしてもよい。
【0078】
この場合には、ロボットアーム45の駆動機構が移動機構を構成する。また、ロボットアーム45とステージ55とを協調させて6軸方向に移動させてレンズユニット40とセンサ基板51との相対位置を調整するようにしてもよい。この場合には、ロボットアーム45の駆動機構と6軸アクチュエータ56とが移動機構を構成する。このように、移動機構は、ロボットアーム45またはステージ55のいずれか一方又は両方を他方に対して相対的に移動させる機構であればよい。
【符号の説明】
【0079】
10 光学モジュール、11 ベース、12 ガイド板、13 ガイド溝、14 ピン孔、15 ブラケット、16 ピン、17 固定ピン、29 一点、30 中央光学ユニット、31 中央コリメータレンズ、31a,33a,41a 光軸、31f,33f 焦点、32 中央測定チャート、32e 中央エッジ、32f,34f 遠位端、32i,34i 中心位置、32n,34n 近位端、32s,34s 遮光部、32t,34t 透光部、32m メモリ、34 周辺測定チャート、34e1 第1エッジ、34e2 第2エッジ、34e3 第3エッジ、35 周辺光学ユニット、36 光源、40 レンズユニット、41,411 撮影レンズ、42 入射瞳、45 ロボットアーム、46 チャック、50 カメラモジュール、51 センサ基板、52 撮像素子、53 撮像面、54 出力端子、55 ステージ、56 6軸アクチュエータ、57 制御部、58 CPU、59 メモリ、61~63,71~73 光路、65,75 結像面、65f,75f 下端結像面、65i,75i 基準結像面、65n,75n 上端結像面、81~84,91~96,84f,84i,84n,94f,94i,94n 像、85,97 計測点、100 カメラモジュール製造装置、110 基台。