(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】農作業機、耕耘爪の摩耗判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 33/16 20060101AFI20220124BHJP
A01B 33/10 20060101ALI20220124BHJP
A01B 33/12 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A01B33/16
A01B33/10 Z
A01B33/12 A
(21)【出願番号】P 2017243670
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 和正
(72)【発明者】
【氏名】川上 真一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英樹
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135633(JP,A)
【文献】実開昭53-154802(JP,U)
【文献】実開昭57-119602(JP,U)
【文献】特開2007-040705(JP,A)
【文献】特開2007-008249(JP,A)
【文献】特開2014-227125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345891(US,A1)
【文献】特開2017-077794(JP,A)
【文献】特開2011-189795(JP,A)
【文献】特開2017-065574(JP,A)
【文献】特開2017-154199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/16
A01B 33/10
A01B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耕耘爪を含む耕耘ロータと、
前記耕耘ロータの上に配置されたシールドカバーと、
前記シールドカバーに対して上下方向に回転可能に接続された整地体と、
前記複数の耕耘爪の少なくとも一つと電気的に接続された送信回路と、
受信回路と、
前記受信回路と電気的に接続されたアンテナと、
を有し、
前記送信回路は、前記複数の耕耘爪の少なくとも一つに対して電力を供給可能であり、
前記アンテナは、
前記送信回路と電気的に接続された耕耘爪
自体から放射された電波を受信する、
農作業機。
【請求項2】
複数の耕耘爪を含む耕耘ロータと、
前記耕耘ロータの上に配置されたシールドカバーと、
前記シールドカバーに対して上下方向に回転可能に接続された整地体と、
前記複数の耕耘爪の少なくとも一つと電気的に接続された受信回路と、
送信回路と、
前記送信回路と電気的に接続されたアンテナと、
を有し、
前記送信回路は、前記アンテナに対して電力を供給可能であり、
前記複数の耕耘爪の少なくとも一つは、前記アンテナから放射された電波を受信する、
農作業機。
【請求項3】
前記アンテナは、前記耕耘ロータと前記シールドカバーの間に配置される、請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記アンテナは、前記シールドカバーに設けられた開口部を介して前記耕耘ロータに対向して配置される、請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項5】
制御部をさらに有し、
前記送信回路又は前記受信回路は、前記制御部に含まれる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項6】
前記制御部は、中央演算処理装置及び記憶装置を含み、
前記記憶装置は、前記中央演算処理装置に、前記受信回路を介して前記制御部に入力された信号に基づいて、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する処理を実行させるためのプログラムを記憶する、請求項5に記載の農作業機。
【請求項7】
前記制御部は、中央演算処理装置及び記憶装置を含み、
前記記憶装置は、前記中央演算処理装置に、前記受信回路を介して前記制御部に入力された信号の強度を解析する処理を実行させるためのプログラムを記憶する、請求項5に記載の農作業機。
【請求項8】
前記記憶装置は、前記受信回路を介して前記制御部に入力された第1信号の強度の最大値を記憶し、
前記プログラムは、前記中央演算処理装置に、前記記憶装置
から読み出した前記第1信号の強度の最大値と前記受信回路を介して前記制御部に入力された第2信号の強度の最大値とを比較して差分を求める処理を実行させる、請求項7に記載の農作業機。
【請求項9】
農作業機が有する耕耘ロータに含まれる耕耘爪の摩耗判定方法であって、
送信回路から電力を供給することにより前記耕耘爪
自体から電波を放射し、受信回路に接続されたアンテナで受信した前記電波の強度に基づいて、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する、耕耘爪の摩耗判定方法。
【請求項10】
農作業機が有する耕耘ロータに含まれる耕耘爪の摩耗判定方法であって、
送信回路から電力を供給することにより前記農作業機が有するアンテナから電波を放射し、受信回路に接続された前記耕耘爪で受信した前記電波の強度に基づいて、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する、耕耘爪の摩耗判定方法。
【請求項11】
受信した前記電波を前記受信回路にて信号に変換し、前記信号の強度を解析することにより、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する、請求項9又は10に記載の耕耘爪の摩耗判定方法。
【請求項12】
記憶装置から第1信号の強度の最大値を読み出し、
受信した前記電波を前記受信回路にて第2信号に変換し、前記記憶装置から読み出した第1信号の強度の最大値と前記第2信号の強度の最大値とを比較して差分を求めることにより、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する、請求項11に記載の耕耘爪の摩耗判定方法。
【請求項13】
コンピュータに、請求項11乃至12のいずれか一項に記載された耕耘爪の摩耗判定方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機及び耕耘爪の摩耗判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業用のロータリー作業機などに装備する耕耘爪は、耕耘作業の際の土壌との接触により徐々に摩耗が進行する。摩耗が進行するにしたがい、耕耘性能が低下してゆき、最終的には土壌の放擲能力や反転能力が低下して、適切な耕耘作業が行えない状態となる。そのため、農作業者は、定期的に耕耘爪の摩耗の度合いを確認し、ある程度まで摩耗が進行したら速やかに交換することで対応している。
【0003】
このような耕耘爪の交換時期を判断するために、例えば特許文献1には、耕耘爪の交換の目安となる摩耗後のラインに沿う位置に、両面から視認できるリブを設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術の場合、結局、耕耘爪の摩耗の度合いは農作業者が目視で確認しなければならず、確認を忘れてしまったり、面倒で確認を怠ったりした場合には、耕耘爪の交換時期を逸してしまう可能性があるという問題があった。
【0006】
また、ロータリー作業機で耕耘作業を行う際に、耕耘爪に土が付着する場合がある。そのような場合、特許文献1に記載された技術では、土の影響でリブが視認できず、摩耗の度合いを判断することができない場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、農作業者の目視によらず、耕耘爪の摩耗の度合いを判定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における農作業機は、複数の耕耘爪を含む耕耘ロータと、前記耕耘ロータの上に配置されたシールドカバーと、前記シールドカバーに対して上下方向に回転可能に接続された整地体と、前記複数の耕耘爪の少なくとも一つと電気的に接続された送信回路と、受信回路と、前記受信回路と電気的に接続されたアンテナと、を有し、前記送信回路は、前記複数の耕耘爪の少なくとも一つに対して電力を供給可能であり、前記アンテナは、前記耕耘爪から放射された電波を受信する。
【0009】
本発明の一実施形態における農作業機は、複数の耕耘爪を含む耕耘ロータと、前記耕耘ロータの上に配置されたシールドカバーと、前記シールドカバーに対して上下方向に回転可能に接続された整地体と、前記複数の耕耘爪の少なくとも一つと電気的に接続された受信回路と、送信回路と、前記送信回路と電気的に接続されたアンテナと、を有し、前記送信回路は、前記アンテナに対して電力を供給可能であり、前記複数の耕耘爪の少なくとも一つは、前記アンテナから放射された電波を受信する。
【0010】
前記アンテナは、前記耕耘ロータと前記シールドカバーの間に配置されていてもよいし、前記シールドカバーに設けられた開口部を介して前記耕耘ロータに対向して配置されてもよい。
【0011】
上述の農作業機は、制御部をさらに有し、前記送信回路又は前記受信回路は、前記制御部に含まれていてもよい。
【0012】
前記制御部は、中央演算処理装置及び記憶装置を含み、前記記憶装置は、前記中央演算処理装置に、前記受信回路を介して前記制御部に入力された信号に基づいて、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する処理を実行させるためのプログラムを記憶していてもよい。
【0013】
前記制御部は、中央演算処理装置及び記憶装置を含み、前記記憶装置は、前記中央演算処理装置に、前記受信回路を介して前記制御部に入力された信号の強度を解析する処理を実行させるためのプログラムを記憶していてもよい。
【0014】
前記記憶装置は、前記受信回路を介して前記制御部に入力された第1信号の強度の最大値を記憶し、前記プログラムは、前記中央演算処理装置に、前記記憶装置に記憶された前記第1信号の強度の最大値と前記受信回路を介して前記制御部に入力された第2信号の強度の最大値とを比較して差分を求める処理を実行させるものであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態における耕耘爪の摩耗判定方法は、送信回路から電力を供給することにより前記耕耘爪から電波を放射し、受信回路に接続されたアンテナで受信した前記電波の強度に基づいて、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する。
【0016】
本発明の一実施形態における耕耘爪の摩耗判定方法は、送信回路から電力を供給することにより前記農作業機が有するアンテナから電波を放射し、受信回路に接続された前記耕耘爪で受信した前記電波の強度に基づいて、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定する。
【0017】
上述の耕耘爪の摩耗判定方法は、受信した前記電波を前記受信回路にて信号に変換し、前記信号の強度を解析することにより、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定するものであってもよい。
【0018】
上述の耕耘爪の摩耗判定方法は、記憶装置から第1信号の強度の最大値を読み出し、受信した前記電波を前記受信回路にて第2信号に変換し、前記記憶装置から読み出した第1信号の強度の最大値と前記第2信号の強度の最大値とを比較して差分を求めることにより、前記耕耘爪の摩耗の度合いを判定するものであってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態におけるプログラムは、コンピュータに、上述の耕耘爪の摩耗の度合いを判定する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、農作業者の目視によらず、耕耘爪の摩耗の度合いを判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の農作業機の構成を背面側から示す図である。
【
図2】第1実施形態の農作業機の構成を左側方から示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の農作業機における耕耘爪の摩耗判定方法を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態の農作業機における耕耘爪の摩耗判定方法を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態のアンテナで受信される電波の受信強度の変化を説明するための波形図である。
【
図6】第2実施形態の農作業機における耕耘爪の摩耗判定方法を説明するための図である。
【
図7】第3実施形態の農作業機の構成を左側方から示す断面図である。
【
図8】第4実施形態の耕耘爪を農作業機の左側方から見た図である。
【
図9】第4実施形態の耕耘ロータに設けられるフランジの構成を示す平面図である。
【
図10】第4実施形態の耕耘ロータに設けられるフランジに、耕耘爪を装着した状態を示す断面図である。
【
図11】第4実施形態の耕耘ロータに設けられるホルダーに、耕耘爪を装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の耕耘爪及び耕耘爪の摩耗判定方法の実施形態について説明する。但し、本発明の耕耘爪及び耕耘爪の摩耗判定方法は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は水平面(地面)から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は水平面に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は作業機を基準として走行機体が位置する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」は作業機を基準として走行機体が位置する方向に向かったときの左を示し、「右」は左とは180°反対の方向を示す。
【0024】
〈第1実施形態〉
[農作業機の構成]
図1は、第1実施形態の農作業機100の構成を背面側から示す図である。
図2は、第1実施形態の農作業機100の構成を左側方から示す断面図である。具体的には、
図2は、農作業機100のエプロン(整地体とも呼ばれる。)130を通常位置に下降させた状態を左側方から示している。
【0025】
本実施形態の農作業機100は、大別して、フレーム110、シールドカバー120、エプロン130、サイドプレート140、耕耘ロータ150、制御部170、アンテナ180等を含む。
【0026】
フレーム110は、トラクタ等の走行機体(図示せず)とトップマスト135及びロアリンク連結部136により接続される。フレーム110は、例えば円筒形であり、チェーンケース105に通じる内部には動力伝達軸(図示せず)を有する。この動力伝達軸は、トラクタ等の走行機体が有するPTO軸からPIC(Power Input Connection)シャフト137を経て伝達される回転動力の向きを、進行方向に対して左右方向へと切り替える役割を果たす。フレーム110内の動力伝達軸は、農作業機100の側部に配置されたチェーンケース105に接続され、このチェーンケース105内のチェーン伝達機構によって、耕耘ロータ150の回転軸152に動力が伝達される。
【0027】
耕耘ロータ150は、農作業機100の幅方向に延びる回転軸152と、この回転軸152にフランジ153を介して装着された複数の耕耘爪154とで構成される。
図1に示されるように、農作業機100の背面側から見た場合、複数の耕耘爪154は、左方向に湾曲した耕耘爪154L(以下「L爪154L」と記す。)と、右方向に湾曲した耕耘爪154R(以下「R爪154R」と記す。)とで構成され、回転軸152の軸方向に所定の間隔で取付けられる。さらに、本実施形態では、1つのフランジ153につき、複数本の耕耘爪154が取付けられる。なお、
図2では、1つのフランジ153に対して、2本のL爪154L及び2本のR爪154Rが装着されているが、装着される耕耘爪の種類や本数はこれに限られるものではない。
【0028】
図1に示されているように、農作業機100を背面側から見た場合、向かい合って配置されているR爪154R、L爪154Lは、互いの爪先がオーバーラップしている。したがって、個々のL爪154L、R爪154Rが土を掘り起こす領域の幅は、隣接するL爪154L、R爪154Rの間で一部重複している。なお、本実施形態の農作業機100においては、耕耘ロータ150は、
図2において矢印Rで示す方向に回転する。
【0029】
シールドカバー120は、耕耘ロータ150の上方を覆うように配置される。シールドカバー120の側面には、サイドプレート140が設けられる。サイドプレート140は、チェーンケースプレート、サイドフレーム、支持フレーム等と呼ばれる場合もある。
図2においては、サイドプレート140の図示が省略されている。
【0030】
エプロン130は、耕耘ロータ150の後方に配置され、シールドカバー120に対して接続部160を軸として上下方向に回転可能となっている。エプロン130の重心は、接続部160よりも後方にあるため、エプロン130は自重により下降しようとする。エプロン130の先端にはステンレスの整地板132が取付けられている。整地板132はエプロン130の内側から外側に向かってループを描くように構成されている。この整地板132が耕耘ロータ150によって掘り起こされた圃場を平坦にする。
【0031】
また、整地板132の両端には可動式の延長整地板134が設けられている。延長整地板134を開くことによって整地板132とともに広い幅の範囲を整地することが可能になる。
【0032】
制御部170は、図示しない中央演算処理装置(CPU)、記憶装置(メモリ)及び通信装置を含み、外部から受信した信号(例えば、リモコン信号)を処理したり、逆に、内部で生成した信号(例えば、駆動部の制御信号)を外部に送信したりする機能を有する。記憶装置は、各種データ及び各種プログラムを記憶している。中央演算処理装置は、記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、農作業機100が備えるアクチュエータ等の駆動部の動作を制御したり、後述する耕耘爪の摩耗判定処理を実行したりすることができる。
【0033】
通信装置は、有線通信又は無線通信を行うための装置である。例えば、無線通信の場合は、例えば、近距離無線通信を可能とするモジュールやWiFi等の通信規格に従う無線通信を可能とするモジュールを搭載していてもよい。つまり、制御部170が備える通信装置は、ネットワーク上に接続されるサーバやユーザ端末等の情報端末や走行機体に搭載されるタブレットPC等の情報端末との間の通信を制御する機能を有していてもよい。
【0034】
また、本実施形態において、制御部170は、耕耘ロータ150とシールドカバー120との間に配置されたアンテナ180と電気的に接続されている。本実施形態では、アンテナ180を受信アンテナとして使用する。そのため、制御部170には、フィルタ、アンプ等を備えた受信回路(図示せず)が組み込まれている。
【0035】
本実施形態において、アンテナ180は、
図1に示されるように、農作業機100の幅方向に複数並べて配置されている。具体的には、アンテナ180は、互いにオーバーラップするR爪154RとL爪154Lの両方から略等距離の位置(すなわち、隣接する2つのフランジ153の略中間点となる位置)に配置されている。ただし、これに限られるものではなく、アンテナ180を配置する位置は、受信感度等を考慮して適宜決定すればよい。なお、耕耘ロータ150とシールドカバー120との間にゴム製カバー等が配置されていたとしても、電波はゴム製カバーの影響を殆ど受けないため、受信感度への影響は小さいと考えられる。また、
図1及び
図2では図示を省略しているが、アンテナ180は、保護ケース等で囲まれていてもよい。
【0036】
アンテナ180としては、公知の如何なるアンテナを用いても良いが、本実施形態のように耕耘ロータ150とシールドカバー120との間に配置する場合は、指向性を持つマイクロストリップアンテナのような平面アンテナを用いることが望ましい。
【0037】
また、制御部170は、耕耘爪154とも電気的に接続されている。具体的には、絶縁電線等のケーブル(図示せず)などを用いて制御部170と耕耘ロータ150の回転軸152とを電気的に接続し、回転軸152に対して電力を供給可能な構成となっている。回転軸152は、フランジ153を介して耕耘爪154と電気的に接続されているため、制御部170は、回転軸152やフランジ153を介して耕耘爪154に対して電力を供給することができる。これにより、本実施形態では、耕耘爪154を送信アンテナとして使用することができる。
【0038】
制御部170には、耕耘爪154に電力を供給するために、発振回路、フィルタ、アンプ等を備えた送信回路(図示せず)が組み込まれている。送信回路は、正弦波信号を含む電力を耕耘爪154に対して供給する。
【0039】
[耕耘爪の摩耗判定方法の構成]
前述のように、本実施形態の農作業機100は、制御部170が耕耘爪154及びアンテナ180と電気的に接続されている。具体的には、制御部170に含まれる送信回路が、耕耘爪154と電気的に接続され、制御部170に含まれる受信回路が、アンテナ180と電気的に接続されている。そのため、耕耘爪154とアンテナ180との間で、電波の送受信が可能となっている。
【0040】
図3及び
図4は、第1実施形態の農作業機100における耕耘爪154の摩耗判定方法を説明するための図である。
図5は、アンテナ180で受信される電波の受信強度の変化を説明するための波形図である。なお、
図3及び
図4では、耕耘爪154の一例としてR爪154Rを図示しているが、L爪154Lであっても原理は同じである。
【0041】
図3において、耕耘爪154は、送信回路190と電気的に接続されている。送信回路190は、耕耘爪154に対して電力(エネルギー)を供給するための送信回路であり、本実施形態では、制御部170に組み込まれている。ただし、農作業機100は、制御部170とは別に送信回路190を有していてもよい。本実施形態において、送信回路190と耕耘爪154とは、前述のとおり、
図2に示した回転軸152及びフランジ153を介して電気的に接続されている。
【0042】
送信回路190からは、例えば正弦波信号を含む電力が出力される。正弦波信号の周波数に特に制限はないが、特に情報を乗せるわけではないため、高周波帯の使用に限定する必要はない。例えば、モールス通信等で使用される0.5kHz付近の低周波数帯を使用してもよい。いずれにしても、なるべく干渉の少ない周波数帯を使用することが好ましい。また、送信回路190から出力する電力は、正弦波に限らず、余弦波、三角波、のこぎり波など連続的に変化する他の波形や矩形波を含んでもよい。
【0043】
送信回路190から出力された電力は、公知のスリップリング等(図示せず)を介して回転軸152に供給され、フランジ153を介して耕耘爪154に供給される。耕耘爪154に供給された電力は、耕耘爪154から電波として放射される。つまり、本実施形態において、耕耘爪154は、電波185を放射する送信アンテナとして機能する。
【0044】
耕耘爪154から放射された電波185は、受信アンテナとして機能するアンテナ180によって受信される。アンテナ180によって受信された電波は、正弦波信号を含む電力に変換され、シールド電線(図示せず)等を介して受信回路182に入力される。前述のように、本実施形態では、受信回路182は、制御部170に組み込まれている。ただし、農作業機100は、制御部170とは別に受信回路182を有していてもよい。受信回路182では、アンテナ180を介して受信した信号を増幅したりフィルタリングしたりするなどして、送信回路190から送られた正弦波信号を抽出する。
【0045】
このとき、アンテナ180で受信される電波の受信強度(すなわち、受信回路182で抽出される正弦波信号の強度)は、耕耘爪154とアンテナ180との間の距離に応じて変化する。したがって、耕耘爪154が摩耗することで耕耘爪154とアンテナ180との間の距離が広がると、その分だけ電波185の受信強度は減少する。本実施形態では、この受信強度の差分を検出することにより、耕耘爪154の摩耗の度合いを判定することができる。
【0046】
本実施形態では、
図3に示されるように、耕耘爪154が最もアンテナ180に接近した状態、すなわち、回転する耕耘爪154とアンテナ180との間が最小距離Lとなったときの受信強度を用いて差分を検出する。耕耘爪154とアンテナ180との距離が最小距離Lとなったとき、電波185の受信強度は最大値をとる。つまり、電波185の受信強度の最大値の変化を検出することにより、最小距離Lの変化(
図4に示すΔL)を検出することが可能となり、耕耘爪154の摩耗の度合いを判定することが可能である。
【0047】
なお、本実施形態の場合、厳密に言えば、回転軸152、フランジ153及び耕耘爪154の全体から電波185が放射される。したがって、アンテナ180で受信される電波185は、回転軸152、フランジ153及び隣接する耕耘爪154から放射された電波の複合されたものと言える。しかしながら、前述のように、本実施形態では電波185の受信強度の最大値を用いて耕耘爪154が摩耗する前の受信強度と摩耗した後の受信強度との差分を検出するため、回転軸152等から受信する電波の影響は特に問題とはならない。
【0048】
アンテナ180による受信強度の最大値の抽出は、アンテナ180のサイズや位置を適切に設定することにより実現することができる。特に、
図1に示されるように、アンテナ180を隣接する2つのフランジ153の略中間点となる位置に配置することが好ましい。これにより、湾曲した耕耘爪154の先端付近がアンテナ180の近傍を通過するため、最小距離Lを短くすることができ、アンテナ180による受信強度の最大値を抽出しやすくすることができる。
【0049】
ここで、
図5において、波形51は、耕耘爪154が摩耗する前の新品の状態にあるとき、すなわち、耕耘爪154とアンテナ180との間の最小距離Lが「L
0」である場合に受信した正弦波信号の強度波形である。この場合、アンテナ180で受信される正弦波信号の強度Iの最大値が「I
0」(以下「参照値I
0」と呼ぶ。)であるとする。
【0050】
他方、
図5において、波形52は、
図4に示されるように、耕耘爪154が摩耗した後の状態にあるとき、すなわち、耕耘爪154とアンテナ180との間の最小距離Lが「L
1」である場合に受信した正弦波信号の強度波形である。この場合、アンテナ180で受信される正弦波信号の強度Iの最大値は、「I
1」(以下「計測値I
1」と呼ぶ。)であるとする。
【0051】
ただし、
図5に示す波形は、1本の耕耘爪154に対して1つのアンテナ180を設けた場合を想定した理想曲線を示している。
【0052】
図5に示されるように、耕耘爪154が摩耗すると、アンテナ180との間の最小距離Lは、「L
0」から「L
1」に変化するとともに、アンテナ180の受信強度の最大値は、参照値I
0から計測値I
1に変化する。したがって、アンテナ180の受信強度の最大値の変化を検出することにより、耕耘爪154とアンテナ180との間の最小距離Lの変化を検出することが可能である。つまり、本実施形態では、アンテナ180の受信強度を解析し、アンテナ180の受信強度の最大値の変化を検出することにより、耕耘爪154の摩耗の度合いを判定することができる。
【0053】
前述の受信強度の最大値の変化の検出処理は、制御部170に含まれる中央演算処理装置及び記憶装置といったハードウェア資源を用いて実行することができる。本実施形態の制御部170の記憶装置には、中央演算処理装置に、以下に説明する耕耘爪の摩耗の度合いを判定させる処理を実行させるプログラムが記憶されている。そして、そのプログラムを中央演算処理装置が実行することにより、前述の受信強度の最大値の変化の検出処理が行われる。ただし、上述のプログラムは、サーバ等からネットワークを介してダウンロードして実行することも可能である。
【0054】
まず、中央演算処理装置は、受信回路182から入力された正弦波信号を解析して波形51で示される正弦波信号の強度の最大値I0(すなわち、参照値I0)を取得し、制御部170に含まれる記憶装置に記憶しておく。
【0055】
次に、中央演算処理装置は、耕耘爪の摩耗判定処理を実行する旨の指示を受けると、記憶装置から、上述の耕耘爪の摩耗判定処理のためのプログラムを読み出して実行する。ただし、中央演算処理等は、特に指示を受けなくても耕耘ロータ150の動作と連動してバックグラウンドで上記プログラムを実行してもよい。
【0056】
中央演算処理等が上記プログラムを実行すると、耕耘作業中または耕耘作業の前後において、受信回路182から入力された正弦波信号が解析され、波形52で示される正弦波信号の強度の最大値I1(すなわち、計測値I1)が取得される。そして、記憶装置から前述の参照値I0が読み出され、取得した計測値I1と比較される。具体的には、参照値I0と計測値I1の差分「I0-I1」が演算され、その差分の演算結果に基づいて耕耘爪154の摩耗の度合いが判定される。この差分が、予め記憶装置に記憶された閾値と比較され、その閾値を上回った場合に、所定のレベルまで摩耗が進行したと判定される。
【0057】
例えば、閾値として、第1の閾値から第3の閾値まで3つの摩耗検出レベルを記憶しておけば、3段階の摩耗のレベルを検出することが可能である。この場合、制御部170が摩耗検出レベル1に達したと判定した場合に、ユーザ端末や情報端末に対して、耕耘爪の耕耘性能が低下している可能性等を示唆する通知を行い、摩耗検出レベル2に達したと判定した場合に、耕耘爪154の交換時期が近付いている旨の通知を行い、摩耗検出レベル3に達したと判定した場合に、耕耘爪154の交換が必要である旨の通知を行うようにすることができる。
【0058】
この場合、設定する閾値が多ければ多いほど、より細かに耕耘爪154の摩耗の度合いを判定することができる。そして、摩耗の度合いを細やかに把握することにより、摩耗の履歴を蓄積して耕耘爪154の寿命推定に利用したり、ユーザによる農作業機の使用状況の推定に利用したりすることができる。また、このような情報は、制御部170からサーバ等に送信してデータベースとして蓄積することもできる。
【0059】
なお、ここでいう「摩耗検出レベル」とは、摩耗の度合いを検出したいレベルであり、所望のレベルを設定することができる。例えば、耕耘性能の低下が見込まれ、交換を促す必要性のあるレベルであったり、耕耘爪の使用限界(適切な耕耘性能を発揮し得る限界)を考慮して予測したレベルであったりすることができる。
【0060】
また、例えば、予め実験的に、所定間隔で最小距離Lを変化させた場合における参照値(初期値)と計測値との差分を求め、その差分と最小距離Lとを各々関連付けて記憶しておくことにより、差分と耕耘爪154の摩耗量とを関連付けた参照テーブルを記憶装置に記憶しておくことも可能である。これにより、上述の方法で参照値I0と計測値I1との差分を求め、記憶装置に記憶された参照テーブルを参照することにより、現在の耕耘爪154の摩耗量を判定することができる。
【0061】
以上説明した本実施形態の耕耘爪の摩耗判定方法を実行し、耕耘爪から電波を放射してその受信強度を解析することにより、耕耘作業中又は耕耘作業の前後で耕耘爪の摩耗の度合いを判定することができる。これにより、農作業者の目視によらず、耕耘爪の摩耗の度合いを判定することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、制御部170が耕耘爪の摩耗の度合いが所定のレベルに達したと判定した場合に、スマートフォン等のユーザ端末、又はトラクタ等の走行機体に搭載された情報端末に対して、耕耘爪154の交換時期である旨の通知、耕耘爪154の耕耘性能が低下している可能性を示唆する通知、走行機体の燃費が悪化する可能性を示唆する通知など、耕耘爪の摩耗に起因して生じ得る事象に関して様々な通知を行うように構成してもよい。
【0063】
また、このような通知に限らず、耕耘爪154の耕耘性能の低下を考慮して、耕耘深さの調整、耕耘ロータ150の回転速度の調整など、一定レベルまで摩耗した耕耘爪154であっても圃場に対して適切な農作業を行うことができるように、農作業機100の各種調整を行うよう制御することも可能である。
【0064】
さらに、耕耘爪154の交換時期であるという情報は、制御部170から事業者のサーバ等に送信してデータベースとして蓄積することができる。このような情報を利用すれば、事業者は、農作業機(特に耕耘爪)のメンテナンス管理、農作業者への耕耘爪の配送サービス、農作業者への耕耘爪のレンタルサービスなど、耕耘爪に関する多岐にわたるサービスに利用することができる。
【0065】
〈第2実施形態〉
第1実施形態では、耕耘爪154を送信アンテナとして用い、アンテナ180を受信アンテナとして用いる例を示したが、それとは逆に、耕耘爪154を受信アンテナとして用い、アンテナ180を送信アンテナとして用いる例について
図6を用いて説明する。なお、図面上、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0066】
図6は、第2実施形態の農作業機における耕耘爪154の摩耗判定方法を説明するための図である。本実施形態では、
図6に示されるように、耕耘爪154と受信回路182が電気的に接続され、アンテナ180と送信回路190が電気的に接続される。この場合も、受信回路182は、直接的には回転軸152(
図2参照)と電気的に接続されていればよく、耕耘爪154で受信した電力は、フランジ153や回転軸152を介して受信回路182に伝達される。
【0067】
また、本実施形態においても、送信回路190及び受信回路182は、制御部170(
図2参照)に組み込まれていてもよい。勿論、送信回路190及び受信回路182のいずれか一方又は両方が、制御部170とは別に設けられていてもよい。
【0068】
本実施形態においても、耕耘爪154の摩耗が進行すると、耕耘爪154による電波の受信強度が低下する。したがって、第1実施形態で説明した耕耘爪の摩耗判定方法を実行し、アンテナ180から電波を放射してその受信強度を解析することにより、耕耘作業中又は耕耘作業の前後で耕耘爪の摩耗の度合いを判定することができる。これにより、農作業者の目視によらず、耕耘爪の摩耗の度合いを判定することが可能となる。
【0069】
〈第3実施形態〉
第1実施形態では、耕耘ロータ150とシールドカバー120との間にアンテナ180を配置する例を示したが、本実施形態では、第1実施形態とは異なる位置にアンテナ180を配置する例について
図7を用いて説明する。なお、図面上、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0070】
図7は、第3実施形態の農作業機100aの構成を左側方から示す断面図である。
図7に示されるように、シールドカバー120には、開口部121が設けられている。シールドカバー120の上には、開口部121を覆うようにアンテナ180aが配置されている。本実施形態において、開口部121及びアンテナ180aが配置される位置は、
図1に示したアンテナ180の位置と同じである。
【0071】
本実施形態では、シールドカバー120の上にアンテナ180aが配置されるため、耕耘ロータ150とシールドカバー120との間に十分なスペースがない場合であってもアンテナ180aを配置することができる。また、シールドカバー120の上にあれば、アンテナ180aのメンテナンスが容易であるという利点もある。
【0072】
〈第4実施形態〉
第1実施形態では、送信回路190から回転軸152に対して電力を供給し、回転軸152及びフランジ153を介してすべての耕耘爪154に電力を供給する例を示したが、本実施形態では、任意の耕耘爪154に対して電力を供給する例について
図8~
図11を用いて説明する。なお、図面上、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0073】
図8は、第4実施形態の耕耘爪154aを農作業機の左側方から見た図である。なお、本実施形態に示す耕耘爪154aの形状は一例に過ぎず、この形状に限定されるものではない。また、ここではR爪を例示して説明を行い、L爪についての説明は省略するが、湾曲する方向が異なる点を除いては、以下の説明は、R爪とL爪とに共通である。
【0074】
図8において、耕耘爪154aは、図面に向かって右から順に、取付け基部12、取付け基部12から連続して延びる縦刃部14及び横刃部16、刃縁部20、峰縁部22、並びに刃縁部20と峰縁部22を曲線状に滑らかに結ぶ頭縁部24を有する。本実施形態では、縦刃部14と横刃部16とをまとめて刃部と呼ぶ場合がある。また、
図8では、縦刃部14から横刃部16にかけて図面の奥側(観察者から紙面に向かう方向)に向かって緩やかに湾曲した形状となっている。本実施形態では、
図8に示される耕耘爪154aの刃面(側面)を外側湾曲面と呼ぶ。
【0075】
また、取付け基部12には、取付け孔18a及び18bが長手方向に2箇所設けられている。耕耘爪154aは、これらの取付け孔18a及び18bにボルト等の固定部材を挿入して、耕耘ロータ150の回転軸152に設けられたフランジ153に装着される。このような装着方法を一般的にはフランジ方式と呼ぶが、これに限られるものではなく、公知のホルダー方式を採用することも可能である。本明細書では、フランジ及びホルダーを「装着部」と呼ぶ場合がある。
【0076】
図8に示した耕耘爪154aは、爪先に向けて略一定の曲率半径で一側方に湾曲しているため、湾曲した内側の面(内側湾曲面)はすくい面を形成している。本実施形態の耕耘爪154aは、このすくい面によって土を耕耘・放擲するとともに土寄せも行うことが可能となっている。
【0077】
ここで、本実施形態の耕耘爪154aでは、
図8に示されるように、外側湾曲面の取付け基部12に対して端子30が配置されている。端子30は、導体で構成されたものであればよく、取付け基部12の表面に形成してもよいし、取付け基部12の表面に形成した溝の中に埋め込んでもよい。なお、基本的に、耕耘爪は、前述のすくい面が土壌に作用して耕耘性能を発揮するため、外側湾曲面に比べて内側湾曲面の方が、表面塗装が剥げやすい。したがって、端子30は、外側湾曲面に配置することが望ましい。ただし、これに限らず、端子30は、内側湾曲面に配置することも可能である。端子30は、耕耘爪154aに電力を供給する際における入力端子として機能する。
【0078】
端子30に対して電力を供給するためには、フランジ153から端子30に対して電力を伝達する手段が必要となる。そのため、本実施形態では、耕耘爪154aを装着するフランジ153aに対しても端子を設ける構成としている。
【0079】
図9は、第4実施形態の耕耘ロータ150に設けられるフランジ153aの構成を示す平面図である。また、
図10は、第4実施形態の耕耘ロータ150に設けられるフランジ153aに、耕耘爪154aを装着した状態を示す断面図である。
【0080】
図9において、フランジ153aには、回転軸152を挿通する開孔部31と、固定部材(例えば、
図10のボルト34a及び34b)を挿通する開孔部32とが設けられている。フランジ153aに耕耘爪154aを装着する際、開孔部32aは、
図8に示した取付け孔18aに重なり、開孔部32bは、
図8に示した取付け孔18bに重なる。つまり、フランジ153aの開孔部32a及び32bと耕耘爪154aの取付け孔18a及び18bとを重ね合わせ、
図10に示したボルト34a及び34b並びにナット35a及び35bを用いて固定することにより、フランジ153aへ耕耘爪154aを装着することができる。
【0081】
このとき、フランジ153aには、端子30aが設けられている。ただし、
図9では、フランジ153aの紙面に向かって奥側(裏側)の位置に端子30aが設けられているため、輪郭を点線で示してある。
【0082】
図8に示した耕耘爪154aを
図9に示したフランジ153aに装着すると、
図10に示されるように、耕耘爪154aの端子30とフランジ153aの端子30aとが電気的に接続される。本実施形態では、各端子として平板状の電極が図示されているが、この場合であってもボルト34a及びナット35a等で固定すれば十分に導通を確保することができる。勿論、各端子部の電極に突起部を設けて、より導通を確保しやすくする構成としてもよい。
【0083】
なお、本実施形態では、接触型の導通方式を用いた例を示したが、これに限らず、非接触型の導通方式を用いても良い。例えば、端子30及び端子30aをコイルアンテナとし、両者の間の電磁誘導により生じる誘導電流を用いて電力を供給することも可能である。
【0084】
また、各耕耘爪154aの端子30に接続される、複数の配線(例えば、シールド電線)は、それぞれ回転軸152の内部に引き込まれ、最終的に、農作業機が有する制御部170(より具体的には、送信回路190)と電気的に接続される。このように、本実施形態では、制御部170と任意の耕耘爪154aとの間で導通を取り、任意の耕耘爪154aに対して電力を供給することができる。
【0085】
なお、本実施形態において、フランジ153aには4つの耕耘爪が装着可能であるが、端子30を有する耕耘爪154aは、4つのうちの任意の数とすることができる。個々のフランジ153aに配置された複数の耕耘爪の摩耗の度合いは、同じ土壌に対して作用している以上、ほぼ同じであると考えられるからである。つまり、1つの装着部に対して1つの耕耘爪の摩耗の度合いを確認すれば、他の耕耘爪の摩耗の度合いも推定できると考えられる。この考えによれば、例えば、耕耘ロータ150に含まれる耕耘爪のうち、任意の数の耕耘爪に電力を供給できるようにしてもよい。
【0086】
また、
図11は、本実施形態の耕耘爪154bをホルダー方式で装着した場合の例を示している。具体的には、
図11は、耕耘ロータ150に設けられるホルダー156に、耕耘爪154bを装着した状態を示す断面図である。ホルダー156は、耕耘爪154bの取付け基部12が差し込めるように筒状部位を有している。本実施形態では、ホルダー156の筒状部位の内壁156aに、端子30bが配置されている。端子30bは、ホルダー156に耕耘爪154bを装着した際に、耕耘爪154bの端子30と接する位置に設けられる。
【0087】
つまり、ホルダー156の筒状部位に対して耕耘爪154bの取付け基部12を挿入し、ボルト34c及びナット35cで固定した際、
図11に示されるように、耕耘爪154bの端子30とホルダー156の端子30bとが電気的に接続される。本実施形態においても、ホルダー156の端子30bは、制御部170と電気的に接続される。したがって、制御部170の制御により、端子30b及び耕耘爪154bの端子30を介して、耕耘爪154bに電力を供給することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、端子30bの表面に突起部30b-1が形成されている。このような突起部30b-1を設けることにより、耕耘爪154bの端子30との電気的な接続をより安定して行うことができる。勿論、電気的な接続をより安定して行うためには、他の構造の電極を用いてもよい。また、接触型の導通方式に限らず、非接触型の導通方式を用いることも可能である。
【0089】
なお、本実施形態では、耕耘爪154a及び154bを送信アンテナとして用い、アンテナ180を受信アンテナとして用いる例を示したが、これとは逆に、耕耘爪154a及び154bを受信アンテナとして用い、アンテナ180を送信アンテナとして用いることも可能である。
【0090】
〈第5実施形態〉
第4実施形態では、個々の耕耘爪154a(又は154b)から電波を放射する例を示したが、この場合、アンテナ180を複数配置する構成に限らず、シールドカバー120自体をアンテナとして用いる構成を採ることも可能である。本実施形態では、シールドカバー120が受信回路182と電気的に接続される。
【0091】
本実施形態の場合、例えば、個々の耕耘爪154a(もしくは複数の耕耘爪154aを含むブロック)に対して時分割で電力を供給し、時間間隔を空けて個々の耕耘爪154aから順次放射される電波をシールドカバー120で受信し、制御部170(具体的には、受信回路182)に伝達すればよい。これにより、シールドカバー120を受信アンテナとして用いても、個々の耕耘爪154a(もしくは上記ブロック)を識別することが可能となる。
【0092】
また、耕耘爪154aごと(もしくは上記ブロックごと)に、供給する電力の周波数又は位相を変えることにより個々の耕耘爪154a(もしくは上記ブロック)を識別することも可能である。
【0093】
さらに、本実施形態は、第4実施形態のように個々の耕耘爪154aに対して電力を供給可能な構成に限らず、第1実施形態のように回転軸152に対して電力を供給する構成であっても適用することは可能である。この場合、個々の耕耘爪154から一斉に電波が放射されるため、シールドカバー120で受信する電力の受信強度は平均化される。しかしながら、個々の耕耘爪154の摩耗が進行していれば、平均化された受信強度の最大値も初期値(新品の耕耘爪を用いた場合における平均化された受信強度の最大値)からは低下するため、その受信強度の最大値の変化を検出することにより、耕耘爪の摩耗の度合いを判定することが可能である。
【0094】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態の農作業機及び耕耘爪の摩耗判定方法を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0095】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0096】
12…取付け基部、14…縦刃部、16…横刃部、18a、18b…取付け孔、20…刃縁部、22…峰縁部、24…頭縁部、30、30a、30b…端子、30b-1…突起部、34a~34c…ボルト、35a~35c…ナット、51、52…波形、100、100a…農作業機、105…チェーンケース、110…フレーム、120…シールドカバー、130…エプロン、132…整地板、134…延長整地板、135…トップマスト、136…ロアリンク連結部、137…PICシャフト、140…サイドプレート、150…耕耘ロータ、152…回転軸、153、153a…フランジ、31、32、32a、32b…開孔部、154、154a、154b…耕耘爪、154L…L爪、154R…R爪、156…ホルダー、156a…内壁、160…接続部、170…制御部、180、180a…アンテナ、182…受信回路、185…電波、190…送信回路