(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】免震構造物用の外部足場
(51)【国際特許分類】
E04G 1/24 20060101AFI20220124BHJP
E04G 5/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
E04G1/24 301Z
E04G5/02 C
E04G5/02 Z
(21)【出願番号】P 2018010947
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】507418474
【氏名又は名称】中日装業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】中村 ▲禊▼
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特許第3045667(JP,B2)
【文献】特開平08-165796(JP,A)
【文献】特開2010-185211(JP,A)
【文献】実公平07-048873(JP,Y2)
【文献】実開平06-028087(JP,U)
【文献】特開2002-371705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震構造物の外部に立設される外部足場であって、該外部足場を構成する建枠の下端に支持板を固設し、該支持板の下面側に、上側に載置板を有する台車を配置し、前記支持板にボルト挿通孔を貫通して設け、前記台車には、前記支持板のボルト挿通孔に対応する位置に、上下方向に貫通する取付孔を、少なくともその一部に雌ねじを有して設け、頭部付ボルトを、前記支持板の上側より、該支持板のボルト挿通孔に挿通して、前記台車の取付孔の雌ねじに螺着することにより、前記支持板と前記台車とを分離可能に連結し、
前記台車の収納室内にボールベアリングが設けられ、該ボールベアリングの一部が前記収納室の底板よりも下方へ突出し、前記ボールベアリングにより前記台車が移動するように構成されており、
前記頭部付ボルトを、上下逆向きに反転して、前記台車の下側から前記底板の取付孔を構成する無ねじ孔を通じて挿入するとともに、ナットに螺着し、
前記頭部付ボルトの頭部を前記ボールベアリングの下端部より下方へ突出させて付け替えるようにしたことを特徴とする免震構造物用の外部足場。
【請求項2】
前記頭部付ボルトを、前記支持板の上側より前記台車の取付孔に螺着して正逆回転することにより、その頭部付ボルトの先端部が前記台車の下端部より突出又は退入するようにしたことを特徴とする請求項1記載の免震構造用の外部足場。
【請求項3】
前記台車の載置板上に、前記支持板の上方への移動を規制する規制部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の免震構造物用の外部足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震構造物の構築、改装時に、免震構造物の外部に立設される外部足場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震構造物の外部足場として、その建枠の下端にねじ軸を介して、ボールベアリングを設け、該ねじ軸にプレートを螺着して昇降可能に設け、外部足場の組み立て時には、プレートを回転して接地し、該プレートで荷重を支持してボールベアリングの移動を阻止し、また、外部足場の組立て後は、プレートを回転して上動し、ボールベアリングを接地させてその移動を許容するようにしたものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のものにおいては、外部足場を解体して各部品を蔵置、搬送する場合、その取扱いにより、他物が前記ボールベアリング等に当り、これが損傷するおそれがある。
【0004】
そこで本発明は、前記の課題を解決する外部足場を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、免震構造物の外部に立設される外部足場であって、該外部足場を構成する建枠の下端に支持板を固設し、該支持板の下面側に、上側に載置板を有する台車を配置し、前記支持板にボルト挿通孔を貫通して設け、前記台車には、前記支持板のボルト挿通孔に対応する位置に、上下方向に貫通する取付孔を、少なくともその一部に雌ねじを有して設け、頭部付ボルトを、前記支持板の上側より、該支持板のボルト挿通孔に挿通して、前記台車の取付孔の雌ねじに螺着することにより、前記支持板と前記台車とを分離可能に連結し、
前記台車の収納室内にボールベアリングが設けられ、該ボールベアリングの一部が前記収納室の底板よりも下方へ突出し、前記ボールベアリングにより前記台車が移動するように構成されており、
前記頭部付ボルトを、上下逆向きに反転して、前記台車の下側から前記底板の取付孔を構成する無ねじ孔を通じて挿入するとともに、ナットに螺着し、
前記頭部付ボルトの頭部を前記ボールベアリングの下端部より下方へ突出させて付け替えるようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記頭部付ボルトを、前記支持板の上側より前記台車の取付孔に螺着して正逆回転することにより、その頭部付ボルトの先端部が前記台車の下端部より突出又は退入するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記台車の載置板上に、前記支持板の上方への移動を規制する規制部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、頭部付ボルトを、台車の上側、すなわち、支持板の上側より、支持板のボルト挿通孔に挿通して台車に形成した取付孔に螺着することにより、支持板と台車を分離可能に連結でき、更に、前記頭部付ボルトを外して、これを台車の下側に付け替えることにより、この頭部付ボルトにより台車を保護することができる。したがって、支持板と台車の取付けと、台車の保護を頭付ボルトを共用して行える。
【0010】
更に、請求項2記載の発明によれば、頭部付ボルトの正逆回転により、台車を移動可能状態と、移動阻止状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の免震構造物用の外部足場の設置状態を示す図。
【
図2】本発明の外部足場における建枠と支持板を示す斜視図。
【
図8】
図7においてボールベアリングを有する部分で切断した側断面図。
【
図9】
図7において支持板の無ねじ孔部で切断した側断面図。
【
図10】
図9の状態において、支持板を頭部付ボルトで台車に締付けた状態の側断面図。
【
図11】
図10の状態から頭部付ボルトを緩めて台車を移動可能状態にした側断面図。
【
図12】頭部付ボルトを付け替えて、ボールベアリングを保護した側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の免震構造物用の外部足場の実施例を図に基づいて説明する。
[実施例1]
図1において、1は免震装置を有する建物等の免震構造物で、その地下空間部2内には、下部躯体である基礎3と、上部躯体である地中梁4間に位置して免震ゴム等からなる免震装置5が介在され、地中梁4上に1階スラブ6が設けられている。
【0013】
免震構造物1は上記のように構成されているため、地震時において、水平方向への揺れが発生した場合には免震装置5を境として、下部躯体と1階スラブ6を含む上部躯体とが相対的に、反対方向に揺れ動き、免震機能を発揮する。
【0014】
次に、外部足場7について説明する。
【0015】
外部足場7は、
図1に示すように、一対の建枠8,9を、建物1に対して前後に配置するとともに、これら相互を連結枠で連結して、枠組み足場として形成され、連結部材10で建物等の構造物に沿って立設される。
【0016】
前記各建枠8,9は、
図1,
図2に示すように、金属製のパイプよりなる脚柱11と、雄ねじからなるねじ軸12とで構成されている。
【0017】
各建枠8,9は同一構造であるため、以下、一方の建枠8について説明する。
【0018】
前記ねじ軸12の外周には、
図2に示すように、該ねじ軸12に螺着する雌ねじを有する支承部材13が回転可能に設けられており、該支承部材13よりも上方へ突出するねじ軸12を、前記脚柱11の下部内に挿入し、前記脚柱11の下端部を前記支承部材13の上面に摺動可能に載置するようになっている。前記支承部材13には操作ハンドル14が固設されている。
【0019】
したがって、操作ハンドル14により支承部材13を正逆回転して昇降することにより、脚柱11が昇降するジャッキ機構を構成している。
【0020】
前記ねじ軸12の下端には、ねじ軸12、すなわち、建枠8を支承する支持板20が、ねじ軸12の軸芯と直交して固設されている。該支持板20は、
図2、
図7に示すように平面形状が略正方形に形成され、その四隅部に位置して4個の無ねじ状のボルト挿通孔21が表裏方向に貫通して形成されている。
【0021】
前記支持板20の下面側には台車23が、支持板20に対して分離可能に取付けられるようになっている。
【0022】
該台車23は、
図8に示すように、前記支持板20を載置する平板状の載置板24と、該載置板24の周縁から下方へ垂設された周壁25と、ボールベアリング40と底板50を有し、内部に収納室26を有する。
【0023】
前記台車23には、
図4,
図9に示すように、載置板24上に前記支持板20を所定位置、すなわち、前記ねじ軸12の軸芯O1と、載置板20の中心O2とを略同芯状に配置した状態において、前記支持板20のボルト挿通孔21に同軸状で対応する位置に、4個の取付孔27が上下方向に貫通形成されている。前記取付孔27は、図の実施例では、
図9に示すように、前記載置板24に形成した無ねじ孔24aと、底板50に形成した無ねじ孔50aと、収納室26とで形成されている。
【0024】
また、前記底板50側の無ねじ穴50aの上面側には雌ねじ52aを有するナット52が同芯状に固設されている。したがって、取付孔27は、その少なくとも一部に雌ねじ52aを有する。
【0025】
なお、このナット52は、前記のように底板50に溶接して固設したが、載置板24の下面側に溶接して固設し、取付孔27の少なくとも一部に雌ねじ52aが設けられていればよい。
【0026】
前記、載置板24上には、
図4に示すように、その軸芯O2を通る線X1-X1方向の両側部に位置して、線X1-X1方向と直交する方向に長い、第1規則部材29,29が相互に平行して対向配置されている。該第1規制部材29,29は、直立壁で形成され、かつ、
図4,
図7に示すように、該第1規制部材29,29相互の対面距離L1は、前記支持板20における線X1-X1方向の両端面間距離L2と略同等に形成され、第1規制部材29,29間に支持板20を摺動可能に嵌合できるようになっている。
【0027】
前記載置板24上における、前記線X1-X1方向と直交する線Y1-Y1方向の両側部には、
図4,5に示すように、第2規制部材30,30が相互に平行して対向配置されている。
【0028】
該第2規制部材30,30は前記第1規制部材29,29の長手方向と直交する方向に長く形成され、その横断面形状、すなわち、Y1-Y1方向の断面形状は、
図5に示すように、立上り片31と、その上端から軸芯O2側へ折曲して突出する係止片32からなる逆L字状に形成され、軸芯O2側と長手方向の両端部が開口する係止溝33が形成されている。
【0029】
前記係止溝33の高さD1は、前記支持板21の厚みD2より若干長く形成されている。更に、前記係止溝33,33における奥面33a,33a間距離L4は、前記支持板21の線Y1-Y1方向の両端面距離L2より長く形成され、また、両係止片32,32の先端間距離L5は、支持板21の両端面距離L2より短く形成されている。
【0030】
上記構造により、支持板24を、
図4のY1-Y1線方向において上下方向に傾けて一方の端部を一方の係止溝33の奥面33aまで挿入し、その後他方の端部を落として他方の係止溝33a内に挿入移動することにより、支持板20と載置板24とを相対的に全方向への移動を規制して組付けることができ、かつ、支持板20の上方への移動を規制するようになっている。
【0031】
前記収納室26内には、
図6,
図8に示すように、前記線X1-X1及び線Y1-Y1方向の夫々の両側部に位置して夫々ボールベアリング40が設けられており、各ボールベアリング40のボールの一部が、
図8に示すように、前記周壁25の下端25aよりも下方へ突出し、このボールベアリング40により、台車23が平面上の全方向に移動できるようになっている。
【0032】
前記支持板20のボルト挿通孔21と前記載置板24の取付孔27には、
図10~
図12に示す頭部付ボルト41が共通して備えられるようになっている。
【0033】
該頭部付ボルト41としては、例えば
図10,
図12に示すような、雄ねじ部41aと、該雄ねじ部41aより大径の頭部41bを有する頭部付ボルトを用いるもので、図の実施例では大径頭部と環状部を有するアイボルトを使用した。
【0034】
前記頭部付ボルト41の雄ねじ部41aの長さは、
図10に示すように、頭部付ボルト41の雄ねじ部41aをボルト挿通孔21に挿通するとともに前記取付孔27のナット52のねじ孔52aに螺合して締付けた場合に、その頭部付ボルト41の先端部41cが、底板50の無ねじ孔50aを通じて前記ボールベアリング40の下端部40aより下方へ突出し、また、
図11に示すように該頭部付ボルト41を緩めて上方へ移動させた場合には、その先端部41cがボールベアリング40の下端部40aより上方へ退入するようになっている。
【0035】
更に、該頭部付ボルト41は、これを取付孔27より、上方へ外すとともに、上下を反転して、
図12に示すように台車23の下方側より前記ナット52に螺着することにより、頭部付ボルト41の頭部41bがボールベアリング40の下端部40aより下方位置に突出するようになっている。
【0036】
前記、底板50には前記ボールベアリング40の下部を突出させるための貫通孔51が形成されている。
【0037】
以上の構成において、外部足場10の組立て時には、各建枠8,9の支持板20を、
図7~
図9に示すように、台車23の第1規制部材29,29と第2規制部材30,30の間に嵌合し、建枠であるねじ軸12と台車23とを組付ける。
【0038】
次に、頭部付ボルト41を、
図10に示すように、支持板20の上側よりボルト挿通孔21に挿通するとともに、この無ねじ孔21と対応する台車23側の取付孔27に螺着する。この際、頭部付ボルト41を
図10に示すように、その先端41cがボールベアリング40の下端部40aより下方へ突出するように締付ける。
【0039】
これにより、
図10に示すように、支持板20は、頭部付ボルト41の頭部41bと載置板24で挟持されて連結され、かつ、頭部付ボルト41の先端41cがボールベアリング40の下端部40aより下方へ突出した状態に保持することができる。
【0040】
そして、上記の建枠8,9からなる外部足場7を、
図1に示すように免震構造の建物1に連結部材10で支持し立設する。これにより、頭部付ボルト41の先端41cが接地し、台車23の水平移動が阻止される。
【0041】
なお、前記台車23は、図示しない鉄板等の敷板上に載置する。
【0042】
次に、外部足場の立設後、頭部付ボルト41を緩めて
図11に示すように上昇させ、その下端41cをボールベアリング40の下端部40aより上部へ退避させ、ボールベアリング40を接地させる。
【0043】
これにより地震時において、免震構造の建物の水平移動に追従して台車23が水平移動し、外部足場を水平移動させることができ、外部足場の変形または破損を防止できる。
【0044】
なお、
図11に示すように、頭部付ボルト41を緩めた状態において、頭部41bと支持板20との間に大きな隙間D3生じた場合には第2規制部材30により、支持板20の上方への移動が規制される。
【0045】
次に、外部足場の不使用時について説明する。
【0046】
外部足場の不使用時において、これを蔵置、運搬する場合には、
図10又は
図11の状態から頭部付ボルト41を外し、その後、支持板20を、前記組付け時とは逆の操作で台車23より外す。これにより、支持板を備えたねじ軸12と、台車23とを分離でき、蔵置、運搬が容易になる。
【0047】
更に、前記取外した頭部付ボルト41を、
図12に示すように、上下逆向きに反転して、台車23の下側から底板50の取付孔27を構成する無ねじ孔50aを通じて挿入するとともに、ナット52に螺着する。これにより
図12に示すように頭部付ボルト41の頭部41bがボールベアリング40の下端部40aより下方へ突出する。
【0048】
このように頭部付ボルト41の頭部41bがボールベアリング40の下端部40aより突出することにより、運搬時等の取扱い時において作業者が、台車23を、そのボールベアリング40側から落下させたり、他物に当った場合に、他物が頭部付ボルト41の頭部に当ることにより、ボールベアリング40を衝撃より保護することができる。
【0049】
したがって、1本の頭部付ボルト41に、支持板20と台車23との取付け機能と、台車の移動可能状態と移動阻止状態の保持機能と、ボールベアリング40の保護機能をもたせることができる。
【0050】
更に、蔵置、運搬時において、頭部付ボルト41を台車23に保持させておくことができ、その頭部付ボルト41の紛失を防止することができる。
[その他の実施例]
前記実施例1では、頭部付ボルトとしてアイボルトを用いたが、アイボルトの他に通常の六角頭部のボルト等を用いても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 免震構造物
7 外部足場
8,9 建枠
20 支持板
21 ボルト挿通孔
23 台車
24 載置板
27 取付孔
40 ボールベアリング
40a 下端部
41 頭部付ボルト
41b 頭部
41c 先端部
52 ナット
52a 雌ねじ