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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   D05C 7/04 20060101AFI20220124BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20220124BHJP
   B26F 1/02 20060101ALI20220124BHJP
   D05B 37/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
D05C7/04
B26D7/18 G
B26F1/02 Z
D05B37/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019514423
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2018015976
(87)【国際公開番号】W WO2018198900
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2017085848
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219749
【氏名又は名称】株式会社TISM
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 勝治
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/076389(WO,A1)
【文献】特開平9-234698(JP,A)
【文献】特開2000-108095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0080575(US,A1)
【文献】特開2018-24089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05C 7/04
B26D 7/18
B26F 1/02
D05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔装置であって、
上下動する複数の中空棒と、該中空棒の先端にそれぞれ設けられ軸方向に貫通する貫通孔を備えた穿孔具と、を含む穿孔ヘッドと、
前記穿孔ヘッドの穿孔処理による抜き屑を吸引する吸引装置と、
前記穿孔具に設けられた貫通孔と前記吸引装置の間を通じる吸引流路と、
前記複数の中空棒のうち穿孔処理を施す中空棒のみを吸引するように前記吸引流路を変更する吸引切替装置と、を有する穿孔装置。
【請求項2】
請求項1に記載の穿孔装置であって、
前記吸引切替装置は、前記複数の中空棒のうち選択された中空棒に応じて吸引流路を切り替える流路切替機構を有する穿孔装置。
【請求項3】
請求項2に記載の穿孔装置であって、
前記吸引切替装置は、前記流路切替機構によって切り替えられた吸引流路の中間部位において前記吸引流路の流路の延出方向に往復移動することで選択された前記中空棒に対して前記吸引流路が接続された状態と分離した状態とに切り替える接離切替機構を有する穿孔装置。
【請求項4】
請求項3に記載の穿孔装置であって、
前記流路切替機構は、前記接離切替機構による吸引流路の分離を行った状態において、前記複数の中空棒のうち選択された中空棒に応ずる吸引流路に切り替える穿孔装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の穿孔装置であって、
前記流路切替機構は、
円弧上に配された複数の接続口が設けられた接続部材と、該円弧の中心を回動中心として回動することで前記複数の接続口のうち一つの接続口と連通する吸引口を備えた回動部材を有する穿孔装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1つに記載の穿孔装置であって、
前記流路切替機構は、
円弧上に配された複数の接続口が設けられた接続部材と、該円弧の中心を回動中心として回動することで前記複数の接続口のうち一つの接続口と連通する吸引口を備えた回動部材を有し、
前記吸引切替装置は、前記回動部材がその回動中心と同軸上に沿って往復移動することで、前記各接続口と前記吸引口との接続と分離の切り替えを行う接離切替機構を有する穿孔装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の穿孔装置であって、
前記吸引切替装置は、前記穿孔ヘッド毎に設けられている穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物に刺繍や穿孔処理を施す刺繍ミシンが知られている。例えば国際公開第2015/076389号に開示された刺繍ミシンは、複数本の針を備えた刺繍ヘッドと、複数本のポンスを備えた穿孔ヘッドと、枠を有する。刺繍ヘッドと穿孔ヘッドは、間隔を空けて並設される。枠は、ミシンテーブル上で皮革シートなどの被加工物を保持する。枠は、刺繍時および穿孔処理時に前後左右に移動される。
【0003】
図11~14に、この種の穿孔ヘッドを備えた刺繍ミシンを示す。図11に示すように刺繍ミシンは、刺繍ヘッドSと穿孔処理を施すための穿孔ヘッドPとからなるペアを2つ備えている。刺繍ヘッドSと穿孔ヘッドPは、隣接しており、刺繍ミシン本体1の上フレーム2の前面に設けられる。刺繍ヘッドSは、複数の色糸のいずれかを選択して縫いを行うことにより多色刺繍が可能である。各刺繍ヘッドSの下方には、針と協働して縫いを行う周知の釜を備えた釜土台3が下フレーム4上に配置されている。また、各穿孔ヘッドPの下方には、ポンス(穿孔具)8(図12、13参照)を受け止める受け土台5が同じく下フレーム4上に配置されている。
【0004】
穿孔ヘッドPは、図12に示すとおり、周知の刺繍ヘッドSの針棒ケースにおいて天秤や糸道などを取り除いた構造である。穿孔ヘッドPは、刺繍ヘッドSと同様に、昇降可能な複数の針棒6を具備している。上フレーム2の前面に設置されたチェンジ装置7(図11参照)により選択された針棒6が使用位置に切り替えられる。針棒6は中空であり、各針棒6の下端には、縫い針に替えてポンス(穿孔具)8がそれぞれ取り付けられている。なお、穿孔ヘッドPの針棒6には縫い針が取り付けられていないので、以下、昇降棒と称する。
【0005】
ポンス(穿孔具)8は、図13に示すとおり、上下に貫通する貫通孔8aを備えている。貫通孔8aの下端の内周縁に穿孔刃8bが形成されている。ポンス(穿孔具)8の上端には取付部8cが形成されている。取付部8cを昇降棒6の下端に嵌入し、針ダキ9のネジ10を締め付けることでポンス(穿孔具)8が昇降棒6に固定される。ポンス(穿孔具)8には孔形状や大きさが異なる種々のものがあり、交換可能である。
【0006】
各昇降棒6の上端には、図12に示すとおり、ポンス(穿孔具)8の貫通孔8aから抜き屑を排出するためのチューブ11がそれぞれ取り付けられている。図11を参照するように、各チューブ11は上フレーム2の上面に設置された糸立て12に支持される。各チューブ11は穿孔ヘッドPから上方に延出し、糸立て12の上面を超えて裏側に延出し、下方へ延出している。図14に示すように、糸立て皿13の上面後方位置には、各穿孔ヘッドPに対応してマニホールドブロック14が設けられる。マニホールドブロック14の裏側部に、穿孔ヘッドPの昇降棒6と同数の接続口(図示外)が形成される。各接続口に各チューブ11が接続される。チューブ接続口の反対の前側部に分岐ホース15が接続されている。そして、各分岐ホース15は、ホース本管16に接続され、ホース本管16はバキューム装置50へと接続されている。したがって、各穿孔ヘッドPの穿孔処理による抜き屑は、バキューム装置50の吸引により、ポンス(穿孔具)8の貫通孔8a、昇降棒6の中空部、チューブ11内、分岐ホース15内、ホース本管16内から構成される吸引流路を通って外部へ排出されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の抜き屑排出方法においては、穿孔処理を行っているポンス以外のポンス(すなわち休止中のポンス)も含めて吸引する。そのため吸引流路の気密性が低く、バキューム装置50における吸引効率が悪いという問題があった。さらには、穿孔ヘッドが増えるほど吸引力が大幅に低下する問題があった。
【0008】
したがって穿孔具による抜き屑の排出の際の吸引流路の気密性が高く、これによりバキューム装置による吸引効率が高い穿孔装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの特徴によると、穿孔装置は、穿孔ヘッド、吸引装置、吸引流路、吸引切替装置を有する。穿孔ヘッドは、上下動する複数の中空棒と、該中空棒の先端にそれぞれ設けられ軸方向に貫通する貫通孔を備えた穿孔具とを含む。吸引装置は、穿孔ヘッドの穿孔処理による抜き屑を吸引する。吸引流路は、穿孔具に設けられた貫通孔と吸引装置の間を通じる。吸引切替装置は、複数の中空棒のうち穿孔処理を施す中空棒のみを吸引するように吸引流路を変更する。
【0010】
したがって複数の中空棒のうち穿孔処理を施さない中空棒においては、吸引を行わない。そのため、吸引装置の吸引力を穿孔処理を施す中空棒に集中させることができる。その結果、穿孔具による抜き屑の排出の際の吸引流路の気密性を高めることができ、かつ吸引装置による吸引効率が向上する。
【0011】
本開示の他の特徴によると、吸引切替装置は、複数の中空棒のうち選択された中空棒に応じて吸引流路を切り替える流路切替機構を有し得る。これにより複数の中空棒のうち穿孔処理を施す中空棒のみを吸引することができる。
【0012】
本開示の他の特徴によると、吸引切替装置は、さらに接離切替機構を有し得る。接離切替機構は、流路切替機構によって切り替えられた吸引流路の中間部位に位置する。接離切替機構は、吸引流路の流路の延出方向に往復移動することで選択された前記中空棒に対して吸引流路が接続した状態と分離した状態とに切り替える。したがって選択された中空棒に対して吸入流路が物理的に接続と分離とに切り替えられる。
【0013】
本開示の他の特徴によると、流路切替機構は、接離切替機構による吸引流路の分離を行った状態において、複数の中空棒のうち選択された中空棒に応ずる吸引流路に切り替える。したがってこの構成は、分離しないで切り替える構成に比べ当接部材の摩耗を防止できると共に駆動源等にかかる負荷を低減させることができる。
【0014】
本開示の他の特徴によると、流路切替機構は、接続部材と回動部材を有し得る。接続部材は、円弧上に配された複数の接続口を有する。回動部材は、該円弧の中心を回動中心として回動することで複数の接続口のうち一つの接続口と連通する吸引口を備える。したがってこの構成は、複数の接続口を直線状に配設する構成よりもコンパクトにできる。さらに流路切替機構は、複数の接続口に対する吸引口の切り替えについて、駆動源の回転軸を利用する構成である。したがって流路切替機構は、複雑な構成を採用することなくコンパクトにできる。
【0015】
本開示の他の特徴によると、吸引切替装置は、さらに接離切替機構を有し得る。接離切替機構は、回動部材がその回動中心と同軸上に沿って往復移動することで、前記各接続口と前記吸引口との接続と分離の切り替えを行う。したがって、吸引口に設けられた当接部材が接続口に垂直に押し当てられる。これにより吸引口と接続口とが隙間なく接続されて気密性を保つことができる。またこの構成は、吸引口と接続口を分離しないで切り替える構成に比べ当接部材の摩耗を防止できると共に駆動源等にかかる負荷を低減させることができる。
【0016】
本開示の他の特徴によると、前記吸引切替装置は、前記穿孔ヘッド毎に設けられ得る。したがってこの構成は、穿孔ヘッドの数の変更に柔軟に対応でき、吸引処理の能力も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る穿孔装置における吸引切替装置の平面図である。
図2】吸引切替装置の側面図である。
図3】吸引切替装置の拡大平面図である。
図4】接離切替手段が作動した状態における吸引切替装置の平面図である。
図5】吸引切替装置の斜視図である。
図6】流路切替手段の回動アームが最も右側の接続口に位置する状態における吸引切替装置の模式図である。
図7】流路切替手段の回動アームが最も左側の接続口に位置する状態における吸引切替装置の模式図である。
図8】実施形態2に係る穿孔装置における吸引切替装置の側面図である。
図9】吸引切替装置の側断面図である。
図10】吸引切替装置の分解斜視図である。
図11】穿孔ヘッドを備えた従来の刺繍ミシンの正面図である。
図12】従来の穿孔ヘッドの正面図である。
図13】従来の穿孔ヘッドの昇降棒及びポンス(穿孔具)の縦断面図である。
図14】従来の吸引流路の一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための実施形態について、図1図10を用いて説明する。なお、本発明の穿孔装置の一実施形態として、刺繍ミシンに設けられた穿孔装置について説明する。なお、本実施形態について図1~10を用いて説明するにあたり、従来構成と同様の構成については図11~14で示した符号と同様の符号を付して詳細な説明を省略することがある。
【0019】
<実施形態1>
実施形態1に係る穿孔装置における吸引切替装置Vは、図1に示すとおり、バキューム装置50(吸引装置)、バキューム装置50に繋がるホース本管16、分岐ホース15の配管は従来構成として示した図11~14と同様である。ホース本管16から分岐された各分岐ホース15は各穿孔ヘッドP(図12参照)に対応する接続ブロック17に接続されている。接続ブロック17の一面(表面)に分岐ホース15が接続される接続口が設けられる。接続ブロック17の反対面(裏面)に小径の接続口が設けられる。小径の接続口(図示外)に吸引切替装置Vに繋がるチューブ18が接続されている。糸立て皿13の前領域には、刺繍ヘッドSの縫い針に供給される上糸を巻いた各糸駒19が載置されている。吸引切替装置Vは、各接続ブロック17の後方に所定の間隔を空けて配置されている。吸引切替装置Vは、流路切替手段(流路切替機構)と接離切替手段(接離切替機構)で構成されている。
【0020】
[流路切替手段(流路切替機構)]
図2に示すとおり、板状の支持プレート20(接続部材)が糸立て皿13上に立設される。支持プレート20は、糸立て皿13の下方から糸立て皿13に挿入されたボルト21で糸立て皿13に固定されている。図5に示すように、支持プレート20(接続部材)には、厚み方向に貫通する接続口20aが図12に示すポンス8(昇降棒6)と同数設けられている。接続口20aは、一定の間隔を空けて円弧状に配設されている。図12に示す穿孔ヘッドPの各昇降棒6の上端に接続されているチューブ11が図5に示す支持プレート20の各接続口20aの背面部に接続されている。支持プレート20に対するチューブ11の接続位置は図11に示す穿孔ヘッドPのポンス8(昇降棒6)の並び順と同じである。すなわち穿孔ヘッドPの最も右側の昇降棒6に接続されたチューブ11が、正面視において支持プレート20(図5参照)の最も右に位置する接続口20a(図5参照)に接続される。穿孔ヘッドPの最も左側の昇降棒6に接続されたチューブ11が、支持プレート20の最も左に位置する接続口20aに接続される。
【0021】
図2~5に示すように支持プレート20の前面側には、スタッド22が立設されており、スタッド22の先端に取付けプレート23が取り付けられている。取付けプレート23には、モータ軸が挿通する軸孔(図示外)が設けられている。モータ軸が取付けプレート23を貫通し、取付けプレート23から支持プレート20に向けて突出している。モータ軸の外周には、回転体25が固定されている。回転体25は、円筒状の基部25aと、基部25aより小径のガイド部25bとを一体に有している。ガイド部25bの先端側にはピン26が貫通して設けられている。ガイド部25bの外周には、移動体27が嵌合している。移動体27は、回転体25のガイド部25bの外周面に沿って軸線方向に摺動するように構成された筒状である。移動体27は、ガイド部25bのピン26が係合するガイド溝28を備えている。ガイド溝28はモータ軸と平行に延出している。ピン26は、径方向にガイド溝28から突出している。したがって、移動体27は、ガイド溝28に係合するピン26により回転不能に規制されて軸方向に直動(進退)するとともに、ピン26に押されて回転体25と一体的に回転する。
【0022】
図2~5に示すように移動体27には、連結具29により回動アーム30(回動部材)が固定されている。回動アーム30の基部が移動体27の中心に軸支されている。回動アーム30の端部側には吸引口30aが設けられている。吸引口30aは、回動アーム30が回転することで、支持プレート20に配設された複数の接続口20aに対して順に対向するように移動する。吸引口30aには、接続ブロック17からのチューブ18が接続されており、吸引口30aの反対面には、スポンジゴムからなるリング形状の当接部材31を備えている。なお、モータ24の他面側には、取付けプレート32を介して、回動アーム30の基準位置(原点)を検出するための検出器33が設けられている。
【0023】
[接離切替手段(接離切替機構)]
図3,4に示すように支持プレート20の背面側には、エアシリンダ34が取り付けられている。エアシリンダ34のロッド35が支持プレート20を貫通してモータ24に向けて前方に突出している。ロッド35の軸心はモータ軸の軸心と同一線上である。ロッド35の先端は、回動アーム30を移動体27に固定している連結具29に連結されている。したがって、エアシリンダ34を駆動してロッド35を進退させると、移動体27が回転体25のガイド部25bに沿ってスライド移動する。これにより回動アーム30の位置が接続位置30Xと退避位置30Yへと切り替わる。具体的には、図3に示すとおり、エアシリンダ34のロッド35が後退すると、回動アーム30が支持プレート20方向(後方)に移動する。これにより回動アーム30の当接部材31が支持プレート20に設けられている接続口20aに押し当てられる(接続位置30X)。一方、図4に示すとおり、エアシリンダ34のロッド35が進出すると、回動アーム30がモータ24方向(前方)に移動する。これにより回動アーム30の当接部材31が接続口20aから切り離される(退避位置30Y)。
【0024】
[吸引切替装置Vの作動]
被加工物である皮革シートに穿孔処理を施す場合は、あらかじめ、穿孔処理による抜き屑を回収するためにバキューム装置50を作動させておく。そして、周知のとおり、穿孔柄データにしたがって皮革シートを保持した保持枠をテーブル上面でX、Y方向に移動させながら、穿孔ヘッドPにより穿孔処理を皮革シートに施す。穿孔処理の過程において、吸引切替装置は以下のように作動する。
【0025】
図6は、穿孔ヘッドPの最も右側に位置するポンス8を使用して穿孔処理を施す場合の回動アーム30の位置を示している。回動アーム30は、流路切替手段の一構成であるモータ24の作動により、支持プレート20に対して移動する。穿孔ヘッドPの最も右側に位置するポンス8(昇降棒6)のチューブ11が接続されている接続口20aに回動アーム30が位置合わせされている。また、図3に示すとおり、接離切替手段の一構成であるエアシリンダ34の作動により、回動アーム30の当接部材31が接続口20aに垂直に押し当てられている(接続位置30X)。したがって、分岐ホース15が繋がる接続ブロック17からのチューブ18とポンス8(昇降棒6)に接続されているチューブ11とが隙間なく接続されている。このことから流路の気密性を保ったまま、穿孔ヘッドPの最も右側に位置するポンス8(昇降棒6)のみがバキューム装置50により吸引される。
【0026】
図7は、穿孔処理を施すポンス8を穿孔ヘッドPの最も左側に位置するポンス8に切り替えた場合の回動アーム30の位置を示している。エアシリンダ34が作動し、回動アーム30の位置が接続位置30X(図3参照)から退避位置30Y(図4参照)に移動することにより、回動アーム30の当接部材31が接続口20aから離間する。続いて、モータ24が作動し、回動アーム30が左方向に回動する。回動アーム30の当接部材31が支持プレート20に対して穿孔ヘッドPの最も左側に位置するポンス8(昇降棒6)のチューブ11が接続されている接続口20aに対向する。エアシリンダ34が作動し、回動アーム30の位置が退避位置30Yから接続位置30Xに移動する。これにより、回動アーム30の当接部材31が接続口20aに押し当てられる。かくして、分岐ホース15が繋がる接続ブロック17からのチューブ18とポンス8(昇降棒6)に接続されているチューブ11とが接続される。そして吸引流路が穿孔ヘッドPの最も左側に位置するポンス8(昇降棒6)に連結するように切替えられる。なお、吸引切替装置Vの作動(吸引流路の切替え)は、使用するポンス8(昇降棒6)の切替えに同期している。穿孔柄データに基づいて使用されるポンス8(昇降棒6)が切り替えられると、吸引流路も自動的に当該ポンス8(昇降棒6)に連結するように切り替えられる。
【0027】
上記に説明したとおり、吸引切替装置Vにより、バキューム装置50に繋がる吸引経路を穿孔処理を施すポンス8(昇降棒6)だけに接続して吸引する。この構造であるため、従来技術と比べて流路の気密性が高く、抜き屑をバキューム装置50によって効率よく吸引することが可能である。
【0028】
<実施形態2>
図8~10に示すとおり、実施形態2における吸引切替装置V’は、内部に空洞部36aを有する円筒状のマニホールド36(接続部材)を備えている。マニホールド36の片側面に図1に示すバキューム装置50のホース本管16に繋がる分岐ホース15が接続されている。マニホールド36の反対面には、マニホールド36の内部と貫通する接続口36bが設けられている。接続口36bの数は穿孔ヘッドPのポンス8(昇降棒6)と同数である。接続口36bは一定の間隔を空けて環状に配設されている。そして、穿孔ヘッドP(図12参照)の各昇降棒6の上端に接続されているチューブ11は、この接続口36bにそれぞれ接続されている。接続口36bが配設された環状の中心軸上に、流路切替手段と接離切替手段が設けられている。また、実施形態1における回動アーム30に相当する部材として回転プレート37(回動部材)が設けられている。回転プレート37(回動部材)はマニホールド36の空洞部36aに収納され、接離切替手段の一構成であるエアシリンダ34のロッド35の先端に連結されている。
【0029】
図10に示すように回転プレート37は、ひとつの当接部材38と複数個の密閉部材39を備えており、接続口36bが配設された円形と同心・同径上で、各接続口36bと同じ間隔をもって配設されている。当接部材38は実施形態1と同じく、スポンジゴムからなるリング形状である。また、回転プレート37は、当接部材38が取付けられた位置だけに厚み方向に貫通する吸引口40が設けられている。密閉部材39は、ゴムからなる先端に吸着部を有した形状で、回転プレート37にネジ止めされている。穿孔処理を施すポンス8(昇降棒6)以外のポンス8(昇降棒6)の各接続口36bを塞ぐためのフタとして機能する。
【0030】
図9,10に示すように実施形態2の吸引切替装置V’は、実施形態1と同様に、流路切替手段の一構成であるモータ24により回転プレート37を回転させる。吸引口を有する当接部材38が穿孔処理を施すポンス8(昇降棒6)の接続口36bに対応するように回転プレート37の位置を切り替える。そして、実施形態1と同様に、接離切替手段の一構成であるエアシリンダ34が作動し、回転プレート37の位置が退避位置37Yから接続位置(図示省略)に移動する。このことにより、回転プレート37の当接部材38が接続口36bに押し当てられるとともに、各密閉部材39が穿孔処理を施すポンス8(昇降棒6)以外のポンス8(昇降棒6)の各接続口36bに押し当てられる。ポンス8(昇降棒6)以外のポンス8(昇降棒6)の各接続口36bは各密閉部材39に塞がれているため、穿孔処理を施すポンス8(昇降棒6)のみが吸引されることになる。
【0031】
実施形態1、2の穿孔装置は、次のような効果を有している。
【0032】
上記穿孔装置は、複数の昇降棒6(中空棒)のうち穿孔処理を施す昇降棒6のみを吸引するための吸引切替装置V、V’を有している。これにより、複数の昇降棒6のうち穿孔処理を施さない昇降棒6においては、吸引を行わない。そのため、バキューム装置50(吸引装置)の吸引力を穿孔処理を施す昇降棒6に集中させることができる。その結果、抜き屑を排出するための流路の気密性を高め、バキューム装置50の抜き屑を吸引する吸引効率が向上する。
【0033】
また、吸引切替装置V、V’は、複数の昇降棒6から選択した昇降棒6に応じて流路を切り替える流路切替手段を有している。これにより、複数の昇降棒6のうち穿孔処理を施す昇降棒6に対応した流路のみを吸引することができる。
【0034】
また、吸引切替装置V、V’は、流路切替手段によって切り替えられた吸引流路の中間部位において接続と分離を切り替える接離切替手段を有する。したがって吸引流路は、選択した昇降棒6に対しての接続と分離とが流路切替手段によって物理的に切り替えられる。
【0035】
また、接離切替手段による吸引流路の分離を行った後に、流路切替手段によって複数の昇降棒6(中空棒)のうち選択された昇降棒6に応ずる吸引流路を選択するように流路を切り替える。この構成であることから、分離しないで切り替える構成に比べ当接部材の摩耗を防止できると共に、モータ24(駆動源)等にかかる負荷を低減させることができる。
【0036】
また、流路切替手段は、円弧上に配された複数の接続口20a、36bを有する。複数の接続口20a、36bを直線状に配設する構成よりもコンパクトに構成することができる。さらに流路切替手段は、複数の接続口20a、36bに対する吸引口30a、40の切り替えについて、モータ24(駆動源)の回転軸を利用する。この構成であることから流路切替手段に複雑な構成を採用することなく流路切替手段をコンパクトにすることができる。
【0037】
接離切替手段の回動アーム30、回転プレート37がその回動中心と同軸上に沿って往復移動することで、複数の接続口20a、36bと吸引口30a、40との接続と分離の切り替えを行う。これにより、吸引口30a、40に設けられた当接部材が接続口20a、36bに垂直に押し当てられる。そのため、吸引口と接続口とが隙間なく接続されて気密性を保つことができる。
【0038】
また、吸引切替装置V、V’は、穿孔ヘッドP毎に設けられる。そのため穿孔ヘッドPが増加しても穿孔ヘッドP毎に吸引切替装置V、V’を設けることができる。かくして本構成は、穿孔ヘッドPの数の変更に柔軟に対応でき、吸引処理の能力も維持できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の穿孔装置は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。
【0040】
なお、実施形態は、刺繍ヘッドSと穿孔ヘッドPからなるペアを2つ備えているが、これに限られず、2つ以上のペアで構成する刺繍機、穿孔ヘッドPのみを複数備えた穿孔装置、または穿孔ヘッドPをひとつだけ備えた穿孔装置であってもよい。
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