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特許7013037反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20220124BHJP
【FI】
B62K5/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019521521
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 IB2017054107
(87)【国際公開番号】W WO2018007992
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】102016000071538
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519007020
【氏名又は名称】ジ.ピ.ディ ジェッツィ ジュセッペ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ジェッツィ,ジュセッペ
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-4588(JP,A)
【文献】特開昭55-29604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/00- 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの車輪(25)用のサスペンショングループ(3)を備えたメインフレーム(2)を備え、3つ以上のチルティング車輪を有する車両(100)において、
前記サスペンショングループ(3)がヒンジ(8)を介して前記メインフレーム(2)に接合され、前記ヒンジ(8)の軸に沿って前記メインフレーム(2)が前記サスペンショングループ(3)に対して自由に回転することができ、
前記サスペンショングループ(3)は、前記各車輪(25)用の旋回アーム(6)を有し、
前記車両(100)は、前記各旋回アーム(6)がエラストマーからなる1つ以上の弾性要素(9)を介在して前記サスペンショングループ(3)に拘束されることによって特徴付けられ、前記弾性要素(9)はサスペンションとしてまたは減衰手段としてまたは関連する機能の両方で作動し、前記各弾性要素(9)は、前記サスペンショングループ(3)で得られる前記ヒンジ(8)と作動的に関連する閉多角形断面を有する1つ以上のピン(7)と、閉多角形断面を有する1つ以上のチャンネル(32)との間で得られる空洞内で圧縮され加圧下で作動し、前記各チャンネル(32)の閉多角形断面は、前記閉多角形断面を有するチャンネル(32)内で回転する前記各ピン(7)の閉多角形断面に対して、互換性がある形状とより大きい表面を有し、
前記サスペンショングループ(3)は、下部パイプに接合された閉多角形断面を有する4つの中空ハウジングの組立体からなるモノブロックの本体(12)と、上部剛性補強材と、を有し、
前記下部パイプは、前記ヒンジ(8)に設けられた摩擦低減装置(4)の着座部であり、
前記本体(12)の4つの前記中空ハウジングは、4つの前記チャンネル(32)を形成し、
4つの前記チャンネル(32)のそれぞれの内側には、閉多角形断面を有する4つの前記ピン(7)のそれぞれが配置されており、
4つの前記ピン(7)は、2つで1組となるように対を成しており、
前記各旋回アーム(6)には、ボルト(10)を介して対を成す2つの前記ピン(7)が接続され、対を成す2つの前記ピン(7)は、駆動ピン(11)によって前記各旋回アーム(6)の定位置に保持され、
前記各旋回アーム(6)は、接続された対を成す2つの前記ピン(7)を同時に回転させることなく回転させることができない、ことを特徴とする車両(100)。
【請求項2】
閉多角形断面を有する4つの前記ピン(7)が、大きな干渉を伴って座位に押し込まれる前記弾性要素(9)との取り付け干渉によって前記本体(12)内の座位に保持されることを特徴とする請求項に記載の車両(100)。
【請求項3】
前記旋回アーム(6)はそれぞれ閉多角形断面を有するそれぞれの前記ピン(7)に拘束され、それらと共に回転し、それぞれの前記車輪(25)が路面の粗さを吸収するように垂直方向に動くことを可能にし、閉多角形断面を有する前記ピン(7)が、回転に抗するエラストマー(9)からなる前記弾性要素の抵抗に打ち勝って回転し、座位に保持されることを特徴とする請求項に記載の車両(100)。
【請求項4】
前記本体(12)内に圧縮されたエラストマー(9)からなる前記弾性要素は、それぞれの前記車輪(25)に負荷がないときは平衡状態にあり、閉多角形断面を有するそれぞれの前記ピン(7)の回転による負荷のもとで変形し、回転に抗して開始位置に戻る傾向があり、前記旋回アーム(6)の捻りが座位にあるエラストマー(9)からなる前記弾性要素を変形させ、それによって負荷をかけ、それはすべての意図および目的においてばねのように振舞うことを特徴とする請求項に記載の車両(100)。
【請求項5】
少なくとも2つの車輪(25)用のサスペンショングループ(3)を備えたメインフレーム(2)を備え、3つ以上のチルティング車輪を有する車両(100)において、
前記サスペンショングループ(3)がヒンジ(8)を介して前記メインフレーム(2)に接合され、前記ヒンジ(8)の軸に沿って前記メインフレーム(2)が前記サスペンショングループ(3)に対して自由に回転することができ、
前記サスペンショングループ(3)は、前記車両(100)の中心軸に沿って長手方向に配置されており、前記ヒンジ(8)を介して前記メインフレーム(2)接続された閉多角形断面を有する単一のピン(7)と、前記各車輪(25)用の旋回アーム(6)と、を有し、
前記車両(100)は、前記各旋回アーム(6)がエラストマーからなる1つ以上の弾性要素(9)を介在して前記サスペンショングループ(3)に拘束されることによって特徴付けられ、前記弾性要素(9)はサスペンションとしてまたは減衰手段としてまたは関連する機能の両方で作動し、前記各弾性要素(9)は、前記サスペンショングループ(3)で得られる前記ヒンジ(8)と作動的に関連する閉多角形断面を有する前記ピン(7)と、閉多角形断面を有する1つ以上のチャンネル(32)との間で得られる空洞内で圧縮され加圧下で作動し、前記各チャンネル(32)の閉多角形断面は、前記閉多角形断面を有するチャンネル(32)内で回転する前記ピン(7)の閉多角形断面に対して、互換性がある形状とより大きい表面を有し、
前記ピン(7)は、エラストマー(9)からなる前記弾性要素が係合する座部であり、該ピン(7)に前記車輪(25)のそれぞれの前記旋回アーム(6)が、前記ピン(7)を中心として互いに独立して回転するように固定され、
前記ピン(7)は、前記車両(100)の傾斜運動を許容するように、前記ヒンジ(8)を介して前記メインフレーム(2)を中心に回転し、
前記車両(100)は、前記各旋回アーム(6)に対して1つ以上のクランプ(30)を有し、
前記クランプ(30)は、閉多角形断面を有する前記ピン(7)と閉多角形断面を有するそれぞれの前記チャンネル(32)の間で、エラストマー(9)からなる前記弾性要素を圧縮し、エラストマー(9)からなる前記弾性要素の介在によって、閉多角形断面を有する前記ピン(7)に前記旋回アーム(6)を弾性的に拘束することを特徴とする車両(100)。
【請求項6】
閉多角形断面を有する前記チャネル(32)は、一部は各前記旋回アーム(6)の成形された端部、一部は各前記クランプ(30)から得られ、各前記クランプ(30)は、ねじ(31)によってそれぞれの前記旋回アーム(6)の前記成形された端部に固定されていることを特徴とする請求項に記載の車両(100)。
【請求項7】
前記旋回アーム(6)が、互いに独立して、かつ前記ヒンジ(8)によって前記サスペンショングループ(3)の周りでの前記メインフレーム(2)の回転とは独立に回転し、前記ヒンジ(8)は、摩擦低減装置(4)によって前記サスペンショングループ(3)に対する前記メインフレーム(2)の回転を可能にする単一のピンを有していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両(100)。
【請求項8】
前記摩擦低減装置(4)が、転がり軸受、玉軸受、ころ軸受またはブッシュからなることを特徴とする請求項に記載の車両(100)。
【請求項9】
十字継手(13)が、ピン(14)によって、前記ピン(7)に固定されるそれぞれのアタッチメントと反対側の各前記旋回アーム(6)の端部に収容され、スピンドル(15)が2つのピン(16、17)を介して前記十字継手(13)に固定され、スピンドル(15)のピンが、その上に嵌装されたホイール保持ハブ(21)を有し、前記ホイール保持ハブ(21)は車輪軸受け(22)上で自由に回転し、中心ナット(27)によって前記スピンドル(15)に固定されており、前記スピンドル(15)はしたがって、前記車輪(25)の上下運動を助けるように前記旋回アーム(6)の周りを回転することができ、前記スピンドル(15)はまた、前記2つのピン(16、17)を通る操舵軸に関して左右に操縦することができることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の車両(100)。
【請求項10】
前記ホイール保持ハブ(21)はブレーキディスク(23)の座部でもあり、前記ブレーキディスク(23)は、前記スピンドル(15)に順に固定されるブレーキキャリパ(24)と組になって作動し、前記車輪(25)は、キャンバータイロッド(20)によって制御されて前記メインフレーム(2)を傾斜させることによって傾斜することを特徴とする請求項に記載の車両(100)。
【請求項11】
前記弾性要素(9)はゴムまたはその派生物から製造されることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の車両(100)。
【請求項12】
前記ピン(7)は、それぞれの前記チャネル(32)と同様に、四角形の断面を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両に関する。本発明の対象サスペンションは、同一の横軸上に配設された少なくとも一対の車輪を有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
チルティング車輪を有する車両は、同じ横軸に配設された車輪を有し、コーナリング時の運転者とメインフレームの傾斜に追随して、車両の長手方向軸に関して旋回する。本発明の対象サスペンションは、操舵輪と組み合わされた前部と、チルティング車輪を有する車両用の単純な非操舵のサスペンショングループとして後部の両方に適用可能である。
【0003】
世界中で、特に大都市で使用される3つまたは4つの車輪を有するチルティング車輪を備えた提案された車両が増え続けている。現在知られているチルティング車輪を有する車両は、3つまたは4つのチルティング車輪を有することができる。三輪車の場合、大抵の場合は、同一軸に配設された車輪は前方に配置されており、したがって操舵輪である。
【0004】
現在知られているチルティング車輪を有する車両は、概念的には以下の2つのカテゴリに分類することができる。
【0005】
1)サスペンション(ひいては車輪)の拘束軸がメインフレームの軸の傾斜に追従するように、メインフレームに固定的に接続された平行四辺形構造に結合されて取り付けられたオートバイ技術(伸縮フォークまたは引張り/押しアーム)由来のサスペンションを使用する車両。
【0006】
2)ホイールハブとメインフレームとの間で連結旋回アームと平行四辺形構造を形成する適切なタイロッドを介して車輪を旋回させる自動車技術(関節型四辺形またはマクファーソンまたはダブルウィッシュボーンタイプ)由来のサスペンションを使用する車両。このようにしても、車輪はメインフレームの傾斜角に追従する。
【0007】
例えば、文献US2011/0167838A1は、関節型四辺形タイプの構造方式を有する独立車輪を備えたフロントサスペンションを備えた四輪自動車を示している。各前輪はゴム製の弾性要素を有するダンパーを備えている。US2015/0290990A1の図6に明確に強調されているように、各前輪はまた、車両のメインフレームに固定的に接続された平行四辺形構造のそれぞれに取り付けられている。しかし、文献US2015/0290990A1に示されている車両は、前述のカテゴリ2に含まれるといえども、チルティング車輪を有する車両と考えることはできない。これは、文献US2015/0290990A1に示されている車両のフロントサスペンショングループがメインフレーム1に関してヒンジ軸に沿って自由に回転することができないという事実によるものである。文献US2015/0290990A1に示されている車両は旋回する前輪を有しているが、チルティング車輪を有している車両ではない。
【0008】
文献US4360224には別の例が見られ、それは三輪車を示しており、走行中にこの特定のタイプの車両をより安定させるために提案されている。その結果、文献US4360224に示されている車両は2つのチルティング車輪を備えているが、運転者がいない時と走行中の両方において、メインフレームを垂直位置に維持する目的でそれぞれのフロントサスペンショングループに従来のトーションバーが設けられている。前車軸にトーションバーが存在することは、車両のフロントサスペンショングループの構造的に複雑化することと同様に、他方で通常の二輪車または3つ以上の完全に傾斜する車輪を有する車両で生じるような車両自体のコーナリング中の自由な傾斜を妨げる。
【0009】
さらに、文献US4360224に示されている車両では、ゴム製の弾性要素を含む唯一の減衰グループが、トーションバーと旋回アームとの間の接合インターフェースとして使用されている。この減衰グループは、旋回アーム上のトーションバーの応力を減衰させるように作用するが、文献US4360224に記載されたようにおよび図4に明らかに見られるように、右旋回アームが減衰グループの外側体に接続され、一方、左旋回アームが同じ減衰体の内側体に接続されているため、独立した車輪の状態を作り出していない。減衰グループの2つの内外側体間の弾性要素は、共有され、それ故2つの旋回アームは独立ではなく、同じエラストマーに作用し、さらに両方ともトーションバーに拘束されている。文献US4360224に示されている車両はしたがって、自由に傾けられずかつ独立して減衰されない前輪を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US2011/0167838A1
【文献】US2015/0290990A1
【文献】US4360224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、チルティング車輪を有する車両は、それらが3つまたは4つの車輪を有するかどうかにかかわらず、類似の二輪モデルより明らかに大きい快適性および特に能動的安全性の特性を提示しているため、現在増大的に市場に出回っている。一方で、これらの特性は、従来の二輪車に対して、この種の車両の製造を困難にし、重くし、経済的に不利にする多数の構成要素と共に、実質的な構造上の複雑さを代償に得られる。
【0012】
本発明の目的はしたがって、極めて簡単で費用効果が高くそして特に機能的な方法で、先行技術の前述の欠点を克服することができる反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両を製造することである。
【0013】
詳細には、本発明の目的は、操縦するのが軽いチルティング車輪を有し、極めて単純化されたサスペンション構造を有するが独立した車輪を有しかつ構成要素数が少ない車両を製造することである。
【0014】
本発明の他の目的は、簡単な構造および保守を有し同時に優れた動的性能および走行快適性を有するチルティング車輪を有する車両を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるこれらおよび他の目的は、請求項1に輪郭付けされているように、反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両を製造することによって達成される。
【0016】
本発明のさらなる特徴は、本明細書の不可欠な部分である従属請求項によって強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるチルティング車輪を有する車両の第1実施形態の斜視図である。
図2図1の車両の左前輪側から見た構成要素の分解斜視図である。
図3図1の車両のサスペンショングループのみの分解図である。
図4】右旋回アームに対して左旋回アームの移動の一例を示す、図3のサスペンショングループの正面図である。
図5】左側に向かって20°の傾斜で示されている、図1の車両の正面図である。
図6】右側に向かって20°の傾斜で示されている、図1の車両の他の正面図である。
図7】本発明によるチルティング車輪を有する車両の第2の実施形態の斜視図である。
図8図7の車両のフロントサスペンショングループの構成要素の分解図である。
図9】シングルアームの独立した旋回運動を示す、図8のサスペンショングループの正面図である。
図10】車両のフレームの周りのサスペンショングループの旋回運動を示す、図8のサスペンショングループの他の正面図である。
図11】旋回運動がどのようにコーナリングを可能にするかを示すのに有用な図7の車両の正面図である。
図12】旋回運動がどのように隆起した障害物を乗り越えることを可能にするかを示すのに有用な図7の車両の別の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に示す実施形態では、本発明の対象サスペンショングループは、前車軸上に一対の操舵輪を有する3つのチルティング車輪を有する車両に適用される。本発明の基礎を形成する革新的なアイデアは、いくつかの要素が多くの機能を同時に果たすようにして得られるサスペンショングループの単純化である。
【0019】
本発明による反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両の特徴および利点は、添付の概略図を参照しながら、限定の目的ではなく例として与えられる以下の説明からより明らかになるであろう。
【0020】
図面を参照すると、本発明による反応拘束サスペンションを備えたチルティング車輪を有する車両の2つの好ましい実施形態が示されている。チルティング車輪を有する車両は、全体として参照番号100で示されており、サスペンショングループ3がヒンジでその上に取り付けられているメインフレーム2を備えている。
【0021】
サスペンショングループ3は、それぞれの摩擦低減装置4を介して、メインフレーム2のピンまたはヒンジ8の軸に関して自由に回転する。サスペンショングループ3は、締結リング5を介して、メインフレーム2のピンまたはヒンジ8に固定されている。摩擦低減装置4は、例えば、転がり軸受、または玉軸受、またはころ軸受からなることができる。摩擦低減装置4は、単純なブッシュからなることもできる。
【0022】
図1図6の実施形態では、2つの旋回アーム6が、ねじ10および駆動ピン11を介してサスペンショングループ3中に固定されている。図7図12の実施形態では、旋回アーム6は一方、以下で明確に特定されるように、クランプ30およびねじ31を介してサスペンショングループ3上に固定されている。実施形態に関係なく、十字継手13は、ピン14を介して2つの旋回アーム6の反対側の端部に収容されている。スピンドル15が、2つのピン16および17を介して十字継手13に固定されている。
【0023】
ホイール保持ハブ21が、スピンドル15に固定的に接続された別のピンに嵌装され、前記ハブ21は、車輪軸受け22上で自由に回転し、中心ナット27によってスピンドル15に固定されている。車輪25はねじ26を介してハブ21に固定されている。スピンドル15は、このようにして各車輪25の上下運動を助けるように旋回アーム6の周りを回転することができる。スピンドル15はまた、2本のピン16,17を通る軸線に関して左および右に操舵することができる。
【0024】
ホイール保持ハブ21は、ブレーキディスク23の座部でもあり、ブレーキディスク23は、スピンドル15に順に固定されるブレーキキャリパー24と組になって作動する。車輪25は、キャンバータイロッド20によって制御されてメインフレーム2を傾斜させることによって傾斜する。
【0025】
リンクおよび操舵制御システムに関する限り、それらは動作原理および構成要素において、通常の生産の最も一般的な四輪バギーまたはATV(「全地形対応車(All Terrain Vehicle)」の頭字語)と実質的に同様である。したがって、車両100のリンクおよび操舵制御システムの機能の詳細に入る必要はないと考えられる。
【0026】
図1図6の実施形態では、サスペンショングループ3はモノブロックの本体12を有し、該本体12は、閉多角形断面を有するそれぞれのチャネル32を形成する閉多角形断面を有する4つの中空ハウジングの組立体からなる。閉多角形断面を有するこれらのチャネル32は、ピンまたはヒンジ8の軸受4の着座部である下部パイプに接合されている。本体12はまた上部剛性補強材を備えている。
【0027】
本体12内では、閉多角形断面を有するそれぞれのチャネル32内に、それぞれのピンの機能を有する閉多角形断面を有する4つの中央要素7が配置されている。閉多角形断面を有するピン7は、ボルト10を介して対で2つの旋回アーム6に接合され、駆動ピン11によって定位置に保持される。この構造は旋回アーム6を閉多角形断面を有するピン7に固定的に接続し、これにより閉多角形断面を有するピン7を同時に回転させることなく旋回アーム6を回転させることができないようになっている。
【0028】
閉多角形断面を有するピン7は、大きな干渉を伴って座位に押し込まれるエラストマー9からなる1つ以上の要素との取り付け干渉のおかげで、本体12内の座位に保持される。言い換えれば、エラストマー9で作られた各要素は、サスペンショングループ3において得られる閉多角形断面を有する1つ以上のピン7と閉多角形断面を有する1つ以上のチャネル32との間で得られる空洞内で圧縮されおよび加圧下で作動し、そこでは、各チャンネル32の閉多角形断面は、そのようなチャンネル32の内側で回転する各ピン7の閉多角形断面に対して、互換性がある形状とより大きな表面を有している。図3および図4でより明確に分かるように、旋回アーム6はそれぞれ閉多角形断面を有するそれぞれのピン7に拘束され、閉多角形断面を有するピン7とともに回転し、路面の粗さを吸収できるようにそれぞれの車輪25が垂直方向に動くことを許容する。図に示すように、ピン7は、それぞれのチャネル32と同様に、サスペンショングループ3の大きさを最小にするように、限定することなく好ましくは四角形、より好ましくは正方形の断面を有している。
【0029】
閉多角形断面を有するピン7は、回転に抗するエラストマー9で作られた要素の抵抗に打ち勝って回転し、サスペンショングループ3の本体12のそれぞれの閉多角形断面を有するチャンネル32の座位に保持される。図4でより明確に見られるように、閉多角形断面を有する各ピン7と閉多角形断面を有するそれぞれのチャネル32との間に圧縮されたエラストマー9からなる要素は、図4を下向きに見て左側の旋回アーム6のように、それぞれの車輪25に負荷がないときは、平衡状態にある。逆に、エラストマー9からなる要素は、同じ図4の右側に示すように、反対側の旋回アーム6Bの拘束で荷重を受けて変形する。
【0030】
旋回アーム6Bの拘束において、エラストマー9Bからなる要素は、閉多角形断面を有するピン7Bの回転により変形する。したがって、エラストマー9Bで作られた要素は、回転に抗して開始位置、すなわちそれぞれの車輪25に荷重がかかっていない位置に戻る傾向がある。
【0031】
旋回アーム6Bのねじれが、閉多角形断面を有する各ピン7と閉多角形断面を有するそれぞれのチャネル32との間の座位にあるエラストマー9Bでできた要素を、どのように変形させ負荷をかけたかに留意されたい。エラストマー9Bで作られたこれらの要素はすべての意図および目的においてばねのように振舞う。したがって、実際に、エラストマー9で作られた要素は、車両100のサスペンショングループ3の弾性部分であり、従来の鋼製ばね、板ばねまたは空気ばねと置き換えることができる。
【0032】
圧縮下で応力を加えられたエラストマーのヒステリシスの既知の特性により、この特定の場合のように、エラストマー9Bからなる要素は、ダンパーなしの機械的なばねや板ばねで生じる突然で「無制御」な復帰を防止しつつ、初期状態への復帰が制御されたやり方で起こるため、ダンパー要素としても作動する。
【0033】
したがって、閉多角形断面を有するピン7が旋回アーム6の拘束を構成する、すなわち、旋回アーム6を定位置に保持する構成であるということができる。閉多角形断面を有するピン7は同時に、サスペンショングループ3の反応の構成である。なぜなら、それらは、回転することができ、車両100が走行している間に作用する衝突と力を吸収することができ、同様に、応力が停止すると、それぞれの旋回アーム6を制御されたやり方で初期の平衡状態に戻すことができるからである。
【0034】
これらの技術的特徴は、サスペンショングループ3が、反応拘束サスペンショングループとして作動することを可能にする。各単一の旋回アーム6は、反対側の旋回アーム6が作用するエラストマー9からなる要素とは別個で独立した自己のエラストマー9からなる一連の要素に作用することに留意されたい。従って、車両100は完全に独立した車輪を有する車両である。旋回アーム6は実際に、互いに独立に、かつ、ヒンジ8によるサスペンショングループ3に関するメインフレーム2の回転に対して独立に回転する。
【0035】
図5および図6は、進行方向に対してそれぞれ左および右に傾斜した車両100を示している。サスペンショングループ3の本体12が、ピンまたはヒンジ8を介してメインフレーム2にヒンジ結合されているため、このようなメインフレーム2はピンまたはヒンジ8の軸に沿って自由に回転することができる。この動きはチルティング(傾斜)と呼ばれ、この場合、車両の傾斜軸はピンまたはヒンジ8の軸と一致している。
【0036】
図5は、メインフレーム2が左側に向かって20°傾斜した状態の車両100を示しているが、サスペンショングループ3は地面に対して平行のままである。サスペンショングループ3はしたがって、閉多角形断面を有するピン7によって本体12に拘束された旋回アーム6を独立に動かしながら、車両100の動きによって起こり得る応力をアシストする可能性を維持している。キャンバータイロッド20によって車輪がメインフレーム2の傾斜にどのように追従するかに留意すべきである。
【0037】
図7図12は、本発明によるチルティング車輪を有する車両100の第2の実施形態を示している。本実施形態では、サスペンショングループ3は、車両100の中心軸に沿って長手方向に配置された閉多角形断面を有する単一の要素またはピン7を有している。閉じた多角形断面を有する単一要素またはピン7は、ピンまたはヒンジ8を介し、ボールベアリングまたは滑り要素4を介在させることによってピンまたはヒンジ8上で自由に回転することができるメインフレーム2に接合されている。締結リング5は、単一要素またはピン7がメインフレーム2から引き抜かれることを防止する。
【0038】
閉多角形断面を有する単一要素またはピン7はまた、エラストマー9からなる要素が係合する座部でもあり、その上に、各車輪25の2つの旋回アーム6、1つは右サスペンション用および1つは左サスペンション用の旋回アーム6が交互に固定される。閉多角形断面を有する単一要素またはピン7への旋回アーム6の弾性拘束は、エラストマー9からなる要素の介在と各旋回アーム6の1つ以上のクランプ30による締付けによって行われる。クランプ30は、閉多角形断面を有する要素またはピン7と閉多角形断面を有するそれぞれのチャネル32との間で、エラストマー9からなる要素を圧縮する。本実施形態では、閉多角形断面を有するチャネル32は、一部は各旋回アーム6の成形された端部および一部は各クランプ30から得られる。対応する旋回アーム6の成形された端部への各クランプ30の固定は、ねじ31によって行われる。
【0039】
閉多角形断面を有する単一要素またはピン7は、したがって、例えば図9に示されるように、旋回アーム6が互いに独立して周りで回転するピンを構成する。同時に、閉多角形断面を有する単一要素またはピン7は、図10図11および図12に示すように、車両100の傾斜運動を可能にするようにピンまたはヒンジ8を介してメインフレーム2を中心に回転する。換言すると、図7~12に示す車両100において、左旋回アームがその周りで回転するピンと、右旋回アームがその周りで回転するピンと、最後に全サスペンショングループが本体12に対してその周りで回転するピンは一致し、平行四辺形の完全な幾何学的形状を形成する。
【0040】
本実施形態においても、各単一の旋回アーム6は、反対側の旋回アーム6が作用するエラストマー9からなる要素とは別個で独立した自己の一連のエラストマー9からなる要素に作用することに留意されたい。車両100はしたがって、完全に独立した車輪を持つ車両である。また、本実施形態では真に、旋回アーム6は、互いに他のものから独立して回転し、および、ヒンジ8を介してサスペンショングループ3を中心とするメインフレーム2の回転から独立して回転する。
【0041】
図9に示すように、単一の旋回アーム6は、メインフレーム2に対して静止したままの閉多角形断面を有する単一要素またはピン7に対して、エラストマー9を圧縮しながら回転させる(直線移動における粗さ吸収の状態)。これと相違して、図10、11および12に示すように、車両100の傾斜運動を実行するためには、閉多角形断面を有する単一要素またはピン7は、ピンまたはヒンジ8を介してメインフレーム2を中心に回転する。車両100の走行中に、これら2つの効果は、ドライバーおよび路面による応力により、合わせて加わる。
【0042】
サスペンショングループ3の相違する実施形態を除いて、構成および他の構成要素の動作に関する限り、図7図12に示す車両100は、図1図6に示すものと実質的に同一である。
【0043】
このように、本発明による反応拘束サスペンションを有する3つ以上のチルティング車輪を有する車両は、先に強調した目的を達成することが分かった。実際に、独立した車輪を有し、減衰システムを有し、チルティング車輪を有する車両用のサスペンショングループが、鋼または空気ばねの使用や、いかなる機能のためのオイルの使用も必要とせずに作られる。
【0044】
本発明の対象サスペンショングループは、機械的な終端ストロークなしに両方向(圧縮および伸張)への車輪の偏位を可能にする。弾性要素とダンパーのばね下質量は実質的にゼロである。旋回アームおよびタイロッドの質量は低く、チルティング軸の周りに集中している。本発明の対象サスペンショングループはしたがって、構造的に単純かつ極めて軽量である。
【0045】
これらの特徴の組み合わせは、部品点数を入れても、非常に低い産業コストで、高いレベルの動的品質と快適さを有する車両を製造することを可能にする。ブレーキキャリパーのみを除いてここに記載され図示された全ての構成要素は、前車軸の右側又は左側に使用されても同一であり、従って設計経済性を最大にし、技術支援管理を簡単にする。最後にオイルがいかなる機能にも使用されないという事実は、これは一方において従来のダンパーの構造では常に生じるが、環境の観点からさらなる利点を構成する。
【0046】
このようにして考え出された本発明の反応拘束サスペンションを備えた3つ以上のチルティング車輪を有する車両は、いかなる場合も多数の改変および変形を受けることができ、それらはすべて同じ発明概念によってカバーされ、さらに、すべての細部は技術的に均等の要素に置き換えることができる。実際には、使用される材料は、形状およびサイズと同様に、技術的要求に応じて如何なるものでもよい。
【0047】
したがって、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12