(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】ペプチドライブラリーの構築方法
(51)【国際特許分類】
C40B 50/06 20060101AFI20220124BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220124BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220124BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20220124BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220124BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220124BHJP
C40B 40/10 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
C40B50/06 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C07K7/64
C07K14/00
C07K19/00
C40B40/10
(21)【出願番号】P 2019558450
(86)(22)【出願日】2017-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2017082071
(87)【国際公開番号】W WO2018195834
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517452475
【氏名又は名称】フーナン ゾンセン ペプリブ バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ズゥイン
(72)【発明者】
【氏名】リ、シャンチュン
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-534768(JP,A)
【文献】国際公開第2017/004745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C40B 40/10
C40B 50/06
C07K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一連の環状ペプチドであって、それぞれが、
所定の大きさの異なるペプチドのアレーと1つ又は複数の親和性タグとを提示し、かつ、全体として、
前記所定の大きさのペプチドの全ての有り得る配列を提示する一連の環状ペプチドを設計及び生成することと、
(ii)それぞれが単一の前記環状ペプチドを発現する一連の発現ベクターを構築することと、
(iii)前記親和性タグと固相に固定された特異的リガンドとを結合させることによって前記環状ペプチドを発現及び精製することと、
(iv)前記環状ペプチドを前記固相から溶出することでライブラリーを得ること、又は、前記環状ペプチドを前記固相から溶出させることなく固定された前記環状ペプチドの形態のライブラリーを得ることと、
を含み、
以上により、数が顕著に低減された前記環状ペプチドで完全なペプチドライブラリーを構築することを特徴とする、
環状ペプチドで完全なペプチドライブラリーを構築する統合方法。
【請求項2】
前記親和性タグは、GST、His、Trx、SUMO、CBD、FLAG、HA、AviTag、Myc-Tag、SBP、Strep-Tag、Fc-Tag、Halo-Tag、V5、VSV、及びMBPから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発現宿主は、細菌細胞、イースト細胞、昆虫細胞、真菌細胞、哺乳類細胞、及び植物細胞から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記発現ベクターは、細菌発現ベクター、イースト発現ベクター、昆虫発現ベクター、真菌発現ベクター、哺乳類発現ベクター、及び植物発現ベクターから選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記環状ペプチドは、スプリットインテインのインテインスプライシングによって形成され、対応するリニアペプチドが、C末端インテインモチーフとN末端インテインモチーフとの間に融合される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記環状ペプチドは、溶解物若しくは不溶性封入体のいずれかで発現される、又は、大腸菌などの細菌細胞で溶解物及び不溶性封入体の両方で発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
それぞれが単一の環状ペプチドを発現する一連の発現ベクターを構築し、
前記ベクターは、ベクター骨格と、C末端インテインモチーフ配列と、必要に応じて、1つ又は複数の親和性タグDNA配列と、ペプチドDNA配列と、N末端インテインモチーフ配列と、必要に応じて、1つ又は複数のプロテアーゼ認識サイトとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
環状ペプチドで完全なペプチドライブラリーを構築する方法であって、
(i)一連の環状ペプチドであって、それぞれが、
所定の大きさの異なるペプチドのアレーを提示し、かつ、全体として、
前記所定の大きさのペプチドの全ての有り得る配列を提示する一連の環状ペプチドを設計することと、
(ii)化学的方法によって、精製又は未精製下で、対応する環状ペプチド配列を有するリニアペプチドを合成することと、
(iii)化学的方法又は酵素触媒法によって前記リニアペプチドを環状化させ、環状ペプチドを調製することと、
(iv)前記環状ペプチドを精製して前記ライブラリーを得ることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラペプチドライブラリー、ペンタペプチドライブラリー、ヘキサペプチドライブラリー、ヘプタペプチドライブラリー、オクタペプチドライブラリーなどの、部分的又は完全なヴァーチャルペプチドライブラリーに必要である短いペプチドのアレーをディスプレイできる環状ペプチドによって、部分的又は完全なペプチドライブラリーを構築する方法に関する。当該方法は、タグ付き環状ペプチドを発現するための発現ベクターを構築することを含む。各タグ付き環状ペプチドは、異なる大きさのペプチドのアレーをディスプレイし、常法による化学的ペプチド合成に比べると、部分的又は完全なペプチドライブラリーを構築するために必要である環状ペプチドの数を顕著に低減することができる。さらに、ライブラリーを容易に再現できる。また、部分的又は完全なヴァーチャルペプチドライブラリーを構築するように、環状ペプチドを化学的に合成し又は酵素触媒によって合成できる。例えば、改良された当該ペプチドライブラリーの調製方法は、特に、完全なヴァーチャルペンタペプチド又はヘキサペプチドライブラリーなどの構築に利用され得る。
【背景技術】
【0002】
ペプチドライブラリーは、アミノ酸の有機的な結合によるペプチドを多く含むものであり、数多くのペプチドからスクリーニングして肝要な生理的活性のペプチドを見出す有力なツールとして、バイオ研究、タンパク質関連研究、及び薬物開発に広く適用される。周知のように、低分子量ペプチドは、アレルギーを起こす可能性が低く、ペプチドが備える多様な生理的機能のため、治療薬の開発に好適である候補薬になってきた(非特許文献1~3)。そのため、特に、低分子医薬による副作用、また、より一層新鮮で環境に優しい食品及び栄養品が病気予防又は健康増進に寄与できるかへの関心の向上に伴って、生理的活性のペプチドは、新世代の医薬製品として好適な候補薬になってきた(非特許文献4)。
【0003】
抗菌ペプチド、抗がんペプチド、酸化防止ペプチド、血圧降下ペプチド、抗血栓ペプチド、オピオイドペプチド、抗ウイルス性ペプチド、細胞調節・免疫調節ペプチドなどを含む様々な生理的活性のペプチドが、既に発見されている(非特許文献5、6)。そのため、ペプチド医薬の開発は、新しい医薬の開発において最も有望と視される分野の一つである。
【0004】
ペプチドライブラリーは、薬物開発、タンパク質間相互作用、及び他のバイオケムと医薬適用に有力なツールを提供するため、ペプチドライブラリーを構築する方法がいくつか開発された。ペプチドライブラリーの構築方法は、化学的合成によるものとバイオ技術によるものの2種類に分けられる。
【0005】
1985年に、George P.Smithにより導入されたファージディスプレイ技術により、多量の異なるペプチドのスクリーニングが可能になった(非特許文献7)。研究によると、成功的にファージでペプチドを誘導するかは、主にスクリーニングされるペプチドライブラリーの品位によるということが発見された(非特許文献8)が、ファージディスプレイライブラリーの品位をモニター又は確保するための確実な方法は存在しない。実際、これまで、ファージディスプレイ技術によってスクリーニングされ臨床適用に供されたペプチドは、極一部だけである(非特許文献8)。
【0006】
Merrifieldが初めて創設した固相合成に基づいて、ペプチドライブラリーを構築するための「分裂・混合合成」という方法が開発された(非特許文献9)。理論的には、このように多量のペプチドを合成して大きなペプチドライブラリーを調製することができるが、実際的には、ライブラリ合成の高いコストと低収率のため、このように合成されたペプチドは数も品位も制限される。
【0007】
ペプチドは、組換え法によって生成され得る。一般的に、短いペプチドをタンパク質に融合した後、大腸菌などの発現宿主に発現して精製することが行われてきた(非特許文献10、11)。しかしながら、実際的には、プロセスが長くてコストも高いため、このように生成されたペプチドも、数も品位も制限され、また、このように構築されたペプチドライブラリーは容量が非常に低い。
【0008】
環状ペプチドは、通常、対応するリニアペプチドに比べて、構造安定性に起因するより良い生理的活性と、末端アミノ基と末端カルボキシル基の欠失に起因するエキソペプチダーゼによる加水分解へのより高い耐性を有する(非特許文献12)ため、医薬をスクリーニングするための更に良好である候補薬になってきた。環状ペプチドは、スプリットインテインに基づいて化学的合成又は組換え法によって生成され得る(非特許文献12、13)。組換え法によるリニアペプチドのように、プロセスが長くてコストも高いため、このように生成された環状ペプチドは数も品位も制限され、また、このように構築されたペプチドライブラリーは容量が非常に低い。
【0009】
多量の異なるペプチドを合成してペプチドライブラリーを構築できる。どのペプチドが好ましい候補薬になるかを予測する良い方法はないため、ペプチドのスクリーニング期間において好ましい候補薬を見出す確率を向上するように、アミノ酸の全ての有り得る組み合わせを含む完全なペプチドライブラリを構築しなければならない。天然に存在するアミノ酸は20種類あるため、完全なトリペプチドライブラリーを構築するために、異なるトリペプチド8000個を合成する必要がある。同様に、完全なテトラペプチドライブラリーを構築するために、テトラペプチド160000個を合成する必要があり、完全なペンタペプチドライブラリーを構築するために、ヘプタペプチド3200000個を合成する必要があり、完全なヘキサペプチドライブラリーを構築するために、ヘキサペプチド64000000個を合成する必要がある。多量のペプチドを合成するのはコストが高くて収率が低いため、これまででは、新規なCOX-2阻害薬を開発するために、化学的方法によって、20種類のアミノ酸の全ての有り得る組み合わせを含む完全なヴァーチャルトリペプチドライブラリー(ペプチド8000個)が合成されただけであり(非特許文献14)、テトラペプチド160000個を含むべき完全なテトラペプチドライブラリーは、市場でも、現在のところ入手できず、完全なペンタペプチドライブラリー、ヘキサペプチドライブラリー他は言うまでもない。
【0010】
そのため、大容量のヴァーチャルペプチドライブラリーを構築するための高生産率のプロセスが望まれる。これまでに開示された、大容量のヴァーチャルペプチドライブラリーを構築するためのタンパク質ディスプレイ方法(PCT/CN2015/083260ペプチドライブラリー構築方法及び関連ベクター)では、完全なテトラペプチドライブラリー、ペンタペプチドライブラリー、及びヘキサペプチドライブラリーなどを構築するために必要であるペプチドの数を低減するように、タグ付きタンパク質(例えば、GST)の末端に短いペプチドのアレーをディスプレイすることが行われてきた。しかしながら、タンパク質ディスプレイ法のため、短いペプチドを多量にディスプレイできるタグ付きリニアペプチドのそれぞれは、そのディスプレイできる比較的長いペプチドの数が少ない。例えば、50アミノ酸残基のタグ付きリニアペプチドは、テトラペプチド47個、ヘプタペプチド46個、又はヘキサペプチド45個をディスプレイできるが、49アミノ酸残基のペプチドは2つ、50アミノ酸残基のペプチドは1つしかディスプレイできず、ライブラリの容量が制限される。そのため、ずっと大容量のヴァーチャルペプチドライブラリーを構築する方法を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Host A,Halken S. Hypoallergenic formulas-when,to whom and how long:after more than 15 years we know the right indication.Allergy 2004 Aug;59(Suppl.78):45~52
【文献】Lax R. The future of peptide development in the pharmaceutical industry.Phar Manufacturing:Int Pept Rev 2010
【文献】Agyei D,Danquah MK. Industrialscale manufacturing of pharmaceuticalgrade bioactive peptides.Biotechnol Adv 2011 May-Jun;29(3):272-7
【文献】Danquah MK,Agyei D. Pharmaceutical applications of bioactive peptides.OA Biotechnology 2012 Dec 29;1(2):5
【文献】Sharma S,Singh R,Rana S. Bioactive peptide:A Review.Int.J.BioAUTOMATION 2011 15(4):223-250;
【文献】Danquah MK,Agyei D. Pharmaceutical applications of bioactive peptides.OA Biotechnology 2012 Dec 29;1(2):5
【文献】Smith,G.P. Filamentous fusion phage:novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface.Science 1985,228,1315-1317
【文献】Lindner T,Kolmar H,Haberkorn U and Mier W. DNA Libraries for the Construction of Phage Libraries:Statistical and Structural Requirements and Synthetic Methods.Molecules 2011,16,1625-1641
【文献】A.Furka,F.Sebestyen,M.Asgedom,G.Dibo, General method for rapid synthesis of multicomponent peptide mixtures.Int.J.Peptide Protein Res.,1991,37,487-493
【文献】S.Hara, M.Yamakawa, Production in Escherichia coli of moricin, a novel type antibacterial peptide from the silkworm, Bombyx mori. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996, 224:877-878.
【文献】H.K.Kim, D.S.Chun, J.S.Kim, C.H.Yun, J.H.Lee, S.K.Hong, D.K.Kang, Expression of the cationic antimicrobial peptide lactoferricin fused with the anionic peptide in Escherichia coli. Appl. Microbiol. Biotechnol. 2006, 72:330-338
【文献】Sang Hoon Joo, Cyclic Peptides as Therapeutic Agents and Biochemical Tools. Biomol Ther. 2012, 20(1):19-26
【文献】Manfredi Miraula, Charmaine Enculescu, Gerhard Schenk, Natasa Mitic, Inteins-A Focus on the Biotechnological Applications of Splicing-Promoting Proteins. American Journal of Molecular Biology 2015, 5:42-56
【文献】Ermelinda V,et al., Design, Synthesis, and Evaluation of New Tripeptides as COX-2 Inhibitors for developing a new class of COX-2 inhibitors. Journal of Amino Acids. 2013, 2013:1-7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、大容量のヴァーチャルペプチドライブラリーを構築するための改良方法を提供することにある。当該方法は、タンパク質のタグ末端にペプチドをディスプレイすることなく、リニアペプチドを環状化させて環状ペプチドを形成することによって、ペプチドを更に多量にディスプレイし、ペプチドライブラリーの容量を増加させるものである。例えば、合理的な設計によれば、50アミノ酸の環状ペプチドは、連続的な異なるトリペプチド50個、連続的な異なるテトラペプチド50個、連続的な異なるヘプタペプチド50個、連続的な異なるヘキサペプチド50個、及び連続的な異なるヘプタペプチド50個などを実際にディスプレイし、ひいては、連続的な異なる48アミノ酸残基のペプチド50個、連続的な異なる49アミノ酸残基のペプチド50個、及び50アミノ酸残基のペプチド50個をディスプレイし、異なる3~50アミノ酸のペプチド2400個を構成することができる。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築するための改良方法を提供することにある。合理的な設計によれば、50アミノ酸の環状ペプチドは、連続的な異なるテトラペプチド50個を実際にディスプレイすることができるが、当該タンパク質ディスプレイ方法によると、完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築するために、合成テトラペプチド160000個の代わりに、50アミノ酸残基の環状ペプチド3200個だけが必要である。同様に、完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築するために、80アミノ酸残基の環状ペプチド2000個だけが必要であり、完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築するために必要である大きな環状ペプチドの数を更に低減できる。
【0014】
本発明の更にもう1つの目的は、完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築するための改良方法を提供することにある。合理的な設計によれば、50個アミノ酸の環状ペプチドでは、連続的な異なるヘプタペプチド50個を実際にディスプレイすることができ、当該タンパク質ディスプレイ法によると、完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築するために、合成ヘプタペプチド3200000個の代わりに、50アミノ酸残基の環状ペプチド64000個だけが必要である。同様に、完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築するために、80アミノ酸残基の環状ペプチド40000個だけが必要であり、完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築するために必要である大きな環状ペプチドを更に低減できる。
【0015】
本発明の更にもう1つの目的は、完全なヴァーチャルヘキサペプチドライブラリーを構築するための改良方法を提供することにある。合理的な設計によれば、50アミノ酸の環状ペプチドでは、連続的な異なるヘキサペプチド50個を実際にディスプレイでき、当該タンパク質ディスプレイ法によると、完全なヴァーチャルヘキサペプチドライブラリーを構築するために、合成ヘキサペプチド64000000個の代わりに、50アミノ酸残基の環状ペプチド1280000個だけが必要である。同様に、完全なヴァーチャルヘキサペプチドライブラリーを構築するために、80アミノ酸残基の環状ペプチド800000個だけが必要であり、完全なヴァーチャルヘキサペプチドライブラリーを構築するために必要である大きな環状ペプチドを更に低減できる。
【0016】
本発明の更にもう1つの目的は、化学的合成法によって大容量のヴァーチャルペプチドライブラリーを構築する改良方法を提供することにある。当該方法は、(i)それぞれが短いペプチドのアレーをディスプレイする一連の環状ペプチドを設計することと、(ii)化学的方法によって、精製又は未精製下で、対応する環状ペプチド配列によってリニアペプチドを合成することと、(iii)化学的方法又は酵素触媒法によってでリニアペプチドを環状化させて環状ペプチドを調製することと、(iv)環状ペプチドを精製してライブラリーでスクリーニングすることと、を含む。
【0017】
本発明の更にもう1つの目的は、大容量の環状ペプチドライブラリーを構築する改良方法を提供することにある。当該方法は、(i)それぞれが短いペプチドのアレーと1つ又は複数の親和性タグとを含む一連の環状ペプチドを設計することと、(ii)それぞれが単一の環状ペプチドを発現する一連の発現ベクターを構築することと、(iii)親和性タグと固相に固定された特異的リガンドとを結合させて環状ペプチドを発現及び精製することと、(iv)環状ペプチドを固相から溶出し、ライブラリーでスクリーニングすることと、(v)必要に応じて、固相から溶出させることなく、固定された環状ペプチドのままスクリーニングすることと、を含む。
【0018】
本発明の更にもう1つの目的は、数が顕著に低減された環状ペプチドによって、完全な又は部分的ヴァーチャルペプチドライブラリーを構築する方法を提供することにある。ヘプタペプチド、オクタペプチド、及びデカペプチドなどの比較的長いペプチド、ひいては15又は20アミノ酸残基のペプチドにとって、完全なペプチドライブラリーは、それぞれ1.28×109、2.56×1010、1.024×1013、3.277×1019、及び1.049×1026個の全ての有り得るペプチドを多量に含むべきである。そのため、実際的には、このような多量のペプチドを化学的合成することによって完全なペプチドライブラリーを調製することは困難である。しかしながら、一部のペプチドの比較的高い配列類似性のため、部分的なヴァーチャルペプチドライブラリーを構築することが望ましい。合理的な設計によれば、効率的な部分的ペプチドライブラリーを構築するためのペプチドの数を低減できる。本発明に係る方法によれば、部分的ペプチドライブラリーにおけるペプチドの数を更に低減し、効率的なペプチドライブラリーの構築が実用的になる。
【0019】
本発明の更にもう1つの目的は、完全なペプチドライブラリーを構築するための代替方法を提供することにある。タグ付き環状ペプチドを発現及び精製するように、環状ペプチド毎のDNA配列を発現ベクターにクローン化する。ベクターは保存されてもよく、ペプチドは、いつでも当該ベクターによって容易に発現又は再現されてもよい。ペプチド合成と異なって、各ペプチドは、最初から改めて合成する必要がある。
【0020】
本発明の1つの目的は、ペプチドライブラリーの構築においてタグ付き環状ペプチドを発現及び精製するための発現ベクターを構築するための方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、元の請求の範囲によって明らかになる。以下、添付図面及び明細書によって本開示の実施形態を詳細に説明するが、本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書、添付図面及び請求の範囲に基づいて明らかになるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付図面に基づいて説明すると、本発明の上記の発明内容及び以下の詳細な説明をより良く理解することになる。本発明を説明するために、好ましい実施形態を添付図面に示すが、本発明は示された随付図面に制限されないことは、理解されるべきである。
【0023】
【
図1】環状ペプチドが、複数の比較的短いペプチドと、1つのヘプタペプチド(DECAF、Asp-Glu-Cys-Ala-Phe)とをディスプレイする、例示的模式図である。
【
図2】本発明の実施形態による、短いペプチドをディスプレイするための大容量の環状ペプチドの模式図である。
【
図3】80アミノ酸残基の環状ペプチド1つによって異なるヘプタペプチド80個をディスプレイする典型的な実施例の模式図である。
【
図4】スプリットインテインに基づいて環状ペプチドを発現するためのベクターのマップの模式図である。
【
図5】80アミノ酸残基の環状ペプチドの発現・精製の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる技術及び科学用語は、いずれも本発明が属する技術分野における当業者の通常に理解する意味と同じである。本明細書に言及された刊行物及び出願は、いずれも援用によって本文に組み込まれる。
【0025】
本発明の実施形態は、ペプチドライブラリーを構築するための方法に関する。一方、本発明は、化学的合成の常法によるペプチドライブラリー構築の著しい改良に関する。本発明は、例えば、完全なヴァーチャルペプチドライブラリーを構築するための改良方法を提供し、当該方法によれば、環状ペプチドを発現及び精製すると共に、完全なライブラリを形成するために必要である環状ペプチドの数を顕著に低減させる。
【0026】
本発明の実施形態によって、環状ペプチド毎のアミノ酸配列を合理的に設計することによって、各環状ペプチドは異なる大きさのペプチドのアレーをディスプレイでき、ライブラリの容量を顕著に増加させる。各環状ペプチドはその大きさによって、10~100、ひいては200個の所定の大きさの異なるペプチドをディスプレイできる。そのため、本発明の実施形態に係る方法によると、ペプチドライブラリーにおけるペプチドの数を大幅に低減し、ペプチドライブラリーの構築とスクリーニングに必要であるコストを顕著に低減した。
【0027】
本明細書において、「ペプチド」、「ライブラリ」、「タグ」、「タンパク質」、「ベクター」、「容量」、「環状」、「完全な」、及び「アレー」は、広義の意味で理解される。
【0028】
本発明は、ある一般な局面において、常法によるペプチド合成方法よりも、ペプチドの数が低減された完全なペプチドライブラリーを構築するための改良方法に関する。例えば、
図1及び
図2に示すように、1つの環状ペプチドでは、複数の比較的短いペプチドをディスプレイできる。言い換えれば、複数の短いペプチドは1つの環状ペプチドでディスプレイでき、即ち、「タンパク質ディスプレイ」である。例えば、80アミノ酸残基の環状ペプチド1つによって、異なるヘプタペプチド80個をディスプレイでき、異なるヘプタペプチド80個を合成することなく、完全なペンタペプチドライブラリーを構築するために必要であるペプチドの数を顕著に低減すると共に、スクリーニング効率を向上した。タンパク質発現に比べると、比較的長いペプチドの化学的合成は効率的でなくて経済的でない。例えば、80アミノ酸残基のペプチドにとって、化学的合成と頭-尾環状化には数日がかかるが、類似的な環状ペプチドは細菌宿主において一夜を過ごして容易に発現することができる。80残基の長さの環状ペプチドは化学的合成の全収率が低いが、類似的な環状ペプチドは発現宿主においていずれのスケールでも容易に発現できる。逆に言えば、本発明の実施形態は、完全なペプチドライブラリーを構築する方法を提供し、ペプチドの数を顕著に低減すると共に、これらのペプチドを容易に発現及び精製でき、クローン化された遺伝子によっていつでも容易に再現できる。本発明の実施形態に係る方法によると、ペプチドライブラリーの構築とスクリーニングにかかる時間とコストを大幅に低減できる。
【0029】
本発明の実施形態は、環状ペプチドを発現及び精製するためのタンパク質タグに関する。このタンパク質タグの1つとしては、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)に融合された標的タンパク質を精製するために用いられるGSTが挙げられる。GSTは、標的タンパク質又はペプチドの発現に寄与できる。もう1つの通常なタグとしては、タグ付きペプチドを精製するための一連のヒスチジン残基を含むHisタグである。
【0030】
本発明の1つの実施形態において、タンパク質タグは、GST、His、Trx、SUMO、CBD、FLAG、HA、AviTag、Myc-Tag、SBP、Strep-Tag、Fc-Tag、Halo-Tag、V5、VSV、及びMBPなどから選ばれる1つであるが、これに制限されない。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、タンパク質タグは、GST、His、Trx、SUMO、CBD、FLAG、HA、AviTag、Myc-Tag、SBP、Strep-Tag、Fc-Tag、Halo-Tag、V5、VSV、及びMBPなどの組み合わせから選ばれるものであるが、これに制限されない。
【0032】
本発明のもう1つの実施形態において、タグは、環状ペプチドを発現及び精製するように、環状ペプチドのいずれの位置に付加されてもよい。タンパク質タグは、GST、His、Trx、SUMO、CBD、FLAG、HA、AviTag、Myc-Tag、SBP、Strep-Tag、Fc-Tag、Halo-Tag、V5、VSV、MBPなどから選ばれるものであるが、これに制限されない。
【0033】
必要に応じて、プロテアーゼでタグからペプチドを切り離すように、タグとペプチドとの間にプロテアーゼ認識配列を更に付加してもよい。
【0034】
当業者にとって明らかであるように、本発明は、ライブラリの構築を改良するように上記の実施形態を更に修飾することを含む。このような修飾は、上記の実施形態に1つ又は複数のペプチド配列を付加することを含み、これに制限されない。例えば、インテインスプライシングに寄与するために、ペプチド配列においていくつかの所定のアミノ酸を付加してもよい。
【0035】
本開示によれば、多種の方法によってペプチド配列を設計し、効果的なペプチドライブラリーを調製することができる。例えば、タグ付きペプチドの溶解度の発現を寄与するために、ペプチド配列において長鎖の疎水性アミノ酸を含むことは避けるべきである。
【0036】
当業者にとって明らかであるように、インテインのトランススプライシングシステムによって環状ペプチドを生成してもよい。例えば、Npu DnaEスプリットインテイン(Hideo Iwai, Sara Zuger, Jennifer Jin, Pui-Hang Tam.Highly efficient protein trans-splicing by a naturally split DnaE intein from Nostoc punctiforme. FEBS Letters. 2006, 580:1853-1858)、Ssp GyrBスプリットインテイン、Ssp DnaBスプリットインテイン、Ssp DnaEスプリットインテイン、Mxe GyrAスプリットインテイン、Mtu RecAスプリットインテインなどで環状ペプチドを生成してもよい。
【0037】
当業者にとって明らかであるように、環状ペプチドは、できるだけ多くの異なる短いペプチドをディスプレイし、ペプチドライブラリーの容量を増加できるように設計してもよい。
【0038】
図3に示す実施形態において、80アミノ酸の発現環状ペプチドでは、実際には、連続的な異なるテトラペプチド80個、連続的な異なるヘプタペプチド80個、連続的な異なるヘキサペプチド80個、連続的な異なるヘプタペプチド80個、・・・、78アミノ酸残基の連続的な異なるペプチド80個、79アミノ酸残基の連続的な異なるペプチド80個、80アミノ酸残基のペプチド80個をディスプレイし、アミノ酸の大きさが4~80にあるペプチド6160個を構成することができる。
【0039】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、環状ペプチドは、200まで又はより多くのアミノ酸を含んでもよいが、好ましくは10~100を含む。ペプチド配列が長いほど、一部のペプチド配列がスクリーニングに曝されない三次構造を形成する確率が高くなる。
【0040】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、テトラペプチド160000個を化学的合成することに代わって、3200個又はより多くの50アミノ酸残基の発現環状ペプチドによって完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築又はディスプレイすることができ、又は、2000個又はより多くの80アミノ酸残基の発現環状ペプチドによって完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築又はディスプレイすることができる。
【0041】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、ヘプタペプチド3200000個を化学的合成することに代わって、64000個又はより多くの50アミノ酸残基の発現環状ペプチドによって完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築又はディスプレイすることができ、又は、40000個又はより多くの80アミノ酸残基の発現環状ペプチドによって完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築又はディスプレイすることができる。
【0042】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、ペプチドライブラリーにおける一部のペプチドは比較的高い配列類似性を有するため、合理的な設計によって、効率的なペプチドライブラリーを構築するために必要であるペプチドの数を大幅に低減できる。そのため、3200個よりも少ない50アミノ酸残基の発現環状ペプチドによって効率的なテトラペプチドライブラリーを構築することができる。同様に、64000個よりも少ない50アミノ酸残基の発現環状ペプチドによって効率的なペンタペプチドライブラリーを構築することができる。
【0043】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、環状ペプチドは80アミノ酸を含むことができるため、発現環状ペプチドの数が更に低減された。そのため、更に少ない発現ペプチドによって効率的なテトラペプチドライブラリー、ペンタペプチドライブラリー、ひいてはヘキサペプチドライブラリーを構築することができる。
【0044】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、ペプチドライブラリーにおける一部のペプチドは比較的高い配列類似性と構造類似性を有するため、合理的な設計によって、効率的なペプチドライブラリーを構築するために必要であるペプチドの数を更に低減できる。そのため、実用的な数の発現環状ペプチドによって効率的なマルチペプチドライブラリー、例えば、オクタペプチドライブラリー、デカペプチドライブラリー、ひいては更に長いペプチドライブラリー、例えば、15アミノ酸残基のペプチドライブラリー、20アミノ酸残基のペプチドライブラリ、ひいては30アミノ酸残基のペプチドライブラリーを構築することができる。
【0045】
1つの好ましい実施形態において、2000個又は更に多くのHisタグ付き80アミノ酸残基の発現環状ペプチドを設計し、発現ベクターにクローン化して発現及び精製し、完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築してもよい。
【0046】
もう1つの好ましい実施形態において、40000個又は更に多くのHisタグ付き80アミノ酸残基の発現環状ペプチドを設計し、発現ベクターにクローン化して発現及び精製し、完全なヴァーチャルペンタペプチドライブラリーを構築してもよいし、完全なヴァーチャルテトラペプチドライブラリーを構築してもよい。
【0047】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、Hisタグの代わりに他のタグを利用してもよく、他のタグとしては、GST、Trx、SUMO、CBD、FLAG、HA、AviTag、Myc-Tag、SBP、Strep-Tag、Fc-Tag、Halo-Tag、V5、VSV、MBPなどから選ばれるものがあるが、これに制限されない。
【0048】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、タグ付き環状ペプチドは、80より多い又は少ないアミノ酸を含むことができるため、完全なペプチドライブラリーを構築するために必要であるタグ付き発現環状ペプチドの数を更に低減又は増加させることができる。
【0049】
図4に示す実施形態において、タグ付き環状ペプチドの発現ベクターは、1つ又は複数の親和性タグのDNA配列、スプリットインテインの2つの相補的な断片のDNA配列(C末端インテインモチーフNpu DnaE
CとN末端インテインモチーフNpu DnaE
N)、ペプチド発現DNA配列、必要に応じて環状ペプチドを直線化するためのプロテアーゼ認識サイトを含むように構築されてもよい。
【0050】
上記の実施形態において、当業者にとって理解されるべきであるように、細菌発現ベクター、イースト発現ベクター、昆虫発現ベクター、真菌発現ベクター、哺乳類発現ベクター、及び植物発現ベクターに基づいて発現ベクターを構築してもよいが、これに制限されない。
【0051】
本発明のもう1つの実施形態において、タグ付き環状ペプチドは発現宿主で発現されて発現宿主で精製されてもよい。当該発現宿主は、細菌細胞、イースト細胞、昆虫細胞、真菌細胞、哺乳類細胞、及び植物細胞から選ばれるものであるが、これに制限されない。
【0052】
当業者にとって理解されるべきであるように、通常に、類似的な方法で環状ペプチドライブラリーを構築してもよい。設計された環状ペプチドを固体表面に固定された親和性タグで発現、精製した後、固体表面に付着されたままのペプチドでスクリーニングしてもよい。固体表面から溶出した後、設計された環状ペプチドによってスクリーニングしてもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を記載したが、これらの具体的な実施形態は、ただ本発明の構想の原理を説明するためのものである。そのため、当業者にとって明らかであるように、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、本開示の実施形態を修飾することができる。
【0054】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明の本質を更に説明するが、理解されるべきであるように、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0055】
[タンパク質ディスプレイの実施例]
図3Aは、80アミノ酸残基の環状ペプチドの環状構造及びアミノ酸配列を示すが、
図3Bは当該80アミノ酸残基の環状ペプチドによって80個の異なるヘプタペプチドをディスプレイできることを示す。
【0056】
以下のようなDNA配列は、80アミノ酸残基の環状ペプチドを発現するためのNpu DnaEスプリットインテインモチーフを2つ含む。
図4に示すように、当該DNA配列をpET28aベクターにクローン化した。
【0057】
【0058】
但し、斜体でC末端Npu DnaEモチーフ(Npu DnaEC)を示し、太字で80アミノ酸残基の環状ペプチドを示し、通常の文字でN末端Npu DnaEモチーフ(Npu DnaEN)を示した。
【0059】
【0060】
但し、斜体でC末端Npu DnaEモチーフ(Npu DnaEC)を示し、太字で80アミノ酸残基の環状ペプチドを示し、通常の文字でN末端Npu DnaEモチーフ(Npu DnaEN)を示した。
【0061】
標準遺伝子発現方法に従って、IPTGをインデューサーとして大腸菌の菌株において80アミノ酸残基の環状ペプチドを発現した。
図5Aに、示出了含有80アミノ酸残基の環状ペプチドを溶解可能のように発現することを示した。その中、ライン1はタンパク質マーカーであり、左側にその分子量をリストし、ライン2は誘導されない全細胞溶解物であり、ライン3は1mM IPTGで誘導された全細胞溶解物である。矢印で80アミノ酸残基の環状ペプチドを示す。
【0062】
Ni-IDAカラムで80アミノ酸残基の環状ペプチドを精製した。80アミノ酸残基の環状ペプチドをNi-IDAカラムに接合し、イミダゾールでNi-IDAカラムを溶出した。
図5Bに80アミノ酸残基の環状ペプチドの精製を示した。その中、ライン1はタンパク質マーカーであり、左側にその分子量をリストし、ライン2はIPTGで誘導された全細胞溶解物であり、ライン3は全細胞溶解物サンプルの流出液(Flow-through)であり、ライン4は精製された80アミノ酸残基の環状ペプチドであり、矢印で示した。
【0063】
本文に援用された全ての刊行物及び出願は、いずれも援用によって本文に組み込まれる。業者にとって明らかであるように、本発明の範囲と精神から逸脱しない限り、記載された趣旨を修飾又は変更することができる。理解されるべきであるように、具体的な実施形態に基いて本発明を説明したが、保護を請求した本発明はこれらの実施形態に制限されない。業者にとって明らかであるように、本発明に対する各種の修飾は実際的に、添付された請求の範囲に含まれるようになる。
【0064】
[付記]
[付記1]
それぞれが短いペプチドのアレーをディスプレイする一連の環状ペプチドを設計及び生成することによって、数が顕著に低減された前記環状ペプチドで部分的又は完全なペプチドライブラリーを構築することを特徴とする、環状ペプチドで部分的又は完全なヴァーチャルペプチドライブラリーを構築する統合方法。
【0065】
[付記2]
環状ペプチドで部分的又は完全なヴァーチャルペプチドライブラリーを構築する方法であって、
(i)それぞれが短いペプチドのアレーと1つ又は複数の親和性タグとをディスプレイする一連の環状ペプチドを設計することと、
(ii)それぞれが単一の前記環状ペプチドを発現する一連の発現ベクターを構築することと、
(iii)前記親和性タグと固相に固定された特異的リガンドとを結合させることによって前記環状ペプチドを発現及び精製することと、
(iv)前記環状ペプチドを前記固相から溶出し、前記ライブラリーでスクリーニングすることと、
(v)必要に応じて、前記固相から溶出させることなく、固定された前記環状ペプチドのままスクリーニングすることと、
を含む、方法。
【0066】
[付記3]
各前記環状ペプチドは10~200までのアミノ酸残基を含む、付記2に記載の方法。
【0067】
[付記4]
前記ペプチドライブラリーは、所定の大きさである全ての有り得るペプチドをいずれも含む完全なペプチドライブラリーである、付記2に記載の方法。
【0068】
[付記5]
前記環状ペプチドライブラリーは、所定の大きさである一部の有り得るペプチドを含む部分的ペプチドライブラリーである、付記2に記載の方法。
【0069】
[付記6]
前記環状ペプチドの大きさは同じである又は異なる、付記2に記載の方法。
【0070】
[付記7]
前記親和性タグは、GST、His、Trx、SUMO、CBD、FLAG、HA、AviTag、Myc-Tag、SBP、Strep-Tag、Fc-Tag、Halo-Tag、V5、VSV、及びMBPから選ばれる、付記2に記載の方法。
【0071】
[付記8]
発現宿主は、細菌細胞、イースト細胞、昆虫細胞、真菌細胞、哺乳類細胞、及び植物細胞から選ばれる、付記2に記載の方法。
【0072】
[付記9]
前記発現ベクターは、細菌発現ベクター、イースト発現ベクター、昆虫発現ベクター、真菌発現ベクター、哺乳類発現ベクター、及び植物発現ベクターから選ばれるものであることを特徴とする付記2に記載の方法。
【0073】
[付記10]
前記環状ペプチドは、スプリットインテインのインテインスプライシングによって形成され、対応するリニアペプチドが、C末端インテインモチーフとN末端インテインモチーフとの間に融合される、付記2に記載の方法。
【0074】
[付記11]
前記環状ペプチドは、溶解物若しくは不溶性封入体のいずれかで発現される、又は、大腸菌などの細菌細胞で溶解物及び不溶性封入体の両方で発現される、付記2に記載の方法。
【0075】
[付記12]
それぞれが単一の環状ペプチドを発現する一連の発現ベクターを構築し、
前記ベクターは、ベクター骨格と、C末端インテインモチーフ配列と、必要に応じて、1つ又は複数の親和性タグDNA配列と、ペプチドDNA配列と、N末端インテインモチーフ配列と、必要に応じて、1つ又は複数のプロテアーゼ認識サイトとを含む、付記2に記載の方法。
【0076】
[付記13]
1つ又は複数の精製タグは、C末端インテインモチーフとN末端インテインモチーフとの間のいずれかの位置にセットされる、付記12に記載のベクター構築。
【0077】
[付記14]
2つ又は複数の前記精製タグは、ともに接続されている又は分かれている、付記13に記載のコンフルエントタンパク質。
【0078】
[付記15]
環状ペプチドで部分的又は完全なヴァーチャルペプチドライブラリーを構築する方法であって、
(i)それぞれが短いペプチドのアレーをディスプレイする一連の環状ペプチドを設計することと、
(ii)化学的方法によって、精製又は未精製下で、対応する環状ペプチド配列を有するリニアペプチドを合成することと、
(iii)化学的方法又は酵素触媒法によって前記リニアペプチドを環状化させ、環状ペプチドを調製することと、
(iv)前記環状ペプチドを精製して前記ライブラリーでスクリーニングすることと、
を含む、方法。
【0079】
[付記16]
合成された前記環状ペプチドライブラリーは、大きさが10~200アミノ酸の間にある一連の環状ペプチドを含むペプチドライブラリーである、付記15に記載の方法。
【配列表】