(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】混合反応器および方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20220124BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20220124BHJP
B01F 25/00 20220101ALI20220124BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220124BHJP
【FI】
B01J19/00 N
B01F3/08 Z
B01F5/00 A
B01F5/00 D
(21)【出願番号】P 2020004996
(22)【出願日】2020-01-16
(62)【分割の表示】P 2016532596の分割
【原出願日】2014-11-19
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2013-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520053832
【氏名又は名称】プロメシアン パーティクルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Promethean Particles Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】レスター、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ハドル、トーマス
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/034632(WO,A1)
【文献】特開2004-307535(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006015708(DE,A1)
【文献】特開2013-136045(JP,A)
【文献】特表2007-500074(JP,A)
【文献】特表2013-514441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01F 3/00
B01D 9/02
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入口と、第2入口と、出口とを有する本体を備える混合反応器であって、前記本体の第1端部の前記第1入口から前記本体の第2端部の前記出口まで前記本体を通って前記本体の長さに沿って延び、前記長さに沿って側壁を有する内側通路と、前記内側通路よりも前記本体の表面に近く、前記第2端部の前記第2入口から延び、前記本体を通って前記長さに沿って延び、前記第1端部の連結部で前記内側通路に接し、前記連結部で前記側壁を通って前記内側通路と合流する外側通路とを備え、
前記連結部は、前記外側通路が前記長さに対して90度±30度の範囲内の角度で前記内側通路に
接続され、前記外側通路を流れる第2流体を、前記内側通路を流れる第1流体の流れに対し90度±30度で導入するよう構成されている、混合反応器。
【請求項2】
前記連結部は、前記外側通路が前記長さに対して90度±15度の範囲内の角度で前記内側通路に
接続され、前記外側通路を流れる第2流体を、前記内側通路を流れる第1流体の流れに対し90度±15度で導入するよう構成されている、請求項1に記載の混合反応器。
【請求項3】
前記連結部は、前記外側通路が前記長さに対して90度±5度の範囲内の角度で前記内側通路に
接続され、前記外側通路を流れる第2流体を、前記内側通路を流れる第1流体の流れに対し90度±5度で導入するよう構成されている、請求項1に記載の混合反応器。
【請求項4】
前記連結部は、前記外側通路が前記長さに対して90度±1度の範囲内の角度で前記内側通路に
接続され、前記外側通路を流れる第2流体を、前記内側通路を流れる第1流体の流れに対し90度±1度で導入するよう構成されている、請求項1に記載の混合反応器。
【請求項5】
前記連結部が内壁に開口部を備え、前記外側通路の一部が前記長さに対する前記角度で前記開口部に繋がる、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合反応器。
【請求項6】
前記内側通路よりも前記表面に近い追加外側通路であって、前記第2端部で追加第2入口を有し、前記本体を通って前記長さに沿って延び、前記第1端部の追加連結部で前記内側通路に接し、前記追加連結部で前記側壁を通って前記内側通路と合流する追加外側通路を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の混合反応器。
【請求項7】
前記追加外側通路が、前記内側通路に対して前記外側通路と対称的である、請求項6に記載の混合反応器。
【請求項8】
前記表面に結合されるヒータを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合反応器。
【請求項9】
前記出口から前記本体の外へ延在する延長通路を備え、前記延長通路が通過する加熱または冷却装置が前記延長通路とともに設けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合反応器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の
混合反応器である第1の混合反応器と、請求項1~9のいずれか一項に記載の
混合反応器である第2の混合反応器とを備え、前記第1の混合反応器の前記出口が前記第2の混合反応器の前記第1入口に結合される、混合反応器カスケード。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の混合反応器の前記第1入口を通って第1流体を供給することと、前記混合反応器の前記第2入口を通って第2流体を供給することと、前記出口から混合流体を抽出することとを備え、前記混合流体が粒子担持懸濁液である、2つの流体の混合方法。
【請求項12】
前記第1流体が金属塩溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子がナノ粒子または金属有機構造体(MOF)粒子である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記
混合反応器の
前記本体の前記表面に熱を印加することによって前記第2流体を加熱することを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2端部を最上部として前記
混合反応器が使用される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2流体が水、あるいは有機溶剤を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合流体を請求項1~9のいずれか一項に記載の追加混合反応器に通過させることを含み、前記混合流体が前記追加混合反応器の前記第1入口に導入され、第3流体が前記追加混合反応器の前記第2入口に導入され、追加混合流体が前記追加混合反応器の前記出口で抽出される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記混合反応器は前記第2流体を前記第1流体の流れに対し垂直に導入する、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(非排他的に)ナノ粒子または金属有機構造体などの粒子を生成するのに適切であり得る混合反応器と、前記反応器のカスケードと、典型的ではあるが非排他的な目的として前記粒子を生成するために、前記反応器を使用して流体を混合する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートル単位のサイズの金属および金属酸化物粒子は、触媒、顔料、研磨剤、紫外線吸収剤、セラミックスなど(ただし、それらに限定されない)広範な用途を有する。このような粒子は、加熱された、加圧された、または超臨界の水と、金属塩水溶液との化学反応によって形成可能であることが十分に知られている。原則的に、この方法は、反応を連続的プロセスとして実行できるために、コストと実行可能性の点で、他のナノ粒子生成方法を凌ぐ明白な利点を有する。しかし、既存の反応器構造では、沈殿反応を有効に制御することができず、反応器が度々閉塞し、粒子のサイズおよび形状を十分に制御できないため、現在の方法を用いて商業規模でこの反応を実行させることは困難である。したがって、このプロセスにおいては、水と塩溶液とが混合する反応器の設計が、生成されるナノ粒子のサイズおよび特性にとって極めて重要となる。
【0003】
特許文献1として公開されているPCT特許出願は、超臨界水が第1入口に導入され、金属塩溶液が第2入口に導入され、結果として生じるナノ粒子担持懸濁液が出口で抽出される向流式混合反応器について記載している。この場合、第1入口が出口内に配置されるため、超臨界水の流れが180度方向を転換する混合が行われる。
【0004】
我々は、金属塩溶液の流れと平行に超臨界水を導入した後、機械的インペラを使用して混合を達成する混合反応器を開示するPCT特許出願に係る特許文献2も認識している。
また、我々は、金属塩溶液が共通出口を有する2つの対向入口を通って導入され、超臨界水が出口内の第3入口を通って導入されるため、金属塩溶液と超臨界水とが、出口を通る同じ方向で各自の入口において導入される共流式混合器を開示するPCT特許出願に係る特許文献3も認識している。しかし、この構成は、混合点の前の金属塩溶液の事前加熱(超臨界流体の入口は、必ず金属塩溶液の流れを通過しなければならないため)と超臨界水の必然的な冷却とを招き、また、超臨界水入口は、超臨界水から金属塩溶液への許容しがたい事前混合熱伝達を生じることなく対称的な流れを十分確保可能であるほどには長くすることができないため、出口で対称的な流れを確保することが困難であることを認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2005/077505号
【文献】国際公開第2013/034632号
【文献】国際公開第2011/148121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記懸案に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によると、第1入口と、第2入口と、出口とを有する本体を備える混合反応器であって、本体の第1端部の第1入口から本体の第2端部の出口まで本体を通って本体の長さに沿って延び、長さに沿って側壁を有する内側通路と、内側通路よりも本体の表面に近く、第2端部の第2入口から延び、本体を通って長さに沿って延び、第1端部の連結部で内側通路に接し、連結部で側壁を通って内側通路と合流する外側通路とを備える混合反応器が提供される。
【0008】
よって、外側通路は内側通路よりも表面に近いため、内側通路または第1入口に流れ込む流体よりも容易に、混合反応器を囲むヒータによって加熱することができる。このように、本体へのヒータの適用は、外側通路を流れる流体を優先的に加熱する。また、第1入口に流れ込む流体を実質的に加熱するのは、流体が連結部を通過した後ということになる。よって、金属塩が第1入口に導入される場合、本体に取り付けられたヒータによって第1入口はほぼ加熱されず、第2入口に導入される(通常、超臨界の)流体が加熱される。
【0009】
さらに、流体は内側通路の側壁を通って導入されているため、反応器に流れ込む流体を乱流とすることによって、機械的混合手段などを必要とすることなく、効率的な混合を達成することができる。最初の混合位置は、2つの流体が導入される連結部となるため予測可能である。また、反応器が第2端部を最上部にして使用される場合、外側通路からの高温流体は、第1入口からの低温の未加熱流体に対して上昇しようとして浮力差を生じさせるため、この浮力作用が2つの流体の混合を促進する。
【0010】
外側通路は、長さに対して90度±45、30、15、5、または1度の範囲内の角度で内側通路に入ってもよい。連結部は、内壁に開口部を備え、外側通路の一部が長さに対する前記角度で開口部に繋がってもよい。
【0011】
内側通路よりも表面に近い追加外側通路を設けてもよく、追加外側通路は、第2端部で追加第2入口を有し、本体を通って長さに沿って延び、第1端部の追加連結部で内側通路に接し、追加連結部で側壁を通って内側通路と合流する。通常は、追加外側通路は内側通路に対して外側通路と対称的であり、対称的な混合を可能とすることで、反応器は、組成、均一な粒径、および狭い粒径分布という点で最適な生成物を生成することができる。
【0012】
もしくは、外側通路は、内側通路を共軸で囲むスリーブを備えることができ、これが対称的な混合を提供する。
通常、表面は第1端部および第2端部を除外する。反応器は、バンドヒータなど、表面に結合されるヒータをさらに備えていてもよい。このため、上述したように、内側通路または第1入口よりも外側通路が優先的に加熱される。このようにして、本体は、伝熱材、たとえば、ステンレス鋼、典型的にはステンレス鋼316、あるいはHASTELLOY(登録商標)、INCONEL(登録商標)、MONEL(登録商標)、またはNIMONIC(登録商標)のような合金などの金属材料で作製してもよい。
【0013】
反応器は、出口から本体の外へ延在する延長通路を備えていてもよい。これにより、反応器から流出する流体を、所望に応じて加熱または冷却することができる。このように、延長通路は、延長通路が通過する加熱または冷却装置を設けていてもよい。
【0014】
反応器は、2つの流体の混合に適していてもよい。通常、反応器は、ナノ粒子または金属有機構造体(MOF)粒子などの粒子の形成に適する。
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様に係る第1の混合反応器と、本発明の第1の態様に係る第2の混合反応器とを備え、第1の混合反応器の出口が第2の混合反応器の第1入口に結合される混合反応器カスケードが提供される。
【0015】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1の態様による混合反応器の第1入口を通って第1流体を供給することと、混合反応器の第2入口を通って第2流体を供給することと、出口から混合流体を抽出することとを備える、2つの流体の混合方法が提供される。
【0016】
これは、2つの流体を混合する特に効率的な方法であることが分かっている。通常は、第1流体、第2流体、または混合流体のいずれも溶液または懸濁液などの液体とすることができる。
【0017】
典型的には、第1流体は金属塩溶液であり、混合流体は粒子担持懸濁液である。よって、混合反応器は流体と金属塩溶液とを混合し、混ぜ合わせて粒子を形成する。上述のように、混合は、連結部による流れで生じる乱流のおかげで効率的である。
【0018】
本方法は、第2流体を加熱することを含んでもよい。加熱は、反応器の表面に熱を印加することによって行ってもよい。熱は、バンドヒータなどのヒータを通じて、反応器の表面に印加してもよい。加熱は、第1流体ではなく、第2流体を優先的に加熱する。さらに、本方法は、第2流体が第2入口に供給される前に、第1流体の温度よりも高い温度まで第2流体を加熱することを含んでもよい。
【0019】
反応器は、浮力作用が第2流体と第1流体との混合を助けるように、第2端部を最上部にして使用してもよい。
第2流体は、水、典型的には超臨界水、アルコール、または他の有機溶剤であってもよい。第1流体が金属塩溶液である場合、金属塩溶液はたとえば、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属アセチルアセトン、金属ハロゲン化物、または金属炭酸塩の溶液であってもよく、より具体的には、硝酸鉄、酢酸鉄、硫酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸銅、酢酸銅、硝酸ニッケル、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、酢酸コバルト、チタンビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシド、四塩化チタン、硝酸白金、硝酸パラジウム、硝酸セリウムなどのいずれかであってもよい。
【0020】
本方法は、延長管を通過する際に混合流体を加熱または冷却することを含んでもよい。
本方法は、混合流体を本発明の第1の態様に係る追加混合反応器に通過させることを含み、混合流体が追加混合反応器の第1入口に導入され、第3流体が追加混合反応器の第2入口に導入され、追加混合流体が追加混合反応器の出口で抽出されてもよい。第3流体は、たとえば、第2の金属塩溶液、または有機酸(たとえば、クエン酸)、チオール(たとえば、メタンチオール)、ポリマー(たとえば、ポリビニルピロリドン)を含むがそれらに限定されない「キャッピング剤」を含有する溶液であってもよい。
【0021】
混合反応器と追加混合反応器とが、本発明の第2の態様に係るカスケードを形成してもよい。
粒子は、金属塩溶液と流体とを結合することによって形成することのできるナノ粒子、金属有機構造体(MOF)粒子、または他の適切な粒子であってもよい。
【0022】
次に、本発明の実施形態を説明するが、これらは単なる例示である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る混合反応器の概略断面図である。
【
図2】内側通路および外側通路の連結部周辺を示す
図1の拡大図である。
【
図3a】本発明の2つの別の実施形態の1つによる、
図2の部分の対応箇所を示す図である。
【
図3b】本発明の2つの別の実施形態の1つによる、
図2の部分の対応箇所を示す図である。
【
図4】熱交換器と直列に使用される
図1の混合反応器を示す図である。
【
図5】ヒータと直列に使用される
図1の混合反応器を示す図である。
【
図6】別の混合反応器とともにカスケードとして使用される混合反応器を示す図である。
【
図7】本発明の追加実施形態に係る2つの混合反応器のカスケードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1および
図2は、本発明の第1の態様に係る混合反応器1を示す。反応器は、本体の第1端部12に第1入口3と、本体の第2端部に2つの第2入口5および出口4とを有する金属製本体2を備える。本体2は略細長状であり、長さ15と、2つの端部12、13を分離する外面14とを有する。反応器は、第2端部13を最上部にして使用される(添付図面は直立させて見た場合)。
【0025】
内側通路6は、長さに沿って第1入口3から出口4に延びる。2つの外側通路7は、本体の第2端部の各第2入口5から、本体の第1端部の連結部11まで延び、そこでそれぞれ内側通路6に入る。外側通路7は内側通路6および外面14の間に位置する。
【0026】
添付図面の
図2により詳細に示すように、外側通路7は、内側通路6の側壁17の各開口部16を通じて内側通路6と合流する。いずれの場合も、長さ15に垂直であり、ひいては内側通路6に垂直である外側通路の長さ7aは短い。
【0027】
よって、金属塩溶液が第1入口3に導入され、予め加熱された超臨界水(またはアルコールなどの他の適切な流体)が第2入口5に導入される場合、超臨界水は開口部16に到達するまで外側通路7を通過する。この地点で、超臨界水は、第1入口3から内側通路6を通って流れる金属塩溶液の流れに導入される。垂直導入のため、乱流が連結部11で生じて、金属塩溶液と超臨界水とを混合させる。混合は一定であり、対称的かつ完全に実行されて、十分な量の一定のナノ粒子をもたらす。混合流体が2つの流体間の密度と粘度の差によって出口4に向かって内側通路6を上昇する間、乱流とその結果実行される混合とが継続する。機械的インペラなどを採用する必要はない。その後、ナノ粒子担持懸濁液を出口4から抽出することができる。
【0028】
さらに我々は、開口部16のサイズdと超臨界流体の流量との適切な制御によって、「逆流」(すなわち、金属塩溶液の外側通路への流入)をほぼ排除できることを発見した。よって、我々は、所望しない位置にナノ粒子が形成されることを回避することができる。このようにして、超臨界流体の流量を、逆流を回避するために十分なほど高くする必要があり、開口部のサイズdは逆流を回避するために十分なほど小さくすべきである。高流量と小開口部は乱流を増大させて、より均質な混合を招く一方で、小さすぎる開口部は、超臨界流体のポンピングによる背圧の問題を引き起こし得る。金属塩溶液の流量、通路6、7の相対径、外側通路の垂直長さ7aなど、流量を選択する際に検討する必要のあるパラメータがいくつかある。
【0029】
通路6、7が、内側通路6の中心線に対して対称であることが分かる。つまり、混合が対称的であることが、組成、均一な粒径、狭い粒径分布という点で最適な生成物を生成する上で重要であると我々は認識している。流れ全体を非常に高速なものとして、より均一に混合を実行することができる。
【0030】
超臨界水を高温に維持するため、表面14の周囲にバンドヒータ10が設けられる。したがって、優先的に外側通路7、およびその内容物、超臨界水が加熱される。ヒータ10は第1入口3まで、および第1端部3にわたっては延在しないため、連結部11に至るまでに金属塩を著しく加熱することはない。所望しない加熱は、溶液から金属塩を沈殿させ、ナノ粒子の形成に影響を及ぼし、ポンピングの課題を招く可能性がある。一方、超臨界水がヒータに隣接する外側通路を通って冷却される可能性はほとんどないため、反応にとって適温となる。第2入口5とヒータ10との間の熱損失は、適切な断熱材を用いて軽減することができる。
【0031】
本反応器は、生成物の流れが高温になるときに最も発生しやすい粒子堆積および反応器内面のライニングの少なくとも一方の可能性がほとんどないことが分かる。粒子堆積の可能性は、狭窄部、(本装置の内面の)縁部、隆起部、角部などのアーチファクト、混合点(すなわち、連結部11)と生成物の流れが出口4の後で冷却される地点との間の装置領域における流方向全体の変化を回避することによって最小化することができる。本設計により、粒子を堆積させる区域が全く存在しない反応器が可能になる。本反応器は、連結部11と、生成物がたとえば下流の熱交換器で実質的に冷却される地点との対称性を失うことなく、実質上シームレスに実現することができる。
【0032】
超臨界水の流れが導入される角度は、添付図面の
図3aおよび
図3bに示す代替実施形態のように変化させることができる。これらの図面では、開口部16に繋がる外側通路の部分7b、7cは、略垂直要素が維持される限り、
図3aに示すように第1入口からの流れに向かって、あるいは
図3bに示すように流れに合わせて角度をつけることができる。
【0033】
混合反応器1は、本反応器がもたらす利点に悪影響を及ぼさずに他の各種機器と直列に使用することができる。添付図面中の
図4に示すように、熱交換器20は、通常は出口4からシームレスに延在する延長管21の周囲に結合される。よって、ナノ粒子担持懸濁液は、閉塞の形成をほぼ招くことなく冷却することができる。
【0034】
同様に、ナノ粒子担持懸濁液を高温に維持することが望ましい場合、追加ヒータ22を延長管21の周囲に設けることができる。また、ナノ粒子が凝集する可能性はほとんどない。
【0035】
図6では、本発明の第1の実施形態の混合反応器1が、第2の混合反応器25と直列に用いられる。第2の混合反応器25は、ヒータ10が設けられないことを除いて、第1の実施形態の反応器1と同様に機能する。このように、第1の混合反応器1の出口4は、第2の混合反応器の第1入口26に結合される。追加流体、たとえば、第2の金属塩溶液、または有機酸(たとえば、クエン酸)、チオール(たとえば、メタンチオール)、ポリマー(たとえば、ポリビニルピロリドン)を含むがそれらに限定されない「キャッピング剤」を含有する溶液が、第2の混合反応器の第2入口27に導入される。第2の混合反応器の内側通路28および外側通路29は、第1の実施形態と同様に連結部30で接し、連結部30が第2の混合点を提供する。さらに処理された懸濁液は、その後、第2の混合反応器の出口31から抽出することができる。
【0036】
なお、
図1および
図2の第1の実施形態および
図6の多段構造のいずれの場合も、反応器は、バンドヒータ10を備えた外面14を有する必要はなく、その代わりに、加熱された供給原料を横材と管継手のみを用いて導入することができる(この場合、加熱流が均一になる距離がほとんどないので、対称的な混合を達成するために、横材がT状ピース全体にわたることが望ましい)。バンドヒータ10を有する外面14(
図1に示す)の使用は、特定のシナリオで好まれるが(たとえば、長い滞留時間が必要である、あるいは加熱供給原料を非常に高温にしなければならない場合)、その他の状況では(低温および短い滞留時間の少なくとも一方が必要である場合)、外面およびヒータのない設計(
図6の第2の混合反応器)が適する可能性がある。多段構造の混合反応器35、25の両方ともが表面14の周囲にヒータ10を設けない例を
図7に示す。