(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】模様付け用プレートを用いたブロー成型用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 49/48 20060101AFI20220124BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B29C49/48
B29C49/42
(21)【出願番号】P 2020072711
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592039185
【氏名又は名称】長野吉田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正美
(72)【発明者】
【氏名】甘利 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 透
(72)【発明者】
【氏名】小林 正章
(72)【発明者】
【氏名】臼田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆志
(72)【発明者】
【氏名】桜井 一圭
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第1404736(GB,A)
【文献】米国特許第3380121(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0077351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のキャビティ部を有する割型構造のブロー成型用金型であって、
前記筒状のキャビティ部を構成する第1の中央割型部および第2の中央割型部と、
前記第1の中央割型部の上部および下部にそれぞれ組付けられる第1の上部割型部および第1の下部割型部と、
前記第2の中央割型部の上部および下部にそれぞれ組付けられる第2の上部割型部および第2の下部割型部と、
半筒状の第1のプレートおよび第2のプレートからなる一対の模様付け用プレートを具備し、
前記第1プレートおよび第2プレートは、それぞれ内壁部に得るべき成型品の外面に模様を付すための凹部もしくは透孔を有し、割型の対向する半筒状のキャビティ内壁面にそれぞれ前記割型との間に設けられた周方向への回り止め部により位置決めされて着脱自在に取り付けられて前記筒状のキャビティ部のキャビティ壁面を構成し
、
前記第1のプレートの両端部が、前記第1の中央割型部と前記第1の上部割型部および前記第1の下部割型部との間で挟み込まれて固定され、
前記第2のプレートの両端部が、前記2の中央割型部と前記第2の上部割型部および前記第2の下部割型部との間で挟み込まれて固定されることを特徴とするブロー成型用金型。
【請求項2】
前記第1のプレートの両端部に前記回り止め部たる孔が設けられ、前記第1の中央割型部の対応箇所に前記第1のプレートの前記孔にそれぞれ進入する回り止め部たるピンが設けられ、
前記第2のプレートの両端部に前記回り止め部たる孔が設けられ、前記第2の中央割型部の対応箇所に前記第2のプレートの前記孔にそれぞれ進入する回り止め部たるピンが設けられていることを特徴とする請求項
1記載のブロー成型用金型。
【請求項3】
前記第1のプレートおよび前記第2のプレートのそれぞれの両端部に設けられた前記孔部の内の一方の孔がプレートの長手方向の端部に開口する長孔であることを特徴とする請求項
2記載のブロー成型用金型。
【請求項4】
前記第1の上部割型部および前記第1の下部割型部の対応壁面に、前記第1の中央割型部に設けられた前記ピンの先端部がそれぞれ進入する凹部が設けられ、
前記第2の上部割型部および前記第2の下部割型部の対応壁面に、前記第2の中央割型部に設けられた前記ピンの先端部がそれぞれ進入する凹部が設けられていることを特徴とする請求項
2又は請求項3記載のブロー成型用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様付け用プレートを用いたブロー成型用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラスチックス製ボトルは、主としてブロー成型によって多量に生産される。
またプラスチック製ボトルの外周面には通常様々な凹凸模様が付与される。このような凹凸模様は、成形用金型のキャビティ内面に凹凸模様を形成し、この凹凸模様が転写されることによって形成される。
【0003】
ところで、様々な凹凸模様に対応するためには、それぞれのキャビティ内面に希望する凹凸模様を形成した専用の金型を準備しなければならず、金型が高価なことからコスト高となる要因になる。特に多品種少量のボトルの生産には不向きとなる。
【0004】
このような課題を解決するため、特許文献1(特開昭53-14765号公報)には、成形用金型のキャビティ内に、円筒状のスペーサを交換可能に設けた例が開示されている。
この成型用金型によれば、各種模様を付したスペーサを多種類用意し、金型本体は共用することでコスト高を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される成形用金型によれば、各種模様を付したスペーサを多種類用意し、金型本体を共用することで、特に多種少量生産の場合に有利である。
しかしながら、特許文献1に示される成形用金型によれば、スペーサが円筒状であることから、その内面に凹凸模様や透孔等を設ける加工が容易でないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、スペーサ(プレート)に模様を付すことが容易で、かつ金型内に位置ずれすることなく組付けられる模様付け用プレートを用いたブロー成型用金型を提供することにある。
【0010】
本発明に係るブロー成型用金型は、筒状のキャビティ部を有する割型構造のブロー成型用金型であって、前記筒状のキャビティ部を構成する第1の中央割型部および第2の中央割型部と、前記第1の中央割型部の上部および下部にそれぞれ組付けられる第1の上部割型部および第1の下部割型部と、前記第2の中央割型部の上部および下部にそれぞれ組付けられる第2の上部割型部および第2の下部割型部と、半筒状の第1のプレートおよび第2のプレートからなる一対の模様付け用プレートを具備し、前記第1のプレートおよび第2のプレートは、それぞれ内壁部に得るべき成型品の外面に模様を付すための凹部もしくは透孔を有し、割型の対向する半筒状のキャビティ内壁面にそれぞれ前記割型との間に設けられた周方向への回り止め部により位置決めされて着脱自在に取り付けられて前記筒状のキャビティ部のキャビティ壁面を構成し、前記第1のプレートの両端部を、前記第1の中央割型部と前記第1の上部割型部および前記第1の下部割型部との間で挟み込んで固定し、前記第2のプレートの両端部を、前記第2の中央割型部と前記第2の上部割型部および前記第2の下部割型部との間で挟み込んで固定されることを特徴とする。
【0011】
前記第1のプレートの両端部に前記回り止め部たる孔を、前記第1の中央割型部の対応箇所に前記第1のプレートの前記孔にそれぞれ進入する回り止め部たるピンを設け、前記第2のプレートの両端部に前記回り止め部たる孔を設け、前記第2の中央割型部の対応箇所に前記第2のプレートの前記孔にそれぞれ進入する回り止め部たるピンを設けることができる。
また、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートのそれぞれの両端部に設けた前記孔部の内の一方の孔をプレートの長手方向の端部に開口する長孔に形成することができる。
【0012】
また、前記第1の上部割型部および前記第1の下部割型部の対応壁面に、前記第1の中央割型部に設けられた前記ピンの先端部がそれぞれ進入する凹部を設け、前記第2の上部割型部および前記第2の下部割型部の対応壁面に、前記第2の中央割型部に設けられた前記ピンの先端部がそれぞれ進入する凹部を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形時、第1のプレートおよび第2のプレートは、周方向への周り止め部により位置決め、規制されるので、パリソンに高圧のエアーが吹き込まれ、パリソンが膨張する際、パリソンから、縦横方向あるいは斜め方向の圧力を受けても、第1のプレートおよび第2のプレートが周方向および縦方向にずれることがなく、成形品の外面に正確な模様を付すことができる。
また、各種模様を有する一対の第1のプレートおよび第2のプレートを複数用意し、金型本体を共用することで、コストの低減化を図ることができる。
第1のプレート、第2のプレートへの各種模様の形成は、平板状のプレートの段階で行えるので容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ブロー成型用金型の縦方向における端面図である。
【
図2】成形品を含んだ、成形用金型の組付け端面図である。
【
図3】プレートの正面図(A)および平面図(B)である。
【
図4】第1の中央割型部に第1のプレートを取り付けた状態を示す組み立て正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1はブロー成型用金型(以下単に成形用金型という)10の縦方向における端面図、
図2は成形品を含んだ、成形用金型10の組付け端面図である。
12は半円筒状をなす第1の中央割型部、13は半円筒状をなす第2の中央割型部である。
【0016】
第1の中央割型部12の内側上下端には、それぞれ端部が切り欠かれた段差部12aが形成されている。
第2の中央割型部13の内側上下端には、それぞれ端部が切り欠かれた段差部13aが形成されている。
【0017】
また第1の中央割型部12の内側上下端には、それぞれ内方に突出するピン14が設けられている。
第2の中央割型部13の内側上下端にも、それぞれ内方に突出するピン15が設けられている。
【0018】
第1の中央割型部12と、第2の中央割型部13とは、組み合わされた際円筒状となるキャビティ部18を形成する。
図3A、Bは、キャビティ部18に組み込まれる模様付け用プレート(以下単にプレートということがある)の正面図および平面図である。
【0019】
模様付け用プレートは半円筒状の第1のプレート20および半円筒状の第2のプレート21からなる一対のプレートから構成される。
第1のプレート20および第2のプレート21は、それぞれ内壁部に得るべき成型品の外面に模様を付すための凹部24(図示の例では網目状の凹部に形成している)もしくは透孔を有する。
【0020】
第1のプレート20および第2のプレート21は、ステンレス鋼等の厚さが0.3~1mm程度の金属板からなる。平板状の金属板をローラ掛け等することにより容易に半円筒状に加工することができる。プレートの凹部や透孔は、平板の段階でプレス加工やエッチング加工などにより容易に形成することができる。凹部や透孔の形状は特に限定されないことはもちろんである。なお、第1のプレート20および第2のプレート21は金属製に限らず、樹脂製、紙製などであってもよい。
【0021】
第1のプレート20の上下端には、それぞれ回り止め部となる孔22が形成されている。
第2のプレート21の上下端にも、それぞれ回り止め部となる孔23が形成されている。
上下端に設けられる孔22の内の少なくとも一方の孔は、プレートの上限端に開口する長孔に形成するとよい。同様に、上下端に設けられる孔23の内の少なくとも一方の孔も、プレートの上限端に開口する長孔に形成するとよい。
【0022】
第1のプレート20は、ピン14が孔22に進入するようにして第1の中央割型部12に組付けられる(
図4、
図5参照)。同様にして第2のプレート21が、ピン15が孔23に進入するようにして第2の中央割型部13に組付けられる。
第1のプレート20および第2のプレート21は、成形時、第1の中央割型部12および第2の中央割型部13が接近して組み合わさった際、円筒状に突き合わされ、キャビティ部18の円筒状のキャビティ壁面を構成する。
【0023】
次に、25は第1の上部割型部であり、第1の中央割型部12の上部に組付けられる。
第1の上部割型部25は、第1の中央割型部12の前記段差部12aと嵌合する段差部26を有し、またこの段差部26にピン14が進入する凹部27が形成されている。
【0024】
第1の上部割型部25は、第1のプレート20を第1の中央割型部12の上部と挟み込むようにして、第1の中央割型部12の上部に組付けられる。その際、第1のプレート20に形成された孔22を貫通したピン14の先端部が凹部27に進入するようになされている。
【0025】
35は第1の下部割型部であり、第1の中央割型部12の下部に組付けられる。
第1の下部割型部35は、第1の中央割型部12の前記段差部12aと嵌合する段差部36を有し、またこの段差部36にピン14が進入する凹部37が形成されている。
【0026】
第1の下部割型部35は、第1のプレート20を第1の中央割型部12の下部と挟み込むようにして、第1の中央割型部12の下部に組付けられる。その際、第1のプレート20に形成された孔22を貫通したピン14の先端部が凹部37に進入するようになされている。
【0027】
30は第2の上部割型部であり、第2の中央割型部13の上部に組付けられる。
第2の上部割型部30は、第2の中央割型部13の前記段差部13aと嵌合する段差部31を有し、またこの段差部31にピン15が進入する凹部32が形成されている。
【0028】
第2の上部割型部30は、第2のプレート21を第2の中央割型部13の上部と挟み込むようにして、第2の中央割型部13の上部に組付けられる。その際、第2のプレート21に形成された孔23を貫通したピン15の先端部が凹部32に進入するようになされている。
【0029】
40は第2の下部割型部であり、第2の中央割型部13の下部に組付けられる。
第2の下部割型部40は、第2の中央割型部13の前記段差部13aと嵌合する段差部41を有し、またこの段差部41にピン15が進入する凹部42が形成されている。
【0030】
第2の下部割型部40は、第2のプレート21を第2の中央割型部13の下部と挟み込むようにして、第2の中央割型部13の下部に組付けられる。その際、第2のプレート21に形成された孔23を貫通したピン15の先端部が凹部42に進入するようになされている。
【0031】
上記のように、第1のプレート20はその両端部が、第1の中央割型部12と第1の上部割型部25および第1の下部割型部35との間で挟み込まれて固定され、第2のプレート21はその両端部が、第2の中央割型部13と第2の上部割型部30および第2の下部割型部40との間で挟み込まれて固定されることになる。その際に、ピン14、ピン15は
図1に示すように、それぞれ第1の上部割型部25、第1の下部割型部35、および第2の上部割型部30、第2の下部割型部40で覆われてキャビティ部18に露出しない。
【0032】
45は第1の口部形成用割型部であり、第1の上部割型部25に組付けられる。その内壁面には成型品の雄ネジを形成する螺旋溝が形成されている。
46は第2の口部形成用割型部であり、第2の上部割型部30に組付けられる。その内壁面には成型品の雄ネジを形成する螺旋溝が形成されている。
【0033】
第1の口部形成用割型部45は第1の上部割型部25と一体であってもよい。また第2の口部形成用割型部46は第2の上部割型部30と一体であってもよい。
なお、成型品の口部は、別途射出成形等により形成した口部(図示せず)を成型品の対応箇所に取り付けて形成するようにすることもできる。
48は上下に可動する底部形成用型であり、第1の下部割型部35と第2の下部割型部40との間に進入し、キャビティ部18の下部を閉塞し、得るべき成型品の底部形状を規制する。
【0034】
本実施の形態に係るブロー成型用金型10は上記のように構成されている。
成形時には、上記のようにして第1のプレート20および第2のプレート21が所要部位に組み込まれ、また図示しない駆動部により
図1に示す状態に型閉じされ、常法によりブロー成型される。
【0035】
すなわち、図示しない押し出し機からパイプ状に押し出されたパリソンがキャビティ部18に挿入され、図示しない圧縮機から高圧のエアーがパリソン内に吹き込まれ、パリソンがエアー圧にキャビティ内壁(プレート内壁)に押し付けられ、外面にプレート20、21に付された模様が転写された、
図2に示す成型品50が形成される。
【0036】
成形時、第1のプレート20および第2のプレート21は、それぞれピン14と孔22、ピン15と孔23により位置決め、規制されるので、パリソンに高圧のエアーが吹き込まれ、パリソンが膨張する際、パリソンから、縦横方向あるいは斜め方向の圧力を受けても、第1のプレート20および第2のプレート21が周方向および縦方向にずれることがなく、成形品の外面に正確な模様を付すことができる。
なお、少なくとも一方の孔22、および少なくとも一方の孔23が長孔に形成されることにより、成形時の熱によるプレートの伸びを吸収することができる。
【0037】
本実施の形態でも、各種模様を有する一対の第1のプレート20および第2のプレート21を複数組用意し、金型本体を共用することで、コストの低減化を図ることができる。
前記のように、第1のプレート20、第2のプレート21への各種模様の形成は、平板状のプレートの段階で行えるので容易に形成することができる。
【0038】
上記実施の形態では、成型品50は外形が円筒状のもので説明したが、必ずしも円筒状のものでなくともよく、例えば断面が楕円状などの外形が丸みを帯びている成型品に適用できる。この場合、上記各割型部や、第1のプレート、第2のプレートは、対応する成型品の形状に応じた半筒状に形成することはもちろんである。この場合にあっても、上記と同様なピン、孔等による回り止め部を設けることによって、第1のプレート20、第2のプレート21の周方向等へのずれを防止できる。
【符号の説明】
【0039】
10 ブロー成型用金型
12 第1の中央割型部
12a 段差部
13 第2の中央割型部
13a 段差部
14 ピン
15 ピン
18 キャビティ部
20 第1のプレート
21 第2のプレート
22 23 孔
24 凹部
25 第1の上部割型部
26 段差部
27 凹部
30 第2の上部割型部
31 段差部
32 凹部
35 第1の下部割型部
36 段差部
37 凹部
40 第2の下部割型部
41 段差部
42 凹部
45 第1の口部形成用割型部
46 第2の口部形成用割型部
48 底部形成用型
50 成型品