(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】鋼板用クリーナ装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/04 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
B08B1/04
(21)【出願番号】P 2020109808
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】500469109
【氏名又は名称】有限会社タクショー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】添本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宇澤 啓
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特許第6300867(JP,B2)
【文献】特開平04-046624(JP,A)
【文献】特開平04-094808(JP,A)
【文献】特開2002-263758(JP,A)
【文献】特開2009-202050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/04
B08B 5/04
B21D 43/00~45/10
B03C 1/04~ 1/06
B03C 1/16~ 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される鋼板(W)の鋼板表面(Wa)から異物(D)を除去するために回転駆動するブラシロール(1)と、該ブラシロール(1)に付着した異物(D)内の鉄粉(d)を磁力にて吸着するための磁石棒(3)と、上記ブラシロール(1)と磁石棒(3)との間に介装されると共に、上記磁石棒(3)に吸着されてくる異物(D)を除去するワイピングクロス(5)とを、備えた鋼板用クリーナ装置に於て、
上記ブラシロール(1)の軸心(L
1)と平行状に、帯状の上記ワイピングクロス(5)を配設したことを特徴とする鋼板用クリーナ装置。
【請求項2】
上記ブラシロール(1)の軸心(L
1)に平行状に配設された2本の磁石棒(3)(3)を備えると共に、上記ワイピングクロス(5)の横断面形状が、上記ブラシロール(1)の外周面(1a)に対応する円弧状として、該外周面(1a)に接触するよう構成した請求項1記載の鋼板用クリーナ装置。
【請求項3】
上記ブラシロール(1)の軸心(L
1)に平行状に磁石棒(3)が配設されると共に、上記ワイピングクロス(5)と上記磁石棒(3)との間に磁性長尺体(M)が介装され、しかも、上記ワイピングクロス(5)の横断面形状が、上記ブラシロール(1)の外周面(1a)に対応する円弧状として、該外周面(1a)に接触させる横断面円弧状の浅凹溝(M
1)を、上記磁性長尺体(M)が有している請求項1記載の鋼板用クリーナ装置。
【請求項4】
帯状の上記ワイピングクロス(5)を、繰り出すための繰り出しロール(11)と、巻き取るための巻き取りロール(12)と巻き取り駆動部(12a)は、搬送されてくる上記鋼板(W)の左右側端(W
1)(W
2)よりも側外方位置に配設されている請求項1記載の鋼板用クリーナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板用クリーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送される鋼板に付着している鉄粉を除去するための鋼板用クリーナ装置において、鋼板から鉄粉を除去するブラシロールに付着した鉄粉を拭き取る帯状のクロスを送り出す繰り出しリールと、帯状のクロスを巻き取る巻き取りリールとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の鋼板用クリーナ装置は、
図4と
図5に示すように、鋼板43の上面に、回転駆動されるブラシロール46を接触させ、除塵する構造である。
ワイピングクロス45は、ブラシロール46の長さ寸法よりも少し大きな幅寸法のものを使用している。即ち、繰り出しリール41と巻き取りリール42を、ブラシロール46の軸心と平行状態として、かつ、上方位置に配設すると共に、ブラシロール46の上流側の側面に対応して配設の磁石棒44に、U字状(V字状)に上記ワイピングクロス45を懸架して、除塵する構成であるので、ワイピングクロス45は、ブラシロール46の長さ寸法───従って、鋼板43の幅寸法W
43───よりも、大きな幅寸法W
45のものを、使用せねばならない。
最近では、自動車ボディ等を一度のプレス加工にて成型する方法も実用化され、鋼板43の幅寸法W
43も数メートルの場合もある。これに伴って、ワイピングクロス45の幅寸法W
45も数メートルを必要となりつつある。
上述したように、幅寸法W
45の大きいワイピングクロス45は、(i)入手が困難であ
り、高価となるという問題、(ii)搬送路の上方位置に配設されている繰り出しリール41・巻き取りリール42の交換作業が容易でなく、しかも、巻き取りリール42に巻き取られた除塵(使用)後のワイピングクロス45の交換作業時に、異物が飛び散って下方の鋼板43や搬送路を汚染し易いという問題等があった。
【0005】
そこで、本発明は、市販されている標準サイズ(幅寸法)のワイピングクロスを使用可能であり、しかも、同一サイズのクロスで幅の異なる鋼板に対応でき、異物除去効率を高くすることができ、使用後のクロスを容易にかつ素早く交換することができ、全体的な作業効率の向上を可能とする鋼板用クリーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鋼板用クリーナ装置は、搬送される鋼板の鋼板表面から異物を除去するために回転駆動するブラシロールと、該ブラシロールに付着した異物内の鉄粉を磁力にて吸着するための磁石棒と、上記ブラシロールと磁石棒との間に介装されると共に、上記磁石棒に吸着されてくる異物を除去するワイピングクロスとを、備えた鋼板用クリーナ装置に於て、上記ブラシロールの軸心と平行状に、帯状の上記ワイピングクロスを配設したものである。
【0007】
また、上記ブラシロールの軸心に平行状に配設された2本の磁石棒を備えると共に、上記ワイピングクロスの横断面形状が、上記ブラシロールの外周面に対応する円弧状として、該外周面に接触するよう構成したものである。
【0008】
また、上記ブラシロールの軸心に平行状に磁石棒が配設されると共に、上記ワイピングクロスと上記磁石棒との間に磁性長尺体が介装され、しかも、上記ワイピングクロスの横断面形状が、上記ブラシロールの外周面に対応する円弧状として、該外周面に接触させる横断面円弧状の浅凹溝を、上記磁性長尺体が有しているものである。
【0009】
また、帯状の上記ワイピングクロスを、繰り出すための繰り出しロールと、巻き取るための巻き取りロールと巻き取り駆動部は、搬送されてくる上記鋼板の左右側端よりも側外方位置に配設されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鋼板用クリーナ装置によれば、入手の容易な幅の狭い、かつ、同一サイズのク
ロスで、幅の異なる鋼板に対応でき、異物除去効率を高くすることができ、使用後のクロ
スを容易にかつ素早く交換することができ、しかも、ワークの搬送路に異物を拡散汚染さ
せずに作業ができて、全体的な作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の鋼板用クリーナ装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1、
図2は、本発明の鋼板用クリーナ装置の実施の一形態を示す。この鋼板用クリーナ装置は、搬送される鋼板Wの鋼板表面Waから異物Dを除去するために回転駆動するブラシロール1と、該ブラシロール1に付着した異物D内の鉄粉dを磁力にて吸着除去するために平行状に配設された2本の磁石棒3,3と、上記ブラシロール1と磁石棒3,3との間に配設されるとともに、上記ブラシロール1の(回転)軸心L
1に平行状に送られるワイピングクロス5(以下、クロス5と呼ぶ場合もある)と、を備えている。
上記各磁石棒3の軸心L
3は、上記ブラシロール1の(回転)軸心L
1に平行状に配設されるとともに、上記回転軸心L
1よりも鋼板搬送方向上流側Yaに配設されている。ブラシロール1は、モータと減速機等から成る駆動装置7により矢印Bで示す方向に回転駆動される。
【0013】
ワイピングクロス5は、ブラシロール1に接触して、鋼板表面Waから除去された異物Dをブラシロール1から除去するためのものである。
つまり、ワイピングクロス5は、磁石棒3の磁力によりブラシロール1から引き寄せた鉄粉dを捕集し、かつ、鉄粉dとこれ以外の塵や埃や油分等の全ての異物Dを拭き取るものである。
【0014】
クロス5は、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン等の合成繊維を用いて、織物、編物、不織布、或いは、それらを組み合わせて、帯状に形成したものであり、異物Dを確実に捕集する。
【0015】
クロス5は、ブラシロール1の軸心L1と平行状に配設される。つまり、上記各磁石棒3と平行に、すなわち、矢印Aで示す鋼板Wの搬送方向と直交する方向Cに送られる。このため、ブラシロール1の直径と略同等であれば良く、好ましくは、ブラシロール1の直径よりも少し大きな上下寸法(幅)とする。異物Dを除去すべき鋼板Wの幅が変化した場合でも、クロス5の上下寸法(幅)を変化させる必要はなく、幅の異なる鋼板Wを清掃する度にクロス5を交換する必要がなくなり、作業効率を向上できる。
【0016】
2本の磁石棒3を、所定間隔だけ上下に離間させて配設するとともに、クロス5を介してブラシロール1に押圧して、クロス5を上記ブラシロール1に面接触させるように構成している。2本の磁石棒3が上下に離間させて配設されているため、2本の磁石棒3,3の間において、クロス5をブラシロール1の外周面1aに円弧状に沿うように面接触させている(
図2参照)。
【0017】
磁石棒3をクロス5を介してブラシロール1に押圧する際に、ある程度の面積をもって押圧されるため、磁石棒3が1本である場合(従来の装置)と比較して、異物Dの捕集面積が大きくなり、面接触状態となって、ブラシロール1からの異物除去能力が大きくなる。さらに、離間した2本の磁石棒3の間の空間にも磁界が形成されるため、鉄粉dの捕集能力が向上する。
【0018】
クロス5は、繰り出しロール11及び巻き取りロール12により、繰り出し及び巻き取りされる。巻き取りロール12は、モータ等の巻き取り駆動部12aにより回転駆動される。繰り出しロール11と、巻き取りロール12と、巻き取り駆動部12aとは、ブラシロール1の側外方に配設される。すなわち、搬送されてくる上記鋼板Wの左右側端W
1,W
2よりも側外方位置に配設されている。
従来の装置では、繰り出し及び巻き取りリールが、
図4及び
図5に示すように、鋼板の搬送ラインの上に配置されており、クロスの交換の際に、多大な労力と時間を要していたが、この構成によりクロス5の交換が容易かつ迅速に可能となる。
【0019】
異物除去作業中に、クロス5の進めかた及び進める速度は、鋼板Wの幅、異物Dの付着状態等を考慮して、自由に調整できる。例えば、クロス5を連続的に送る場合と間欠的に送る場合がある。
【0020】
クロス5を間欠的に送る場合には、巻き取りロール12の近辺にエンコーダ13を配設して、送り量を計測し、予め設定した鋼板Wの搬送された距離に対応して、クロス5を間欠的に送るように構成する。
なお、クロス5を間欠的に送る際には、クロス5を押圧している磁石棒3,3を、クロス5から分離する方向に(つまり、矢印Aと逆方向に)僅かに後退させるのが望ましい。
また、
図2からも明らかなように、クロス5の横断面は、「I字型」として、かつ、上下2本の磁石棒3,3の間では、(ブラシロール1の外周面1aに沿った)円弧状の部位を、上下中間に有する。
図1と
図2に於て、鋼板Wの搬送方向上流側に、上記「I字型」のクロス5が配設されているので、矢印B方向にブラシロール1が回転すると、異物Dは、(
図2に示した)ブラシ外周面1aと鋼板表面Waとクロス5にて包囲状の横断面略三角状空間部20内に主として集められ、クロス5によって、
図2の紙面に直交する方向に送り出されてゆく。
【0021】
図3は、本発明の他の実施形態を示す。
図3の実施形態に於ては、磁石棒3を1本として、直径を
図1,2の実施形態の磁石棒3よりも太くしている。
さらに、(クロス5を介して)ブラシロール1と磁石棒3との間に、磁性長尺体Mを配置している。
【0022】
磁性長尺体Mは、磁気を帯びることができる金属であり、例えば、炭素鋼が適している。
磁性長尺体Mは、中央部分に、ブラシロール1の外周面1aの曲率と略同一の曲率を有する凹面状となった浅凹溝M
1を有しており、この浅凹溝M
1の凹面に沿ってクロス5が変形して、ブラシロール1に追随する。すなわち、ブラシロール1の外周面1aに対応する円弧状として、クロス5を該外周面1aに接触させることができるため、異物Dの除去効果を高めることができる。その他の構成と作用・機能は、
図2と同様である。
【0023】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、磁石棒3の直径、磁力強度等は、除塵すべき鋼板Wの表面の状態、異物Dの量等を考慮して、自由に変更、調整可能である。
【0024】
本発明は、以上詳述したように、搬送される鋼板Wの鋼板表面Waから異物Dを除去するために回転駆動するブラシロール1と、該ブラシロール1に付着した異物D内の鉄粉dを磁力にて吸着するための磁石棒3と、上記ブラシロール1と磁石棒3との間に介装されると共に、上記磁石棒3に吸着されてくる異物Dを除去するワイピングクロス5とを、備えた鋼板用クリーナ装置に於て、上記ブラシロール1の軸心L
1と平行状に、帯状の上記ワイピングクロス5を配設したので、ワイピングクロス5は、比較的幅寸法の小さいもの(汎用性のあるもの)で十分使用できる。特別に大きな幅寸法W
45のワイピングクロス45(
図4参照)を必要としない。また、磁石棒3,3の設置も容易となると共に、ワイピングクロス5を(間欠送り時に)ブラシロール1から分離させる際に、(
図1に示すように十分な空間が拡がっており)磁石棒3,3を矢印Aと反対方向に移動させることも容易である(
図1では、その移動させる機構の図示を省略)。
【0025】
また、上記ブラシロール1の軸心L1に平行状に配設された2本の磁石棒3,3を備えると共に、上記ワイピングクロス5の横断面形状が、上記ブラシロール1の外周面1aに対応する円弧状として、該外周面1aに接触するよう構成したので、ブラシロール1からの異物除去効果が大きくなる。さらに、離間した2本の磁石棒3,3の間の空間にも磁界が形成されるため、鉄粉dの捕集効果が向上する。
【0026】
また、上記ブラシロール1の軸心L1に平行状に磁石棒3が配設されると共に、上記ワイピングクロス5と上記磁石棒3との間に磁性長尺体Mが介装され、しかも、上記ワイピングクロス5の横断面形状が、上記ブラシロール1の外周面1aに対応する円弧状として、該外周面1aに接触させる横断面円弧状の浅凹溝M1を、上記磁性長尺体Mが有しているので、ブラシロール1にクロス5が広く面接触して、異物Dの除去効果を高めることができる。
【0027】
また、帯状の上記ワイピングクロス5を、繰り出すための繰り出しロール11と、巻き取るための巻き取りロール12と巻き取り駆動部12aは、搬送されてくる上記鋼板Wの左右側端W1,W2よりも側外方位置に配設されているので、クロス5を容易にかつ素早く交換することができ、全体的な作業効率を向上できる。特に、巻き取りロール12に巻き取られたワイピングクロス5に付着された異物Dが、搬送路又は鋼板Wの上に再付着する虞れがなくなる。
【符号の説明】
【0028】
1 ブラシロール
1a 外周面
3 磁石棒
5 ワイピングクロス
11 繰り出しロール
12 巻き取りロール
12a 巻き取り駆動部
D 異物
d 鉄粉
L1 回転軸心
L3 軸心
M 磁性長尺体
M1 浅凹溝
W 鋼板
Wa 表面
W1 側端
W2 側端