(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】軽量セルフレベリング組成物およびこれを利用した床の施工方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/14 20060101AFI20220124BHJP
C04B 14/24 20060101ALI20220124BHJP
E04F 15/12 20060101ALI20220124BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20220124BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20220124BHJP
C04B 111/62 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
C04B28/14
C04B14/24
E04F15/12 E
C04B18/08 Z
C04B14/06 Z
C04B111:62
(21)【出願番号】P 2021112506
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2021-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127639
【氏名又は名称】株式会社エービーシー商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 竹彦
(72)【発明者】
【氏名】茂田 能孝
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010001(JP,A)
【文献】特開2015-010000(JP,A)
【文献】特開2007-084359(JP,A)
【文献】特開2016-026948(JP,A)
【文献】特開2017-226575(JP,A)
【文献】特開2005-155216(JP,A)
【文献】特開2016-011230(JP,A)
【文献】特開2010-143807(JP,A)
【文献】特開平09-177259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
E04F 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性粉体、骨材、樹脂、減水剤、増粘剤、膨張剤、無機粉体、遅延剤、硬化促進剤を含有するセルフレベリング組成物であって、
水硬性粉体として、ポルトランドセメントを20~40質量%、アルミナセメントを0.5~10質量%、石膏を0.5~10質量%含有し、
骨材として、
嵩比重0.4のフライアッシュバルーン
を15~25質量%および
嵩比重1.5の珪砂を
20~40質量%含有し、
セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物の比重が0.9~1.7g/cm
3である、ことを特徴とする軽量セルフレベリング組成物。
【請求項2】
更に、化学混和剤を含有するものである請求項1記載の軽量セルフレベリング組成物。
【請求項3】
減水剤が0.01~5質量%である請求項1または2記載の軽量セルフレベリング組成物。
【請求項4】
増粘剤の粘度が、4000mPa・s以下であり、含有量が0.0001~5質量%である請求項1~
3の何れか1項に記載の軽量セルフレベリング組成物。
【請求項5】
凝結開始時間が45~120分である請求項1~
4の何れか1項に記載の軽量セルフレベリング組成物。
【請求項6】
軽量セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物のフロー値が190mm以上で、比重が0.9~1.7g/cm
3である請求項1~
5の何れか1項に記載の軽量セルフレベリング組成物。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか1項に記載の軽量セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物を硬化させて得られる軽量セルフレベリング硬化体。
【請求項8】
厚さが5mm以上の時、比重が0.9~1.7g/cm
3である請求項
7記載の軽量セルフレベリング硬化体。
【請求項9】
請求項1~
6の何れか1項に記載の軽量セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物を床下地材の上面に流し込み、水平面として硬化させることを特徴とする床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量セルフレベリング組成物およびこれを利用した床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルフレベリング材は、水と混練して、ただ床に流すだけで自然に流動して水平な面を形成して硬化するため、広く床仕上げ下地材として使用されている。現在普及しているセルフレベリング材としては、石膏系のものと、セメント系のものがある。
【0003】
石膏系の比重が0.7~1.0g/cm3の軽量のセルフレベリング材としては、例えば、石膏を含む主材からなるセルフレベリング性組成物であって、該セルフレベリング性組成物と水との混練物の硬化体の圧縮強度が1.0N/mm2以上であり、該硬化体の熱伝導率が0.2(W/m・K)以下の断熱性能を有することを特徴とするセルフレベリング性組成物が知られている(特許文献1)。また、セメント系のセルフレベリング材としては、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、無機粉体と、軽量骨材と、流動化剤とを含む、防熱性水硬性組成物であって、前記無機粉体は、高炉スラグ微粉末及び水酸化アルミニウム微粉末から選ばれる一種又は二種以上であり、前記軽量骨材は、ガラスを主成分とする原料を焼成して得られたものであり、吸水時間2時間における吸水率が9%以下である、防熱性水硬性組成物が知られている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これらのセルフレベリング材は、混練直後は流動性や施工性が良いものの、凝結開始時間が短いため広い面積であれば混練直後に短時間で急いで施工するか、角などの狭い面積に施工するに留まっていた。また、凝結開始時間が短いため継ぎ足し(塗り継ぎ)で平滑に施工できないものであり、更に、凝結開始時間を長くすれば骨材の分離も起こり、施工し難い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-90441号公報
【文献】特開2015-10000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、セルフレベリング材であって、フロー値が高く、凝結開始時間が長く、骨材の分離がなく、軽量で施工し易いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、水硬性粉体、骨材、樹脂、減水剤、増粘剤、膨張剤、無機粉体、遅延剤、硬化促進剤を含有するセルフレベリング組成物であって、水硬性粉体および骨材を特定の組成のものにすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、水硬性粉体、骨材、樹脂、減水剤、増粘剤、膨張剤、無機粉体、遅延剤、硬化促進剤を含有するセルフレベリング組成物であって、
水硬性粉体として、ポルトランドセメントを10~50質量%、アルミナセメントを0.1~16質量%、石膏を0.1~16質量%含有し、
骨材として、フライアッシュバルーン、ガラスバルーンおよび珪砂からなる群から選ばれる2種以上を20~80質量%含有し、
セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物の比重が0.9~1.7g/cm3である、ことを特徴とする軽量セルフレベリング組成物である。
【0009】
また、本発明は、上記軽量セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物を硬化させて得られるセルフレベリング硬化体である。
【0010】
更に、本発明は、上記軽量セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物を床下地材の上面に流し込み、水平面として硬化させることを特徴とする床の施工方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の軽量セルフレベリング組成物は、軽量でフロー値が高く、凝結開始時間が長いため広い面積に施工できる。また、凝結開始時間が長いため塗り継ぎで平滑に施工ができ、更に、骨材の分離も無いことから、均一に広い面積を施工し易い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の軽量セルフレベリング組成物(以下、「本発明組成物」という)は、水硬性粉体、骨材、樹脂、減水剤、増粘剤、膨張剤、無機粉体、遅延剤、硬化促進剤を含有するセルフレベリング組成物であって、
水硬性粉体として、ポルトランドセメントを10~50質量%(以下、単に「%」という)、アルミナセメントを0.1~16%、石膏を0.1~16%含有し、
骨材として、フライアッシュバルール、ガラスバルーンおよび珪砂からなる群から選ばれる2種以上を20~80%含有するものである。
【0013】
本発明組成物において、ポルトランドセメントは20~40%が好ましく、アルミナセメントは0.5~10%が好ましく、石膏は0.5~10%が好ましい。
【0014】
本発明組成物に用いられる水硬性粉体における各成分の含有量(水硬性粉体を100%とした場合の含有量)は、ポルトランドセメントを23~99%、好ましくは60~96%、アルミナセメントを0.2~38%、好ましくは2~20%、石膏を0.2~38%、好ましくは2~20%含有する。
【0015】
上記ポルトランドセメントは、特に限定されないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等が挙げられる。またホワイトセメント、エコセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、シリカセメント、ジェットセメントも使用することができる。これらの中でも早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0016】
上記アルミナセメントは、特に限定されないが、主成分がカルシウムアルミネートであり、市販品のものを使用することができる。これらの中でもブレーン値が3500~4600cm2/gのものが好ましい。
【0017】
上記石膏は、特に限定されないが、例えば、無水石膏、二水石膏、半水石膏等が挙げられる。これらの中でも無水石膏が好ましい。また、天然に産出される石膏のいずれも使用することができる。
【0018】
本発明組成物に用いられる骨材は、フライアッシュバルーン、ガラスバルーンおよび珪砂からなる群から選ばれる2種以上を組み合わせて用いる。本発明組成物における骨材の含有量は、20~80%、好ましくは35~65%である。フライアッシュバルーンは、特に限定されないが、例えば、嵩比重が0.15~0.8、好ましくは0.3~0.5のものである。このようなフライアッシュバルーンとしては、例えば、セノライトSA(巴工業株式会社:嵩比重0.42)等が挙げられる。ガラスバルーンは、特に限定されないが、例えば、嵩比重が0.15~0.8、好ましくは0.3~0.5のものである。このようなガラスバルーンとしては、例えば、ライテックGL-3(啓和ファインマテリアル株式会社:嵩比重0.38)等が挙げられる。珪砂は、特に限定されないが、例えば、嵩比重が1.3~2.9、好ましくは1.5~2.7のものである。このような珪砂としては、例えば、瑞浪硅砂(株式会社瑞浪シリカ:嵩比重1.5)等が挙げられる。
【0019】
骨材の好ましい組合せとしては、フライアッシュバルーンおよび珪砂であり、より好ましくは嵩比重が0.3~0.5のフライアッシュバルーンおよび嵩比重が1.6~2.8の珪砂であり、特に好ましくは嵩比重が0.35~0.45のフライアッシュバルーンおよび嵩比重が1.5~2.7の珪砂を、質量比でフライアッシュバルーン:硅砂=30~45:55:70、好ましくはフライアッシュバルーン:硅砂=35~40:60~65としたものである。なお、嵩比重は容器充填法で測定される値である。これら骨材は、本発明組成物に質量比でフライアッシュバルーン:硅砂=30~45:55~70、好ましくはフライアッシュバルーン:硅砂=35~40:60~65で含有させる。
【0020】
また、本発明組成物には、上記骨材以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、更にパーライト骨材、スラグ骨材、碍子骨材、金属骨材、樹脂骨材等を含有させてもよい。
【0021】
本発明組成物に用いられる樹脂は、特に限定されないが、例えば、スチレンアクリル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系、酢ビ・ベオバ・アクリル系(酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル・バーサチック酸ビニルエステル共重合物)樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これら樹脂は粉末あるいは液体の何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末が好ましい。このような粉末の樹脂としては、例えば、VINAVILシリーズ(SKWイーストアジア株式会社)等が挙げられる。これら樹脂は、本発明組成物に0.1~5%、好ましくは0.5~3%含有させる。なお、これら樹脂は1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明組成物に用いられる減水剤は、特に限定されないが、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、メラミン系減水剤、ナフタレンスルホン系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、オキシカルボン酸系減水剤等が挙げられる。これら減水剤は粉末あるいは液体の何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末が好ましい。このような粉末の減水剤としては、例えば、MELFLUXシリーズ(BASF)等が挙げられる。これら減水剤は、本発明組成物に0.01~5%、好ましくは0.1~3%含有させる。なお、これら減水剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明組成物に用いられる増粘剤は、特に限定されないが、例えば、セルロースエーテル系増粘剤、タンパク質系増粘剤、ラテックス系増粘剤、水性ポリマー系増粘剤、セピオライトやアタパルジャイト等の無機質微粉末等が挙げられる。これら増粘剤の粘度も特に限定されないが、粘度が4000mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。なお、この粘度は20 ℃における2%水溶液の粘度値で測定される値である。これら増粘剤は粉末あるいは液体の何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末が好ましい。このような粉末の増粘剤としては、例えば、メトローズ(登録商標)シリーズ(信越化学工業株式会社:20 ℃における2%水溶液の粘度値が50Pa/s)等が挙げられる。これら増粘剤は、本発明組成物に0.0001~5%、好ましくは0.1~3%含有させる。なお、これら増粘剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
本発明組成物に用いられる膨張剤は、特に限定されないが、例えば、石灰系膨張剤、カルシウムサルフォアルミネート系膨張剤、アルミナセメント系膨張剤等が挙げられる。これら膨張剤は粉末あるいは液体の何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末が好ましい。このような粉末の膨張剤としては、例えば、太平洋ジプカル(登録商標)(太平洋マテリアル株式会社)等が挙げられる。これら膨張剤は、本発明組成物に0.1~10%、好ましくは1~5%含有させる。なお、これら膨張剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
本発明組成物に用いられる無機粉体は、特に限定されないが、例えば、高炉スラグ微粉末、炭酸カルシウム、シリカヒューム、フライアッシュ等が挙げられる。このような無機粉体としては、例えば、セラメント(登録商標)シリーズ(株式会社デイ・シイ)等が挙げられる。これら無機粉体は、本発明組成物に5~20%、好ましくは10~15%含有させる。なお、これら無機粉体は1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
本発明組成物に用いられる遅延剤は、特に限定されないが、例えば、酒石酸等のオキシカルボン酸系遅延剤、糖類系、重炭酸ナトリウム系遅延剤、リン酸ナトリウム系遅延剤等が挙げられる。これら遅延剤は粉末あるいは液体の何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末が好ましい。このような遅延剤としては、例えば、酒石酸ナトリウム(磐田化学工業株式会社)等が挙げられる。これら遅延剤は、本発明組成物に0.01~3%、好ましくは0.1~1%含有させる。なお、これら遅延剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
本発明組成物に用いられる硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、硫酸塩系硬化促進剤、ミョウバン系硬化促進剤、塩化カルシウム系硬化促進剤等が挙げられる。これら硬化促進剤は粉末あるいは液体の何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末が好ましい。このような硬化促進剤としては、例えば、ミョウバン(大明化学工業株式会社)等が挙げられる。これら硬化促進剤は、本発明組成物に0.1~5%、好ましくは1~3%含有させる。なお、これら硬化促進剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
本発明組成物には、更に、コンクリート中に空気泡を混入させるための化学混和剤を含有させることが好ましい。この化学混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤等が挙げられる。これらの中でもAE剤としては、例えば、脂肪族アルコール系AE剤、リグニンスルホン酸系AE剤、合成洗剤等が挙げられる。また、AE減水剤としては、例えば、ポリオール複合体、リグニンスルホン酸塩ならびにその誘導体、オキシカルボン酸塩等が挙げられる。なお、化学混和剤は粉末のものあるいは液体のもの何れでもよいが、現場での水練りが可能なため粉末ものが好ましい。このような粉末の化学混和剤としては、例えば、AE剤の、ESAPON1850/C(SKWイーストアジア株式会社)、AE減水剤のチューポール(登録商標)シリーズ(竹本油脂)等が挙げられる。これら化学混和剤は、本発明組成物に0.0001~1%、好ましくは0.001~0.1%含有させる。なお、これら化学混和剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
本発明組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、消泡剤、起泡剤、防腐剤、表面調整剤、顔料等を含有させてもよい。
【0030】
本発明組成物の好ましい態様としては次のものが挙げられる。
<組成1>
水硬性粉体
ポルトランドセメント(早強) 10~50%
アルミナセメント(ブレーン値4600cm2/g) 0.1~16%
石膏(無水) 0.1~16%
骨材
フライアッシュバルーン(嵩比重0.4) 8~32%
珪砂(嵩比重1.5) 12~48%
樹脂(酢ビ・ベオバ・アクリル系樹脂) 0.1~5%
減水剤(ポリカルボン酸系) 0.01~5%
増粘剤(セルロースエーテル系) 0.0001~5%
膨張剤(石灰系) 0.1~10%
無機粉体
高炉スラグ微粉末 2.5~10%
炭酸カルシウム 2.5~10%
遅延剤(酒石酸ナトリウム系) 0.01~3%
硬化促進剤
硫酸リチウム 0.05~2.5%
ミョウバン 0.05~2.5%
*全て粉末
【0031】
本発明のより好ましい態様としては次のものが挙げられる。
<組成2>
水硬性粉体
ポルトランドセメント(早強) 20~40%
アルミナセメント(ブレーン値4600cm2/g) 0.5~10%
石膏(無水) 0.5~10%
骨材
フライアッシュバルーン(嵩比重0.4) 15~25%
珪砂(嵩比重1.5) 20~40%
樹脂(酢ビ・ベオバ・アクリル系樹脂) 0.5~3%
減水剤(ポリカルボン酸系) 0.1~1%
増粘剤(セルロースエーテル系) 0.1~3%
膨張剤(石灰系) 1~5%
無機粉体
高炉スラグ微粉末 5~7.5%
炭酸カルシウム 5~7.5%
遅延剤(酒石酸ナトリウム系) 0.1~1%
硬化促進剤
硫酸リチウム 0.5~1.5%
ミョウバン 0.5~1.5%
*全て粉末
【0032】
<組成3>
組成1または2に、AE剤(脂肪族アルコール系) 0.0001~1%
<組成4>
組成1または2に、AE剤(脂肪族アルコール系) 0.001~0.1%
【0033】
以上説明した本発明組成物は水と混練することにより混練物となる。混練は、ハンドミキサー、SLミキサー、モルタルミキサー、ローリー車等で行えばよい。この混練物はフロー値が高く、凝結開始時間が長く、骨材の分離がなく、施工し易いものである。
【0034】
また、本発明組成物は、これと水を100:20~70の質量比で混練した混練物の比重は0.9~1.7g/cm3、好ましくは1.1~1.5g/cm3であり、従来のセルフレベリング組成物の比重が2.0~2.3g/cm3であることと比較して軽量のものである。
【0035】
なお、本発明組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物のフロー値は190mm以上、好ましくは190~230mmであり、比重は上記の範囲となる。なお、混練物のフロー値はJASS15 M-103(セルフレベリング材の品質基準)で測定される値である。また、比重はJIS A 1171で測定される値である。
【0036】
また、上記混練物の凝結開始時間は、45~120分、好ましくは60~120分である。この凝結開始時間が従来のセルフレベリング組成物よりも長いため、平滑に継ぎ足し(塗り継ぎ)ができる。また、骨材の分離も起こりがたい。骨材が分離しているかどうかは、例えば、JASS15 M-103(セルフレベリング材の品質基準)のフロー試験でフローコーンに混錬物を流し入れから40分間放置し、その後フローコーンを引き上げた際に骨材が分離していないか目視等で判断することができる。
【0037】
上記混練物は、床下地材の上面に流し込むことで、水平面として硬化させることができる。一定の水平面にする場合には、必要により、レーキ、金鏝等でならせばよい。床下地材は、特に限定されないが、例えば、コンクリート、高強度コンクリート、軽量コンクリート、セメント系下地調整材、ポリマーセメント系下地調整材、石膏系下地調整材等である。場合によっては金属下地やタイル下地等もあり得る。また、床下地材は研磨機等でレイタンスや雨打たれ等の脆弱層の除去、機械押さえ面や鏡面下地の十分な目粗し、汚れが付着している場合は汚れの種類に応じてクリーナーやリムーバーでの洗浄と乾燥、ゴミやカスがある場合は電気掃除機を用いた取り除き、ひび割れや欠損がある場合は補修材での処理、激しい不陸や1/100以上の勾配がある場合は事前に補修する等の下地処理を行った後、水性アクリル樹脂等のプライマーで接着性の向上やピンホール抑制等の処理を行ってもよい。
【0038】
上記混練物は、硬化させることにより軽量セルフレベリング硬化体が得られる。硬化の条件は特に限定されないが20℃で6~24時間である。
【0039】
このようにして得られる軽量セルフレベリング硬化体は、水平面が維持されたものとなる。この軽量セルフレベリング硬化体は厚さが5mm以上、好ましくは5~50mmの時、比重が0.9~1.7g/cm3、好ましくは比重が1.1~1.5g/cm3となる。
【0040】
以上説明した本発明の軽量セルフレベリング硬化体は、張り物下地、軽量コンクリート2種の補修等に好適である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
実 施 例 1
軽量セルフレベリング組成物:
以下の表1に記載の成分を回転数1000rpmの撹拌機で2分間混合して軽量セルフレベリング組成物の混練物を調製した。なお、比較として、石膏が主材のセルフレベリング性組成物(特許文献1)の混練物等も調製した(特許文献1において実施例配合のその他添加剤については所定量とのことのためポリカルボン酸系減水剤とシリカ・ポリエーテル系消泡剤を配合した)。
【0043】
【0044】
実 施 例 2
軽量セルフレベリング硬化体:
実施例1で調製した各(軽量)セルフレベリング組成物の混練物をフロー値、比重、圧縮強さをそれぞれJASS15 M-103(セルフレベリング材の品質基準)、JIS A 1171、JIS R 5201として測定した。また、各混練物の材料分離防止性を以下の評価基準で評価した。それらの結果を表2に示した。
【0045】
<材料分離防止性の評価基準>
評価 内容
○ :軽量骨材の浮上やセメントペーストの沈降が確認されない
△ :軽量骨材の浮上やセメントペーストの沈降が僅かに確認される
× :軽量骨材の浮上やセメントペーストの沈降が確認される
【0046】
【0047】
特許文献1の実施例で混錬した混錬物は、材料分離防止性に優れていたが、フローが190mm以上の実施例4配合は40分後には100mmまで流動性が低下していた。また始めから190mmに満たない実施例が多かった。いずれも実施例配合も凝結開始時間が早いために、可使時間が短く小面積の施工に向いており、施工に時間を要する大面積での施工では、継ぎ足し(塗り継ぎ)を平滑に仕上げることが難しい結果となった。本発明組成1は混錬直後のフローが185mmであったが40分後のフローは85mmであった。本発明組成2は、本発明組成1に更に化学混和剤を添加することにより、混錬直後のフローが220mmとなり、40分後のフローが183mmになり可使時間に優れた配合であることが確認された。
【0048】
実 施 例 3
軽量セルフレベリング組成物:
以下の表3に記載の成分を回転数1000rpmの撹拌機で2分間混合して軽量セルフレベリング組成物の混練物を調製した。なお、比較として、アルミナセメントが主材のセルフレベリング性組成物(特許文献2)の混練物等も調製した(特許文献2において実施例配合のアルミナセメントと早強ポルトランドセメントの配合比であるアルミナセメント:早強ポルトランドセメント=44:34の割合と、フラアッシュバルーンと硅砂の配合比であるフライアッシュバルーン:硅砂=96:0の割合である硅砂を配合しない場合)。
【0049】
【0050】
実 施 例 4
軽量セルフレベリング硬化体:
実施例3で調製した各(軽量)セルフレベリング組成物の混練物をフロー値、比重、材料分離防止性、圧縮強さを実施例2と同様に評価した。それらの結果を表4に示した。
【0051】
【0052】
特許文献2の実施例で混錬した比較例1の混錬物は、材料分離防止性に優れていたが、速硬性は得られたが20分後には硬化開始しており可使時間が極めて短かった。そこで比較例2として硅砂を0%にし、その分を軽量骨材に置換した結果、比重は小さくなったがフローしなくなり著しく流動性が低下した。比較例3ではアルミナセメント:早強ポルトランドセメント=44:34の割合、硅砂%(軽量骨材に置換)の両方を変更した結果、可使時間が短くなり且つ流動性も低下した。このことから、本発明組成1のセルフレベリング材は水硬性粉体であるアルミナセメントと早強ポルトランドセメント、石膏の配合割合が優れており、可使時間が長く且つ大面積で施工するのに適した時間で硬化が開始し、フライアッシュバルーンと硅砂の配合割合が優れていることにより、優れた流動性が得られ且つ材料分離防止性に優れた配合であることが確認された。
【0053】
実 施 例 5
軽量セルフレベリング組成物:
以下の表5に記載の成分を回転数1000rpmの撹拌機で2分間混合して軽量セルフレベリング組成物の混練物を調製した。なお、比較として、水硬性粉体である早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏について、石膏を配合せずアルミナセメントの配合量が多い場合の影響と、フライアッシュバルーンと硅砂にガラスバルーンを加えて配合比が変わった場合の影響についても調製した。
【0054】
【0055】
水硬性粉体について、石膏を配合せずにアルミナセメントを増量させた場合と、フライアッシュバルーンおよびガラスバルーンからなる軽量骨材と硅砂の配合比が軽量骨材:硅砂=40:60から50:50に変更させた場合のフローや可使時間への影響ついて試験した。
【0056】
実 施 例 6
軽量セルフレベリング硬化体:
配合例5で調製した各(軽量)セルフレベリング組成物の混練物をフロー値、比重、材料分離防止性、圧縮強さを実施例2と同様に評価した。それらの結果を表6に示した。
【0057】
【0058】
本発明組成1からアルミナセメントを増量した本発明組成3では混錬直後のフロー値が大きく、混錬から1時間で硬化するようになったが、20分後のフロー値も161mmとなり、可使時間と硬化時間のバランスが改善される傾向が確認された。本発明組成4では、アルミナセメントを減量させ石膏を増量したが、混錬直後のフロー値が193mmとなり請求項の範囲内であれば、レベリング性能が得られることが確認された。さらに本発明組成3から石灰系膨張剤を請求項の範囲内で減量調整した本発明組成5では、20分後のフロー値が184mmとなりレベリング性能と可使時間がさらに改善された。アルミナセメントが多く、且つ石膏が配合されていない比較例4では混錬直後のフロー値は大きくレベリング性能を有していたが、20分後にはフロー値が150mmになり、可使時間を得ることが出来なかった。本発明組成3においては、この比較例4に請求項の範囲内の石膏を配合した結果であるが、混錬直後のフローが8mm改善され、20分後のフローも11mm改善されていることから、本発明の有効性が確認された。また、軽量骨材であるフライアッシュバルーン(ガラスバルーン含む)と硅砂の配合比が請求範囲のフライアッシュバルーン(ガラスバルーン含む):硅砂=40:60から外れて50:50になった比較例5では、混錬直後のフローも190mmに達することが出来ず、比較例6では混錬水を増やして混錬直後のフローを190mmにすることができたが、20分後にはフローダウンしてしまい可使時間を得ることが出来なかった。アルミナセメント請求範囲である適量のポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏のバランスと、軽量骨材と硅砂のバランスが重要であることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のセルフレベリング硬化体は、張り物下地、軽量コンクリート2種の補修等に利用可能である。
【要約】
【課題】セルフレベリング材であって、フロー値が高く、凝結開始時間が長く、骨材の分離がなく、軽量で施工し易いものを提供する。
【解決手段】水硬性粉体、骨材、樹脂、減水剤、増粘剤、膨張剤、無機粉体、遅延剤、硬化促進剤を含有するセルフレベリング組成物であって、
水硬性粉体として、ポルトランドセメントを10~50質量%、アルミナセメントを0.1~16質量%、石膏を0.1~16質量%含有し、
骨材として、フライアッシュバルーン、ガラスバルーンおよび珪砂からなる群から選ばれる2種以上を20~80質量%含有し、
セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物の比重が0.9~1.7g/cm3である、ことを特徴とする軽量セルフレベリング組成物と水を100:20~70の質量比で混練した混練物を床下地材の上面に流し込み、水平面として硬化させることを特徴とする床の施工方法。
【選択図】なし