(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】履物の製造方法及び履物の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20220124BHJP
B29C 48/04 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/05 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/09 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/28 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20220124BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20220124BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20220124BHJP
B29D 35/12 20100101ALI20220124BHJP
B29L 31/50 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/04
B29C48/05
B29C48/09
B29C48/25
B29C48/28
B29C48/30
B29C48/395
B29C48/88
B29C64/106
B29D35/12
B29L31:50
(21)【出願番号】P 2021165948
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502059984
【氏名又は名称】株式会社 一歩
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】山名 勉
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-052593(JP,A)
【文献】特開平11-138556(JP,A)
【文献】特開昭55-074843(JP,A)
【文献】特開昭49-109455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0337419(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0366402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/34,39/04,48/04,48/05,
48/09,48/25,48/28,48/30,
48/395,48/88,48/92,64/106
B29D 35/12
B29L 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体からなる底材を形成する工程を含む履物の製造方法であって、
上記底材を形成する工程では、上方に開口した金型の上方から当該金型に溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させることにより、複数の空隙を有する上記樹脂成形体を成形する、履物の製造方法。
【請求項2】
樹脂成形体からなる底材を形成する工程を含む履物の製造方法であって、
上記底材を形成する工程では、上方に開口した金型の上方から当該金型に溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させ、上記金型内で上記溶融樹脂を複数の位置において互いに部分的に重ね
ることにより当該溶融樹脂同士の間に空隙を形成
して上記樹脂成形体を成形する
、履物の製造方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の
履物の製造方法において、
上記金型に供給する上記溶融樹脂を糸状とする、
履物の製造方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の
履物の製造方法において、
上記金型に供給する上記溶融樹脂を粒状とする、
履物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1つに記載の
履物の製造方法において、
上記金型に供給される上記溶融樹脂は、中実断面を有する、
履物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至
4の何れか1つに記載の
履物の製造方法において、
上記金型に供給される上記溶融樹脂は、中空断面を有する、
履物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか1つに記載の
履物の製造方法において、
上記溶融樹脂を複数の供給位置から上記金型に供給する、
履物の製造方法。
【請求項8】
樹脂成形体からなる底材を有する履物の製造装置であって、
溶融樹脂を押し出す押出機と、
上方に開口した金型を固定するステージと、
上記ステージに固定された上記金型の上方に配置されると共に上記押出機に設けられ、上記押出機から押し出される上記溶融樹脂を上記金型へ供給するノズル部と、
上記ノズル部の位置に対する上記金型の位置を相対移動させるための移動機構と、
上記移動機構及び上記押出機を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記押出機が上記金型の上方から当該金型に上記溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記移動機構が上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させることにより、複数の空隙を有する上記樹脂成形体を成形するように構成されている、履物の製造装置。
【請求項9】
樹脂成形体からなる底材を有する履物の製造装置であって、
溶融樹脂を押し出す押出機と、
上方に開口した金型を固定するステージと、
上記ステージに固定された上記金型の上方に配置されると共に上記押出機に設けられ、上記押出機から押し出される上記溶融樹脂を上記金型へ供給するノズル部と、
上記ノズル部の位置に対する上記金型の位置を相対移動させるための移動機構と、
上記移動機構及び上記押出機を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記押出機が上記金型の上方から当該金型に上記溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記移動機構が上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させ、上記金型内で上記溶融樹脂を複数の位置において互いに部分的に重ね
ることにより当該溶融樹脂同士の間に空隙を形成
して上記樹脂成形体を成形するように構成されている、
履物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の製造方法及び履物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の空隙を有する樹脂成形体を、例えば履物用の底材や寝具用マットレス等に利用することが知られている。例えば、特許文献1には、樹脂成形体であるフィラメント3次元結合体の製造装置が開示されている。このフィラメント3次元結合体は、例えばマットレスに利用される。
【0003】
特許文献1の製造装置は、押出機と、ノズル部(ダイ)と、冷却水槽とを備えている。押出機は、材料投入部(ホッパー)から投入された熱可塑性樹脂材料を加圧溶融してスクリュー搬送する。ノズル部には、複数のノズルが形成されており、搬送されてきた溶融材料を溶融フィラメント群として鉛直方向下方へ排出する。ノズル部から排出された溶融フィラメント群は、厚みが規制された後に下方の冷却水槽に供給される。
【0004】
冷却水槽では、溶融フィラメント群が冷却水の浮力作用によって撓み、ランダムなループを形成する。そして、隣接するループの接触点が融着した結合体は、冷却水により冷却されながら冷却水槽内を搬送されることによって固化する。こうして、複数の空隙を有する樹脂成形体であるフィラメント3次元結合体が製造される。
【0005】
特許文献2には、網目状の格子構造を有するスポーツシューズのソール(底材)を付加製造技術(3Dプリンタ)によって製造することが開示されている。また、付加製造技術の一例として、熱溶解積層方式(FDM法)によって製造可能であることも記載されている。
【0006】
熱溶解積層方式では、例えば0.1mm~0.8mm程度の細いノズルの先端から溶解した樹脂を吐出し、一層ずつ積層することによって造形する。このように、付加製造技術(3Dプリンタ)を利用すれば、金型を使用せずに所定の立体形状を樹脂成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-026586号公報
【文献】特開2019-080988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1の製造方法では、ランダムなループの結合体を冷却するために大きな冷却水槽が必要になってしまう。しかも、結合体を長尺に引き出して冷却水槽内で冷却しつつ搬送しなければならないので、冷却水槽内にコンベヤや複数の搬送ローラ等の搬送設備を設置しなければならず、製造装置全体を小規模化することが難しい。
【0009】
一方、上記特許文献2の製造方法では、3Dプリンタを利用するものであるため、製造装置全体を小規模化することが可能であるものの、完成品の3次元データを予め用意しなければならないことに加え、薄層を一層ずつ緻密に積層する方式であることから完成品を得るまでに長時間かかってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、樹脂成形体からなる底材を有する履物を製造するにあたり、小規模の装置による製造が可能であり、且つ比較的短時間で製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る履物の製造方法は、樹脂成形体からなる底材を形成する工程を含む履物の製造方法であって、上記底材を形成する工程では、上方に開口した金型の上方から当該金型に溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させることにより、複数の空隙を有する上記樹脂成形体を成形する。
【0012】
第2の発明に係る履物の製造方法は、樹脂成形体からなる底材を形成する工程を含む履物の製造方法であって、上記底材を形成する工程では、上方に開口した金型の上方から当該金型に溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させ、上記金型内で上記溶融樹脂を複数の位置において互いに部分的に重ねることにより当該溶融樹脂同士の間に空隙を形成して上記樹脂成形体を成形する。
第3の発明では、上記金型に供給する上記溶融樹脂を糸状としてもよい。また、第4の発明では、上記金型に供給する上記溶融樹脂を粒状としてもよい。
【0013】
第5の発明では、上記金型に供給される上記溶融樹脂は、中実断面を有してもよい。また、第6の発明では、上記金型に供給される上記溶融樹脂は、中空断面を有してもよい。第7の発明では、上記溶融樹脂を複数の供給位置から上記金型に供給するようにしてもよい。
【0014】
第8の発明に係る履物の製造装置は、樹脂成形体からなる底材を有する履物の製造装置であって、溶融樹脂を押し出す押出機と、上方に開口した金型を固定するステージと、上記ステージに固定された上記金型の上方に配置されると共に上記押出機に設けられ、上記押出機から押し出される上記溶融樹脂を上記金型へ供給するノズル部と、上記ノズル部の位置に対する上記金型の位置を相対移動させるための移動機構と、上記移動機構及び上記押出機を制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記押出機が上記金型の上方から当該金型に上記溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記移動機構が上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させることにより、複数の空隙を有する上記樹脂成形体を成形するように構成されている。
【0015】
第9の発明に係る履物の製造装置は、樹脂成形体からなる底材を有する履物の製造装置であって、溶融樹脂を押し出す押出機と、上方に開口した金型を固定するステージと、上記ステージに固定された上記金型の上方に配置されると共に上記押出機に設けられ、上記押出機から押し出される上記溶融樹脂を上記金型へ供給するノズル部と、上記ノズル部の位置に対する上記金型の位置を相対移動させるための移動機構と、上記移動機構及び上記押出機を制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記押出機が上記金型の上方から当該金型に溶融樹脂を押し出して供給しながら、上記移動機構が上記溶融樹脂の供給位置に対する上記金型の位置を相対移動させ、上記金型内で上記溶融樹脂を複数の位置において互いに部分的に重ねることにより当該溶融樹脂同士の間に空隙を形成して上記樹脂成形体を成形するように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
第1及び第2の発明によれば、開口した金型に上方から溶融樹脂を供給しながら、溶融樹脂の供給位置に対する金型の位置を相対移動させることにより、溶融樹脂同士の間に空隙を形成して溶融樹脂を金型の内側へ供給することが可能になる。溶融樹脂同士が接触する部分は、互いに融着し結合する。そのことにより、空隙を有する樹脂成形体からなる底材を形成できる。
【0017】
このように、本発明では、溶融樹脂の供給位置に対する金型の位置を相対移動させることにより、樹脂成形体に複数の空隙(言い換えれば、網目構造)を形成できるとともに、金型によって所望の形状に成形することができる。さらに、上記供給位置と金型との相対移動の仕方を変更することによって、成形体に形成される網目構造のデザインを変更することも可能である。
【0018】
その上、本発明では、樹脂成形体を金型内で冷却することが可能であるため、上記特許文献1のような冷却水槽や、コンベヤ及び搬送ローラ等の搬送設備が不要であり、小規模の装置による製造が可能である。
【0019】
しかも、水平な断面で分割された薄層を一層ずつ緻密に積層する3Dプリンタに比べて、本発明では、溶融樹脂を比較的大きい流量で金型に供給できるため、空隙が形成された樹脂成形体の底材を有する履物を短時間で製造することができる。
【0020】
第3及び第4の発明によれば、糸状又は粒状の溶融樹脂の積み重ねによって、複数の空隙を有する樹脂形成体の形態を種々のバリエーションで製造することができる。
【0021】
第5の発明によれば、樹脂成形体が中実の樹脂からなるので、樹脂成形体全体の強度を高めることが可能になる。一方、第6の発明によれば、樹脂成形体が中空の樹脂により構成されることから、樹脂成形体全体の弾性を高めることが可能になる。
【0022】
第7の発明によれば、溶融樹脂の供給位置を複数とすることにより、各供給位置から異なる色の溶融樹脂を金型に供給することが可能になる。これにより、成形色の自由度が高まる。また、溶融樹脂の金型への供給流量を増大させて、樹脂成形体をより短時間で製造することが可能になる。
【0023】
第8及び第9の発明によれば、上記第1及び第2の発明と同様に、空隙が形成された樹脂成形体の底材を有する履物を、小規模の装置により製造が可能であり、しかも比較的短時間で製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態1における樹脂成形体の製造装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ノズル部の先端を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、ノズル部の先端を示す側断面図である。
【
図4】
図4は、ノズル部の先端を示す側断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態1における金型に成形された樹脂成形体を示す上面図である。
【
図6】
図6は、樹脂成形体である底材を示す正面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態2における樹脂成形体の製造装置を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本実施形態2における金型に成形された樹脂成形体を示す上面図である。
【
図12】
図12は、その他の実施形態における製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《実施形態1》
【0026】
図1は、本実施形態1における樹脂成形体10の製造装置1を概略的に示している。
図2~
図4は、製造装置1におけるノズル部17の先端を示す側断面図である。
図5は、金型12に成形された樹脂成形体10を示す上面図である。
図6は、樹脂成形体10を示す正面図である。
図7は、
図6の一部を拡大して示している。
図8は、履物である草履3の正面図である。
【0027】
製造装置1は、複数の空隙11を有する樹脂成形体10を製造するものである。本実施形態における樹脂成形体10は、
図8に示すように、履物である草履3の底材5である。草履3は、底材5と、底材5に貼り合わされた台6と、台6及び底材5に取り付けられた鼻緒7とを有している。
【0028】
底材5となる樹脂成形体10は、
図5~
図7に示すように、複数の空隙11が形成されることにより網目構造を有している。そのことにより、樹脂成形体10は適度な弾性を有し、底材5としてのクッション性を実現する。
尚、樹脂成形体10は、履物の底材5に限らず、例えば座布団やマットレスの芯材等の他の用途に利用するものであってもよい。
【0029】
図1に示すように、製造装置1は、ステージ14と、押出機16と、ノズル部(ダイ)17と、移動機構18とを備えている。
ステージ14は、金型12が載置される支持面14aを有している。ステージ14は、水平な支持面14aにおいて金型12を固定するように構成されている。金型12は、上方に開口した形状を有しており、例えば皿状に形成されている。金型12は、樹脂成形体10(底材5)の外形を規定するように構成されている。
【0030】
押出機16は、ホッパー(材料投入部)21と、搬送路22と、スクリュー23と、スクリューモータ24とを備え、溶融樹脂30を押し出すように構成されている。
すなわち、ホッパー21には、熱可塑性樹脂材料のペレットが投入される。ホッパー21から投入された樹脂材料は、搬送路22に供給される。搬送路22の周囲には、ヒータ26が設けられている。また、搬送路22の内部には、スクリュー23が設けられている。
【0031】
スクリュー23は、搬送路22に沿って延びており、その基端側がスクリューモータ24に連結され駆動される。一方、押出機16におけるスクリュー23の先端側には、ノズル部17が設けられている。ノズル部17は搬送路22に連通しており、搬送路22の出口となっている。
【0032】
こうして、ホッパー21から搬送路22に供給された樹脂材料は、ヒータ26により加熱されて溶融樹脂30となった状態で、スクリュー23により搬送される。搬送路22の溶融樹脂30はノズル部17から押し出される。
【0033】
ノズル部17は、ステージ14に固定された金型12の上方に配置されている。そうして、ノズル部17は、押出機16から押し出される溶融樹脂30を、金型12へ流下させて供給する。本実施形態では、
図1に示すように、ノズル部17から金型12に供給する溶融樹脂30を糸状とする。
【0034】
ノズル部17(ダイ)は、
図2~
図4に例示するように、種々の形状とすることが可能である。例えば、溶融樹脂30を
図2に示すように中実の円形断面としたり、
図3に示す中空の円形断面とすることが可能である。また、
図4に示すように、例えば花形のような任意の断面形状とすることもできる。
【0035】
移動機構18は、ステージ14を水平方向に移動させる機構である。移動機構18は、直行する水平面内の2方向(横方向X、縦方向Y)にステージ14を移動させると共に、鉛直方向の回転軸周りにステージ14を回転させることが可能になっている。よって、移動機構18は、ステージ14に設置された金型12を水平面内の自由な方向に移動可能としている。そのことにより、移動機構18は、ノズル部17の位置(つまり、溶融樹脂30の供給位置)に対する金型12の位置を相対移動させるようになっている。
【0036】
製造装置1は、移動機構18及び押出機16を制御する制御部31を備えている。すなわち、制御部31は、移動機構18によるステージ14の移動を制御することにより、金型12を所望の向きに変化させる。尚、制御部31によるステージ14の移動(金型12の移動)は、予めプログラムとして設定しておくことが可能である。
【0037】
また、制御部31は、押出機16における溶融樹脂30の押出流量や、溶融樹脂30の温度等を制御することにより、溶融樹脂30を適切な状態で金型12へ供給するように構成されている。
【0038】
尚、製造装置1は、移動機構18や制御部31を有しない構成としてもよい。すなわち、手作業により金型12の向きを変えるようにしてもよい。このようにしても、金型12に溶融樹脂30を適切に供給させて、複数の空隙11を有する樹脂成形体10を製造することが可能である。
【0039】
また、移動機構18は、ノズル部17に対する金型12の位置を相対移動させるものであればよい。したがって、例えば、押出機16を比較的小型の構成とした場合は、押出機16を移動させるようにしてもよい。
【0040】
本実施形態による履物の製造方法は、樹脂成形体10からなる底材5を形成する工程を含む。そして、本実施形態による樹脂成形体10の製造方法は、上方に開口した金型12の上方から当該金型12に溶融樹脂30を押し出して供給しながら、溶融樹脂30の供給位置に対する金型12の位置を相対移動させることにより、複数の空隙11を有する樹脂成形体10を成形する工程を有する。
【0041】
具体的には、上述の製造装置1を用いて樹脂成形体10を製造する。すなわち、金型12をノズル部17の下方に配置する工程(金型配置工程)と、押出機16によって溶融樹脂30をノズル部17から押し出して、下方の金型12に供給する工程(溶融樹脂供給工程)とを行う。溶融樹脂供給工程は、金型12の向きを適宜変化させる工程(金型移動工程)と同時に行う。つまり、溶融樹脂30を金型12に供給すると同時に金型12の向きを変化させる。そのことにより、金型12内に網目状の樹脂構造を形成する。
【0042】
ノズル部17から金型12に供給する溶融樹脂30は、例えば糸状とする。これにより、糸状の溶融樹脂30が金型12内に一筆書き状に供給され、溶融樹脂30が蛇行しつつ部分的に重なる。その結果、樹脂成形体10に複数の空隙11が形成されることとなる。
【0043】
このように、本実施形態によると、溶融樹脂30の供給位置に対する金型12の位置を相対移動させることにより、樹脂成形体10に複数の空隙11(言い換えれば、網目構造)を形成できるとともに、金型12によって所望の形状の樹脂成形体10を得ることができる。
【0044】
さらに、溶融樹脂30の供給位置と金型12との相対移動の仕方を変更することによって、樹脂成形体10に形成される網目構造のデザインを変更することも可能である。その上、樹脂成形体10を金型12内で冷却することが可能であるため、例えば冷却水槽やコンベヤ及び搬送ローラ等の搬送設備が不要であり、小規模の装置による製造が可能である。
【0045】
しかも、水平な断面で分割された薄層を一層ずつ緻密に積層する3Dプリンタに比べて、溶融樹脂30を比較的大きい流量で金型12に供給できるため、複数の空隙11を有する樹脂成形体10を短時間で製造することができる。
【0046】
また、ノズル部(ダイ)17の形状を適宜変更することによって、樹脂成形体10に所望の特性を加えたり、デザインのバリエーションを増やすことができる。例えば、
図2に示すノズル部17であれば、樹脂成形体が中実の樹脂からなるので、樹脂成形体10全体の強度を高めることができる。一方、
図3に示すノズル部17であれば、樹脂成形体10が中空の樹脂により構成されることから、樹脂成形体10全体の弾性を高めることができる。また、
図4に示すノズル部17であれば、花形の形状によって樹脂成形体10の外観の印象を変化させることができる。
《実施形態2》
次に、実施形態2を説明する。尚、上記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0047】
図9は、本実施形態2における樹脂成形体10の製造装置1を示す概略図である。
図10は、本実施形態2における金型12に供給された溶融樹脂30を示す上面図である。
図11は、本実施形態2における樹脂成形体10の一部を拡大して示している。
【0048】
本実施形態2は、上記実施形態1において金型12に供給する溶融樹脂30を粒状としたものである。すなわち、
図9に示すように、本実施形態2における製造装置1には、ノズル部17の出口近傍に切断部33としての回転式カッター33が配置されている。そうして、ノズル部17から押し出される溶融樹脂30を回転式カッター33により連続的に切断し、粒状となった溶融樹脂30を金型12内へ供給するようになっている。
【0049】
この粒状の溶融樹脂30を金型12へ供給する際は、上記実施形態1と同様に移動機構18によってステージ14(金型12)を移動させる。そのことにより、
図10及び
図11に示すように、粒状の溶融樹脂30同士の間に空隙11が形成された樹脂成形体10を製造する。
【0050】
本実施形態2においても、ノズル部17は、例えば
図2~
図4に示すような種々の形状とすることが可能である。このように、ノズル部17の形状を変更したり、金型12に供給する溶融樹脂30を糸状又は粒状に変更することによって、樹脂成形体10に所望の特性(例えば強度や弾性等)を加えたり、デザインのバリエーションを増やすことができる。
《その他の実施形態》
【0051】
上記実施形態1及び2では、溶融樹脂30の供給位置が1つである例について説明したが、これに限らず、複数の供給位置から金型12に溶融位置を供給するようにしてもよい。
【0052】
図12は、その他の実施形態における製造装置1を示す概略図である。例えば、
図12に示すように、押出機16及びノズル部17を複数用意して、各ノズル部17から1つの金型12に溶融樹脂30を供給するようにしてもよい。
【0053】
このように、溶融樹脂30の供給位置を複数とすることにより、各供給位置から異なる色の溶融樹脂30を金型12に供給することができる。これにより、樹脂成形体10における成形色の自由度を高めることができる。また、溶融樹脂30の金型12への供給流量を増大させることが可能になるので、樹脂成形体10をより短時間で製造することができる。
【0054】
また、1つの押出機16に対し、溶融樹脂30の供給位置を複数設けるようにしてもよい。例えば、1つのノズル部17が複数のノズルを有する構成とすることが可能である。これにより、樹脂成形体10を複数の列で金型12へ流下させて供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、履物の製造方法及び履物の製造装置について有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 製造装置
3 草履(履物)
5 底材
10 樹脂成形体
11 空隙
12 金型
14 ステージ
15 溶融樹脂
16 押出機
17 ノズル部
18 移動機構
30 溶融樹脂
【要約】
【課題】複数の空隙を有する樹脂成形体及びそれを有する履物を製造するにあたり、小規模の装置による製造が可能であり、且つ比較的短時間で製造できる方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形体の製造方法は、上方に開口した金型12の上方から当該金型12に溶融樹脂30を押し出して供給しながら、溶融樹脂30の供給位置に対する金型12の位置を相対移動させることにより、複数の空隙を有する樹脂成形体を成形する工程を有する。
【選択図】
図1