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  • 特許-粉体の成膜方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】粉体の成膜方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
C23C16/455
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021168888
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2021-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-054005(JP,A)
【文献】特開平07-054007(JP,A)
【文献】特開平07-054006(JP,A)
【文献】特開平07-053269(JP,A)
【文献】特開平02-153068(JP,A)
【文献】特開昭62-250172(JP,A)
【文献】特許第6787621(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体をジェットノズルに導入し、前記粉体のジェット流を噴出して、前記粉体を拡散する工程と、
拡散された前記粉体と、原料ガスと、大気圧プラズマにより活性化された反応ガスとを、それぞれ反応容器内に導入して旋回流を形成する工程と、
前記反応容器内で、前記原料ガスと、活性化された前記反応ガスとの反応により、拡散された前記粉体に成膜する工程と、
を有する粉体の成膜方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記反応容器に形成された複数の導入ポートから、前記原料ガスと前記反応ガスとを、前記旋回流の上流側からその順番で交互に繰り返し導入する粉体の成膜方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記反応容器内から排気ガスを導出する工程と、成膜された粉体を、前記排気ガスとは分離して回収する工程と、をさらに有する粉体の成膜方法。
【請求項4】
請求項において、
前記ジェットノズルに前記粉体を導入させるホッパーに、成膜された前記粉体を回収する粉体の成膜方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項において、
前記旋回流は、前記反応容器の底部に設けた排気ポートに向かうスパイラル下降流、または前記反応容器の頂部に設けた排気ポートに向かうスパイラル上昇流である粉体の成膜方法。
【請求項6】
導入される粉体のジェット流を噴出して、前記粉体を拡散するジェットノズルと、
原料ガスを供給する原料ガス源と、
大気圧プラズマにより活性化された反応ガスを生成する大気圧プラズマ源と、
前記ジェットノズルと、前原料ガス源と、前記大気圧プラズマ源と、が連結され、前記原料ガスと、活性化された前記反応ガスとの反応により、拡散された前記粉体に成膜する反応容器と、
を有し、
前記反応容器は平面視で断面が円形の周壁を含み、前記ジェットノズル、前記原料ガス源、および前記大気圧プラズマ源の各々は、前記反応容器の半径方向とは一定の角度で交差する方向から、拡散された前記粉体と、前記原料ガスと、大気圧プラズマにより活性化された前記反応ガスとを、それぞれ導入して旋回流を形成する粉体の成膜装置。
【請求項7】
請求項において、
前記反応容器は、前記原料ガスと性化された前記反応ガスとを前記旋回流の上流側からその順番で交互に繰り返し導入する複数の導入ポートを有する粉体の成膜装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記反応容器内から排気ガスを導出する排気部と、成膜された粉体を、前記排気ガスとは分離して回収する回収部と、をさらに有する粉体の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の成膜方法及び装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術は、基板上に成膜するだけでなく、粉体の表面に成膜することにも利用されている。その際、粉体は凝縮し易い。特許文献1には、真空容器内の炭素担体を攪拌あるいは回転させて分散させながらスパッタリングを行うことで、炭素担体の表面に成膜することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、真空容器自体は回転させず、真空容器内に配置された筒状の容器を真空容器に対して回転または搖動させて、粉体の表面にドライプロセスによりコーティングする技術が開示されている。
【0004】
本出願人による特許文献3は、共通の容器がセット可能な分散装置と成膜装置とを有し、分散装置が容器内の凝集している粉体を回転または揺動により拡散させた後に、成膜装置が容器内の拡散している粉体に成膜することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-38218号公報
【文献】特開2014-159623号公報
【文献】特許第6787621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2では、粉体への成膜動作中に、回転または揺動による粉体の分散動作を同時に実施しなければならない。成膜と同時に実施される分散のための回転速度には制約がある。そのため、比較的低い回転速度では、特に非加熱で成膜される粉体を十分に分散させることができない。特許文献3ではそのような弊害はないが、容器を拡散装置から成膜装置に移し換える必要がある。さらに、特許文献1~3はいずれも、回転または揺動機構を有する装置が、大型化、複雑化するという課題もある。特許文献1~3はいずれも、粉体を収容した真空容器または容器を回転させて粉体を拡散させることから、回転または揺動機構を有する装置が、大型化、複雑化するという課題もある。回転または揺動機構の摩耗部の定期的なメインテナンスも要する。それにより、成膜装置の導入コスト及びランニングコストが増大する。また、回転または揺動による粉体の拡散効果にも限界がある。
【0007】
本発明の目的は、回転または揺動機構を用いることなく確実に拡散された粉体に成膜する粉体の成膜方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、回転または揺動機構を用いることなく確実に拡散され、かつ、反応容器に連続的に供給される粉体に連続的に成膜する粉体の成膜方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、
粉体をジェットノズルに導入し、前記粉体のジェット流を噴出して、前記粉体を拡散する工程と、
反応容器内で、原料ガスと、プラズマにより活性化された反応ガスとの反応により、拡散された前記粉体に成膜する工程と、
を有する粉体の成膜方法に関する。
【0010】
本発明の一態様によれば、成膜対象である粉体を含むジェット流、好ましくは超音速ジェット流が生成される。ジェット流の速度では、粉体はその先端部から衝撃波が広がるので、凝縮している粉体同士は容易かつ確実に分離・拡散される。特に媒質中を伝わる振動の最高速度である音速を超える超音速では、拡散効果が大きい。拡散された粉体は反応容器に導入される。反応容器では、プラズマにより活性化された反応ガス(活性種またはイオン等)と原料ガスとの反応により、拡散されている粉体の表面が成膜される。
【0011】
(2)本発明の一態様(1)では、前記成膜工程は、前記反応容器内で、前記原料ガスと、大気圧プラズマにより活性化された前記反応ガスとを反応させる工程を含むことができる。このように、反応ガスを大気圧プラズマにより活性化することで、反応容器内を真空引きする必要がない。
【0012】
(3)本発明の一態様(2)では、前記反応容器から排気ガスを導出する工程と、成膜された粉体を、前記排気ガスとは分離して回収する工程と、をさらに有することができる。反応容器内を排気するとともに成膜された粉体を回収することで、粉体、原料ガス及び反応ガスとを反応容器に連続的に導入し、連続的に導入される粉体に逐次成膜することができる。それによりスループットが向上する。成膜された粉体は、例えば反応容器に接続された貯蔵庫に貯蔵することができる。あるいは、成膜された粉体は、粉体ホッパーに戻し供給しても良い。こうすると、粉体に対して繰り返し成膜工程を実施することができる。この場合、繰り返される成膜工程で同一の原料ガスを用いることで同種膜を粉体に積層することができる。あるいは、繰り返される成膜工程で異種の原料ガスを用いることで異種膜を粉体に積層することができる。
【0013】
(4)本発明の一態様(2)または(3)では、前記導入工程は、前記反応容器内で、拡散された前記粉体と、前記原料ガスと、大気圧プラズマにより活性化された前記反応ガスとを、それぞれ旋回させることができる。それにより、旋回流の中で、原料ガス及び反応ガスの反応と、粉体への成膜とが効率的に実施される。旋回流は、反応容器の底部に設けた排気ポートに向かうスパイラル下降流とするか、あるいは、反応容器の頂部に設けた排気ポートに向かうスパイラル上昇流とすることができる。
【0014】
(5)本発明の他の態様は、
導入される粉体のジェット流を噴出して、前記粉体を拡散するジェットノズルと、
原料ガスと、プラズマにより活性化された反応ガスとの反応により、拡散された前記粉体に成膜する反応容器と、
を有する粉体の成膜装置に関する。
【0015】
本発明の他の態様(5)によれば、ジェットノズルと反応容器とを有する成膜装置で、本発明の一態様(1)に係る粉体の成膜方法を好適に実施することができる。
【0016】
(6)本発明の他の態様(5)では、前記ジェットノズルと、前記原料ガスを供給する原料ガス源と、大気圧プラズマにより活性化された前記反応ガスを生成する大気圧プラズマ源と、を前記反応容器に連結することができる。こうして、本発明の一態様(2)を好適に実施することができる。
【0017】
(7)本発明の他の態様(6)では、前記反応容器内から排気ガスを導出する排気部と、成膜された粉体を、前記排気ガスとは分離して回収する回収部と、をさらに有することができる。こうして、本発明の一態様(3)を好適に実施することができる。
【0018】
(8)本発明の他の態様(6)または(7)では、前記反応容器は平面視で断面が円形の周壁を含み、前記ジェットノズル、前記原料ガス源、および前記大気圧プラズマ源の各々は、前記反応容器の半径方向とは一定の角度で交差する方向から、拡散された前記粉体と、前記原料ガスと、大気圧プラズマにより活性化された前記反応ガスとを、それぞれ導入することができる。こうすると、本発明の一態様(4)を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置を示す図である。
図2図1に示すジェットノズルの概略断面図である。
図3図1に示す大気圧プラズマ源の概略断面図である。
図4図1に示す排気・粉体導出ポートに連結される構造を示す図である。
図5】排気・粉体導出ポートに連結される構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0021】
1.成膜装置
図1に、本実施形態の成膜装置1を示す。成膜装置1は、少なくとも一つのジェットノズル10と、少なくとも一つ例えば3つの大気圧プラズマ源20と、反応容器30と、を含む。反応容器30は、少なくとも一つの粉体導入ポート31と、少なくとも一つ例えば3つの原料ガス導入ポート32と、、少なくとも一つ例えば3つの大気圧プラズマ流導入ポート33と、少なくとも一つの排気・粉体導出ポート34とを含むことができる。この場合、原料ガス導入ポート32は、流量制御器(MFC)4A及びバルブ4Bを介して原料ガス源4と接続される。ここで、原料ガス源4は、原料ガスの他に不活性のキャリアガスを含むことができる。ジェットノズル10は、粉体導入ポート11Aと、ガス導入ポート12Aとを含む。粉体導入ポート11Aは、粉体ホッパー2と接続され、粉体が導入される。ガス導入ポート12Aは、流量制御器(MFC)3A及びバルブ3Bを介して、例えば不活性Arのガス源3と接続される。なお、ガス源3を原料ガス源4としても良い。この場合、原料ガス導入ポート32は不要となる。ジェットノズル10は、ガス(不活性ガスまたは原料ガス)と拡散された粉体とを含む二相噴出流(ジェット流)を吐出する。大気圧プラズマ源20は、活性化された反応ガスを含む大気圧プラズマ流を生成する。大気圧プラズマ源20には、流量制御器(MFC)5A及びバルブ5Bを介して反応ガス源5が接続される。ここで、反応ガス源5は、反応ガスの他に不活性のキャリアガスを含むことができる。
【0022】
反応容器30は、粉体と、プラズマ源からのプラズマ流と、原料ガスとが導入されて、粉体に成膜する。成膜された粉体及びガスは、反応容器30の例えば底部に設けられる排気・粉体導出ポート34を介して排出される。反応容器30内のガスは排気される一方で、成膜された粉体は粉体貯蔵庫(広義には回収部)7に貯蔵(回収)される(図4)。
【0023】
2.ジェットノズル
図2は、図1に示すジェットノズル10の概略断面図である。ジェットノズル10は、粉体と反応ガスとを含む超音速ジェット流F1を生成して、超音速により粉体が拡散される二相噴流F2を噴出する。
【0024】
ジェットノズル10は、図2示すように、例えば粉体ノズル11と、ガスノズル12と、混合管路13とを含むことができる。粉体ノズル11は、第1方向Aの上流端に粉体導入ポート11Aを、下流端に粉体導出ポート11Bを含む。ガスノズル12は、例えば粉体ノズル11の周囲に設けられ、ガスノズル12の内壁と粉体ノズル11の外壁との間にガスの通路が形成される。ガスノズル12は、例えば周壁にガス導入ポート12Aを、第1方向Aの下流端にガス導出ポート12Bを含む。ガス導出ポート12Bの周壁は、第1方向Aの下流に向かうに従い縮径している。
【0025】
本実施形態では、図1に示すように、ガスは例えば不活性ガス源3から流量制御器3A、バルブ3B及びガス導入ポート12Aを介してガスノズル12内に圧送される。このガスは、縮径しているガス導出ポート12Bを通過することで超音速化される。ガスがガス導出ポート12Bより噴出されると、粉体ノズル11内は負圧となる。それにより、粉体は、粉体ホッパー2から粉体導入ポート11Aを介して粉体ノズル11内に吸引される。
【0026】
粉体と超音速のガスとが混合される混合管路13では、粉体(固相)とガス(気相)とを含む二相の超音速ジェット流F1が生成される。混合管路13では、超音速となる粉体の先端部から衝撃波が広がるので、凝縮している粉体同士は容易かつ確実に分離・拡散される。なお、例えば特開平10-85634に開示されたインジェクターは、液相と気相を含む二相の超音速ジェット流を噴出させるものであり、固相(粉体)と気相(例えば不活性ガス)を含む二相の超音速ジェット流を噴出させるものではない。
【0027】
本実施形態では、ジェットノズル10は、混合管路13の下流端に、第1方向Aの下流に向かうに従い拡径するディフューザー14を有しても良い。ディフューザー14では、速度エネルギーを吐出圧力に変換することができる。その際、ディフューザー14内で発生するキャビテーション現象により、粉体の拡散を促進することができる。ただし、ジェットノズル10は、ディフューザー14を有せずに、超音速ジェット流F1として二相噴流F2を噴出させてもよい。
【0028】
こうして、ジェットノズル10の混合管路13またはディフューザー14から、超音速により拡散された粉体を含む二相噴流F2を噴出させることができる。つまり、回転または揺動機構を用いることなく拡散された粉体と、キャリアガスとして機能するガスとを含む二相噴流F2を生成することができる。
【0029】
3.プラズマ源
図3は、図1に示す大気圧プラズマ源20の概略断面図である。大気圧プラズマ源20は、例えば、接地される外管21と、外管21内に配置される高電圧電極22とを含む。高電圧電極22には高電圧の交流電源23が接続される。外管21の内表面と、高電圧電極22の外表面とは、誘電体により被覆される。また、外管21に設けられる水路21Aと、高電圧電極22に設けられる水路22Aには、冷却水が供給されても良い。外管21の反応ガス導入ポート20Aには、流量制御器(MFC)5A及びバルブ5Bを介して反応ガス源5が接続される。外管21の大気圧プラズマ流導出ポート20Bは、反応容器30の大気圧プラズマ流導入ポート33に接続される。外管21と高電圧電極22との間に高電圧電界が形成され、反応ガス源5から反応ガスが導入されると、反応ガスを電離させて、大気圧プラズマ流F3を生成することができる。なお、外管21の内表面と、高電圧電極22の外表面とは、誘電体により被覆される。
【0030】
4.反応容器
反応容器30には、粉体を含む二相噴流F2と大気圧プラズマ流F3と原料ガスとが導入される。大気圧プラズマ流F3中の活性化された反応ガス(イオン、活性種等)は、原料ガスと反応する。その反応により、大気圧プラズマ流F3中の拡散された粉体の表面に成膜することができる。なお、上述した通り二相噴流F2は、粉体と、原料ガスとを含む二相噴流であっても良い。この場合、反応容器30に原料ガスを別途導入する必要はなくなる。
【0031】
ここで反応容器30は平面視で断面が円形の周壁30Aを含むことができる。ジェットノズル10、原料ガス源4、および大気圧プラズマ源20の各々は、反応容器30の半径方向とは一定の角度で交差する方向から、二相噴流F2と、原料ガスと、大気圧プラズマ流F3とを、それぞれ導入することができる。換言すれば、反応容器30に設けられた粉体導入ポート31、原料ガス導入ポート32及び大気圧プラズマ流導入ポート33は、反応容器30の半径方向とは一定の角度で交差する方向に沿って形成される。そして、二相噴流F2と、原料ガスと、大気圧プラズマ流F3とは、反応容器30内に所定の圧力例えば0.2Pa以上の圧力でされる。こうすると、図4に破線で示すように、反応容器30内で、拡散された粉体と、原料ガスと、大気圧プラズマにより活性化された反応ガスとが、それぞれ周壁30Aに沿って旋回される旋回流(スパイラル下降流)F4となる。それにより、旋回流F4の中で、原料ガス及び反応ガスの反応と、粉体への成膜とが効率的に実施される。
【0032】
反応容器30は、周壁30Aの下端に、下方に向かうに従い縮径するテーパー壁30Bを有することができる。こうすると、旋回流F4は図4に示すようにスパイラル下降流となる。それにより、スパイラル下降流F4の中で、原料ガス及び反応ガスの反応と、粉体への成膜とが効率的に実施される。テーパー壁30Bの底部に排気・粉体導出ポート34があると、成膜された粉体は排気ガスと共に反応容器30の外部に導出される。なお、反応容器30の周壁30A及びテーパー壁30Bは、セラミック等のライナーで被覆することができる。
【0033】
反応容器30は、成膜中に排気することができる。二相噴流F2と、原料ガスと、大気圧プラズマ流F3とが反応容器30内に例えば0.2Pa以上の圧力でされるので、排気ポンプ6が必ずしも無くても反応容器30内の排気ガスを排気できる。こうすると、大気圧プラズマ流F3と原料ガスとが反応容器30に連続的に導入されて、反応容器30に連続的に供給される粉体に成膜することができる。成膜された粉体は、自重によって粉体貯蔵庫7に回収される。反応容器30内の排気ガスは、排気ポンプ6により排気管37に強制排気されると、粉体と排気ガスとの分離が容易となる。
【0034】
反応容器30の例えば底部に設けられる排気・粉体導出ポート34には、図4に示すように、排気・粉体導出管35が連結される。排気・粉体導出管35は、排気ポート36を介して排気管37と連結される。排気ポート36は、排気管37に接続される。排気管37は、バルブ6Aを介して排気ポンプ6と連結されて排気される。排気ポート36には、例えば、粉体を通過させず気体を通過させるフィルター36Aを有することができる。フィルター36Aで排気管37への通過が阻止された粉体は排気・粉体導出管35中を落下して、粉体導出ポート38を介して粉体貯蔵庫7に貯蔵される。フィルター36Aを清掃する機構を設け、フィルター36Aのメッシュが粉体で塞がれて排気効率が低下することを防止してもよい。
【0035】
図5は、図4とは異なる変形例を示す。図5に示す反応容器40は、周壁40Aの上端に、上方に向かうに従い縮径するテーパー壁40Bを有することができる。こうすると、旋回流F5は図5に示すようにスパイラル上昇流となる。それにより、スパイラル上昇流F5の中で、原料ガス及び反応ガスの反応と、粉体への成膜とが効率的に実施される。テーパー壁40Bの頂部に排気・粉体導出ポート44があると、成膜された粉体は排気ガスと共に容器40の外部に導出される。なお、反応容器40の周壁40A及びテーパー壁40Bもまた、セラミック等のライナーで被覆することができる。
【0036】
この場合も、反応容器40は、成膜中に排気することができる。二相噴流F2と、原料ガスと、大気圧プラズマ流F3とが反応容器30内に例えば0.2Pa以上の圧力でされるので、排気ポンプ6が必ずしも無くても反応容器40内の排気ガスを排気できる。こうすると、大気圧プラズマ流F3と原料ガスとが反応容器40に連続的に導入されて、反応容器40に連続的に供給される粉体に成膜することができる。
【0037】
反応容器30の頂部に設けられる排気・粉体導出ポート44には、図5に示すように、排気・粉体導出管45が連結される。排気・粉体導出管45は、下流側に逆U字管45Aを含むことができる。排気・粉体導出管45は、排気ポート46を介して排気管37と連結される。排気ポート36は、排気管37に接続される。排気管37は、必要により、バルブ6Aを介して排気ポンプ6と連結されて排気される。排気ポート46はフィルター46Aを有する。フィルター46Aで排気管37への通過が阻止された粉体は排気・粉体導出管45の逆U字管45A中を落下して、排気と分離される。この場合も、反応容器40内の排気ガスは、排気ポンプ6により排気管37に強制排気されると、粉体と排気ガスとの分離が容易となる。
【0038】
U字管45Aの出口に設けられる粉体導出ポート47は、図4の粉体貯蔵庫(広義には回収部)7に連結されるか、あるいは、図5に示すようにシューター48を介して粉体ホッパー(広義には回収部)2と連結されても良い。図5の例によれば、成膜された粉体を、粉体ホッパー2から再度、反応容器40に供給することができ、それにより、粉体に対して複数回の成膜工程を実施することができる。
【0039】
粉体に対して同一膜種の成膜工程を繰り返することで、厚膜化が可能となる。一方、粉体に異種膜を積層することもできる。この場合、例えば図1に示す複数例えば3つの原料ガス導入ポート32に接続される原料ガス源4に、それぞれ異なる原料ガスを収容しておくことができる。一又は複数回の成膜工程毎に、供給される原料ガスを変更することで、粉体に異種膜を積層することができる。
【0040】
5.粉体への成膜
粉体は、反応ガスと原料ガスとを選択することで、種々の膜を形成することができる。例えば、粉体に酸化膜を形成することができる。この場合、反応ガスとして酸化ガスが用いられる。酸化ガスとして、キャリアガス例えばアルゴンArと水蒸気との混合ガスを挙げることができる。この混合ガスが大気圧プラズマ源20に供給されると、Ar+HO→Ar+OH+Hとなり、OHラジカル(OH)を生成できる。一方、原料ガスとして例えばТMA(Al(CH)が、例えばArをキャリアガスとして、供給される。こうすると、ТMA(Al(CH)がOHラジカル(OH)と反応して、酸化アルミニウムAlが生成される。それにより、粉体の表面は酸化膜により被覆される。
【0041】
粉体に窒化膜を形成することができる。この場合、反応ガスとして窒化ガスNHを用いることができる。窒化ガスNHが大気圧プラズマ源20に供給されると、NHラジカルが生成される。一方、原料ガスとして例えばTDMAS(SiH[N(CH)を用いると、NHラジカルとTDMASとの反応により粉体上にSiNを成膜することがでる。あるいは、原料ガスとして例えばTDMAT(Ti[N(CH)を用いると、NHラジカルとTDMATとの反応により、粉体上にTiNを成膜することができる。
【0042】
粉体に金属膜を形成することができる。この場合、反応ガスとして例えばハロゲンガスを用いることができる。ハロゲンが大気圧プラズマ源20に供給されると、例えばClラジカルが生成される。一方、原料ガスとして例えば昇華されたCuClを用いると、CuCl+Cl→Cu+Cl↑の反応により、銅Cuを粉体上に成膜することができる。
【0043】
なお、反応ガスの活性化は、反応容器30内で実施しても良い。また、大気圧プラズマは、高電圧電界を用いるものに限らず、例えば高周波やマイクロ波を用いても良い。
【符号の説明】
【0044】
1…成膜装置、2…粉体ホッパー、3…不活性ガス源、4…原料ガス源、5…反応ガス源、6…排気ポンプ、7…粉体貯蔵庫、10…インジェクター、11…粉体ノズル、11A…粉体導入ポート、11B…粉体導出ポート、12…反応ガスノズル、11A…反応ガス導入ポート、11B…反応ガス導出ポート、13…混合管路、14…ディフューザー、20…大気圧プラズマ源、20A…反応ガス導入ポート、20B…大気圧プラズマ流導出ポート、21…外管、21A…水路、22…高電圧電極、22A…水路、23…交流電源、30、40…反応容器、30A、40A…周壁、30B、40B…テーパー壁、31…粉体導入ポート、32…原料ガス導入ポート、33…大気圧プラズマ流導入ポート、34、44…排気・粉体排出ポート、35、45…排気・粉体排出管、36、46…排気ポート、36A、46A…フィルター、37…排気管、38、47…粉体排出ポート、45A…逆U字管、48…シューター、F1…超音速ジェット流、F2…二層噴流、F3…プラズマ流、F4…旋回流(スパイラル下降流)、F5…旋回流(スパイラル上昇流)
【要約】
【課題】 回転または揺動機構を用いることなく拡散されて供給される粉体に成膜する粉体の成膜方法及び装置を提供すること。
【解決手段】 粉体の成膜方法は、粉体をジェットノズル10に導入し、粉体のジェット流を噴出して、粉体を拡散する工程と、反応容器30内で、原料ガスと、活性化された反応ガスとの反応により、拡散された粉体に成膜する工程と、を有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5