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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】半田付け装置及び半田付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/005 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
B23K1/005 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021201862
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2021-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521545260
【氏名又は名称】アポロソルダーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】多田 浩
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-264844(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065065(WO,A1)
【文献】特開2018-186180(JP,A)
【文献】特開2009-28781(JP,A)
【文献】特表2004-534409(JP,A)
【文献】特開2018-20326(JP,A)
【文献】特開平6-23530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00 - 3/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を用いて半田付けする半田付け装置において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、前記複数の挟持片を閉じることにより、半田片を挟持すると共に上部開口と下部開口を有する中空空間を形成する挟持体と、
半田片を挟持する挟持体が半田付け部位の上方にセットされたときに、挟持されている半田片に前記中空空間の上部開口を通してレーザー光を照射することができるレーザー光源と、を備えており、
照射したレーザー光の熱で前記挟持されている半田片を溶融して、前記中空空間の下部開口から半田付け部位に流下させることを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
レーザー光を用いて半田付けする半田付け装置において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持片の内面に、前記複数の挟持片を閉じることにより半田片を挟持する筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体と、
半田片を挟持する挟持体が前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けられて半田片が半田付け部位の上方に位置するようにセットされたときに、挟持されている半田片に上方からレーザー光を照射することができるレーザー光源と、を備えており、
照射したレーザー光の熱で前記挟持されている半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から半田付け部位に流下させることを特徴とする半田付け装置。
【請求項3】
基板を貫通するスルーホールの周囲に形成されるランドと、スルーホールに挿通される取付部品の端子ピンを、レーザー光を用いて半田付けする半田付け装置において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持片の内面に、前記複数の挟持片を閉じることにより半田片を挟持する筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体と、
半田片を挟持する挟持体が前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けられて半田片が端子ピンの上面を覆うようにセットされたときに、挟持されている半田片に上方からレーザー光を照射することができるレーザー光源と、を備えており、
照射したレーザー光の熱で前記挟持されている半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から流下させることを特徴とする半田付け装置。
【請求項4】
前記挟持体は、前記各挟持片が前記分割筒状部の筒軸方向の一端に連続形成されて該一端から広がる分割錐台状部を有しており、前記複数の挟持片が閉じることにより前記筒状空間と錐台状空間が連続してなる漏斗状空間を形成することを特徴とする請求項2又は3記載の半田付け装置。
【請求項5】
前記挟持体を半田付け部位に近接させてセットすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の半田付け装置。
【請求項6】
半田片にレーザー光を照射する前に、レーザー光で半田付け部位を予熱することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の半田付け装置。
【請求項7】
レーザー光を用いて半田付けする半田付け方法において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、前記複数の挟持片を閉じることにより上下に開口を有する中空空間を形成する挟持体で半田片を挟持し、
半田片を挟持した挟持体を半田付け部位の上方にセットし、
前記挟持している半田片に前記中空空間の上部開口を通してレーザー光を照射し、
レーザー光の熱で前記挟持している半田片を溶融して、前記中空空間の下部開口から半田付け部位に流下させることにより半田付けすることを特徴とする半田付け方法。
【請求項8】
レーザー光を用いて半田付けする半田付け方法において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持片の内面に前記複数の挟持片を閉じることにより筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体で半田片を挟持し、
前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けて、挟持している半田片を半田付け部位の上方に位置するように前記挟持体をセットし、
前記挟持している半田片に上方からレーザー光を照射し、
照射したレーザー光の熱で前記挟持している半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から半田付け部位に流下させることにより半田付けすることを特徴とする半田付け方法。
【請求項9】
基板を貫通するスルーホールの周囲に形成されるランドと、スルーホールに挿通される取付部品の端子ピンを、レーザー光を用いて半田付けする半田付け方法において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持体の内面に、前記複数の挟持片を閉じることにより筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体で半田片を挟持し、
前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けて、挟持している半田片をスルーホールに挿通された端子ピンの上部を覆うように前記挟持体をセットし、
前記挟持している半田片に上方からレーザー光を照射し、
照射したレーザー光の光で前記挟持している半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から半田付け部位に流下させることにより半田付けすることを特徴とする半田付け方法。
【請求項10】
前記挟持体を、前記各挟持片が前記分割筒状部の筒軸方向の一端に連続形成されて該一端から広がる分割錐体状部を有するものとし、前記複数の挟持片を閉じることにより漏斗状空間を形成させるようにしたことを特徴とする請求項8又は9記載の半田付け方法。
【請求項11】
前記挟持体を半田付け部位に近接させてセットすることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の半田付け方法。
【請求項12】
半田片にレーザー光を照射する前に、レーザー光で半田付け部位を予熱することを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の半田付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け装置及び半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10(a)に示すように、レーザー光Rを用いて、回路基板を貫通するスルーホールHの周囲に形成されるランドLと、スルーホールHに挿通される電子部品の端子ピンPNを半田付けする装置が用いられている(例えば特許文献1参照。)。上記装置は、回路基板に向けてレーザー光Rを照射し、スリーブ状のガイドGから供給される糸半田Sをレーザー光Rの熱で溶融することにより非接触で半田付けが行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-1521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一方で糸半田Sは、図10(b)に示すように、軸心部にフラックス層Fがあり、フラックスは融点が低いため、レーザー光の熱で気化膨張したフラックスがボール状に溶融した半田を周囲へ飛散させて、導通不良その他の不具合を引き起こすという問題がある。それによりスルーホールHへの半田充填量が安定せず、各部位への半田供給量も安定しないという問題もある。また、糸半田Sが溶融する前にレーザー光Rが端子ピンPNに照射されると端子ピンPNに焼けを生じ、溶融した半田がスルーホールHを閉じる前にレーザー光RがスルーホールHを通り抜けて電子部品の本体に焼けを生じ、更に溶融した半田でレーザー光Rが反射されて半田付け部位の周囲に焼けを生じるという問題がある。
【0005】
糸半田に代えて半田ペーストを端子ピンの上部に載せれば、端子ピンやスルーホールが半田ペーストで覆われて、レーザー光による端子ピンの焼けやスルーホールの通り抜けはなくなるが、ペーストは塗布量が安定せず、塗布時間が長くかかり工程が増えて非効率である。半田ペーストを用いても溶融した半田がレーザー光を反射して周囲に焼けを生じる問題がある。また、供給された半田ペーストでレーザー照射前に流れたものは未溶融のままで残って周囲に拡散し、導通不良その他の不具合を引き起こす。そして、何しろ半田ペーストは高価である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、レーザー光を用いて基板を貫通するスルーホールの周囲に形成されるランドとスルーホールに挿通される電子部品の端子ピンなどを半田付けする装置及び方法において、半田の飛散や端子ピン・電子部品等の焼けを防止し、スルーホール等への半田充填量を安定させることを安価で効率的に実現すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、
レーザー光を用いて半田付けする半田付け装置において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、前記複数の挟持片を閉じることにより、半田片を挟持すると共に上部開口と下部開口を有する中空空間を形成する挟持体と、
半田片を挟持する挟持体が半田付け部位の上方にセットされたときに、挟持されている半田片に前記中空空間の上部開口を通してレーザー光を照射することができるレーザー光源と、を備えており、
照射したレーザー光の熱で前記挟持されている半田片を溶融して、前記中空空間の下部開口から半田付け部位に流下させることを特徴とする半田付け装置
を提供する。
【0008】
請求項2の発明は、
レーザー光を用いて半田付けする半田付け装置において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持片の内面に、前記複数の挟持片を閉じることにより半田片を挟持する筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体と、
半田片を挟持する挟持体が前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けられて半田片が半田付け部位の上方に位置するようにセットされたときに、挟持されている半田片に上方からレーザー光を照射することができるレーザー光源と、を備えており、
照射したレーザー光の熱で前記挟持されている半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から半田付け部位に流下させることを特徴とする半田付け装置
を提供する。
【0009】
請求項3の発明は、
基板を貫通するスルーホールの周囲に形成されるランドと、スルーホールに挿通される取付部品の端子ピンを、レーザー光を用いて半田付けする半田付け装置において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持片の内面に、前記複数の挟持片を閉じることにより半田片を挟持する筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体と、
半田片を挟持する挟持体が前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けられて半田片が端子ピンの上面を覆うようにセットされたときに、挟持されている半田片に上方からレーザー光を照射することができるレーザー光源と、を備えており、
照射したレーザー光の熱で前記挟持されている半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から流下させることを特徴とする半田付け装置
を提供する。
【0010】
請求項4の発明は、
前記挟持体は、前記各挟持片が前記分割筒状部の筒軸方向の一端に連続形成されて該一端から広がる分割錐台状部を有しており、前記複数の挟持片が閉じることにより前記筒状空間と錐台状空間が連続してなる漏斗状空間を形成することを特徴とする請求項2又は3記載の半田付け装置
を提供する。
【0011】
請求項5の発明は、
前記挟持体を半田付け部位に近接させてセットすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の半田付け装置
を提供する。
【0012】
請求項6の発明は、
半田片にレーザー光を照射する前に、レーザー光で半田付け部位を予熱することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の半田付け装置
を提供する。
【0013】
請求項7の発明は、
レーザー光を用いて半田付けする半田付け方法において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、前記複数の挟持片を閉じることにより上下に開口を有する中空空間を形成する挟持体で半田片を挟持し、
半田片を挟持した挟持体を半田付け部位の上方にセットし、
前記挟持している半田片に前記中空空間の上部開口を通してレーザー光を照射し、
レーザー光の熱で前記挟持している半田片を溶融して、前記中空空間の下部開口から半田付け部位に流下させることにより半田付けすることを特徴とする半田付け方法
を提供する。
【0014】
請求項8の発明は、
レーザー光を用いて半田付けする半田付け方法において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持片の内面に前記複数の挟持片を閉じることにより筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体で半田片を挟持し、
前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けて、挟持している半田片を半田付け部位の上方に位置するように前記挟持体をセットし、
前記挟持している半田片に上方からレーザー光を照射し、
照射したレーザー光の熱で前記挟持している半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から半田付け部位に流下させることにより半田付けすることを特徴とする半田付け方法
を提供する。
【0015】
請求項9の発明は、
基板を貫通するスルーホールの周囲に形成されるランドと、スルーホールに挿通される取付部品の端子ピンを、レーザー光を用いて半田付けする半田付け方法において、
開閉可能な複数の挟持片からなり、各挟持体の内面に、前記複数の挟持片を閉じることにより筒状空間を形成する分割筒状部を有する挟持体で半田片を挟持し、
前記筒状空間の筒軸を略鉛直方向に向けて、挟持している半田片をスルーホールに挿通された端子ピンの上部を覆うように前記挟持体をセットし、
前記挟持している半田片に上方からレーザー光を照射し、
照射したレーザー光の熱で前記挟持している半田片を溶融して、前記筒状空間の下部開口から半田付け部位に流下させることにより半田付けすることを特徴とする半田付け方法
を提供する。
【0016】
請求項10の発明は、
前記挟持体を、前記各挟持片が前記分割筒状部の筒軸方向の一端に連続形成されて該一端から広がる分割錐体状部を有するものとし、前記複数の挟持片を閉じることにより漏斗状空間を形成させるようにしたことを特徴とする請求項8又は9記載の半田付け方法
を提供する。
【0017】
請求項11の発明は、
前記挟持体を半田付け部位に近接させてセットすることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の半田付け方法
を提供する。
【0018】
請求項12の発明は、
半田片にレーザー光を照射する前に、レーザー光で半田付け部位を予熱することを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の半田付け方法
を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーザー光を用いて半田付けする装置及び方法において、半田の飛散や周囲の焼けを防止し、半田付け部位への半田充填量を安定させることを安価で効率的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の半田付け装置の概略構成を示す図で、破断線の下側は拡大表示された断面図。
図2】(a)挟持片が開いた状態を示す斜視図、(b)挟持片が閉じた状態を示す斜視図、(c)上記(b)のX-X断面図、及び(d)閉じた挟持片の合わせ部の係合状態を示す断面図。
図3】糸半田を定量カットして挟持体で移動させるまでの過程を示す断面図。
図4】カットした半田片を基板の上方にセットした状態を示す断面図。
図5】レーザー光の照射を開始した状態を示す断面図。
図6】半田片が溶融し始めた状態を示す断面図。
図7】溶融半田が挟持体から流下する状態を示す断面図。
図8】半田がフィレットを形成した状態を示す断面図。
図9】半田付けが終了した状態を示す断面図。
図10】(a)従来のレーザー半田付けの様子を示す斜視図、(b)糸半田の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態である半田付け装置について図面参照しながら説明する。本実施形態では、回路基板(基板)Bを貫通するスルーホールHの周囲に形成されるランドLと、スルーホールHに挿通される電子部品(取付部品)の端子ピンPNと、をレーザー光Rを用いて半田付け(半田接合)する。
【0022】
(半田付け装置1)
図1は、半田付け装置1(以下、単に「装置1」という。)の概略構成の一部を示しており、破断線の下側は部分的に拡大表示されている。装置1は、半田片Pを挟持して該半田片Pを半田付け部位(ランドLと端子ピンPN)の上方位置で保持するようにセットする挟持体2と、挟持体2の上方に設けられて、挟持体2に挟持されている半田片Pにレーザー光Rを照射するレーザー光源3と、糸状に連続する糸半田Sを定量カットして生成した微小円筒形状の半田片Pを挟持体2に引き渡す半田供給部4(図3)と、を備え、半田片Pをレーザー光Rの熱で溶融して半田付け部位に流下させることにより半田付けする。なお、挟持体2とレーザー光源3は、ロボットアーム等の駆動機構(不図示)により一体的に移動する。
【0023】
(挟持体2)
挟持体2は、図2(a)~(c)に示すように、開閉機構(不図示)により開閉可能な一対の挟持片21、21で構成される。各挟持片21、21は、相対向する内面に、筒軸を略鉛直方向に向けられた半割円筒状部21a、21aと、これらの筒軸方向の上端に連続形成されて上方へ広がる半割円錐台状部21b、21bと、を有している。両挟持片21、21が閉じられることにより、図2(b)~(c)に示すように、半田片P(一点鎖線で示す。)を挟持する円筒状空間2aと円錐台状空間2bが上下方向に連続的に設けられて、上部開口2cと下部開口2dを有し、レーザー光が周囲に漏れない中空空間(漏斗状空間)を形成する。
【0024】
円筒状空間2aは、糸半田Sの線径と略同径に形成されており、円筒形状の半田片Pを同軸状に立てた状態で挟持する。円錐台状空間2bは、円筒状空間2aの上端から擂鉢状に広がるように形成されて、円筒状空間2aに挟持される半田片Pの上部又は上方を包囲する。中空空間内で挟持された半田片Pに上部開口2cを通してレーザー光Rが照射され、その熱で溶融したフラックスと半田が下部開口2dを通して半田付け部位に流下する。挟持体2は、半田より融点が高く、半田濡れ性の低いセラミック、ガラス系材料あるいはステンレス、チタン等の金属系材料で形成されている。
【0025】
上記のとおりであるから、レーザー光Rで溶融したフラックスや半田は、周囲に飛散することなく半田付け部位へ速やかに流下することができる。なお、挟持片21、21の合わせ部には、図2(d)に示すように、周方向で相互に重なり合う段差状の遮光フランジ211、211を設けて、半田片Pの四囲を隙間なく覆うようにすることで、中空空間内に照射されたレーザー光が挟持体2の側面から外側へ漏れることは確実に防止される。なお、半田片Pを挟持体2で挟持することにより位置決めが安定的に行われるため、これを溶融するレーザー光Rの照射範囲を的確に絞ることができ、効率的に半田片付けされる。
【0026】
(レーザー光源3)
レーザー光源3は、レーザー光を発生する発振部(不図示)と、発振部の出力制御を行う制御部(不図示)と、発振部から発生したレーザー光を半田片Pに向けて集光しながら照射する光学系(不図示)と、を有してなる。
【0027】
(半田供給部4)
半田供給部4は 図3に示すように、台板状の下刃基台41と、板片状の上刃42と、押出ピン43とを備えてなり、下方から繰り出される糸半田Sを所定長さに切断することにより、微小円筒形状の半田片Pを生成し、これを挟持体2に供給し挟持させる。具体的には、まず、図3(a)に示すように、下刃基台41と上刃42にそれぞれ貫通形成されている刃孔41a、42aを一直線上に並ぶように位置合わせした状態において、これらの刃孔に下刃基台41側から糸半田Sを挿入して、図3(b)に示すように、上刃42を横方向に移動させて糸半田Sをせん断することにより所定長さの半田片Pを切り出す。
【0028】
更に半田片Pを刃孔42aに挿入したままで、上刃42を下刃基台41の上面に沿って横方向に移動させることにより、図3(c)に示すように、開いた状態で待機している挟持体2の下側へ半田片Pを移動させる。刃孔42aは下刃基台41から外れた位置にくるが、刃孔42aの下には押出ピン43があり、半田片Pが落下することはない。続いて、図3(d)に示すように、押出ピン43を作動させ、半田片Pを上刃42の刃孔42aから挟持体2の内側へ押し上げることで、図3(e)に示すように挟持体2に挟持させる。半田片Pを挟持した挟持体2は、図3(f)に示すように、不図示の駆動機構で移動させられ、後述するように半田片Pを半田付け部位の上方に位置するようにセットする。
【0029】
(装置1による半田付け)
以下、装置1による半田付けを、図4~9に基づき順を追って説明する。図4~9において端子ピンPNを備える電子部品の本体は図示省略されている。半田供給部4から供給された半田片Pを挟持した挟持体2は、図4に示すように、半田片Pで端子ピンPNの上面及びスルーホールHの上方を覆うように、且つ回路基板Bに近接してセットされる。なお、挟持体2に挟持されている半田片Pの下端位置は、挟持体2の下部開口2dよりも上方に控えられているため、回路基板Bより上方に突出している端子ピンPNの上部を挟持体2で周囲を覆うようにセットすることができ、挟持体2と回路基板Bの隙間を詰めることができる。
【0030】
次に、図5に示すように、半田片Pを溶融するレーザー光Rの照射を開始する。端子ピンPNやスルーホールHは、上方を半田片Pで覆われており、レーザー光Rを直接照射されることがない(レーザー光が遮断されている)ため、端子ピンPNやスルーホールHの下方にある電子部品の本体に焼けを生じることはない。レーザー光Rは、半田片Pを確実に溶融できるように半田片Pとその周囲を含む少し広い範囲に照射されるが、半田片Pの上部及びその周囲は円錐台状に広がる挟持体2の上部で包囲されているため、周囲(基板Bの半田付け部位以外の部分)にレーザー光による焼けを生じることはない。
【0031】
更に円筒状空間2aが、円筒形状の半田片Pと略同径に形成されており、挟持片21、21とこれらに挟持されている半田片Pの間にも隙間がなく、その間からレーザー光が下方に通過して焼けを生じることはない。上述のとおり、挟持体2は、半田片Pの四囲を隙間なく覆うように構成されており、挟持体2の側面からレーザー光が漏れることによる焼けを生じることもない。ところで、挟持体2の上部を円筒状にせずに円錐台状に傾斜させているのは、外側から斜めに入射してくるレーザー光を遮ることなく半田片Pに照射させる狙いがある。
【0032】
半田片Pにレーザー光Rが照射されて、その熱で溶融し始めると、図6に示すように、まず半田片Pは表面張力によりボール状に丸められた状態になるが、半田片Pの軸心部にあるフラックス層F(図10)が先行して溶融し、膨張したフラックスは、半田片Pの上端側から溢れ出し、挟持体2の内面壁を伝わって(矢印A)ランドLに向かって流下する。フラックスは半田片Pの下端側からも流下して、半田片P(フラックス層)の真下にある端子ピンPNを伝ってスルーホールH内に流れ始め、これらによりフラックスが半田付け部位に塗布されることになる。なお、フラックスが気化膨張しても、溶融半田は四囲を漏斗状の挟持体2で包囲されるように確り覆われているため、周囲に飛散することはなく、また、フラックスや半田が上方に溢れ出しても円錐台状空間2b内に堰き止められ、挟持体2の外側へ零れ落ちることはない。
【0033】
半田片Pが完全に溶融すると、図7に示すように、溶融半田は端子ピンPNに塗布されているフラックスに引かれるようにして、略鉛直方向に向けられた円筒状空間からスルーホールH内に向かって速やかに流下する。溶融半田が、図8に示すように、スルーホールHに進入して、ランドLと端子ピンPNを半田接合するフィレットFIを形成することにより、半田付けが完了して、ここでレーザー光Rの照射を停止する。なお、半田片Pは挟持されていたことでレーザー光の照射を受ける際の姿勢が安定しており、ひいては溶融の仕方や溶融にかかる時間が一定化するため、半田片の姿勢によって一部が溶融し切らずに残ってしまう等の仕損じは確実に防止される。そして、図9に示すように、挟持体2を退避させることで、装置1によるサイクル動作が完了する。
【0034】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態では、挟持体2をそれぞれ半割円筒状部21a及び半割円錐台状部21bを有する一対の挟持片21、21からなるものとしたが、挟持片は挟持体2を半割すなわち二分割したものに限る必要はなく、例えば三以上に分割したものとしても良い。また、挟持体2において円錐台状空間2bを設けることなく、円筒状空間2aのみを設けることとしても良く、かかる場合には、溶融したフラックスや半田が挟持体の上部から溢れ出すことがないように、挟持する半田片Pの上端位置を挟持体の上部開口よりも下方に控えるようにすることが好ましい。
【0035】
上記実施形態では、挟持体2の内部空間を円筒状空間2a及び円錐台状空間2bにより形成することとしたが、半田片Pを挟持して半田付け部位の上方にセットできるものであれば、例えば横断面を四角形等の多角形や楕円形とする他の筒状空間や錐台状空間により形成するようにしても良い。更には、挟持体の内面は必ずしも筒状や錐台状とする必要はなく、挟持片を閉じることにより、半田片を挟持することができ、挟持した半田片に上方からレーザー光を照射できる上部開口と、溶融した半田を下方に流下させられる下部開口を有し、内部に照射されたレーザー光を周囲に漏らさない中空空間を形成できるものであれば、他の形状を採用しても良く、半田付け部位の上方に位置するようにセットされた下部開口から半田付け部位に溶融半田を流下させることにより半田付けをすることができる。
【0036】
上記実施形態では、半田付け部位を予熱することなく、半田付け部位の上方に半田片Pをセットして半田片Pにレーザー光Rを照射したが、半田付け部位の上方に半田片Pをセットする前に又は半田片Pにレーザー光Rを照射する前に、レーザー光源3のレーザー光Rで端子ピンPNやランドLなどの半田付け部位を予熱しても良い。予熱部位に焼けを生じないように予熱部位に対するレーザー光Rの出力レベル及び照射時間を制御部により調整する。この場合、挟持体2とレーザー光源3を別々に移動させる個別の駆動機構を設けるか又はレーザー光源3とは別のレーザー光源を用いて予熱する必要がある。
【0037】
上記実施形態では、半田付けするための半田片Pとして、糸半田Sを定量カットしてなるペレット半田を用いることとしたが、予めボール状やシート状(箔状)に形成されているプリフォーム半田を用いることにしても良い。また、上記実施形態では、回路基板BのスルーホールHの周囲に形成したランドLと、スルーホールHに挿通した電子部品の端子ピンPNを半田付けする場合について説明したが、本発明は、基板に取り付けられる種々の取付部品の半田接合等、第一の部材に第二の部材を半田接合する様々な半田付けに適用することができる。その他、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々の変更をなし得るものである。
【符号の説明】
【0038】
1 半田付け装置
2 挟持体
2a 円筒状空間(筒状空間)
2b 円錐台状空間(錐台状空間)
2c 上部開口
2d 下部開口
21 挟持片
21a 半割円筒状部(分割筒状部)
21b 半割円錐台状部(分割錐台状部)
3 レーザー光源
4 半田供給部
P 半田片
S 糸半田
B 回路基板(基板)
H スルーホール
L ランド
PN 端子ピン
【要約】
【課題】 レーザー光を用いて第1の部材に第2の部材を半田付けする装置及び方法において、半田の飛散や周囲の焼けを防止し、半田付け部位への半田充填量を安定させることを安価で効率的に実現することを目的とする。
【解決手段】 第1の部材を第2の部材に半田付けする半田付け装置において、開閉可能な一対の半割クランプからなり、各半割クランプの相対向する内面に、両半割クランプを閉じることにより定量カットされた半田ペレットを挟持する筒状空間を形成する半筒状部を有するクランプと、
前記筒状空間の筒軸が略鉛直方向に向くように且つ挟持した半田ペレットが半田付け部位の上部を覆うように前記クランプがセットされた状態で半田ペレットに上方からレーザー光を照射するレーザー光源と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
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