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特許7013066キャリブレーションシステム及び描画装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】キャリブレーションシステム及び描画装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/24 20060101AFI20220124BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
G03F7/24
G03F7/20 505
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021524722
(86)(22)【出願日】2020-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2020018752
(87)【国際公開番号】W WO2020246200
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019106791
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594076533
【氏名又は名称】インスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雅史
【審査官】植木 隆和
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/24
G03F 7/20
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシート状をなし、円筒状をなす搬送ドラムの外周面の一部に支持されて長手方向に搬送される基板の露光面に向け、露光用のビームを照射する少なくとも1つの露光ヘッドを備える描画装置においてキャリブレーションを行うキャリブレーションシステムであって、
前記露光ヘッドから出射して前記露光面に入射する前記ビームの光路に対して挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されているときに前記ビームの少なくとも一部を該光路とは異なる方向に導く光学系と、
前記光学系を前記光路に対して挿抜する移動機構と、
前記光学系が前記光路に挿入されているときに前記光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも一部の該受光面における照射位置及び照射強度を検出して検出信号を出力する光センサと、
前記光センサから出力された検出信号に基づき、前記露光ヘッドから出射した前記ビームの少なくとも一部の前記受光面における照射位置及び照射強度を表すデータを生成する制御部と、
前記照射位置及び照射強度を表すデータをキャリブレーションデータとして記憶する記憶部と、
をキャリブレーションシステム。
【請求項2】
前記記憶部は、前記露光面における前記ビームの所定の照射位置及び照射強度に対応する前記受光面における基準照射位置及び基準照射強度を表す基準データをさらに記憶し、
前記制御部は、前記キャリブレーションデータ及び前記基準データに基づき、前記受光面に入射したビームの照射位置及び照射強度が所定の基準値の範囲に収まるか否かを判定する判定部を有する、
請求項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記判定部による判定結果に基づき、前記受光面に入射したビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかが前記基準値の範囲に収まらない場合、前記露光ヘッドから出射するビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかを補正するための補正値データを生成し、
前記記憶部は、前記補正値データをさらに記憶する、
請求項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項4】
前記露光ヘッドは、
レーザ光を出力する光源と、
前記レーザ光をビーム状に成形することによりビームを生成するビーム成形光学系と、
前記ビーム成形光学系により生成された前記ビームを走査するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーを回転させる駆動部と、
を有し、
前記制御部は、前記補正値データに基づいて、前記光源の出力と、前記駆動部の動作との少なくともいずれかを制御することにより、前記露光ヘッドから出射する前記ビームの照射強度と照射位置との少なくともいずれかを補正する、
請求項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項5】
前記露光ヘッドと前記搬送ドラムとの間隔を調整する調整機構をさらに備え、
前記制御部は、前記光センサから出力された前記ビームの照射位置を表す検出信号に基づいて、前記受光面における前記ビームの径を取得し、該ビームの径に基づいて前記調整機構を制御する、請求項のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項6】
前記光学系が前記光路から抜去されているときの前記露光面と、前記光学系が前記光路に挿入されているときの前記受光面とが共役である、請求項1~5のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項7】
前記光学系が前記光路から抜去されているときの前記露光ヘッドから前記露光面までの前記ビームの光路長と、前記光学系が前記光路に挿入されているときの前記露光ヘッドから前記受光面までの前記ビームの光路長とが等しい、請求項1~5のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項8】
前記光学系及び前記光センサは、互いの相対的な位置が固定されたユニットとして設けられ、
前記移動機構は、前記ユニットを前記光路に対して挿抜する、請求項1~のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項9】
前記光センサの位置は固定されており、
前記光学系により前記光路とは異なる方向に導かれた前記ビームの少なくとも一部を前記光センサの前記受光面の方向にさらに導く第2の光学系と、
前記第2の光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を前記受光面に結像させる第3の光学系と、
をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項10】
長尺のシート状をなし、円筒状をなす搬送ドラムの外周面の一部に支持されて長手方向に搬送される基板の露光面に向け、露光用のビームを照射する少なくとも1つの露光ヘッドを備える描画装置においてキャリブレーションを行うキャリブレーションシステムであって、
前記露光ヘッドから出射して前記露光面に入射する前記ビームの光路に対して挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されているときに前記ビームの少なくとも一部を該光路とは異なる方向に導く光学系と、
前記光学系を前記光路に対して挿抜する移動機構と、
前記光学系が前記光路に挿入されているときに前記光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも一部の該受光面における照射位置及び照射強度を検出して検出信号を出力する光センサと、
を備え、
前記光センサの位置は固定されており、
前記光学系により前記光路とは異なる方向に導かれた前記ビームの少なくとも一部を前記光センサの前記受光面の方向にさらに導く第2の光学系と、
前記第2の光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を前記受光面に結像させる第3の光学系と、
をさらに備えるキャリブレーションシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステムと、
円筒状をな前記基板を外周面の一部において支持すると共に、円筒の中心軸回りに回転することにより前記基板を搬送する搬送ドラムと、
前記基板の露光面に向けて露光用のビームを出射する少なくとも1つの露光ヘッドと、
を備える描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にパターンを描画する露光用の光ビームをキャリブレーションするキャリブレーションシステム及び描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機等の輸送機において使用される電子機器の数は増加の一途を辿っている。これに伴い、電子機器への電源供給や信号の送受信に用いられるワイヤーハーネスの数も増加している。その一方で、輸送機においては軽量化や省スペース化が要請されており、ワイヤーハーネスの増加に伴う重量増やスペース増が問題になっている。
【0003】
このような問題から、輸送機で用いられるワイヤーハーネスを、長尺のシート状をなすフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)により代替することも検討されている。
【0004】
長尺のシート状の基板に対するパターン形成技術として、例えば特許文献1には、長尺のシート状の基板を支持する支持面を有し、基板の長尺方向と交差する幅方向に関する支持面上の複数位置に基準マークが設けられた支持部材と、該支持部材で支持された基板を長尺方向に移動させる搬送装置と、支持面で支持された基板または支持面にビームのスポット光を投射しつつ、基板の幅方向の寸法よりも狭い範囲で走査し、該走査で得られる描画ラインに沿って所定のパターンが描画可能な複数の描画ユニットを含み、該複数の描画ユニットの各描画ラインによって基板上に描画されるパターン同士が基板の長尺方向への移動に伴って基板の幅方向に継ぎ合わされるように、複数の描画ユニットを基板の幅方向に配置した描画装置を備える基板処理装置が開示されている。
【0005】
また、非特許文献1には、ロールトゥロール(Roll To Roll)方式でフィルム搬送を停止することなく連続的に搬送しながら処理を行うために、アライメント計測、重ね合わせ露光、ワーク交換を並列に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/152217号
【非特許文献】
【0007】
【文献】鬼頭義昭、他、「ロールトゥロール方式高精度ダイレクトウェブ露光装置の開発」、映像情報メディア学会誌、第71巻、第10号、第J230~J235頁(2017)、一般社団法人映像情報メディア学会、2017年9月8日採録
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、自動車や航空機など高度な安全性が要求される機器においては、機器を構成する1つひとつの部品について高い信頼性を担保するため、トレーサビリティが必要とされている。そのため、パターン形成された基板に関しては、当該基板へのパターン形成工程において、露光用のビームの照射位置精度等を確認するためのキャリブレーションを定期的に行い、キャリブレーションデータを保存しておかなくてはならない。
【0009】
キャリブレーションに関し、特許文献1には、回転ドラムの外周面に形成された基準パターンに描画ビームを照射し、この描画ビームの反射光に基づいて、描画ビームによる描画ラインの配置状態又は相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)を求める技術が開示されている。特許文献1においては、キャリブレーションを行う際に、回転ドラムの外周面に形成された基準パターンにビームを照射する必要があるため、基板がセットされていない状態でキャリブレーションを行うか、又は、ビームが透過できる程度に透光性のある基板をセットし直さなくてはならない(引用文献1の段落0147参照)。
【0010】
しかしながら、例えば自動車において使用されるワイヤーハーネスをFPCで代替するためには、数m(例えば6m以上)の連続した配線パターンを基板に形成する必要がある。このように、長尺の基板に連続的なパターンを形成する場合、キャリブレーションを行うたびに、基板を取り外したり、キャリブレーション用の基板をセットし直したりすることは、非常に手間がかかると共に、位置合わせの精度が低下するおそれもあるため、非現実的である。つまり、特許文献1に開示された技術では、長尺の基板に連続的なパターンを形成する場合に、随時キャリブレーションを行うことが非常に困難である。
【0011】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、長尺のシート状の基板に対して連続的にパターンを形成する場合に、基板に照射される露光用のビームのキャリブレーションを随時行うことができるキャリブレーションシステム及び描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様であるキャリブレーションシステムは、長尺のシート状をなし、円筒状をなす搬送ドラムの外周面の一部に支持されて長手方向に搬送される基板の露光面に向け、露光用のビームを照射する少なくとも1つの露光ヘッドを備える描画装置においてキャリブレーションを行うキャリブレーションシステムであって、前記露光ヘッドから出射して前記露光面に入射する前記ビームの光路に対して挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されているときに前記ビームの少なくとも一部を該光路とは異なる方向に導く光学系と、前記光学系を前記光路に対して挿抜する移動機構と、前記光学系が前記光路に挿入されているときに前記光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも一部の該受光面における照射位置及び照射強度を検出して検出信号を出力する光センサと、を備えるものである。
【0013】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記光学系が前記光路から抜去されているときの前記露光面と、前記光学系が前記光路に挿入されているときの前記受光面とが共役であっても良い。
【0014】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記光学系が前記光路から抜去されているときの前記露光ヘッドから前記露光面までの前記ビームの光路長と、前記光学系が前記光路に挿入されているときの前記露光ヘッドから前記受光面までの前記ビームの光路長とが等しくても良い。
【0015】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記光学系及び前記光センサは、互いの相対的な位置が固定されたユニットとして設けられ、前記移動機構は、前記ユニットを前記光路に対して挿抜しても良い。
【0016】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記光センサの位置は固定されており、前記光学系により前記光路とは異なる方向に導かれた前記ビームの少なくとも一部を前記光センサの前記受光面の方向にさらに導く第2の光学系と、前記第2の光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を前記受光面に結像させる第3の光学系と、をさらに備えても良い。
【0017】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記光センサから出力された検出信号に基づき、前記露光ヘッドから出射した前記ビームの少なくとも一部の前記受光面における照射位置及び照射強度を表すデータを生成する制御部と、前記照射位置及び照射強度を表すデータをキャリブレーションデータとして記憶する記憶部と、をさらに備えても良い。
【0018】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記記憶部は、前記露光面における前記ビームの所定の照射位置及び照射強度に対応する前記受光面における基準照射位置及び基準照射強度を表す基準データをさらに記憶し、前記制御部は、前記キャリブレーションデータ及び前記基準データに基づき、前記受光面に入射したビームの照射位置及び照射強度が所定の基準値の範囲に収まるか否かを判定する判定部を有しても良い。
【0019】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記制御部は、前記判定部による判定結果に基づき、前記受光面に入射したビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかが前記基準値の範囲に収まらない場合、前記露光ヘッドから出射するビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかを補正するための補正値データを生成し、前記記憶部は、前記補正値データをさらに記憶しても良い。
【0020】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記露光ヘッドは、レーザ光を出力する光源と、前記レーザ光をビーム状に成形することによりビームを生成するビーム成形光学系と、前記ビーム成形光学系により生成された前記ビームを走査するポリゴンミラーと、前記ポリゴンミラーを回転させる駆動部と、を有し、前記制御部は、前記補正値データに基づいて、前記光源の出力と、前記駆動部の動作との少なくともいずれかを制御することにより、前記露光ヘッドから出射する前記ビームの照射強度と照射位置との少なくともいずれかを補正しても良い。
【0021】
上記キャリブレーションシステムは、前記露光ヘッドと前記搬送ドラムとの間隔を調整する調整機構をさらに備え、前記制御部は、前記光センサから出力された前記ビームの照射位置を表す検出信号に基づいて、前記受光面における前記ビームの径を取得し、該ビームの径に基づいて前記調整機構を制御しても良い。
【0022】
本発明の別の態様である描画装置は、円筒状をなす搬送ドラムであって、長尺のシート状をなす基板を外周面の一部において支持すると共に、円筒の中心軸回りに回転することにより前記基板を搬送する搬送ドラムと、前記基板の露光面に向けて露光用のビームを出射する少なくとも1つの露光ヘッドと、前記少なくとも1つの露光ヘッドのキャリブレーションを行う少なくとも1つのキャリブレーションシステムと、を備え、前記キャリブレーションシステムは、前記露光ヘッドから出射して前記露光面に入射する前記ビームの光路に対して挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されているときに前記ビームの少なくとも一部を該光路とは異なる方向に導く光学系と、前記光学系を前記光路に対して挿抜する移動機構と、前記光学系が前記光路に挿入されているときに前記光学系により導かれた前記ビームの少なくとも一部を受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも一部の該受光面における照射位置及び照射強度を検出して検出信号を出力する光センサと、を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、キャリブレーション時に、露光ヘッドから出射して基板に入射するビームの光路に光学系を挿入することにより、該ビームを該光路とは異なる方向に導き、光センサの受光面に入射させるので、搬送ドラムに基板をセットしたままの状態でキャリブレーションを行うことができる。従って、長尺のシート状の基板に対して連続的にパターンを形成する場合であっても、随時キャリブレーションを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画装置の概略構成を示す模式図である。
図2図1に示す描画装置の平面図である。
図3】露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
図4図1に示す露光ヘッドを基板側から見た模式図である。
図5】パターンが形成された基板を例示する模式図である。
図6図1に示すキャリブレーションユニット近傍を拡大して示す模式図である。
図7図6に示すセンサユニットを受光面の側から見た模式図である。
図8図1に示す制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図9図1に示す描画装置のキャリブレーション時における動作を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画装置の概略構成を示す模式図である。
図11図10に示すキャリブレーションユニット近傍を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係るキャリブレーションシステム及び描画装置について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0026】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画装置の概略構成を示す模式図である。図2は、同描画装置の平面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る描画装置1は、長尺のシート状をなす基板2を搬送する搬送システム3と、基板2に露光用のビームLを照射することによりパターンを形成する描画ユニット4と、搬送システム3及び描画ユニット4の動作を制御する制御装置5とを備える。以下においては、基板2の搬送方向をx方向、基板2の幅方向をy方向、鉛直方向をz方向(下向きが正)とする。
【0028】
本実施形態においては、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)を処理対象の基板2としている。FPCは、ポリイミド等の絶縁性を有する樹脂製のベースフィルムに銅等の金属箔を貼り合わせた、可撓性を有する回路基板である。基板2は、例えば数m~数十mの帯状に成形されたFPCであり、巻出しリール31にロール状に巻かれた状態から巻き出され、搬送システム3により搬送されつつ描画ユニット4によりパターンが形成された後、巻取りリール32に巻き取られる。このように、帯状のワークをロールから巻き出し、所定の処理を施した後でロールに巻き取る搬送方式は、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式とも呼ばれる。
【0029】
搬送システム3には、巻出しリール31を回転可能に支持する回転軸31aと、巻き取りリール32を回転可能に支持する回転軸32aと、搬送ドラム33と、搬送ドラム33の上流側(図1においては左側)及び下流側(図1においては右側)にそれぞれ設けられたテンションプーリ34、35と、複数の案内ローラ36、37とが設けられている。
【0030】
搬送ドラム33は、全体として円筒形状を有し、駆動源から供給される回転駆動力により回転する回転軸33aに支持されている。搬送ドラム33は、外周面33bの略上半分の領域において基板2を支持すると共に、自身が回転することにより基板2を搬送する。また、搬送ドラム33には、搬送ドラム33の回転量を測定するエンコーダ33cが設けられている。
【0031】
2つのテンションプーリ34、35の各々は、上下方向に移動可能な回転軸34a、35aに回転可能に支持され、搬送ドラム33よりも下方に設置されている。各回転軸34a、35aは、当該回転軸34a、35aを下方に向けて付勢するテンション調整機構が連結されている。このテンション調整機構により回転軸34a、35aを介してテンションプーリ34、35を下方に付勢することにより、搬送ドラム33に巻き掛けられた基板2を、所定のテンションがかかった状態で搬送することができる。
【0032】
各案内ローラ36は、回転軸36aに回転可能に支持されており、巻出しリール31から巻き出された基板2を上流側のテンションプーリ34に案内する。各案内ローラ37は、回転軸37aに回転可能に支持されており、パターン形成処理がなされた基板2を下流側のテンションプーリ35から巻き取りリール32に案内する。
【0033】
なお、搬送システム3の構成としては、ロールトゥロール方式で基板2を搬送し、且つ、搬送ドラム33の外周面33bに支持された基板2に対してパターン形成処理を施すことができれば、図1及び図2に示す構成に限定されない。また、巻出しリール31から基板2が巻き出された後、搬送ドラム33に至るまでの間、又は、搬送ドラム33から基板2が搬出された後、巻取りリール32に巻き取られるまでの間に、さらに別の処理を行うユニット(前処理ユニット、後処理ユニット等)を設けても良い。なお、搬送システム3には、通常、基板搬送時の蛇行を防ぐため、基板2の端部位置を検出し、巻出し装置又は巻取り装置を微動させるエッジ・ポジション・コントロール(Edge Position Control:EPC)装置が設けられる。
【0034】
描画ユニット4には、基板2に向けて露光用のビームLを出射する複数の露光ヘッド41と、ビームLのキャリブレーション時に使用されるキャリブレーションユニット43及び移動機構44とが設けられている。本実施形態においては、キャリブレーションユニット43及び移動機構44、並びに後述する制御装置5が、キャリブレーションシステムを構成する。
【0035】
露光ヘッド41は、搬送ドラム33に支持された基板2にビームLを照射することにより、回路や配線等のパターンを基板2に直接描画する。図3は、露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
【0036】
図3に示すように、露光ヘッド41の内部には、レーザ光を出力するレーザ光源411と、ビーム成形光学系412と、反射ミラー413と、ポリゴンミラー414と、結像光学系415とが設けられている。このうち、ポリゴンミラー414には、該ポリゴンミラー414を回転軸414a回りに回転させる駆動装置が設けられている。
【0037】
ビーム成形光学系412は、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ、光量調整用のフィルタ、偏光フィルタ等の光学素子を含み、レーザ光源411から出力されたレーザ光をスポット状のビーム形状を有するビームLに成形する。反射ミラー413は、ビーム成形光学系412により成形されたビームLを、ポリゴンミラー414の方向に反射する。ポリゴンミラー414は、回転軸414a回りに回転し、反射ミラー413の方向から入射したビームLを、回転軸414aと直交する面内において複数の方向に反射する。結像光学系415は、fθレンズ又はテレセントリックfθレンズ等の光学素子を含み、ポリゴンミラー414により反射されたビームLを、搬送ドラム33の外周面に支持された基板2の露光面P1に結像させる。このような露光ヘッド41においては、ポリゴンミラー414の回転を制御することにより、露光ヘッド41から出射するビームLを、所定の走査範囲SRにおいて一次元的に走査することができる。
【0038】
なお、露光ヘッド41の構成は、露光面P1においてビームLを結像させると共に1次元的に走査することができれば、図3に例示する構成に限定されない。例えば、ポリゴンミラー414と結像光学系415との間に反射ミラーを配置することにより、ビームLの出射方向を変化させても良い。
【0039】
図4は、描画ユニット4に設けられた複数の露光ヘッド41を基板2側から見た平面図である。図4においては4つの露光ヘッド41を示しているが、露光ヘッド41の数はこれに限定されない。露光ヘッド41の数は、1つ以上であれば良く、基板2の幅や、露光ヘッド41の走査範囲SR(図3参照)及びビームの出力等に応じて適宜設定することができる。
【0040】
各露光ヘッド41は、描画ユニット4内に設けられた支持機構に、調整ステージ42を介して取り付けられている。調整ステージ42は、露光ヘッド41のx方向及びy方向における位置と、鉛直方向に対する角度を手動で微調整するために設けられている。これらの露光ヘッド41は、ビーム出射口41aから出射するビームLの走査範囲SRが、基板2の幅方向(y方向)において隣り合う領域を走査するビームLとの間で、端部同士が僅かに重なり合うか、或いは、隙間なく隣接するように配置されている。これにより、基板2の幅方向を、複数のビームLにより隙間なく走査することが可能となる。また、各露光ヘッド41の搬送ドラム33からの距離は、ビームLの焦点が基板2の露光面に合うように調整されている。
【0041】
図5は、描画ユニット4によりパターンが形成された基板2を例示する模式図である。図4に示す各露光ヘッド41から出射したビームLを基板2の幅方向に走査しつつ、搬送ドラム33により基板2を搬送することで、基板2に2次元的な露光パターンが形成される。このように、ビームLにより直接描画を行いながら基板2を搬送することにより、図5に示すように、長尺の基板2に対して連続的な露光パターン21を形成することができる。
【0042】
描画ユニット4においては、基板2に対し、各露光ヘッド41による露光領域を予め設定することができる。そこで、各露光ヘッド41の露光領域内に、個々の製品やパターンを識別する識別記号(ID)22a~22dを描画しても良い。識別記号22a~22dを、ロット番号、描画装置番号、露光ヘッド番号、露光日付及び時刻等のデータと紐付けて管理することにより、高度なトレーサビリティを確保することができる。
【0043】
図6は、図1に示すキャリブレーションユニット43近傍を拡大して示す模式図であり、キャリブレーション時における配置を示している。
移動機構44は、露光ヘッド41から出射して基板2の露光面に入射するビームLの光路LPに対してキャリブレーションユニット43を挿抜する。移動機構44は、例えば1軸アクチュエータであり、キャリブレーションの開始時に、キャリブレーションユニット43を光路LPに挿入し(図6参照)、キャリブレーションが終了すると、キャリブレーションユニット43を該光路LPから抜去する(図1参照)。このようなキャリブレーションユニット43及び移動機構44は、各露光ヘッド41に対して1つずつ設けられている。
【0044】
なお、移動機構44の構成は、キャリブレーションユニット43を高精度に移動させることができれば特に限定されない。また、図1及び図6においては、キャリブレーションユニット43をビームLの照射位置における基板2の搬送方向(搬送ドラム33の外周面の接線方向)に沿って移動させているが、移動方向はこれに限定されない。例えば、キャリブレーションユニット43を、基板2の幅方向(y方向)に沿って移動させても良い。
【0045】
キャリブレーションユニット43には、反射ミラー431及びセンサユニット432が設けられている。反射ミラー431とセンサユニット432との相対的な位置は固定されている。反射ミラー431は、キャリブレーションユニット43が光路LPに挿入されているときに光路LP上に配置され、ビームLを該光路LPとは異なる方向に導く光学系である。
【0046】
センサユニット432は、2次元の受光面を有し、反射ミラー431によって反射されたビームLが該受光面に入射可能となる位置に設けられている。キャリブレーション時に光路LPに配置される反射ミラー431の位置から基板2の露光面までの光路長と、このときの反射ミラー431の位置からセンサユニット432の受光面までの光路長とは等しく、センサユニット432の受光面と、ビームLによって露光される基板2の露光面とは、共役の関係となっている。つまり、反射ミラー431が光路LPに挿入されているときのセンサユニット432の受光面においては、反射ミラー431が光路LPに挿入されていないときの基板2の露光面におけるビームLの像と同じ像が得られる。
【0047】
図7は、センサユニット432を受光面の側から見た模式図である。図7に示すように、センサユニット432は、センサ基板433と、センサ基板433上に実装された光センサである位置検出素子(PSD)434及び光強度検出素子436とを有する。センサ基板433には、位置検出素子434及び光強度検出素子436から出力された信号を処理するための回路が形成されている。
【0048】
位置検出素子434は、ビームLを受光する2次元の受光面435を有し、該受光面435に入射したビームLの照射位置を表す検出信号を出力する。図7に示すように、本実施形態においては、センサ基板433に2つの位置検出素子434が配置されている。これらの位置検出素子434の位置は、各位置検出素子434の中心線が走査範囲SRの端部のラインと重なるように設定されている。このように、1つのセンサユニット432に対して2つの位置検出素子434を設けることにより、ビームLの照射位置の僅かなずれを検出することが可能となる。
【0049】
光強度検出素子436は、例えばフォトダイオード(PD)であり、受光面に入射したビームLの照射強度を表す検出信号を出力する。
なお、受光面に入射したビームLの位置及び強度を高精度に検出することができれば、位置検出素子と光強度検出素子とを1種類の光センサで兼用しても良い。その場合、当該光センサを位置検出素子434の位置(2箇所)に配置することが好ましい。
【0050】
図8は、制御装置5の概略構成を示すブロック図である。制御装置5は、描画装置1の各部の動作を統括的に制御する装置であり、外部インタフェース51と、記憶部52と、制御部53とを備える。
【0051】
外部インタフェース51は、各種外部機器を当該制御装置5に接続するためのインタフェースである。制御装置5に接続される外部機器としては、例えば、露光ヘッド41、エンコーダ33c、搬送システム3を駆動する基板搬送駆動装置61、キャリブレーションユニット43の移動機構44を駆動するキャリブレーション用駆動装置62、キーボードやマウスなどの入力デバイス63、液晶モニタ等の表示デバイス64、パターンデータ等を当該制御装置5に読み込むためのデータ読込装置65等が挙げられる。
【0052】
記憶部52は、ディスクドライブやROM、RAM等の半導体メモリなどのコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成される。記憶部52は、オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラムの他、当該制御装置5に所定の動作を実行させるためのプログラムや、該プログラムの実行中に使用される各種データ及び設定情報等を記憶する。
【0053】
詳細には、記憶部52は、プログラム記憶部521と、パターンデータ記憶部522と、基準データ記憶部523と、キャリブレーションデータ記憶部524と、補正データ記憶部525とを含む。プログラム記憶部521は、上述した各種プログラムを記憶する。パターンデータ記憶部522は、描画ユニット4に描画させるパターンを表すデータを記憶する。基準データ記憶部523は、ビームLの照射位置及び照射強度の基準データ(基準値)を記憶する。ここで、基準データとは、基板2の露光面におけるビームLの所定の照射位置に対応する位置検出素子434の受光面435における照射位置(以下、基準照射位置ともいう)、及び、基板2の露光面におけるビームLの所定の照射強度に対応する光強度検出素子436における照射強度(以下、基準照射強度ともいう)を表すデータである。キャリブレーションデータ記憶部524は、基板2を露光するビームLのキャリブレーションデータ、言い換えると、位置検出素子434の受光面435におけるビームLの照射位置及び光強度検出素子436に入射したビームLの照射強度を表すデータを記憶する。補正データ記憶部525は、キャリブレーションデータに基づいて露光ヘッド41を調整するための補正データを記憶する。
【0054】
制御部53は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアを用いて構成され、プログラム記憶部521に記憶されているプログラムを読み込むことにより、制御装置5及び描画装置1の各部へのデータ転送や指示を行い、描画装置1の動作を統括的に制御して基板2へのパターン形成処理を実行させる。また、制御部53は、プログラム記憶部521に記憶されたキャリブレーションプログラムを読み込むことにより、露光ヘッド41のキャリブレーションを定期的に行ってキャリブレーションデータを記憶すると共に、キャリブレーションデータに基づいて露光ヘッド41の調整を行う。
【0055】
詳細には、制御部53が上記プログラムを実行することにより実現される機能部には、描画制御部531と、キャリブレーション制御部532と、判定部533と、補正部534とが含まれる。
【0056】
描画制御部531は、パターンデータ記憶部522からパターンデータを読み出し、各露光ヘッド41によるビームLの出力及び走査並びに搬送システム3による基板2の搬送速度等の制御データを生成し、露光ヘッド41及び基板搬送駆動装置61に出力する。これにより、搬送システム3によって基板2が所定の速度で搬送されると共に、各露光ヘッド41から出射したビームLが基板2の所定の露光領域に照射され、幅方向に走査される。このようにして、基板2に2次元的なパターンが連続的に形成される。
【0057】
キャリブレーション制御部532は、露光ヘッド41から出射するビームLをキャリブレーションするための制御を行うと共に、位置検出素子434の受光面435におけるビームLの照射位置及び光強度検出素子436における照射強度の測定値(キャリブレーション値)を表すデータ(キャリブレーションデータ)を生成する。
【0058】
判定部533は、キャリブレーションデータ及び基準データ記憶部523に記憶された基準データに基づき、キャリブレーション値が基準値内に収まっているか否かを判定する。
【0059】
補正部534は、キャリブレーション値が基準値内に収まっていない場合に、ビームLの照射位置及び照射強度を補正するための補正データを生成し、該補正データに基づいて各部を制御する。
なお、このような制御装置5は、1つのハードウェアにより構成しても良いし、複数のハードウェアを組み合わせて構成しても良い。
【0060】
次に、本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーション方法について説明する。図9は、描画装置1のキャリブレーション時における動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、制御装置5は各露光ヘッド41に対し、基板2へのビームLの照射を停止させる。
【0061】
続くステップS11において、制御装置5は搬送システム3に対し、基板2の搬送を停止させる。
続くステップS12において、制御装置5はキャリブレーション用駆動装置62に対し、移動機構44を駆動してキャリブレーションユニット43を光路LPに挿入させるよう制御する(図6参照)。
【0062】
続くステップS13において、制御装置5は、各露光ヘッド41からビームLを出射させる。露光ヘッド41から出射したビームLは、キャリブレーションユニット43に設けられた反射ミラー431により反射され、センサユニット432に設けられた位置検出素子434及び光強度検出素子436に入射する。これにより、各位置検出素子434は、ビームLの受光面435における照射位置を表す検出信号を出力し、光強度検出素子436は、ビームLの照射強度を表す検出信号を出力する。
【0063】
続くステップS14において、制御装置5のキャリブレーション制御部532は、位置検出素子434及び光強度検出素子436から出力された検出信号に基づき、受光面435に入射したビームLの照射位置及び照射強度の測定値を表すデータ(キャリブレーションデータ)を生成し、キャリブレーションデータ記憶部524に保存する。
【0064】
続くステップS15において、判定部533は、ステップS14において生成されたキャリブレーションデータを、基準データ記憶部523に記憶された基準データと対比し、各露光ヘッド41から出射されたビームLの照射位置及び照射強度が基準値内であるか否かを判定する。詳細には、判定部533は、ビームLの基準照射位置に対する照射位置の測定値の差分(Δx,Δy)を算出すると共に、基準照射強度に対する照射強度の測定値の差分を算出する。そして、照射位置の差分(Δx,Δy)及び照射強度の差分が所定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0065】
ビームLの照射位置及び照射強度が基準値内である場合(ステップS15:Yes)、動作はステップS17に移行する。
他方、ビームLの照射位置及び照射強度が基準値を超える場合(ステップS15:No)、補正部534は、各露光ヘッド41の位置及びビームLの出力値を補正するための補正データを生成し、補正データ記憶部525に保存する(ステップS16)。この際、補正部534は、補正データを表示デバイス64に表示させても良い。詳細には、補正部534は、差分Δxに基づいて、搬送ドラム33に設けられたエンコーダ33cの信号(図6のΔθ参照)を用いて設定される描画開始ポイントを調整するため、出力開始位置のパラメータ(ビームLの出力を開始する際のθの値)を補正する。また、補正部534は、差分Δyに基づいて、ポリゴンミラー414(図3参照)を介して出射するビームLの基準となる描画開始ポイントを調整するため、出力開始位置のパラメータ(ビームLの出力を開始する際のポリゴンミラーの初期位置)を補正する。さらに、補正部534は、照射強度に関し、描画制御部531において使用される各露光ヘッド41の出力パラメータを補正する。
【0066】
続くステップS17において、制御装置5はキャリブレーション用駆動装置62に対し、移動機構44を駆動してキャリブレーションユニット43を光路LPから抜去させるよう制御する(図1参照)。これにより、描画装置1におけるキャリブレーション動作は終了する。キャリブレーションの終了後、描画動作を再開すると、ステップS16において補正されたパラメータに基づいて各部が動作し、補正された状態のビームの照射位置及び照射強度で基板2への描画を行うことができる。
【0067】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、搬送ドラム33により基板2を搬送しつつ、各露光ヘッド41から出射したビームLを基板2に直接照射しながらビームLを幅方向に走査するので、基板2に2次元的な露光パターンを切れ目なく連続的に形成することができる。従って、数m~数十mに及ぶ長尺の基板に対しても、効率良く連続パターンを形成することができ、スループットを向上させることが可能となる。
【0068】
また、本発明の第1の実施形態によれば、各露光ヘッド41の露光領域に、当該露光ヘッド41で識別記号を描画しておくことにより、パターン又は配線レベルで高度なトレーサビリティを確保することができる。
【0069】
また、本発明の第1の実施形態によれば、各露光ヘッド41に光源が設けられているので、十分な照射強度でパターン形成を行うことが可能となる。
【0070】
また、本発明の第1の実施形態によれば、キャリブレーション時に、露光ヘッド41から出射するビームLの光路LPにキャリブレーションユニット43を挿入することにより、搬送ドラム33に基板2をセットしたままの状態で、高精度なキャリブレーションを行うことができる。従って、長尺の基板2に対して連続的なパターンを形成する場合であっても、随時キャリブレーションを行うことが可能となる。
【0071】
ここで、上記第1の実施形態においては、キャリブレーションにおいて取得された測定値が基準値の範囲に収まるか否かを判定し、収まらない場合には、補正を行うための各種処理を実行した。しかしながら、キャリブレーションを行い、単にキャリブレーションデータを保存しておくだけでも良い。また、キャリブレーションにおいて取得された測定値の判定結果や判定結果に基づく補正データを保存しておくだけでも良い。
【0072】
また、上記第1の実施形態においては、露光ヘッド41の位置及び傾きを調整ステージ42により手動で微調整することとしたが、調整ステージ42の代わりに電気的に制御可能な調整ステージを設け、キャリブレーションの結果に基づいて露光ヘッド41の位置及び傾きを自動調整することとしても良い。
【0073】
(第1の変形例)
上記第1の実施形態においては、位置検出素子434から出力された検出信号に基づいて、ビームLの照射位置のずれを検出することとしたが、焦点のずれを検出することとしても良い。詳細には、位置検出素子434から出力された検出信号に基づいて、受光面435におけるビームLの照射範囲を抽出することにより、ビームLのスポット径を取得することができる。そして、取得したスポット径と、基準データ記憶部523に予め記憶された基準となるスポット径とを比較することにより、焦点のずれを検出する。
【0074】
この場合、各露光ヘッド41と搬送ドラム33との間隔を調整する調整機構を設け、検出された焦点のずれに基づいて上記間隔を調整しても良い。それにより、ビームLを位置検出素子434の受光面435、即ち、基板2の露光面に精度良く合焦させることができる。
【0075】
また、位置検出素子434から出力された検出信号に基づいて、受光面435におけるビームLの照射範囲を抽出し、受光面435におけるビームLのスポット形状を取得しても良い。この場合、取得したスポット形状に基づいて、露光ヘッド41の傾き(即ち、基板2の露光面とビームLとのなす角度)を補正することができる。
【0076】
(第2の変形例)
上記第1の実施形態においては、キャリブレーションユニット43に反射ミラー431に設けたが、反射ミラー431の代わりにビームスプリッタ(ハーフミラー)を用い、露光ヘッド41から出射したビームLの一部のみを反射してセンサユニット432に導くこととしても良い。ここで、位置検出素子434及び光強度検出素子436など、センサユニット432に設けられる光センサの種類によっては、ビームLの過剰なパワーのため、光センサが損傷されてしまうおそれも考えられる。そこで、ビームスプリッタでビームLの一部のみを反射することにより、減光されたビームを光センサに入射させることができる。この場合、基準データ記憶部523には、照射強度の基準データとして、ビームスプリッタの反射率を考慮して設定された値を記憶させても良い。
【0077】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画装置の概略構成を示す模式図である。図10に示すように、本実施形態に係る描画装置1Aは、図1に示す描画ユニット4の代わりに描画ユニット4Aを備える。描画ユニット4Aには、基板2に向けて露光用のビームLを出射する複数の露光ヘッド41と、ビームLのキャリブレーション時に使用されるミラーユニット46、移動機構47、反射ミラー462、及びキャリブレーションユニット48とが設けられている。本実施形態においては、これらのミラーユニット46、移動機構47、反射ミラー462、及びキャリブレーションユニット48、並びに上述した制御装置5が、キャリブレーションシステムを構成する。キャリブレーションシステム以外の描画装置1Aの各部の構成は、上記第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態においても、上述した第1の変形例と同様に、各露光ヘッド41と基板2との間隔を変化させることにより、ビームLの焦点を調整する機構をさらに設けても良い。
【0078】
図11は、図10に示すキャリブレーションユニット48近傍を拡大して示す模式図であり、キャリブレーション時における配置を示している。
移動機構47は、例えば1軸アクチュエータであり、キャリブレーションの開始時に、ミラーユニット46をビームLの光路LPに挿入し(図11参照)、キャリブレーションが終了すると、ミラーユニット46を該光路LPから抜去する(図10参照)。なお、移動機構47の構成は、ミラーユニット46を高精度に移動させることができれば特に限定されない。また、ミラーユニット46を移動させる方向は、ビームLの照射位置における基板2の搬送方向(搬送ドラム33の外周面の接線方向)に限定されず、例えば、基板2の幅方向(y方向)に沿ってミラーユニット46を移動させても良い。
【0079】
ミラーユニット46には、反射ミラー461が設けられている。反射ミラー461は、ミラーユニット46が光路LPに挿入されているときに光路LP上に配置され、ビームLを該光路LPとは異なる方向に導く光学系である。なお、上記第2の変形例と同様に、反射ミラー461の代わりにビームスプリッタ(ハーフミラー)を設けても良い。
【0080】
反射ミラー462及びキャリブレーションユニット48は、描画ユニット4A内の所定の位置に設置されている。反射ミラー462は、光路LP上に挿入された反射ミラー461により反射されたビームLをさらに反射し、キャリブレーションユニット48の方向に導く第2の光学系である。なお、図11においては、1つの反射ミラー462によって第2の光学系を構成しているが、複数のミラー等を用いて第2の光学系を構成しても良い。また、上記第2の変形例と同様に、反射ミラー462の代わりにビームスプリッタを用いることにより、キャリブレーションユニット48に入射させるビームLを減光しても良い。
【0081】
キャリブレーションユニット48には、結像光学系481及びセンサユニット482が設けられている。このうち、センサユニット482の構成は、第1の実施形態において説明したセンサユニット432の構成と同様である(図7参照)。
【0082】
結像光学系481は、反射ミラー462により反射されたビームLを、位置検出素子及び光強度検出素子などセンサユニット482に設けられた光センサの受光面に結像させる第3の光学系である。センサユニット482に設けられた光センサの受光面と、ビームLによって露光される基板2の露光面とは、共役の関係になっており、ミラーユニット46が光路LPに挿入されているときのセンサユニット482の受光面においては、ミラーユニット46が光路LPに挿入されていないときの基板2の露光面におけるビームLの像と同じ像が得られる。なお、図11には、結像光学系481として複数の光学素子が図示されているが、1つのレンズによって第3の光学系を構成しても良い。
【0083】
このようなミラーユニット46、移動機構47、反射ミラー462、及びキャリブレーションユニット48は、各露光ヘッド41に対して1つずつ設けられている。
【0084】
本実施形態に係る描画装置1Aのキャリブレーション時における動作は、全体として上記第1の実施形態と同様である(図9参照)。ただし、図9のステップS12においては、ミラーユニット46が光路LPに挿入され、ステップS17においては、ミラーユニット46が光路LPから抜去される。
【0085】
以上説明した本発明は、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に限定されるものではなく、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記第1及び第2の実施形態並びに変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0086】
1,1A…描画装置、2…基板、3…搬送システム、4,4A…描画ユニット、5…制御装置、21…露光パターン、22a~22d…識別記号、31,32…リール、31a,32a,33a,34a,35a,36a,37a,414a…回転軸、33…搬送ドラム、33c…エンコーダ、33b…外周面、34,35…テンションプーリ、36,37…案内ローラ、41…露光ヘッド、41a…ビーム出射口、42…調整ステージ、43,48…キャリブレーションユニット、44,47…移動機構、46…ミラーユニット、51…外部インタフェース、52…記憶部、53…制御部、61…基板搬送駆動装置、62…キャリブレーション用駆動装置、63…入力デバイス、64…表示デバイス、65…データ読込装置、411…レーザ光源、412…ビーム成形光学系、413,431,461,462…反射ミラー、414…ポリゴンミラー、415,481…結像光学系、432,482…センサユニット、433…センサ基板、434…位置検出素子、435…受光面、436…光強度検出素子、521…プログラム記憶部、522…パターンデータ記憶部、523…基準データ記憶部、524…キャリブレーションデータ記憶部、525…補正データ記憶部、531…描画制御部、532…キャリブレーション制御部、533…判定部、534…補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11