IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人信州大学の特許一覧

特許7013067ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器
<>
  • 特許-ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器 図1
  • 特許-ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器 図2
  • 特許-ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器 図3
  • 特許-ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器 図4
  • 特許-ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器 図5
  • 特許-ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20220124BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220124BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220124BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20220124BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220124BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B01J20/06 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/20 D
C02F1/28 B
C01G23/00 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021552996
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2021028878
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020183725
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、文部科学省「イノベーションシステム整備事業 地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」、令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 勝弥
(72)【発明者】
【氏名】守屋 映祐
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-254482(JP,A)
【文献】特開昭63-252926(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101117729(CN,A)
【文献】特開2015-178452(JP,A)
【文献】特開2019-084469(JP,A)
【文献】特許第5551483(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第102949983(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
C02F 1/28
C01G 23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三チタン酸ナトリウムを含むろ過材料であって、
水溶液に含まれる重金属イオンをカチオン吸着し、
下記式(A)及び下記式(B)を満たす、ろ過材料。
0cps・deg.<IA≦600cps・deg. ・・・(A)
(式(A)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
1.02≦IA/IB≦3.0・・・(B)
(式(B)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。IBは、CuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=28±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【請求項2】
BET比表面積が1.0m/g以上20.0m/g以下である、請求項1に記載のろ過材料。
【請求項3】
50%累積体積粒度であるD50が1nm以上30nm以下である、請求項1又は2に記載のろ過材料。
【請求項4】
重金属イオンの除去率が99.0%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のろ過材料。
【請求項5】
チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩とを混合し、混合物を得る工程と、
前記混合物を650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を含む、ろ過材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合物がチタン化合物と、ナトリウム有機酸塩からなる、請求項に記載のろ過材料の製造方法。
【請求項7】
前記混合物が炭酸ナトリウムを含む、請求項に記載のろ過材料の製造方法。
【請求項8】
前記ナトリウム有機酸塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、安息香酸、フタル酸、アルギン酸からなる群より選択される1種以上の有機酸のナトリウム塩である、請求項のいずれか1項に記載のろ過材料の製造方法。
【請求項9】
前記ナトリウム有機酸塩は、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上である、請求項のいずれか1項に記載のろ過材料の製造方法。
【請求項10】
前記チタン化合物は二酸化チタンである、請求項のいずれか1項に記載のろ過材料の製造方法。
【請求項11】
前記ろ過材料は水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着する、請求項10のいずれか1項に記載のろ過材料の製造方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載のろ過材料と活性炭とを含む、水処理材料。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載のろ過材料を備える、浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過材料、ろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器に関する。
本願は、2020年11月2日に、日本に出願された特願2020-183725号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
日本の水道水は世界でも屈指の安全性を誇る。一方で、古い水道管が残る場所では鉄さびや鉛が水道水に混入することがある。また世界に目を向けると、古い水道用金属管に由来した飲料水の金属汚染が問題となる地域がある。例えば鉛イオンや鉄イオン等の重金属イオンが人体に取り込まれた場合、人体に対して悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
水道水中に混入した重金属イオンの除去を目的として、特許文献1にはフラックス法を用いて製造した層状結晶構造を有する結晶性無機物質を用いたろ過材料が記載されている。フラックス法は、原料となる物質とその溶媒(フラックス)を加熱し、冷却または溶媒を蒸発させることで物質を結晶化する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5551483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ろ過材料となる結晶性無機物質は、重金属イオンとイオン交換されるカチオン成分が層状結晶構造の層間に含有されている。このため、層状構造が発達した結晶性無機材料は、重金属イオンに対して高い吸着性能を発揮し得る。
【0006】
フラックス法を用いて結晶化すると、層状構造を反映した粒子形態(晶癖)が発達しやすい。一方で、フラックス法を用いた結晶化工程は、高温での焼成工程や溶剤を用いた洗浄工程を要し、使用するフラックスによっては環境負荷の大きい廃液が発生するため、その処理工程も必要になる。このため、より省エネルギーで製造コストを低減させる観点から、結晶性無機材料の製造工程には改良の余地があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、省エネルギーかつ低コストで製造でき、水中に存在する複数種の重金属イオンに対し、高い吸着性能を発揮するろ過材料、このようなろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の[1]~[14]を包含する。
[1]三チタン酸ナトリウムを含むろ過材料であって、水溶液に含まれる重金属イオンをカチオン吸着し、下記式(A)を満たす、ろ過材料。
0cps・deg.<IA≦600cps・deg. ・・・(A)(式(A)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
[2]IBと前記IAが下記式(B)を満たす、[1]に記載のろ過材料。
0<IA/IB≦5.0・・・(B)
(式(B)中、IBは、CuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=28±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
[3]BET比表面積が1.0m/g以上20.0m/g以下である、[1]又は[2]に記載のろ過材料。
[4]50%累積体積粒度であるD50が1nm以上30nm以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のろ過材料。
[5]重金属イオンの除去率が99.0%以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のろ過材料。
[6]チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩とを混合し、混合物を得る工程と、前記混合物を650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を含む、ろ過材料の製造方法。
[7]前記混合物がチタン化合物と、ナトリウム有機酸塩からなる、[6]に記載のろ過材料の製造方法。
[8]前記混合物が炭酸ナトリウムを含む、[6]に記載のろ過材料の製造方法。
[9]前記ナトリウム有機酸塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、安息香酸、フタル酸、アルギン酸からなる群より選択される1種以上の有機酸のナトリウム塩である、[6]~[8]のいずれか1つに記載のろ過材料の製造方法。
[10]前記ナトリウム有機酸塩は、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上である、[6]~[9]のいずれか1つに記載のろ過材料の製造方法。
[11]前記チタン化合物は二酸化チタンである、[6]~[10]のいずれか1つに記載のろ過材料の製造方法。
[12]前記ろ過材料は水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着する、[6]~[11]のいずれか1つに記載のろ過材料の製造方法。
[13][1]~[5]のいずれか1つに記載のろ過材料と活性炭とを含む、水処理材料。
[14][1]~[5]のいずれか1つに記載のろ過材料を備える、浄水器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、省エネルギーかつ低コストで製造でき、水中に存在する複数種の重金属イオンに対し、高い吸着性能を発揮するろ過材料、このようなろ過材料の製造方法、水処理材料及び浄水器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~4、及び参考例のろ過材料のX線回折パターンである。
図2】実施例5のろ過材料のX線回折パターンである。
図3】実施例6のろ過材料のX線回折パターンである。
図4】実施例7のろ過材料のX線回折パターンである。
図5】比較例1のろ過材料のX線回折パターンである。
図6】比較例2のろ過材料のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ろ過材料>
本実施形態は、水溶液に含まれる重金属イオンをカチオン吸着するろ過材料である。
本実施形態のろ過材料は、三チタン酸ナトリウムを含む。三チタン酸ナトリウムは、NaTiで表される。
三チタン酸ナトリウムは、カチオンであるナトリウムイオンを備える。ナトリウムイオンと重金属イオンとは、イオン交換が可能である。このため、三チタン酸ナトリウムを含むろ過材料は、水中に存在する複数種の重金属イオンを除去することができる。
【0012】
本実施形態の一態様において、ろ過材料は粉末である。
本実施形態の一態様において、ろ過材料は粒状である。
【0013】
本実施形態の一態様において、ろ過材料の全量中、三チタン酸ナトリウムの含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下が挙げられる。
【0014】
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、ろ過材料の全量中の三チタン酸ナトリウムの含有率は、50質量%以上100質量%以下、70質量%以上99質量%以下、90質量%以上98質量%以下が挙げられる。
【0015】
本実施形態の一態様において、ろ過材料が含みうる三チタン酸ナトリウム以外の成分としては、例えばイオン交換が可能なチタン酸塩化合物である。
【0016】
本実施形態の一態様において、ろ過材料は三チタン酸ナトリウムからなる。
【0017】
ろ過材料は下記式(A)を満たす。
0cps・deg.<IA≦600cps・deg. ・・・(A)
(式(A)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【0018】
2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークは、TiOに由来する回折ピークである。式(A)を満たすろ過材料は、TiOの残留量が少ないと考えられる。このようなろ過材料はイオン交換が阻害されにくく、水中に存在する複数種の重金属イオンに対し、高い吸着性能を発揮できる。
【0019】
IAは下記の方法により得られる。
まず、ろ過材料について、CuKαを入射X線とし、かつ回折角2θの走査範囲を5度以上80度以下とする粉末X線回折実験を行い、回折パターンを得る。得られた回折パターンから、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークを決定する。
さらに、決定した回折ピークのピークスタートからピークエンドまでのピーク曲線と、ベースラインとで囲まれる範囲のピーク面積を算出する。
【0020】
本明細書においてピークスタートとは、回折ピークの立ち上がり点である。ピークスタートは、回折ピークとベースラインとの接点を意味する。
本明細書においてピークエンドとは、回折ピークが終了する点である。ピークエンドは、回折ピークとベースラインとの接点を意味する。
本明細書においてベースラインとは、X線回折パターンのグラフにおいて、当該回折ピークを含む回折角域の、明らかにピークではないピーク前後のデータを用い、ピーク部を多項式補間した線を意味する。
【0021】
ピーク面積は、数値計算ソフトを用いて自動で算出する。
【0022】
粉末X線回折実験は、例えばデスクトップX線回折装置 MiniFlex600(株式会社リガク製)を用いる。
管電圧40kV、管電流15mAの出力で発生させた600WのCuKαを入射X線とする。
【0023】
スキャニングモードは、2θ/θとする。スキャニングタイプは、連続走査とする。
入射高さ制限スリット(IHS)は、10.0mm、発散スリット(DS)は、+1.250度、散乱スリット(SS)は、8.0mm、受光スリット(RS)は、13.0mm、に設定する。
実験条件は、スキャンスピード:10度/min、サンプリング幅:0.02度、2θ=5度以上80度以下の走査範囲で行う。
【0024】
式(A)は、下記式(A)-1~(A)-6のいずれかが好ましい。
0cps・deg.<IA≦500cps・deg. ・・・(A)-1
0cps・deg.<IA≦400cps・deg. ・・・(A)-2
5cps・deg.<IA≦400cps・deg. ・・・(A)-3
5cps・deg.<IA≦350cps・deg. ・・・(A)-4
30cps・deg.<IA≦350cps・deg. ・・・(A)-5
50cps・deg.<IA≦320cps・deg. ・・・(A)-6
【0025】
ろ過材料は、IBと前記IAが下記式(B)を満たすことが好ましい。
0<IA/IB≦5.0・・・(B)
(式(B)中、IBは、CuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=28±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【0026】
IBは下記の方法により得られる。
まず、ろ過材料について、CuKαを入射X線とし、かつ回折角2θの走査範囲を5度以上80度以下とする粉末X線回折実験により回折パターンを得る。得られた回折パターンから、2θ=28±1度の範囲内の最大の回折ピークを決定する。
さらに、決定した回折ピークのピークスタートからピークエンドまでのピーク曲線と、ベースラインとで囲まれる範囲のピーク面積を算出する。
【0027】
IBを決定するための粉末X線回折実験条件及びピーク面積の算出方法は、上述したIAを決定するための粉末X線回折実験条件及びピーク面積の算出方法と同様である。
【0028】
式(B)を満たすろ過材料は、TiOの残留量が少ないと考えられる。このようなろ過材料はイオン交換が阻害されにくく、水中に存在する複数種の重金属イオンに対し、高い吸着性能を発揮できる。
【0029】
式(B)は、下記式(B)-1~(B)-4のいずれかが好ましい。
0<IA/IB≦4.5・・・(B)-1
0<IA/IB≦3.0・・・(B)-2
0<IA/IB≦2.0・・・(B)-3
0<IA/IB≦1.8・・・(B)-4
【0030】
ろ過材料は、BET比表面積が1.0m/g以上20.0m/g以下が好ましく、2.0m/g以上18.0m/g以下がより好ましく、3.0m/g以上16.0m/g以下がさらに好ましい。
【0031】
ろ過材料のBET比表面積は、BET比表面積測定装置により測定できる。BET比表面積測定装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル社製BELSORP(登録商標)-miniXを用いることができる。粉末状のろ過材料を測定する場合、前処理として真空減圧下、150℃で1時間乾燥させることが好ましい。
【0032】
ろ過材料は、50%累積体積粒度であるD50が、1nm以上30nm以下であることが好ましく、2nm以上28nm以下がより好ましく、3nm以上26nm以下がさらに好ましい。
【0033】
本明細書において、ろ過材料の50%累積体積粒度であるD50は、以下の湿式の方法により測定できる。
【0034】
湿式での測定方法としては、レーザー回折散乱法による測定方法が挙げられる。
具体的には、まず、2gの粉末状のろ過材料を少量ずつ、吸光度を見ながら、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに直接投入し、三チタン酸ナトリウムを分散させた分散液を得る。
【0035】
次に、得られた分散液について、レーザー回折粒度分布計により粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。そして、得られた累積粒度分布曲線において、微小粒子側から50%累積時の粒子径の値が50%累積体積粒度D50(μm)である。
レーザー回折粒度分布計としては、例えば島津製作所製、粒子径分布測定装置SALD-7100が使用できる。
【0036】
本実施形態のろ過材料を用いると、水溶液中の重金属イオンを除去することができる。除去が可能な重金属イオンは、例えば、アルミニウムイオン、カドミウムイオン、クロムイオン、銅イオン、鉄イオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、鉛イオン及び亜鉛イオンである。
【0037】
(除去率)
水溶液に含まれる重金属イオンを、本実施形態のろ過材料を用いて除去した場合、下記式により算出される重金属イオンの除去率が、99.0%以上であることが好ましい。
【0038】
水中に存在する重金属イオンは、誘導結合プラズマ発光分光(ICP-OES)分析によって定性及び定量し、除去前の重金属イオン量である初期濃度(μg/L)と、除去後の重金属イオン量である最終濃度(μg/L)を測定する。初期濃度と最終濃度の値から、除去率(%)を下記の式により求める。
(初期濃度-最終濃度)/初期濃度×100
【0039】
複数種存在する重金属イオンのうち、半数種以上の重金属イオンの残存率が0%であること、「高い吸着性能を発揮する」と評価する。残存率は下記の式により求める。
【0040】
(残存率)
除去率の値から、残存率(%)を下記の式により求める。
残存率(%)=100-除去率(%)
【0041】
本実施形態のろ過材料は、三チタン酸ナトリウムからなる粉体又は粒体であってもよい。
本実施形態のろ過材料は、三チタン酸ナトリウムの粉体又は粒体をバインダーによって固めた成形体であってもよい。
【0042】
バインダーとしては、ろ過材料に含まれる三チタン酸ナトリウムと互いに結合し、三チタン酸ナトリウムとバインダーとの間に微細孔を形成できるものであればよく、特に限定はされない。例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、カルボキシメチルセルロース、ベントナイト、カオリン、アタプルガイド等などが挙げられる。
【0043】
バインダーの配合量は、特に限定されない。例えば、ろ過材料の全量に対して10質量%以上40質量%以下が挙げられる。
ろ過材料の全量に対するバインダーの配合量が10質量%以上であると、ろ過材料同士の結合が十分となり、成形体を形成しやすくなる。
また、ろ過材料の全量に対するバインダーの配合量が40質量%以下であると、ろ過材料の表面を過度に覆い過ぎず、ろ過材料のろ過性能を維持できる。
【0044】
<ろ過材料の製造方法>
本実施形態のろ過材料の製造方法は、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩とを混合し、混合物を得る工程と、混合物を650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0045】
[混合物を得る工程]
まず、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩とを混合し、混合物を得る。本実施形態においては、粉末のチタン化合物と、粉末のナトリウム有機酸塩とを混合することが好ましい。つまり、得られる混合物は、混合粉であることが好ましい。
【0046】
混合物を得る方法は、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩とを攪拌し、混合できれば特に限定されず、市販の攪拌混合機を適宜使用すればよい。
【0047】
本実施形態に用いるチタン化合物としては、二酸化チタンが好ましい。
【0048】
本実施形態において、ナトリウム有機酸塩とは、有機酸のカルボキシル基の一部または全部がナトリウムで置換された化合物である。分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸の場合には、全てのカルボキシル基がナトリウムで置換されていてもよく、一部のカルボキシル基がナトリウムで置換されていてもよい。有機酸は、炭素を含む材料である。
【0049】
本実施形態に用いるナトリウム有機酸塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、安息香酸、フタル酸、アルギン酸からなる群より選択される1種以上の有機酸のナトリウム塩であることが好ましい。
【0050】
本実施形態において、ナトリウム有機酸塩は、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態において、ナトリウム有機酸塩とチタン化合物の混合比率は、ナトリウムとチタンの物質量比で2:3であることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、混合物はチタン化合物と、ナトリウム有機酸塩からなることが好ましい。
【0053】
本実施形態において、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩との混合物は、さらに炭酸ナトリウムを含むことができる。
【0054】
本実施形態において、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩との組み合わせの例を下記に記載する。
・二酸化チタンと酢酸ナトリウムとの組み合わせ。
・二酸化チタンとクエン酸三ナトリウムとの組み合わせ。
・二酸化チタンとシュウ酸ナトリウムとの組み合わせ。
・二酸化チタンと酒石酸ナトリウムとの組み合わせ。
【0055】
本実施形態において、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩、炭酸ナトリウムとの組み合わせの例を下記に記載する。
・二酸化チタンと酢酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの組み合わせ。
・二酸化チタンとクエン酸三ナトリウムと炭酸ナトリウムとの組み合わせ。
・二酸化チタンとシュウ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの組み合わせ。
・二酸化チタンと酒石酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの組み合わせ。
【0056】
[焼成工程]
得られた混合物を650℃以下の焼成温度で焼成する。本実施形態において、「焼成温度」とは、焼成装置の設定温度を意味する。複数の焼成工程を有する場合には、各焼成工程のうち、最高温度を意味する。
【0057】
焼成温度は、400℃以上650℃以下が好ましく、500℃以上600℃以下がより好ましい。本実施形態のろ過材料の製造方法は、上記混合物を用いているため、650℃以下の低温で焼成しても層状の結晶構造を成長させることができる。
【0058】
焼成温度で保持する時間は、5時間以上15時間以下が好ましく、7時間以上12時間以下が好ましい。
【0059】
また、焼成雰囲気としては、大気雰囲気、酸素雰囲気等の酸化性ガス雰囲気であってもよく、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気であってもよい。また、これらの混合ガスを用いてもよい。
【0060】
本実施形態においては、大気雰囲気又は酸素雰囲気が好ましい。大気雰囲気とする場合には、酸素以外のガス成分が焼成温度以下で被焼成物に対して不活性となる程度に酸素を含有させることが好ましい。
【0061】
本実施形態において、昇温速度は0.5℃/分以上50℃/分以下が好ましく、0.5℃/分以上10℃/分以下が好ましく、1℃/分以上5℃/分以下がより好ましい。
【0062】
本実施形態において、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩との混合物を焼成する場合には、1℃/分以上5℃/分以下の昇温速度で昇温し、400℃以上650℃以下の焼成温度で、7時間以上12時間以下保持することが好ましい。
【0063】
本実施形態において、チタン化合物と、ナトリウム有機酸塩と、炭酸ナトリウムの混合物を焼成する場合には、1℃/分以上5℃/分以下の昇温速度で昇温し、400℃以上650℃以下の焼成温度で、7時間以上12時間以下保持することが好ましい。
【0064】
本実施形態に用いる焼成装置は、得られた混合物を650℃以下で焼成できる焼成装置であれば特に限定されず、市販の電気炉が適宜使用できる。本実施形態において使用可能な電気炉の一例は、ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100である。
【0065】
本実施形態により製造されるろ過材料としては、下記式(I)で表される三チタン酸ナトリウムを含むろ過材料が挙げられる。
Na2±xTi3±y7±z ・・・(I)
(式(I)中、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5である。)
【0066】
上記式(I)で表される三チタン酸ナトリウムとしては、NaTiが好ましい。
【0067】
本実施形態により製造されるろ過材料は、上記式(I)で表される三チタン酸ナトリウムからなるろ過材料が好ましい。
【0068】
本実施形態により製造されるろ過材料は、水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するろ過材料であることが好ましい。
【0069】
<水処理材料>
本実施形態は、前記本実施形態のろ過材料と活性炭とを含む水処理材料である。本実施形態のろ過材料は、活性炭と混合して用いてもよい。ろ過材料と活性炭との混合比率を調整することにより、例えば浄水器カートリッジのサイズ、交換周期およびコストのバランス等を調整することができる。
【0070】
水処理材料に用いる活性炭は、粉末であることが好ましい。
【0071】
<浄水器>
本実施形態は、前記本実施形態のろ過材料を備える浄水器である。
本実施形態のろ過材料は、浄水器のろ材として好適に用いることができる。
【0072】
本実施形態の浄水器としては、水道水に含まれる重金属等の不純物の除去することを目的とした浄水器が挙げられる。浄水器の設置形態としては、水栓の蛇口に取り付ける蛇口直結型、流し台の上に設置する据置型、流し台の下の収納キャビネット内に設置するアンダーシンク型(ビルトイン型)等、公知の設置形態に適用できる。
【0073】
また、家庭等において、1~2リットル程度の原水を一度に浄化することができるとともに、そのまま冷蔵庫等に保管できるピッチャー型浄水器であってもよい。ピッチャー型浄水器としては、例えば、外容器と、該外容器に着脱自在に取り付けられ、該外容器内を上下に仕切る内容器と、該内容器に取り付けられる浄水カートリッジと、を有するものが挙げられる。
【0074】
また、浄水器内に着脱可能に設けられる浄水カートリッジに前記本実施形態のろ過材料を充填してもよい。
【0075】
また、浄水場、下水処理場、工場等において、重金属イオンを除去するためのろ過材料としてもちいてもよい。
【0076】
本実施形態は以下の態様を包含する。
【0077】
(2-1)
水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過材料の使用であって、前記ろ過材料は、三チタン酸ナトリウムを含み、前記ろ過材料は下記式(A)を満たす、水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過材料の使用。
0cps・deg.<IA≦600cps・deg. ・・・(A)
(式(A)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【0078】
(2-2)
前記ろ過材料は、IBと前記IAが下記式(B)を満たす、(2-1)に記載の水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過材料の使用。
0<IA/IB≦5.0・・・(B)
(式(B)中、IBは、CuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=28±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【0079】
(2-3)
前記ろ過材料は、BET比表面積が1.0m/g以上20.0m/g以下である、(2-1)又は(2-2)に記載の水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過材料の使用。
【0080】
(2-4)
前記ろ過材料の50%累積体積粒度であるD50は、1nm以上30nm以下である、(2-1)~(2-3)のいずれか1つに記載の水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過材料の使用。
【0081】
(2-5)
重金属イオンの除去率が99.0%以上である、(2-1)~(2-4)のいずれか1つに記載の水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過材料の使用。
【0082】
(3-1)
水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過方法であって、重金属イオンを含む水溶液中に、ろ過材料を添加して、攪拌又は振盪させる工程を含み、前記ろ過材料は、三チタン酸ナトリウムを含み、前記ろ過材料は下記式(A)を満たす、水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過方法。
0cps・deg.<IA≦600cps・deg. ・・・(A)
(式(A)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【0083】
(3-2)
前記ろ過材料は、IBと前記IAが下記式(B)を満たす、(3-1)に記載の水溶液中の重金属イオンをカチオン吸着するためのろ過方法。
0<IA/IB≦5.0・・・(B)
(式(B)中、IBは、CuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=28±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
【実施例
【0084】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、実施例3は参考例3とし、実施例7は参考例7とする。
【0085】
<IA及びIBの測定>
ろ過材料のIA及びIBは、以下の方法により測定した。
【0086】
(IA)
まず、ろ過材料について、CuKαを入射X線とし、かつ回折角2θの走査範囲を5度以上80度以下とする粉末X線回折実験を行い回折パターンを得た。得られた回折パターンから、2θ=25±1度の範囲内の最大の回折ピークを決定した。
さらに、決定した回折ピークのピークスタートからピークエンドまでのピーク曲線と、ベースラインとで囲まれる範囲のピーク面積を算出した。
【0087】
(IB)
まず、CuKαを入射X線とし、かつ回折角2θの走査範囲を5度以上80度以下とする粉末X線回折実験を行い回折パターンを得た。得られた回折パターンから、2θ=28±1度の走査範囲内の最大の回折ピークを決定した。
さらに、決定した回折ピークのピークスタートからピークエンドまでのピーク曲線と、ベースラインとで囲まれる範囲のピーク面積を算出した。
【0088】
得られたIAとIBの値から、IA/IBを算出した。
【0089】
粉末X線回折実験は、デスクトップX線回折装置 MiniFlex600(株式会社リガク製)を用いた。
管電圧40kV、管電流15mAの出力で発生させた600WのCuKαを入射X線とした。
【0090】
スキャニングモードは、2θ/θとした。スキャニングタイプは、連続走査とした。
入射高さ制限スリット(IHS)は、10.0mm、発散スリット(DS)は、+1.250度、散乱スリット(SS)は、8.0mm、受光スリット(RS)は、13.0mm、に設定した。
実験条件は、スキャンスピード:10度/min、サンプリング幅:0.02度、2θ=5度以上80度以下の範囲で行った。
【0091】
ピーク面積は、数値計算ソフトを用いて算出した。
【0092】
<BET比表面積>
ろ過材料のBET比表面積は、マイクロトラック・ベル社製BELSORP(登録商標)-miniXを用いて測定した。
【0093】
<D50
ろ過材料の50%累積体積粒度であるD50は、以下の湿式の方法により測定した。
【0094】
湿式での測定方法としては、レーザー回折散乱法による測定方法を用いた。
具体的には、まず、2gの粉末状のろ過材料を少量ずつ、吸光度を見ながら、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに直接投入し、ろ過材料を分散させた分散液を得た。
【0095】
次に、得られた分散液について、レーザー回折粒度分布計により粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。そして、得られた累積粒度分布曲線において、微小粒子側から50%累積時の粒子径の値が50%累積体積粒度D50(μm)とした。
レーザー回折粒度分布計としては、島津製作所製、粒子径分布測定装置SALD-7100を用いた。
【0096】
<実施例1>
10.782gのTiOと、7.383gの酢酸ナトリウムを混合し、粉状の混合物1を得た。混合物1を30mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。
ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100を用い、混合物1を焼成した。
焼成条件は、室温(約20℃)から、5℃/分の昇温速度で昇温した後、600℃の焼成温度で10時間保持した。
次いで、電気炉の電源を切り、炉内で放冷した。その結果、ろ過材料1を得た。
【0097】
得られたろ過材料1のX線回折パターンを図1に示す。X線回折パターンから、ろ過材料1は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0098】
ろ過材料1の三チタン酸ナトリウムは、IAが225.4cps・deg.であった。
【0099】
ろ過材料1を水中に浸漬し、塩酸を用いてpHを6~7に調整した。pHの測定温度は室温とした。
【0100】
<実施例2>
焼成時間を5時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりろ過材料2を得た。
得られたろ過材料2のX線回折パターンを図1に示す。X線回折パターンから、ろ過材料2は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0101】
ろ過材料2の三チタン酸ナトリウムは、IAが254.7cps・deg.であった。
【0102】
<実施例3>
焼成時間を2時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりろ過材料3を得た。
得られたろ過材料3のX線回折パターンを図1に示す。X線回折パターンから、ろ過材料3は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0103】
ろ過材料3の三チタン酸ナトリウムは、IAが574.2cps・deg.であった。
【0104】
<参考例>
TiOのX線回折パターンを参考例として図1に示す。図1に示すとおり、2θ=25±1度の走査範囲の回折ピークは、TiOに由来することを確認した。
【0105】
<実施例4>
0.719gのTiOと、0.492gの酢酸ナトリウム、0.159gの炭酸ナトリウムを混合し、粉状の混合物2を得た。混合物2を2mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。以降は、実施例1と同様の方法によりろ過材料4を得た。
得られたろ過材料4のX線回折パターンを図1に示す。X線回折パターンから、ろ過材料4は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0106】
ろ過材料4の三チタン酸ナトリウムは、IAが256.9cps・deg.であった。
【0107】
<実施例5>
10.782gのTiOと、7.742gのクエン酸三ナトリウムとを混合し、粉状の混合物3を得た。混合物3を30mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。
ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100を用い、混合物3を焼成した。焼成条件は、室温(約20℃)から、5℃/分の昇温速度で昇温した後、600℃の焼成温度で10時間保持した。
次いで、電気炉の電源を切り、炉内で放冷し、ろ過材料5を得た。
【0108】
得られたろ過材料5のX線回折パターンを図2に示す。X線回折パターンから、ろ過材料5は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0109】
ろ過材料5の三チタン酸ナトリウムは、IAが318.5cps・deg.であった。
【0110】
ろ過材料5を水中に浸漬し、塩酸を用いてpHを6~7に調整した。pHの測定温度は室温とした。
【0111】
<実施例6>
10.782gのTiOと、6.030gのシュウ酸ナトリウムとを混合し、粉状の混合物4を得た。混合物4を30mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。
ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100を用い、混合物4を焼成した。焼成条件は、室温(約20℃)から、5℃/分の昇温速度で昇温した後、600℃の焼成温度で10時間保持した。
次いで、電気炉の電源を切り、炉内で放冷し、ろ過材料6を得た。
【0112】
得られたろ過材料6のX線回折パターンを図3に示す。X線回折パターンから、ろ過材料6は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0113】
ろ過材料6の三チタン酸ナトリウムは、IAが318.4cps・deg.であった。
【0114】
ろ過材料6を水中に浸漬し、塩酸を用いてpHを6~7に調整した。pHの測定温度は室温とした。
【0115】
<実施例7>
0.719gのTiOと、0.636gの酒石酸ナトリウム二水和物とを混合し、粉状の混合物5を得た。混合物5を2mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。
ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100を用い、混合物5を焼成した。焼成条件は、室温(約20℃)から、5℃/分の昇温速度で昇温した後、600℃の焼成温度で10時間保持した。
次いで、電気炉の電源を切り、炉内で放冷し、ろ過材料7を得た。
【0116】
得られたろ過材料7のX線回折パターンを図4に示す。X線回折パターンから、ろ過材料7は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0117】
ろ過材料7の三チタン酸ナトリウムは、IAが47.55cps・deg.であった。
【0118】
ろ過材料7を水中に浸漬し、塩酸を用いてpHを6~7に調整した。pHの測定温度は室温とした。
【0119】
<比較例1>
0.719gのTiOと、0.510gの硝酸ナトリウムとを混合し、粉状の混合物6を得た。混合物6を2mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。
ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100を用い、混合物6を焼成した。焼成条件は、室温(約20℃)から、5℃/分の昇温速度で昇温した後、600℃の焼成温度で10時間保持した。
次いで電気炉の電源を切り、炉内で放冷し、ろ過材料8を得た。
【0120】
得られたろ過材料8のX線回折パターンを図5に示す。X線回折パターンから、ろ過材料8は五チタン酸ナトリウム(NaTi12)であることが確認できた。
【0121】
<比較例2>
10.782gのTiOと、Na源兼フラックスとして7.650gの硝酸ナトリウムと、2.385gの炭酸ナトリウムとを混合し、混合物7を得た。混合物7を30mLの蓋付のアルミナ製のるつぼに入れた。
ヤマト科学株式会社製の電気炉FO100を用い、混合物7を焼成した。焼成条件は、室温(約20℃)から、45℃/時間の昇温速度で昇温した後、800℃で5時間保持した。
次いで、5℃/時間の速度で500℃まで冷却した後に放冷した。放冷後、水を用いてフラックス成分を洗浄し、ろ過材料9を得た。
【0122】
得られたろ過材料9のX線回折パターンを図6に示す。X線回折パターンから、ろ過材料9は三チタン酸ナトリウム(NaTi)であることが確認できた。
【0123】
下記表1に、実施例1~7のろ過材料のIA、IB、IA/IB、BET比表面積及びD50を記載する。
【0124】
【表1】
【0125】
<重金属イオン除去試験>
実施例1、及び実施例5~7で製造したろ過材料について、金属イオンの除去性能について下記の方法により評価した。
【0126】
重金属イオンを含む試験液には、富士フイルム和光純薬株式会社製のICP分析用多元素混合標準液W-V(上水試験用)を用いた。
【0127】
この標準液はアルミニウム、ホウ素、カドミウム、クロム、銅、鉄、モリブデン、マンガン、ニッケル、鉛及び亜鉛の11種の元素をそれぞれ100±5mg/Lの濃度で含有する硝酸溶液である。
【0128】
この標準液は、非金属のホウ素、モリブデン酸イオン(アニオン)の状態で存在している可能性のあるモリブデンと、ろ過材料から放出されるナトリウムは、試験の除去対象とはしないこととする。
つまり、非金属のホウ素、モリブデン酸イオン(アニオン)及びろ過材料から放出されるナトリウム以外の9種を除去対象重金属イオンとした。
【0129】
この標準液を水で1000倍に希釈し、各金属イオン濃度を100±5μg/Lに調整したものを試験液とした。試験液の初期pHは室温で3.0となった。
【0130】
準備した試験液70mLを100mLのPFAボトルに入れ、これにろ過材料70mgを投入後、室温(20℃)で20時間、120rpmの条件で振盪させた。
【0131】
20時間後、ろ過材料と試験液の懸濁液をろ過し、水溶液中に残留している各重金属イオンの濃度をICP-OES分析によって定性及び定量した。これにより、除去前の重金属イオン量である初期濃度(μg/L)と、除去後の重金属イオン量である最終濃度(μg/L)を測定した。
初期濃度と最終濃度の値から、除去率(%)を下記の式により求めた。その結果を表2~4に示す。
(初期濃度-最終濃度)/初期濃度×100
【0132】
除去率の値から、残存率(%)を下記の式により求めた。その結果を表2~4に示す。
残存率(%)=100-除去率(%)
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
上記結果に示した通り、実施例1、5~7のろ過材料を用いると、9種類の重金属イオンを除去することができた。さらに除去後の重金属イオンの残存率は、9種類中8種類が0%であり、高い除去率を発揮することが確認できた。
これは、実施例1、5~7のろ過材料の結晶構造は層状構造を基本骨格とするため、層間に配置されたナトリウムイオンと重金属イオンとがイオン交換されたためと考えられる。
【0137】
本実施形態により、省エネルギーかつ低コストで製造でき、水中に存在する複数種の重金属イオンに対し、高い吸着性能を発揮するろ過材料を提供できることが実施例により具体的に確認できた。
【要約】
三チタン酸ナトリウムを含むろ過材料であって、水溶液に含まれる重金属イオンをカチオン吸着し、下記式(A)を満たす、ろ過材料。0cps・deg.<IA≦600cps・deg.・・・(A)(式(A)中、IAはCuKα線で得た前記ろ過材料の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=25±1度の走査範囲内の最大の回折ピークから算出する、ピークスタートからピークエンドまでのピーク面積である。)
図1
図2
図3
図4
図5
図6