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特許7013072水頭症バルブ用磁気抵抗センサツールセット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】水頭症バルブ用磁気抵抗センサツールセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
A61M1/00 130
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017127240
(22)【出願日】2017-06-29
(65)【公開番号】P2018000962
(43)【公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】62/356,775
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/443,521
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517377938
【氏名又は名称】インテグラ・ライフサイエンシーズ・スイッツァランド・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Integra LifeSciences Switzerland Sarl
【住所又は居所原語表記】rue Girardet 29, 2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100184402
【氏名又は名称】坂井 康記
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・フライドラー
(72)【発明者】
【氏名】トラルフ・ボルク
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-66443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0022793(US,A1)
【文献】特開2010-240408(JP,A)
【文献】特開2016-55168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に入れ子にされた指示器と併せて使用される、埋込みバルブを位置特定するためのツールキットの一部としてのロケータであって、
下側リングであって、
患者と接触するように構成された接触面、
内側入れ子指示器表面から径方向内側に延在するキーであって、入れ子にされた前記指示器のキー点と位置合わせして回転を防ぐキー、及び
前記接触面の反対側の下側リング接合部、
を備えた、下側リングと、
上側リングであって、
前記下側リング接合部と回転可能に接続する上側リング接合部、
前記上側リング接合部の反対側にあり、前記埋込みバルブを通して識別可能である流れ方向の視覚指示器を備える流れ方向識別子、及び
前記上側リング接合部の反対側にあり前記埋込みバルブの設定を表示する流れ設定識別子、
を備えた、上側リングと、
を備え、
前記上側及び下側リングが互いに対して回転し、
前記下側リングには底面がない、ロケータ。
【請求項2】
前記下側リングが、更に、前記接触面と前記下側リング接合部との間における当該下側リングの高さを拡張し圧縮する伸縮自在部分を備え、前記伸縮自在部分が、垂直方向にのみ動く、請求項1に記載のロケータ。
【請求項3】
前記流れ方向識別子が、前記埋込みバルブを通して流体流と位置合わせされた矢印である、請求項1に記載のロケータ。
【請求項4】
前記流れ方向識別子及び前記流れ設定識別子が、前記上側リングの第1の外周の外側に延在する花弁状部またはタブを有する可視マーク備える、請求項1に記載のロケータ。
【請求項5】
前記上側リングが、前記ロケータ内に入れ子にされた調整器の割り出しを支援するように構成された溝又は突起を有する回転止め部を備える、請求項1に記載のロケータ。
【請求項6】
前記下側リングが、固定されたままである一方、前記上側リングが、前記下側リングに対して回転さる、請求項1に記載のロケータ。
【請求項7】
前記流れ設定識別子が、上側リングのうち入れ子にされた前記指示器を受けるための上側入れ子面に位置決めされており、
前記流れ設定識別子が、前記埋込みバルブの設定を示す可視マークを備える、請求項1に記載のロケータ。
【請求項8】
前記可視マークが、前記埋込みバルブの回転子の位置を含む、請求項に記載のロケータ。
【請求項9】
前記伸縮自在部分が、互いに対して拡張し圧縮するように構成された一連の入れ子式部分を備える、請求項2に記載のロケータ。
【請求項10】
中に入れ子にされた指示器と併せて使用される、埋込みバルブを位置特定するためのツールキットの一部としてのロケータであって、
下側リングであって、
患者と接触するように構成された接触面、
内側入れ子指示器表面から延在するキーであって、入れ子にされた前記指示器のキー点と位置合わせして回転を防ぐキー、及び
前記接触面の反対側の下側リング接合部、
を備えた、下側リングと、
上側リングであって、
前記下側リング接合部と回転可能に接続する上側リング接合部、
前記上側リング接合部の反対側にある流れ方向識別子であって、前記埋込みバルブを通して識別可能である流れ方向の視覚指示器を備える、流れ方向識別子、及び
前記上側リング接合部の反対側にあり前記埋込みバルブの設定を示す流れ設定識別子、
を備えた、上側リングと、
を備え、
前記上側リングが、固定された前記下側リングに対して回転する、ロケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2016年6月30日に出願された米国特許仮出願第62/356,775号の優先権を主張する。本仮出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、外科的に埋め込み可能な液体排出システムに関する。更に詳細には、本発明は、脳脊髄液排出に使用される調整可能なバルブを位置特定し調整するための体外ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
水頭症は、脳の脳室、すなわち空洞内での脳脊髄液(CSF)の異常な蓄積によって引き起こされる神経学的症状である。水頭症は、乳児、子供及び大人に影響を及ぼし得、脳内でのCSFの通常の排出がなんらかの形で阻害されるときに起こる。そのような阻害は、例えば、遺伝的素因、脳室内出血又は頭蓋内出血、髄膜炎等の感染、あるいは頭部の外傷を含む多数の要因によって起こり得る。CSFの流れの阻害は、結果的に、CSFが脳室システムによって生成される割合と、CSFが血流に吸収される割合との不均衡を生じさせる。この不均衡は、脳への圧力を増加させ、脳室を拡張させる。治療せずにいると、水頭症は、硬膜下血腫、脳細胞の圧縮、及び血流障害を含む、深刻な医学的状況を結果としてもたらし得る。
【0004】
水頭症は、脳室から、右心房、腹膜、又はCSFが循環系の一部として吸収され得る体の他の場所等の体の別の区域へと、CSFの流れを分流するために、シャントシステムを外科的に挿入することによって、治療することが最も頻繁である。種々のシャントシステムが、水頭症の治療のために開発されてきた。典型的には、シャントシステムは、脳室カテーテル、シャントバルブ及び排出カテーテルを備える。シャントシステムの一端において、脳室カテーテルは、第1の端部が患者の脳室内にあるように患者の頭蓋の穴を通じて挿入される第1の端部、及び典型的にはシャントバルブの入口部分に結合されている脳室カテーテル第2の端部を有することができる。脳室カテーテルの第1の端部は、CSFがシャントシステムに入ることを可能にするための複数の穴又は孔を含むことができる。シャントシステムのもう一方の端において、排出カテーテルは、シャントバルブの出口部分に取り付けられる第1の端部、及び血流に再吸収されるためにCSFがシャントシステムから出るのを可能にするように構成されている第2の端部を有する。典型的には、シャントバルブは、埋め込み後に医師によって患者の皮膚を通じて触診可能である。シャントバルブは、種々の構成を有することができ、埋め込み後に液体排出の特性の調整が可能になるように設計することができる。
【0005】
バルブの設定を外部から読み取る又は検証することが可能であることも重要である。いくつかの加減バルブでは、調整前後にX線影像を用いてバルブの現在の設定を確認する。他の加減バルブでは、患者の皮膚の外で、バルブの上方に位置決めされた磁気コンパス様のデバイスを使用して、バルブ内での回転子の配向を磁気的に読み取ることができる。実施例では、調整器と指示器の両方がロケータと併せて使用される。ロケータツールは、皮下におけるバルブの位置を判定し、それに続いてこの確立された位置を維持するプロセスで使用される。調整器及び指示器ツールは、ロケータツール内で係合して、それら自身の機能を実施する。
【0006】
ロケータは、患者の皮膚を搏動させ、バルブの切欠きをロケータの基部内で位置合わせすることによって配置され得る。配置後、バルブの形状は流れの方向を示し、バルブ調整の向きはこの方向に基づく。別のタイプの弁は、流れ方向の磁気識別を可能にする付加的なマーカ磁石を有することができ、したがって、バルブの方向を探すために搏動を必要としない。
【0007】
しかしながら、ロケータツールは、調整ツールの適切な配置と使用のためにやはり必要である。磁気抵抗センサを利用する指示器ツールは、地磁界を考慮するために、バルブから少なくとも10~15cmの距離でゼロ調整されなければならない。使用中にロケータの絶対的な向きが変更されるたびに、新しいゼロ調整が必要になる。これには時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、指示器ツールの絶対的な向きを維持しながら、ロケータツールを回転させることでき、かつバルブの流れ方向と一致させることができるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例は、埋込みバルブを位置特定するためのツールキットの一部としてのロケータを含む。ロケータは、中に入れ子にされた指示器と共に使用される。ロケータは、患者と接触する接触面、入れ子指示器を位置決めして回転を防ぐキー、及び接触面の反対側の下側リング接合部、を備えた下側リングを有する。また、下側リング接合部と回転可能に接続する上側リング接合部、流れ方向識別子、及び流れ設定識別子、を備えた、上側リングも備えている。更に、上側及び下側リングは互いに対して回転し、下側リングには底面がない。ロケータの別の実施例では、下側リングが、更に、接触面と下側リング接合部との間の高さで拡張し圧縮する伸縮自在部分を備え、伸縮自在部分は垂直方向にのみ動く。
【0010】
本発明の別の実施例は、埋込みバルブを位置特定するためのツールキットを使用する方法である。ツールキットは、互いに回転可能に係合された上側及び下側リングを備えたロケータと、ロケータ内に入れ子になった指示器及び調整器とを有する。ステップは、概略的に埋込みバルブの上にロケータを配置するステップと、指示器をロケータ内に入れ子にするステップと、ロケータと指示器を埋込みバルブ上の中心に位置決めするステップと、埋込みバルブの流れ方向とバルブ設定を決定するステップと、下側リングの位置を維持しながら、ロケータの外側リングを回転させて、決定された流れ方向とバルブ設定を一致させるステップと、を含む。
【0011】
方法は、入れ子にするステップの前に、埋込みバルブから遠くで指示器をゼロ調整するステップを更に有する。別の例は、入れ子にするステップの後で、ロケータを伸縮させるステップと、埋込みバルブから遠くで指示器をゼロ調整するステップと、ゼロ調整ステップの後でかつ中心位置決めするステップの前に、ロケータを圧縮するステップと、を含む。また、ロケータから指示器を取り外ステップと、ロケータ内の調整器を、決定されたバルブ設定に向けて配置するステップと、調整器を回転させることによってバルブ設定を新しいバルブ設定に調整するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、添付の特許請求の範囲で詳細に記載される。本発明の上述の態様及び更なる態様は、添付図面と共に以下の説明を参照することによってよりよく理解することができ、添付図面において、種々の図の同様の数字は同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。
【0013】
図面は、限定としてではなく単なる例示として、本教示に従う1つ又は2つ以上の実現例を描写している。図面中、同様の参照番号は同じ又は類似の要素を指す。
図1】患者に埋め込まれた典型的な磁気方向性バルブの図である。
図2】本発明による典型的な磁気方向性バルブの側面断面図である。
図3】指示器ツール、ロケータツール、及び設定調整器ツールを含む、本発明によるツールセットの斜視図である。
図4】ロケータの一実施例の上面図である。
図5A】本発明のロケータの一実施例の部分斜視断面図である。
図5B】伸縮自在部分で収縮及び拡張されたロケータの側面図である。
図5C】伸縮自在部分で収縮及び拡張されたロケータの側面図である。
図6】本発明の指示器の一実施例の平面図である。
図7】ロケータ内に入れ子にされた調整器の上面図である。
図8図7の線8-8に沿った部分断面図である。
図9A】本発明のツールキットを使用する方法の流れ図である。
図9B】本発明のツールキットを使用する方法の流れ図である。
図10】患者のバルブ上のロケータの配置の実施例を示す図である。
図11A】標識によるロケータの較正を示す図である。
図11B】標識によるロケータの較正を示す図である。
図12】ロケータ内に入れ子にされた調整器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、関連する教示の十分な理解を提供するために、例示として多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、本教示はかかる詳細を伴わずに実施されてもよいことが、当業者には明白であろう。他の例では、本教示の態様が不必要に曖昧になることを回避するために、周知の方法、手順、構成要素、及び/又は回路機構が比較的高位で詳細を含まずに記載されている。
【0015】
本発明の方法及び一体型ツールは、埋め込み可能であって磁気的に設定可能なバルブ(バルブ)の位置特定、並びに現行設定から目標設定へのバルブの設定の変更(調整)を、バルブによる干渉を伴うことなく、医師が一貫して信頼性高く行うことを可能にする。一実施例では、バルブは、バルブの設定を介して、水頭症患者のCSF排出流量及び排出圧の少なくとも一方を制御するのに使用され、患者の頭皮又は患者の皮膚の別の部分の下に埋め込まれ、また、患者の皮膚の外部(上方)から調整可能であるが、ただし位置を特定する必要がある。
【0016】
水頭症バルブの生体外読取り及び調整のための他のツール及び方法が、「Tools and Methods for Programming an Implantable Valve」と題する米国特許第8,038,641号に開示され、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲内において、本明細書で開示する様々な実施例の特徴は任意の組み合わせで使用されて、埋め込み可能なバルブの読取り及び調整のための追加の一体型ツール及び方法を構成することができる。
【0017】
図1図2は、患者の皮膚102の下に埋め込まれた汎用型の埋め込み可能なバルブ100を示す。バルブ100は、バルブ100の調整又はその設定の判定に使用される基準点である、磁軸104を含む。一実施例では、バルブ100は、複数の所定の流量及び圧力に対応する、複数の所定の設定を有する。一実施例では、複数の設定は8つの設定を含む。
【0018】
バルブ100は、磁気的に回転可能な回転子110を有する任意の磁気方向性、設定可能、及び埋め込み可能なバルブでよいことを理解されたい。一実施形態では、バルブ100は、軸104に沿った回転子110の変位によってロック解除されて磁軸104を中心に回転し、この変位は、軸104に沿った引力磁場の印加によって提供される。更に他の実施形態では、引力磁場と、回転子を軸を中心に回転させる磁場は、永久磁石でも電磁石でもよい単一磁気源によって提供される。
【0019】
更に、バルブ100は、バルブ100の流れ方向Fを示すために、端部の近くのバルブ100の壁108に埋め込まれた固定磁気マーカ106を備え得る。固定磁気マーカ106は、永久磁石片でよく、一実施例では、壁108に対して直角方向に磁化され得る。固定磁気マーカ106は、一実施例では、回転子110、したがってその設定、及び読取り値に対するマーカ106の磁気的影響を最小にするために、磁軸104からできるだけ遠い位置に提供され得。
【0020】
図1は、患者の頭蓋Sの皮膚102の下に埋め込まれたバルブ100を示す。埋め込まれた後、バルブは、皮膚の下にあり、典型的には毛髪によって覆われる。次に、図3は、バルブ100を位置特定し、設定を識別し、かつ調整するための、本発明による磁気抵抗センサツールセット500を示す。ツールセットは、ロケータ200、指示器300、及び調整器400を含み、それぞれについては順番に後述される。指示器ツール300と調整器ツール400はそれぞれ、後で詳しく図示され述べられるように、ロケータツール200の上で入れ子になり得る。図示されたように、ツールセット500は、一実施例として、調整器400を保持するための小さい方の凹部504と、ロケータ200と入れ子にされた指示器300を保持するための大きい方の凹部506とを有する保管及び搬送ケース502を含み得る。好ましくは、指示器300の一部分は、ツールセット500の保管又は搬送のためにケース502が閉じられたときに、上側凹部508内に収容される。
【0021】
図4は、ロケータ200の一実施例を示す。ロケータ200は、典型的には、中心202を有する円形でよく、直径Dを有することができる。この実施例では、ロケータ200は、リングでよく、その内径内に底面/障壁/薄膜がない。ロケータ200は、一実施例では円形であり得るが、調整器及び/又は指示器がそれらの機能を実施することが可能になるような、任意の形状を有することができる。したがって、一実施例では、ロケータ200は、円形ではなく多数の線分から構成することができる。
【0022】
また、ロケータ200は、流れ方向標識204と流れ設定標識206を有することができる。これらの標識は両方とも、直径Dによって規定された第1の外周208(第1の外周208はπ×直径Dであり得る)の外側に延在する花弁状部若しくはタブを有するか又は有さない可視マークでよい。流れ方向識別子204は矢印でよく、この矢印は、埋め込まれたバルブ100を通る流体流方向Fと位置合わせされる。流れ設定標識206は、バルブ100の設定、すなわちいくつかの実施例では回転子110の位置を示す可視マークでよい。
【0023】
図5A図5Cは、ロケータ200の実施例の異なる図を示す。図5Aは、ロケータ200の部分斜視断面を示し、図5B図5Cは、ロケータ200の圧縮及び拡張バージョンを示す。ロケータ200は、2つの接続リング210、220で作製され得る。外側/上側リング210及び下側/内側リング220は、互いに回転でき、かつ互いに垂直方向に変位できる。外側リング210は、流れ方向識別子204と流れ設定標識206の両方を有することができる。更に、外側リング210は、回転止め部212、すなわち調整器400の割り出しを支援する溝又は突起を有することができる。回転止め部212は、医者の慎重な意図なく調整器400が任意の設定から他の任意の設定にすぐに回転するのを防ぐことができる。これは、バルブ回転子110の回転制限も模倣できる。
【0024】
上側リング210と下側リング220は、回転接合部214で接続する。詳細には、上側リング210は、上側リング接合部214Aを有し、下側リングは、下側リング接合部214Bを有する。接合部214は、上側及び下側リング210,220が互いに対して回転するのを可能にする。詳細には、下側リング220を固定させたまま、上側リング210を下側220に対して回転させることができる。この回転は、時計回りと反時計回りの両方でよく、また無制限でよく、他の実施例は、一方向又は360°未満の回転を有することができる。
【0025】
下側リング220は、上側リング210の反対の皮膚接触面216を有し、ロケータ200は患者(patent)と接触する。下側リング220は、また、後でより詳しく述べられる標識キー又はロック218を有する。更に、接合部214と皮膚面216の間に伸縮自在部分222があってもよい。伸縮自在部分222は、下側リング220の高さHを皮膚102から遠ざかる方向に増大させることができる。伸縮自在部分222は、互いに拡張し圧縮できる一連の入れ子式部分でよい。一実施例では、伸縮自在部分222は、垂直方向にのみ変位する。拡張又は圧縮するように回転しない。その理由は、入れ子にしたままで指示器300をゼロ調整するのに十分遠くに変位できるからである。したがって、一実施例では、高さHは、0cmから約15cmまで(約0インチから約6インチまで)拡張できる。その距離でゼロ調整された後、伸縮自在部分222は、指示器300がバルブ100を読み取ることができるように圧縮され得る。
【0026】
次に指示器300に移ると、指示器300を使用して、流れ方向Fと回転子110の位置を決定できる。指示器300の一実施例が図6に示され、流れ位置識別子302、回転子位置識別子304、及び2つの識別子302,304の反対側の1つ又は2つ以上のキーポイント306を含み得る。指示器300は、ロケータ200の内部に入れ子になるか嵌まるようにサイズ決めされてよく、この2つは、バルブ100に関する関連情報を決定するために合わせて使用される。
【0027】
指示器300は、ゼロ調整され(後述されるプロセスで)、ロケータ200に挿入される。ロケータ200上のキー218とキーポイント306は、指示器300が挿入後にロケータ200に対して回転できないように位置合わせされる。流れ位置識別子302は、少なくとも固定磁気マーカ106から磁場を読み取り、バルブ100の向きでもある流れFの方向を示す。同様に、回転子位置識別子304は、回転子110の位置を読み取り、2つの読取り値の間でバルブ100の設定を決定できる。
【0028】
バルブ100の実施例では、回転子110の設定は、流れ方向Fに向けられた後でのみ理解され得る。流れ方向Fに対する回転子110の様々な位置はそれぞれ、異なる流れ設定である。回転子110の絶対位置を知るだけでは、バルブ設定を決定するのに十分な情報が提供されない。
【0029】
図7図8に移ると、調整器400は、ロケータ200内に入れ子にされて示されており、ロケータ200上の付加的特徴が、調整器ツール400と共に利用され得る。上側リング210の内部224は、一連の回転止め部212を規定し、各回転止め部212は、調整器400上の戻り止め402を収容できる。戻り止め402が回転止め部212の1つと係合する際に、クリック音及び/又は触覚などの触覚及び可聴指標の少なくとも1つを有することが望ましい。記載されるように、裾広がりの表面に、最低圧力設定や最高圧力設定などの圧力バルブ表示部206があってもよい。
【0030】
ツールキット500(詳細にはロケータ200)の方法及び使用の例は、図9図12に示され後述され得る。図9Aは、方法の実施例のステップを示す。最初に、ロケータ200をバルブ100の上に配置できる(図10)(ステップ600)。一般に、一実施例では皮膚102が搏動されず、他の実施例では皮膚102が少し搏動されて、ロケータ200の中心202が、バルブ100の中心/磁軸104の5mm以内に位置決めされ得る。配置する際、バルブ100の位置又は流れ方向Fに対するロケータ200の向きは考慮されない。別の言い方をすると、ロケータ200は、バルブ100の上で任意の向きに配置され得る。次に、指示器300が、ロケータ200に入れ子にされる前にゼロ調整される(ステップ602)。これは、当該技術分野で知られており、地球の磁場を考慮するために指示器300をバルブ100の約10~15cm上に保持することを含み得る。次に、指示器300がロケータ200内に入れ子にされ(ステップ604)、ユーザは、少なくとも流れ方向とバルブ設定についての測定を開始できる。指示器300が入れ子にされたとき、指示器300上のキーポイント306が、ロケータ200上のキー218と合致する必要がある。これでロケータ200内の指示器300の向きが決まる。他の実施例では、指示器300は、最初に入れ子にされ、次にロケータ200の下側リング220を伸縮させることによってゼロ調整され得る。
【0031】
入れ子にされた後で、ロケータ200と指示器300は、ロケータの中心202がバルブ100の磁軸104上の中心に位置決めされて適切な読取りとバルブ調整が確実になるまで、流れ位置識別子302及び/又は回転子位置識別子304の読取り値に基づいて、皮膚102上でゆっくりと動かされ得る(ステップ606)。対200,300が中心に位置決めされた後で、流れ位置識別子302は、磁気マーカ106を読み取って流れ方向Fを決定でき、回転子位置識別子304は、回転子110の位置を読み取ってバルブの設定を決定できる(ステップ608)。図11Aは、対200、300が中心に位置決めされているが、外側リング210が指示器300上の読取り値302、304と位置が合わされていない状態を示す。これは、ロケータ200の配置の一般的性質によるものであり得る。外側リング210は、流れ方向標識204を流れ位置識別子302と位置合わせし、流れ設定標識206を回転子位置識別子304と位置合わせするように回転され得る(ステップ610)。これは図11Bに示され、この実施例は、外側リング210を時計回りに回転させて標識204,206を識別子302,304と位置合わせできることを示す。外側リング210が回転されている間、内側リング220は、指示器300と共に固定されたままであり、回転しない。これは時間節約になり、先行技術と同様に、ロケータ/指示器対200,300の向きがずれ、指示器300の絶対向きが変化した場合は、指示器300を再びゼロ調整する必要がある。
【0032】
ここでバルブ100の設定を完了するために、指示器300をロケータ200から取り外すことができ(ステップ612)、この場合もロケータ200を中心202及び磁軸106に対して動かさないように注意する。次に、調整器400は、調整矢印404が、回転子位置識別子304によって識別されたような実際の現在バルブ設定に対応するロケータ200上の流れ設定標識206を指すように、ロケータ200内に配置される(ステップ614)(図12)。最後に、調整器400を回転させて、バルブ設定を変更するために調整矢印404がロケータ200上の新しい流れ設定標識206を指すようにする(ステップ616)。
【0033】
所望の設定に達した後で、調整器400は、更に回転させることなくロケータ200から真上に持ち上げられる。好ましくは、指示器300は、次にロケータ200内に再配置され、適正なバルブ圧力設定を確認するために別の読取り値が取得される。指示器ツールの再使用の代替又は追加として、埋め込まれたバルブ100をx線で画像化して現在のバルブ設定を確認できる。
【0034】
図9Bは、図9図12に示され後述され得るツールキット500(詳細にはロケータ200)の方法及び使用の別の実施例を示す。図9は、方法の一実施例のステップを示す。最初に、ロケータ200をバルブ100の上に配置できる(図10)(ステップ600)。次に、指示器300が、ロケータ200内に入れ子にされ(ステップ604)、ロケータ300が、バルブ100から約10cm~15cmの距離に伸縮される(ステップ603)。次に、指示器300はゼロ調整され(ステップ602)、次にロケータ300が、バルブ100から測定値を取得できるように圧縮される(ステップ605)。残りのステップは上記の通りであり、ロケータ200と指示器300が中心に位置決めされて適切な読取りとバルブ調整を確実にすることができる(ステップ606)。中心に位置決めされた後で、バルブの設定が決定される(ステップ608)。外側リング210は、流れ方向標識204を流れ位置識別子302と位置合わせし、流れ設定標識206を回転子位置識別子304と位置合わせするように回転され得る(ステップ610)。ここでバルブ100の設定を完了するために、指示器300をロケータ200から取り外すことができ(ステップ612)、この場合もロケータ200を中心202及び磁軸106に対して動かさないように注意する。次に、調整矢印404が、回転子位置識別子304によって識別されるような実際の現在のバルブ設定に対応するロケータ200上の流れ設定標識206を指すように、調整器400がロケータ200内に配置される(ステップ614)。最後に、調整器400を回転させて、バルブ設定を変更するために調整矢印404がロケータ200上の新しい流れ設定標識206を指すようにする(ステップ616)。
【0035】
最良の形態及び/又は他の実施例と見なされるものについて上記に記載してきたが、各種変更が可能であり、本明細書に開示する主題が様々な形態及び実施例で実践されてもよく、本教示は多数の用途に適用されてもよく、その一部のみが本明細書に記載されていることを理解されたい。以下の「特許請求の範囲」によって、本教示の真の範囲内にある、ありとあらゆる応用、修正、及び変形について請求するものとする。
【0036】
〔実施の態様〕
(1) 中に入れ子にされた指示器と併せて使用される、埋込みバルブを位置特定するためのツールキットの一部としてのロケータであって、
下側リングであって、
患者と接触する接触面、
前記入れ子指示器を位置決めして回転を防ぐキー、及び
前記接触面の反対側の下側リング接合部、を備えた、下側リングと、
上側リングであって、
前記下側リング接合部と回転可能に接続する上側リング接合部、
流れ方向識別子、及び
流れ設定識別子、を備えた、上側リングと、を備え、
前記上側及び下側リングが互いに対して回転し、
前記下側リングには底面がない、ロケータ。
(2) 前記下側リングが、更に、前記接触面と前記下側リング接合部との間の高さを拡張し圧縮する伸縮自在部分を備え、前記伸縮自在部分が、垂直方向にのみ動く、実施態様1に記載のロケータ。
(3) 埋込みバルブを位置特定するためのツールキットを使用する方法であって、前記ツールキットが、互いに回転可能に係合された上側リングと下側リングを備えたロケータと、前記ロケータ内に入れ子になった指示器及び調整器とを備え、
概略的に前記埋込みバルブの上に前記ロケータを配置するステップと、
前記指示器を前記ロケータ内に入れ子にするステップと、
前記ロケータと前記指示器を前記埋込みバルブ上の中心に位置決めするステップと、
前記埋込みバルブの流れ方向とバルブ設定を決定するステップと、
前記下側リングの位置を維持しながら、前記ロケータの外側リングを回転させて、前記決定された流れ方向と前記バルブ設定を一致させるステップと、を含む、方法。
(4) 前記入れ子にするステップの前に、前記埋込みバルブから遠くで前記指示器をゼロ調整するステップを更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記入れ子にするステップの後で、前記ロケータを伸縮させるステップと、
前記埋込みバルブから遠くで前記指示器をゼロ調整するステップと、
前記ゼロ調整するステップの後でかつ前記中心に位置決めするステップの前に、前記ロケータを圧縮するステップと、を更に含む、実施態様3に記載の方法。
【0037】
(6) 前記ロケータから前記指示器を取り外すステップと、
前記ロケータ内の前記調整器を、前記決定されたバルブ設定に向けて配置するステップと、
前記調整器を回転させることによって前記バルブ設定を新しいバルブ設定に調整するステップと、を更に含む、実施態様3に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12