IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイションの特許一覧

特許7013073バイオマニュファクチャリング装置における、およびバイオマニュファクチャリング装置に関連する改良
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】バイオマニュファクチャリング装置における、およびバイオマニュファクチャリング装置に関連する改良
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220124BHJP
   C12M 1/38 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018510096
(86)(22)【出願日】2016-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2016070116
(87)【国際公開番号】W WO2017032847
(87)【国際公開日】2017-03-02
【審査請求日】2019-07-25
(31)【優先権主張番号】2632/DEL/2015
(32)【優先日】2015-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】1518426.0
(32)【優先日】2015-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】201611027846
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】バハルガヴ,アヌープ
(72)【発明者】
【氏名】パティル,ハレシュ・ディガンバル
(72)【発明者】
【氏名】ポール,プラヴィーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー,マニシュ・ウッドゥーラ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】パドゥク,ニヴェディタ
(72)【発明者】
【氏名】ラーマクリシュナ,マノージュ
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-502183(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052718(WO,A1)
【文献】特表2008-513034(JP,A)
【文献】特表2001-504692(JP,A)
【文献】特開2006-166747(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001373(JP,U)
【文献】特表2013-514804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(20)と、前記筐体内部に実質的に囲まれたバイオリアクタチャンバ(30)と、電気部品および/または電子制御部品を収容する前記筐体内部にさらに実質的に囲まれた領域(36)とを備えるバイオマニュファクチャリング装置(1)であって、前記バイオリアクタチャンバ(30)が、バイオリアクタ(100)を支持するためのトレイ(40)と、バイオリアクタに接触し、加熱するためのヒーター(42)を含み、前記トレイ(40)を使用中に前記トレイを揺動させるための機構(44,47)を含むトレイ支持部(45)とを含み、前記バイオマニュファクチャリング装置(1)はトレイを取り囲む空気を加熱するための第2のヒーター(53)をさらに含み、
前記第2のヒーター(53)は、前記囲まれた領域(36)から空気を引き込み、前記空気を前記バイオリアクタチャンバ(30)に押し込む手段と、前記囲まれた領域(36)から引き出された後に前記空気をさらに加熱するための任意の電気加熱手段とを含み、
記トレイを揺動させるための機構は、前記トレイの下のピボット軸を中心に前後に移動させるように構成されており、
前記ヒーター(42)は、前記バイオリアクタ(100)の重量が所定の重量閾値を下回る場合、作しないか、または低減した電力で作動する、バイオマニュファクチャリング装置(1)。
【請求項2】
前記筐体(20)は、アクセス扉(25)を備え、前記アクセス扉(25)に隣接して前記筐体(20)内に開口するベント(61)が設けられ、使用時に前記アクセス扉(25)の近傍に空気のカーテンを提供する、請求項1に記載のバイオマニュファクチャリング装置(1)。
【請求項3】
前記空気のカーテンは、前記アクセス扉(25)が開いているときにのみ提供される、請求項2に記載のバイオマニュファクチャリング装置(1)。
【請求項4】
前記ヒーター(42)はバイオリアクタヒーター(42)であり、前記第2のヒーター(53)はチャンバエアヒーター(53)であり、
前記バイオリアクタヒーター(42)は、前記バイオリアクタ(100)の導電性加熱を提供するように構成され、前記チャンバエアヒーター(53)は、前記バイオリアクタチャンバ(30)内の前記空気または他の気体雰囲気の対流加熱のために配置され、各ヒーターは温度コントローラによって制御される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバイオマニュファクチャリング装置(1)。
【請求項5】
前記トレイ(40)上に支持された可撓性細胞バッグ(100)の形態のバイオリアクタ(100)をさらに備え、前記バイオリアクタは50~2500mlの容量を収容することができる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバイオマニュファクチャリング装置(1)。
【請求項6】
細胞培養チャンバ(30)を有する筐体(20)と、バイオリアクタ(100)を少なくとも部分的に支持する前記細胞培養チャンバ(30)内の1次対流加熱プレート(42)と、前記細胞培養チャンバ(30)内の空気または他の気体環境を加熱する2次加熱手段(53)とを含むバイオマニュファクチャリング装置(1)に含まれる前記バイオリアクタ(100)を加熱する方法であって、
a)前記バイオリアクタ(100)の温度を監視するステップと、
b)前記バイオリアクタ(100)の重量を監視するステップと、
c)前記監視された温度および重量に従って前記1次対流加熱プレート(42)および前記2次加熱手段(53)を制御するステップと、
を含み、
前記2次加熱手段(53)は、前記筐体内部にさらに実質的に囲まれた領域(36)から空気を引き込み、前記空気を前記細胞培養チャンバ(30)に押し込む手段と、前記囲まれた領域(36)から引き出された後に前記空気をさらに加熱するための任意の電気加熱手段とを含み、
前記制御するステップは、前記バイオリアクタ(100)の前記重量が所定の重量閾値を下回る場合、前記1次対流加熱プレート(42)を作動させないか、または前記1次対流加熱プレート(42)を低減した電力で作動させるステップをさらに含む、バイオリアクタ(100)を加熱する方法。
【請求項7】
前記1次対流加熱プレート(42)および前記2次加熱手段(53)が活性化されている間に所定の温度に達しない場合、前記1次対流加熱プレート(42)に供給される電力が漸増的に増加する、請求項に記載のバイオリアクタ(100)を加熱する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養のためなどのバイオマニュファクチャリング装置に関する。特に、本発明は、単一の器具の形態のバイオリアクタ装置、およびバイオマニュファクチャリングのための実験室および細胞培養空間の使用を最適化するためのバイオマニュファクチャリングシステムに配置された複数の器具に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養、例えば哺乳動物細胞、細菌細胞または真菌細胞の培養は、治療目的のために生きた細胞を採取するため、および/または細胞によって産生されたタンパク質または化学物質(例えば医薬品)のような生体分子を採取するために行うことができる。本明細書中で使用される場合、用語「生体分子」は、細胞またはウイルスによって産生される任意の分子、例えばタンパク質、ペプチド、核酸、代謝産物、抗原、化学物質または生物製剤を意味し得る。本明細書で、バイオマニュファクチャリングという用語は、細胞の培養または増殖、および生体分子の生成を包含することを意図している。バイオリアクタという用語は、バイオマニュファクチャリングに使用することができる一般的に囲まれた容積を包含することを意図している。
【0003】
細胞は、一般に、細胞増殖および拡大培養に必要な栄養素および環境条件を提供するように設計された滅菌可能な容器である大型(10,000~25,000リットル容量)のバイオリアクタで増殖される。従来の滅菌し、続く培養および拡大培養のために選択した細胞を接種することができるバイオリアクタはガラスまたは金属の増殖チャンバを有する。増殖チャンバ内の培地は、エアレーション、栄養分の分散および廃棄物の除去を改善するために、機械的または磁気的インペラの使用によってしばしば揺り動かされるかまたは攪拌される。
【0004】
近年、バッチサイズが小さく、生産の柔軟性が高く、使い易く、資本コストの投資が少なく、クロスコンタミネーションのリスクが低い「シングルユース」バイオリアクタへの移行が進んでいる。これらのシステムはまた、エアレーション、供給および廃棄物除去の効率を改善し、細胞密度および生成物収量を増加させることができる。例として、Xcellerex Inc(GE Healthcare)から入手可能なもののような攪拌タンクシングルユース容器の導入に、混合のために揺動プラットフォームに取り付けられたWAVE(登録商標)バッグ(GE Healthcare)を含む。「個別化医療」の出現により、独特の細胞治療を有する患者を治療するために多くの小さなバッチの細胞を必要とする自家細胞治療が重要となっている。
【0005】
細胞および生体分子の生産のための組織培養実験室などの製造設備は、伝統的に特注設計されており、汚染のリスクを低減するためにクリーンな環境で実施されてきた。そのような設備は、運用し維持し、また優先順位や仕事の要求が変わった場合に変更するのに費用がかかる。バイオリアクタ内で細胞を維持または採取するためのワークステーションは、培養実験室において著しい床面積を占める特別の「底面積」を必要とする。細胞がバイオリアクタ内で増殖している間に、ワークステーションは多くの時間放置されているため、実験室面積は効率的または効果的に使用されない。
【0006】
国際公開第2014122307号に改善が提案され、従来のWAVE型バイオリアクタおよび補助装置を支持することができるバイオリアクタ用のカスタマイズされたワークステーションおよび収納ベイの提供によって、細胞培養に必要とされる実験室面積が減少する。その装置には大型の支持フレーム構造が必要である。
【0007】
米国特許6475776号明細書は、単一のインキュベータ筐体および複数の棚を有する細胞培養皿用のインキュベータの例であるが、このタイプの装置は、バイオリアクタを収容するのには適していない。
【0008】
必要とされるのは、搭載、操作、および維持が簡単なシステムにおいて、複数のバイオリアクタを互いに密な間隔で並べて積み重ねる機能である。理想的には、このようなバイオリアクタは、細胞が一般的に7~21日間にわたって培養される伝統的な流加製造と、加えて細胞をより長期間培養することができるが、廃棄物が連続してまたは定期的に除去され、生体分子が採取されてもよい灌流型製造が可能でなければならない。
【0009】
さらに、細胞培養環境を正確かつ確実に制御することは、細胞培養を成功させる上で不可欠である。複数のバイオリアクタが近接している場合、可能性のある加熱源が近接して置かれているので、この制御はより重要である。利用可能なバイオリアクタの多くは、高い細胞密度を得るためにWAVE揺動技術を使用している。細胞は、シングルユースの細胞バッグバイオリアクタで増殖させる。このシングルユースの細胞バッグバイオリアクタは、バイオリアクタの揺動プラットフォーム上に置かれる。高品質および高密度の細胞を生産するための最適な環境を作り出すために不可欠な多くのパラメータ、例えば、揺動速度、溶存酸素、pH、灌流速度、および細胞培養の温度がある。最適な細胞増殖のために、細胞培養は、細胞のタイプに依存する特定の温度で加熱および維持する必要がある。例えば、全ての哺乳動物細胞は、最適な増殖速度のために37℃に維持する必要がある。これは、通常、ヒーターパッドまたはヒータープレートを有するプラットフォーム上に細胞バッグを置くことによって行われる。ヒーターパッドまたはヒータープレートは、必要な設定点で細胞バッグの内容物を加熱および維持する。細胞が細胞増殖プロセス中に過熱されないようにするには、細胞がいずれの時点でも設定点を超えて加熱されないことが非常に重要である。本発明者らは、同じ加熱プラットフォームを使用して、50mlという少ない細胞培養液量と2000mlという多い細胞培養容量を加熱する場合、この温度方式を達成することは困難である場合があることを見出した。
【0010】
バイオリアクタに共通する別の問題は、凝縮による細胞の損失である。細胞バッグ内の細胞は37℃の設定点に維持され、周囲温度は約24℃になる可能性がある。その結果、凝縮は避けられず、細胞バッグの内容物が37℃に達してから30分以内に凝縮が発生する。その凝縮に起因する容認できない細胞培養からの水の損失がある。細胞増殖プロセスの細胞の開始容量が減少するにつれて、この影響はより顕著になる。開始細胞容積が50mlであった場合、24時間後に約3分の1の水量損失が報告されている。周囲温度が低くなるにしたがって、凝縮はより顕著になる。凝縮損失は、浸透圧重量モル濃度の増加をもたらし、これは次にpHの変化を引き起こす。pHは、細胞培養のために一定に維持されるべき重要なパラメータの1つである。異なる細胞株は、特定のpHにおいて良好に増殖し、例えば、ほとんどの哺乳動物細胞株は、pH7.4で最良に増殖する。
【0011】
本発明者らは、細胞を過熱させることなく少量の細胞培養を効率的に加熱することができ、例えば、それらの細胞が増殖した場合に、より多い量の細胞培養の加熱を効率的に管理することができる加熱システムが必要であることを認識した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2015/048712号
【発明の概要】
【0013】
本発明は、請求項1に従属する請求項によって定義される好ましい特徴を有する、請求項1に記載の配置を提供する。
【0014】
本発明は、このような組み合わせが本明細書において明示的に言及されているか否かに関わらず、本明細書で開示される特徴の任意の組み合わせにまで及ぶ。さらに、2つ以上の特徴が組み合わされて言及される場合、このような特徴は、本発明の範囲を拡張することなく、別個に特許請求され得ることが意図される。
【0015】
本発明は、多数の方法で実施することができ、その例示的な実施形態を図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】バイオマニュファクチャリング装置の一実施形態の図を示す。
図1b】バイオマニュファクチャリングシステム2を形成するために積み重ねた図1aの装置を示す。
図2図1に示す装置の異なる図を示す。
図3】装置の内部に装填されたバイオリアクタを含む、図1に示される装置の別の図を示す。
図4】異なる構成のバイオマニュファクチャリング装置のさらなる実施形態の図を示す。
図5】異なる構成のバイオマニュファクチャリング装置のさらなる実施形態の図を示す。
図6図1および図2に示す装置の部分断面図を示す。
図7図1および図2に示す装置の部分拡大図を示す。
図8図1および図2に示す装置の断面平面図を示す。
図8a(1)】バイオリアクタを加熱する方法のフロー図を示す。
図8a(2)】バイオリアクタを加熱する方法のフロー図(図8a(1)の続き)を示す。
図9図1および図2に示す装置の機能の図式表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、その目的およびその利点と共に、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによってより理解することができ、図中の同様の参照符号は同様の要素を指す。
【0018】
図1aを参照すると、概ね平坦な上面22および底面24を有する概ね直方体または箱形の筐体20を含む、一般的に内蔵型の器具10を含むバイオマニュファクチャリング装置1が示されている。底面は4つの調節可能な高さの脚26を含み、そのうちの2つのみが図1aに示される。箱形筐体により、複数の器具を積み重ねてバイオマニュファクチャリングシステムを形成することができる。実践では、図1bに概略的に示されているように、便宜上スタックはベンチトップ5上に2つまたは3つの高さであるが、スタックを高くすることができない理由はない。器具はさらに扉25を含むが、器具の残りの部品をより明瞭に示すために、開いて裁断して示される。扉はヒンジ28で筐体の前縦縁部にヒンジ止めされているので、ヒンジ縦軸を中心に開き、筐体20の内部に絶縁されたチャンバ30を露出または囲む。チャンバ30は、扉の内面の全周に延在し、筐体20の前縁の周りに相補的に延在するシール面31と協働するエラストマーシール32によって扉が閉じられたとき密閉される。扉25が閉じられると、光はチャンバ30に入らない。これにより細胞培養に対する光の影響がなくなる。
【0019】
チャンバ30は、主チャンバ35と、主チャンバ35に通じる副室33とを有する。主チャンバは、以下でより詳細に説明する揺動トレイ支持部45によって支持されたバイオリアクタトレイ40を含む。揺動機構は、カバープレート21によって保護されている。副室33は、2つの蠕動ポンプを支持するパネル34を含み、蠕動ポンプの流体取扱ヘッド48および49のみ副室33内に延在し、電気部品はパネル34の後ろにある。パネルはまた、以下でより詳細に説明する接続部43を含む。副室33は、バッグ掛けラック50を含む外部貯蔵領域に延びる導管の経路を画定する開口部46を含む。
【0020】
図2は、器具の残りの部品をより明瞭に示すために、図1に示す器具10の異なる図であり、扉25およびバッグラック50が取り外されている。
【0021】
図3は、図1および図2の器具10を示しているが、この例では可撓性バッグ100の形態のバイオリアクタ100と、バイオリアクタを器具に連結する様々な経路が装填されており、蠕動ポンプヘッド48を介して細胞増殖を促進するための既知の流体混合物をバイオリアクタに供給する流体供給導管102と、バッグ100内に組み込まれたフィルターを介し、さらに蠕動ポンプヘッド49を介してバイオリアクタ内の細胞によって発現された廃棄成分を除去するためにリアクタから流体を抜き取るための流体除去導管104と、ガス供給導管106と、例えばpHセンサおよび溶存酸素(DO)センサなどのバイオリアクタ内または近傍の様々なセンサ用の例えば電気配線などの例えば導電経路106、108および110である経路と、を含む。導管および経路は、1つまたは複数のハンガー23によって適所に保持することができる。
【0022】
図4および図5は、扉25を含む器具10の実施形態を示す。この実施形態のトレイ40は、スライド運動によってトレイ支持部45から取り外し可能であり、折り畳み式スタンド120に載置され、開き扉25に掛けることができる。使用時に、扉25を開けることができ、スタンド120を下げることができ、トレイ40(バイオリアクタを備えていてもいなくとも)を支持部45からスライドさせて取り出し、手動でスタンド上に移動させることができる。トレイ40は開放された中間部分を有することに留意されたい。この開放部はバイオリアクタを収容し、バイオリアクタはトレイの中央を通って落下しないようにトレイ40の側面に留まるクリップを有する。トレイを満杯または空に戻してチャンバ30内に戻すと、フレーム120を折り取り、扉25を閉じることができる。
【0023】
図6a、図6b、図6cおよび図6dは、それぞれ、図1から図3に示された主チャンバ35およびその中に収容された部品の断面図を示す。これらの部品には、取り外し可能なトレイ40および揺動トレイ支持部45が含まれる。トレイ支持部45は、使用時にバイオリアクタの底部に直接接触する電気加熱プレート42と、加熱プレートを解放可能に保持する揺動可能なプレートホルダ44と、プレートホルダ44を約25~35度の所定の角度でトレイ40の下のピボット軸Pを中心に前後に移動させる電気ステップモータ駆動揺動機構47とから形成される。支持部45は、使用時に任意の位置で止まり、特に図6bに示す前方スロッピング位置に止まるように制御でき、これによりプレートホルダ44が所定の位置に留まりながらトレイ40とプレート42とが一緒に前方の図6cに示すような新しい位置にスライドでき、ここでトレイは、図4および図5の実施形態に示されているようにトレイを取り外すよりも、装填または取り出しを行う方がより容易にアクセスできる。図6cに示す位置では、上述したように、バイオリアクタと器具との間の導管および経路は、より容易に接続または分離することができる。トレイ40およびプレート42は、例えば、清掃の目的で、図6dに示すように完全に取り外すことができる。カバープレート21は、モータおよび他の電気部品を保護する。
【0024】
図7は、カバープレート21が除去された状態で主チャンバ35内を見ている器具の正面扉側からのより詳細な揺動機構を示している。揺動機構47のステッパモータ51と、ステッパモータによって駆動され、プレートホルダ44を前後に回転させる減速ピニオンギヤ対52とが示されている。この図では、使用時にバイオリアクタに添加または除去される流体の量および細胞培養制御を測定するために使用されるロードセル41の形態の荷重センサが見える。
【0025】
図8は、より浅い深さdを有する副室33と共に、前部から後部までの深さDを有する主チャンバ35が見えるように、器具10を見下ろす断面図を示す。筐体の残りの領域36は、チャンバ35/33から分離され、バイオリアクタからの可能性のある漏出から保護され、主チャンバよりも低い温度に維持できる電気および電子制御部品を囲み、これにより電気部品の寿命が長くなる。加えて、電気部品がチャンバ35/33から分離されているので洗浄を回避することができる。より詳細には、これらの電気/電子部品は、電源37、灌流ガス供給制御ユニット38、制御回路基板39、チャンバエアヒーター53、ポンプヘッド48/49駆動モータ54/58、シングルボードコンピュータ55および図示されていない種々の接続ワイヤおよび導管を含む。
【0026】
この実施形態では、チャンバエアヒーター53は、図1に示す入口ダクト59を介して加熱された空気を主チャンバ35内に動かすための電気抵抗と空気ファンとを備え、それにより強制空気対流によってチャンバ35を制御可能に加熱し、これによって加熱されたプレート42(図6a~6d)からの加熱と共に、チャンバ35内の細胞培養のために使用される任意の細胞バッグ100を取り囲む空気を加熱する。
【0027】
細胞バッグおよびそれを取り囲む領域は実質的に同じ温度に維持されるので、凝縮が阻害され、それにより最適な細胞増殖のためにpHを所定のレベルに維持する。プレート42およびヒーター53からの二重加熱は、加熱時間の短縮ならびに凝縮損失の軽減をもたらす。また、細胞バッグ内ならびに閉じ込められた空間内でほぼ均一な温度勾配を保証する。
【0028】
上述したように、バイオリアクタ100の囲まれた領域36は、電源、器具PCB、モータ等を収容する。この領域には多くの熱が発生している。加熱システムは、この廃熱をダクト59を介して主チャンバ35に導くことによって、この廃熱を効果的に採取する。主チャンバ35および囲まれた領域36内の温度センサ9(図示せず)は、強制空気のさらなる電気加熱の必要性を決定するために加熱システムに入力を提供する。さらに、各装置は十分に絶縁されているので、近くに配置されてもよい他の装置に対してほとんどまたは全く加熱効果がない。
【0029】
全細胞増殖プロセス中、細胞増殖の進行を監視するために、細胞培養の毎日のサンプルを採取する必要がある。サンプルを採取するために、器具扉25を開けてトレイ40上の細胞バッグにアクセスする。この実施形態では、扉のすぐ後ろに複数のベント61が存在しており、トレイ40の前でエアカーテンを例えば下向きに吹き付けるようになっているので、扉がサンプリングのために開かれたとき、エアカーテンは、閉じ込められた空間の温度に急激な低下がないことを保証する。この場合、ベント61はファン53から供給されるが、同等の効果を有する追加のファン、例えばいわゆるかご型ファンを使用することができ、そのようなファンは扉が開いているときにのみ動作可能である。ユーザの誤操作のために器具の扉が長時間開かれていると、扉を閉じるためにユーザに対して警報が鳴る(可聴ビープ音や点滅表示)。
【0030】
図8aを参照すると、加熱制御フローチャートが示されている。低細胞培養量について、加熱するために細胞バッグと直接接触するヒータープレートを使用することは安全ではない可能性がある。これにより、細胞が過熱され、細胞増殖プロセスが危険にさらされる可能性がある。トレイ40は、細胞バッグの内容物の重量変化を測定するロードセル41に直接取り付けられている。したがって、本明細書に記載の加熱システムは、細胞培養量が低いか感知し、この場合2次ヒーターによる加熱のみを可能にする。細胞バッグの内容物は、ヒーター53によって加熱されるトレイ40の周りのチャンバ35内の閉じ込められた空気を介して必要な温度まで加熱される。これにより、温度が設定点を超えてオーバーシュートせず、過熱による細胞の損失がないことが保証される。これは、治療を必要とする患者のしばしば劣悪な身体状態を考慮すると、細胞試料の損失が受け入れられない自己細胞治療にとって特に重要である。
【0031】
図9は、前の図に示し、上述した物理的部品に関連して器具10の機能の概略ブロック図を示す。使用時には、可撓性バッグのバイオリアクタ100(細胞バッグ)が好ましく、上に詳述したようにチャンバ30に装填される。接続部43が作られ、扉25が閉じられる。トレイ42は、この実施形態ではバーコードリーダ56を含み、バッグからバーコードを読み取り、バッグの識別情報をコントローラ39/55に中継する。他の識別手段が可能であり、例えばRFIDトランスデューサを使用して細胞バッグ100に埋め込むことができる。バッグの識別情報によって、適切な細胞培養方式が決定され、システムコントローラ60を介してコントローラによって追加の外部情報、例えば必要とされる標的細胞密度が求められる。適切な細胞培養方式を決定して、コントローラは、一般的には、バッグ外部の温度を制御し、バッグ内のパラメータを最適化する。これらのパラメータは、細胞培養期間中、すなわち最大28日間、一般的には7~21日間にわたり変化する。したがって、コントローラは、細胞培養の内部pH、バッグ内の流体の溶存酸素含有量、導入された新鮮な流体の量を判断するためのバッグの重量およびバッグから回収される廃液の量を監視および調整する。これらのパラメータおよび細胞密度のサンプリングが自動的に行われる。連続的な灌流方式が好ましいが、他の既知の方式、例えば流加方式を使用することもできる。好都合なことに、ディスプレイ57が扉25に組み込まれており、扉は、チャンバに入る光を減少させるために暗くされた窓を含むか、窓を通ってチャンバ30を見ることができるように開けることができるが、器具の通常動作で光を減少させるかまたは排除するために閉めることもできるシャッタを有する。
【0032】
使用時には、器具は、複数の器具が使用される他のスタンドアロン器具と共に、状態情報を出力するためのディスプレイ57を用いてスタンドアロンシステムとして機能し、器具(単数または複数)の動作に外部制御が必要ないことを意味する。しかし、システムコントローラ60は、器具に装填された細胞バッグの要件に関する情報を単に供給するか、またはさらに複数の器具を監視するか、または適切なソフトウェアで、各器具を監視して制御するために使用でき、そのため内部器具制御は支配的である。システムコントローラとの通信が失われた場合、各器具のその時の従属コントローラ39/55は器具制御を取り戻すことができる。器具とシステムコントローラとの間の通信は、好ましくはシステムBUSリンク、例えば周知の構成のユニバーサルシリアルバスであるが、例えば0.9~60GHzで動作するIEEE802.11プロトコルで指定されるような無線リンクが可能である。ユーザの入力を必要とせずに、システムコントローラ上で動作するソフトウェアによって各器具が自動的に認識されることが想定される。
【0033】
サンプリングおよび/または細胞バッグの重量によって判断されて細胞培養が完了すると、器具から取り出され、その意図された目的、例えば自己細胞療法に使用される。関心のある培養細胞によって産生された生体分子の場合、これらは細胞バッグが空になったときに除去することができ、または培養中にバッグから抽出した濾液から除去することができる。チャンバ30は、最小限の停止時間で、次のバッグが導入されるように容易に洗浄される。したがって、上述の器具によって、使い捨てバイオリアクタの便利な装填および取出しが可能になり、器具の正面から見たとき、器具の密度が1平方メートルあたり約4~6個であるように、密な間隔の並びに積み重ねることができることは明らかである。器具10と共に使用するための典型的なバイオリアクタ100は、現在の標準により、すなわち約50mlおよび2500mlと小さく、したがって、上記のシステムは、各々容易にアクセス可能で制御可能であり、利用可能なスペースを最適化する複数の細胞培養器具を有する小規模システムである。
【0034】
実施形態を説明し図示してきたが、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態に追加、省略、および修正が可能であることは当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0035】
1 バイオマニュファクチャリング装置
2 バイオマニュファクチャリングシステム
5 ベンチトップ
9 温度センサ
10 器具
20 筐体
21 カバープレート
22 上面
23 ハンガー
24 底面
25 扉
26 脚
28 ヒンジ
30 チャンバ
31 シール面
32 エラストマーシール
33 副室
34 パネル
35 主チャンバ
36 残りの領域
37 電源
38 灌流ガス供給制御ユニット
39 制御回路基板
40 トレイ
40 バイオリアクタトレイ
41 ロードセル
42 電気加熱プレート
43 接続部
44 プレート支持部
45 トレイ支持部
46 開口部
47 揺動機構
48 ポンプヘッド
48 流体取扱ヘッド
49 蠕動ポンプヘッド
50 バッグ掛けラック
51 ステッパモータ
52 減速ピニオンギヤ対
53 チャンバエアヒーター
53 ファン
54 駆動モータ
55 シングルボードコンピュータ
56 バーコードリーダ
57 ディスプレイ
58 駆動モータ
59 入口ダクト
60 システムコントローラ
61 ベント
100 バイオリアクタ
102 流体供給導管
104 流体除去導管
106 ガス供給導管
108 導電経路
110 導電経路
120 スタンド
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8a(1)】
図8a(2)】
図9