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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20220124BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B60N2/06
B60N2/005
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017041471
(22)【出願日】2017-03-06
(65)【公開番号】P2018144640
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(72)【発明者】
【氏名】白木 晋
(72)【発明者】
【氏名】中村 素久
(72)【発明者】
【氏名】藤井 陽一
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-047873(JP,A)
【文献】実開昭59-129638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
B60N 2/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるシートスライド装置であって、
前記車両のフロアに固定されるロアレールと、
前記車両のシートの底面に設けられるブラケットと、
前記ブラケットを介して前記シートに固定され、前記ロアレールに対して移動可能な状態で支持されるアッパレールと、を備え、
前記ブラケットの一部である第1固定部と、前記アッパレールの一部である第2固定部とが、特定方向に沿って並ぶように重ねられた状態で、前記特定方向に沿って両者を貫くように配置された締結部材により互いに締結固定されており、
前記第1固定部及び前記第2固定部のうち一方から他方に向けて突出するように形成された第1突出部が、前記第1固定部及び前記第2固定部のうち他方に形成された第1受入部に嵌め込まれ、前記ブラケットと前記アッパレールとを引き離す方向に力が加わった場合に前記締結部材と負荷を分担するように配置され
前記第1突出部は前記特定方向に沿って突出するように凸形状をなしており、
前記第1受入部は前記特定方向に沿って後退し、前記凸形状に沿うように凹形状をなしていることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
前記締結部材が、前記第1突出部及び前記第1受入部を貫くように配置されている、請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記ブラケットの一部である第3固定部と、前記アッパレールの一部である第4固定部とが、前記特定方向に沿って並ぶように重ねられた状態となっており、
前記第3固定部及び前記第4固定部のうち一方から他方に向けて突出するように形成された第2突出部が、前記第3固定部及び前記第4固定部のうち他方に形成された第2受入部に嵌め込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記第1突出部を前記第1受入部に嵌め込むために、前記ブラケットを前記アッパレールに対して移動させる方向と、
前記第2突出部を前記第2受入部に嵌め込むために、前記ブラケットを前記アッパレールに対して移動させる方向と、が互いに同一となっていることを特徴とする、請求項3に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記第2突出部のうち前記第2受入部に触れる部分が、弾性部材により形成されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載のシートスライド装置。
【請求項6】
前記第2受入部のうち前記第2突出部に触れる部分が、弾性部材により形成されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載のシートスライド装置。
【請求項7】
前記第2突出部がテーパー状に形成されていることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項8】
前記第1固定部及び第2固定部が後方側に設けられており、前記第3固定部及び第4固定部が前方側に設けられていることを特徴とする、請求項3乃至7のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項9】
前記特定方向が前記車両の前後方向であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートスライド装置は、車両に設けられたシート(座席)を例えば前後方向に移動可能とする装置である。シートスライド装置は、車両のフロアに固定されるロアレールと、シートの底部に固定されるアッパレールとを有しており、アッパレールがロアレールに対して移動可能な状態で支持された構成となっている。
【0003】
シートに対するアッパレールの固定は、シートに設けられたブラケットを介して行われる。例えば下記特許文献1に記載されているシートスライド装置では、アッパレールに固定されたナット部材に対し、ブラケットに形成された係合部が締結ボルトにより締結固定された構成となっている。また、上記シートスライド装置では、上記のような締結固定が、1つのアッパレールのうち前後2箇所において行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5396886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が衝突した際には、互いに締結固定されたアッパレールとブラケットとの間には強い力が加えられる。上記特許文献1に記載されているシートスライド装置では、ナット部材と係合部とを締結固定している締結ボルトに対し、締結ボルトの軸方向に対して垂直な方向(具体的には上方向)のせん断力が直接加えられる。このため、衝突時の衝撃に対する強度が不足してしまうことが懸念される。当該強度を向上させるための対策としては、大型の締結ボルトを用いて締結固定を行うことも考えられる。しかしながら、締結ボルトの大型化には限界があり、このような対策は現実的ではないことが多い。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラケットとアッパレールとの間の固定を十分な強度で行うことのできるシートスライド装置、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るシートスライド装置は、車両に設けられるシートスライド装置であって、車両のフロアに固定されるロアレールと、車両のシートの底面に設けられるブラケットと、ブラケットを介してシートに固定され、ロアレールに対して移動可能な状態で支持されるアッパレールと、を備える。このシートスライド装置では、ブラケットの一部である第1固定部と、アッパレールの一部である第2固定部とが、特定方向に沿って並ぶように重ねられた状態で、特定方向に沿って両者を貫くように配置された締結部材により互いに締結固定されており、第1固定部及び第2固定部のうち一方から他方に向けて突出するように形成された第1突出部が、第1固定部及び第2固定部のうち他方に形成された第1受入部に嵌め込まれている。
【0008】
このような構成のシートスライド装置では、特定方向に沿って並ぶように重ねられた第1固定部と第2固定部とが、上記の特定方向に沿って両者を貫くように配置された締結部材により互いに締結固定されている。このとき、第1固定部及び第2固定部のうち一方から他方に向けて突出するように形成された第1突出部が、第1固定部及び第2固定部のうち他方に形成された第1受入部に嵌め込まれた状態となっている。尚、上記の「特定方向」とは、例えば前後方向である。
【0009】
車両の衝突が生じた際においては、シートと共にブラケットを上方に持ち上る方向の力が、ブラケットの第1固定部に対して加えられる。この力のうち少なくとも一部は、第1突出部の外側面と、第1受入部の内側面とを互いに押し付け合うような力として働く。また、上記力の残部は、締結部材に対するせん断力として加えられる。このように、衝突により生じた力が、第1突出部及び第2受入部と、締結部材とのそれぞれに対して、分散して加えられることとなる。尚、ブラケットを上方に持ち上る方向の力の全部が、第1突出部と第1受入部とを互いに押し付け合う力として加えられるような構成としてもよい。
【0010】
このため、上記構成のシートスライド装置では、締結ボルト(締結部材)に対してせん断力が直接加えられるような従来の構成に比べて、ブラケットとアッパレールとの間の固定を十分な強度で行うことができる。その結果、衝突時の衝撃に対する強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブラケットとアッパレールとの間の固定を十分な強度で行うことのできるシートスライド装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るシートスライド装置が、シートとフロアとの間に設けられた状態を模式的に示す図である。
図2】シートスライド装置が備えるブラケット及びアッパレールの構成を模式的に示す図である。
図3図2に示されるブラケットとアッパレールとが互いに締結固定された状態を示す図である。
図4】アッパレールが備える突起の構成を示す断面図である。
図5】第1変形例に係るシートスライド装置の構成の一部を示す図である。
図6】第2変形例に係るシートスライド装置の構成の一部を示す図である。
図7】第3変形例に係るシートスライド装置の構成の一部を示す図である。
図8】第4変形例に係るシートスライド装置の構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
本実施形態に係るシートスライド装置10の概要について、図1を参照しながら説明する。シートスライド装置10は、車両(全体は不図示)のフロアFLとシート21との間に設けられ、シート21を前後方向に移動可能な状態で支持する装置である。この前後方向が、本実施形態における「特定方向」に該当する。
【0015】
尚、図1においては、シート21に設けられた背もたれ22と、背もたれ22の上部に設けられたヘッドレスト23も図示されている。また、図1において符号24が付されているのは、シート21に設けられた足置き台である。以下では、「足置き台24」と表記する。足置き台24は所謂「オットマン」とも称されるものである。
【0016】
尚、図1においては、車両の後方側から前方側(図1では左側)に向かう方向をx方向としてx軸を設定している。また、車両の右側から左側(図1では紙面手前側)に向かう方向をy方向としてy軸を設定している。更に、車両の下方側から上方側に向かう方向をz方向としてz軸を設定している。以降の図面においても、同様にしてx軸、y軸、z軸を設定している。
【0017】
シートスライド装置10は、ロアレール100とアッパレール200とを有している。尚、ロアレール100とアッパレール200とを組み合わせてなるシートスライド装置10は、1つのシート21に対して2つ設けられる。それぞれのシートスライド装置10は、そのスライド方向をx軸に沿わせた状態で、y軸に沿って互いに並ぶように設けられる。図1においては、紙面手前側にあるシートスライド装置10のみが図示されている。
【0018】
ロアレール100は、車両のフロアFLに固定される部材である。アッパレール200は、車両のシート21に固定される部材である。アッパレール200は回転自在な複数のローラー201(図2を参照)を有しており、当該ローラー201を介してロアレール100のスライド面(不図示)上に設置されている。つまり、アッパレール200はロアレール100に対して移動可能な状態で支持されている。このため、アッパレール200と共に、シート21をx軸に沿って移動させることが可能となっている。
【0019】
尚、ロアレール100に対してアッパレール200を移動可能とするための具体的な構成としては、例えば国際公開第2016/009495号等に記載されているような公知の構成を採用することができる。このため、ここではその具体的な説明を省略する。
【0020】
シート21に対するアッパレール200の固定は、ブラケット300を介して行われている。ブラケット300は、シート21の底面に設けられる板状の部材である。
【0021】
図2を参照しながら、ブラケット300等の具体的な構成について説明する。図2では、ブラケット300をアッパレール200から一旦取り外し、ブラケット300を後方側(-x方向側)にずらした状態が示されている。また、図2では、x-y平面に対して平行な面でブラケット300のみを切断した場合における断面、が示されている。
【0022】
ブラケット300は、本体部301と、固定部310と、固定部330とを有している。本体部301は、シート21の底面に固定される部分であって、x軸に沿って伸びるような板状の部材として形成されている。尚、本体部301がシート21のフレームの一部を構成するものとして、当初からシート21と一体に形成されているような態様であってもよい。
【0023】
固定部310は、本体部301の-x方向側端部から、-z方向に向けて伸びるように形成された部分である。固定部310は平板状に形成されており、その主面の法線方向がx軸に沿っている。
【0024】
固定部310のうちx方向側の面には、x方向側に向けて突出する突出部320が形成されている。突出部320のx方向側における先端面322は、その法線がx軸に沿うような平坦面となっている。突出部320の上面321は、その法線がx方向側に傾くように、水平面に対して僅かに傾斜した面となっている。突出部320の下面323は、その法線がx方向側に傾くように、水平面に対して僅かに傾斜した面となっている。このため、図2に示されるような側面視における突出部320の形状は台形となっている。
【0025】
このような突出部320は、固定部310とは別体の部材として予め形成された後に、固定部310に対して溶接等により接合されたものである。このような態様に替えて、突出部320と固定部310とが当初から一体のものとして成形されるような態様であってもよい。
【0026】
固定部310及び突出部320には、x軸に沿って両者を貫くような円形の貫通穴311が形成されている。貫通穴311は、ブラケット300をアッパレール200に固定する際に、後方側からボルトBTを挿通するための穴である。
【0027】
固定部330は、本体部301のx方向側端部から、-z方向に向けて伸びるように形成された部分である。固定部330は平板状に形成されており、その主面の法線方向がx軸に沿っている。
【0028】
固定部330には、これをx軸に沿って貫くような円形の貫通穴332が形成されている。貫通穴332は、ブラケット300をアッパレール200に固定する際に、前方側から後述の突起230を挿通し嵌め込むための穴である。
【0029】
アッパレール200のうち-x方向側の部分には固定部材210が設けられている。固定部材210は、アッパレール200に対して例えば溶接により固定されており、アッパレール200の一部となっている。固定部材210は、アッパレール200の上面に沿って伸びるように形成された水平部211と、アッパレール200の-x方向側の端面に沿って下方に伸びるように形成された垂直部212とを有している。
【0030】
垂直部212のうち-x方向側の面、すなわちブラケット300の固定部310と対向する面には、x方向に向けて凹状に後退するように受入部220が形成されている。受入部220の内面のうちz方向側の面である天面221は、突出部320の上面321に対して平行な面となっている。また、受入部220の内面のうち-z方向側の面である底面223は、突出部320の下面323に対して平行な面となっている。また、天面221と底面223とを繋ぐ面222は、突出部320の先端面322に対して平行な面となっている。受入部220の内面全体の形状は、突出部320の形状と概ね等しい。
【0031】
固定部材210には、垂直部212をx軸に沿って貫くような締結穴224が形成されている。締結穴224は、垂直部212の-x方向側端部から、アッパレール200の内部に至るまで形成されている。締結穴224の内周面には雌螺子が加工されている。締結穴224は、ブラケット300をアッパレール200に固定する際に、後方側からボルトBTを挿通し締結するための穴である。
【0032】
アッパレール200のうちx方向側の部分には、固定部240が設けられている。固定部240は、アッパレール200の上面203から上方に向けて突出するように形成された部分である。固定部240は平板状に形成されており、その主面の法線方向がx軸に沿っている。
【0033】
固定部240のうち-x方向側の面には、-x方向に向けて突出する突起230が形成されている。突起230は、-x方向側の先端に近づくほどその直径が小さくなるようなテーパー状に形成されている。突起230のうちその根元部分(固定部240側の部分)の直径は、固定部330に形成された貫通穴332の直径と概ね同一となっている。
【0034】
ブラケット300をアッパレール200に固定する際には、先ず図2に示されるように、水平部211の上面213に対し、ブラケット300の本体部301を上方から当接させた状態とする。また、アッパレール200の上面203に対し、ブラケット300のうち固定部330の下端面を上方から当接させた状態とする。
【0035】
このとき、ブラケット300の固定部310は、固定部材210の垂直部212よりも-x方向側となる位置に配置されている。また、ブラケット300の固定部330は、固定部240よりも-x方向側となる位置に配置されている。
【0036】
図2の状態においては、受入部220の内面と、突出部320の外面とが、x軸に沿って(同じ高さで)対向した状態となっている。このとき、貫通穴311の中心軸と締結穴224の中心軸とは互いに一致している。また、貫通穴332の中心軸と突起230の中心軸とは互いに一致している。換言すれば、ブラケット300とアッパレール200との位置関係が上記のようになるように、水平部211の厚さや固定部330の突出長さ等が予め調整されている。
【0037】
図2に示される状態からブラケット300をx方向に移動させると、突出部320が受入部220に嵌め込まれ、突起230が貫通穴332に嵌め込まれた状態となる。その後、ボルトBTを後方側から貫通穴311及び締結穴224に挿入し締結すると、ブラケット300がアッパレール200に対して固定された状態となる。図3には当該状態が示されている。
【0038】
図3の状態においては、ブラケット300の一部である固定部310と、アッパレール200の一部である固定部材210の垂直部212とが、車両の前後方向(つまりx軸に沿った方向)に沿って並ぶように重ねられた状態で、前後方向に沿って両者を貫くように配置されたボルトBTにより互いに締結固定されている。また、固定部310から垂直部212に向けて突出するように形成された突出部320が、垂直部212に形成された受入部220に嵌め込まれている。
【0039】
走行中において車両の衝突が生じると、その衝撃により、シート21及びブラケット300を上方側に持ち上げる方向の強い力が加えられる。図3では、当該力が矢印AR1で示されている。
【0040】
上記力のうち少なくとも一部は、突出部320の上面321と、受入部220の天面221とを互いに押し付け合うような力として働く。また、上記力の残部は、ボルトBTに対するせん断力として加えられる。このように、衝突により生じた力が、突出部320及び受入部220と、ボルトBTとのそれぞれに対して、分散して加えられることとなる。このため、上記力がボルトBTのみに加えられるような構成に比べて、衝突時の衝撃に対する強度が向上している。
【0041】
また、本実施形態では、突出部320及び受入部220の両方を貫くような位置にボルトBTが配置されている。このため、上記のような力の分散がより生じやすくなっている。
【0042】
尚、ブラケット300を上方に持ち上る方向の力の全部が、上面321と天面221とを互いに押し付け合う力として加えられるような構成としてもよい。この場合、ボルトBTに加えられるせん断力を概ね0とすることができる。
【0043】
互いに重ねられた固定部310と垂直部212とは、それぞれ、本実施形態における「第1固定部」及び「第2固定部」に該当する。また、両者を貫くように配置されたボルトBTは、本実施形態における「締結部材」に該当する。固定部310から垂直部212に向けて突出するように形成された突出部320は、本実施形態における「第1突出部」に該当する。突出部320が嵌め込まれている受入部220は、本実施形態における「第1受入部」に該当する。
【0044】
上記のような態様に替えて、第1突出部が垂直部212側に形成されており、第1受入部が固定部310側に形成されているような態様としてもよい。この場合、第1突出部は、垂直部212から固定部310に向けて突出するように形成される。また、当該第1突出部が嵌め込まれる第1受入部は、固定部310のうちx方向側の面を-x方向側に後退させることにより形成される。このような態様であっても、上記で説明したものと同様の効果を奏する。
【0045】
車両の前方側においては、ブラケット300の一部である固定部330と、アッパレール200の一部である固定部240とが、車両の前後方向(つまりx軸に沿った方向)に沿って並ぶように重ねられた状態となっている。また、固定部240から固定部330に向けて突出するように形成された突起230が、固定部330に形成された貫通穴332に嵌め込まれている。これにより、上方側に向けた固定部330の移動が規制されている。
【0046】
互いに重ねられた固定部330と固定部240とは、それぞれ、本実施形態における「第3固定部」及び「第4固定部」に該当する。また、固定部240から固定部330に向けて突出するように形成された突起230は、本実施形態における「第2突出部」に該当する。突起230が嵌め込まれている貫通穴332は、本実施形態における「第2受入部」に該当する。
【0047】
上記のような態様に替えて、第2突出部が固定部330側に形成されており、第2受入部が固定部240側に形成されているような態様としてもよい。この場合、第2突出部は、固定部330から固定部240側に向けて突出するように形成される。また、当該第2突出部が嵌め込まれる第2受入部は、固定部240をx軸に沿って貫く貫通穴として形成される。このような態様であっても、上記で説明したものと同様の効果を奏する。
【0048】
本実施形態では、突出部320(第1突出部)を受入部220(第1受入部)に嵌め込むために、ブラケット300をアッパレール200に対して移動させる方向(以下では「第1嵌入方向」とも称する)と、突起230(第2突出部)を貫通穴332(第2受入部)に嵌め込むために、ブラケット300をアッパレール200に対して移動させる方向(以下では「第2嵌入方向」とも称する)と、が互いに同一のx方向となっている。このため、ボルトBTを締結する前において、それぞれの突出部をそれぞれの受入部に嵌め込む作業を、ブラケット300を1回移動させるだけで容易に行うことが可能となっている。
【0049】
尚、上記における「同一」とは、ブラケット300をx方向に移動させる作業を1回行うだけで、それぞれの突出部がそれぞれの受入部に嵌め込まれる程度に、第1嵌入方向と第2嵌入方向とが互いに一致していることを意味する。このため、第1嵌入方向と第2嵌入方向とが僅かに異なっている場合であっても、ブラケット300をx方向に移動させる作業を1回行うだけでそれぞれの突出部をそれぞれの受入部に嵌め込むことができるのであれば、その第1嵌入方向と第2嵌入方向とは互いに同一ということができる。
【0050】
本実施形態では、固定部310(第1固定部)及び垂直部212(第2固定部)が後方側に設けられており、固定部330(第3固定部)及び固定部240(第4固定部)が前方側に設けられている。このため、シート21のブラケット300をアッパレール200に固定するための作業は、シート21の後方側(-x方向側)からシートを前方側に移動させ、同じく後方側からボルトBTを締結することにより行うことができる。つまり、後方側からのみ作業を行えばよく、前方側からボルトを締結するような作業は不要となっている。
【0051】
このため、本実施形態のように前方側に足置き台24が設けられているようなシート21であっても、後方側から行う作業のみにより、ブラケット300をアッパレール200に対して容易に固定することができる。
【0052】
既に述べたように、本実施形態では、前方側にある突起230(第2突出部)がテーパー状に形成されている。このため、後方からの作業であっても、突起230を貫通穴332に対して容易に嵌め込むことが可能となっている。
【0053】
図4には、突起230の断面形状が示されている。突起230は、固定部240から-x方向に向けて突出する円柱状の突出部231を、樹脂により形成された被覆部材232が外側から覆った構成となっている。つまり、突起230(第2突出部)のうち貫通穴332(第2受入部)に触れる部分が、弾性部材である樹脂により形成されている。
【0054】
このため、テーパー状に形成された突起230の根元部分の直径が、貫通穴332の直径よりも僅かに大きくなっていたとしても、被覆部材232が弾性変形するので、突起230を根元まで貫通穴332に嵌め込むことができる。また、突起230と貫通穴332との間におけるがたつきを防止することもできる。尚、樹脂としては例えばゴムを用いることができる。
【0055】
第1変形例について、図5を参照しながら説明する。第1変形例に係るシートスライド装置10Aでは、垂直部212及び突出部320のそれぞれの形状においてのみ、上記実施形態に係るシートスライド装置10と異なっている。以下ではシートスライド装置10と異なっている点について主に説明し、シートスライド装置10と共通する点については適宜説明を省略する。
【0056】
第1変形例では、突出部320が固定部310からx方向に向けて直線状に伸びるように形成されている。その結果、突出部320の断面形状は図3に示されるような台形とはなっておらず、図5のように矩形となっている。つまり、突出部320の上面321及び下面323は、いずれもx軸に対して平行な面となっている。
【0057】
また、受入部220の天面221も、やはりx軸に対して平行な面となっている。尚、この第1変形例においては、受入部220の底面223が形成されていない。つまり、受入部220は、下方側に向けて開放された形状の凹部として形成されている。このような態様であっても、シートスライド装置10について説明したものと同様の効果を奏する。
【0058】
第2変形例について、図6を参照しながら説明する。第2変形例に係るシートスライド装置10Bでは、垂直部212及び突出部320のそれぞれの形状においてのみ、上記実施形態に係るシートスライド装置10と異なっている。以下ではシートスライド装置10と異なっている点について主に説明し、シートスライド装置10と共通する点については適宜説明を省略する。
【0059】
第2変形例では、突出部320が固定部310から前方側斜め上方に向けて直線状に伸びるように形成されている。その結果、突出部320の断面形状は図3に示されるような台形とはなっておらず、図6のように平行四辺形となっている。つまり、このため、突出部320の上面321は、その法線が-x方向側に傾斜した面となっている。
【0060】
また、受入部220の天面221は、突出部320の上面321に対し平行な面となっており、その法線がx方向側に傾斜した面となっている。尚、この第2変形例においても第1変形例と同様に、受入部220の底面223が形成されていない。つまり、受入部220は、下方側に向けて開放された形状の凹部として形成されている。このような態様であっても、シートスライド装置10について説明したものと同様の効果を奏する。
【0061】
第3変形例について、図7を参照しながら説明する。第3変形例に係るシートスライド装置10Cでは、固定部310の形状においてシートスライド装置10と異なっている。以下ではシートスライド装置10と異なっている点について主に説明し、シートスライド装置10と共通する点については適宜説明を省略する。
【0062】
第3変形例では、固定部310が比較的薄い金属板によって形成されている。この固定部310には貫通穴311が形成されており、固定部310のうち貫通穴311の周囲の部分がx方向に向けて突出している。つまり、貫通穴311が所謂バーリング加工穴として形成されている。貫通穴311の周辺においてx方向に向けて突出する部分のことを、以下では「突出部312」と称する。
【0063】
図7に示されるように、突出部312は受入部220に嵌め込まれている。具体的には、突出部312の上端が受入部220の天面221に当接しており、突出部312の下端が受入部220の底面223に当接している。このように、突出部312は、上記実施形態の突出部320に代わるものであって、本実施形態における「第1突出部」に該当する。このような態様であっても、シートスライド装置10について説明したものと同様の効果を奏する。
【0064】
尚、垂直部212の一部をバーリング穴加工によって-x方向側に突出させ、これを固定部310に形成された貫通穴に嵌め込むような態様としてもてもよい。
【0065】
第4変形例について、図8を参照しながら説明する。第4変形例に係るシートスライド装置10Dでは、固定部330のうち貫通穴332の内面及びその周辺の部分を、樹脂により形成された被覆部材333が覆った構成となっている。つまり、貫通穴332(第2受入部)のうち突起230(第2突出部)に触れる部分が、弾性部材である樹脂により形成されている。このような構成においては、突起230の全体が金属で構成されている場合(つまり、突起230の表面が被覆部材232によって覆われていない場合)であっても、突起230が根元まで貫通穴332に嵌め込まれるという効果や、突起230と貫通穴332との間におけるがたつきが防止されるという効果を奏する。被覆部材333を形成する樹脂としては、上記実施形態(図4)における被覆部材232の場合と同様に、例えばゴムを用いることができる。
【0066】
以上においては、アッパレール200のスライドする方向が前後方向であり、固定部310(第1固定部)と垂直部212(第2固定部)とが並んでいる方向も前後方向となっている場合の例について説明した。このような態様に替えて、アッパレール200のスライドする方向が左右方向であり、固定部310(第1固定部)と垂直部212(第2固定部)とが並んでいる方向も左右方向となっているような構成としてもよい。つまり、「特定方向」が左右方向となっている構成としてもよい。このような構成であっても、以上に説明したものと同様の効果を奏する。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10,10A,10B,10C,10D:シートスライド装置
21:シート
100:ロアレール
200:アッパレール
212:垂直部
220:受入部
300:ブラケット
310:固定部
320:突出部
BT:ボルト
FL:フロア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8