(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】折板汎用タービン
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20220124BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20220124BHJP
F03B 3/00 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
F03D1/06 Z
F01D5/14
F03B3/00 Z
(21)【出願番号】P 2018136234
(22)【出願日】2018-07-02
【審査請求日】2018-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-07
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】592144308
【氏名又は名称】日詰 明男
(72)【発明者】
【氏名】日詰 明男
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】関口 哲生
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-256264(JP,A)
【文献】特開2010-261432(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D1/06
F01D5/14
F03B3/00
A63H33/40
G09F7/22
G09F19/02
B44C3/00
B44C5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う羽根同士がなす偏角(w)を黄金角137.5度とし、羽根の傾き(v)、羽根の幅(c)、羽根の長さ(h)によって決定された切断線(3)と
折線(4A、4B)と回転軸の位置(2)で構成される展開図に基づき、厚さ(t)の平面材を、突出した羽根を構成する切断線(3)で切断し、一方の折線(4A)を谷折り、もう一方の折線(4B)を山折りとして、一定の面角(u)で交互に折り曲げることによって、突出した羽根が万遍なく配置するように形成された汎用タービン
を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水力タービン、蒸気タービン、風力タービン、ガスタービン、ファン、ポンプ、スクリュー、プロペラ等に使われる、強靭で高い回転効率を生む汎用タービンを簡単に製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水力、風力、蒸気、ガスを問わず、従来のタービンは、強固な円筒シャフトを回転軸とし、その側面に、曲面をなす多数の羽根を溶接等で取り付けることによって作られている。古典的な例として、Kaplan型、Francis型、Pelton型、Turgo型、Crossflow型、Multi-Jet型などが有名である(非特許文献1および
図1を参照)。もっと遡れば、アルキメデス・ポンプや、オランダの風車、粉ひき水車などはタービンの最も原初的な形式である。船のスクリューや飛行機のプロペラも広義のタービンである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】http://www.spiroprojects.com/blog/cat-view-more.php?blogname=WHAT-ARE-TYPES-OF-TURBINE-USED-IN-INDUSTRY?&id=141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術によれば、回転軸と羽根の接合部は破損しやすく、複雑で高度な加工精度を要した。そこで、本発明は、一枚の平面材を折り曲げるだけで簡単に強靭かつ高い回転効率の汎用タービンを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明は、一枚の平面材に切断線3と折線4A、4Bを入れ、一定の面角uで折線4Aを「谷折り」、折線4Bを「山折り」として交互に折り曲げてゆくことによって汎用タービンの機能を持たせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、素材の強度を最大限発揮するタービンが得られる。また複雑な曲面を必要としないので加工はきわめて簡単であり、しかも高い回転効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】非特許文献1による、従来知られているタービンの分類である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、羽根の長さhを0、平面材の厚さtを0とした場合のタービンを構成する一単位の、回転軸方向から見た平面図と、その側面図である。
【
図4】偏角wを137.5度、羽根の角度vを20度、羽根の幅cを20、羽根の長さhを0、平面材の厚さtを0.5、羽根の枚数nを2とした実施例の斜視図ある。
【
図5】偏角wを137.5度、羽根の角度vを20度、羽根の幅cを20、羽根の長さhを
0、平面材の厚さtを0.5、羽根の枚数nを30とした実施例の
展開図である。
【
図8】偏角wを137.5度、羽根の角度vを20度、羽根の幅cを20、羽根の長さhを20、平面材の厚さtを0.5、羽根の枚数nを8とした実施例の展開図である。
【
図11】偏角wを137.5度、羽根の角度vを20度、羽根の幅cを20、羽根の長さhを20、平面材の厚さtを0.5、羽根の枚数nを50とした実施例の回転軸方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。タービンの形とサイズを決めるパラメーターとしては、一定の羽根の幅c、隣り合う羽根同士がつくる一定の偏角(以下「偏角」と呼ぶ。)w、回転軸を法線とする平面と羽根平面がなす一定の角度(以下「羽根の傾き」と呼ぶ。)vの3つが本質的である。
【0009】
副次的パラメーターとして、平面材の厚さt、羽根の長さh、羽根の枚数nが加わって全体の形状が決定される。
【0010】
羽根の幅c、偏角w、羽根の傾きvが与えられ、平面材の厚さtを0とし、羽根の長さhを0とした場合、一枚の羽根は二等辺三角形となり、回転軸方向から見た平面図と、その側面図は
図2で表される。
【0011】
そのとき、隣り合う二枚の羽根の展開図は
図3のように示され、斜辺=a、底辺=c、高さ=(s+r)の二等辺三角形が二枚接続された形となる。回転軸の位置2から二等辺三角形頂点までの距離r、回転軸の位置2から二等辺三角形底辺中点までの距離s、二等辺三角形斜辺の長さaの値は以下の式によって決まる。
r=c*cos v/(2*sin w)
s=-r*cos w
a=√((
c/2)
2+(s+r)
2)
【0012】
図3を展開図とし、厚さtの平面材を折線4Aで谷折りした実施例の斜視図が
図4である。二枚の羽根が作る面角uは偏角wと羽根の傾きvで決まり、以下の式で表される。
tan
(u/2)=tan v*sin w/(2*cos(w/2))
【0013】
本発明は羽根の枚数nを任意に設定できる。一例として30枚の羽根からなる実施例の展開図は
図5のように示され、
図7のように折線4Aを面角uで谷折りし、折線4Bを面角uで山折りすることを交互に繰り返して、実施例は完成する。回転軸方向から見た平面図は
図6のようになり、半径=rの円をほぼ万遍なく埋め尽くす。
【0014】
本発明には対掌性(カイラリティー)があり、折線4Aを山折りとし、折線4Bを谷折りとした、上記実施例と鏡像関係をなすタービン実施例が存在する。すなわち、一方向からの流体に対し、互いに逆回転する二種類のタービン実施例が、同一の展開図から製造できる。
【0015】
上記の実施例は羽根の長さhを0とした場合であり、二等辺三角形の羽根で構成されたタービンであった。回転効率をより高めるならば、羽根の長さを0以上に設定するとよい。
図8は羽根の長さを羽根の幅と等しく20とし、8枚の5角形の羽根で構成された場合の実施例の展開図である。厚さ0.5の平面材を切断線3で切断し、
図10のように折線4Aを面角uで谷折りし、折線4Bを面角uで山折りすることを交互に繰り返して、実施例は完成する。回転軸方向から見た平面図は
図9のようになり、半径=(s+h)の円をほぼ万遍なく埋め尽くす。この実施例の場合も、折線4Aを山折りとし、折線4Bを谷折りとした鏡像のタービン実施例が存在する。
【0016】
本発明は羽根の枚数nに制限はない。
図12は羽根の枚数nを50枚に設定した実施例の斜視図である。回転軸方向から見た平面図は
図11のようになり、半径=(s+h)の円をほぼ万遍なく埋め尽くす。
【0017】
偏角w以外のパラメーターを固定し、様々な偏角wの本発明実施例を比較した場合、特に偏角wが2π(3-√5)/2ラジアン≒137.5度、いわゆる「黄金角」をなす場合が最も回転効率が高くなる。しかし本発明は任意の偏角wに対応するものである。場合によっては、黄金角以外の角度を使うことによって、回転効率をあえて低く抑える必要も起こりうる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は水力タービン、蒸気タービン、風力タービン、ガスタービン、送風ファン、ポンプ、スクリュー、プロペラなど、汎用的なタービンに利用できる。
【符号の説明】
【0019】
a 展開図における折線4A、4Bの長さ
b 羽根の傾きvのときの羽根の幅cの水平距離
c 羽根の幅
d 隣り合う羽根同士のピッチ間隔
h 羽根の長さ
w 隣り合う羽根同士のなす偏角
v 羽根の傾き角度
u 隣り合う羽根同士のなす面角
s h=0としたときの二等辺三角形の羽根において、回転軸の位置2から底辺中点までの距離
r h=0としたときの二等辺三角形の羽根において、回転軸の位置2から頂点までの距離
n 羽根の枚数
t 平面材の厚さ
1 羽根部分
2 展開図における回転軸の位置
3 切断線
4A 折線
4B 4Aが谷折りならば山折り折線。4Aが山折りならば谷折り折線。
5 回転軸