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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】非ゲル化増粘組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20220124BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220124BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220124BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20220124BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20220124BHJP
   A23L 17/50 20160101ALN20220124BHJP
   A23L 7/157 20160101ALN20220124BHJP
【FI】
C09K3/00 103G
A61K8/06
A61K47/36
A61Q17/04
A61K8/73
A23L29/238
A23L29/269
A23L17/50 Z
A23L7/157
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2016216721
(22)【出願日】2016-11-04
(65)【公開番号】P2017088880
(43)【公開日】2017-05-25
【審査請求日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2015217266
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 渉
(72)【発明者】
【氏名】阪倉 美紀
(72)【発明者】
【氏名】奥田 瑛史
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105333(JP,A)
【文献】特開平09-202715(JP,A)
【文献】特開平05-139904(JP,A)
【文献】特開2009-055879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A23B 4/02
A23G 9/00
A61K 8/06
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトマンナン及びウェランガムを含有し、次の要件を満たす非ゲル状増粘組成物;
該非ゲル状増粘組成物が飲食品、医薬品、医薬部外品、家庭用製品、又はトイレタリー製品のいずれかであって、
ガラクトマンナン1質量部に対して、0.01~25質量部のウェランガムを含有し、
前記非ゲル化増粘組成物の粘度が10mPa・s以上であって、
塩類を含有し、当該塩類の含量が0.01質量%以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ゲル化増粘組成物、及び当該組成物を調製することができる増粘剤製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品をはじめとする各種組成物を増粘又はゲル化させる目的で、様々な多糖類が用いられている。
例えば、かかる多糖類の1種としてガラクトマンナンが知られている。ガラクトマンナンは、D-マンノースの主鎖にD-ガラクトースの側鎖が結合した多糖類であり、D-マンノースとD-ガラクトースの割合が相違する、グァーガム、タラガム及びローカストビーンガムの3種類が主に工業的に製造され、飲食品をはじめとする各種分野で利用されている。
しかし、各種組成物を増粘させるために、ガラクトマンナンを多量に用いた場合には、増粘対象となる組成物の透明性や風味、食感、触感等に影響を与える場合があり、少量のガラクトマンナンの使用で、対象組成物(被増粘組成物)をゲル化させることなく十分に増粘できる技術が開発されれば、その利用価値は非常に高い。
【0003】
少量のガラクトマンナンの使用で対象組成物(被増粘組成物)を十分に増粘させる方法の一種として、ガラクトマンナンと相乗効果を奏するキサンタンガムを使用する技術が知られている。
例えば、キサンタンガムは、グァーガムとの相乗効果による増粘効果、並びにローカストビーンガムとの相乗効果によるゲル化効果が知られている。
また、特許文献1には、(A)キサンタンガムと(B)タラガム又はグァーガムあるいはその両方を含有する糊料組成物に(C)カラヤガムを配合したことを特徴とする高増粘性糊料組成物が開示されており、特許文献2には、キサンタンガムとローカストビーンガムの酵素分解物を併用した例が開示されている。
【0004】
しかし、キサンタンガムと、グァーガム、タラガム又は酵素分解ローカストビーンガムを用いて対象組成物を増粘させた場合には、キサンタンガム特有の曳糸性により、得られた増粘組成物がべたつく、液切れが悪い等の問題を有しており、また、キサンタンガム及びローカストビーンガムを用いた場合には対象組成物がゲル化し、目的とする非ゲル化増粘組成物を得ることができないという問題を有する。更に、特許文献1及び2に開示された技術は、対象組成物の増粘効果の観点から、いまだ十分といえるものではない。また、キサンタンガムを用いる技術は、塩類を含む組成物に十分な粘度を付与できないという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-278893号公報
【文献】特開2001-178379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、ガラクトマンナンを用いて非ゲル化増粘組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の状況において本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、アルカリジェネスの培養液から得られる多糖類であるウェランガムが、ガラクトマンナンと相乗的に増粘効果を発揮し、対象組成物(被増粘組成物)に十分な粘度を付与できること、当該増粘効果は塩類の存在下でも発揮し得るものであること、並びに、得られた非ゲル化増粘組成物はべたつきが少ないこと等を見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明は、具体的には以下の態様を有する。
項1.ガラクトマンナン及びウェランガムを含有する、非ゲル化増粘組成物。
項2.前記ガラクトマンナン1質量部に対して、0.01~25質量部のウェランガムを含有する、項1に記載の非ゲル化増粘組成物。
項3.前記非ゲル化増粘組成物の粘度が10mPa・s以上である、項1又は2に記載の非ゲル化増粘組成物。
項4.前記非ゲル化増粘組成物が塩類を含有し、当該塩類の含量が0.01質量%以上である、項1~3のいずれか1項に記載の非ゲル化増粘組成物。
項5.前記非ゲル化増粘組成物が、飲食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、家庭用製品、トイレタリー製品、農業製品、又は工業製品である、項1~4のいずれか1項に記載の非ゲル化増粘組成物。
項6.ガラクトマンナン及びウェランガムを含有し、
前記ガラクトマンナン1質量部に対して、0.01~25質量部のウェランガムを含有する、増粘剤製剤。
項7.ガラクトマンナン及びウェランガムを含有し、
前記ガラクトマンナン1質量部に対して、0.01~25質量部のウェランガムを含有する、分散安定剤製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高粘度の非ゲル化増粘組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例2-1~実施例2-3並びに比較例2-1及び2-2の非ゲル化増粘組成物の粘度を、回転数60rpmの条件下で測定した値を示すグラフである。
図2】比較例8-3の乳液を10日間保存した後の状態を示す写真である。
図3】実施例8-1の乳液を10日間保存した後の状態を示す写真である。
図4】実施例8-2の乳液を10日間保存した後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.非ゲル化増粘組成物及び非ゲル化増粘組成物の製造方法
本発明の非ゲル化増粘組成物は、ガラクトマンナン及びウェランガムを含有する。
本発明で用いるガラクトマンナンは、D-マンノースの主鎖にD-ガラクトースの側鎖が結合した多糖類であり、D-マンノースとD-ガラクトースの割合が相違する、グァーガム、タラガム及びローカストビーンガムの3種類が主に工業的に製造されている。
グァーガムはD-マンノースとD-ガラクトースの割合が約2:1であり、タラガムは約3:1、並びにローカストビーンガムは約4:1である。
本発明では、ガラクトマンナンとして、好ましくはグァーガム、タラガム及びローカストビーンガムからなる群より選択される1種以上を用いることができる。
【0012】
非ゲル化増粘組成物におけるガラクトマンナンの含量は特に制限されないが、例えば、0.005~1質量%が挙げられ、好ましい含量は0.01~1質量%であり、より好ましくは0.03~0.7質量%、更に好ましくは0.05~0.5質量%、更により好ましくは0.1~0.3質量%である。
【0013】
本発明で用いるウェランガムは、スフィンゴモナス属細菌(Sphingomonas sp.)の培養液から得られた多糖類を主成分とするものである。簡便には、一般に流通している市販製品を利用することが可能であり、具体的には三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「ビストップ[登録商標]W」等が例示できる。
【0014】
本発明において、非ゲル化増粘組成物におけるウェランガムの含量は特に制限されないが、例えば、0.005~1質量%が挙げられ、好ましい含量は0.01~1質量%であり、より好ましくは0.03~0.7質量%、更に好ましくは0.05~0.5質量%、更により好ましくは0.1~0.3質量%である。
また、本発明では、非ゲル化増粘組成物に含まれるガラクトマンナン1質量部に対するウェランガムの含量が0.01~25質量部であることが好ましく、0.05~20質量部であることがより好ましい。
当該割合でガラクトマンナンとウェランガムを併用することで、両者の相乗効果により増粘効果が高まり、ゲル化を伴うことなく、被増粘組成物に十分な粘度を付与することができ、本発明が目的とする非ゲル化増粘組成物を得ることができる。更に、かくして得られる非ゲル化増粘組成物は、べたつきが少ないという利点を有する。
【0015】
本発明によれば、ガラクトマンナン及びウェランガムを併用することで、ゲル化を伴うことなく、十分な粘度が付与された非ゲル化増粘組成物を提供できるという利点を有する。なお、本発明において「非ゲル化」の判断は、簡便には、スクリュー管瓶(容量110mL、口内径×胴径×全長:φ20.3×φ40×120mm)に組成物50gを充填し、5℃にて一晩静置後、スクリュー管瓶を逆さにした場合に、10秒間以内に組成物がスクリュー管瓶から流れ出るか否かで確認することができる。このとき、10秒間以内に組成物がスクリュー管瓶から流れ出るものをゲル化していない組成物、つまり、「非ゲル化」組成物であると判断することができる。
また、本発明において「増粘組成物」とは、ガラクトマンナン及びウェランガムを含有させることで、これらを含有させる前と比べて粘度が高くなっている組成物を意味する。
【0016】
本発明の非ゲル化増粘組成物の種類は特に制限されない。一例として、飲食品(例えば、ココア飲料、ミネラル強化飲料、抹茶入り飲料、野菜又は果汁入り飲料、豆乳飲料、ゼリー入り飲料、しるこドリンク、栄養ドリンク等の飲料;ドレッシング、ケチャップ、たれ、ソース等の調味料;コンソメスープ、コーンスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、中華スープ、卵入りスープ、味噌汁等の各種スープ;シチュー、カレー、ホワイトソース等の液状食品;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム;冷菓用液状ミックス、菓子用液状ミックス、パン用液状ミックス等の食品加工品用組成物;フラワーペースト、フライ食品用のバッター、塩辛等)、化粧品(例えば、化粧水、乳液、化粧下地、ファンデーション、日焼け止め、シャンプー、トリートメント、ヘアカラー等)、医薬品(例えば、シロップ剤等)、医薬部外品(例えば、薬用化粧品等)、家庭用製品(例えば、洗剤、入浴剤等)、トイレタリー製品(例えば、ボディソープ、ハンドソープ、芳香剤、消臭剤等)、農業製品(例えば、農薬等)、工業製品(例えば、塗料製品、土木製品、コンクリート、アスファルト、土質改良剤等)等が挙げられる。
【0017】
本発明の非ゲル化増粘組成物の粘度は、組成物の種類に応じて適宜調整することができるが、好ましい粘度は10mPa・s以上であり、より好ましくは50mPa・s以上である。非ゲル化増粘組成物の粘度の上限も特に制限されないが、例えば、3000mPa・sが挙げられる。なお、本発明において「粘度」とは、特に明記がない限り、B型回転粘度計を用いて20℃、60rpmの条件下で測定した値を示す。
また、本発明の非ゲル化増粘組成物は、B型回転粘度計を用いて20℃、6rpmの条件下で測定した粘度が50mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましい。当該粘度の上限も特に制限されないが、例えば、20000mPa・sが挙げられる。
【0018】
本判明の非ゲル化増粘組成物が冷菓用液状ミックス等のように低温で調製されるものである場合は、B型回転粘度計を用いて5℃、60rpmの条件下で測定した粘度が10mPa・s以上であることが好ましく、50mPa・s以上であることがより好ましい。当該粘度の上限も特に制限されないが、例えば、3000mPa・sが挙げられる。また、B型回転粘度計を用いて5℃、6rpmの条件下で測定した粘度が50mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましい。当該粘度の上限も特に制限されないが、例えば、20000mPa・sが挙げられる。
【0019】
本発明によれば、塩類含量が0.01質量%以上である非ゲル化増粘組成物を提供することができる。
従来、ガラクトマンナンと相乗効果を奏する素材としては、キサンタンガムが知られている。しかし、塩類存在下ではキサンタンガムの粘度発現性は大きく低下する。例えば、塩類を含有する水溶液にキサンタンガムを添加した場合には、キサンタンガムが十分に水和せず、グァーガムと十分な相乗効果を発揮することができない。
一方、本発明によれば、塩類含量が0.01質量%以上、更には0.1質量%以上、特には0.5質量%以上、殊更には1質量%以上と、塩類を含有する組成物であっても、ガラクトマンナン及びウェランガムを添加することで、十分な粘度を有する非ゲル化増粘組成物を提供することができる。
本発明において、塩類の種類は特に制限されない。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、銅塩、鉄塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
【0020】
本発明の非ゲル化増粘組成物の製造方法は特に制限されず、ガラクトマンナンとウェランガムとが水存在下で共に存在する状態を経ればよい。例えば、ガラクトマンナンを含有する組成物(例えば、溶媒又は液状組成物)とウェランガムを混合しても良く、あるいは、ウェランガムを含有する組成物(例えば、溶媒又は液状組成物)とガラクトマンナンを混合しても良い。また、ガラクトマンナン及びウェランガムを所定の組成物(例えば、溶媒又は液状組成物)と混合しても良い。また、ガラクトマンナンを含有する組成物(例えば、溶媒又は液状組成物)と、ウェランガムを含有する組成物(例えば、溶媒又は液状組成物)を混合しても良い。
本発明で使用可能な溶媒としては、水性溶媒を用いることが好ましく、水性溶媒として例えば、水、水に低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数5以下のアルコール等)や、多価アルコール(例えば、グリセリン、ジグリセリン、グリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等)等)を添加したものなどが挙げられる。
また、本発明で使用可能な液状組成物としては、例えば、飲食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、家庭用製品、トイレタリー製品、農業製品、工業製品等が挙げられる。
【0021】
本発明では、ガラクトマンナン及びウェランガムを含有する混合液を加熱処理せずとも、十分な粘度が付与された非ゲル化増粘組成物を製造することができるという利点を有する。
一方、従来、ガラクトマンナンと相乗効果を奏することが知られているキサンタンガムは、ガラクトマンナンとの相乗効果を十分に発揮させるためには、80℃以上に加熱して用いる必要があった。
しかし、本発明では、加熱処理を経ずとも、十分な粘度が付与された非ゲル化増粘組成物を製造することができるため、非ゲル化増粘組成物の製造工程が短縮されるという利点や、加熱設備を有さない場合であっても非ゲル化増粘組成物を製造することができるという利点を有する。
なお、本発明の非ゲル化増粘組成物は、ガラクトマンナン及びウェランガムを含有する溶媒を加熱処理(例えば、60~95℃)して製造しても良い。
【0022】
2.増粘剤製剤、分散安定剤製剤
本発明はまた、ガラクトマンナン及びウェランガムを含有する増粘剤製剤に関する。当該増粘剤製剤は、前記ガラクトマンナン1質量部に対して、好ましくは0.01~25質量部、より好ましくは0.05~20質量部のウェランガムを含有する。
本発明の増粘剤製剤は、例えば、溶媒や液状組成物等の対象組成物(被増粘組成物)に添加、混合することで、対象組成物に粘度を付与することができる。なお、係る溶媒や液状組成物としては、例えば上記1.に記載のものが挙げられる。
【0023】
本発明はまた、ガラクトマンナン及びウェランガムを含有する分散安定剤製剤に関する。当該分散安定剤製剤は、前記ガラクトマンナン1質量部に対して、好ましくは0.01~25質量部、より好ましくは0.05~20質量部のウェランガムを含有する、分散安定剤製剤にも関する。
本発明の分散安定剤製剤は、例えば、溶媒や液状組成物等の対象組成物(被増粘組成物)に添加、混合することで、対象組成物に含まれる不溶性成分等を均一に分散させることができる。なお、係る溶媒や液状組成物としては、例えば上記1.に記載のものが挙げられる。
【0024】
本発明の増粘剤製剤又は分散安定剤製剤を添加、混合する対象組成物(被増粘組成物)は、塩類含量が0.01質量%以上であってもよい。当該対象組成物(被増粘組成物)における塩類含量は、上記1.の記載を援用できる。
また、本発明の増粘剤製剤又は分散安定剤製剤の剤形は特に制限されず、例えば、固体状(例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状、丸薬状、シート状等)、ペースト状、液体状などが挙げられる。
【実施例
【0025】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を限定するものではない。実施例において、ウェランガムは、三栄源エフ・エフ・アイ(株)の「ビストップ[登録商標]W」を使用した。
なお、本実施例における粘度測定の条件、及び非ゲル化の判断基準を以下に示す。
(粘度測定条件)
測定対象の組成物をスクリュー管瓶に分注し、20℃の恒温槽にて30分間保持し、温度を20℃に調温した。次いで、B型回転粘度計を用いて、回転数6rpm及び60rpmの条件で各々、1分間測定した。
(非ゲル化の判断基準)
スクリュー管瓶に組成物を50g充填し、5℃にて一晩静置後、スクリュー管瓶を逆さにしたときに、10秒間以内に組成物がスクリュー管瓶から流れ出るか否か確認した。このとき、10秒間以内に組成物がスクリュー管瓶から流れ出るものを「非ゲル化」組成物であると判断し、10秒間以内に組成物がスクリュー管瓶から流れ出ないものを「ゲル化」組成物であると判断した。
粘度測定及び非ゲル化の判断には、容量110mL、口内径×胴径×全長:φ20.3×φ40×120mmであるスクリュー管瓶を使用した。
【0026】
実験例1 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(1)
(増粘剤製剤の調製)
以下に示す原料を粉体混合し、増粘剤製剤(実施例1及び比較例1)を調製した。
実施例1:グァーガム50質量部及びウェランガム50質量部
比較例1:グァーガム50質量部及びキサンタンガム50質量部
【0027】
(非ゲル化増粘組成物の調製)
以下の表1に示す溶媒(80℃)に、調製した増粘剤製剤を0.5質量%ずつ添加し、撹拌機(1500rpm)で10分間撹拌し、増粘組成物を調製した。調製した増粘組成物を20℃に調温後、粘度測定した結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、グァーガム50質量部に対し、50質量部のウェランガムを併用した実施例1の増粘剤製剤は、イオン交換水及び5%食塩水に対して、いずれも高い増粘効果を発揮し、非ゲル化増粘組成物の調製に適した増粘剤製剤であることが示された。
また、実施例1の増粘剤製剤を用いて調製された非ゲル化増粘組成物を10gずつ手の甲にとり、塗り広げることでその触感を確認したところ、曳糸性が少なく液切れの良い触感であった。
【0030】
また、調製した増粘剤製剤を表2に示す溶媒(20℃)に0.5質量%ずつ添加し、撹拌機(1500rpm)で10分間撹拌し、増粘組成物を調製した。調製した増粘組成物を20℃に調温して粘度測定した結果を表2に示す。
なお、食塩水は、イオン交換水に表2に示す食塩量を添加、溶解させることで調製した。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1及び比較例1の増粘剤製剤は、20℃のイオン交換水に対しては、いずれも高い粘度付与効果を示したが、比較例1の増粘剤製剤を添加した組成物(非ゲル化増粘イオン交換水)は、曳糸性が強く、べたつき、液切れの悪い触感であった。一方、実施例1の増粘剤製剤を添加した組成物(非ゲル化増粘イオン交換水)は、曳糸性が少なく液切れの良い触感であった。
更に、実施例1の増粘剤製剤は、イオン交換水のみならず、塩類を含有する組成物に対しても優れた粘度付与効果を示した。一方、比較例1の増粘剤製剤は、塩類が含まれるとその粘度発現効果が著しく低減し、比較例1の増粘剤製剤を添加した0.1%食塩水の粘度は、同増粘剤製剤を添加したイオン交換水の粘度の半分以下であった。
【0033】
実験例2 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(2)
イオン交換水に0.5質量%のグァーガムを添加し、80℃で10分間撹拌することで、グァーガム水溶液を調製した。同様に、イオン交換水に0.5質量%のウェランガムを添加し、80℃で10分間撹拌することで、ウェランガム水溶液を調製した。
非ゲル化増粘組成物におけるグァーガム及びウェランガムの含量が、表3に示す割合になるように、調製したグァーガム水溶液及びウェランガム水溶液を80℃で混合し、非ゲル化増粘組成物を調製した。調製した非ゲル化増粘組成物を20℃に調温後、測定した粘度結果を表3に示す。また、回転数60rpmで測定した実施例2-1~2-3並びに比較例2-1及び2-2の粘度結果を図1に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
図1に示すように、グァーガム1質量部に対して0.25~4質量部のウェランガムを併用することで、相乗的に粘度が増加していることが確認された。
【0036】
また、グァーガム水溶液及びウェランガム水溶液を各々20℃に調温後に混合する以外は、同様の条件でグァーガム水溶液及びウェランガム水溶液を混合して非ゲル化増粘組成物を調製し、調製した組成物の粘度を測定した結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表3と同様に、グァーガム1質量部に対して0.25~4質量部のウェランガムを併用することで、相乗的に粘度が増加した。
【0039】
実験例3 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(3)
実験例2で用いたグァーガムをローカストビーンガムに変更する以外は実験例2と同様に、増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物を調製し、粘度を測定した。結果を表5及び表6に示す。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
ローカストビーンガム1質量部に対して、0.25~4質量部のウェランガムを併用することで、相乗的に粘度が増加し、非ゲル化増粘組成物を調製することができた。
また、得られた非ゲル化増粘組成物はいずれも、べたつきが少ない触感であった。
【0043】
実験例4 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(4)
実験例2で用いたグァーガムをタラガムに変更する以外は実験例2と同様に、増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物を調製し、粘度を測定した。結果を表7及び表8に示す。
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
タラガム1質量部に対して、0.25~4質量部のウェランガムを併用することで、相乗的に粘度が増加し、非ゲル化増粘組成物を調製することができた。
また、得られた非ゲル化増粘組成物はいずれも、べたつきが少ない触感であった。
【0047】
実験例5 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(5)
表9に示す処方に従い、飲食品(ラクトアイス)を調製した。詳細には以下のとおりである。
(1)水と水あめを撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、安定剤及びグリセリン脂肪酸エステルを添加した。
(2)80℃達温後、ヤシ油を添加し、温度を保持したまま、更に10分間撹拌混合した。
(3)ゴーリン式ホモジナイザーにて15MPa(1段目10MPa、2段目5MPa)で均質化を行い、更に撹拌しながら5℃まで冷却し、5℃にて12時間エージングを行った。
(4)エージング後、フリージング(オーバーラン75%程度、取り出し温度-5.0℃)を行った。その後、カップ充填し、-40℃で急速凍結を行い、ラクトアイスを調製した(乳脂肪分9.0%、乳固形分8.6%、全固形分33.6%)。
【0048】
【表9】
【0049】
B型回転粘度計を用い、エージング後の混合物(ミックス)の粘度を測定した(測定温度:5℃)。ミックスに適切な粘度を付与することで、食感改良効果として、なめらかさやボディ感を付与することができる。評価結果を表10に示す。
【0050】
【表10】
【0051】
表10に示すように、ローカストビーンガム1質量部に対して2.3~9質量部のウェランガムを併用することで、エージング後の混合物の粘度(ミックス粘度)が相乗的に増加していることが確認された。
【0052】
実験例6 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(6)
以下に示すとおり、飲食品(イカの塩辛)を調製した。
(1)イカを開き、胴とイカ腑を取り出した。表11に示す処方に従って各原料を混合し、4℃で12時間静置して塩漬けを調製した。
(2)表12に示す処方に従い、イカ腑塩漬けにその他の原料を添加し、10分間撹拌混合した。
(3)(2)と胴塩漬けを重量比1:2で混合し、4℃で12時間静置し、熟成を行った。
【0053】
【表11】
【0054】
【表12】
【0055】
B型回転粘度計を用い、調製後1日経過後の塩辛の粘度を測定した(測定温度:20℃)。評価結果を表13に示す。
【0056】
【表13】
【0057】
表13に示すように、グァーガムに対して同量のウェランガムを併用することで(実施例6-1及び6-2)、グァーガムに対して同量のキサンタンガムを併用した場合(比較例6)に比べ、塩辛が高粘度となることが確認され、増粘剤の含量を低減できることが確認された。また、比較例6は食感にぬめりがあるのに対し、実施例6-1及び6-2は食感にぬめりがなく、すっきりした食感であった。
【0058】
実験例7 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(7)
表14に示す原料を全て混合し、当該混合物と等量の水を加え、よく混合することで、飲食品(バッター)を調製した。
【0059】
【表14】
【0060】
B型回転粘度計を用い、バッターの粘度を測定した(測定温度:20℃)。バッターに適切な粘度を付与することで、具材への付着性が良くなり、またバッターから具材を引き上げた際に液垂れしにくくなる。また、100mlメスシリンダーにバッター100mlを移し、1時間静置後の均一混濁状態から沈降した不溶性成分の沈降量(ml/100ml)をメスシリンダーの目盛りで測定した。評価結果を表15に示す。
【0061】
【表15】
【0062】
表15に示すように、グァーガム1質量部に対して0.05~19質量部のウェランガムを併用することで(実施例7-1及び7-5)、増粘剤を含有しない場合(比較例7-1)及びグァーガムに対して同量のキサンタンガムを併用した場合(比較例7-2)に比べ、バッターが高粘度になることが確認された。また、実施例は比較例に比べて不溶性成分の沈降量が減少し、分散安定効果が向上することが確認された。
【0063】
実験例8 増粘剤製剤及び非ゲル化増粘組成物の調製(8)
以下の示すとおり、化粧料(乳液)を調製した。
<C相の調製>
(1-1)表16に示す処方に従い、PEG-40水添ヒマシ油、グリセリン及びジプロピレングリコールを混合してA相を、ミネラルオイル、エチルへキサン酸セチル及びプロピルパラベンを混合してB相を調製し、50℃で保温した。
(1-2)A相をホモディスパーで撹拌しながら回転数6000rpmまで上げ、少しずつBを添加して混合した。
(1-3)水にて計100%となるように調整し、30分間撹拌した。
<多糖類水溶液の調製>
(2)表17に示す処方に従い、水に多糖類を添加し、80℃で加熱撹拌溶解した。
<乳液の調製>
(3)表18に示す処方に従い、全ての原料を常温にてプロペラ撹拌にて混合し、スクリュー瓶に充填して60℃に保温した。多糖類水溶液として試験例8-1~8-4を使用した乳液をそれぞれ実施例8-1~8-4とし、多糖類水溶液として対照例8-1~8-3を使用した乳液をそれぞれ比較例8-1~8-3とした。
【0064】
【表16】
【0065】
【表17】
【0066】
【表18】
【0067】
B型回転粘度計を用い、調製後10日経過後の乳液の粘度を測定した(測定温度:20℃)。また、調製後10日経過後に層分離の発生状態を目視で評価した。層分離の発生状態は以下の基準に従い評価した。
〇:層分離なし。
△:下部にわずかな層分離が発生したが境界が明確ではない。
×:明確な層分離が発生した(カッコ内は全体に対する下層の割合を示す)。
評価結果を表19に示す。
【0068】
【表19】
【0069】
表19に示すように、増粘剤を使用しない場合(比較例8-1)及びグァーガムに対して同量のキサンタンガムを併用した場合(比較例8-2及び8-3)は、調製後10日経過後に明確な層分離を起こしており、安定な乳液を調製できなかった。図2に、比較例8-3の調製後10日経過後の状態を示す。
一方、ガラクトマンナン1質量部に対して4質量部のウェランガムを併用することで(実施例8-1~8-4)は、層分離を起こすことなく、乳液の粘度を増加させることできることが確認された。図3及び4に、それぞれ実施例8-1及び8-2の調製後10日経過後の状態を示す。
図1
図2
図3
図4