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特許7013123最適化性能を有する先端を切った並進型コンタクトレンズ及び設計方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】最適化性能を有する先端を切った並進型コンタクトレンズ及び設計方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
G02C7/04
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016222212
(22)【出願日】2016-11-15
(65)【公開番号】P2017090919
(43)【公開日】2017-05-25
【審査請求日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】14/942,298
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-イーブス・ジェルリガン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ジェイ・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・エフ・ジュビン
(72)【発明者】
【氏名】シャーロク・ゼイナリ-ダバラニ
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537985(JP,A)
【文献】米国特許第04618229(US,A)
【文献】特開2003-215508(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250067(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/114628(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/116559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
A61F 2/16
A61F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進型コンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
遠視を矯正するための第1の視力矯正領域及び近視を矯正するための第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、前記第1の視力矯正領域は、前記第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、前記第2の視力矯正領域は、前記第1の視力矯正領域の下方の位置にある、内側光学部と、
前記内側光学部を囲む外側周辺部であって、前記外側周辺部は、前記コンタクトレンズの、眼と接触する側の表面であるコンタクトレンズ後面の任意の点における曲率半径である、後面曲率半径及び前記コンタクトレンズの最大厚と最小厚との差である厚変化を有する、外側周辺部と、を備え、
前記後面曲率半径は、不均一であり、前記外側周辺領域は、前記コンタクトレンズの水平子午線に対する下方部分及び上方部分と、前記下方部分と前記上方部分との間に位置する介在移行部分と、を更に備え、
前記後面曲率半径は、第1の後面曲率半径と、第2の後面曲率半径と、から構成されており、前記第1の後面曲率半径は、前記コンタクトレンズの垂直子午線断面における前記下方部分における前記コンタクトレンズの後面の一定である曲率半径であり、前記第の後面曲率半径は、前記コンタクトレンズの垂直子午線断面における前記上方部分における前記コンタクトレンズの後面の一定である曲率半径であり、
前記第1の後面曲率半径は前記第2の後面曲率半径よりも小さく
前記介在移行部分は、前記第1の後面曲率半径から、前記第2の後面曲率半径まで滑らかに連続して移行するように構成されており、前記第1の曲率半径から前記第2の曲率半径までの移行は、前記介在移行部分に生じ、
前記最大厚及び最小厚は、前記コンタクトレンズの垂直子午線断面における前記下方部分における最大厚である第1の最大厚と、前記コンタクトレンズの垂直子午線断面における前記上方部分における最小厚である第2の最小厚と、を含み、
前記第1の最大厚と前記第2の最小厚との間の差は、前記外側周辺領域の内部において0.3mm以下であり、
前記垂直子午線の下方に位置する前記コンタクトレンズのレンズ上部から見たエッジの形状が、前記コンタクトレンズ外周上の前記垂直子午線を挟んだ2点を結んだ直線状である、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記内側光学部の前記第2の視力矯正領域は、前記内側光学部が前記コンタクトレンズの垂直子午線に関して非対称であることをもたらす前記第1の視力矯正部の位置決めに対する鼻側バイアスによって位置決めされている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記第1の後面曲率半径は、8mmである、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第2の後面曲率半径は、9.2mmである、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
凹形、凸形、及び線形の形状からなる群から選択された傾斜形状を有する傾斜部分を更に備え、前記傾斜部分は、前記周辺領域の前記下方部分の内部に位置決めされている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記内側光学部は、前記第1の視力矯正領域と前記第2の視力矯正領域との間に位置決めされた第3の視力矯正領域を更に備え、前記第3の視力矯正領域は、中間視力ニーズを矯正するように構成されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
記第1の最大厚は、前記第2の最小厚よりも大きく、前記第1の最大厚は、前記第2の最小厚まで滑らかに連続して移行し、前記第1の最大厚から前記第2の最小厚までの移行は、主に前記介在移行部分において生じる、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記内側光学部の前記第2の視力矯正領域は、前記内側光学部が前記垂直子午線に関して非対称であることをもたらす前記第1の視力矯正部の位置決めに対する鼻側バイアスによって位置決めされている、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記第1の最大厚は、0.3mm~0.6mmである、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
最大厚、並びに凹形、凸形、及び線形の形状からなる群から選択された傾斜形状を有する傾斜部分を更に備え、前記傾斜部分は、前記傾斜部分の前記最大厚が、前記周辺領域の前記下方部分の内部に位置するように位置決めされている、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記内側光学部は、前記第1の視力矯正領域と前記第2の視力矯正領域との間に位置決めされた第3の視力矯正領域を更に備え、前記第3の視力矯正領域は、中間視力ニーズを矯正するように構成されている、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズに関し、より特定すると、老視を矯正するための先端を切った並進型コンタクトレンズの設計に関し、その設計は、レンズが眼に装用されているときの快適性を維持しつつ、並進能力を最大にするように最適化されている。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、医療用デバイスとみなされ、視力を矯正するため及び/又は美容若しくは他の治療のために装用され得る。コンタクトレンズは、1950年代以降、視力を改善するために商用的に利用されてきた。初期のコンタクトレンズは、硬質材料から製造又は製作され、比較的高価で脆弱であった。これらのコンタクトレンズは依然として使用されているが、最初の快適性が低いため、全ての患者に適してはいない。その後のこの分野における発展によって、ハイドロゲル系のソフトコンタクトレンズがもたらされ、今日では非常に一般的で広く利用されている。ソフトコンタクトレンズが導入され、装用者が体験する快適性が大いに改善された。
【0003】
人は歳を取ると、水晶体が徐々に硬くなり、眼が遠近調節しにくくなる。言い換えると、近くの対象に焦点を合わすために自然の人の水晶体の形状を変える人の眼筋能力は、加齢とともに低下する。この状態は、老視として知られている。老視患者の治療において、1つのイノベーションは、並進型レンズ設計の使用である。より人気がある種類の並進型レンズ設計のうちの2つは、先端を切った変更又は疑似の先端を切った変更のものであり得、両者間の主な相違は、全体的なレンズ形状であり、そして、レンズの下方部分が、瞳孔に対するレンズの並進を達成するためにまぶたと相互作用する態様である。典型的な並進型レンズは、眼、具体的には、瞳孔に対するコンタクトレンズの相対的な移動に依存している。典型的には、並進型レンズは、複数の光学部を有することになるが、視力矯正部が同心円状に位置する環状領域である典型的な同心円二重焦点と異なり、並進型二重焦点においては、視力矯正部は、上下の位置にある。少なくとも、近方及び遠方の両方の視力矯正部は、患者能力の損失を考慮するために、レンズの中に存在することになり、そして、視線角度に応じて、視線を1つの部又は別の部を通して向けることによって、視力を最適化できる。これを達成するために、近方部及び遠方部は、一般的に、それぞれ下方及び上方に位置する。例えば、(典型的には、読書のような近方視ニーズに対して)人が下方を見るとき、レンズの下側(近方)部分を通して見ている。このことは、レンズが、下まぶたとの相互作用を通して、視線角度が下方を向いている瞳孔に対して典型的に上方に動かされるので支障がない。視線がより水平の位置に戻り、レンズ装用者が遠方の対象に目を向けるとき、レンズの相対位置は、眼の瞳孔がレンズの上方(遠用)部分を通る視線と整列している状態にある。このことは、結果として、近方視及び遠方視の両方のニーズのために焦点を最適化することになる。近方部と遠方部との間に1つ又は2つ以上の中間部を組み込むこともまた、コンピュータ視のような中間視ニーズを容易にするためにあってもよい。
【0004】
このように、複数の視力ニーズに対して最適視力を達成するためには、並進型レンズが正しく機能するように、並進型レンズの眼に対する必要な移動を達成することが不可欠である。これを達成しなければ、結果として、視線が、間違った部又は両方の部のうちの一部分を通して向けられることになり、したがって、視界がぼやけることになる。この空間における初期の構想のうちの1つは、米国特許第6,109,749号において論じられ、それにおいて、発明者は、眼自体に対してレンズを並進させることを補助するために、前方レンズ面からのある種のバットレス又は突起を提供する一体成形ベベルを組み込んでまぶたと相互作用させた。当面は、快適性の問題を別にして、レンズが下まぶたと相互作用する方法が実際に現実性がある一方、レンズの相対的並進の範囲が、いくつかの事項、すなわち、これらに限定されないが、涙液膜の性質と存在、レンズ適合、レンズ設計、及び眼の非対称性、並びに、それがコンタクトレンズと相互作用して影響を及ぼす態様によって影響を受ける可能性があり、場合によっては、所望の結果を達成できない。
【0005】
これもまた垂直方向のレンズ移動を達成しようと試みる米国特許第6,746,118号において、発明者は、二次的プリズムの二重特性が、レンズの垂直方向転移を容易にすることに加えて、二次的度数を提供することによって達成される’749特許についての改良を提案する。しかし、この問題は、’749又は’118特許のいずれもが考慮していない別の因子が存在するので、それよりも少し複雑であって、例えば、米国特許第7,216,978号は、上下のまぶたは、厳密には瞬きの間に垂直方向に移動しないことを示している。むしろ、上まぶたは、瞬きの間、わずかな鼻側成分によってほぼ垂直方向に移動し、下まぶたは、瞬きの間、鼻方向に移動しながら、ほぼ水平方向に移動する。下まぶたの主に水平の移動が与えられると、垂直方向のレンズ並進に対するその寄与の範囲が問題になり得るが、せいぜいレンズが下向きに移動することを防止する止め具として機能できるに過ぎない。更に、上下のまぶたは、垂直子午線を通って切断する平面に関して対称ではない。換言すれば、個体は、開状態の上下まぶた間に描かれた横軸に対して対称に瞬きするわけではない。このことは、少なくとも、これらの発明者の全てが達成しようとしているレンズの必要な垂直方向の並進に影響を及ぼし得る。それゆえに、瞬きそれ自体は、コンタクトレンズの理想的な並進における唯一の活用可能な事項ではなく、したがって、レンズ並進の範囲を最大にするために設計を改良する更に別の機会を提供する可能性がある。
【0006】
瞬きに関連した別の態様であって、快適性の維持に対処しているときに効果を示し始め得る態様は、上下両方のまぶたの機械的な受容器の存在である。上下のまぶたの中の受容器の感度に差があるか否かは十分にわかっていないが、瞬きの間に上まぶたが移動する距離は、下まぶたのそれよりも大きいことがわかっている。これらの機械的な受容器がストレスの変化に反応するのであれば、幾何形状のより滑らかでより急激でない変化は、幾何形状の急激な変化を伴う設計よりも、おそらくより良好に機能することになるであろう。上まぶたが移動する距離の方がより大きいので、その機械的受容器は、変化に反応するより多くの機会を経験する可能性がより大きいと思われる。全ての条件が同じならば、上まぶたについてのレンズとまぶたとの相互作用のより大きな持続時間が与えられると、次に、それ以上でなければ、上まぶたのレンズとの相互作用を下まぶたの相互作用のそれと等しいとみなすことを望むかもしれない。加えて、ハードコンタクトレンズと比較したときのソフトコンタクトレンズの性質は、また、角膜の形状に順応する可能性がより大きいことを考えると、ソフトコンタクトレンズの効率的に並進する能力を阻害し得る。レンズ後面の形状、及びこれがレンズ並進に影響を及ぼす態様を考慮することは、非常に重要であり、この空間において以前の発明者が、並進型レンズコンセプトとの組合せに取り組まなかったことである。
【0007】
先端を切った並進型レンズ設計では、先端を切ったコンタクトレンズの下側部分は、レンズのその部分の切取り又は短縮によって平坦にされ、結果として非円形のレンズを生じさせる。従来の先端を切った並進型レンズ設計は、レンズの底部にほぼ平坦で、厚いエッジをもたらす。意図することは、この平坦にされた部分が、下まぶたと相互作用することにより、まぶたがレンズの底部と相互作用するときに、まぶたが明確な機械的止め具として機能することによって並進を達成することである。そのようなレンズの例示的な説明は、米国特許第7,543,935号、米国特許第7,430,930号、米国特許第7,052,132号、及び米国特許第4,549,794号を含む多数の特許に記載されている。しかし、これらのようなコンタクトレンズの比較的平坦なエッジは、快適性に影響を及ぼす傾向にあることがある。最小エネルギー位置の概念を活用する代替の方法は、米国特許第7,810,925号において提供され、そこでは、2つの離散した安定位置を有するレンズ設計が、近方視及び遠方視ニーズに対するレンズ位置を最適化するために提案されている。この最小ポテンシャルエネルギー位置の概念が、これらの2つの安定位置を達成するために活用され得る。しかし、いくつかの水準(場合によっては、’925特許訴訟における有意な水準)の置換力が、1つの位置から別の位置まで動くために必要であるならば、おそらく、いくつかの水準の不快感が、また、第2の安定位置に動くために克服されるべき初期の安定位置に対して導入されるであろう。快適性は、少なくとも、レンズの所望の変位を達成するのと同様に重要である。
【0008】
発明者は、また、並進型レンズ設計のために疑似の先端を切った設計を使用することを試みた。疑似の先端を切った並進型レンズ方法では、レンズは、円形のままであるが、局所化された厚変化によって、まぶたとの相互作用によってレンズの所望の並進を達成するためにまぶたと相互作用する疑似切頭部が作成される。1つのそのような例は、米国特許第6,921,168号に示されている。’168特許において、レンズの下方部分に位置する傾斜隆起部が、光学部の下方に位置決めされている。レンズの傾斜隆起部は、下まぶたの下に留まることが意図されている。レンズは、また、傾斜隆起部ではない、実質的にその他の全てのところの、レンズの周辺領域の内側、外側、及び上方に位置する隆起外部と呼ぶものを含む。発明者の意図は、眼の下まぶたが、常に、傾斜隆起部のうちの少なくともいくらかの部分と係合されることである。’168特許の発明者がレンズの所望の並進が達成される態様について主張するのは、下まぶたとレンズとの間のこの相互作用である。’168特許は、傾斜剛性部を下まぶたにより良好に適合するように設計することを試みることによって、快適性を改善することを試みている。これらの発明者は、傾斜隆起部の存在によって達成される下まぶたに順応し、下まぶたを徐々に係合する必要性について言及する一方で、下方領域にだけ明確に局所化されている傾斜剛性部自体の配置及び範囲には、なんら考慮がなされていない。’168特許の発明者は、光学部を具備するレンズの後面について論じる一方、レンズの後面又は形状には、それがレンズ並進に関するとして注目又は議論が全くなされていない。加えて、上まぶたが隆起外部領域と相互作用する態様の影響、及び並進及び快適性への上まぶたの影響についての言及が全くない。
【0009】
その権利譲受人が、出願人の本発明の権利譲受人でもある米国特許出願公開第2012/0075579号及び第2012/0075581号において、疑似切頭を有する老視矯正用の並進型レンズが提供されている。この場合、疑似切頭は、垂直子午線に関して非対称であり、特に、疑似切頭は、人の視線が精密作業中に向けられる方向により密接に一致し、整列させられる下方及び鼻側の方向に偏らされる。人が近くのものに焦点を合わせるとき、それぞれの眼が近くのものをよりよく見るために鼻方向に寄る傾向があるので、人の視線は下方かつ内側に向けられる。このことは、それぞれの眼が遠くの対象をよりよく見るために、より水平かつ互いに平行方向に向けられる遠望とは対照的である。この発明の非対称の態様は、下まぶたの水平方向及び垂直方向の両方の移動を、下まぶたがレンズの並進への影響に関連するとき、特に並進型レンズ設計において考慮する価値があるとみなす一方、追加の機会が、この空間に依然として存在する。
【0010】
権利譲受人が、出願人の本発明の権利譲受人でもある米国特許出願公開第2013/0258274号において、下まぶた接触面及びまぶた下支持構造が開示され、それは、凸形及び凹形の両方の曲線部分を含む様々な傾斜形状構成を提案する。出願人は、このことを同様に重要な考慮事項であると考えるが、米国特許出願公開第2013/0258274号は、後面曲率半径のパラメータ化との組合せにおいてこれらの傾斜形状を考慮しておらず、また、出願人の本発明の設計要素のうちのいくつかとの組合せにおいてそれらを同時にかつ全体的には考慮していない。
【0011】
最後に、米国特許第6,241,355号において、発明者は、回転対称の限定のないスプラインベースの数学的な面を使用することにより、複雑形状の角膜への良好な適合を提供する後面を有するコンタクトレンズの設計及び製造を可能にしている。滑らかで連続した面を確実にする適合スプラインの一般的な方法が本願において利用され得るが、発明者は、本願の特色のある幾何形状及び特徴を、’355特許においては記載も考慮もしていない。むしろ、それらの主要目的は、円錐角膜患者にみられるような不規則形状の角膜への適合の改善を可能にすることであった。
【0012】
上述の従来技術のデバイスは、以前のデバイスへの相当な改善を示す一方で、特定のトレードオフ、例えば、出願人の本発明に最も関連するもの、すなわち、快適性対並進の範囲及びこの並進が達成される態様をもたらす特徴及び設計を利用している。論じられる技術について、それぞれが具体的な態様から問題に対処するよう試みる一方、それらは、本願によって達成されるように、より全体的なアプローチからよりもむしろ特有の観点から問題に対処する。更に、たとえこれらの先行技術の参照を組合せた場合であっても、それらは、本願の物理的構造又は関連性を提供しない。したがって、眼の機能の改善を伴う先端を切った並進型コンタクトレンズに対するニーズが存在し、当該改善は、そのようなレンズが上下両方のまぶたと相互作用するときの高度な快適性を維持しつつ、後面曲率半径変化と組み合わされた厚変化の値及び形状などの複数の設計考慮事項から眼の解剖学的構造及びまぶたの機能を考慮に入れる。遠方視及び近方視の両方のニーズを最適化することとの組合せにおいてこれを達成するレンズを有することは、有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に従うコンタクトレンズは、快適性を改善し、レンズの相対的並進の範囲を最大にし、近方視及び遠方視の両方の要件に対して高品質の視力を達成する設計要素及び特徴を用いることによって、上記で簡単に述べたような先行技術と関連する不利を克服する。特に、本発明によれば、このことは、厚変化のパラメータ化、すなわち、快適性及びまぶた相互作用の改善を達成するために、レンズの全ての別の領域への滑らかで連続した移行を確実にしつつ、特にレンズの下方領域における厚変化の形状を最適化することと、並進の範囲を最大にするために、先端を切った並進型レンズ設計の選択的及び代替的な非対称の態様を含む後面周辺半径変化を最適化することと、によって達成される。
【0014】
1つの態様によれば、本発明は、先端を切ったコンタクトレンズを対象にしている。コンタクトレンズは、第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、第1の視力矯正領域は、第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、第1の視力矯正領域は、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、第2の視力矯正領域は、第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、内側光学部を囲み、眼上のコンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、外側周辺部は、快適性を維持しつつ、眼上での最大並進能力を達成するように最適化される少なくとも1つのレンズパラメータを有し、レンズパラメータは、最大レンズ厚、最小及び最大の両方の曲率半径、並びに傾斜形状を有する後面曲線曲率半径からなる群から選択される、外側周辺部と、を備える。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、先端を切ったコンタクトレンズを対象としている。コンタクトレンズは、第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、第1の視力矯正領域は、第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、第2の視力矯正領域は、第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、内側光学部を囲み、眼上でのコンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、外側周辺部は、後面曲率半径及び可変の厚変化を有し、可変の厚変化は、外側周辺領域の内部において0.3mm以下である、外側周辺部と、を備える。
【0016】
更に別の態様によれば、本発明は、先端を切ったコンタクトレンズを対象としている。コンタクトレンズは、第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、第1の視力矯正領域は、第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、第2の視力矯正領域は、第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、内側光学部を囲み、眼上でのコンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、外側周辺部は、可変の厚変化を有し、可変の厚変化は、外側周辺領域の内部において0.3mm以下であり、外側周辺部は、下方部分と、上方部分と、下方部分と上方部分との間に位置する介在移行部分と、を更に備える、外側周辺部と、を備えている。
【0017】
なお更に別の態様によれば、本発明は、先端を切ったコンタクトレンズを対象としている。コンタクトレンズは、第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、第1の視力矯正領域は、第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、第2の視力矯正領域は、第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、内側光学部を囲み、眼上でのコンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、外側周辺部は、不均一な後面曲率半径と、可変の厚変化と、を有し、可変の厚変化は、外側周辺領域の内部において0.3mm以下であり、外側周辺領域は、下方部分と、上方部分と、下方部分と上方部分との間に位置する介在移行部分と、を更に備え、厚変化及び後面曲率半径変化は、滑らかであって、周辺領域にわたって連続的に融合され、最大厚、並びに凹形、凸形、及び線形の形状からなる群から選択された傾斜形状を有する傾斜部分を更に備え、傾斜部分は、傾斜部分の最大厚が周辺領域の下方部分の内部に位置するように位置決めされている、外側周辺部と、を備える。
【0018】
更に別の態様によれば、本発明は、0.3mm以下の可変の厚変化を有するコンタクトレンズを設計する方法を対象にしている。方法は、眼上でのレンズ並進を最大にするために1つ又は2つ以上の最適化可能なレンズパラメータを選択することであって、レンズパラメータは、最大レンズ厚、最小及び最大の両方の曲率半径を有する後面曲線曲率半径、並びに傾斜形状から成る群から選択される、ことと、それぞれのパラメータについて、垂直子午線に沿った下方及び上方の両方の位置において、そのパラメータの値を決定することと、それぞれのパラメータについて、水平子午線に沿った内側及び外側の位置において、そのパラメータの値を決定することと、滑らかで連続した幾何形状をもたらす位置同士の間の介在場所に沿ってそれぞれのパラメータに対して値を選択することと、を含む。
【0019】
本発明の1つの態様によれば、先端を切ったレンズの周辺領域の厚変化は、上方領域における最小厚と、下方領域における最大厚と、を生じるようにパラメータ化され、厚は、指定された式によればこれらの2つの領域の間で変化し、レンズの前面と後面との間の差の結果である。
【0020】
別の態様によれば、後面周辺曲率半径もパラメータ化してもよく、後面周辺半径の曲率半径は、上方領域において、最大にされるか又は平坦にされ、一方、下方領域において、最小にされるか又は急勾配にされ、曲率半径は、指定された式によればこれらの2つの領域の間で変化している。
【0021】
更に別の態様によれば、レンズの厚寸法における、特にレンズの下方部分における傾斜形状は、形状が凸形、凹形、又は線形であってもよい。形状の種類を変更すること、又は上記の形状の組合せを使用することによって、相互作用が装用者に与える効果及び快適性の程度の観点から、レンズが上下の両方のまぶたと相互作用する態様を変化させてもよい。
【0022】
これらの個々の設計要素又は特徴のうちの2つ以上の組合せの結果としての最大厚及び厚変化が、また、セントレーションへの最小の影響とともに、快適性及び並進についての所望の結果を達成するために利用されてもよい。本発明によれば、上記内容を、また、先端を切った又は疑似の先端を切ったレンズ設計によって選択的に達成してもよく、それらは、また、レンズの垂直子午線に関して非対称であってもよい。これらの態様のそれぞれを個別に又は組合せて使用することにより、レンズの幾何形状を最適化して、快適性を維持しつつ、レンズの並進を最大にしてもよい。
【0023】
出願人は、24の設計構成についてシミュレーション実験を実施し、達成された並進及びセントレーションの範囲に関連するように、これらの複数の変数の相互作用を分析した。24の設計のそれぞれは、19人の個人についての光干渉断層撮影画像処理によって特徴付けられた幾何形状を用いて、19の眼について評価した。それぞれの設計構成についての快適性に影響を及ぼすレンズパラメータの評価も完遂された。初期の24の設計からの最も有望なもののうちの2つを選択した後に、これらの2つの設計についての10の追加の変更も評価した。設計変更において考慮された主要パラメータは、厚変化の傾き(上方領域から下方領域まで)と、最大厚と、周辺後面曲線曲率半径と、後面曲線移行角度と、傾斜形状と、を含んだ。全ての設計変更によって達成された並進に対する、出願人のシミュレーション結果について実行された因子分析に基づいて、周辺後面曲線曲率半径及び最大厚は、並進に関連する最も影響力の大きい要因であるとみなされたが、一方、結果は、後面曲線移行角度の範囲に対して少ししか影響を受けなかった。傾斜形状は、快適性の観点からはより重要である傾向にあったが、並進の範囲へのその影響は、ほんのわずかであった。上方から下方への厚変化の傾きも、また、有意でないとみなされた。しかし、下方領域での最大厚プロフィールから上方領域での最小厚まで移行する態様は、上まぶた快適性の観点からみて、厚自体と同程度に重要であると、出願人は判定した。更に、レンズの下方領域から上方領域までの周辺後面曲線のより大きい変更によって、レンズの呼び厚の低減を可能にするレンズの並進の増加を有意に達成することができた。このことは、厚の低減が、レンズが眼上に装用されているときの全体的な快適性の改善に関連し、そして、並進の増加を達成しつつそのようにすることが、先行技術をかなり上回る前進であるので、重要である。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、レンズは、周辺領域によって囲まれた中心光学部を含む。光学部は、近方視力及び遠方視力並びに中間視力ニーズに対処するために、複数の視力矯正部を含んでもよい。本発明によれば、レンズ形状は、下方部分において先端を切られ、したがって、レンズエッジは、形状が円形ではない。周辺領域での厚変化は、先端を切った形状に従うように構成されて、レンズ並進(及びセントレーション)が、眼に装用されたときに、及び視力矯正ニーズのそれぞれに対して、装用者の眼の瞳孔と整列し、ほぼ重なっている適切な視力矯正部をもたらすことを確実にする。厚変化自体は、周辺領域において達成され、したがって、レンズの光学領域における光学に影響を及ぼさないが、2つの領域の間の滑らかな移行を確実にするために考慮がなされている。厚変化は、周辺領域において円周方向に存在し、レンズの最も厚い部分は、下方に位置し、最も薄い部分は上方に位置する。これらの2つの場所の間で移行する厚変化は、好ましくは、垂直子午線に関して対称であるだけでなく、これらの2つの場所の間での滑らかで連続した移行であり、この厚変化は、周辺領域におけるレンズの前面及び後面の両方を考慮することによって達成される。上方領域での後面の曲率半径は、下方領域での後面の曲率半径よりも大きい。出願人は、このことが、垂直方向の並進に対する抵抗の低減を可能にする後面曲率をもたらすことを見出した。このことは、快適性をも維持し、レンズセントレーションに最小の影響を及ぼしつつ、達成された。
【0025】
下まぶたの最上部分に当接する真性先端を切ったレンズ設計から明確に離脱することにおいて、そのパラメータ化された厚変化及び傾斜形状の使用の両方による、本発明に従う出願人の先端を切った設計は、円形でない先端を切った形状を保持しつつ、レンズの一部分が量を変えて下まぶたの下に留まって位置することをもたらす。厚差の範囲及び程度の両方は、下まぶたの一部分の下に常駐するレンズの量に影響を及ぼし得る。凸形、線形、及び凹形の傾斜形状は、また、レンズが下まぶたの下に常駐する量の程度を変化させることを可能にし、したがって、快適性に直接的に影響を及ぼし得る。凹形の傾斜形状は、まぶた下常駐の最大範囲を達成し、凸形の傾斜形状は、最小範囲を達成するであろうが、一方、線形の傾斜形状は、傾斜形状についてのこれら2つの異形の間にある。これらの傾斜形状は、上下の両方のまぶたに対して異なる範囲のまぶた下常駐を可能にし、快適性に異なる影響を及ぼしてもよく、同様に、感受性及び眼の幾何形状が異なり得る装用者に、コンタクトレンズのスペクトラムが与えられてもよい。まぶた下常駐要件の範囲を考慮することに加えて、1つの傾斜形状を別のものと比較して選択することは、好ましくは、下まぶたの形状に最もよく順応する形状を選ぶことによって達成され得る。追加の例示的な実施形態では、結果生じた最大厚、並びに並進及び快適性の両方へのその影響は、厚変化、半径変化、及び傾斜形状についての前の設計要素のうちの1つ又は2つ以上から最適化されてもよい。全体的な最大厚を最小にすることが主要事項である一方、その最小値からその最大値までの厚変化の傾きもまた、重要である。下方に位置する最も厚い領域に最初に位置決めされた状態で、時計回り又は反時計回りのいずれかに円周方向に(中心からの固定された半径方向距離で)動き、そして、上方に位置する最も薄い領域まで進行するとき、最大厚は、この移動の経過にわたって型通りに徐々に減少し(いくぶん線形態様で)、その結果、これらの2つの領域の間に滑らかな移行をもたらす。周辺領域全体でのこの滑らか移行は、改善された快適性の維持に含まれる因子のうちの1つであり、それは、快適性に悪影響を及ぼし得るかなり局所化された厚い領域を有する従来技術の疑似の先端を切ったレンズ設計と特に対照的である。
【0026】
最終的な単数又は複数の実施形態では、説明された前述の例示的な実施形態のそれぞれは、垂直子午線に関して対称である厚変化を生じさせたが、同一の設計要素は、同様の形式で活用されることにより、改善された結果を達成し得るが、垂直子午線に関して対称であるよりむしろ非対称である結果生じた厚変化を有している。自然の視線方向において模倣する及び組み込むという目的は、近い対象に対して遠くの対象を見ているときに分化する。本発明のコンタクトレンズは、追加のコストを伴わずに、回折又は任意の種類のコンタクトレンズ光学とともに利用されてもよく、そして、臨床上の快適性及び/又は生理学を改善するために最適化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の上述及び他の特徴と利点は、添付図面に例証されるような、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳しい記載から明白となるであろう。
図1A】本発明に従う、代表的な関心領域を示すコンタクトレンズの正面図及び側面図である。
図1B】本発明に従う、代表的な関心領域を示すコンタクトレンズの正面図及び側面図である。
図1C】本発明に従う、パラメータ化された厚及び曲率半径変化に関連するときに代表的な関心領域を示す正面図及びコンタクトレンズの2つの各断面図である。
図1D】本発明に従う、パラメータ化された厚及び曲率半径変化に関連するときに代表的な関心領域を示す正面図及びコンタクトレンズの2つの各断面図である。
図1E】本発明に従う、パラメータ化された厚及び曲率半径変化に関連するときに代表的な関心領域を示す正面図及びコンタクトレンズの2つの各断面図である。
図1F】本発明に従う、コンタクトレンズ及び代表的な下まぶた形状の外形線と相互作用する態様についての正面図及び断面側面図である。
図1G】本発明に従う、コンタクトレンズ及び代表的な下まぶた形状の外形線と相互作用する態様についての正面図及び断面側面図である。
図1H】本発明に従う、コンタクトレンズの光学部についての代替の非対称な変更の正面図を示す。
図1J】本発明に従う、追加の中間光学部を有するコンタクトレンズの正面図を示す。
図2A】本発明に従う、パラメータ化される傾斜形状に関連するときに代表的な関心領域を示す、コンタクトレンズの正面図及び3つの各詳細断面図である。
図2B】本発明に従う、パラメータ化される傾斜形状に関連するときに代表的な関心領域を示す、コンタクトレンズの正面図及び3つの各詳細断面図である。
図2C】本発明に従う、パラメータ化される傾斜形状に関連するときに代表的な関心領域を示す、コンタクトレンズの正面図及び3つの各詳細断面図である。
図2D】本発明に従う、パラメータ化される傾斜形状に関連するときに代表的な関心領域を示す、コンタクトレンズの正面図及び3つの各詳細断面図である。
図3A】並進についての初期のパラメトリック研究に利用された24の設計変更を示す表である。
図3B】対比較を実行するための、初期のパラメトリック研究からの設計番号3及び番号9についての10の追加設計変更を示す表である。
図4A】結果生じたレンズの最大厚を示す24の設計変更のうちの2つに関して、複数の子午線についての半径方向距離に沿った厚を示す2つの代表的な等高線図及びグラフである。
図4B】結果生じたレンズの最大厚を示す24の設計変更のうちの2つに関して、複数の子午線についての半径方向距離に沿った厚を示す2つの代表的な等高線図及びグラフである。
図5A】コントロール設計とともに元の24の設計についての各並進及びセントレーション結果を示す。
図5B】コントロール設計とともに元の24の設計についての各並進及びセントレーション結果を示す。
図6】コントロール設計とともに元の24の設計のうちの2つ及び追加の10の変更についての並進結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的のために、図1Aに示すようなコンタクトレンズ10は、少なくとも2つの別個の領域によって画定されている。視力矯正が得られる内側又は光学領域12と、眼上のコンタクトレンズ10の機械的安定性を提供し、レンズエッジ11によって縁取られている外側又は周辺領域14と、であり、周辺領域14は、光学領域12を囲んでいる。内側又は光学領域12と外側又は周辺領域14との間の任意の中間領域(図示せず)が存在してもよく、当該中間領域は、急激な不連続が生じないような滑らかな態様で2つの前述の領域を融合するために使用されている。いくつかの例示的な実施形態では、この中間領域が必要ではないことがある。より具体的には、任意の中間領域(図示せず)は、光学領域と周辺領域とが滑らかに融合されることを確実にする。光学領域12及び周辺領域14の両方は、独立して設計され得るが、時には、特定の要求事項が必要な場合に、それらの設計が強く関連することがあることへの留意が重要である。例えば、乱視用光学領域を有するトーリックレンズの設計は、コンタクトレンズを眼上で所定の配向に維持するための特定の周辺領域を必要とすることがある。
【0029】
内側又は光学領域12は、視力矯正を提供し、本発明に従うと、少なくとも遠近両方の視力矯正を提供するように設計されている。したがって、内側又は光学領域12は、少なくとも2つの視力矯正部、すなわち、上方に位置する遠方視力矯正部120と、下方に位置する近方視力矯正部122との両方を有する。両方の視力矯正部120及び122は、内側又は光学領域12の境界内に含まれている。いくつかの例示的な実施形態では、図1Jに示すような追加の中間視力矯正部121が、遠方視力矯正部120の下方及び近方視力矯正部122の上方であって、内側又は光学領域12内に設置されることにより、コンピュータでの作業のような仕事のための中間視力矯正を提供し得る。外側又は周辺領域14は、セントレーション及び配向並びに本発明にしたがって改善された並進性を含む、眼上でのコンタクトレンズの基本的な適合及び安定性を提供する。出願人の発明に関しては、快適性を維持しつつ並進性を改善するために、周辺領域の全体が活用され得る。具体的に、周辺領域の上方及び下方の場所並びに側方の場所は、場所の特性が設計されるべき設計要素/特徴に機会を提供する。
【0030】
本発明の目的のために、コンタクトレンズは、また、レンズ10の断面表示を提供する図1Bに示すように、前面16、後面又はベースカーブ18によって画定されている。レンズ厚は、最適化可能な重要変数であり、領域のいずれかにおいて決定されてもよいが、好ましくは、外側又は周辺領域14において、レンズが、中心から指定半径方向距離に、指定角度子午線に沿って水平に位置決めされたときに、後面18と前面16との間の半径方向距離を単に測定することによって決定されてもよい。レンズ厚は、レンズ後面曲率半径、傾斜形状、上方領域から下方領域までの厚変化の傾き、及びレンズエッジ幾何形状のようないくつかの重要パラメータの結果である。
【0031】
最小レンズ厚は、大体周囲を囲まれた、記号15を付された領域によって図1Cに示す周辺領域の中の上方に生じる。最大レンズ厚は、大体周囲を囲まれた、記号17を付された領域によって図1Cに示す周辺領域の中の下方に生じる。また、レンズの水平子午線及び垂直子午線を表す破線が、図1Cに示されている。水平子午線は、0度及び180度の示度と整列した水平線であり、一方、垂直子午線は、90度及び270度の示度と整列した垂直線である。
【0032】
図1Cに示すほぼ円周の流跡線113の集合が、レンズ面の等高線を画定するために使用される。それぞれの円周方向経路に沿って結果生じるレンズ厚は、270度の角度位置にある領域17の最も厚い部分から90度の角度位置にある領域15の最も薄い部分まで円周方向に移動するときに、最大値から最小値まで滑らかに連続した態様で変化し、そして、この円周方向経路に沿った場所での厚は、下記の式1によって規定されることができる。
【0033】
【数1】
ここで、T=厚、
min=最小厚、
max=最大厚、
y=水平軸からの垂直距離、
min=垂直軸に沿った最小厚の位置、
max=垂直軸に沿った最大厚の位置、及び、
α=最小値と最大値との間の厚変化の割合を定義する傾きパラメータ。
【0034】
前述のように、図1Cにおける周辺領域の内部に示されたほぼ同心円の曲線の集合は、代表的な円周方向経路に等しく、その経路の厚は、本発明によれば、異なる半径方向距離において式1によって規定される。代表的な円周方向経路のうちの任意の1つに追随するとき、式が1つの厚から次の厚までの滑らかな連続した移行をもたらす一方、円周方向経路の1つの位置から、隣接する又は近接する位置まで半径方向に動くとき、1つの厚から次の厚までの滑らかで連続した移行について追加要件が存在する。このように、結果生じる面及び厚は、個々の代表的な円周方向経路に沿ってコントロールポイントによって、次に、個々の円周方向経路のコントロールポイントのそれぞれの集合を通る高次曲線を隣接した円周方向経路のコントロールポイントの集合の曲線に適合させることによって画定されている。
【0035】
図1D及び図1Eに示すような水平子午線及び垂直子午線に沿った断面図は、このことが達成される態様を教示し、この移行の結果を示し、それにおいては、移行は、円周方向寸法と同様に半径方向寸法において実際に滑らかで連続しており、そのことは快適性が維持されることを確実にする。水平子午線に沿った断面図を表す図1Dに示すように、周辺領域に側方に位置する2つの厚い領域101及び102、並びに後面曲率半径105及び106は、両方とも等しく、垂直子午線に関して対称であることがわかる。このことは、図1Eに示された垂直子午線に沿った断面図と対照的であり、周辺領域における下方の厚くなった領域103は、周辺領域の上方部分における厚くなった領域104よりもほぼより厚く、したがって非対称である。更に、図1Eに示すように、後面の下方部分における後面107の曲率半径は、後面108の上方部分における後面の曲率半径よりも小さく、それにより、同様に、後面曲率半径を非対称にする。更に、これらの2つの断面図を互いに比較すると、下方に位置する厚くなった領域103は、厚が互いに等しい2つの厚い領域101及び102よりも厚く、101及び102の両方は、上方に位置する領域104よりも厚いことがわかる。同様に、下方に位置する後面107の最小曲率半径は、垂直子午線と整列し、周辺領域に側方に位置して等しく、水平子午線に沿って位置する曲率半径105及び106よりも小さく、そして、これらの曲率半径105及び106は、垂直子午線に沿って上方に後面に位置する最大曲率半径108よりも小さい。最大後面曲線曲率半径は、上方領域15において一定であり、側方後面曲率半径まで滑らかに移行する。
【0036】
垂直子午線に関して対称であるこの上方領域の範囲は、図1Cに示すように、角度βによって特定することができる。同様に、最小後面曲線曲率半径は、下方領域17において一定であり、次に、側方後面曲率半径まで滑らかに移行する。垂直子午線に関して独立して対称であるこの下方領域の範囲も、図1Cに示すように、角度βによって特定することができる。角度β及びβによって特定された、角度的に上方領域15と下方領域17とは、等しくない場合、水平子午線に関して後面曲率半径の非対称な変化をもたらし、一方で、垂直子午線に関しては依然として対称である。角度β及びβによって特定されるときに結果生じた上部領域15と下方領域17とが等しい場合、これは、好ましい実施形態であって、レンズの用具、ひいては製造についての低コスト化及び簡素化をもたらし、並びに水平子午線及び垂直子午線の両方に関して対称的な後面曲率半径の変化をもたらす。
【0037】
2つの曲率半径(Rmax及びRmin)が各領域15及び17のそれぞれにおいて一定である一方、RmaxからRminまでの滑らかで連続した移行を確実にするために、介在移行部における後面の結果生じた曲率半径変化(r)が下記の式2によって規定されてもよく、ここで、rは、式2によって与えられ、
【数2】
ここで、r=曲率半径、
min=最小曲率半径、
max=最大曲率半径、
θ=βとβとの間にあるべき水平子午線から関心の子午線までの角度、
β=水平子午線からの上方(Rmax)領域の角度範囲、
及び
β=水平子午線からの下方(Rmin)領域の角度範囲。
【0038】
図1Fに示すように、レンズエッジ11は、コンタクトレンズ10の縁であり、最適化方法において考慮すべき別の有用な変数である。本発明の目的のために、上部から見たエッジ11の形状は、下方が先端を切られており、それ自体は非円形である。先端を切った部分は、好ましくは、垂直子午線の下方に位置し、それに関して対称であり、そして、図1Gに示すように、下まぶた99の形状に近似し得、それに対して本発明によれば相互作用するように設計されている。図1Fに示すように、前方から見たときのレンズエッジの下方適合形状部分は、平坦でも円形でもなく、むしろ、レンズがそれと相互作用するために、下まぶたの解剖学的形状に近似する二次曲線である。更に、結果生じたレンズの厚は、限定ではなく、パラメータ化された後面半径、また、前面幾何形状及び利用された3つの傾斜形状のうちの1つを含む複数の変数の関数であり、出願人の発明によるより従来的な先端を切ったレンズ設計と異なり、レンズの下方部分の一部分は、図1F及び図1Gの両方に示すように、下まぶた99の一部分の下に常駐したままである。下まぶたの下にあるレンズの部分は、図1Fに示す網状線で陰影の付いた領域13として表されている。
【0039】
代替の例示的な実施形態では、図1Hに示すような、垂直方向に対称的な先端を切ったレンズエッジに関して非対称の光学領域を有する左右レンズの両方を提供することができる。ここでは、光学領域12における近視用視力矯正部122は、近方視力矯正ニーズに対処するための鼻側バイアスを用いて位置決めされている。このように、この実施形態は、左右両方のレンズの異形を必要とすることになる。
【0040】
更に別の例示的な実施形態では、光学領域12は、追加の視力矯正部を有してもよい。図1Jは、3つの視力矯正部を有する光学領域12を示す。前述したように、これは、遠用視力矯正部120及び近用視力矯正部122を含み、これらの2つの視力矯正部の間にコンピュータ画面のような物品を見るような中間視力矯正ニーズに対する追加の中間視力矯正部121が位置決めされている。部の追加又は部の形状若しくはサイズの変更は、光学領域12における使用可能面積によって制限されているだけである。
【0041】
厚及び形状変化並びに後面曲率半径変化に加えて、傾斜形状の選択は、並進を達成するためだけでなく、下まぶたがレンズ自体と相互作用するときの快適性を確実にするためにも、重要な考慮事項である。図2A、及び具体的に断面図2B、2C及び2Dに示すように、開発及び評価された様々な傾斜形状は、凸形、線形及び凹形の傾斜形状を含む。特に快適性に対して、傾斜形状が重要な考慮事項である一方で、それは、図2Aに焦点領域21として示されているほとんどの下方部分だけでなく、周辺領域全体にわたって重要である。
【0042】
出願人の発明に従うと、傾斜形状は、レンズ20の周辺領域全体にわたって利用されている。図2Aに示すように、円周方向経路113の集合が、レンズ面に示されている。これらの円周方向経路は、レンズ面の等高線を画定するために使用されている。図2B図2C及び図2Dの詳細図のそれぞれに示す前面における6つの内側コントロールポイント214は、図2Aに示す円周方向経路のそれぞれについての場所に対応する。図2B図2C及び図2Dのそれぞれに示す追加の2つのコントロールポイントは、レンズエッジ11及び光学領域12の縁辺における対応する位置に関連する。利用されている傾斜形状は、レンズ周りで円周方向及び半径方向の両方に進行するとき連続しかつ滑らかであるが、しかし、厚変化について前述したように、最大厚は、この円周方向経路周りで異なっている。厚変化と同様に、最大厚の傾斜形状が、周辺領域の下方に位置することになり、図2Aの焦点領域21を参照されたい。図2B図2C及び図2Dに示す詳細図のそれぞれは、この下方周辺領域(すなわち、270度の場所)におけるレンズの断面形状を示す。レンズにおいて利用される傾斜形状は、3つの配置構成のうちの1つ、又は代替的な実施形態では、2つ以上の形状の組合せであってもよく、したがって、それがレンズ上の下方円周方向位置から別の位置まで動くとき形状を変えるが、円周全体に沿っては単一の傾斜形状であることが好ましい。
【0043】
傾斜形状のこれらの3つの変化は、図2B図2C及び図2Dに表されている。傾斜形状211は、前面において凸形であり、図2Bに示すように、凸形部分は、レンズの傾斜部分の下方に位置し、その凸形形状に起因して、まぶたの下に留まる面積は、結果として最小になる。図2Cにおいて、傾斜形状212は、前面において線形であり、また、下方に位置し、凸形形状211と比較したとき、まぶたの下に常駐したままのレンズの面積の増加を可能にする。傾斜形状213は、前面において凹形であり、その凹形形状は、また、図2Dに示すように、レンズの下方に位置している。傾斜形状213は、傾斜形状211及び212と比較したとき、まぶたの下に常駐したままのレンズの最大範囲を有する。傾斜形状に起因したレンズのまぶた下常駐量の差に加えて、傾斜形状自体及びそれがまぶたの幾何形状に適合する範囲の変化を伴ってまぶたと相互作用する態様は、快適性に影響し得る。別の傾斜形状と比較すると、傾斜形状213は、達成されたレンズ並進の範囲に影響を与えることなく、快適性に最大の肯定的影響を及ぼすときに好ましいが、別の傾斜形状変化(線形及び凸形)もまた、これらが並進に有意な影響を及ぼさず、特定の状況において、特定のまぶた幾何形状に対してより快適であり得るとき、使用され得る。
【0044】
図3Aは、評価された初期の24の設計構成についての詳細仕様を提供する表である。初期パラメータは、0.4mm及び0.6mmの2つの最大厚値と、8.0mmのRminから9.2mmのRmaxまで、及び8.4mmのRminから8.8mmのRmaxまでの範囲の周辺後面曲線曲率半径変化と、β=120度、β=240度、及びβ=150度、β=210度の後面曲線移行角度の組と、前面の周辺部分に凸形、線形、又は凹形の幾何形状のいずれかを有する周辺部分における傾斜形状と、を含む。これらのパラメータを、これらのパラメータの全順列を評価するために組合せることにより、査定するべき24の構成をもたらすそれぞれのパラメータについての組合せ効果を判定した。
【0045】
図3Bは、設計番号3及び設計番号9の10個の追加変化についての設計仕様を示す表である。全ての新しい追加設計変化を、β=120度、β=240度の後面曲線移行角度、及び凹形傾斜形状を用いて評価した。表が示すように、第1の2つの新しい変更番号25及び番号26は、2.27の傾きパラメータ、並びに番号3及び番号9の初期設計の0.4mmから低減された0.3mmの最大厚をそれぞれ有する。次の3つの設計番号3の変化は、2.27の傾きパラメータαと、0.4mmの最大厚とを維持するが、3つの均一な後方曲線半径(新しい変更番号27に対する8.4mm、新しい変更番号28に対する8.8mm、及び新しい変更番号29に対する9.2mm)の内の1つを使用する。設計変更番号30は、元のコントロール(TRS156)への修正である。次の2つの設計変更番号31及び番号32は、上方傾きパラメータを設計番号3の下方傾きパラメータの1.0及び6.0にそれぞれ修正する一方、最大厚を0.4mm、及びRminを8.4mmに保持する。最終的な2つの変更は、前の2つのものに類似しているが、上方傾きパラメータを設計番号9の下方傾きパラメータの1.0及び6.0にそれぞれ修正し、最大厚を0.4mm、及びRminを8.0mmに保持する。
【0046】
図4A及び図4Bは、等高線図及びXYグラフの両方の形式で結果生じた厚を示し、XYグラフは、これらの2つの代表的試料の相対的な厚を示す。示している2つの設計は、類似した周辺後面曲線曲率半径変化及び後面曲線移行角度を有し、両方とも凸形傾斜形状を有するが、図4Aのレンズ41は、0.4mmの最大厚を有する一方、図4Bのレンズ42は、0.6mmの最大厚を有する。
【0047】
図5Aは、設計番号0として示すコントロールレンズとともに、初期の24の構成についての並進結果を示す。この場合、レンズ番号3及び番号9は、追加研究のために選ばれた、元の24個についての2つの変更であった。図5Bは、コントロールレンズ(番号0)と比較された、これらの初期の24の構成についてのセントレーション結果を示し、選ばれたレンズ設計について、セントレーションへの影響が許容範囲内にあったことを示している。並進結果の評価において、レンズ設計番号3及び番号9を、コントロールレンズとともに、追加調査のために選んだ。設計番号3及び番号9並びにコントロール(図3Bを参照)の追加の10個のレンズ変更を、レンズ並進について更に評価した。図6は、選ばれたレンズについての結果生じたレンズ並進を示す。
【0048】
設計判定及び選択の多くはトレードオフを生じさせる一方、出願人は、この非常に広範囲の評価の結果として、ベースカーブ移行角度及び傾斜形状が、考慮された別の変数のうちのいくつかのものほどレンズ並進に影響を与えないが、傾斜形状は、快適性にとって重要であることがわかった。加えて、ベースカーブ及び厚は、実行された因子分析に基づくと、並進に最も影響力がある因子である。更に、より薄い厚を補償するためにベースカーブを調節することによって、眼上にあるときのレンズの快適性が増大することになる。具体的には、出願人は、0.3mmの小さい厚変化が、コントロールデバイス(設計番号0)よりもかなり高い並進値を達成すると判定した。設計変更番号33及び番号34(番号9の変更)、並びに設計変更番号31及び番号32(番号3の変更)についての傾きの査定において、中、高、又は低の上方傾きから下方傾きへの選択に差がないと判定した。それが、均一な後面曲率半径に対する後面曲率半径変化に関連するとき、中程度(Rmin=8.4mm~Rmax=8.8m)の後面曲率半径変化に対して、均一な後面曲線曲率半径への変更は、重要でないことがわかった。しかし、変化がより大きい(Rmin=8.0mm~Rmax=9.2mm)場合についての均一な後面曲率半径に対する後面曲率半径変化を評価すると、変化した後面曲率半径の存在は、均一な後面曲率半径と比較したとき、有意に異なっており、有益であることがわかった。このようにして、出願人は、快適性が犠牲にされず、悪影響を受けないことを確実にしつつ、並進を最大にする因子の最適組合せを決定した。
【0049】
ここで図示及び説明した実施形態は、最も実用的で好適な実施形態と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、記載及び図示された特定の構成に限定されず、添付の特許請求の範囲内に含まれ得る全ての変更物と一致すると解釈されるべきである。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 先端を切った並進型コンタクトレンズであって、前記レンズは、
第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、前記第1の視力矯正領域は、前記第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、前記第1の視力矯正領域は、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、前記第2の視力矯正領域は、前記第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、
前記内側光学部を囲み、眼上での前記コンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、前記外側周辺部は、快適性を維持しつつ、眼上での最大並進能力を達成するように最適化される少なくとも1つのレンズパラメータを有し、前記レンズパラメータは、最大レンズ厚、最小及び最大の両方の曲率半径を有する後面曲線曲率半径、並びに傾斜形状からなる群から選択されている、外側周辺部と、を備える、コンタクトレンズ。
(2) 前記内側光学部の前記第2の視力矯正領域は、前記内側光学部が前記コンタクトレンズの垂直子午線に関して非対称であることをもたらす前記第1の視力矯正部の位置決めに対する鼻側バイアスによって位置決めされている、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 前記内側光学部は、前記第1の視力矯正領域と前記第2の視力矯正領域との間に位置決めされた第3の視力矯正領域を有し、前記第3の視力矯正領域は、中間視力ニーズを矯正するように構成されている、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(4) 先端を切った並進型コンタクトレンズであって、前記レンズは、
第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、前記第1の視力矯正領域は、前記第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、前記第2の視力矯正領域は、前記第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、
前記内側光学部を囲み、眼上での前記コンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、前記外側周辺部は、後面曲率半径及び可変の厚変化を有し、前記可変の厚変化は、外側周辺領域の内部において0.3mm以下である、外側周辺部と、を備える、コンタクトレンズ。
(5) 前記後面曲率半径は、均一である、実施態様4に記載のコンタクトレンズ。
【0051】
(6) 前記内側光学部の前記第2の視力矯正領域は、前記内側光学部が前記コンタクトレンズの垂直子午線に関して非対称であることをもたらす前記第1の視力矯正部の位置決めに対する鼻側バイアスによって位置決めされている、実施態様4に記載のコンタクトレンズ。
(7) 前記後面曲率半径は、不均一であり、前記外側周辺領域は、下方部分と、上方部分と、前記下方部分と前記上方部分との間に位置する介在移行部分と、を更に備える、実施態様4に記載のコンタクトレンズ。
(8) 前記後面曲率半径は、第1の後面曲率半径と、第2の後面曲率半径と、から構成されており、前記第1の後面曲率半径は、前記周辺領域の前記下方部分に位置しており、前記下方領域の内部において一定である曲率半径を有し、前記第1の後面曲率半径は、前記第2の後面曲率半径よりも小さく、前記第2の後面曲率半径は、一定であり、前記周辺領域の前記上方部分に位置している、実施態様7に記載のコンタクトレンズ。
(9) 前記第1の後面曲率半径は、前記第2の後面曲率半径まで滑らかに連続して移行しており、前記第1の曲率半径から前記第2の曲率半径までの移行は、前記介在移行部分に生じる、実施態様8に記載のコンタクトレンズ。
(10) 前記第1の後面曲率半径は、約8mmである、実施態様9に記載のコンタクトレンズ。
【0052】
(11) 前記第2の後面曲率半径は、約9.2mmである、実施態様9に記載のコンタクトレンズ。
(12) 凹形、凸形、及び線形の形状からなる群から選択された傾斜形状を有する傾斜部分を更に備え、前記傾斜部分は、前記周辺領域の前記下方部分の内部に位置決めされている、実施態様9に記載のコンタクトレンズ。
(13) 前記内側光学部は、前記第1の視力矯正領域と前記第2の視力矯正領域との間に位置決めされた第3の視力矯正領域を更に備え、前記第3の視力矯正領域は、中間視力ニーズを矯正するように構成されている、実施態様12に記載のコンタクトレンズ。
(14) 先端を切った並進型コンタクトレンズであって、前記レンズは、
第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、前記第1の視力矯正領域は、前記第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、前記第2の視力矯正領域は、前記第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、
前記内側光学部を囲み、眼上での前記コンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、前記外側周辺部は、可変の厚変化を有し、前記可変の厚変化は、外側周辺領域の内部において0.3mm以下であり、前記外側周辺部は、下方部分と、上方部分と、前記下方部分と前記上方部分との間に位置する介在移行部分と、を更に備える、外側周辺部と、を備える、コンタクトレンズ。
(15) 前記可変の厚は、前記周辺部の前記下方部分に位置する第1の最大厚と、前記周辺部の前記上方部分に位置する第2の最小厚と、を含み、前記第1の最大厚は、前記第2の最小厚よりも大きく、前記第1の最大厚は、前記第2の最小厚まで滑らかに連続して移行し、前記第1の厚から前記第2の厚までの移行は、主に前記介在移行部分において生じる、実施態様14に記載のコンタクトレンズ。
【0053】
(16) 前記内側光学部の前記第2の視力矯正領域は、前記内側光学部が前記コンタクトレンズの垂直子午線に関して非対称であることをもたらす前記第1の視力矯正部の位置決めに対する鼻側バイアスによって位置決めされている、実施態様14に記載のコンタクトレンズ。
(17) 前記第1の最大厚は、0.3mm~0.6mmである、実施態様15に記載のコンタクトレンズ。
(18) 前記第1の最大厚と前記第2の最小厚との間の差は、前記外側周辺領域の内部において0.3mm以下である、実施態様15に記載のコンタクトレンズ。
(19) 最大厚、並びに凹形、凸形、及び線形の形状からなる群から選択された傾斜形状を有する傾斜部分を更に備え、前記傾斜部分は、前記傾斜部分の前記最大厚が、前記周辺領域の前記下方部分の内部に位置するように位置決めされている、実施態様15に記載のコンタクトレンズ。
(20) 前記内側光学部は、前記第1の視力矯正領域と前記第2の視力矯正領域との間に位置決めされた第3の視力矯正領域を更に備え、前記第3の視力矯正領域は、中間視力ニーズを矯正するように構成されている、実施態様15に記載のコンタクトレンズ。
【0054】
(21) 先端を切った並進型コンタクトレンズであって、前記レンズは、
第1の視力矯正領域及び第2の視力矯正領域の両方を少なくとも有する内側光学部であって、前記第1の視力矯正領域は、前記第2の視力矯正領域の上方の位置にあり、遠方視力ニーズを矯正するように構成されており、前記第2の視力矯正領域は、前記第1の視力矯正領域の下方の位置にあり、近方視力ニーズを矯正するように構成されている、内側光学部と、
前記内側光学部を囲み、眼上での前記コンタクトレンズの最大並進を提供するように構成された外側周辺部であって、前記外側周辺部は、不均一な後面曲率半径と、可変の厚変化と、を有し、前記可変の厚変化は、外側周辺領域の内部において0.3mm以下であり、前記外側周辺領域は、下方部分と、上方部分と、前記下方部分と前記上方部分との間に位置する介在移行部分と、を更に備え、厚変化及び後面曲率半径変化は、滑らかであって、前記周辺領域にわたって連続的に融合され、最大厚、並びに凹形、凸形、及び線形の形状からなる群から選択された傾斜形状を有する傾斜部分を更に備え、前記傾斜部分は、前記傾斜部分の前記最大厚が前記周辺領域の前記下方部分の内部に位置するように位置決めされている、外側周辺部と、を備える、コンタクトレンズ。
(22) 0.3mm以下の可変の厚変化を有するコンタクトレンズを設計する方法であって、
眼上でのレンズ並進を最大にするために1つ又は2つ以上の最適化可能なレンズパラメータを選択することであって、前記レンズパラメータは、最大レンズ厚、最小及び最大の両方の曲率半径を有する後面曲線曲率半径、並びに傾斜形状から成る群から選択される、ことと、
それぞれのパラメータについて、垂直子午線に沿った下方及び上方の両方の位置において、そのパラメータの値を決定することと、
それぞれのパラメータについて、水平子午線に沿った内側及び外側の位置において、そのパラメータの値を決定することと、
滑らかで連続した幾何形状をもたらす位置同士の間の介在場所に沿ってそれぞれのパラメータに対して値を選択することと、を含む、方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1J
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6