(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】ハンドルの芯金
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20220124BHJP
B62D 1/11 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B62D1/04
B62D1/11
(21)【出願番号】P 2016246678
(22)【出願日】2016-12-20
【審査請求日】2019-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健志
(72)【発明者】
【氏名】村松 克弥
(72)【発明者】
【氏名】大賀 真宏
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】出口 昌哉
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-109349(JP,A)
【文献】特開2005-14641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向用シャフトと接続されるボス芯金部と、
このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部と、
これらボス芯金部とリム芯金部とを両側部及び下部でそれぞれ連結する複数のスポーク芯金部とを具備し、
前記リム芯金部は、両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部との間の位置にそれぞれ弱部を備え、
前記ボス芯金部は、
ボス芯金本体部と、前記各弱部に並行する位置に両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部とを連結する連結部
と、を備え、
前記ボス芯金部
のボス芯金本体部、前記リム芯金部、及び、
前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、
前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部
のボス芯金本体部と前記リム芯金部との間に位置する
ことを特徴とするハンドルの芯金。
【請求項2】
下部のスポーク芯金部は、複数設けられた
ことを特徴とする請求項1記載のハンドルの芯金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用のハンドルの芯金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両において、円環状をなし乗員に把持操作されるリム部と、このリム部の内側に位置しステアリングシャフトと接続されるボス部と、これらリム部とボス部とを連結する複数のスポーク部とを備えたハンドルであるステアリングホイールが用いられている。そして、このステアリングホイールは、金属製の芯金を備えている。この芯金には、リム部、ボス部及び各スポーク部のそれぞれに対応するリム芯金部、ボス芯金部及び複数のスポーク芯金部が設定されている。
【0003】
ステアリングホイールの操作性を向上する場合、運転中に操向用シャフトであるステアリングシャフトを介して伝わるエンジンの振動や路面からの反力によって生じる振動を抑制するために、リム部(リム芯金部)を重くすることが考えられる。しかしながら、このようにリム部(リム芯金部)を重くした場合、慣性モーメントは増加、ステアリングホイールの共振周波数は低下し、それぞれ所望する特性を満たさなくなることが懸念される。
【0004】
この点、例えば隣接するスポーク芯金部間を連結して芯金の剛性を向上することで、共振周波数を維持しつつ、操作性を向上するステアリングホイールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-14641号公報 (第3-6頁、
図1及び
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、ステアリングホイールは、乗員保護の観点から、リム部(リム芯金部)の下端の位置での強度を所定以下として、衝突などの衝撃を受けて前方に移動した乗員がステアリングホイールに当接したときに変形して反力を抑制することが望まれる。
【0007】
したがって、ステアリングホイールの重量、慣性モーメント、共振周波数及びリム部下端での強度などの各種性能をそれぞれ満たすようにすることが求められる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ハンドルの性能を容易に調整できるハンドルの芯金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のハンドルの芯金は、操向用シャフトと接続されるボス芯金部と、このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部と、これらボス芯金部とリム芯金部とを両側部及び下部でそれぞれ連結する複数のスポーク芯金部とを具備し、前記リム芯金部は、両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部との間の位置にそれぞれ弱部を備え、前記ボス芯金部は、ボス芯金本体部と、前記各弱部に並行する位置に両側部の前記スポーク芯金部と下部の前記スポーク芯金部とを連結する連結部と、を備え、前記ボス芯金部のボス芯金本体部、前記リム芯金部、及び、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置され、前記ボス芯金部の連結部は、前記操向用シャフトの軸方向において前記ボス芯金部のボス芯金本体部と前記リム芯金部との間に位置するものである。
【0010】
請求項2記載のハンドルの芯金は、請求項1記載のハンドルの芯金において、下部のスポーク芯金部は、複数設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のハンドルの芯金によれば、ボス芯金部のボス芯金本体部、リム芯金部、及び、ボス芯金部の連結部を、ボス芯金部と接続される操向用シャフトの軸方向に互いに位置が異なるとともに互いに略平行な仮想平面に沿って配置し、ボス芯金部の連結部の位置を、操向用シャフトの軸方向においてボス芯金部のボス芯金本体部とリム芯金部との間とするとともに、リム芯金部にて両側部のスポーク芯金部と下部のスポーク芯金部との間の位置に各弱部を設け、ボス芯金部にて両側部のスポーク芯金部と下部のスポーク芯金部とを連結する連結部を各弱部に並行する位置に設けることで、ボス芯金部をボックス状の剛体部として形成できる。そのため、共振周波数の増減を抑制できるとともに、乗員当接時には弱部に応力を集中させることができ、乗員への反力を弱部によって容易に調整でき、かつ、ボス芯金部の肉厚の増減によって慣性モーメントを変化させることなく共振周波数を調整できる。したがって、重量、慣性モーメント、共振周波数及び反力などのハンドルの性能を容易に調整できる。
【0012】
請求項2記載のハンドルの芯金によれば、請求項1記載のハンドルの芯金の効果に加えて、下部のスポーク芯金部を複数とすることで、スポーク部を4本以上備えるハンドルに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のハンドルの芯金を示す正面図である。
【
図3】同上芯金を備えたハンドルを示す正面図である。
【
図4】同上芯金の弱部の切削量毎の曲げ荷重と芯金の変形量との関係の例を示すグラフである。
【
図5】本発明の第2の実施の形態のハンドルの芯金を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0015】
図3において、10は自動車部品としてのハンドル(ステアリングハンドル)であるステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、自動車の運転席の乗員の前方に配置され、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に取り付けられる設置体であるモジュール12と、ステアリングホイール本体11の反乗員側、すなわちモジュール12と反対側に取り付けられる図示しない被覆部材としてのカバー体となどから構成されている。また、このステアリングホイール10には、必要に応じて、ステアリングホイール本体11の乗員側に図示しない装飾部材としてのフィニッシャ(ガーニッシュ)などが取り付けられる。そして、モジュール12は、例えばエアバッグを収納したエアバッグ装置などが好適に用いられるが、例えばエアバッグ装置に代えて、例えば衝撃吸収体を収納したパッド体や、内部に収容物がない単なるホーンパッドなど、その他の任意のものを用いることもできる。
【0016】
なお、ステアリングホイール10は、通常、水平方向(垂直方向)に対して傾斜した状態で備えられる図示しない操縦装置としての操向用シャフトであるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、モジュール12側を乗員側、正面側あるいは後側(
図2に示す矢印RR側)、ステアリングシャフト側を車体側、背面側あるいは前側(
図2に示す矢印FR側)とし、このステアリングシャフトに沿った前後方向を軸方向とし、その他、このステアリングホイール10が備えられる車体の直進方向を基準として、左右方向(
図1などに示す矢印L,R方向)上下方向(
図1などに示す矢印U,D方向)などの方向を説明する。また、ステアリングホイール10は、特記しない限り中立(ニュートラル)状態として説明する。
【0017】
そして、ステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、円環状(ドーナツ状)をなすリム部(リング部)21と、このリム部21の内側に位置する中心部としてのハブ部であるボス部(マウント部)22と、これらリム部21とボス部22とを連結する複数のスポーク部23とから構成されている。また、このステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、
図1及び
図2に示す芯金25を備えている。さらに、このステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、
図3に示す被覆部26を備えている。そして、このステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、背面側が図示しないカバー体により覆われている。
【0018】
リム部21は、ボス部22の外方を囲んで位置している。このリム部21は、本実施の形態において、円環状に連続して設けられている。
【0019】
スポーク部23は、車種などによってその本数は様々に設定し得るが、本実施の形態では例えば左右両側部及び下部の3本が設定されている。すなわち、スポーク部23は、上側左右両側部に位置する(一方及び他方の)側部スポーク部23a,23bと、下部に位置する下部スポーク部23cとを備えている。側部スポーク部23aは、ボス部22の左側部とリム部21のアナログ時計9時位置とを連結するように左右方向に沿って延びている。また、側部スポーク部23bは、ボス部22の右側部とリム部21のアナログ時計3時位置とを連結するように左右方向に沿って延びている。さらに、下部スポーク部23cは、ボス部22の下部とリム部21のアナログ時計6時位置とを連結するように上下方向に沿って延びている。したがって、スポーク部23は、正面から見てT字状に配置されている。
【0020】
図1及び
図2に示す芯金25は、例えばアルミニウムや鉄などの金属により一体に成形された、金属製のものである。この芯金25は、リム部21、ボス部22及びスポーク部23(
図3)に対応し、円弧状のリム芯金部31、ボス芯金部32、及び、スポーク芯金部33を備えている。
【0021】
リム芯金部31は、リム部21(
図3)を構成するものである。このリム芯金部31は、本実施の形態では円環状に形成されている。このリム芯金部31は、スポーク連結部36を備えている。また、このリム芯金部31は、リム連結部37を備えている。さらに、このリム芯金部31は、弱部(脆弱部)である変形容易部38を備えている。
【0022】
スポーク連結部36は、スポーク芯金部33のボス芯金部32とは反対側の端部が連結される部分である。本実施の形態において、このスポーク連結部36は、スポーク芯金部33に対応して配置されている。すなわち、このスポーク連結部36は、リム芯金部31の左右両側部及び下部のそれぞれに配置されている。換言すれば、このスポーク連結部36は、リム芯金部31のアナログ時計9時方向、3時方向及び6時方向にそれぞれ配置されている。したがって、本実施の形態において、このスポーク連結部36は、左右の位置する(一方及び他方の)側部スポーク連結部36a,36bと、下部に位置する下部スポーク連結部36cとを備えている。このスポーク連結部36は、短い円弧状に形成されている。なお、このスポーク連結部36は、スポーク芯金部33と一体に設けられていてもよい。
【0023】
リム連結部37は、リム芯金部31において、スポーク連結部36を除く他の部分を構成している部分である。すなわち、本実施の形態において、このリム連結部37は、リム芯金部31の上部と下部両側部とに配置されている。換言すれば、このリム連結部37は、上部リム連結部37aと、(一方及び他方の)下部リム連結部37b,37cを備えている。このリム連結部37は、スポーク連結部36の端末部どうしを連結する円弧状に形成されている。このリム連結部37は、スポーク連結部36よりも長手状に形成されている。また、このリム連結部37は、スポーク連結部36よりも外径が細い円柱状に形成されている。すなわち、このリム連結部37は、中実な金属棒によって構成されている。
【0024】
上部リム連結部37aは、左右のスポーク連結部36の上部どうしを連結するものである。すなわち、この上部リム連結部37aは、側部スポーク連結部36a,36bの上部間を連結している。この上部リム連結部37aは、下部リム連結部37b,37cよりも長い円弧状に形成されている。この上部リム連結部37aは、リム芯金部31において、例えばアナログ時計の10時-2時の範囲に亘って配置されている。
【0025】
下部リム連結部37bは、左側のスポーク連結部36の下部と下側のスポーク連結部36の左側とを連結するものである。すなわち、この下部リム連結部37bは、側部スポーク連結部36aと下部スポーク連結部36cとを連結している。また、この下部リム連結部37bは、リム芯金部31において、例えばアナログ時計の7時-8時の範囲に亘って配置されている。
【0026】
同様に、下部リム連結部37cは、右側のスポーク連結部36の下部と下側のスポーク連結部36の右側とを連結するものである。すなわち、この下部リム連結部37cは、側部スポーク連結部36bと下部スポーク連結部36cとを連結している。また、この下部リム連結部37cは、リム芯金部31において、例えばアナログ時計の4時-5時の範囲に亘って配置されている。
【0027】
そして、下部リム連結部37b,37cは、リム芯金部31において、略左右対称な位置に配置されている。
【0028】
変形容易部38は、乗員のリム部21(
図3)への当接により前方に向かってリム部21(リム芯金部31)を屈曲変形させることでステアリングホイール10(
図3)から乗員への反力を抑制する部分である。すなわち、この変形容易部38は、リム芯金部31(リム部21(
図3))を変形させることで乗員の当接による衝撃を逃がすようになっている。この変形容易部38は、リム連結部37の一部に設けられている。より詳細に、この変形容易部38は、両側部のスポーク芯金部33と下部のスポーク芯金部33との間の位置に設けられている。本実施の形態において、この変形容易部38は、下部リム連結部37b,37cの一部に設けられている。すなわち、この変形容易部38は、リム芯金部31の下部両側部に配置されている。また、この変形容易部38は、リム芯金部31において、略左右対称な位置に配置されている。この変形容易部38は、例えばリム連結部37の反乗員側、すなわちリム連結部37の背面側である前側が切削加工されて設けられている。このため、この変形容易部38は、リム芯金部31の断面積を小さくするように設けられた薄肉部である。そして、この変形容易部38は、リム芯金部31の残りの他部より細くなるように設けられている。
【0029】
ボス芯金部32は、ステアリングシャフトと接続される部分である。すなわち、このボス芯金部32は、ステアリングシャフトと連結されてステアリングホイール10の回転中心となるボス41を備えている。また、このボス芯金部32は、スポーク芯金部33と連結されるボス芯金本体部42を備えている。さらに、このボス芯金部32は、連結部43を備えている。さらに、このボス芯金部32は、モジュール12を支持する支持部44を備えている。なお、このボス芯金部32には、ホーンスイッチ用の接点が設けられていてもよい。そして、このボス芯金部32は、リム芯金部31に対して前側に位置している。
【0030】
ボス41は、ボス芯金本体部42に一体に設けられている。
【0031】
ボス芯金本体部42は、上側の部分が左右方向に沿って延び、下側の部分が上下方向に沿って延びて設けられている。すなわち、このボス芯金本体部42は、左右のスポーク芯金部33と連結する側部ボス芯金本体部42a,42bと、下部のスポーク芯金部33と連結する下部ボス芯金本体部42cとを備えている。より詳細に、このボス芯金本体部42は、後述する(一方及び他方の)側部スポーク芯金部33a,33bと側部ボス芯金本体部42a,42bとが連結され、下部スポーク芯金部33cと下部ボス芯金本体部42cとがそれぞれ連結されている。したがって、このボス芯金本体部42は、正面から見て略T字状に設けられている。また、このボス芯金本体部42は、本実施の形態において、下部ボス芯金本体部42cが、細長い一対の芯金体42c1,42c1により構成されている。これら芯金体42c1,42c1は、互いに左右に離間されて上下方向に沿って直線状に配置され、互いに略平行となっている。
【0032】
連結部43は、両側部のスポーク芯金部33と下部のスポーク芯金部33とを連結するものである。すなわち、この連結部43は、側部スポーク芯金部33a,33bと下部スポーク芯金部33cとをそれぞれ連結している。換言すれば、この連結部43は、側部スポーク芯金部33aと下部スポーク芯金部33cとの間、及び、側部スポーク芯金部33bと下部スポーク芯金部33cとの間に架け渡されて設けられている。より詳細に、この連結部43は、側部スポーク芯金部33aの下部と下部スポーク芯金部33cの左側部との間、及び、側部スポーク芯金部33bの下部と下部スポーク芯金部33cの右側部との間にそれぞれ架け渡されて設けられている。さらに、この連結部43は、側部スポーク芯金部33a,33bのボス芯金部32(ボス芯金本体部42)側の端部と、下部スポーク芯金部33cのボス芯金部32(ボス芯金本体部42)側の端部とを連結している。すなわち、この連結部43は、側部スポーク芯金部33aの右端部と、下部スポーク芯金部33cの上端部左側との間、及び、側部スポーク芯金部33bの左端部と、下部スポーク芯金部33cの上端部右側との間にそれぞれ位置している。このため、この連結部43は、リム芯金部31の各変形容易部38に並行する位置に設けられている。換言すれば、この連結部43は、上側(側部スポーク芯金部33a,33b側)から下側(下部スポーク芯金部33c側)に向かって、芯金25の左右方向の中心側に傾斜するように配置されている。本実施の形態において、この連結部43は、下部リム連結部37b,37cに並行する位置に設けられている。したがって、ボス芯金部32は、ボス芯金本体部42と各連結部43とにより、下側部の左右両側に三角形状の空間部Sを囲むように設けられている。さらに、この連結部43は、側部スポーク芯金部33a,33bと連結される一端部である上側部43aが、下部スポーク芯金部33cと連結される他端部である下側部43bと比較して太くなるように設けられている。
【0033】
支持部44は、例えばモジュール12を引っ掛け保持するフック状に設けられている。この支持部44は、例えばボス芯金本体部42において左右両側部及び下部にそれぞれ配置されている。
【0034】
スポーク芯金部33は、ボス芯金部32とリム芯金部31とを連結して放射状に延びている。本実施の形態では、すべてのスポーク部23に対応してスポーク芯金部33が設定されている。そのため、スポーク芯金部33は、上側左右両側方向及び下方に延びている。換言すれば、スポーク芯金部33は、側部スポーク部23a,23bに対応する側部スポーク芯金部33a,33bと、下部スポーク部23cに対応する下部スポーク芯金部33cとを備えている。したがって、このスポーク芯金部33は、本実施の形態において、正面から見てT字状に配置されている。
【0035】
側部スポーク芯金部33aは、ボス芯金部32の左側部からリム芯金部31の左側部に亘って設けられている。より詳細に、この側部スポーク芯金部33aは、ボス芯金本体部42の左側部(側部ボス芯金本体部42a)と側部スポーク連結部36aとを連結して設けられている。この側部スポーク芯金部33aは、左右方向に沿って延び、ボス芯金部32側からリム芯金部31側に向かって前方に傾斜している。
【0036】
同様に、側部スポーク芯金部33bは、ボス芯金部32の右側部からリム芯金部31の右側部に亘って設けられている。より詳細に、この側部スポーク芯金部33bは、ボス芯金本体部42の右側部(側部ボス芯金本体部42b)と側部スポーク連結部36bとを連結して設けられている。この側部スポーク芯金部33bは、左右方向に沿って延び、ボス芯金部32側からリム芯金部31側に向かって前方に傾斜している。
【0037】
下部スポーク芯金部33cは、ボス芯金部32の下部からリム芯金部31の下部に亘って設けられている。より詳細に、この下部スポーク芯金部33cは、ボス芯金本体部42の下部(下部ボス芯金本体部42c)と下部スポーク連結部36cとを連結して設けられている。この下部スポーク芯金部33cは、上下方向に沿って延び、ボス芯金部32側からリム芯金部31側に向かって前方にクランク状に屈曲されている。本実施の形態において、この下部スポーク芯金部33cは、左右一対のスポーク芯金体33c1,33c1により構成されている。これらスポーク芯金体33c1,33c1は、左右に離間されて上下方向に沿い、正面から見て互いに略平行に配置されている。これらスポーク芯金体33c1,33c1は、それぞれ芯金体42c1,42c1と一体的に連結され、これら芯金体42c1,42c1の延長上に配置されている。これら2つのスポーク芯金体33c1,33c1によって
図3に示す1つのスポーク部23(下部スポーク部23c)が構成されている。
【0038】
被覆部26は、リム部21の意匠面を構成するものである。この被覆部26は、例えばポリウレタンなどの、軟質の合成樹脂(例えば連結体よりも軟質の合成樹脂)により成形された、合成樹脂製のものである。この被覆部26は、リム芯金部31(
図1)と、このリム芯金部31とスポーク芯金部33(
図1)との連結部とを覆って設けられている。なお、この被覆部26には、必要に応じて、例えば皮革や合成樹脂などの表皮体を巻くこともできる。
【0039】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、芯金25を成形型にセットし、反応混合液を金型のキャビティに充填することでキャビティ内にて反応混合液が反応して、芯金25のリム芯金部31と、このリム芯金部31とスポーク芯金部33との連結部とを覆ってポリウレタン製などの軟質の被覆部26が成形される。そして、被覆部26が成形されたステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)を脱型し、必要に応じて被覆部26に表皮体を巻き、ステアリングシャフトに連結した後、さらに必要に応じてモジュール12やフィニッシャなどを取り付けてステアリングホイール10が完成する。
【0040】
このように製造するステアリングホイール10は、リム部21(リム芯金部31)を重くすることで、運転中にステアリングシャフトを介して伝わるエンジンの振動や路面からの反力によって生じる振動を抑制することが可能になる。一方で、ステアリングホイール10は、通常その共振周波数がリム部21(リム芯金部31)の重量の増減に反比例する。
【0041】
そこで、本実施の形態では、ボス芯金部32において、リム芯金部31の各変形容易部38に並行する位置に両側部のスポーク芯金部33(側部スポーク芯金部33a,33b)と下部のスポーク芯金部33(下部スポーク芯金部33c)とを連結する連結部43を設けることで、ボス芯金部32をボックス状の剛体部として形成できるので、共振周波数の増減を抑制できる。
【0042】
また、連結部43が変形容易部38と並行して設けられているため、ボックス形状の剛体部となるボス芯金部32が強固となり、リム部21に乗員が当接したときには変形容易部38に応力集中させることが可能となるため、変形容易部38の断面積、換言すれば切削量の変更のみでステアリングホイール10(リム部21)から乗員への反力を容易に調整できる。
【0043】
例えば変形容易部38の切削量(断面積)の大小に応じた変形量と荷重との関係を
図4のグラフに示す。このグラフでは、上下逆配置した芯金25を鉛直方向に対して例えば60°傾斜させて上方から加えた荷重に対する芯金25の鉛直方向の変形量を示す。このグラフに示すように、変形容易部38の切削量(断面積)を増減することで、反力を容易にチューニングできる。
【0044】
また、ボス芯金部32が強固となって変形しにくくなることで、このボス芯金部32に固定されたモジュール12が外れにくくなるとともに、リム部21に乗員が当接したときに下部スポーク芯金部33cに対しても応力を集中させることができ、下部スポーク芯金部33cを容易に曲げることができる。
【0045】
さらに、剛体部となったボス芯金部32の肉厚の増減によって共振周波数を変化させることができるので、ステアリングホイール10の慣性モーメントへの影響なく共振周波数を調整できる。
【0046】
したがって、ステアリングホイール10の重量、慣性モーメント、共振周波数及びリム部21からの反力を、互いに影響を与えにくく独立して別個に調整できるので、ステアリングホイール10の性能を容易に調整でき、車両によって異なる要求特性を容易に満たすことができる。
【0047】
なお、上記の第1の実施の形態において、
図5に示す第2の実施の形態のように、下部のスポーク芯金部33、すなわち下部スポーク芯金部33cを複数備える構成としてもよい。この場合、スポーク部23を4本以上備えるステアリングホイール10に対応できる。例えばこの第2の実施の形態では、下部スポーク芯金部33cを左右に一対設けることで、左右両側部及び下部両側部の4本のスポーク部23に対応できる。この構成であっても、上記の第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
また、上記の各実施の形態において、リム芯金部31は、円環状でなくてもよく、例えば円環の一部が切断された円弧状などに形成されていてもよい。したがって、リム部21は、円環状でなくてもよく、例えば円環の一部が切断された円弧状に形成されていてもよいし、円弧状のリム芯金部31の端末部どうしが他部材によって連結されることで円環状に形成されていてもよい。
【0049】
さらに、ステアリングホイール10は、自動車用に限らず、他の任意の乗り物の操舵用などとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、例えば自動車などの車両用のステアリングホイールの芯金として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 ハンドルであるステアリングホイール
25 芯金
31 リム芯金部
32 ボス芯金部
33 スポーク芯金部
38 弱部である変形容易部
42
ボス芯金本体部
43 連結部