(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220124BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20220124BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60H1/34 611B
F24F13/06 A
F24F13/14 B
(21)【出願番号】P 2017129615
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】松沢 洋介
(72)【発明者】
【氏名】牧村 英和
(72)【発明者】
【氏名】小松 正幸
(72)【発明者】
【氏名】高田 宏樹
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006054(JP,A)
【文献】特開2011-235668(JP,A)
【文献】特開2013-112256(JP,A)
【文献】特開2016-130067(JP,A)
【文献】実開平03-124904(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/06
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い細長の空気吹出口が形成されたベゼルと、
前記空気吹出口に連通する筒状をなし、前記空気吹出口に向かう方向である送風方向へ空調空気を送風するリテーナと、
前記空気吹出口の内側に設けられた可動フィンと、
を備え、
前記可動フィンは、
前記送風方向に貫通して形成された貫通孔を有する環状をなし、前記空気吹出口の長手方向に延設された環状フィン部と、
前記環状フィン部の外周部に設けられ、前記環状フィン部を回動可能に支持する軸部と、
前記空気吹出口の前記長手方向に延設された板状をなし、前記長手方向の両端の各々を前記環状フィン部の側部の内周面に接続され、前記環状フィン部とともに一体的に回動する内側フィンと、
を有し、
前記ベゼルは、前記空気吹出口の短手方向で対向する内周面のうち、少なくとも一方の前記内周面に形成された上流側傾斜面を有し、
前記上流側傾斜面は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部に接近する方向へ傾斜し、
前記環状フィン部の外周面との間に所定の隙間を設けて配置され、前記上流側傾斜面と前記環状フィン部の外周面との間の隙間を流れる空調空気を前記環状フィン部の外周面に向かって案内し、
前記内側フィンは、前記軸部の軸線方向に沿った直線の位置よりも前記送風方向におけ
る上流側に突出した板状部及び下流側に突出した板状部を有し、前記送風方向の幅が前記環状フィン部における側部の前記送風方向の幅と略同一である、レジスタ。
【請求項2】
前記ベゼルは、前記上流側傾斜面の下流側端部に連続して形成された下流側傾斜面を有し、
前記下流側傾斜面は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部から離間する方向へ傾斜する、請求項1に記載のレジスタ。
【請求項3】
一方向に長い細長の空気吹出口が形成されたベゼルと、
前記空気吹出口に連通する筒状をなし、前記空気吹出口に向かう方向である送風方向へ空調空気を送風するリテーナと、
前記空気吹出口の内側に設けられた可動フィンと、
を備え、
前記可動フィンは、
前記送風方向に貫通して形成された貫通孔を有する環状をなし、前記空気吹出口の長手方向に延設され
、内周面に内側フィンを接続され、前記内側フィンを間に挟んで配置される第1平坦部及び第2平坦部を有する環状フィン部と、
前記環状フィン部の外周部に設けられ、前記環状フィン部を回動可能に支持する軸部と、
を有し、
前記ベゼルは、
前記空気吹出口の短手方向で対向する内周面の各々に形成された一対の上流側傾斜面と、
一対の前記上流側傾斜面の各々の下流側端部に連続して形成された一対の下流側傾斜面と、
を有し、
一対の前記上流側傾斜面の各々は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部に接近する方向へ傾斜し、
一対の前記下流側傾斜面の各々は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部から離間する方向へ傾斜し、
前記空気吹出口の前記長手方向に直交する平面で切断した断面の断面視において、前記軸部の回転軸が、前記送風方向において、一対の前記上流側傾斜面の各々の前記下流側端部を互いに結ぶ直線と、前記環状フィン部の下流側端部との間に配置され
、
前記内側フィンは、前記空気吹出口の前記長手方向に延設された板状をなし、前記長手方向の両端の各々を前記環状フィン部の側部の前記内周面に接続され、前記環状フィン部とともに一体的に回動し、
前記第1平坦部の下流端は、前記送風方向において前記内側フィンの下流端よりも上流側に配置され、
前記第2平坦部の下流端は、前記送風方向において、一対の前記上流側傾斜面の各々の前記下流側端部、及び前記内側フィンの下流端よりも下流側に配置される、レジスタ。
【請求項4】
前記上流側傾斜面は、前記空気吹出口の前記長手方向における前記環状フィン部の長さに合わせて、前記空気吹出口の前記長手方向へ連続して形成される、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のレジスタ。
【請求項5】
前記環状フィン部は、前記送風方向における前記貫通孔の上流側の開口部である上流側開口部内に形成されたフィン傾斜面を有し、
前記フィン傾斜面は、前記送風方向の下流側から上流側に向かうに従って前記貫通孔の径方向の外側へ傾斜する、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のレジスタ。
【請求項6】
前記フィン傾斜面は、環状をなす前記上流側開口部の全周に亘って形成される、請求項5に記載のレジスタ。
【請求項7】
前記環状フィン部は、前記送風方向における前記貫通孔の上流側の開口部である上流側開口部を有し、
前記上流側開口部の上流側の先端は、前記空気吹出口の前記長手方向に直交する平面で切断した断面形状が円弧状である、請求項1乃至請求項6の何れかに記載のレジスタ。
【請求項8】
前記可動フィンの回動位置を規制する規制部を備え、
前記下流側傾斜面の傾斜角度は、前記規制部によって規制される位置まで回動させた前記環状フィン部と平行となる角度である、請求項2又は請求項3に記載のレジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の換気や空調を行う空気吹出口に使用されるレジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のインストルメントパネルに配設され、空調装置で調節された空調空気を車内に吹き出す空気吹出口に使用されるレジスタがある(例えば、特許文献1など)。特許文献1に開示されるレジスタは、細長形状の空気吹出口の内側に前フィンが設けられている。前フィンは、空気吹出口の長手方向に延設された環状フィン部と、環状フィン部の内側に配置され長手方向に延設されるガイド板とを備えている。ガイド板の長手方向の両端部は、環状フィン部の内周面にそれぞれ接続されている。ガイド板には、操作ノブが摺動可能に取り付けられている。前フィンは、環状フィン部の外周面から突出した軸部によって、リテーナの前端部に回動可能に保持されている。そして、使用者は、操作ノブを操作して前フィンを空気吹出口の短手方向に回動させることで、環状フィン部及びガイド板を回動させ、空調空気の吹出方向を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のレジスタでは、通風路が狭くなっている部分等で空調空気の風速が加速される場合がある。具体的には、例えば、上記した細長形状の空気吹出口を備えるレジスタでは、短手方向において通風路の幅が狭くなり、この狭くなった通風路内において空調空気の流れが変動する。ある程度の送風圧力を有する空調空気を送風した場合、空調空気は、通風路を通過する際に、短手方向に流れを絞られ、通風路の送風方向に加速される。
【0005】
例えば、通風路は、短手方向において前フィンの環状フィン部の外周面と、空気吹出口の内周面とで挟まれた部分で狭くなる。このため、空調空気は、環状フィン部の外側を流れる際に加速することとなる。前フィンの向きを空気吹出口の短手方向に変更した場合に、環状フィン部内を通り前フィンによって送風方向を変更された空調空気は、環状フィン部の外側の隙間を通って、即ち、狭い通風路を通って加速された空調空気の影響を受ける。空調空気は、前フィンの向く方向に流れにくくなる。その結果、吹出方向を充分に変更することができず、空調空気の指向性が低下する虞がある。
【0006】
一方で、環状フィン部の外側に、環状フィン部に連動して回動する補助フィンを設けた場合、環状フィン部の外側の隙間を通った空調空気は、補助フィンによって前フィンの向く方向に流れ易くなる。しかしながら、指向性を確保するために、補助フィンや補助フィンを連動させるためのリンク部材などを設ける必要があり、部品点数の増加を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、環状のフィンを備えるレジスタにおいて、部品点数の増加を抑制しつつ、空調空気の指向性を向上できるレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、一方向に長い細長の空気吹出口が形成されたベゼルと、前記空気吹出口に連通する筒状をなし、前記空気吹出口に向かう方向である送風方向へ空調空気を送風するリテーナと、前記空気吹出口の内側に設けられた可動フィンと、を備え、前記可動フィンは、前記送風方向に貫通して形成された貫通孔を有する環状をなし、前記空気吹出口の長手方向に延設された環状フィン部と、前記環状フィン部の外周部に設けられ、前記環状フィン部を回動可能に支持する軸部と、前記空気吹出口の前記長手方向に延設された板状をなし、前記長手方向の両端の各々を前記環状フィン部の側部の内周面に接続され、前記環状フィン部とともに一体的に回動する内側フィンと、を有し、前記ベゼルは、前記空気吹出口の短手方向で対向する内周面のうち、少なくとも一方の前記内周面に形成された上流側傾斜面を有し、前記上流側傾斜面は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部に接近する方向へ傾斜し、前記環状フィン部の外周面との間に所定の隙間を設けて配置され、前記上流側傾斜面と前記環状フィン部の外周面との間の隙間を流れる空調空気を前記環状フィン部の外周面に向かって案内し、前記内側フィンは、前記軸部の軸線方向に沿った直線の位置よりも前記送風方向における上流側に突出した板状部及び下流側に突出した板状部を有し、前記送風方向の幅が前記環状フィン部における側部の前記送風方向の幅と略同一である、レジスタを開示する。
また、本願は、一方向に長い細長の空気吹出口が形成されたベゼルと、前記空気吹出口に連通する筒状をなし、前記空気吹出口に向かう方向である送風方向へ空調空気を送風するリテーナと、前記空気吹出口の内側に設けられた可動フィンと、を備え、前記可動フィンは、前記送風方向に貫通して形成された貫通孔を有する環状をなし、前記空気吹出口の長手方向に延設され、内周面に内側フィンを接続され、前記内側フィンを間に挟んで配置される第1平坦部及び第2平坦部を有する環状フィン部と、前記環状フィン部の外周部に設けられ、前記環状フィン部を回動可能に支持する軸部と、を有し、前記ベゼルは、前記空気吹出口の短手方向で対向する内周面の各々に形成された一対の上流側傾斜面と、一対の前記上流側傾斜面の各々の下流側端部に連続して形成された一対の下流側傾斜面と、を有し、一対の前記上流側傾斜面の各々は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部に接近する方向へ傾斜し、一対の前記下流側傾斜面の各々は、前記送風方向の上流側から下流側に向かうに従って前記環状フィン部から離間する方向へ傾斜し、前記空気吹出口の前記長手方向に直交する平面で切断した断面の断面視において、前記軸部の回転軸が、前記送風方向において、一対の前記上流側傾斜面の各々の前記下流側端部を互いに結ぶ直線と、前記環状フィン部の下流側端部との間に配置され、前記内側フィンは、前記空気吹出口の前記長手方向に延設された板状をなし、前記長手方向の両端の
各々を前記環状フィン部の側部の前記内周面に接続され、前記環状フィン部とともに一体的に回動し、前記第1平坦部の下流端は、前記送風方向において前記内側フィンの下流端よりも上流側に配置され、前記第2平坦部の下流端は、前記送風方向において、一対の前記上流側傾斜面の各々の前記下流側端部、及び前記内側フィンの下流端よりも下流側に配置される、レジスタを開示する。
【発明の効果】
【0009】
本願のレジスタによれば、部品点数の増加を抑制しつつ、空調空気の指向性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図1に示すA-A線で切断した断面を示す断面図である。
【
図4】
図1に示すB-B線で切断した断面を示す断面図である。
【
図12】操作ノブを左方向にスライド移動させ、空調空気の吹出方向を左方に調整した状態を示す断面図である。
【
図13】操作ノブを上方に回動させ、空調空気の吹出方向を上方に調整した状態を示す断面図である。
【
図14】操作ノブを下方に回動させ、空調空気の吹出方向を下方に調整した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願のレジスタを、自動車等の車室前方に配置されるインストルメントパネルに配設され、空調装置で調節された空調空気を車室内に吹き出すレジスタ10に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の説明では、
図1に示すように、本実施形態のレジスタ10における送風方向の下流側(即ち、車室側)を前方とし、送風方向の上流側(即ち、空調装置側)を後方として説明する。また、以下の説明では、レジスタ10の前方においてレジスタ10と正対した使用者の視点を用いて、上下方向及び左右方向を定義し説明する。また、
図1は、操作ノブ63を初期位置に配置し、前フィン15を左右方向に沿わせ、後フィン17を上下方向に沿わせ、空調空気の吹出方向を変更しない状態(以下、ニュートラル状態という場合がある)を示している。
【0012】
(レジスタの構成)
図1は、本実施形態のレジスタ10の正面図である。
図2は、レジスタ10の外観斜視図である。
図3は、
図1に示すA-A線で切断した断面を示す断面図である。
図4は、
図1に示すB-B線で切断した断面を示す断面図である。本実施形態のレジスタ10は、空調装置で調節された空調空気を車室内に吹き出す。
図1~
図4に示すように、レジスタ10は、リテーナ11と、ベゼル13と、前フィン15と、後フィン17と、ダンパプレート19等を備えている。
【0013】
リテーナ11は、前後方向に延びる筒状をなしている。リテーナ11の内部には、通風路21が形成されている(
図3参照)。リテーナ11の後端部は、通風路21を介して空調装置(図示省略)に接続されている。ベゼル13には、左右方向(一方向の一例)に長い細長の空気吹出口31が形成されている。リテーナ11は、ベゼル13の空気吹出口31に連通する筒状をなし、空気吹出口31に向かう方向である送風方向22へ空調空気を送風する。通風路21(リテーナ11)は、送風方向22に直交する平面で切断した断面形状が、左右方向に長い略長方形状をなしている。
【0014】
図5は、レジスタ10の分解斜視図を示している。
図4及び
図5に示すように、リテーナ11は、前後方向に対して所定の角度をなす方向(本実施形態では右斜め後方)へ屈曲した筒状をなしている。これにより、通風路21内を送風方向22へ流れる空調空気を、屈曲したリテーナ11の内壁に当て、加速させることが可能となる。その結果、加速させた空調空気を後述する後フィン17に当て、左右方向における空調空気の指向性を高めている。
【0015】
図1~
図4に示すように、ベゼル13は、リテーナ11の前面に配設される部材である。ベゼル13は、左右方向に長い空気吹出口31を形成され、リテーナ11の前方側(下流側)の開口部である下流側開口部23(
図5参照)に取り付けられる。ベゼル13は、下流側開口部23に合わせた大きさの空気吹出口31を形成され、下流側開口部23の周縁を前面から覆う枠のような部材である。ベゼル13は、被係合部32の穴をリテーナ11の係合部24の突起に係合させて、リテーナ11に対して固定されている。本実施形態の被係合部32は、例えば、ベゼル13の上側縁部及び下側縁部のそれぞれに2つ設けられている。空気吹出口31は、空調装置で調節され通風路21を流れる空調空気を、レジスタ10の外部(乗員などの使用者側)に向けて吹き出す穴である。本実施形態の空気吹出口31は、左右方向に長く、上下方向に短い細長の形状をなし、右側部分において上下方向の幅が狭くなっている(
図1参照)。
【0016】
(前フィン15の構成)
前フィン15は、ベゼル13の空気吹出口31(ベゼル13とリテーナ11の接続部分)の内側に配置されている。前フィン15(可動フィンの一例)は、環状フィン部41と、フィン軸43A,43Bと、ガイドフィン45とを有している。環状フィン部41は、前後方向(送風方向22)に貫通して形成された貫通孔41Aを有する環状をなし、空気吹出口31の長手方向(左右方向)に沿って延設されている。
【0017】
環状フィン部41は、空気吹出口31の形状に合わせた形状をなし、左右方向に長く、上下方向に短い細長の形状(正面から見た場合に左右方向に長い略楕円形)をなし、右側部分において上下方向の幅が狭くなっている(
図1参照)。環状フィン部41は、前後方向に所定の幅を有する板状の部材を環状に接続した構造をなしている。環状フィン部41は、上下方向で対向する上側平坦部51及び下側平坦部52を有している。また、環状フィン部41は、上側平坦部51及び下側平坦部52の左側端部を接続する左側部53と、上側平坦部51及び下側平坦部52の右側端部を接続する右側部54とを有している。
【0018】
図6は、前フィン15を前方側の右斜め上から見た斜視図である。
図7は、前フィン15を後方側の右斜め上から見た斜視図である。
図8は、前フィン15の左側の側面図である。
図6~
図8に示すように、上側平坦部51は、前後方向の幅を略一定としながら左右方向に沿って延設された板状をなしている。同様に、下側平坦部52は、前後方向の幅を略一定としながら左右方向に沿って延設された板状をなし、右側の端部部分において上方へ湾曲している。上側平坦部51と下側平坦部52とは、上下方向(上側平坦部51及び下側平坦部52の厚さ方向)において、フィン内周面55を対向させている。上下方向で対向する上側平坦部51及び下側平坦部52は、右側部分を除いて、互いに略平行をなす状態で配設されている。
【0019】
本実施形態の下側平坦部52の前後方向の長さは、上側平坦部51に比べて長くなっている。
図9は、レジスタ10の上面図である。
図9に示すように、ニュートラル状態において、下側平坦部52の前端部(下流側の端部)は、上側平坦部51の前端部に比べて前方側の位置となっている。上側平坦部51は、ベゼル13の上側枠部33と上下方向において対向する位置に配置されている。上側平坦部51のフィン外周面56は、上側枠部33の内周面と上下方向において対向している。また、下側平坦部52は、ベゼル13の下側枠部34と上下方向において対向する位置に配置されている。下側平坦部52のフィン外周面56は、下側枠部34の内周面と上下方向において対向している。従って、本実施形態のベゼル13では、ニュートラル状態において、下側枠部34の前端部(下流側の端部)が、上側平坦部51の前端部に比べて前方側の位置となっている。
図2に示すように、本実施形態のレジスタ10の前面は、上方から下方に向かうに従って前方側へ傾斜しており、上端部に比べて下端部が前方へ突出している。これにより、前方(車室側)から見たレジスタ10の意匠性を高めている。なお、上側平坦部51や下側平坦部52の前端部を前後方向において同位置とし、レジスタ10の前面を傾斜していない構成にしてもよい。
【0020】
また、
図6~
図8に示すように、左側部53は、上端を上側平坦部51の左端部に接続され、下端を下側平坦部52の左端部に接続されている。左側部53の前後方向の幅は、上側平坦部51及び下側平坦部52の幅に合わせて、上方から下方に向かうに従って徐々に大きくなっている(
図8参照)。フィン軸43Aは、左側部53に設けられ、左側部53のフィン外周面56から左側(外側)に向かって突出している。フィン軸43Aの回転軸(軸線方向X1)は、左右方向に沿った方向となっている。フィン軸43Aは、ベゼル13とリテーナ11とで保持される軸受部材61(
図4及び
図5参照)に設けられた挿入孔61Aに挿入され、軸受部材61(ベゼル13及びリテーナ11)に対して回動可能に取り付けられている。
【0021】
同様に、環状フィン部41の右側部54は、上端を上側平坦部51の右端部に接続され、下端を下側平坦部52の右上方に屈曲した右端部に接続されている。フィン軸43Bは、右側部54に設けられ、右側部54のフィン外周面56から右側(外側)に向かって突出している。フィン軸43Bの回転軸(軸線方向X1)は、左右方向に沿った方向となっている。フィン軸43Bは、リテーナ11の右側の側壁26(
図4参照)に設けられた挿入孔26Aに挿入され、側壁26(リテーナ11)に対して回動可能に取り付けられている。
【0022】
2つのフィン軸43A,43Bの各々は、環状フィン部41の外周部(フィン外周面56)に設けられ、上下方向における前フィン15の中央部に設けられている。前フィン15は、2つのフィン軸43A,43Bの軸線方向X1を中心に回動可能、即ち、左右方向に沿った軸線方向X1を中心に上下方向に向かって回動可能となっている。また、
図8に示すように、左側部53には、フィン軸43Aの他に補助支持軸43Cが設けられている。補助支持軸43Cは、フィン軸43Aに比べて上流側の位置に配置されている。補助支持軸43Cは、軸受部材61の挿入孔61B(
図4及び
図5参照)に挿入されている。挿入孔61Bは、フィン軸43Aを挿入する挿入孔61Aに比べて大きくなって、例えば、上下方向に拡張されている。本実施形態の前フィン15は、補助支持軸43Cと挿入孔61Bとが係合することで上下方向への回動を規制される。
【0023】
また、
図6~
図8に示すように、ガイドフィン45は、環状フィン部41の内側に設けられ、上下方向における前フィン15の中央部、即ち、フィン軸43A,43Bの位置に合わせて設けられている。ガイドフィン45は、左右方向に沿って、即ち、フィン軸43A,43Bの軸線方向X1に沿って延設された板状をなしている。ガイドフィン45は、右側部54及び左側部53の前後方向の幅と略同一の幅を有している。ガイドフィン45の左右方向の両端部は、環状フィン部41(右側部54及び左側部53)のフィン内周面55に接続されている。
【0024】
ガイドフィン45には、操作ノブ63が取り付けられている。操作ノブ63は、
図5に示すように、カバー63Aと、後部カバー63Bと、サポート部材63Cとを備えている。操作ノブ63は、カバー63Aと後部カバー63Bとを組み付けて形成される挿通孔にガイドフィン45を挿通され、ガイドフィン45に対して左右方向へスライド可能に取り付けられている。カバー63A及び後部カバー63Bは、組み付けられた状態では、ガイドフィン45を覆う状態となる。サポート部材63Cは、ガイドフィン45の前方側に配置され、操作ノブ63の前後方向の位置を位置決めする。操作ノブ63は、ガイドフィン45の中央部に形成された係合部45Aと後部カバー63Bとを係合させることで、左右方向の移動を一定の範囲内に規制される(
図4参照)。
【0025】
本実施形態のレジスタ10では、操作ノブ63を上下方向に操作することにより、前フィン15(環状フィン部41及びガイドフィン45)が上下方向に向かって回動する。これにより、上方から下方に向かって順に配置された上側平坦部51、ガイドフィン45、及び下側平坦部52は、互いに連動して上下方向に回動する。その結果、空気吹出口31から吹出される空調空気の吹出方向が上下方向に調整される。
【0026】
(後フィン17の構成)
図5に示すように、リテーナ11の下流側開口部23の内部には、複数(本実施形態では、5本)の後フィン17が配置されている。複数の後フィン17は、前フィン15の後方側(上流側)に配設されている。各後フィン17は、上下方向に延び、上下方向及び前後方向に沿った平面を有する略板状をなしている。各後フィン17は、ニュートラル状態において、厚さ方向で対向する一対の平面を左右方向で対向させ、互いに平行な状態で配設されている。
【0027】
複数の後フィン17のうち、左右方向の中央に配置された後フィン17には、操作ノブ63の後部カバー63Bに設けられたアーム63Eと連結されるリンク機構71が形成されている。アーム63Eは、後方側に二股に延びて形成され、リンク機構71の上下方向に延びる連結棒を左右方向から挟むように設けられている。これにより、中央の後フィン17は、操作ノブ63の左右方向へのスライド移動に応じて、左右方向へ回動する力をアーム63E及びリンク機構71を介して伝達される。尚、中央の後フィン17以外の後フィン17は、リンク機構71を除いて、中央の後フィン17と略同一の構造となっている。
【0028】
図3に示すように、各後フィン17の上側端部であって前後方向の中央部には、上側回動支持軸73が設けられている。上側回動支持軸73は、後フィン17の上端部から上方に突出している。同様に各後フィン17の下側端部であって前後方向の中央部には、下側回動支持軸74が設けられている。下側回動支持軸74は、後フィン17の下端部から下方に突出している。上側回動支持軸73は、リテーナ11の下流側開口部23の上部に取り付けられた軸受部材75(
図5参照)に対して回動可能に取り付けられている。同様に、下側回動支持軸74は、リテーナ11の下流側開口部23の下部に取り付けられた軸受部材76(
図5参照)に対して回動可能に取り付けられている。これにより、各後フィン17は、上側回動支持軸73及び下側回動支持軸74を結ぶ回転軸周りに、左右方向に向かって回動可能となっている。尚、本実施形態の後フィン17は、下端に比べて上端を後方に配置させ、回転軸を上下方向に沿った位置から
図3における反時計回り方向へ所定角度だけ回転させた状態となっている。従って、後フィン17は、上端を後方側に傾斜させた状態で回動可能に配置されている。
【0029】
また、各後フィン17の上端部であって後方側の部分には、上方に突出する突出部78が形成されている。各後フィン17の突出部78は、左右方向に延設されたリンク部材79(
図1参照)によって互いに連結されている。このため、一の後フィン17が左右方向に回動すると、他の全ての後フィン17は、連動して左右方向に回動する。また、左右方向の中央の後フィン17が操作ノブ63のスライド移動に応じて回動すると、他の後フィン17は、中央の後フィン17と連動して左右方向へ回動する。従って、本実施形態のレジスタ10では、操作ノブ63をスライド移動させて、全ての後フィン17を左右方向へ回動させることによって、空気吹出口31から吹出される空調空気の吹出方向を、左右方向に調整することができる。
【0030】
(ダンパプレート19の構成)
図4及び
図5に示すように、後フィン17の後方側(上流側)であって、リテーナ11の通風路21内にはダンパプレート19が設けられている。ダンパプレート19は、回動して通風路21を開閉し、空調空気を供給又は停止する。ダンパプレート19は、通風路21の形状に合わせて形成されており、
図4に示す状態(開放状態)では、左右方向に長い略長方形の板状をなしている。即ち、ダンパプレート19は、通風路21の断面形状に合わせた長方形状をなしている。
【0031】
ダンパプレート19の右側端部に設けられた軸部81は、リテーナ11の右側面に挿入され軸支されている。本実施形態のレジスタ10は、リテーナ11の左側面に、ダンパプレート19を回動させるための開閉操作機構83を備える。開閉操作機構83は、操作ダイヤル85と、リンク棒86と、ダンパ連結部材87とを有する。操作ダイヤル85は、ベゼル13の左側端部に設けられている。操作ダイヤル85は、円弧状の操作部をベゼル13の左側部分に設けられたノブ開口部36に挿入した状態で、ベゼル13によって回転可能に保持されている。操作ダイヤル85は、ノブ開口部36から露出した操作部を使用者によって回転させられることにより、上下方向へ回動する。
【0032】
リンク棒86は、前後方向に延びる棒状をなし、前端部に操作ダイヤル85を連結されている。また、リンク棒86は、後端部にダンパ連結部材87を連結されている。リンク棒86は、操作ダイヤル85の回転駆動力をダンパ連結部材87へ伝達する。ダンパ連結部材87は、ダンパプレート19の左側端部における中央部を回転可能に支持している。ダンパプレート19は、ダンパ連結部材87の回動にともなって上下方向へ回動する。従って、ダンパプレート19は、操作ダイヤル85の回転駆動力を伝達されて回動するダンパ連結部材87の回転にともなって回動する。使用者は、操作ダイヤル85を操作することでダンパプレート19を回動させ、通風路21をダンパプレート19によって開閉することができる。
【0033】
ダンパプレート19の周囲には、軟質シール部材89が設けられている。軟質シール部材89は、ダンパプレート19の全周に亘って設けられている。
図10は、レジスタ10を後方から見た背面図である。
図10に示すように、リテーナ11の上側の内周面には、軟性シール部材28が設けられている。軟性シール部材28は、ダンパプレート19の回転位置に合わせて設けられている。ダンパプレート19は、回動して平面を上下方向に沿わせた状態となり、外周の軟質シール部材89を、リテーナ11の内周面や軟性シール部材28に対して弾性接触させ、通風路21を閉塞する。尚、リテーナ11は、軟性シール部材28を内周面の全周に亘って備えても良い。また、リテーナ11は、軟性シール部材28を備えなくとも良い。
【0034】
(ベゼル13の傾斜面について)
本実施形態のベゼル13は、内周面に傾斜面を有する。詳述すると、
図11は、ベゼル13を後方から見た斜視図である。
図3及び
図11に示すように、本実施形態のベゼル13は、空気吹出口31の短手方向(上下方向)で対向する内周面、即ち、上方側と下方側の内周面のそれぞれに上流側傾斜面91,92が形成されている。上流側傾斜面91,92は、送風方向22の上流側から下流側、即ち、後方から前方に向かうに従って環状フィン部41に接近する内側方向へ傾斜している。上流側傾斜面91,92は、ベゼル13の空気吹出口31において、左右方向に沿って連続して形成されている。このため、空気吹出口31の上部の開口には、上流側傾斜面91が左右方向に沿って全体的に形成されている(
図11参照)。同様に、空気吹出口31の下部の開口には、上流側傾斜面92が左右方向に沿って全体的に形成されている(
図11参照)。従って、本実施形態の上流側傾斜面91,92の各々は、環状フィン部41の長手方向(左右方向)の長さに合わせて、空気吹出口31の長手方向(左右方向)へ連続して形成されている。なお、上流側傾斜面91,92は、空気吹出口31の左右方向の全体に形成されず、一部のみに形成される構成でも良い。
【0035】
上流側傾斜面91,92は、前後方向(送風方向22)に対して所定の角度をもって傾斜している。上方側の上流側傾斜面91の上流側端部91Aは、リテーナ11(下流側開口部23)の前端部、即ち、リテーナ11とベゼル13との接続部分に配置されている。また、上流側傾斜面91の下流側端部91Bは、環状フィン部41の上側平坦部51の上流側端部15Aと上下方向で対向する位置となっている。通風路21を送風方向22へ流れる空調空気は、上流側傾斜面91に沿って上側平坦部51のフィン外周面56に向かって下方へ送風される。
【0036】
下方側の上流側傾斜面92の上流側端部92Aは、リテーナ11(下流側開口部23)の前端部、即ち、リテーナ11とベゼル13との接続部分に配置されている。また、上流側傾斜面92の下流側端部92Bは、環状フィン部41の下側平坦部52の前後方向における略中央部と上下方向で対向する位置となっている。通風路21を送風方向22へ流れる空調空気は、上流側傾斜面92に沿って下側平坦部52のフィン外周面56に向かって上方へ送風される。このように、上流側傾斜面91,92は、環状フィン部41のフィン外周面56に向けて空調空気を案内する。このため、上流側傾斜面91,92の傾斜角度は、例えば、環状フィン部41の位置、フィン外周面56の形状などに応じて設定される。また、ベゼル13の空気吹出口31は、上流側傾斜面91の下流側端部91B及び上流側傾斜面92の下流側端部92Bの位置において狭くなっている。
【0037】
また、
図2及び
図3に示すように、本実施形態のベゼル13は、上記した上流側傾斜面91の下流側端部91Bに連続して下流側傾斜面93が形成されている。また、ベゼル13は、上流側傾斜面92の下流側端部92Bに連続して下流側傾斜面94が形成されている。2つの下流側傾斜面93,94は、前後方向(送風方向22)の上流側から下流側に向かうに従って、環状フィン部41から離間する方向、即ち、空気吹出口31を拡張する方向へ傾斜している。
【0038】
上方側の下流側傾斜面93の上流側端部は、上流側傾斜面91の下流側端部91Bに接続されている。下流側傾斜面93は、後方から前方へ向かうに従って上方へと傾斜している。下流側傾斜面93の下流側端部93Bは、上側平坦部51と上下方向で対向する位置となっている。
【0039】
下方側の下流側傾斜面94の上流側端部は、上流側傾斜面92の下流側端部92Bに接続されている。下流側傾斜面94は、後方から前方へ向かうに従って下方へと傾斜している。下流側傾斜面94の下流側端部94Bは、下側平坦部52の前端部よりも前方側の位置となっている。
【0040】
本実施形態の下流側傾斜面93,94の傾斜角度は、例えば、後述するように回動を規制される位置まで回動させた環状フィン部41のフィン外周面56と平行になる角度である(
図13及び
図14参照)。環状フィン部41の外側(上方又は下方)を流れる空調空気は、上流側傾斜面91,92によって環状フィン部41側へ送風された後、環状フィン部41のフィン外周面56と下流側傾斜面93,94とに沿うように流れる。
【0041】
(環状フィン部41の傾斜面、上流端部について)
また、本実施形態の環状フィン部41は、後方側(上流側)に傾斜面を有する。詳述すると、
図3及び
図7に示すように、環状フィン部41は、前後方向(送風方向22)における貫通孔41Aの上流側(後方側)の開口部である上流側開口部101内にフィン傾斜面103が形成されている。本実施形態のフィン傾斜面103は、環状をなす上流側開口部101の全周に亘って形成されている(
図7参照)。なお、フィン傾斜面103を、上流側開口部101の全周における一部のみに形成しても良く、上流側開口部101の上側縁部や下側縁部のみに形成しても良い。
【0042】
フィン傾斜面103は、環状フィン部41のフィン内周面55に形成されている。フィン傾斜面103は、下流側から上流側に向かうに従って貫通孔41Aの径方向の外側へ傾斜している。従って、貫通孔41Aの内径は、フィン傾斜面103を形成した部分において、前方側に比べて後方側で大きくなっている。本実施形態のフィン傾斜面103は、
図3に示すように、上方側の部分において、上側平坦部51における前後方向の略中央部から後端部まで形成されている。また、フィン傾斜面103は、下方側の部分において、下側平坦部52における前後方向の中央部よりも前方(下流)の位置から後端部まで形成されている。
【0043】
また、上流側開口部101の上流側の先端である上流側端部15Aは、空気吹出口31の長手方向(左右方向)に直交する平面で切断した断面形状、即ち、
図3に示す断面形状が円弧状となっている。上流側端部15Aは、所定の角度をもって円弧状に形成され、丸みを帯びた形状となっている。上流側から通風路21を通って送風される空調空気の一部は、この上流側端部15Aに当たることとなる。
【0044】
(左右方向への吹出方向の調整)
次に、上記した構成のレジスタ10について、空調空気の吹出方向を上下左右に調整する方法について説明する。まず、空気の吹出方向を左右に調整する場合について説明する。ここで、
図3及び
図4に示すガイドフィン45の前端と後端とを同じ高さとし、且つ後フィン17の前端と後端を左右方向において同一位置とした状態をニュートラル状態とする。
【0045】
例えば、使用者は、ガイドフィン45に対し操作ノブ63を左右方向にスライド移動させる。
図12は、操作ノブ63を左方向へスライドさせた状態を示している。例えば、操作ノブ63を、前フィン15の係合部45Aと係合する位置まで左方向へスライドさせる。この操作にともない、操作ノブ63をスライドさせた力は、アーム63E及びリンク機構71を介して中央の後フィン17に伝達される。
【0046】
中央の後フィン17は、操作ノブ63のスライド移動にともなって、左方向へ回動する。また、中央以外の他の後フィン17は、リンク部材79(
図1参照)によって回動駆動力を伝達され、中央の後フィン17の回動にともなって回動する。後フィン17は、前端を左側に、後端を右側になるように回動する。このように、操作ノブ63を左方向にスライド移動させることで、空気の吹出方向121を、所望の左方向に調整することができる。なお、操作ノブ63を右方向にスライド移動させた場合は、上記した左方向にスライド移動させた場合と逆の動作となるため、その説明を省略する。
【0047】
(上下方向への吹出方向の調整)
次に、空気の吹出方向121を上下に調整する場合について説明する。例えば、前フィン15を水平状態(ニュートラル状態)から上方に回動させ、空気の吹出方向121を上向きに調整する。
図13は、操作ノブ63を上方へ回動させた状態を示している。例えば、使用者は、操作ノブ63を操作して前フィン15を上方向に回動させ、前フィン15の前端を上側に、後端を下側になるように調整する。なお、
図13は、操作ノブ63を最大限まで上方へ回動させた状態を示している。この場合、前フィン15は、補助支持軸43Cと挿入孔61B(
図4参照)とが係合することで上方向への回動を規制された状態となる。
【0048】
一方で、前フィン15と後フィン17とを連結するアーム63Eは、前フィン15のガイドフィン45の回動にともなって下方へ移動する。アーム63Eは、リンク機構71の連結棒を左右方向の間に挟んで下方へスライド移動する。中央の後フィン17は、アーム63Eの移動にともなってアーム63Eからリンク機構71へ力を伝達されないため、左右方向へ回動しない。後フィン17は、ニュートラル状態を維持する。その結果、全ての後フィン17は、ニュートラル状態を維持する。空気吹出口31から吹き出される空調空気の吹出方向121は、前フィン15によって上方へと変更される。
【0049】
ここで、従来の上流側傾斜面91等を設けていないレジスタ10では、例えば、上側平坦部51のフィン外周面56と、ベゼル13の内周面とで挟まれた部分では、空調空気の通風路21が狭くなる。このため、空調空気は、環状フィン部41(上側平坦部51)の外側(上側)を流れる際に加速する可能性がある。上側平坦部51の上側を通り加速した空調空気は、環状フィン部41の内側(上側平坦部51とガイドフィン45の間)を通り上方へ吹出方向121を変更された空調空気とぶつかることとなる。前フィン15によって上方へ吹出方向121を変更した空調空気が、上側平坦部51の外側を通り加速された空調空気とぶつかって前方に向かって吹くように吹出方向121を変更される。その結果、空調空気が前フィン15の向く方向に流れにくくなり、空調空気の指向性は低下する。また、操作ノブ63を下方に向けた場合も同様に、環状フィン部41内を通る空調空気は、下側平坦部52とベゼル13の内周面との間を通り加速した空調空気によって、前方に向かって吹くように吹出方向121を変更される。一方で、環状フィン部41のフィン外周面56とベゼル13の内周面との間に十分な隙間を設けた場合、前フィン15の外側を通る空調空気は、ベゼル13や前フィン15によって吹出方向121を変更されず、前後方向に沿って前方へと吹き出される。結果として、空調空気の指向性が低下する。
【0050】
これに対し、本実施形態のベゼル13では、
図13の矢印で示すように、上側平坦部51の上方を流れる空調空気は、上流側傾斜面91によって、上側平坦部51側へ案内される。空調空気は、上流側傾斜面91に沿って上側平坦部51のフィン外周面56に向かって送風される。フィン外周面56へ向かう空調空気は、フィン外周面56を沿って流れる空調空気と合流する、あるいはフィン外周面56にぶつかって送風方向を変更される。その結果、上側平坦部51の上方(外側)を流れる空調空気は、上側平坦部51のフィン外周面56に沿って流れる、あるいはフィン外周面56にぶつかって上方に向かって流れることとなる。即ち、上側平坦部51の上方を流れる空調空気の送風方向を、環状フィン部41内を流れる空調空気の送風方向に沿う方向(所望の上向きの吹出方向121)に変更できる。これにより、空調空気の指向性を高めることができる。
【0051】
さらに、本実施形態のベゼル13には、上流側傾斜面91の下流側に下流側傾斜面93が設けられている。
図13に示すように、上側の下流側傾斜面93の傾斜角度は、補助支持軸43C等によって回動を規制される位置まで上方へ回動させた上側平坦部51のフィン外周面56と略平行となる角度である。上側平坦部51のフィン外周面56と、下流側傾斜面93とは略平行な状態となっている。上流側傾斜面91に沿って流れ上側平坦部51のフィン外周面56に沿って流れた空調空気等は、上側平坦部51と下流側傾斜面93とで挟まれた通風路を通り、所望の吹出方向121、即ち、上方へより確実に送風される。
【0052】
また、下方の上流側傾斜面92によって案内された空調空気は、下側平坦部52とガイドフィン45との上下方向の間(貫通孔41A)へ案内される。これにより、上流側傾斜面92に沿って流れた空調空気を、所望の吹出方向121(上方)へ送風することができる。
【0053】
同様に、
図14は、操作ノブ63を下方へ回動させた状態を示している。例えば、使用者は、操作ノブ63を操作して前フィン15を下方に回動させ、前フィン15の前端を下側に、後端を上側になるように調整する。なお、
図14は、操作ノブ63を最大限まで下方へ回動させた状態を示している。この場合、前フィン15は、補助支持軸43Cと挿入孔61B(
図4参照)とが係合することで下方向への回動を規制された状態となる。
【0054】
図14の矢印で示すように、下側平坦部52の下方を流れる空調空気は、上流側傾斜面92によって、下側平坦部52側へ案内される。下側平坦部52へ向かう空調空気は、下側平坦部52のフィン外周面56を沿って流れる空調空気と合流する、あるいはフィン外周面56にぶつかって送風方向を変更される。その結果、下側平坦部52の下方(外側)を流れる空調空気は、下側平坦部52のフィン外周面56に沿って流れる、あるいはフィン外周面56にぶつかって下方に向かって流れることとなる。これにより、空調空気の指向性を高めることができる。
【0055】
さらに、
図14に示すように、下側の下流側傾斜面94の傾斜角度は、補助支持軸43C等によって回動を規制される位置まで下方へ回動させた下側平坦部52のフィン外周面56と略平行となる角度である。下側平坦部52のフィン外周面56と、下流側傾斜面94とは略平行な状態となっている。上流側傾斜面92に沿って流れ下側平坦部52のフィン外周面56に沿って流れた空調空気等は、下側平坦部52と下流側傾斜面94とで挟まれた通風路を通り、所望の吹出方向121、即ち、下方へより確実に送風される。
【0056】
また、上方の上流側傾斜面91によって案内された空調空気は、上側平坦部51とガイドフィン45との上下方向の間(貫通孔41A)へ案内される。これにより、上流側傾斜面91に沿って流れた空調空気を、所望の吹出方向121(下方)へ送風することができる。このように、操作ノブ63を上下方向に回動させることで、空気の吹出方向121を、所望の上下方向に調整することができる。
【0057】
また、本実施形態の環状フィン部41は、上流側の部分にフィン傾斜面103が形成されている。貫通孔41A(
図7参照)の内径は、フィン傾斜面103を形成した部分において、前方側に比べて後方側で大きくなっている。即ち、環状フィン部41は、上流側開口部101(
図7参照)をより大きく開口した形状となっている。これにより、例えば、
図13に示す場合では、下側の上流側傾斜面92に沿って上方へ向かって流れる空調空気を、環状フィン部41内(下側平坦部52とガイドフィン45の間)により多く取り込むことができる。また、
図14に示す場合では、上側の上流側傾斜面91に沿って下方へ向かって流れる空調空気を、環状フィン部41内(上側平坦部51とガイドフィン45の間)により多く取り込むことができる。その結果、空調空気をより多く貫通孔41Aを通して流し、前フィン15によって送風方向22を所望の吹出方向121へ変更することができる。これにより、より一層の空調空気の指向性の向上を図ることができる。
【0058】
因みに、上記実施形態において、前フィン15は、可動フィンの一例である。フィン軸43A,43Bは、軸部の一例である。補助支持軸43C及び挿入孔61Bは、規制部の一例である。
【0059】
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態のレジスタ10は、一方向(左右方向)に長い細長の空気吹出口31が形成されたベゼル13と、空気吹出口31に連通する筒状をなし、空気吹出口31に向かう方向である送風方向22へ空調空気を送風するリテーナ11と、空気吹出口31の内側に設けられた前フィン15(可動フィン)と、を備える。前フィン15は、送風方向22に貫通して形成された貫通孔41Aを有する環状をなし、空気吹出口31の長手方向(左右方向)に延設された環状フィン部41と、環状フィン部41の外周部に設けられ、環状フィン部41を回動可能に支持するフィン軸43A,43B(軸部)と、を有する。ベゼル13は、空気吹出口31の短手方向(上下方向)で対向する内周面のうち、少なくとも一方の内周面に形成された上流側傾斜面91,92を有する。上流側傾斜面91,92は、送風方向22の上流側から下流側に向かうに従って環状フィン部41に接近する方向へ傾斜する。
【0060】
これによれば、ベゼル13の空気吹出口31から空調空気を吹き出す吹出方向121は、前フィン15(環状フィン部41)を回動させることで変更できる。また、上流側傾斜面91,92は、ベゼル13の空気吹出口31における短手方向(上下方向)で対向する内周面に形成され、送風方向22の上流側から下流側に向かうに従って環状フィン部41に接近する方向(ベゼル13の内側)へ傾斜する。
【0061】
ここで、空調空気の通風路21は、空気吹出口31の短手方向(上下方向)において、環状フィン部41のフィン外周面56と、ベゼル13の内周面とで挟まれた部分で狭くなる可能性がある。環状フィン部41の外側を流れ、この狭くなった通風路21を流れる空調空気は、上流側傾斜面91,92に沿って流れ、環状フィン部41側へ送風される。環状フィン部41の外側を流れる空調空気は、環状フィン部41のフィン外周面56に沿って流れる空調空気と合流等し、環状フィン部41のフィン外周面56に沿って流れようとする。これにより、環状フィン部41の外側を流れる空調空気は、環状フィン部41のフィン外周面56に沿って流れ、環状フィン部41(貫通孔41A)内を流れる空調空気の送風方向22、即ち、所望の吹出方向121へ流れる。その結果、前フィン15の回動方向における空調空気の指向性を向上させることができる。
【0062】
また、環状フィン部41に連動して回動する補助フィンなどを設ける必要がなく、ベゼル13の内周面に上流側傾斜面91,92を設けることで指向性を向上できる。また、1つのフィン軸43A,43Bに環状の環状フィン部41を設けることで、1つの軸に対するフィンの数を増加させ、空調空気の指向性を向上できる。本実施形態では、1つの軸(フィン軸43A,43B)に対して3つのフィン(上側平坦部51、下側平坦部52、ガイドフィン45)が設けられている。従って、本実施形態のレジスタ10では、部品点数の増加を抑制しつつ、空調空気の指向性を向上できる。
【0063】
(2)また、上流側傾斜面91,92は、空気吹出口31の長手方向(左右方向)における環状フィン部41の長さに合わせて、空気吹出口31の長手方向(左右方向)へ連続して形成される。
【0064】
これによれば、上流側傾斜面91,92は、環状フィン部41の長さに合わせて、左右方向(長手方向)に沿って連続して形成される。空気吹出口31の内周面には、環状フィン部41と対向する位置に上流側傾斜面91,92が形成される。これにより、前フィン15を回動させた場合の空調空気の指向性を、より一層向上できる。
【0065】
(3)また、ベゼル13は、上流側傾斜面91,92の下流側端部91B,92Bに連続して形成された下流側傾斜面93,94を有する。下流側傾斜面93,94は、送風方向22の上流側から下流側に向かうに従って環状フィン部41から離間する方向(上方又は下方)へ傾斜する。
【0066】
これによれば、環状フィン部41の外側を流れる空調空気は、上流側傾斜面91,92によって環状フィン部41側へ送風された後、環状フィン部41のフィン外周面56と下流側傾斜面93,94とに沿うように流れる。このため、下流側傾斜面93,94の傾斜角度を吹出方向121に応じた角度にすることで、空調空気の指向性を、より一層向上できる。
【0067】
(4)また、環状フィン部41は、送風方向22における貫通孔41Aの上流側の開口部である上流側開口部101内に形成されたフィン傾斜面103を有する。フィン傾斜面103は、送風方向22の下流側から上流側に向かうに従って貫通孔41Aの径方向の外側へ傾斜する。
【0068】
これによれば、環状フィン部41は、フィン傾斜面103を設けられることで、上流側開口部101の内径をより大きくすることができる。これにより、例えば、前フィン15を回動させた場合に、上流側傾斜面91,92によって送風方向22を環状フィン部41へ向かう方向に変更された空調空気を、環状フィン部41(貫通孔41A)内に取り込んで環状フィン部41のフィン内周面55に沿って流すことができる(
図13及び
図14の矢印参照)。その結果、空調空気の指向性を向上できる。
【0069】
(5)また、フィン傾斜面103は、環状をなす上流側開口部101の全周に亘って形成される。
【0070】
これによれば、フィン傾斜面103を上流側開口部101の全周に設けることで、上流側傾斜面91,92によって送風方向22を変更された空調空気を、環状フィン部41内により多く取り込むことができ、指向性のより一層の向上を期待できる。
【0071】
(6)また、環状フィン部41は、送風方向22における貫通孔41Aの上流側の開口部である上流側開口部101を有する。上流側開口部101の上流側の先端(上流側端部15A)は、空気吹出口31の長手方向(左右方向)に直交する平面で切断した断面形状が円弧状である(
図3参照)。
【0072】
ここで、例えば、環状フィン部41の上流側の先端(上流側端部15A)を端面で構成した場合、上流から流れてきた空調空気は、環状フィン部41の端面(上流側端部15A)に当たり、環状フィン部41から離間するように流れ、渦を生じさせる可能性がある。これにより、風切り音などの異音が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態のレジスタ10では、環状フィン部41の上流側端部15Aを円弧状にすることで、上流から流れてきた空調空気を、環状フィン部41の表面に沿うように流し、渦の発生を抑制できる。これにより、異音の発生を抑制できる。
【0073】
(7)また、本実施形態のレジスタ10は、前フィン15(可動フィン)の回動位置を規制する規制部(補助支持軸43C及び挿入孔61B)を備える。下流側傾斜面93,94の傾斜角度は、規制部(補助支持軸43C等)によって規制される位置まで回動させた環状フィン部41と平行となる角度である(
図13及び
図14参照)。
【0074】
これによれば、下流側傾斜面93,94の傾斜角度を、回動を規制される位置まで回動させた環状フィン部41の表面と平行となる角度にすることで、環状フィン部41の回動範囲、即ち、吹出方向121の変更可能な範囲における空調空気の指向性の向上をより確実に図ることができる。また、最大の振り幅まで回動させた場合に、下流側傾斜面93,94と環状フィン部41とを平行な状態とすることで、指向性を効果的に向上できる。
【0075】
尚、本願は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本願の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、空気吹出口31を、左右方向に延設したが、これに限らず、例えば、上下方向や左右方向と所定の角度をなす方向へ延設しても良い。
また、レジスタ10は、後フィン17を備えなくとも良い。
また、ベゼル13は、上流側傾斜面91,92のうち、どちらか一方(上流側傾斜面91又は上流側傾斜面92)のみを備える構成でも良い。
【0076】
また、上流側傾斜面91,92を、左右方向における環状フィン部41の長さに合わせて、左右方向へ連続して形成したが、これに限らない。上流側傾斜面91,92を、ベゼル13の内周面の一部に形成してもよく、左右方向において複数に分割して形成しても良い。
また、フィン傾斜面103を、ベゼル13の上流側開口部101の全周に亘って形成したが、これに限らない。フィン傾斜面103を、上流側開口部101の全周の一部や、全周の複数箇所に形成しても良い。
また、環状フィン部41は、フィン傾斜面103を備えなくとも良い。
また、前フィン15の上流側の先端部である上流側端部15Aを円弧状に構成したが、これに限らない。上流側端部15Aは、送風方向22に直交する平面を有しても良い。また、上流側端部15Aは、送風方向22と所定の角度をなす傾斜面を有しても良い。
また、レジスタ10は、規制部(補助支持軸43C及び挿入孔61B)を備えない構成でも良い。この場合、前フィン15は、ベゼル13等と接触し回動を規制される位置まで回動可能となる。
また、前フィン15は、ガイドフィン45を備えなくともよい。
【符号の説明】
【0077】
10 レジスタ、11 リテーナ、13 ベゼル、15 前フィン(可動フィン)、15A 上流側端部、22 送風方向、31 空気吹出口、41 環状フィン部、41A 貫通孔、43A,43B フィン軸(軸部)、43C 補助支持軸(規制部)、61B 挿入孔(規制部)、91,92 上流側傾斜面、91B,92B 下流側端部、93,94 下流側傾斜面、101 上流側開口部、103 フィン傾斜面。