(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】クレーン、ジブ組立て方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20220124BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/42 B
(21)【出願番号】P 2017196259
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國長 宏至
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-194676(JP,A)
【文献】米国特許第03306470(US,A)
【文献】特開2017-007777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/26
B66C 23/42
B66C 23/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームにジブを連結して吊り下げ動作を行うクレーンであって、
前記ジブを複数に分割したジブ分割体と、
前記ジブを支持する支持ロープを複数に分割した分割体であり、組立て前の段階において前記ジブ分割体に設置される支持ロープ分割体と、
前記支持ロープ分割体同士を連結する連結体と、
前記支持ロープ分割体と前記連結体とを、前記ジブ分割体に着脱可能に支持する固定支持部材と、を有し、
前記ジブ分割体は、第1ジブ分割体と、前記第1ジブ分割体に連結される第2ジブ分割体とを含み、
前記支持ロープ分割体は、組立て前の段階において前記第1ジブ分割体に設置された第1支持ロープ分割体と、組立て前の段階において前記第2ジブ分割体に設置され、前記第1支持ロープ分割体と連結される第2支持ロープ分割体と、を含み、
前記固定支持部材は、前記ブームに連結済みの前記第1ジブ分割体を、連結済みの前記第1支持ロープ分割体により吊った状態で保持でき、
前記第2支持ロープ分割
体が前記第2ジブ分割体に
設置された状態で、前記第1支持ロープ分割体と前記第2支持ロープ分割体を前記連結体により連結可能である
クレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記支持ロープ分割体および前記連結体の少なくとも一方は回動軸を有し、
前記固定支持部材は、前記回動軸を支える、
クレーン。
【請求項3】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
連結済みの前記第1支持ロープ分割体により吊った状態で保持した前記第1ジブ分割体と、前記第2ジブ分割体とを連結した状態、かつ、前記第1支持ロープ分割体および前記第2支持ロープ分割体を前記連結体によって連結し、前記第1支持ロープ分割体によって前記第1ジブ分割体および前記第2ジブ分割体を吊った状態で、前記第1支持ロープ分割体を支持する前記固定支持部材による前記支持を取り除くことが可能である
クレーン。
【請求項4】
ブームにジブを連結して吊り下げ動作を行うクレーンであって、
前記ジブを複数に分割したジブ分割体と、
前記ジブを支持する支持ロープを複数に分割した分割体であり、組立て前の段階において前記ジブ分割体に設置される支持ロープ分割体と、
前記支持ロープ分割体同士を連結する連結体と、
前記支持ロープ分割体と前記連結体とを、前記ジブ分割体に着脱可能に支持する固定支持部材と、
前記支持ロープ分割体および前記連結体の少なくとも一方は回動軸と、
前記連結体の回動を規制する規制部材と、を有し、
前記固定支持部材は、前記ブームに連結済みのジブ分割体を、連結済みの支持ロープ分割体により吊った状態で保持でき、
前記固定支持部材は、前記回動軸を支える、
クレーン。
【請求項5】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記固定支持部材は、前記支持ロープ分割体の端部および前記連結体を貫通するピンを支持する、
クレーン。
【請求項6】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記ジブ分割体は、前記支持ロープ分割体のずれを抑制する抑制部材を有する、
クレーン。
【請求項7】
ブームにジブを連結して吊り下げ動作を行うクレーンの、ジブ組立て方法であって、
前記クレーンは、
前記ジブを複数に分割したジブ分割体と、
前記ジブを支持する支持ロープを複数に分割した分割体であり、組立て前の段階において前記ジブ分割体に設置される支持ロープ分割体と、
前記支持ロープ分割体同士を連結する連結体と、
前記支持ロープ分割体と前記連結体とを、前記ジブ分割体に着脱可能に支持する固定支持部材と、を有しており、
一端が前記ブームに連結済みとなっている連結済みジブ分割体を、連結済みとなっている連結済み支持ロープ分割体で吊り上げた状態にし、
前記吊り上げた状態で、これから連結する被連結ジブ分割体と前記連結済みジブ分割体とを連結し、
前記被連結ジブ分割体に
設置され
、これから連結する被連結支持ロープ分割体と、前記連結済み支持ロープ分割体とを、前記連結体で連結し、
前記連結済みジブ分割体の前記固定支持部材による前記支持を取り除く、
ジブ組立て方法。
【請求項8】
請求項7に記載のジブ組立て方法において、
前記吊り上げた状態で、前記連結済みジブ分割体の背面側と前記被連結ジブ分割体の背面側とを連結させ、
前記ブームを持ち上げて、前記連結済みジブ分割体と前記被連結ジブ分割体とを一直線上にして双方の腹部側を連結させた後、前記連結体で前記連結済み支持ロープ分割体と前記被連結支持ロープ分割体とを連結させる、
ジブ組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業現場内でクレーンのジブを組立てる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラフィング仕様クレーンやタワー仕様クレーンは、ジブを複数に分割した状態で作業現場に搬送し、搬送先で分割ジブを組立てる。このジブの組立て方法として、伸長式と抱込み式が知られている。
【0003】
また従来技術として、中折れ結合構造を有する連結部分で、ジブ基端部とジブ先端部とが連結されるようにし、狭い建設現場でもジブの組立ておよび分解を行うことを可能にした移動式クレーンが開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、
図22(A)に伸長式でジブを組立てる場合の状態例を示し、
図22(B)に抱込み式でジブを組立てる場合の状態例を示す。また
図22(C)に、ブーム長さを60mとし、ジブ長さを54mとした場合の、伸長式および抱込み式のそれぞれで必要となる長さや幅、占有面積の一覧を例示する。
【0006】
伸長式の場合、ブームおよびジブを地面に伏せておき、一方向にジブを伸長させながらジブを組立てる。伸長式の場合、組立ては容易だが、ブームの長手方向の全長とジブの長手方向の全長とを足し合わせた長さ分の作業スペースが少なくとも必要になる。
【0007】
抱込み式の場合、ブームに対しジブを折り返して組立てる手法となるため、占有長さは伸長式よりも短くなる。しかしながら、組立て現場を上方から視認した場合において、ブームとジブとを全て重ねた状態で作業をするのではなく、ブームの先端側とジブの基端側のみを重ねて角度を有した状態で組立てを行うため、占有幅が必要になる。また、ジブの背面側を下方に向けた状態で組立てるため、後に背面側と腹部側とで上下反転させる作業が必要になり、その分手間がかかる。上記特許文献1で示される方式においても、一部の工程でジブの背面側を下方に向けた状態で組立てるため、同様の手間が生じる。
【0008】
また抱込み式の場合において、ジブの背面側を下側にして搬送するのが困難な場合、現場で反転作業を行うことになるが、安全性の面や円滑に組立作業を行うため、通常、この反転作業も含めて補助クレーンが2台程必要になる。しかしながら、作業現場においては、補助クレーンを2台据えるスペースを確保するのが難しい場合も多い。この問題については、上記特許文献1で示される方式においても同様である。
【0009】
上記に加え、ペンダントロープをそれぞれ連結する際にも、地盤の影響など、組立てや分解をするのに不利な状況になることがあるため、連結用の孔位置を双方で合わせる作業を行うのに手間取ることもある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ジブを組立てる際の占有面積などを削減するとともに、ジブの組立て作業が容易となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のクレーンは、ブームにジブを連結して吊り下げ動作を行うクレーンであって、前記ジブを複数に分割したジブ分割体と、前記ジブを支持する支持ロープを複数に分割した分割体であり、組立て前の段階において前記ジブ分割体に設置される支持ロープ分割体と、前記支持ロープ分割体同士を連結する連結体と、前記支持ロープ分割体と前記連結体とを、前記ジブ分割体に着脱可能に支持する固定支持部材と、を有し、前記ジブ分割体は、第1ジブ分割体と、前記第1ジブ分割体に連結される第2ジブ分割体とを含み、前記支持ロープ分割体は、組立て前の段階において前記第1ジブ分割体に設置された第1支持ロープ分割体と、組立て前の段階において前記第2ジブ分割体に設置され、前記第1支持ロープ分割体と連結される第2支持ロープ分割体と、を含み、前記固定支持部材は、前記ブームに連結済みの前記第1ジブ分割体を、連結済みの前記第1支持ロープ分割体により吊った状態で保持でき、前記第2支持ロープ分割体が前記第2ジブ分割体に設置された状態で、前記第1支持ロープ分割体と前記第2支持ロープ分割体を前記連結体により連結可能であることを特徴とする。
代表的な本発明のジブ組立て方法は、ブームにジブを連結して吊り下げ動作を行うクレーンの、ジブ組立て方法であって、前記クレーンは、前記ジブを複数に分割したジブ分割体と、前記ジブを支持する支持ロープを複数に分割した分割体であり、組立て前の段階において前記ジブ分割体に設置される支持ロープ分割体と、前記支持ロープ分割体同士を連結する連結体と、前記支持ロープ分割体と前記連結体とを、前記ジブ分割体に着脱可能に支持する固定支持部材と、を有しており、一端が前記ブームに連結済みとなっている連結済みジブ分割体を、連結済みとなっている連結済み支持ロープ分割体で吊り上げた状態にし、前記吊り上げた状態で、これから連結する被連結ジブ分割体と前記連結済みジブ分割体とを連結し、前記被連結ジブ分割体に設置され、これから連結する被連結支持ロープ分割体と、前記連結済み支持ロープ分割体とを、前記連結体で連結し、前記連結済みジブ分割体の前記固定支持部材による前記支持を取り除くことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ジブを組立てる際の占有面積を削減するとともに、ジブの組立て作業が容易となる技術を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図3】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図4】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図5】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図6】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図7】実施形態のジブの連結部およびペンダントロープの連結機構の一例を示す図である。
【
図8】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図9】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図10】実施形態のジブの腹部を連結したときの状態例を示す図である。
【
図11】実施形態のペンダントロープの連結方法を説明する図である。
【
図12】
図11の状態から、ロックピンを解除した状態例を示す図である。
【
図13】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図14】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図15】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図16】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図17】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図18】実施形態のブームにジブを取り付ける工程を説明する図である。
【
図19】組立方法ごとの占有長さ、占有幅、占有面積の一覧例を示す図である。
【
図20】ペンダントロープを連結する機構の他の態様例を示す図である。
【
図21】各組立て方式を用いた場合の、ブーム長さおよびジブ長さの組み合わせの可否の一例を示す図である。
【
図22】伸長式および抱込み式で組立てる際の状態例、および組立方法ごとの占有長さ、占有幅、占有面積の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の態様を図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態のクレーンの概略構成を示す側面図である。クレーン100は、ブームにジブを連結して吊り下げ動作を行う移動式クレーンであり、ブーム吊り用フックを備えた仕様となっている。クレーン100は、下部走行体1と、下部走行体1の上部で旋回可能に搭載される上部旋回体2を有する。上部旋回体2には、上下方向に起伏回動するブーム20と、ブーム20の先端部で回動可能に軸支されたジブ30とを有する。尚、
図1に示すブーム20やジブ30の姿勢において、各ロープが設置された側の面(ブーム20の左側の面やジブ30の上側の面)を背面と称する。また各ロープが設置されていない側の面(背面と対向する面、ブーム20の右側の面やジブ30の下側の面)を腹部側と称する。
【0015】
上部旋回体2は、回動可能にマスト11が軸支され、マスト11の先端部とブーム20の先端部とは、ペンダントロープ12で接続されている。また起伏ドラム17とマスト11の先端部との間には、起伏ロープ16が巻回されている。起伏ドラム17の駆動により、起伏ロープ16が巻き取りまたは繰り出されてマスト11が回動し、ペンダントロープ12を介してブーム20が起伏する。
【0016】
ブーム20の背面側には、ドラム18が設けられ、ドラム18にはワイヤー14が巻回されている。ジブ30の基端側にはフロントストラット22が取り付けられ、フロントストラット22とジブ30の先端部とは、ジブ30を張力で支持するための支持ロープであるペンダントロープ15が接続されている。
【0017】
ブーム20の頂部には、リアストラット21が取り付けられ、ペンダントロープ13はリアストラット21の先端とブーム20との間で接続されている。ドラム18の駆動により、ワイヤー14が巻き取りまたは繰り出され、フロントストラット22が回動し、ペンダントロープ15を介してジブ30が起伏する。
【0018】
本実施形態では、ジブ30は、ブーム20と連結する基端側から順に、下部ジブ30a、第1中間ジブ30b、第2中間ジブ30c、上部ジブ30dの4つのジブ分割体が連結している構成となっている。上部ジブ30dの先端側からは、ワイヤーロープが繰り出され、その下部の端部にフックが吊り下げられる。
【0019】
本実施形態では、ジブ30は4つの部位に分割されて搬送され、作業現場で下部ジブ30a、第1中間ジブ30b、第2中間ジブ30c、上部ジブ30dの順で順次結合されて組立てられる。またペンダントロープ15も、ペンダントロープ15a~15dの4つの支持ロープ分割体によって構成され、各ジブ30a、30b、30c、30dの背面側にそれぞれ設置された状態で作業現場まで搬送される。分割されたペンダントロープ15a~15dは、ロープ連結部材76(連結体)で連結されて、最終的には一本のペンダントロープ15となる。
【0020】
引き続き、本実施形態における作業現場でのジブの組立方法について、
図2以降を参照しつつ説明する。
図2以降の各図面は、組立方法の各工程を順序立てて図示している。
【0021】
まず、ブーム20を伏せた状態にしておき、下部ジブ30aを補助クレーン51で吊り下げてブーム20に近接させ、下部ジブ30aの基端をブーム20の先端に取り付ける(
図2(A))。次いで、継ぎ足し用のジブである第1中間ジブ30bを補助クレーン51で吊り下げて、コネクトピンを用いて、下部ジブ30aの先端側に取り付ける(
図2(B))。
【0022】
フロントストラット22、リアストラット21が含まれた構成部位(アセンブリ)を、補助クレーン51で吊り、ブーム20に取り付ける(
図2(C))。そして、リアストラット21をフロントストラット22から切り離し、持ち上げて補助クレーン51で吊り、ブーム20に取り付ける(
図2(D))。そして、リアストラット21のバックストップシリンダを伸長させ、リアストラット21の引起し機構を取り付ける(
図2(E))。これにより、補助クレーン51の吊り下げ補助が不要になるため、補助クレーン51およびスリングを取り外す。
【0023】
次いで、外部油圧源を使用し、リアストラット21のバックストップシリンダを操作して、リアストラット21を後傾させ、リアストラット21を支持するペンダントロープ13を、リアストラット21の先端に取り付ける(
図3(A))。尚、ペンダントロープ13は、ブーム20の背面側に既に這わせてあるものとする。
【0024】
外部油圧源を使用し、リアストラット21のバックストップシリンダを伸ばして、リアストラット21を起こし、ペンダントロープ13を緊張させる(
図3(B))。そして、第1中間ジブ30bの背面に設置されているペンダントロープ15bと、フロントストラット22側のペンダントロープ15aとを連結する(
図3(C))。この連結については、後述するペンダントロープ15b、15cの連結手法を流用することも可能である。次いで、フロントストラット22を起こし、ジブバックストップを取り付ける(
図3(D))。尚、ここまでの手順は、伸長式のジブ組立て方法と同じである。
【0025】
引き続き、本実施形態の組立手法の説明を続ける。第1中間ジブ30bの先端にスリングをかけて、補助クレーン51で吊る(
図4(A))。このタイミングで電気配線を通しつつ、しばらく養生する。そしてブーム20を起こすとともに、第1中間ジブ30bを補助クレーン51で持ち上げる(
図4(B))。さらにブーム20を起こしながら、これと同時に補助クレーン51を巻き下げて、ペンダントロープ15a、15bを張る(
図4(C))。
【0026】
そして、第1中間ジブ30bの先端側を支持していたスリングを外し、補助クレーン51による支持を解除する(
図5(A))。これにより、ペンダントロープ15a、15bのみで、自力でジブ30a、30bを支持している状態となる。この状態においては、第1中間ジブ30bの先端側の固定支持部材70(後述)によりペンダントロープ15bの先端が支持されている。つまり、第1中間ジブ30bの先端側の固定支持部材70は、ブーム20に連結済みの下部ジブ30aおよび第1中間ジブ30bを、連結済みのペンダントロープ15aおよび15bにより吊った状態で保持している。この状態でブーム20を起こしつつ、ジブ30a、30bを下げてフロントストラット22とブーム20とを平行にする(
図5(B))。
【0027】
また、リアストラット21がジブ30a、30bと平行になるまで、ジブ30a、30bの先端側を下げる(
図6(A))。そして、次に継ぎ足すジブである第2中間ジブ30cを補助クレーン51で吊り、第1中間ジブ30bの近傍まで移動させる。そして、第1中間ジブ30bおよび第2中間ジブ30cの背中側をコネクトピンで連結する(
図6(B))。
【0028】
ここで、第1中間ジブ30bおよび第2中間ジブ30cの双方を連結する連結部、およびペンダントロープ15b、15cを連結する機構の一例について、
図7を用いて説明する。尚、ここではジブ30b、30cおよびペンダントロープ15b、15cについて言及するが、他のジブやペンダントロープにも適用される。
図7(A)は、
図6(B)で説明した工程まで行われたときの、第1中間ジブ30bおよび第2中間ジブ30cを連結する部位付近の状態例である。また
図7(B)は、第1中間ジブ30b側のペンダントロープ15bと第2中間ジブ30c側のペンダントロープ15cとを連結する機構の拡大図である。
図7(C)は、従来のペンダントロープを連結する機構を示した図であり、本実施形態の態様と対比するための図である。
【0029】
まず、ペンダントロープ15の連結機構について説明する。上記のとおり、各ジブ30a~30dの背面側には、各ジブに対応するペンダントロープ15a~15dがそれぞれ配設されている。ここでは第1中間ジブ30bのペンダントロープ15bに着目すると、ペンダントロープ15bの(先端側の)端部77には、ペンダントロープ15の伸長方向から垂直方向(Z軸方向)に突起しているロープ用コネクトピン75が形成されている。ペンダントロープ15bは、ロープ用コネクトピン75を回動軸として回動可能となっている。
【0030】
第1中間ジブ30bの本体部に固着している固定支持部材70は、ペンダントロープ15bとロープ連結部材76とを、第1中間ジブ30bに着脱可能に支持する部材である。
図7(B)を参照すると、固定支持部材70の一部を構成する支持板78は、ロープ用コネクトピン75を挟んで対面するように、第1中間ジブ30bの長手方向の前後に配置されている。また支持板78は、この前後一対を1つのセットとして、ペンダントロープ15bの端部77およびロープ連結部材76を両側で挟むように、左右(第1中間ジブ30bの幅方向)に配置されている。前後一対の支持板78において、一対の第1孔部78aが互いに対面する位置に形成されており、また第1孔部78aの下方に、一対の第2孔部78bが互いに対面する位置に形成されている。
図7(B)に示す姿勢において、第1孔部78aはロープ用コネクトピン75の上方に位置付けられており、第2孔部78bはロープ用コネクトピン75の下方に位置付けられている。
【0031】
ロックピン71は、前後に対面形成されている一対の第1孔部78aを貫通するように挿入されている。すなわちロックピン71は、左右の支持板78それぞれに設けられており、また
図7(B)に示す姿勢において、ロープ用コネクトピン75の上方を跨ぐ位置に設置される。ロックピン71がロープ用コネクトピン75の上方に位置する構成とすることで、ペンダントロープ15bを上方に引き上げると、ロックピン71とロープ用コネクトピン75とが当接して係合し、
図5(B)や後述の
図9(A)、
図9(B)などに示すように、第1中間ジブ30bの先端部でジブ30a、30bを吊り下げる姿勢を維持することができる。尚、従来の組立て工程においては、
図5(B)や後述の
図9(A)、
図9(B)などに示すペンダントロープ15bでの吊り下げ姿勢となる工程は含まない。よって
図7(C)に示す従来のペンダントロープ連結機構では、ロックピンやロックピンを挿入する孔部は存在しない。
【0032】
このように、ロックピン71や支持板78を構成に含んでいる固定支持部材70は、ペンダントロープ15bとロープ連結部材76の回動軸となっているロープ用コネクトピン75を支える構成となっている。また、この構成により、ペンダントロープ15a、15bでジブ30a、30bを吊り下げることが可能になる。これに加え、固定支持部材70は、ロックピン71を一対の第1孔部78aから引き抜くことで、ペンダントロープ15bとロープ連結部材76とを、第1中間ジブ30bから容易に開放し、離間させることも可能になる。
【0033】
ロープ連結部材76は、ペンダントロープ15bの端部77を両側で挟み込み、ペンダントロープ15bとは個別に、ロープ用コネクトピン75を回動軸として回動する部材である。ロープ連結部材76の一端部は、このようにロープ用コネクトピン75を有するが、他方の端部には孔部76aが形成されている。詳細は
図11を用いて後述するが、これより後工程において、ロープ連結部材76を回動させて孔部76aをペンダントロープ15c側の孔部77aに重ね合わせて一つの貫通孔を形成させ、この貫通孔にコネクトピンを挿入する。これにより、ペンダントロープ15bとペンダントロープ15cとが連結する。
【0034】
また一方で、第2中間ジブ30cの本体には、ずれ防止機構82が固定されている。ずれ防止機構82は、ペンダントロープ15cの(基端側の)端部77近傍を挟むことで、ペンダントロープ15cの端部側でのずれを抑制ための抑制部材である。これにより、端部77の移動がある程度制限されるため、孔部76aと孔部77aとの位置合わせが容易となる。
【0035】
尚、
図6(B)で説明した工程では、
図7(A)に示すコネクトピン81aが挿入されることで、第1中間ジブ30bおよび第2中間ジブ30cの背面側が連結される。またコネクトピン81aを回動軸として、第1中間ジブ30bに対し第2中間ジブ30cが回動する。
【0036】
図7の説明の最後に、
図7(C)の従来の機構について補足説明をする。
図7(C)に示すピン82aは、運搬の際にペンダントロープがジブから離れないように、且つ、ロープ連結部材76の回動を規制するための規制部材である。本実施形態の機構においても、
図7(B)に示す破線位置にピン82aを挿入することで、ペンダントロープ15bおよびロープ連結部材76を第1中間ジブ30bに固定することができる。尚、ピン82aは、後述の
図9(A)、
図9(B)に示すペンダントロープ15bでのジブの吊り下げ姿勢に耐える強度を有していない。つまり、ピン82aは、ブームに連結済みのジブ分割体を、連結済みの支持ロープ分割体により吊った状態で保持することはできない。
【0037】
引き続き
図8、
図9を参照して、組立て工程の説明を続ける。継ぎ足し用のジブである第2中間ジブ30cを地面にあずけ、補助クレーン51のスリングを取り外す(
図8(A))。そして取り外したスリングを、今度は第2中間ジブ30cの先端側にかけ、補助クレーン51で吊り上げる(
図8(B))。
【0038】
ブーム20を起こし、第2中間ジブ30cの先端側を補助クレーン51で持ち上げる(
図9(A))。ブーム20の起き上がりに連動して、ペンダントロープ15a、15bも上方向に引き上げられ、
図7(A)、(B)に示すペンダントロープ15b側の突起部であるロープ用コネクトピン75と、固定支持部材70側のロックピン71とが当接する。そしてペンダントロープ15a、15bがさらに上方向に引き上げられると、ロープ用コネクトピン75も上方に持ち上げられて移動する。そして、ロープ用コネクトピン75と当接しているロックピン71、およびロックピン71を支持している固定支持部材70も連動して上方に移動し、これらを介して、第1中間ジブ30bの先端側も持ち上げられる。また、第1中間ジブ30bの背面側端部と第2中間ジブ30cの背面側端部とは、コネクトピン81aにより結合されているため、第1中間ジブ30bが持ち上げられると、第2中間ジブ30cも連なって持ち上げられるようになる。
【0039】
図9(A)の姿勢に対し、ブーム20をさらに起こしつつ補助クレーン51を下方向に巻き下げることで、第1中間ジブ30bおよび第2中間ジブ30cが一直線となる。このように一直線の状態になることで、第1中間ジブ30bの腹部側の端部と第2中間ジブ30cの腹部側の端部とも、双方で当接することになる(
図9(B))。
【0040】
図9(B)の状態となった後、当接した腹部側同士をコネクトピンで連結する。すなわち、
図10に示すように、第1中間ジブ30bと第2中間ジブ30cとの腹部側の孔部に、コネクトピン81bを取り付ける。このように、第1中間ジブ30bと第2中間ジブ30cとの背面側にコネクトピン81aを取り付け、腹部側にコネクトピン81bを取り付けることで、第1中間ジブ30bと第2中間ジブ30cとが固定状態となる。また、これにより下部ジブ30a、第1中間ジブ30b、第2中間ジブ30cが一体化する。
【0041】
腹部側のコネクトピン81bを取り付けた後、第1中間ジブ30b側のペンダントロープ15bと、第2中間ジブ30c側のペンダントロープ15cとを連結する。この状態を
図11に示す。ロープ連結部材76は、ロープ用コネクトピン75を中心に矢印方向に回転する。この回転により、ロープ連結部材76の孔部76a、およびペンダントロープ15c側の孔部77aとが同じ位置となって重なり合い、これら孔部76a、77aによって一つの貫通孔が形成される。この貫通孔に、コネクトピン75aを挿入する。これにより、ペンダントロープ15bとペンダントロープ15cとが、ロープ連結部材76を介して連結する。
【0042】
ペンダントロープ15b、15cを連結した後は、第1孔部78aからロックピン71を引き抜き、取り外す。そしてロックピン71の紛失防止のため、第2孔部78bにロックピン71を挿入する。この状態を
図12に示す。ロックピン71が取り外され、また一方で、ずれ防止機構82での拘束が解除されると(具体的には、ずれ防止機構82においてペンダントロープ15cを押さえているピンを外すと)、ロープ連結部材76が
図12に示す破線矢印の方向(上方向)に移動可能になる。このように固定支持部材70での支持が取り除かれた状態でペンダントロープ15bが上方に張られると、固定支持部材70からロープ連結部材76が離間し、これに連動してペンダントロープ15cも第2中間ジブ30cの本体から離間する。
【0043】
図13(A)は、フロントストラット22を起こしてペンダントロープ15a、15bを張ることで、ペンダントロープ15cが第2中間ジブ30cから離間した状態を示している。この状態にすると、ペンダントロープ15a~15cの張力のみで自力でジブ30a~30cを支持することができるため、補助クレーン51での支持を取り除くことができる。この状態においては、第2中間ジブ30cの先端側の固定支持部材70によりペンダントロープ15cの先端が支持されている。つまり、第2中間ジブ30cの先端側の固定支持部材70は、ブーム20に連結済みの下部ジブ30a、第1中間ジブ30bおよび第2中間ジブ30cを、連結済みのペンダントロープ15a~15cにより吊った状態で保持している。そして、自力でジブ30a~30cを支持した状態で、しばらく養生するとともに、電気配線などを行う。
【0044】
養生後、上部ジブ30dを第2中間ジブ30cの先端側に取り付ける(
図13(B))。この取り付けの際には、上部ジブ30dを地面に載置した状態で行ってもよい。またこの段階では、背面側のみをコネクトピンで接続する。補助クレーン51は、上部ジブ30dを吊り上げて支持する。
【0045】
次に、
図14(A)に示すように台車35を矢印方向に移動可能となるように配置し、上部ジブ30dの先端側をその上に載置するように補助クレーン51を操作する。その後、上部ジブ30dの胴体部を吊り上げている補助クレーン51のスリングを一旦取り外し、上部ジブ30dの先端側を吊り上げるようにする(
図14(A)、
図14(B))。
【0046】
この状態でブーム20を起こすと、台車35の上に載置された上部ジブ30dの先端は、
図15(A)に示す矢印の方向に移動し、連動して第2中間ジブ30cの腹部側と上部ジブ30dの腹部側とが近接する(
図15(A))。そして、第2中間ジブ30cの腹部側と上部ジブ30dの腹部側とをコネクトピンで接続する(
図15(B))。これにより、第2中間ジブ30cと上部ジブ30dとが固定され、下部ジブ30a、第1中間ジブ30b、第2中間ジブ30c、上部ジブ30dの全てが連結して一体となる。
【0047】
次に、第2中間ジブ30c側のペンダントロープ15cと上部ジブ30d側のペンダントロープ15dとをロープ連結部材76を介して接続する。この連結は、上記の
図11を用いて説明した手法を流用することができる。そして、補助クレーン51のスリングを取り外して、補助クレーン51による上部ジブ30dの吊り下げを解除する(
図16(A)、
図16(B))。
【0048】
図16(B)の状態で、ブーム20をさらに起こし、フロントストラット22を操作すると、上部ジブ30d側のペンダントロープ15dが上方に張られて上部ジブ30dの本体から離間する(
図17(A)、
図17(B))。
図17(B)に示す状態になると、ペンダントロープ15a~15dにより、ジブ30の全体を自力で吊り上げることができる。この段階で、台車35を取り外す。
【0049】
図17(B)の状態からさらにブーム20を起こすと、
図18に示す姿勢となり、フロントストラット22を起こすことで
図1に示す姿勢となり、組立て完了となる。
【0050】
図19は、
図22(C)に示す伸長式および抱込みで組立てる際の占有長さ、占有幅、および占有面積と、本実施形態の手法(立組み式)での占有長さ、占有幅、および占有面積との対比例を示す図である。また
図19においても、
図22(C)と同様にジブの長さ=60m、ジブの長さ=54mとしている。本実施形態の立組み式を実施することで、占有長さについては伸長式よりも短くなり、伸長式と抱込み式の各占有長さのほぼ中間となる。また占有幅については伸長式と同じとなる。このことから、本実施形態の立組み式による占有面積(長さ×幅)は、伸長式や抱込み式の各手法よりも小さくなり、作業現場内の限られたスペースでも組立てを行うことが可能となる。
【0051】
図20は、ペンダントロープ15の他の連結機構を例示する図である。
図20(A)は、ペンダントロープ15の連結機構付近の上面図であり、
図20(B)は、
図20(A)に示すA-A断面図である。また
図20(C)は側面図であり、ペンダントロープ15を接続するときの方法を説明するための図である。
【0052】
図20の各図に示す例では、ペンダントロープ15の端部77をロープ連結部材76で挟み込んで、部材91を用いてこれらを一体化させる。そして端部77およびロープ連結部材76を、ジブ30に固定された固定支持部材70でさらに挟み込んだ構成となっている。
【0053】
部材91は、
図20(B)に示すように、端部77およびロープ連結部材76の双方の回動軸として機能し、また当該回動軸の中心部には、ロックピン71を貫通するための孔部が形成されている。固定支持部材70にも孔部が形成されており、各孔部を重ねてロックピン71が挿入する構成となっている(
図20(B)参照)。ロープ連結部材76およびペンダントロープ15の端部77は、ロックピン71を軸中心として、
図20(C)の矢印方向に回転可能となる。
【0054】
図20(C)を参照して、当該接続機構によるペンダントロープ15の接続方法について説明する。ペンダントロープ15の一方端部77の構成は、
図20(A)や
図20(B)に示すように、ロープ連結部材76と接続している構成となっているが、他方の端部77は、
図20(C)に示す孔部77aを有する構成となっている。ペンダントロープ15を連結する際、ロープ連結部材76を
図20(C)に示す矢印方向に回転させて、孔部76aと孔部77aとを重ね合わせる。そして、孔部76a、77aにより形成される貫通孔に、コネクトピンを挿入する。これにより、ロープ連結部材76を介して双方のペンダントロープ15が連結される。この後、ペンダントロープ15の端部77、ロープ連結部材76、固定支持部材70を結合しているロックピン71を取り外すことで、ペンダントロープ15は、連結した状態でジブ30から離間可能になる。
【0055】
本実施形態の組立方式により、クレーンのジブを組立てる際、伸長式や抱込み式よりも占有面積を削減することが可能となる。
【0056】
また本実施形態の組立方式では、ジブを組立てる際、地面とジブ分割体の腹部側とを対面させて背面側が常に上方を向くように配置させることができるため、反転作業を要しない。また本実施形態の組立方式では、1台のみの補助クレーンでジブの組立作業を行うことができるため、2台の補助クレーンが必要だった従来手法に比べ、補助クレーン用のスペースを確保するのが容易となる。
【0057】
また、分割されたペンダントロープの端部近傍に、ずれ防止機構を具備させたことで、ペンダントロープの端部近傍をある程度固定することができる。この構成により、ロープ連結部材の孔部とペンダントロープ端部の孔部との位置合わせを容易に行うことができる。
【0058】
最後に、従来の組立方式である伸長式および抱込み式、および本実施形態の方式を適用した場合の組立ての可否について、
図21を参照しながら説明する。
図21(A)は伸長式での組み合わせ表を示しており、
図21(B)は抱込み式での組み合わせ表を示している。また
図21(C)は本実施形態の方式を適用した場合の組み合わせ表を示している。各表では、縦方向にブーム長さ、横方向にジブ長さを示しており、各欄に組立ての可否を記している。
【0059】
伸長式の場合、ブーム長さやジブ長さによる組立ての制約は無い。一方、抱込み式の場合は、組立て方法の都合上、ジブの長さがブームの長さ以上となる組み合わせでは、組み立てることができないか、もしくは困難となる。
【0060】
このように抱込み式では、
図21(B)に示すようにジブの長さとブームの長さの関係で、組み合わせることができないケースがあるが、本実施形態の組立方式では、その制約は無くなる。すなわち、本実施形態の立組方式では、
図21(C)に示すように、伸長式と同様の組み合わせが可能となる。
【0061】
以上に詳説したように、本実施形態により、ジブを組立てる際の占有面積を削減するとともに、ジブの組立て作業が容易となる技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
15、15a、15b、15c、15d:ペンダントロープ
20 :ブーム
21 :リアストラット
22 :フロントストラット
30 :ジブ
30a :下部ジブ
30b :第1中間ジブ
30c :第2中間ジブ
30d :上部ジブ
51 :補助クレーン
70 :固定支持部材
71 :ロックピン
75 :ロープ用コネクトピン
75a :コネクトピン
76 :ロープ連結部材
78 :支持板
82 :ずれ防止機構
100 :移動式クレーン