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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】すり板形状算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20220124BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220124BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G06T7/00 610
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017251316
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019117121
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿彦 雄一
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】下山 拓紀
(72)【発明者】
【氏名】君山 健二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】横井 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】保刈 誠
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-249503(JP,A)
【文献】特開2006-118900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根に設けられ、前記車両の進行方向において当該車両が搭載するパンタグラフのすり板の前方または後方に位置し、かつ、前記すり板の下方から当該すり板を撮像可能に設けられる撮像部と、
前記撮像部により前記すり板を撮像して得られる撮像画像に対して、前記すり板を探索する探索範囲を設定する探索範囲設定部と、
前記探索範囲のエッジに基づいて、前記すり板の長手方向の異なる位置における、前記すり板の上面の高さを検出する高さ検出部と、
前記高さ検出部により検出した前記すり板の上面の高さの座標の集合を、前記すり板の上面の形状として算出する算出部と、
を備えるすり板形状算出装置。
【請求項2】
前記探索範囲設定部は、前記撮像画像に含まれる直線状のエッジを検出し、当該検出したエッジのうち最も高い位置のエッジを基準として、前記探索範囲を設定する請求項1に記載のすり板形状算出装置。
【請求項3】
前記すり板の上面の形状における長手方向の両端を結んだ基準線と、前記すり板の上面の形状のうち最も低い位置との差分を、前記すり板の摩耗量として検出する摩耗量検出部をさらに備える請求項1または2に記載のすり板形状算出装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記すり板の上面の形状のうち長手方向の両端の高さが一致するように、前記すり板の上面の形状の傾きを補正し、複数の前記撮像画像を用いて算出される前記すり板の上面の形状を平均化した結果を、前記すり板の上面の形状として算出する請求項1から3のいずれか一に記載のすり板形状算出装置。
【請求項5】
前記探索範囲に含まれる前記すり板以外の物体の位置を検出する位置検出部をさらに備え、
前記算出部は、前記すり板の上面の形状のうち、前記物体の位置を除いて、前記すり板の上面の形状を平均化する請求項4に記載のすり板形状算出装置。
【請求項6】
前記算出部は、異なるアングルの前記撮像部の撮像により得られる前記撮像画像を用いて算出される前記すり板の上面の形状を平均化した結果を、前記すり板の上面の形状として算出する請求項4に記載のすり板形状算出装置。
【請求項7】
前記算出部は、複雑な背景を含む前記撮像画像に設定された前記探索範囲から検出した前記すり板の上面の高さを用いずに、前記すり板の上面の形状を算出するか、または複雑な背景を含む前記撮像画像に設定された前記探索範囲から検出した前記すり板の上面の高さを用いて算出される前記すり板の上面の形状を無効とする請求項1から6のいずれか一に記載のすり板形状算出装置。
【請求項8】
前記すり板の上面の形状の算出結果を記憶する記憶部をさらに備える請求項1からのいずれか一に記載のすり板形状算出装置。
【請求項9】
前記すり板の上面の形状の算出結果を表示する表示部をさらに備える請求項1からのいずれか一に記載のすり板形状算出装置。
【請求項10】
前記算出部は、前記高さ検出部により検出した前記すり板の上面の高さの座標の集合を結んだ線、または当該座標の集合の近似曲線を、前記すり板の上面の形状として算出する、請求項1からのいずれか一に記載のすり板形状算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、すり板形状算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電車等の車両に搭載されるパンタグラフのすり板は、架線との摩擦やアーク放電の発生によって摩耗するため、定期的に交換する必要がある。そのため、車両が予め設定された日数を走行する毎に、すり板の摩耗量を測定し、当該摩耗量が基準値を超えたすり板を外して交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-180128号公報
【文献】特開2015-17921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、すり板を定期的に交換する運用では、アーク放電の発生によってすり板の摩耗が急激に進行したとしても、車両が予め設定された日数だけ走行するまでは、すり板が交換されないため、すり板の割損が生じる場合がある。このため、すり板の摩耗量の基準値は、すり板の摩耗量の限界値から余裕を大きくとる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のすり板形状算出装置は、撮像部と、探索範囲設定部と、高さ検出部と、算出部と、を備える。撮像部は、車両の屋根に設けられ、車両の進行方向において当該車両が搭載するパンタグラフのすり板の前方または後方に位置し、かつ、すり板の下方から当該すり板を撮像可能に設けられる。探索範囲設定部は、撮像部によりすり板を撮像して得られる撮像画像に対して、すり板を探索する探索範囲を設定する。高さ検出部は、探索範囲のエッジに基づいて、すり板の長手方向の異なる位置における、すり板の上面の高さを検出する。算出部は、高さ検出部により検出したすり板の上面の高さの座標の集合を、すり板の上面の形状として算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態にかかる車両に搭載されるすり板形状算出装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる画像処理装置における探索範囲の設定処理の一例を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態にかかる画像処理装置によるすり板の上面の高さの検出処理の一例を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態にかかる画像処理装置によりすり板の上面形状の算出処理およびすり板の摩耗量の検出処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、変形例1にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態かかる画像処理装置におけるすり板の傾きの補正処理の一例を説明するための図である。
図9図9は、第2の実施形態かかる画像処理装置におけるすり板の傾きの補正処理の一例を説明するための図である。
図10図10は、第2の実施形態にかかる画像処理装置におけるすり板の上面形状の平均化処理の一例を説明するための図である。
図11図11は、第3の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図12図12は、第4の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかるすり板形状算出装置を適用した電気車等の車両について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる車両に搭載されるすり板形状算出装置の構成の一例を示す図である。まず、図1を用いて、本実施形態にかかる車両に搭載されるすり板形状算出装置の概略構成の一例について説明する。本実施形態では、すり板形状算出装置は、カメラ101と、画像処理装置102と、ログ記録装置103と、車内モニタ104と、を有する。本実施形態では、すり板形状算出装置は、ログ記録装置103および車内モニタ104を有しているが、少なくとも、カメラ101および画像処理装置102を有していれば良い。
【0009】
カメラ101(撮像部の一例)は、可視光を撮像可能なカメラ(所謂、可視光カメラ)等であり、車両に設けられ、車両に搭載されるパンタグラフ2が有するすり板2a(図2参照)を撮像可能である。具体的には、カメラ101は、すり板2aで反射した可視光線を受光して、すり板2aを撮像する。本実施形態では、カメラ101は、すり板2aを下方から撮像可能に設けられている。また、本実施形態では、カメラ101は、車両の進行方向において、すり板2aよりも前方に設けられているが、これに限定するものではなく、車両の進行方向において、すり板2aの後方に設けられていても良い。また、すり板形状算出装置は、複数のカメラ101を有していても良い。例えば、すり板形状算出装置は、車両の車幅方向(すり板2aの長手方向)に並んで複数のカメラ101を有していても良いし、車両の進行方向に並んで複数のカメラ101を有していても良い。
【0010】
画像処理装置102は、カメラ101によりすり板2aを撮像して得られる撮像画像に基づいて、すり板2aの形状を算出する。そして、画像処理装置102は、すり板2aの形状の算出結果をログ記録装置103に保存する。ログ記録装置103は、HDD(Hard Disk Drive)等であり、画像処理装置102によるすり板2aの形状の算出結果等の各種情報を記憶する。本実施形態では、画像処理装置102は、車両に搭載されるログ記録装置103に対して、すり板2aの形状の算出結果を保存しているが、これに限定するものではなく、車両の外部の記憶装置(例えば、地上側のシステムが有する記憶装置)に対して、すり板2aの形状の算出結果を保存しても良い。また、ログ記録装置103は、すり板2aの形状の算出結果を、当該すり板2aの形状を算出した時刻等、当該算出結果を識別可能な情報とともに記憶しても良い。
【0011】
車内モニタ104は、LCD(Liquid Crystal Display)等であり、画像処理装置102によるすり板2aの形状の算出結果等の各種情報を表示する表示部である。本実施形態では、画像処理装置102は、車両に搭載される車内モニタ104に対して、すり板2aの形状の算出結果を表示させているが、これに限定するものではなく、車両の外部の表示装置(例えば、地上側のシステムが有する表示部)に対して、すり板2aの形状の算出結果を表示させても良い。
【0012】
図2は、第1の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。次に、図2を用いて、本実施形態にかかるすり板形状算出装置が有する画像処理装置102の機能構成の一例について説明する。本実施形態では、画像処理装置102は、エッジ検出部105、二値化処理部106、探索範囲設定部107、高さ検出部108、形状算出部109、および摩耗量検出部110を有する。
【0013】
エッジ検出部105は、カメラ101によりすり板2aを撮像して得られる撮像画像のエッジを検出する。二値化処理部106は、カメラ101によりすり板2aを撮像して得られる撮像画像を二値化する二値化処理を実行する。探索範囲設定部107は、二値化処理を実行した撮像画像(以下、二値化画像と言う)に対して、すり板2aを探索する探索範囲を設定する。本実施形態では、探索範囲設定部107は、二値化画像に対して探索範囲を設定しているが、二値化処理を実行していない撮像画像に対して探索範囲を設定しても良い。
【0014】
高さ検出部108は、探索範囲のエッジに基づいて、すり板2aの長手方向の異なる位置における、すり板2aの上面の高さ(すり板2aの上下方向の位置)を検出する。形状算出部109(算出部の一例)は、すり板2aの上面の高さに基づいて、すり板2aの上面の形状を算出する。本実施形態では、形状算出部109は、高さを検出したすり板2aの上面の位置を結んだ線、または高さを検出したすり板2aの上面の位置の近似曲線を、すり板2aの上面の形状(以下、上面形状と言う)として算出する。摩耗量検出部110は、すり板2aの上面形状の長手方向の両端を結んだ基準線と、すり板2aの上面形状のうち最も低い位置との差分を、すり板2aの摩耗量として検出する。
【0015】
以上の構成によれば、すり板2aの上面形状を常時監視することが可能となるので、アーク放電の発生によるすり板2aの急激な摩耗が検出可能となる。また、すり板2aの摩耗が進むまですり板2aの交換時期を遅らせることができる。また、車両に搭載されるカメラ101を用いて、すり板2aの上面形状を算出するので、線路上に設けられるカメラや照明を用いて、すり板2aの上面形状を算出する場合と比較して、高解像度で高価なカメラを用いる必要がなくなる。また、カメラ101によってパンタグラフ2を下方から撮像して得られる撮像画像を用いて、すり板2aの上面形状を算出するので、撮像画像において車両の屋根がパンタグラフ2の背景となる等によって、すり板2aの上面形状が算出し難く、すり板2aの上面形状や摩耗量を誤検知することを防止できる。また、ステレオカメラを用いずにすり板2aの形状を算出できるので、ステレオカメラの取り付け角度やレンズの調整に時間がかかったり、車両の運行中にそれらのずれの再調整が必要となったりして、カメラ101の据付や保守によるコストを削減できる。
【0016】
図3は、第1の実施形態にかかる画像処理装置における探索範囲の設定処理の一例を説明するための図である。次に、図3を用いて、画像処理装置102による探索範囲の設定処理の一例について説明する。
【0017】
探索範囲設定部107は、図3に示すように、二値化処理部106により二値化された二値化画像Gが得られると、当該二値化画像Gに含まれる直線状のエッジ画像を検出する。本実施形態では、図3に示すように、探索範囲設定部107は、二値化画像Gに対して、ハフ変換等の画像処理を実行することによって、パンタグラフ2が有するアーム2cの形状を表す直線状のエッジ画像D1、パンタグラフ2が有する舟体2bの下面を表すエッジ画像D2、すり板2aの上面を表すエッジ画像D3、パンタグラフ2が有するホーン2dの形状を表すエッジ画像D5、および架線Lを表すエッジ画像D4を検出する。次いで、探索範囲設定部107は、検出したエッジ画像D1,D2,D3,D4のうち、すり板2aの上下方向Yにおける高さが最も高いエッジ画像D3を特定する。その際、探索範囲設定部107は、検出したエッジ画像D1,D2,D3,D4のうち、略水平のエッジ画像D3を特定する。例えば、探索範囲設定部107は、検出したエッジ画像D1,D2,D3,D4のうち、水平方向に対して予め設定された角度の範囲内の傾きのエッジ画像D3を特定する。
【0018】
そして、探索範囲設定部107は、特定したエッジ画像D3を基準として、探索範囲Aを設定する。例えば、探索範囲設定部107は、特定したエッジ画像D3を基準として、上下方向Yおよび長手方向Xに対して、予め設定された画素数の高さおよび幅を有する矩形の領域を探索範囲Aに設定する。または、探索範囲設定部107は、車両が走行した際に、すり板2aが移動し得る範囲を探索範囲Aに設定しても良い。また、探索範囲設定部107は、CoHOG(Co-Occurrence Histograms of Oriented Gradients)やディープラーニング等の技術を用いて、撮像画像に含まれるすり板2aらしい領域を検出し、当該検出した領域を探索範囲に設定しても良い。
【0019】
図4は、第1の実施形態にかかる画像処理装置によるすり板の上面の高さの検出処理の一例を説明するための図である。次に、図4を用いて、本実施形態にかかる画像処理装置102によるすり板2aの上面の高さの検出処理について説明する。
【0020】
図4に示すように、高さ検出部108は、探索範囲設定部107により設定される探索範囲A内において、すり板2aの長手方向X(または、水平方向)に向かって検出位置を1画素ずつずらしながら、当該検出位置におけるすり板2aの上面の高さ(すり板2aの上下方向の位置)を検出する。本実施形態では、高さ検出部108は、図4に示すように、探索範囲Aの上端からすり板2aの上面までの画素数nを、すり板2aの上面の高さとして検出する。本実施形態では、高さ検出部108は、すり板2aの長手方向Xに向かって検出位置を1画素ずつずらしながら、すり板2aの上面の高さを検出しているが、これに限定するものではなく、すり板2aの長手方向Xに向かって検出位置を予め設定された画素数ずつずらしながら、すり板2aの上面の高さを検出しても良い。
【0021】
図5は、第1の実施形態にかかる画像処理装置によりすり板の上面形状の算出処理およびすり板の摩耗量の検出処理の一例を説明するための図である。図5に示すように、形状算出部109は、探索範囲A内において、高さを検出したすり板2aの上面の位置を結んだ線を、すり板2aの上面形状Zとして算出する。摩耗量検出部110は、図5に示すように、すり板2aの上面形状Zの両端を結ぶ基準線Bを求める。そして、摩耗量検出部110は、すり板2aの上下方向Yにおける、基準線Bとすり板2aの上面形状Zのうち最も低い位置C(以下、摩耗位置と言う)との差分Eを、すり板2aの摩耗量として検出する。本実施形態では、摩耗量検出部110は、すり板2aの上下方向Yにおける、基準線Bと摩耗位置Cとの間の画素数を計数する。次いで、摩耗量検出部110は、画素数をミリ単位の長さに変換可能なテーブルを用いて、計数した画素数を、ミリ単位の長さに変換して、その長さを摩耗量として検出しても良い。または、摩耗量検出部110は、幾何的計算式を用いて、計数した画素数を、ミリ単位の長さに変換して、その長さを摩耗量として検出しても良い。
【0022】
このように、第1の実施形態にかかるすり板形状算出装置によれば、すり板2aの上面形状を常時監視することが可能となるので、アーク放電の発生によるすり板2aの急激な摩耗を検出可能とする。
【0023】
(変形例1)
本変形例は、撮像画像において予め設定された範囲を探索範囲に設定する例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0024】
図6は、変形例1にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる画像処理装置600は、図6に示すように、エッジ検出部105、二値化処理部106、高さ検出部108、形状算出部109、摩耗量検出部110、および探索範囲設定部601を有する。本実施形態では、探索範囲設定部601は、二値化画像において、予め設定された範囲を探索範囲Aに設定する。これにより、カメラ101によってパンタグラフ2を撮像する度に、二値化画像において探索範囲Aを設定する位置を求め直す必要が無くなるので、探索範囲Aの設定処理による処理負荷を軽減できる。
【0025】
(第2の実施形態)
本実施形態は、すり板の上面形状における両端の高さが一致するように、すり板の上面形状の傾きを補正し、複数の撮像画像を用いて算出されるすり板の上面形状を平均化した結果を、すり板の上面形状として算出する例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0026】
図7は、第2の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる画像処理装置700は、図7に示すように、エッジ検出部105、二値化処理部106、探索範囲設定部107、高さ検出部108、形状算出部109、摩耗量検出部110、架線位置検出部701、水平化処理部702、形状メモリ703、および平均化処理部704を有する。本実施形態では、形状算出部109、水平化処理部702、および平均化処理部704が算出部の一例として機能する。
【0027】
架線位置検出部701(位置検出部の一例)は、二値化画像に含まれるすり板2a以外の物体(例えば、架線Lやパンタグラフ2の金具)の位置を検出する。本実施形態では、架線位置検出部701は、二値化画像からすり板2a以外の物体の位置を検出しているが、探索範囲のみからすり板2a以外の物体の位置を検出しても良い。
【0028】
水平化処理部702は、すり板2aの長手方向における当該すり板2aの上面形状の両端の高さが一致するように、すり板2aの上面形状の傾きを補正する。形状メモリ703は、架線位置検出部701により検出される、すり板2a以外の物体の位置を記憶する。平均化処理部704は、複数の撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状を平均化した結果を、すり板2aの上面形状として算出する。これにより、すり板2aの上面形状を画素以下の精度で算出することができるので、すり板2aの上面形状をより高精度に算出することができる。
【0029】
また、平均化処理部704は、すり板2aの上面形状のうち架線位置検出部701により検出される物体の位置を除いて、複数の撮像画像を用いて算出したすり板2aの上面形状を平均化する。これにより、すり板2aの上面形状のうち、探索範囲に含まれるすり板2a以外の物体と重なっている部分を用いずに、すり板2aの上面形状を平均化することができるので、すり板2aの上面形状をより高精度に算出することができる。
【0030】
図8および図9は、第2の実施形態かかる画像処理装置におけるすり板の傾きの補正処理の一例を説明するための図である。次に、図8および図9を用いて、本実施形態にかかる画像処理装置700によるすり板2aの上面形状の傾きの補正処理の一例について説明する。
【0031】
図8に示すように、水平化処理部702は、探索範囲A内において、すり板2aの上面形状の高さのうち、その両端から所定範囲R1,R2(すり板2aの上面のうち摩耗量が少ない範囲)の高さを抽出する。次いで、水平化処理部702は、所定範囲R1から抽出した高さのうち外れ値を除いた高さの平均を、所定範囲R1側のすり板2aの端の上面形状の高さとする。また、水平化処理部702は、所定範囲R2から抽出した高さのうち外れ値を除いた高さの平均を、所定範囲R2側のすり板2aの端の上面形状の高さとする。そして、水平化処理部702は、図9に示すように、すり板2aの上面形状の両端の高さの差が0になるように、すり板2aの上面形状Zの傾きを補正する。
【0032】
図10は、第2の実施形態にかかる画像処理装置におけるすり板の上面形状の平均化処理の一例を説明するための図である。次に、図10を用いて、本実施形態にかかる画像処理装置700におけるすり板2aの上面形状の平均化処理の一例について説明する。
【0033】
探索範囲A内に架線Lが含まれる場合、図10に示すように、形状算出部109により算出されるすり板2aの上面形状Zのうち、架線Lと重なる部分の形状が、すり板2aの上方に突き出た上面形状Zとなる可能性がある。そのため、平均化処理部704は、形状算出部109により算出されるすり板2aの上面形状Zのうち架線Lと重なる部分におけるすり板2aの上面の高さを0として、複数の撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状Zを平均化する。
【0034】
このように、第2の実施形態にかかるすり板形状算出装置によれば、すり板2aの上面形状を画素以下の精度で算出することができるので、すり板2aの上面形状をより高精度に算出することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
本実施形態は、異なるアングルのカメラの撮像により得られる撮像画像を用いて算出されるすり板の上面形状を平均化した結果を、すり板の上面形状として算出する例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
図11は、第3の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる画像処理装置1100は、図11に示すように、エッジ検出部105,1101、二値化処理部106,1102、探索範囲設定部107,1103、高さ検出部108,1104、形状算出部109,1105、位置合せ部1106、平均化処理部1107、および摩耗量検出部110を有する。本実施形態では、形状算出部109,1105、位置合せ部1106、および平均化処理部1107が算出部の一例として機能する。
【0037】
エッジ検出部105,1101は、異なるアングルのカメラ101の撮像により得られる撮像画像のエッジを検出する。二値化処理部106,1102は、異なるアングルのカメラ101(例えば、車両の進行方向において、パンタグラフ2の前方に設けられたカメラ101およびパンタグラフ2の後方に設けられたカメラ101、または、車両の車幅方向において異なる位置に設けられた複数のカメラ101)の撮像により得られる撮像画像を二値化する二値化処理を実行する。
【0038】
探索範囲設定部1103は、二値化処理部1102により二値化された二値化画像に対して探索範囲を設定する。高さ検出部1104は、探索範囲設定部1103により設定された探索範囲のエッジに基づいて、当該探索範囲におけるすり板2aの上面の高さを検出する。形状算出部1105は、すり板2aの長手方向の異なる検出位置おいて検出されるすり板2aの上面の高さに基づいて、すり板2aの上面形状を算出する。
【0039】
位置合せ部1106は、形状算出部109により算出されるすり板2aの上面形状と、形状算出部1105により算出されるすり板2aの上面形状と、が重なり合うように、形状算出部109,1105それぞれにより算出されるすり板2aの上面形状の傾きを補正する。本実施形態では、位置合せ部1106は、形状算出部109,1105それぞれにより算出されるすり板2aの上面形状の両端の高さが一致するように、すり板2aの上面形状の傾きを補正する。
【0040】
平均化処理部1107は、位置合せ部1106により傾きが補正されたすり板2aの上面形状を平均化した結果を、すり板2aの上面形状として算出する。本実施形態では、平均化処理部1107は、異なるアングルのカメラ101の撮像により得られる撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状の平均を、すり板2aの上面形状として算出しているが、これに限定するものではなく、異なるアングルのカメラ101の撮像により得られる撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状のうち、いずれか一方を、すり板2aの上面形状として算出しても良い。例えば、平均化処理部1107は、複数の撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状のうち、各上面形状に基づいて検出される摩耗量が多い上面形状を、すり板2aの上面形状として算出しても良い。
【0041】
また、本実施形態では、平均化処理部1107は、位置合せ部1106により傾きが補正されたすり板2aの上面形状を平均化した結果を、すり板2aの上面形状として算出しているが、異なるアングルのカメラ101の撮像により得られる撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状を平均化した結果を、すり板2aの上面形状として算出すれば良い。
【0042】
このように、第3の実施形態にかかるすり板形状算出装置によれば、一方のカメラ101の撮像により得られる撮像画像を用いて算出できないすり板2aの上面形状を、他方のカメラ101の撮像により得られる撮像画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状によって補完できるので、すり板2aの上面形状をより正確に算出することができる。
【0043】
(第4の実施形態)
本実施形態は、複雑な背景を含む撮像画像に設定された探索範囲から検出したすり板の上面の高さを用いずに、すり板の形状を算出する例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0044】
図12は、第4の実施形態にかかる画像処理装置の機能構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる画像処理装置1200は、図12に示すように、エッジ検出部105、二値化処理部106、探索範囲設定部107、高さ検出部108、形状算出部109、摩耗量検出部110、および背景検出部1201を有する。背景検出部1201は、二値化画像が複雑な背景を含むか否かを判断する。本実施形態では、背景検出部1201は、二値化画像に含まれる白画素の数が予め設定された画素数よりも多い場合、または二値化画像のコントラストが予め設定されたコントラストより低い場合、二値化画像が複雑な背景を含むと判断する。
【0045】
そして、背景検出部1201は、二値化画像が複雑な背景を含むと判断した場合、複雑な背景が検出されたことを示す検出信号を出力して、二値化画像を用いて算出されるすり板2aの上面形状を無効化する。若しくは、背景検出部1201は、二値化画像が複雑な背景を含むことを形状算出部109に通知する。この場合、形状算出部109は、複雑な背景を含むと判断された二値化画像を用いて、すり板2aの上面形状の算出を行わない。これにより、二値化画像に含まれる背景によってすり板2aの上面形状が正確に算出できない可能性が高い場合には、すり板2aの上面形状の算出結果を無効化したり、すり板2aの上面形状の算出を中止させることが可能となるので、すり板2aの上面形状の算出結果の信頼性を向上させることができる。
【0046】
このように、第4の実施形態にかかるすり板形状算出装置によれば、すり板2aの上面形状の算出結果の信頼性を向上させることができる。
【0047】
以上説明したとおり、第1から第4の実施形態によれば、すり板2aの上面形状を常時監視することが可能となるので、アーク放電の発生によるすり板2aの急激な摩耗を検出できる。
【0048】
なお、本実施形態の画像処理装置102,600,700,1100,1200で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の画像処理装置102,600,700,1100,1200で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0049】
さらに、本実施形態の画像処理装置102,600,700,1100,1200で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の画像処理装置102,600,700,1100,1200で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0050】
本実施形態の画像処理装置102,600,700,1100,1200で実行されるプログラムは、上述した各部(エッジ検出部105,1101、二値化処理部106,1102、探索範囲設定部107,601,1103、高さ検出部108,1104、形状算出部109,1105、摩耗量検出部110、架線位置検出部701、水平化処理部702、平均化処理部704,1107、位置合せ部1106、背景検出部1201)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、エッジ検出部105,1101、二値化処理部106,1102、探索範囲設定部107,601,1103、高さ検出部108,1104、形状算出部109,1105、摩耗量検出部110、架線位置検出部701、水平化処理部702、平均化処理部704,1107、位置合せ部1106、背景検出部1201が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
2…パンタグラフ、2a…すり板、101…カメラ、102,600,700,1100,1200…画像処理装置、103…ログ記録装置、104…車内モニタ、105,1101…エッジ検出部、106,1102…二値化処理部、107,601,1103…探索範囲設定部、108,1104…高さ検出部、109,1105…形状算出部、110…摩耗量検出部、701…架線位置検出部、702…水平化処理部、703…形状メモリ、704,1107…平均化処理部、1106…位置合せ部、1201…背景検出部。
図1
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図12