(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】管接続部の離脱防止構造
(51)【国際特許分類】
F16L 27/12 20060101AFI20220124BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20220124BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
F16L27/12 E
F16L21/08 Z
F16L57/00 C
(21)【出願番号】P 2018040774
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】594087274
【氏名又は名称】神戸市
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】三浦 久人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
(72)【発明者】
【氏名】熊木 芳宏
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0217778(US,A1)
【文献】特開2001-187996(JP,A)
【文献】特開平09-014569(JP,A)
【文献】特開2016-138637(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0002285(KR,A)
【文献】特開2008-082418(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1326657(KR,B1)
【文献】特開2004-316810(JP,A)
【文献】特開2013-133857(JP,A)
【文献】特開2019-108939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/12
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方
向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ
、
前記第1継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第1分割継ぎ輪体を備え、前記第2継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第2分割継ぎ輪体を備え、
内嵌側に配置される前記第1継ぎ輪には、外嵌側に配置される前記第2継ぎ輪の嵌合側部位を管軸芯方向に摺動案内する摺動案内部と、周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体同士を固定連結する固定連結部と、が備えられ、
外嵌側に配置される前記第2継ぎ輪には、前記嵌合側部位に形成されて前記第1継ぎ輪の前記摺動案内部に対して摺動自在に嵌合する嵌合包持部と、周方向で隣接する第2分割継ぎ輪体同士を固定連結する固定連結部と、が備えられ、
前記第1継ぎ輪の前記固定連結部が、前記摺動案内部の管軸芯方向の外側部位に配置され、
前記第2継ぎ輪の前記固定連結部が、前記嵌合側部位及び前記嵌合側部位の管軸芯方向の外側部位に配置されている管接続部の離脱防止構造。
【請求項2】
両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、前記両管部の離脱移動に連れて一方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第1抜止部にて抜止めされる状態で一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、前記両管部の離脱移動に連れて他方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第2抜止部にて抜止めされる状態で他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられている管接続部の離脱防止構造。
【請求項3】
両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
内嵌側に配置される前記第1継ぎ輪の管軸芯方向の両端部には、一方の前記管部に外装される管抱持部が形成されてい
る管接続部の離脱防止構造。
【請求項4】
両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
前記第1継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第1分割継ぎ輪体を備え、前記第2継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第2分割継ぎ輪体を備え、さらに、内嵌側に配置される前記第1継ぎ輪には、外嵌側に配置される前記第2継ぎ輪の嵌合側部位を管軸芯方向に摺動案内する摺動案内部と、該摺動案内部の管軸芯方向の両外側部位において周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体同士を固定連結する固定連結部と、が備えられてい
る管接続部の離脱防止構造。
【請求項5】
両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
前記嵌合接続部の存在側とは反対側に位置する前記第1継ぎ輪の外側端部に固定連結される第1連結部と、前記両管部の離脱移動に連れて一方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第1抜止部と、を備えた分割構造の第1固定手段が設けられ、さらに、前記嵌合接続部の存在側とは反対側に位置する前記第2継ぎ輪の外側端部に固定連結される第2連結部と、前記両管部の離脱移動に連れて他方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第2抜止部と、を備えた分割構造の第2固定手段が設けられてい
る管接続部の離脱防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の管接続部の離脱防止構造として、例えば、特許文献1に示す管取付け構造が存在する。この管取付け構造では、両管部の管接続部の一例で、一方の管部の挿口と他方の管部の受口との管接続部がK形のメカニカル継手から構成されている。このメカニカル継手は、挿口の外周面と受口のテーパー状の内周面との間にゴム輪等のシール材を装着し、このシール材を管軸芯方向から押圧可能な押圧部を備えた押輪のフランジ部と受口のフランジ部とをボルト・ナットで締め付け連結する。この締め付け連結により、受口のフランジ部に引き寄せ固定される押輪の押圧部でシール材が水密状態に圧縮され、その水密状態が維持される。
【0003】
また、管接続部であるメカニカル継手を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪は、受口よりも大径の円筒状の周壁部と、周壁部の管軸芯方向両端から径方向内方に一体的に延設される円環状の側壁部と、各側壁部の内径側端部から管軸芯方向に沿って外方に一体的に延設される管抱持部と、を主要構成として備えている。
継ぎ輪の両管抱持部の内周面には、両管部の外周面との間を密封するシール材が装着されたシール部が設けられている。
【0004】
離脱移動阻止手段は、継ぎ輪の受口側に位置する管抱持部の内径を、受口のテーパー部の最大外径よりも小径に形成し、挿口と受口との離脱時に、継ぎ輪の受口側の管抱持部が受口のテーパー部に管軸芯方向から当接して、それ以上の離脱移動を阻止するように構成されている。
【0005】
また、継ぎ輪内に位置する挿口の外周面には、当該外周面に食い込む係止部材を備えた分割構造の離脱規制部が挟持固定され、この離脱規制部の外径を、継ぎ輪の挿口側の管抱持部の内径よりも大径に形成し、挿口と受口との離脱時に、挿口に挟持固定されている離脱規制部が継ぎ輪の挿口側の管抱持部に管軸芯方向から当接して、それ以上の離脱移動を阻止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す管取付け構造では、継ぎ輪の両管抱持部が、一方の管部の挿口側の外周面と他方の管部の受口側の外周面とにわたって外装され、両管抱持部の内面に設けられたシール部のシール材が、管部の挿口側の外周面及び管部の受口側の外周面に摺動自在に接触することにより、継ぎ輪の両管抱持部の内周面と両管部の外周面との間を密封する。
しかし、継ぎ輪の両管抱持部が外装される両管部の外周面は、土中埋設による錆付きや土圧による変形等が発生している可能性が高い。そのため、継ぎ輪の装着時に、両管部の外周面を清掃し、継ぎ輪の両管抱持部の内周面に設けられているシール部の水圧試験を実施する対策が講じられている。しかし、このような対策を講じても、両管部の相対離脱移動に伴って、継ぎ輪の両管抱持部のシール材と両管部の外周面との密封位置が管軸芯方向に変動するため、変動した密封位置で両管部の外周面に変形等が生じていると、継ぎ輪の両管抱持部のシール部の周方向での密封性が局部的に低下し、その密封性が低下した部位から流体の漏洩が発生する不都合がある。
しかも、継ぎ輪の管軸芯方向での全長は、両管部の最大離脱移動量を見込んだ長さに設定されているため、工事完了後の所定期間経過後において継ぎ輪を点検しても、両管部の管継手部の離脱移動状態を推測することはできない。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、継ぎ輪の合理的な改造により、両管部の相対離脱移動に伴うシール部の密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができ、且つ、両管部の管継手部の離脱移動状態を外部から容易に推測することのできる管接続部の離脱防止構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
前記第1継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第1分割継ぎ輪体を備え、前記第2継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第2分割継ぎ輪体を備え、
内嵌側に配置される前記第1継ぎ輪には、外嵌側に配置される前記第2継ぎ輪の嵌合側部位を管軸芯方向に摺動案内する摺動案内部と、周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体同士を固定連結する固定連結部と、が備えられ、
外嵌側に配置される前記第2継ぎ輪には、前記嵌合側部位に形成されて前記第1継ぎ輪の前記摺動案内部に対して摺動自在に嵌合する嵌合包持部と、周方向で隣接する第2分割継ぎ輪体同士を固定連結する固定連結部と、が備えられ、
前記第1継ぎ輪の前記固定連結部が、前記摺動案内部には配置されず、前記摺動案内部の管軸芯方向の外側部位に配置され、
前記第2継ぎ輪の前記固定連結部が、前記嵌合側部位を含む管軸芯方向の略全域に配置されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、継ぎ輪を構成する一方の第1継ぎ輪は、一方の管部に外装固定し、他方の第2継ぎ輪は、他方の管部に外装固定する。両管部に外装固定された第1継ぎ輪と第2継ぎ輪とは、管軸芯方に摺動自在に嵌合接続される。これにより、両管部の管接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、両管部の離脱移動に連れて第1継ぎ輪と第2継ぎ輪とは、両管部の外周面に比して加工精度の高い嵌合接続部において円滑に摺動する。そのため、第1継ぎ輪と第2継ぎ輪との嵌合接続部での全移動範囲において、その嵌合接続部に設けられるシール部の周方向での密封性を一定又は略一定に維持することができる。
しかも、工事完了後の所定期間経過後において継ぎ輪を点検した際、第1継ぎ輪と第2継ぎ輪との嵌合接続状態から、両管部の管継手部の離脱移動状態を容易に推測することができる。
したがって、継ぎ輪を、上述の如く、摺動自在に嵌合接続される第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50とから構成するという合理的な改造により、継ぎ輪が外装される両管部の外周面の錆付きや変形等による影響を回避し、シール部の周方向での局部的な密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。しかも、第1継ぎ輪と第2継ぎ輪との嵌合接続状態から、両管部の管継手部の離脱移動状態を容易に推測することができるので、管路維持管理上の有用な情報として取得することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、前記両管部の離脱移動に連れて一方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第1抜止部にて抜止めされる状態で一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、前記両管部の離脱移動に連れて他方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第2抜止部にて抜止めされる状態で他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられている点にある。
また、前記離脱移動阻止手段は、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部に設けられていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、一方の管部に外装固定された第1継ぎ輪と他方の管部に外装固定された第2継ぎ輪とが管軸芯方に摺動自在に嵌合接続されているので、その嵌合接続部に離脱移動阻止手段を設けることにより、両管部の最大離脱位置において第1継ぎ輪と第2継ぎ輪との離脱移動を確実に阻止することができる。そのため、例えば、両管部の管接続部又はそれに取付けられている付属部品と継ぎ輪との間に離脱移動阻止手段を設ける場合のように、管接続部又は付属部品との当接状態を改善する対策を講じる必要が無く、離脱移動阻止手段の簡素化を図ることができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
内嵌側に配置される前記第1継ぎ輪の管軸芯方向の両端部には、一方の前記管部に外装固定される管抱持部が形成されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、第2継ぎ輪に対して内嵌側に配置される第1継ぎ輪は、それの管軸芯方向の両端部に形成されている管抱持部を介して一方の管部に両持ち状態で外装固定される。外嵌側に配置される第2継ぎ輪の管軸芯方向の両端部は、他方の管部と第1継ぎ輪とにわたって両持ち状態で外装支持される。
そのため、第1継ぎ輪の管軸芯方向の一端部のみに管抱持部が設けられ、第1継ぎ輪の管軸芯方向の他端部が自由端に構成されている場合に比較して、外力による第1継ぎ輪の分割接合面での押し開きを抑制することができ、継ぎ輪の分割接合面での密封性を適正に維持することができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
前記第1継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第1分割継ぎ輪体を備え、前記第2継ぎ輪は、周方向で複数に分割された第2分割継ぎ輪体を備え、さらに、内嵌側に配置される前記第1継ぎ輪には、外嵌側に配置される前記第2継ぎ輪の嵌合側部位を管軸芯方向に摺動案内する摺動案内部と、該摺動案内部の管軸芯方向の両外側部位において周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体同士を固定連結する固定連結部と、が備えられている点にある。
【0016】
上記構成によれば、第1継ぎ輪を構成する複数の第1分割継ぎ輪体は、摺動案内部における管軸芯方向の両外側部位に設けた固定連結部で固定連結されるので、外力による第1継ぎ輪の分割接合面での押し開きを抑制することができる。これにより、両管部の外周面に比して加工精度の高い第1継ぎ輪の摺動案内部に沿って第2継ぎ輪の嵌合側部位を密封状態でスムーズに摺動案内することができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、両管部の管接続部を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪が前記両管部に亘って外装され、前記両管部の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段が設けられている管接続部の離脱防止構造であって、
前記継ぎ輪は、一方の前記管部に外装固定される第1継ぎ輪と、他方の前記管部に外装固定される第2継ぎ輪と、を備え、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪とは、管軸芯方向に摺動自在に嵌合接続され、前記第1継ぎ輪と前記第2継ぎ輪との嵌合接続部を摺動自在に密封するシール部が設けられ、
前記嵌合接続部の存在側とは反対側に位置する前記第1継ぎ輪の外側端部に固定連結される第1連結部と、前記両管部の離脱移動に連れて一方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第1抜止部と、を備えた分割構造の第1固定手段が設けられ、さらに、前記嵌合接続部の存在側とは反対側に位置する前記第2継ぎ輪の外側端部に固定連結される第2連結部と、前記両管部の離脱移動に連れて他方の前記管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大する第2抜止部と、を備えた分割構造の第2固定手段が設けられている点にある。
【0018】
上記構成によれば、第1継ぎ輪の外側端部には、第1固定手段の第1連結部を固定連結し、第2継ぎ輪の外側端部には、第2固定手段の第2連結部を固定連結する。第1固定手段に設けられた第1抜止部と第2固定手段に設けられた第2抜止部により、両管部の管接続部に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、両管部の外周面との間での抜止め抵抗が増大し、第1継ぎ輪の外側端部は一方の管部に、第2継ぎ輪の外側端部は他方の管部にそれぞれ強固に固定保持される。そのため、両管部の離脱移動に連れて第1継ぎ輪と第2継ぎ輪とは嵌合接続部においてスムーズに摺動する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】管接続部の離脱防止構造の第1実施形態を示す分解状態の半断面側面図
【
図5】管接続部の離脱防止構造の第1実施形態の変形例を示す要部の断面図
【
図6】管接続部の離脱防止構造の第2実施形態を示す組付け時の要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1~
図4は、流体の輸送配管系統に用いられる管接続部の離脱防止構造を示す。この管接続部の離脱防止構造では、一方の管部の一例である流体管1の挿口1Aと他方の管部の一例である流体管2の受口2Aとが管接続部20で接続されている。この管接続部20を密封状態で囲繞する分割構造の継ぎ輪3は、両流体管1,2にわたって脱着可能に外装されている。
継ぎ輪3は、一方の流体管1に対して管径方向の外方から外装固定される金属製(例えば、鋳鉄製)の第1継ぎ輪30と、他方の流体管2に対して管径方向の外方から外装固定される金属製(例えば、鋳鉄製)の第2継ぎ輪50と、を備える。第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50とは、管軸芯方に沿って摺動状態で伸縮自在に嵌合接続されている。第2継ぎ輪50には、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50との嵌合接続部4を摺動自在に密封する第2シール部62が設けられている。
さらに、本実施形態の管接続部の離脱防止構造には、第1継ぎ輪30の管軸芯方向の一端部を一方の流体管1の挿口1A側に一体状態で固定する第1固定手段としての第1耐震補強金具7と、第2継ぎ輪50の管軸芯方向の一端部を他方の流体管1の受口2A側に一体状態で固定する第2固定手段としての第2耐震補強金具8と、両流体管1,2の一定以上(設定可動範囲以上)の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段9と、が備えられている。離脱移動阻止手段9は、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50との嵌合接続部4に設けられている。
【0021】
上述の管接続部の離脱防止構造では、管部として流体管1,2を例に挙げたが、管部としては従来から種々の形態のものが存在する。例えば、図示はしないが、流体管に密封状態で外装固定される分割構造の割T字管の分岐管部や流体管に一体的に突出形成された分岐管部、流体機材の一部を構成する管部等を挙げることができる。
さらに、本実施形態の流体管1,2は、流体の一例である上水を輸送するための水道管を構成するダクタイル鋳鉄管であるが、その他の鋳鉄管や鋼管等を使用することができ、流体としても、上水以外に工業用水やガス等を挙げることができる。
【0022】
一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの管接続部20は、
図1~
図4に示すように、K形のメカニカル継手から構成されている。このK形のメカニカル継手では、挿口1Aの外周面1aと受口2Aのテーパー状の内周面2aとの間に、ゴム輪等の第1シール部材21が装着されている。この第1シール部材21を管軸芯方向から押圧可能な押圧部22aを備えた分割構造の押輪22が挿口1Aに外装されている。押輪22のフランジ部22bと受口2Aのフランジ部2bとは、T頭ボルト23とナット24で管軸芯方向から締め付け連結されている。この締め付け連結により、受口2Aのフランジ部2bに引き寄せ固定される押輪22の押圧部22aで第1シール部材21が水密状態(密封状態)に圧縮され、その水密状態が維持される。
【0023】
継ぎ輪3の第1継ぎ輪30は、
図1、
図2に示すように、流体管2の受口2Aの付け根部相当位置までの範囲を囲繞する状態で流体管1の挿口1Aに外装自在な二分割構造の第1分割継ぎ輪体31を備えている。さらに、第1分割継ぎ輪体31の各々には、受口2Aのフランジ部2bよりも大径の半円筒状の第1分割周壁部32aと、第1分割周壁部32aの管軸芯方向の一端から径方向内方に一体的に延設される半円環状の第1分割側壁部33aと、第1分割側壁部33aの内径側端部から管軸芯方向に沿って外方に一体的に延設される半筒状の第1分割包持筒部34aと、が備えられている。
そして、両第1分割継ぎ輪体31の第1分割周壁部32aをもって、第1継ぎ輪30における円筒状の第1周壁部32が構成されている。また、両第1分割継ぎ輪体31の第1分割側壁部33aをもって、第1継ぎ輪30における円環状の第1側壁部33が構成されている。さらに、第1分割継ぎ輪体31の両第1分割包持筒部34aをもって、流体管1の挿口1Aに対して径方向外方から包持状態で装着される第1継ぎ輪30の第1管抱持部34が構成されている。
【0024】
両第1分割継ぎ輪体31の第1分割周壁部32aの管周方向両端部には、
図1、
図2に示すように、ボルト36・ナット37等の締結手段を介して互いに固定連結するための第1連結フランジ部35が一体形成されている。両第1分割継ぎ輪体31の第1分割接合面38は、
図1に示すように、第1分割周壁部32aの周方向両端側の直線状接合端面38aと、該直線状接合端面38aに直交する第1分割側壁部33aの直線状接合端面38bと、第1分割包持筒部34aの半円弧状接合面38cとから構成されている。
【0025】
第1分割周壁部32a側の両直線状接合端面38aと、第1分割側壁部33a側の直線状接合端面38bと、第1分割包持筒部34a側の半円弧状接合面38cとにわたる領域には、接合方向視において略コの字状に連続する状態で第1分割接合面38側に開口する第1ガスケット溝39が形成されている。両第1分割継ぎ輪体31の第1ガスケット溝39には、両第1分割継ぎ輪体31の第1分割接合面38の対向面間を水密状態に密封する第1ガスケット40が装着されている。両第1分割継ぎ輪体31の第1ガスケット溝39とそれに装着された両第1ガスケット40とをもって、嵌合接続部4を含む継ぎ輪3の内面と管接続部20を含む両流体管1,2の外周面1a,2cとの間に形成される囲繞空間42の一部を水密に密封する第1シール部41が構成されている。
【0026】
内嵌側に配置される第1継ぎ輪30の第1分割継ぎ輪体31の外周面のうち、離脱移動阻止手段9で規制される設定可動範囲となる領域は、外嵌側に配置される第2継ぎ輪50のうち、後述の嵌合側部位に形成される嵌合包持部55を管軸芯方向に摺動案内する摺動案内部44に構成されている。
また、摺動案内部44の管軸芯方向の外側部位において周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体31同士を固定連結する固定連結部45は、両第1分割継ぎ輪体31の管周方向両端部に位置する第1連結フランジ部35と、両第1連結フランジ部35を固定連結するボルト36・ナット37等の締結手段とから構成されている。
【0027】
継ぎ輪3の第2継ぎ輪50は、
図1~
図4に示すように、管接続部20の押輪22の配置相当位置までの範囲を囲繞する状態で流体管1の受口2A側に外装自在な二分割構造の第2分割継ぎ輪体51を備えている。さらに、第2分割継ぎ輪体51の各々には、第1継ぎ輪30の第1分割周壁部32aよりも大径の半円筒状の第2分割周壁部52aと、第2分割周壁部52aの管軸芯方向の一端から径方向内方に一体的に延設される半円環状の第2分割側壁部53aと、第2分割側壁部53aの内径側端部から管軸芯方向に沿って外方に一体的に延設される半筒状の第2分割包持筒部54aと、第2分割周壁部52aの管軸芯方向の他端部おいて、第1継ぎ輪30の第1周壁部32に摺動自在に外装される第2嵌合包持筒部55aと、が備えられている。
そして、両第2分割継ぎ輪体51の第2分割周壁部52aをもって、第2継ぎ輪50における円筒状の第2周壁部52が構成されている。両第2分割継ぎ輪体51の第2分割側壁部53aをもって、第2継ぎ輪5における円環状の第2側壁部53が構成されている。また、両第2分割継ぎ輪体51の第2分割包持筒部54aをもって、流体管2の受口2Aに対して径方向外方から包持状態で装着される第2継ぎ輪50の第2管抱持部54が構成されている。両第2分割継ぎ輪体51の第2嵌合包持筒部55aをもって、第1継ぎ輪30の第1周壁部32に対して摺動自在に嵌合する第2継ぎ輪50の嵌合包持部55が構成されている。
【0028】
両第2分割継ぎ輪体51の第2分割周壁部52aの管周方向両端部には、
図1、
図2に示すように、ボルト56・ナット57等の締結手段を介して互いに固定連結するための第2連結フランジ部58が一体形成されている。この両第2連結フランジ部58とボルト56・ナット57等の締結手段とをもって、周方向で隣接する両第2分割継ぎ輪体51同士を固定連結する固定連結部64が構成されている。
両第2分割継ぎ輪体51の第2分割接合面59は、
図1に示すように、第2分割周壁部52aの周方向両端側の直線状接合端面59aと、該直線状接合端面59aに直交する第2分割側壁部53aの直線状接合端面59bと、第2分割包持筒部54aの半円弧状接合面59cと、第2嵌合包持筒部55aの半円弧状接合面59dとから構成されている。
【0029】
第2分割周壁部52a側の両直線状接合端面59aと、第2分割側壁部53a側の直線状接合端面59bと、第2分割包持筒部54a側の半円弧状接合面59cと、第2嵌合包持筒部55a側の半円弧状接合面59dとにわたる領域には、接合方向視において環状に連続する状態で第2分割接合面59側に開口する第2ガスケット溝60が形成されている。両第2分割継ぎ輪体51の第2ガスケット溝60には、両第2分割継ぎ輪体51の第2分割接合面59の対向面間を水密状態に密封する第2ガスケット61が装着されている。
両第2分割継ぎ輪体51の第2ガスケット溝60とそれに装着された両第2ガスケット61とをもって、嵌合接続部4を含む継ぎ輪3の内面と管接続部20を含む両流体管1,2の外周面1a,2cとの間に形成される囲繞空間42の残部を水密に密封する第2シール部62が構成されている。
【0030】
第1耐震補強金具7は、
図1~
図4に示すように、管周方向で二分割され、且つ、一方の流体管1の挿口1Aに対して管径方向から脱着自在に挟持固定される一対の金属製の分割挟持部材70が備えられている。この一対の分割挟持部材70は、
図1、
図2に示すように、それの管周方向の両端部に設けられたフランジ部70A同士をボルト71・ナット72で締め付け連結することにより、流体管1の挿口1Aに強固に挟持固定される。
第1耐震補強金具7の両分割挟持部材70には、第1継ぎ輪30の第1管抱持部34の延長部位に固定連結される第1連結部73と、両流体管1,2の離脱移動に連れて流体管1の挿口1Aの外周面1aとの間での抜止め抵抗が増大する第1抜止部74と、を備える。
第1連結部73は、第1管抱持部34の両第1分割包持筒部34aの延長部位に形成された径方向外方に開口する環状の係合凹部46に対して管径方向外方側から係脱自在に係合される係合突起75を備える。係合突起75は、両分割挟持部材70の管周方向の複数個所から管軸芯方向に沿って一体的に突出形成されている。
第1耐震補強金具7を流体管1の挿口1Aに取付ける場合には、
図2~
図4に示すように、両分割挟持部材70の係合突起75を、第1継ぎ輪30側の係合凹部46に対して管径方向外方側から係合し、この状態で両分割挟持部材70のフランジ部70A同士をボルト71・ナット72で締め付け連結する。
【0031】
第1抜止部74は、
図3、
図4に示すように、両分割挟持部材70の内周面に形成された径方向内方に向かって開口する爪収納部76と、該爪収納部76内に管径方向内方に移動自在に収容される爪部材77とを備えている。爪部材77の内面には、挿口1Aの外周面1aに食い込み可能な管周方向に沿う複数列の先鋭なテーパー状の刃部が形成されている。
爪部材77の管径方向外方側の外面及びこれに対面する爪収納部76の天井面は、両分割挟持部材70の爪収納部76と、挿口1Aの外周面1aに食い込み状態にある爪部材77との管軸芯方向での相対離脱移動に伴って、爪部材77を径方向内方側に食い込み移動させる傾斜面に構成されている。
【0032】
第2耐震補強金具8は、
図1~
図4に示すように、管周方向で二分割され、且つ、他方の流体管2の受口2A側に対して管径方向から脱着自在に挟持固定される一対の金属製の分割挟持部材80が備えられている。この一対の分割挟持部材80は、
図1、
図2に示すように、それの管周方向の両端部に設けられたフランジ部80A同士をボルト81・ナット82で締め付け連結することにより、流体管2の受口2A側に強固に挟持固定される。
第2耐震補強金具8の両分割挟持部材80には、第2継ぎ輪50の第2管抱持部54の延長部位に固定連結される第2連結部83と、両流体管1,2の離脱移動に連れて流体管2の受口2A側の外周面2cとの間での抜止め抵抗が増大する第2抜止部84と、を備える。
【0033】
第2耐震補強金具8の第2連結部83は、第1耐震補強金具7の第1連結部73と同一構造であり、同一の構成箇所には、第1連結部73と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
また、第2耐震補強金具8の第2抜止部84も、第1耐震補強金具7の第1抜止部74と同一構造であり、同一の構成箇所には、第1抜止部74と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
尚、第2連結部83の係合突起75は、第2管抱持部54の両第2分割包持筒部54aの延長部位に形成された径方向外方に開口する環状の係合凹部66に対して管径方向外方側から係脱自在に係合される。
【0034】
離脱移動阻止手段9は、
図1~
図4に示すように、両第1分割継ぎ輪体31の第1分割周壁部32aの外周面の先端部に、両第2分割継ぎ輪体51の第2分割周壁部52aの内周面に向かって管径方向外方に突出する第1離脱阻止部90を形成する。
図3、
図4に示すように、両第2分割継ぎ輪体51の第2分割周壁部52aにおいて、第2ガスケット溝60を区画形成する区画壁部のうち、第1離脱阻止部90と管軸芯方向で相対向する一方の区画壁部を第2離脱阻止部91に構成する。
第1継ぎ輪30側の第1離脱阻止部90の外径は、第2継ぎ輪50側の第2離脱阻止部91の内径よりも大径に構成され、第1継ぎ輪30側の第1離脱阻止部90と第2継ぎ輪50側の第2離脱阻止部91とは管軸芯方向から当接可能に構成されている。
【0035】
一方の流体管1の挿口1Aと他方の流体管2の受口2Aとの管接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、第1耐震補強金具7で流体管1の挿口1A側に固定されている第1継ぎ輪30は、挿口1A側の流体管1と一体的に離脱移動する。第2耐震補強金具8で流体管2の受口2A側に固定されている第2継ぎ輪50は、受口2A側の流体管2と一体的に離脱移動する。そして、
図4に示すように、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50とが離脱移動阻止手段9で設定されている最大離脱位置に到達したとき、第1継ぎ輪30側の第1離脱阻止部90と第2継ぎ輪50側の第2離脱阻止部91とが管軸芯方向から当接し、それ以上の挿口1A側の流体管1と受口2A側の流体管2との離脱移動が強力に阻止される。
本実施形態では、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50とが最大離脱位置に到達したとき、一方の流体管1の挿口1Aの先端が他方の流体管2の受口2Aから少し抜け出した位置に設定されている。そのため、両流体管1,2の管接続部20から流体が漏洩するが、漏洩した流体は継ぎ輪3内に充満するだけで外部には流出しない。
【0036】
そして、両流体管1,2の管接続部20に地震や不同沈下等に起因する離脱力が作用したとき、両流体管1,2の離脱移動に連れて、外嵌側に配置される第2継ぎ輪50の嵌合側部位の嵌合包持部55は、内嵌側に配置される第1継ぎ輪30の第1周壁部32の外周面に形成される加工精度の高い摺動案内部44に沿って円滑に摺動する。これにより、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50との嵌合接続部4での全移動範囲において、その嵌合接続部4に設けられる第2シール部62の周方向での密封性を一定又は略一定に維持することができる。
しかも、工事完了後の所定期間経過後において継ぎ輪3を点検した際、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50との嵌合接続状態から、両流体管1,2の管接続部20の離脱移動状態を容易に推測することができる。
したがって、継ぎ輪3を、摺動自在に嵌合接続される第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50とから構成するといった合理的な改造により、継ぎ輪3が外装される両流体管1,2の外周面1a,2cの錆付きや変形等による影響を回避し、シール部の周方向での局部的な密封性低下に起因する流体の漏洩を抑制することができる。しかも、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50との嵌合接続状態から、両流体管1,2の管接続部20の離脱移動状態を容易に推測することができるので、管路維持管理上の有用な情報として取得することができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、内嵌側に配置される第1継ぎ輪30を一方の流体管1の挿口1A側に外装固定し、外嵌側に配置される第2継ぎ輪50を他方の流体管2の受口2A側に外装固定したが、
図5に示すように、内嵌側に配置される第1継ぎ輪30を他方の流体管2の受口2A側に外装固定し、外嵌側に配置される第2継ぎ輪50を一方の流体管1の挿口1A側に外装固定してもよい。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0038】
〔第3実施形態〕
図6、
図7は、上述の第1実施形態の第1継ぎ輪30の変形例を示す。この第1継ぎ輪30は、流体管1の挿口1Aに外装自在な二分割構造の第1分割継ぎ輪体31を備えている。両第1分割継ぎ輪体31の各々には、半円筒状の第1分割周壁部32aと、第1分割周壁部32aの管軸芯方向の両端から径方向内方に一体的に延設される半円環状の第1分割側壁部33aと、両第1分割側壁部33aの内径側端部から管軸芯方向に沿って外方に一体的に延設される半筒状の第1分割包持筒部34aと、が備えられている。
そして、両第1分割継ぎ輪体31の第1分割周壁部32aをもって、第1継ぎ輪30における円筒状の第1周壁部32が構成されている。また、両第1分割継ぎ輪体31の管軸芯方向両端の両第1分割側壁部33aをもって、第1継ぎ輪30の管軸芯方向両端側に位置する一対の円環状の第1側壁部33が構成されている。さらに、両第1分割継ぎ輪体31の管軸芯方向両端の両第1分割包持筒部34aをもって、流体管1の挿口1Aにおける管軸芯方向の二箇所に対して径方向外方から包持状態で外装可能で、且つ、第1継ぎ輪30管軸芯方向両端に位置する一対の第1管抱持部34が構成されている。
【0039】
両第1分割継ぎ輪体31の分割接合面の各々には、接合方向視において環状に連続する第1ガスケット溝39が形成され、この第1ガスケット溝39には、両第1分割継ぎ輪体31の分割接合面間を水密状態に密封する第1ガスケット40が装着されている。両第1分割継ぎ輪体31の第1ガスケット溝39とそれに装着された両第1ガスケット40とをもって、第1継ぎ輪30の内面と流体管1の挿口1Aの外周面1aとの間に形成される第1囲繞空間43を水密に密封する第1シール部41が構成されている。
【0040】
内嵌側に配置される第1継ぎ輪30の第1分割継ぎ輪体31の外周面のうち、離脱移動阻止手段9で規制される設定可動範囲となる領域は、外嵌側に配置される第2継ぎ輪50のうち、嵌合側部位に形成される嵌合包持部55を管軸芯方向に摺動案内する摺動案内部44に構成されている。
また、摺動案内部44の管軸芯方向の外側部位において、周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体31同士を固定連結する固定連結部45は、両第1分割継ぎ輪体31の管周方向両端部に位置する第1連結フランジ部35と、両第1連結フランジ部35を固定連結するボルト36・ナット37等の締結手段(
図2参照)とから構成されている。
【0041】
両第2分割継ぎ輪体51の分割接合面に形成される第2ガスケット溝60と、それに装着された両第2ガスケット61とをもって、第1継ぎ輪30の外面と第2継ぎ輪50の内面、及び、管接続部20を含む両流体管1,2の外周面1a,2cとの間に形成される第2囲繞空間47を水密に密封する第2シール部62が構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0042】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、両流体管1,2の一定以上の相対離脱移動を当接阻止する離脱移動阻止手段9を、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50との嵌合接続部4に設けたが、この離脱移動阻止手段9を、第1継ぎ輪30と管接続部20との間、又は、第2継ぎ輪50と管接続部20との間に設けてもよい。
また、離脱移動阻止手段9の一方を、流体管2の受口2Aにおいて径方向外方側に張り出す膨らみ部分を利用した離脱防止構造に構成してもよい。
【0043】
(2)上述の各実施形態では、第1継ぎ輪30と第2継ぎ輪50とが離脱移動阻止手段9で設定されている最大離脱位置に到達したとき、一方の流体管1の挿口1Aの先端が他方の流体管2の受口2Aから少し抜け出した位置に設定したが、離脱移動阻止手段9で設定されている最大離脱位置を、一方の流体管1の挿口1Aの先端が他方の流体管2の受口2Aから抜け出す前の適宜位置に設定してもよい。
【0044】
(3)上述の第1実施形態では、第1継ぎ輪30の周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体31同士を、摺動案内部44の管軸芯方向の一端側である外側端部位置において固定連結する固定連結部45を設けたが、第1継ぎ輪30の周方向で隣接する第1分割継ぎ輪体31同士を、第1分割周壁部32aの先端部側において固定連結する別の固定連結部を付加して実施してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 管部(流体管)
2 管部(流体管)
3 継ぎ輪
4 嵌合接続部
7 第1固定手段(第1耐震補強金具)
8 第2固定手段(第2耐震補強金具)
9 離脱移動阻止手段
20 管接続部
30 第1継ぎ輪
31 第1分割継ぎ輪体
34 管抱持部(第1管抱持部)
44 摺動案内部
45 固定連結部
50 第2継ぎ輪
51 第2分割継ぎ輪体
62 シール部(第2シール部)
64 固定連結部
73 第1連結部
74 第1抜止部
83 第2連結部
84 第2抜止部