(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】目視検査用の画像処理システム、及び、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20220124BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20220124BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
G06T1/00 300
G01C3/06 110A
G01N21/84 D
(21)【出願番号】P 2018093863
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝明
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】長沼 潤一郎
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133098(WO,A1)
【文献】特開2011-137753(JP,A)
【文献】特開平10-281759(JP,A)
【文献】特開2003-222598(JP,A)
【文献】藤井 めぐみ Megumi FUJII,光の減衰を考慮した水中画像の色合い補正 Color Registration of Underwater Images with Consideration of Light Attenuation,映像情報メディア学会技術報告 Vol.30 No.17 ITE Technical Report,日本,(社)映像情報メディア学会 The Institute of Image Information and Television Engineers,2006年04月03日,第30巻,pp.25-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G01C 3/06
G01N 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像機の撮像画像を色調補正する目視検査用の画像処理システムであって、
検査対象物を撮像した撮像画像を出力する撮像機と、
該撮像機の撮像範囲に光を照射する光源と、
前記撮像機と前記光源を前記検査対象物の近傍で略対向配置させたときの撮像画像に基づいて前記検査対象物の近傍での光減衰率を求める減衰率算出部と、
前記光減衰率と、前記撮像機と前記検査対象物の距離と、前記光源と前記検査対象物の距離と、光源強度と、前記検査対象物を撮像したときの撮像画像中の受光強度と、に基づいて、前記撮像画像中の前記検査対象物の各画素の色調減衰量を算出する色調減衰量算出部と、
該色調減衰量算出部が算出した各画素の色調減衰量に基づいて前記撮像画像中の前記検査対象物の各画素の色調を補正する色調補正部と、
を備えることを特徴とする目視検査用の画像処理システム。
【請求項2】
前記撮像機と前記検査対象物の距離を測定する撮像機位置測定器と、
前記光源と前記検査対象物の距離を測定する光源位置測定器と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の目視検査用の画像処理システム。
【請求項3】
前記撮像機と前記検査対象物の距離、および、前記光源と前記検査対象物の距離を、前記検査対象物を撮像した撮像画像に基づいて算出する距離算出処理部を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の目視検査用の画像処理システム。
【請求項4】
前記撮像機が前記距離算出処理部による距離算出に提供する撮像画像を撮像する際に、前記光源は、2つ以上の異なる光拡がり角度を持つ光分布パターンを照射することを特徴とする、請求項3に記載の目視検査用の画像処理システム。
【請求項5】
前記光源は、2つ以上の波長の光を切り替えて照射するものであり、
前記色調補正部は、波長毎の色調補正画像を合成するものであることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の目視検査用の画像処理システム。
【請求項6】
撮像画像を色調補正する目視検査用の画像処理方法であって、
撮像機と光源を検査対象物の近傍で略対向配置させたときの撮像画像に基づいて前記検査対象物の近傍での光減衰率を求め、
前記検査対象物に光を照射し、
前記検査対象物を撮像し、
前記光減衰率と、前記撮像機と前記検査対象物の距離と、前記光源と前記検査対象物の距離と、光源強度と、前記検査対象物を撮像したときの撮像画像中の受光強度と、に基づいて、前記撮像画像中の前記検査対象物の各画素の色調減衰量を算出し、
算出した各画素の色調減衰量に基づいて前記撮像画像中の前記検査対象物の各画素の色調を補正する、
ことを特徴とする目視検査用の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を目視検査する際に使用する画像を加工処理する画像処理装置、および、その画像処理装置で用いる画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋などの社会インフラ構造物や、発電プラントなどの建築物の健全性を検査する方法の一つとして目視検査がある。目視検査は、検査員が検査対象領域を、直接視認したり、カメラ等の撮像機が撮像した映像を間接的に視認したりして、欠陥の有無を判定するものである。検査対象領域が、高所や狭隘部分、または、液中や高温や高放射線環境等の過酷環境にあり、検査対象を直接視認することが難しい場合には、ドローン等の遠隔操作移動体に搭載した撮像機が撮像した映像を、離れた場所にいる検査員が液晶ディスプレイなどを介して間接的に視認することで目視検査を行うことが多い。
【0003】
このように、検査員が間接的な目視検査を行う場合は、欠陥判断しやすい視認性の高い映像を検査員に提供する必要があり、特に、検査対象領域の色調を正確に再現した映像を提供することが、欠陥の有無を適切に判断する上で重要である。例えば、検査対象領域の本来の色調に対し、特定の波長の光が減衰し撮像機に入射した場合は、映像においては特定の波長の光強度が弱く記録され、検査対象領域が本来の色調と異なる様子で液晶ディスプレイ等に表示されるため、検査員が欠陥の有無の判断を誤る可能性がある。
【0004】
このような問題を解決する技術として、例えば、特許文献1の提案がある。この文献の要約書には、「色についての知識をそれ程必要とせず、手間がかからずに色補正をして、正確な欠陥査が行える表面検査装置を提供する」ための手段として、「被検査物(半導体ウエハW)の表面に光を照射して被撮影画像を観察する表面検査装置であって、前記被撮影画像の色調特性を標準画像の色調特性に合わせて表示する表示部を備える」と記載されており、予め撮像した標準画像の色調特性を参照値として取得画像の色調を補正する装置について述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
社会インフラ構造物や建築物を目視検査する環境では、環境中の空間媒質の状態や撮像時の照明装置、撮像装置配置等の条件が大きく変動するため、撮像した映像の色調が大きく変動する可能性がある。しかしながら、特許文献1は、同文献の要約書の図面等からも明らかなように、照明、カメラ等の配置を固定した工場内のような環境下で半導体ウエハの表面を検査するものであり、標準画像を取得したある一定条件における色調補正方法は考慮されるが、条件変動に対応した大幅な色調補正までは考慮されていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、撮像条件の大きく変動しうる環境下で撮像した検査対象領域の映像を、検査員が目視検査により欠陥判定しやすい色調に補正する画像処理装置、および、画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の目視検査用の画像処理システムは、撮像機の撮像画像を色調補正するものであって、検査対象物を撮像した撮像画像を出力する撮像機と、該撮像機の撮像範囲に光を照射する光源と、前記撮像機と前記光源を前記検査対象物の近傍で略対向配置させたときの撮像画像に基づいて前記検査対象物の近傍での光減衰率を求める減衰率算出部と、前記光減衰率と、前記撮像機と前記検査対象物の距離と、前記光源と前記検査対象物の距離と、光源強度と、前記検査対象物を撮像したときの撮像画像中の受光強度と、に基づいて、前記撮像画像中の前記検査対象物の各画素の色調減衰量を算出する色調減衰量算出部と、該色調減衰量算出部が算出した各画素の色調減衰量に基づいて前記撮像画像中の前記検査対象物の各画素の色調を補正する色調補正部と、を備えるものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検査対象領域の映像が撮像条件の大きく変動しうる環境下で撮像された場合であっても、検査員が目視検査により欠陥判定しやすい色調に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施例1の画像処理方法を示すフローチャート。
【
図3】
図2の減衰率算出処理の詳細を示すフローチャート。
【
図4】実施例1の減衰率算出時の機器配置を示す斜視図。
【
図5】実施例1の減衰率算出時の機器配置を示す側面図。
【
図6】実施例1の減衰率算出時の撮像画像の一例を示した図。
【
図7】実施例1の色調減衰量算出時の機器配置を示す斜視図。
【
図9】実施例2の画像処理方法を示すフローチャート。
【
図10】実施例2の光源距離算出時の機器配置を示す斜視図。
【
図11】実施例2の光源距離算出時の機器配置を示す上面図。
【
図12】実施例2の光源距離算出時の撮像画像の一例を示した図。
【
図13】実施例2の光源距離算出時の撮像画像の一例を示した図。
【
図14】実施例2の撮像機距離算出時の機器配置を示す上面図。
【
図15】実施例2の撮像機距離算出時の撮像画像の一例を示した図。
【
図16】実施例2の撮像機距離算出時の機器配置を示す上面図。
【
図17】実施例2の撮像機距離算出時の撮像画像の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1から
図7を用いて、本発明の実施例1に係る画像処理システムおよび画像処理方法を説明する。
【0013】
図1は、実施例1の画像処理システムを検査対象領域1とともに示した概略図である。ここに示す検査対象領域1は検査員が目視検査を行う社会インフラ構造物や建築物の表面であり、また、本実施例の画像処理システムは、主に、検査対象物の検査対象領域1の一部を撮像範囲2aとする撮像機2と、検査対象領域1の一部を照射範囲3aとする光源3と、撮像機2の撮像画像2cを目視検査し易い色調に補正する画像処理装置4と、色調補正された補正画像2dを検査員に提供する表示装置5と、から構成されたものである。また、撮像機2には前方障害物までの距離を測定する撮像機位置測定器2bが取り付けられており、光源3にも前方障害物までの距離を測定する光源位置測定器3bが取り付けられている。これらの位置測定器は、例えばレーザー距離計であるが、前方障害物との距離を測定できるものであれば他種のセンサを用いても良い。
【0014】
撮像機2と光源3は、画像処理装置4の指令に従って検査対象領域1の近傍を自由に移動する遠隔操作移動体に搭載されている。この遠隔操作移動体は、例えば、検査対象領域1が高所にあればドローンであり、検査対象領域1が水中にあれば潜水艇である。以下では、別々の移動体に撮像機2と光源3を分けて搭載した構成を例に説明するが、一台の移動体が備える二本の可動アームの夫々に撮像機2と光源3を設置し、両可動アームを個々に制御することによって両者の配置を個別に制御できるようにしても良い。
【0015】
画像処理装置4は、撮像機2、撮像機位置測定器2b、光源位置測定器3bの出力信号を受信し、それらに基づいて撮像機2の撮像画像2cに本実施例の画像処理を施すものであり、その実現のため、減衰率算出部4a、記憶部4b、色調算出画像取得部4c、色調減衰量算出部4d、色調算出部4e、画像色調補正部4f、を有している。なお、画像処理装置4は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置(記憶部4b)、および、通信装置などのハードウェアを備えたパソコンなどの計算機であり、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、上述した各機能を実現するものであるが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
【0016】
次に、
図2から
図7を用いて、画像処理装置4で実行される画像処理の詳細を、各処理の実行主体を明らかにしながら説明する。
<減衰率算出部4aによるステップS2の処理>
図2は、本実施例の画像処理装置4で実施する画像処理方法のフローチャートである。目視検査用の画像処理を開始すると(ステップS1)、先ず、減衰率算出部4aは、色調補正を行うための基礎データである、距離あたりの光の減衰量(減衰率A)を算出し、算出した減衰率Aと光源強度を記憶部4bに記憶する(ステップS2)。
【0017】
図3は、ステップS2の詳細を説明するフローチャートである。減衰率算出部4aが減衰率算出処理(ステップS2)を開始すると、先ず、撮像機2を搭載した移動体と光源3を搭載した移動体を、減衰率Aを算出するための基準位置に移動させる(ステップS21)。そして、両移動体が基準位置に到達すると(ステップS22)、その位置での撮像機2の撮像画像2cを取得し(ステップS23)、光源3の光源強度(光源発光量L)も取得しておく(ステップS24)。そして、取得した光源強度(光源発光量L)、撮像画像2c中の光源3の明るさ(撮像機受光量B)、および、基準位置における撮像機2と光源3の距離Dに基づいて、距離あたりの光の減衰量(減衰率A)を算出する。
【0018】
次に、
図4から
図6を用いて、ステップS2における減衰率Aの算出方法をより詳細に説明する。
図4は、減衰率算出位置(基準位置)に到達した撮像機2と光源3が略対向しているステップS22時の状態を示す斜視図であり、このときの撮像機2と光源3の間隔を距離Dとしている。なお、減衰率Aを算出するステップS2は、検査対象領域1の撮像画像2cを目視検査し易い色調に補正するための基礎データを取得する処理であるため、ステップS22の減衰率算出位置(基準位置)は、検査対象領域1の近傍と同質の環境下である必要がある。ここで、「同質の環境」とは、例えば、検査対象領域1の近傍の空間媒質の種別(空気、真水、海水)、圧力、温度、媒質密度、粒子密度、粒子径、等の諸条件が略同質である環境であり、具体的には、検査対象領域1が濁った水中にある場合は、同程度に濁った水中の環境、より望ましくは、検査対象領域1の近傍の環境である。
【0019】
撮像機2と光源3が基準位置に到達すると、減衰率算出部4aは、両者間の距離Dを測定する。この測定は、撮像機位置測定器2bまたは光源位置測定器3bによって相方までの距離を距離Dとするものであっても良いし、減衰率算出部4aが規定距離を隔てるように撮像機2と光源3を搭載した各移動体に指令を出している場合は、その規定距離を距離Dとしても良い。また、撮像機2の撮像画像2cに基づいて距離Dを算出しても良い。
【0020】
ここで、
図5、
図6を用いて、撮像機2の撮像画像2cから距離Dを算出する方法を説明する。
図5は、基準位置に到達した撮像機2と光源3の側面図であり、図中のfは光源出射端における光束幅、θは光源の広がり角である。また、
図6は、基準位置における撮像機2の撮像画像2cと、その撮像画像2c中の光源入射領域3cを示す図であり、図中のRは光源入射領域3cの実空間における入射領域幅である。なお、
図5、
図6の例では、光源3の光束形状を円形としたが、光束幅f、広がり角θ、入射領域幅Rが求まる形状であれば他の光束形状であっても良く、例えば矩形であっても良い。
【0021】
このとき、距離Dは(式1)で表される。
【0022】
【0023】
また、減衰率算出部4aは、撮像画像2c中の光源入射領域3cに対応する画素領域の輝度値に基づいて撮像機受光量Bを算出する。そして、以上の処理により取得した、距離D、光源発光量L、撮像機受光量Bに基づいて、検査対象領域1の近傍と略同質の環境である基準位置における光の減衰率Aを求める。なお、減衰率Aは、(式2)で表される。
【0024】
【0025】
以上より、減衰率Aが求められ、減衰率データとして記憶部4bに記憶される。
<色調算出画像取得部4cによるステップS3~S6の処理>
ステップS2で減衰率Aと光源強度(光源発光量L)を取得すると、色調算出画像取得部4cは、撮像機2と光源3を搭載した両移動体に検査対象領域1の近傍への移動を指令する。そして、撮像機2が検査対象領域1を撮像できる位置に移動し、また、光源3が撮像範囲2aに光を照射できる位置に移動すると(ステップS4)、撮像機位置測定器2bと光源位置測定器3bを用いて、撮像機2から検査対象領域1までの距離D1と、光源3から検査対象領域1までの距離D2を測定するとともに(ステップS5)、撮像機2と光源3を制御して光が照射された検査対象領域1の画像を撮像する(ステップS6)。
<色調減衰量算出部4d等によるステップS7~S9の処理>
その後、色調減衰量算出部4dは、上述の処理により取得した、減衰率データ(減衰率A)、光源強度データ(光源発光量L)、距離データ(距離D1、距離D2)、撮像画像データ(撮像画像2c)を用いて、色調減衰量を算出し(ステップS7)、色調算出部4eでは、色調減衰率に基づいて色調情報を算出する(ステップS8)。さらに、画像色調補正部4fでは、色調情報を用いて撮像画像2cの色調を補正し、補正画像2dを生成する(ステップS9)。
【0026】
次に、
図7に示す状況を例に、ステップS7~S9の処理の詳細を説明する。ステップS6を終えた時点で、本実施例の画像処理装置4は、減衰率データ(減衰率A)、光源強度データ(光源発光量L)、距離データ(距離D
1、距離D
2)、撮像画像データ(撮像画像2c)を取得済みである。この場合、現在の撮像画像データ2cから求めた現在の撮像機受光量B’、および、既知の、光源発光光量L、距離D
1、D
2、減衰率Aに基づいて、検査対象表面の色調によって決まる、分光反射率特性による光量減衰量LDを算出することができる。検査対象表面の色調による光量減衰量LDは、撮像画像2cの画素ごとに計算され、(式3)で表される。
【0027】
【0028】
すなわち、光量減衰量LDは、光源強度(光源発光量L)と撮像機受光量(現在の撮像機受光量B’)の差から、更に、距離由来の減衰量(A・(D1+D2))を差し引いた値となる。検査対象表面の色調による光量減衰量LDは、検査対象表面の色調情報によって決まる分光反射特性により一意に決まるものであり、この値から、検査対象領域の表面の色調情報を算出する。以上の方法により、撮像画像2c中の検査対象領域表面の各画素について、各々本来の色調が算出される。なお、ここでは、特定の1波長の光による減衰率を求める方法について述べているが、複数の波長の光を切り替えて各々の減衰率を求め、次に示す撮像画像色調補正ステップS13において合成して補正しても良い。例えば、光の3原色である赤、緑、青に対応する3つの波長の光を切り替える光源3を備え、それぞれの減衰率AR、AG、ABを求めて合成することで、色調を補正した補正画像2dを得るものとしても良い。このとき、光の波長選択は、目的とする画像が得られるように複数波長で自由に選択することができ、また、可視波長範囲に限らない。また、光源の切替方法について、複数の波長が切り替えられる手段であれば良く、例えば複数の光源を用いても良いし、波長フィルタを用いて切り替えるなど、目的とする波長が切り替えられる手段であればこれに限らない。
【0029】
ステップS7~ステップS9が終了し、検査対象領域の一部の撮像および撮像画像2cの補正処理が完了すると、全領域検査完了判定ステップS14において、計画した全ての検査領域の撮像が完了したかどうかを判定する。そして、他にも検査対象領域が残っている場合は、再びステップS3に戻り、次の検査対象領域1の近傍まで撮像機2と光源3を移動させてから(ステップS3、S4)、当該の検査対象領域1での画像取得から色調補正までの処理を実行する。すべての検査対象領域1の撮像等が完了した場合は、ステップS11に進み、目視検査用の画像処理を終了する。
【0030】
以上の画像処理方法によって得られた補正画像2dは、画像処理装置4から表示装置5に送られ、欠陥判定に用いる検査画像として表示される。このようにして表示装置5に表示された補正画像2dは、検査対象領域1の撮像環境の相違に拘わらず、目視検査し易い色調に補正されているため、検査員は異なる環境下の検査対象領域1を目視検査する際も、安定した欠陥判定を実現することが可能となる。
【実施例2】
【0031】
次に、
図8から
図18を用いて、本発明の実施例2の画像処理システムおよび画像処理方法を説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略するものとする。
【0032】
実施例1の画像処理システムでは、撮像機位置測定器2bと光源位置測定器3bを利用して距離D1、D2を測定したが、本実施例では、これらの位置測定器を省略した代わりに、撮像画像2cを利用して距離D1、D2に相当する距離を算出するステップを設けたものである。
【0033】
図8は、本実施例の画像処理システムを検査対象構造物とともに示す概略図である。ここに示すように、本実施例の画像処理装置4は、実施例1の
図1と比較し、距離算出画像取得部4g、照明距離算出部4h、撮像距離算出部4i、光源切替部4jを追加したものである。
【0034】
また、
図9は、本実施例の画像処理方法のフローチャートである。この画像処理方法は、実施例1の
図2と比較し、位置測定器を利用して距離測定するステップS5に代え、撮像画像2cに基づいて距離を検出するための、距離算出画像取得ステップS5a、距離算出ステップS5b、光源切替ステップS5cを設けたものである。以下、
図10から
図17を用いながら、ステップ5a~5cの詳細を説明する。
<ステップS5a>
ステップS5aでは、先ず、距離算出画像取得部4gからの指令により、光源3から、
図10の斜視図に示す、二本の光束からなる構造化照明パターン3dを照射する。この構造化照明パターン3dは、
図11の上面図に示すように、一方が水平方向の光束幅LW
1の平行光であり、他方が水平方向の光束幅LW
2、広がり角θ
2の広がり光である。なお、ここでは、説明簡略化のため、構造化照明パターン3dの一方を平行光としたが、双方を広がり角の異なる広がり光としても良い。
【0035】
このような構造化照明パターン3dを用いる場合、撮像機2の撮像画像2cには、光源3と検査対象領域1の距離に応じて見え方が変化する構造化照明パターン3dが記録される。例えば、検査対象領域1が
図11の検査対象領域1
Aの位置にある場合、撮像機2の撮像画像2cには
図12に示す構造化照明パターン3dが撮像され、検査対象領域1が
図11の検査対象領域1
Bの位置にある場合、撮像機2の撮像画像2cには
図13に示す構造化照明パターン3dが撮像される。すなわち、一方の光束幅W
1は距離に拘わらず一定であるが、他方の光束幅W
2は距離に比例することが分かる。
<ステップS5b>
このような性質を利用して、ステップ5bでは、照明距離算出部4hは、撮像画像2cに基づいて、
図11に示す、光源3から検査対象領域1の中心位置までの距離D
3を、(式4)により算出する。なお、W
1、W
2は検査対象領域1に照射された各光束の実際の幅である。
【0036】
【0037】
これにより、光源3から検査対象領域1までの距離D
3を算出する。また、このときの構造化照明パターン3dの高さ方向の広がり角をθ
3とすると、
図11に示す光源3の配置角度φ
2は、(式5)により算出する。
【0038】
【0039】
次に、撮像距離算出部4iによる、撮像機2から検査対象領域1までの距離D
4の算出方法を、
図14から
図17を用いて説明する。
【0040】
図14の上面図に示すように、撮像機2が検査対象領域1と正対している場合、撮像機2からは
図15に示す撮像画像2cが得られる。このとき、撮像距離D
4は、撮像機焦点距離Fを用いて、(式6)により算出する。
【0041】
【0042】
また、
図16の上面図に示すように、撮像機2が検査対象領域1に対してφ
3の角度を持つ場合、撮像機2からは
図17に示す撮像画像2cが得られる。このとき、撮像距離D
4は、(式7)により算出し、φ
3は、(式8)により算出する。
【0043】
【0044】
【0045】
これにより、位置測定器を省略した構成であっても、撮像画像2cに基づいて、撮像機2から検査対象領域1までの距離D4、および、光源3から検査対象領域1までの距離D3を求めることができる。
<ステップS5c>
次に、ステップS5cについて説明する。ステップS5a以降で光源3が照射した構造化照明パターン3dは、撮像範囲2aの全体を照射するものではなく、検査用の画像を撮像するには適さないものである。そのため、光源切替部4jからの指令に従って、検査用の撮像画像2cを取得するステップS6の前に、光源3の照射パターンを撮像範囲2a全体を照射可能なものに切り替える。なお、切り替える照明パターンは、全撮像範囲を照射するように複数のパターンを切り替えても良く、例えば、構造化照明パターン3dにおいて照射されていない領域を補間するようなパターンを投影しても良い。その場合、構造化照明パターン3dの照射時に撮像した画像と、光源切替後に撮像した画像を、合成して撮像画像2cを生成しても良い。
【0046】
以上で説明した本実施例の構成によれば、位置測定器を省略した構成であっても、撮像画像2cに基づいて、撮像機2から検査対象領域1までの距離D4、および、光源3から検査対象領域1までの距離D3を求めることができ、これらを用いて、実施例1と同様に、目視検査による欠陥検出に適した色調補正を施した補正画像2dを生成することができ、検査員は表示装置を介して安定した欠陥判定を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 検査対象領域、
2 撮像機、
2a 撮像範囲、
2b 撮像機位置測定器、
2c 撮像画像、
2d 補正画像、
3 光源、
3a 照射範囲、
3b 光源位置測定器、
3c 光源入射領域、
3d 構造化照明パターン、
4 画像処理装置、
4a 減衰率算出部、
4b 記憶部、
4c 色調算出画像取得部、
4d 色調減衰量算出部、
4e 色調算出部、
4f 画像色調補正部、
4g 距離算出画像取得部、
4h 照明距離算出部、
4i 撮像距離算出部、
4j 光源切替部、
5 表示装置