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特許7013322二酸化炭素回収システムおよびその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20220124BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220124BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20220124BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20220124BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220124BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 220
C01B32/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018094919
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019198825
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】半田 優介
(72)【発明者】
【氏名】北村 英夫
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200774(JP,A)
【文献】特開2016-107203(JP,A)
【文献】特開2013-158685(JP,A)
【文献】特開2005-334806(JP,A)
【文献】特公昭41-004842(JP,B1)
【文献】特開2016-188161(JP,A)
【文献】特開平08-164323(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0035859(KR,A)
【文献】特開2008-302347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出設備から排出された処理対象ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収塔排出ガスとを排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記二酸化炭素を含む再生塔排出ガスとを排出する再生塔と、
前記吸収塔排出ガスを前記吸収塔に導入する第1流路に設けられた第1バルブと、
前記再生塔排出ガスを前記吸収塔に導入する第2流路に設けられた第2バルブと、
前記処理対象ガスを前記吸収塔に導入する第3流路に設けられた第3バルブと、
前記ガス排出設備に異常がある場合に前記第1および第2バルブが開になり前記第3バルブが閉になるように、かつ、前記ガス排出設備に異常がない場合に前記第1および第2バルブが閉になり前記第3バルブが開になるように、前記第1第2、および第3バルブを制御する制御部と、
を備える二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記ガス排出設備から出力された信号に基づいて、前記ガス排出設備に異常があると判定する、請求項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記処理対象ガスの物理量を測定する測定器を備え、
前記制御部は、前記測定器により測定された前記物理量に基づいて、前記ガス排出設備に異常があると判定する、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記吸収塔排出ガスおよび前記再生塔排出ガス以外のガスを前記吸収塔に導入する第4流路に設けられた第4バルブを備える、請求項1からのいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記第4流路は、前記ガスとして空気または二酸化炭素を前記吸収塔に導入する、請求項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
ガス排出設備から排出された処理対象ガス中の二酸化炭素を吸収塔内で吸収液に吸収させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収塔排出ガスとを、前記吸収塔から排出し、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から再生塔内で前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記二酸化炭素を含む再生塔排出ガスとを、前記再生塔から排出し、
前記ガス排出設備に異常がある場合に、前記吸収塔排出ガスを前記吸収塔に導入する第1流路に設けられた第1バルブと、前記再生塔排出ガスを前記吸収塔に導入する第2流路に設けられた第2バルブとが開になり、前記処理対象ガスを前記吸収塔に導入する第3流路に設けられた第3バルブが閉になるように、かつ、前記ガス排出設備に異常がない場合に、前記第1バルブと前記第2バルブとが閉になり、前記第3バルブが開になるように、前記第1第2、および第3バルブを制御する、
ことを含む二酸化炭素回収システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する有効な対策として、二酸化炭素回収貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)技術が注目されている。例えば、火力発電所、製鉄所、ごみ焼却所、製造設備などの排ガス排出設備から発生するプロセス排ガス(処理対象ガス)中の二酸化炭素を、吸収液により回収する二酸化炭素回収システムが検討されている。
排ガス排出設備にトラブルが発生した場合、排ガス排出設備から二酸化炭素回収システムへのプロセス排ガスの供給が急に遮断される場合がある。この場合、二酸化炭素回収システムも緊急停止すると、二酸化炭素回収システムの再復帰に時間がかかってしまう。
【0003】
そのため、二酸化炭素回収システムへのプロセス排ガスの供給が急に遮断されても、二酸化炭素回収システムは、安全な状態で稼働し続けることが望ましい。また、排ガス排出設備のトラブルが解消した後には、二酸化炭素回収システムは、速やかに通常の状態で稼働し始めることが望ましい。これは、プロセス排ガスの量や質が、供給の遮断以外の形で急に変化する場合(例えば供給量の急な増加や減少)でも同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-200774号公報
【文献】特開2015-104693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、ガス供給設備からの処理対象ガスの量や質が変化しても安全な状態で稼働し続けるなど、運用性を向上させた二酸化炭素回収システムおよびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、ガス排出設備から排出された処理対象ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収塔排出ガスとを排出する吸収塔を備える。前記システムはさらに、前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記二酸化炭素を含む再生塔排出ガスとを排出する再生塔を備える。前記システムはさらに、前記吸収塔排出ガスを前記吸収塔に導入する第1流路に設けられた第1バルブと、前記再生塔排出ガスを前記吸収塔に導入する第2流路に設けられた第2バルブとを備える。前記システムはさらに、前記ガス排出設備に異常がある場合に前記第1および第2バルブが開になるように、前記第1および第2バルブを制御する制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムの運用性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
図2】第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
図3】第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図3において、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システム1の構成を示す模式図である。
【0011】
二酸化炭素回収システム1は、吸収塔11と、リッチ液ポンプ12と、再生熱交換器13と、再生塔14と、リーン液ポンプ15と、冷却器16と、ブロワ17と、制御部18と、第1排出バルブ21と、第2排出バルブ22と、第3バルブの例であるプロセス排ガスバルブ23と、第1バルブの例である第1循環バルブ24と、第2バルブの例である第2循環バルブ25とを備えている。
【0012】
図1はさらに、第1排出流路L1と、第2排出流路L2と、第3流路の例であるプロセス排ガス流路L3と、第1流路の例である第1循環流路L4と、第2流路の例である第2循環流路L5とを示している。
【0013】
図1はさらに、二酸化炭素を含むプロセス排ガスを排出する排ガス排出設備2を示している。排ガス排出設備2から排出されたプロセス排ガスは、プロセス排ガス流路L3を介して二酸化炭素回収システム1の吸収塔11に供給される。プロセス排ガスは、処理対象ガスの一例である。排ガス排出設備2は、例えば発電プラント内のボイラや燃焼器であるが、その他の設備(製鉄所、ごみ焼却所、製造設備など)でもよい。
【0014】
吸収塔11は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。吸収塔11は、プロセス排ガス流路L3からプロセス排ガスを導入するためのガス導入口を下部に備え、吸収液(リーン液)を導入するための吸収液導入口を上部に備えている。ガス導入口から吸収塔11に導入されたプロセス排ガスは、吸収塔11内を上昇し、吸収液導入口から吸収塔11に導入された吸収液は、吸収塔11内を落下する。
【0015】
吸収塔11は、プロセス排ガスと吸収液とを気液接触させて、プロセス排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる。その結果、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が、吸収塔11の底部から排出される。また、二酸化炭素が除去されたプロセス排ガスを含む吸収塔排出ガスが、吸収塔11の頂部から第1排出流路L1に排出される。
【0016】
本実施形態の吸収塔11は、気液接触を効率よく進めるために、充填物またはトレイが1段以上配置された構造を有しているが、その他の構造を有していてもよい。
【0017】
吸収液の例は、1種類以上のアミンを含むアミン系水溶液である。アミンの例は、モノエタノールアミン(monoethanolamin)や、ジエタノールアミン(diethanolamin)などである。吸収液は、その他の液体(例えばアルカリ性水溶液)でもよい。
【0018】
吸収塔11から排出された吸収液は、リッチ液ポンプ12により、再生熱交換器13を介して再生塔14に移送される。この際、吸収塔11から再生塔14に向かう吸収液は、再生熱交換器13において、再生塔14から吸収塔11に向かう吸収液との熱交換により加熱される。
【0019】
再生塔14は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。再生塔14は、吸収塔11から移送された吸収液(リッチ液)を導入するための吸収液導入口を上部に備えている。再生塔14に導入された吸収液は、再生塔14内を落下する。
【0020】
再生塔14は、吸収液を加熱することにより、吸収液から大部分の二酸化炭素を蒸気と共に放散させて、吸収液から二酸化炭素を分離する。具体的には、再生塔14は、不図示のリボイラを備えており、リボイラに供給された高温蒸気と吸収液との熱交換により吸収液を加熱し、この熱によりさらに再生塔14内を落下する吸収液を加熱する。その結果、二酸化炭素を放散した吸収液(リーン液)が、再生塔14の底部から排出される。また、放散された二酸化炭素と蒸気とを含む再生塔排出ガスが、再生塔14の頂部から第2排出流路L2に排出される。
【0021】
本実施形態の再生塔14は、気液接触を効率よく進めるために、充填物またはトレイが1段以上配置された構造を有しているが、その他の構造を有していてもよい。例えば、再生塔14は、タンク内で吸収液を電気ヒータなどで加熱して二酸化炭素を吸収液から放散させるフラッシュドラム(フラッシュタンク)で構成されていてもよい。
【0022】
再生塔14から排出された吸収液は、リーン液ポンプ15により、再生熱交換器13と冷却器16とを介して吸収塔11に戻される。この際、再生塔14から吸収塔11に向かう吸収液は、再生熱交換器13において、吸収塔11から再生塔14に向かう吸収液との熱交換により冷却され、さらに冷却器16でも冷却される。再生塔14から吸収塔11に戻された吸収液は、前述の吸収液導入口から吸収塔11に導入される。
【0023】
ブロワ17は、プロセス排ガス流路L3に設けられており、プロセス排ガス流路L3内のプロセス排ガスを吸収塔11に移送する。ブロワ17により移送されたプロセス排ガスは、前述のガス導入口から吸収塔11に導入される。
【0024】
制御部18は、二酸化炭素回収システムの種々の動作を制御する。例えば、制御部18は、リッチ液ポンプ12とリーン液ポンプ15の動作や、第1排出バルブ21、第2排出バルブ22、プロセス排ガスバルブ23、第1循環バルブ24、および第2循環バルブ25の開閉などを制御する。制御部18の例は、プロセッサ、電気回路、コンピュータなどである。
【0025】
第1排出バルブ21は、第1排出流路L1に設けられている。吸収塔11から排出された吸収塔排出ガスは、第1排出バルブ21が開の場合には、第1排出流路L1を介して系外、すなわち、二酸化炭素回収システム1の外部に排出される。なお、第1排出流路L1は、吸収塔排出ガスをそのまま系外に排出してもよいし、吸収塔排出ガスを例えば化学的または物理的に処理し、処理後の吸収塔排出ガスを系外に排出してもよい。これは、第2排出流路L2の再生塔排出ガスについても同様である。
【0026】
第2排出バルブ22は、第2排出流路L2に設けられている。再生塔14から排出された再生塔排出ガスは、第2排出バルブ22が開の場合には、第2排出流路L2を介して系外に排出される。例えば、再生塔排出ガスは、第2排出バルブ22を通過して、冷却器により冷却された後、気液分離器に導入される。その結果、再生塔排出ガス中の蒸気が凝縮されて水に戻り、再生塔排出ガスが水と分離される。そして、水と除去された再生塔排出ガス、すなわち、二酸化炭素ガスが、第2排出流路L2を介して系外に排出される。この二酸化炭素ガスは例えば、系内または系外で圧縮ポンプにより超臨界状態や液体状態に転移され、タンク、ローリー、パイプラインなどにより保管または輸送される。なお、再生塔排出ガスは、使用目的に応じて別の方法で処理されてもよい。
【0027】
プロセス排ガスバルブ23は、プロセス排ガス流路L3に設けられている。排ガス排出設備2から排出されたプロセス排ガスは、プロセス排ガスバルブ23が開の場合には、プロセス排ガス流路L3を介して吸収塔11に供給される。
【0028】
第1循環バルブ24は、第1循環流路L4に設けられている。本実施形態の第1循環流路L4は、吸収塔11と第1排出バルブ21との間で第1排出流路L1から分岐し、プロセス排ガスバルブ23とブロワ17との間でプロセス排ガス流路L3に合流している。吸収塔11から排出された吸収塔排出ガスは、第1循環バルブ24が開の場合には、第1循環流路L4を介してプロセス排ガス流路L3に導入され、その結果、吸収塔11に導入される。
【0029】
第2循環バルブ25は、第2循環流路L5に設けられている。本実施形態の第2循環流路L5は、再生塔14と第2排出バルブ22との間で第2排出流路L2から分岐し、プロセス排ガスバルブ23とブロワ17との間でプロセス排ガス流路L3に合流している。再生塔14から排出された再生塔排出ガスは、第2循環バルブ25が開の場合には、第2循環流路L5を介してプロセス排ガス流路L3に導入され、その結果、吸収塔11に導入される。
【0030】
次に、制御部18による第1排出バルブ21、第2排出バルブ22、プロセス排ガスバルブ23、第1循環バルブ24、および第2循環バルブ25(以下「バルブ21~25」とも表記)の制御について説明する。
【0031】
本実施形態の制御部18は、排ガス排出設備2から出力された信号を受信し、この信号に基づいてバルブ21~25の開閉を制御する。排ガス排出設備2は例えば、排ガス排出設備2から二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの供給が遮断されるような異常が存在するか否かを示す異常信号を発信する。異常信号は例えば、排ガス排出設備2に異常がない場合には第1値(例えば高値)をとり、排ガス排出設備2に異常がある場合には第2値(例えば低値)をとる2値信号である。この場合、制御部18は、異常信号の値に基づいて排ガス排出設備2に異常があるか否かを判定し、この判定結果に基づいて例えば次のようにバルブ21~25の開閉を制御する。
【0032】
排ガス排出設備2に異常がない場合には、異常信号は第1値をとり、排ガス排出設備2から二酸化炭素回収システム1へとプロセス排ガスが供給される。この場合には、制御部18は、第1排出バルブ21、第2排出バルブ22、およびプロセス排ガスバルブ23を開に設定し、第1循環バルブ24と第2循環バルブ25を閉に設定する。
【0033】
よって、排ガス排出設備2に異常がない場合には、プロセス排ガスが、プロセス排ガス流路L3から吸収塔11に導入される。また、吸収塔排出ガスは、第1排出流路L1から系外に排出され、第1循環流路L4からプロセス排ガス流路L3には導入されない。同様に、再生塔排出ガスは、第2排出流路L2から系外に排出され、第2循環流路L5からプロセス排ガス流路L3には導入されない。
【0034】
一方、排ガス排出設備2に異常がある場合には、異常信号は第2値をとり、排ガス排出設備2から二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの供給が遮断される。この場合には、制御部18は、第1排出バルブ21、第2排出バルブ22、およびプロセス排ガスバルブ23を閉に設定し、第1循環バルブ24と第2循環バルブ25を開に設定する。
【0035】
よって、排ガス排出設備2に異常がある場合には、吸収塔11側のプロセス排ガス流路L3が、プロセス排ガスバルブ23により、排ガス排出設備2側のプロセス排ガス流路L3から遮断される。また、吸収塔排出ガスは、第1循環流路L4からプロセス排ガス流路L3に導入され、第1排出流路L1から系外には排出されない。同様に、再生塔排出ガスは、第2循環流路L5からプロセス排ガス流路L3に導入され、第2排出流路L2から系外には排出されない。その結果、吸収塔排出ガスと再生塔排出ガスが、プロセス排ガス流路L3から吸収塔11に導入される。
【0036】
このように、排ガス排出設備2に異常がある場合には、吸収塔11が吸収塔排出ガスを排出し、再生塔14が再生塔排出ガスを排出し、第1循環流路L4が吸収塔排出ガスを吸収塔11に戻し、第2循環流路L5が再生塔排出ガスを吸収塔11に戻す。これは、プロセス排ガス、二酸化炭素、および蒸気が、吸収塔排出ガスや再生塔排出ガスとして、二酸化炭素回収システム1内を循環することを意味する(クローズ運転)。よって、排ガス供給設備2から二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの供給が遮断されても、二酸化炭素回収システム1を稼働し続けることが可能となる。例えば、第1および第2循環流路L4、L5から吸収塔11に導入される吸収塔排出ガスおよび再生塔排出ガスは、排ガス排出設備2から吸収塔11に導入されるプロセス排ガスとの成分差が小さいため、本実施形態によれば二酸化炭素回収システム1を安全な状態で稼働し続けることができる。
【0037】
なお、異常信号は例えば、発電プラントのインターロック信号や、発電プラントの操作室からの出力信号とすることが可能である。また、制御部18は、排ガス排出設備2の状態を示す信号を排ガス排出設備2から受信し、この信号に基づいて排ガス排出設備2に異常があるか否かを判定し、この判定結果に基づいてバルブ21~25の開閉を制御してもよい。例えば、制御部18は、排ガス排出設備2内のプロセス排ガスの流量を示す信号を排ガス排出設備2から受信し、この流量が閾値以下になったら排ガス排出設備2に異常があると判定してもよい。異常があると判定した場合のバルブ21~25の制御や、異常がないと判定した場合のバルブ21~25の制御は、異常信号に基づくバルブ21~25の制御と同様に実行可能である。
【0038】
また、制御部18は、排ガス排出設備2に異常がある場合に、第1排出バルブ21、第2排出バルブ22、およびプロセス排ガスバルブ23を閉に設定し、かつ、第1循環バルブ24と第2循環バルブ25も低開度で開に設定してもよい。ただし、二酸化炭素回収システム1内を循環するプロセス排ガス、二酸化炭素、および蒸気が減少しないように、排ガス排出設備2に異常がある場合には第1循環バルブ24と第2循環バルブ25は閉に設定することが望ましい。
【0039】
また、本実施形態では、排ガス排出設備2から二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの量や質が、供給の遮断以外の形で変化することを、異常と取り扱ってもよい。例えば、排ガス排出設備2は、二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの供給量が閾値以下に低下する場合に、異常信号の値を第1値から第2値に変化させてもよい。また、本実施形態では、プロセス排ガスの流量の低下、圧力の低下、組成の変化、成分の変化などを、異常と取り扱ってもよい。
【0040】
また、第1循環流路L4は、プロセス排ガスバルブ23とブロワ17との間のプロセス排ガス流路L3に吸収塔排出ガスを導入しているが、ブロワ17と吸収塔11との間のプロセス排ガス流路L3に吸収塔排出ガスを導入してもよいし、吸収塔11に吸収塔排出ガスを直接導入してもよい。これは、第2循環流路L5でも同様である。
【0041】
また、バルブ21~25は、開閉および開度を調整できる調節弁でもよいし、開閉のみを調整できるピストン弁でもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態の制御部18は、排ガス排出設備2から二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの供給が遮断される場合に、プロセス排ガスバルブ23を閉に設定し、第1循環バルブ24および第2循環バルブ25を開に設定する。よって、本実施形態によれば、排ガス供給設備2から二酸化炭素回収システム1へのプロセス排ガスの供給が遮断されても、二酸化炭素回収システム1を安全な状態で稼働し続けることが可能となる。例えば、プロセス排ガスの供給が遮断されている間は、二酸化炭素回収システム1を通常の運転プロセス状態で運転しながら待機させることが可能となる。これは、プロセス排ガスの量や質が、供給の遮断以外の形で変化する場合にも同様である。本実施形態によれば、以上のような制御により、二酸化炭素回収システム1の運用性を向上させることが可能となる。
【0043】
なお、排ガス排出設備2に異常がある場合にプロセス排ガスバルブ23を閉に設定することには、例えば次のような作用がある。第1に、吸収塔排出ガスや再生塔排出ガスが、吸収塔11ではなく排ガス排出設備2に移送されるのを防止することができる。第2に、吸収塔11内のガスが、プロセス排ガス流路L3を介して排ガス排出設備2に流出するのを防止することができる。第3に、望ましくない流量、圧力、または組成のプロセス排ガスが、排ガス排出設備2から吸収塔11に流入するのを防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態の二酸化炭素回収システム1の構成を示す模式図である。
【0045】
図2の二酸化炭素回収システム1は、図1に示す構成要素に加えて、第4バルブの例である外部ガスバルブ26と、第4流路の例である外部ガス流路L6とを備えている。
【0046】
外部ガスバルブ26は、外部ガス流路L6に設けられており、制御部18により開閉が制御される。本実施形態の外部ガス流路L6は、プロセス排ガスバルブ23とブロワ17との間でプロセス排ガス流路L3に合流している。外部ガス流路L6は、吸収塔排出ガスや再生塔排出ガス以外のガス(以下「外部ガス」と呼ぶ)をプロセス排ガス流路L3に導入し、これにより、外部ガスを吸収塔11に導入する。外部ガスの例は、空気や、二酸化炭素を含むガスである。
【0047】
本実施形態の制御部18は、排ガス排出設備2から前述の異常信号を受信し、異常信号に基づいてバルブ21~26の開閉を制御する。例えば、異常信号が第2値をとる場合には、制御部18は、第1排出バルブ21、第2排出バルブ22、およびプロセス排ガスバルブ23を閉に設定し、第1循環バルブ24と第2循環バルブ25を開に設定する。その結果、吸収塔排出ガスと再生塔排出ガスがプロセス排ガス流路L3に導入される。
【0048】
この場合、異常信号が第2値から第1値に戻った時点やその直後に、吸収塔排出ガスと再生塔排出ガスがプロセス排ガス流路L3に導入されなくなる。しかし、ブロワ17はガス流量を一定に維持するよう動作するため、ブロワ17の上流のプロセス排ガス流路L3に負圧が生じたり、ブロワ17の負荷が増加したりする可能性がある。
【0049】
そこで、本実施形態の制御部18は、異常信号が第2値から第1値に戻った時点やその直後に、外部ガスバルブ26を開に設定し、外部ガス流路L6からプロセス排ガス流路L3に外部ガスを導入する。これにより、ブロワ17の上流のプロセス排ガス流路L3の圧力を正常な状態に戻すことや、ブロワ17の負荷が低減することが可能となる。
【0050】
ここで、外部ガスが二酸化炭素を含むガスの場合には、外部ガス中の二酸化炭素濃度をプロセス排ガス中の二酸化炭素濃度の定格値とほぼ等しくすることが望ましい。これにより、外部ガスが導入された場合の吸収塔11を、プロセス排ガスが導入された場合の吸収塔11と同様に動作させることが可能となる。例えば、外部ガス中の二酸化炭素濃度は、上記定格値の0.8~1.2倍に設定することが考えられる。この場合、このような二酸化炭素濃度の外部ガスが充填されたボンベから外部ガス流路L6に、外部ガスを供給してもよい。ただし、外部ガスの導入量は少量になることが多いと考えられるため、外部ガスは空気としてもよい。
【0051】
なお、外部ガス中の二酸化炭素濃度は、プロセス排ガス中の二酸化炭素濃度の測定値とほぼ等しくしてもよい。この場合、排ガス排出設備2からプロセス排ガス流路L3にプロセス排ガスが供給されている間に、プロセス排ガス流路L3を流れるプロセス排ガス中の二酸化炭素濃度を測定器により測定し、測定器から制御部18にこの濃度の測定値を出力する。制御部18は、外部ガス流路L6に供給する外部ガス中の二酸化炭素濃度を、この測定値に等しくなるように調整する。この調整は例えば、ボンベからのガスと空気とを所定の比で混合することで実現可能である。このような調整は、測定値ではなく定格値を使用する場合でも同様に実行可能である。
【0052】
また、外部ガスバルブ26は、開閉および開度を調整できる調節弁でもよいし、開閉のみを調整できるピストン弁でもよい。
【0053】
本実施形態によれば、吸収塔排出ガスや再生塔排出ガス以外のガスをプロセス排ガス流路L3に導入することで、バルブ21~25の開閉の切替による二酸化炭素回収システム1への影響を低減することが可能となる。
【0054】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態の二酸化炭素回収システム1の構成を示す模式図である。
【0055】
図3の二酸化炭素回収システム1は、図2に示す構成要素に加えて、測定器27を備えている。測定器27は、プロセス排ガス流路L3に設けられており、プロセス排ガス流路L3を流れるプロセス排ガスの物理量を測定し、物理量の測定結果を制御部18に出力する。このような物理量の例は、プロセス排ガス流路L3を流れるプロセス排ガスの流量、圧力、または組成である。プロセス排ガスの組成の例は、プロセス排ガス中の全部または一部の成分の濃度である(例えば二酸化炭素濃度)。
【0056】
第1および第2実施形態の制御部18は、排ガス排出設備2から出力された信号を受信し、この信号に基づいてバルブ21~26の開閉を制御する。一方、本実施形態の制御部18は、測定器27により測定された物理量を受信し、この物理量に基づいてバルブ21~26の開閉を制御する。本実施形態によれば、排ガス排出設備2から信号を受信せずにバルブ21~26の開閉を制御することが可能となる。
【0057】
例えば、制御部18は、測定器27により測定された流量が閾値より大きい場合には、排ガス排出設備2に異常がないと判定する。また、制御部18は、測定器27により測定された流量が閾値より小さい場合には、排ガス排出設備2に異常があると判定する。閾値の例は、プロセス排ガス流路L3を流れるプロセス排ガスの定格流量の0.5倍の値である。閾値を定格流量に近い値(例えば、定格流量の0.99倍)にしない理由は、排ガス排出設備2に異常があると判定される頻度を過剰にしないためである。0.5倍という値は、0から1のその他の適切な値に置き換えてもよい。異常があると判定した場合のバルブ21~26の制御や、異常がないと判定した場合のバルブ21~26の制御は、第1実施形態や第2実施形態の制御と同様に実行可能である。
【0058】
排ガス排出設備2で異常が発生すると、排ガス排出設備2から外部へのプロセス排ガスの排出量が減少して、プロセス排ガス流路L3内のプロセス排ガスの流量が低下する場合や、プロセス排ガス流路L3内のプロセス排ガスの圧力が低下する場合がある。これらの場合、測定器27として流量計や圧力計を使用すれば、測定器27の測定値から異常を検出することが可能となる。
【0059】
また、排ガス排出設備2で異常が発生すると、プロセス排ガス中の二酸化炭素濃度が低下する場合や、プロセス排ガス中の窒素酸化物濃度や硫黄酸化物濃度が上昇する場合がある。これらの場合、プロセス排ガスの組成を分析できる濃度計を測定器27として使用すれば、測定器27の測定値から異常を検出することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態の制御部18は、測定器27により測定された物理量と、排ガス排出設備2から出力された信号とに基づいて、バルブ21~26の開閉を制御してもよい。例えば、制御部18は、排ガス排出設備2から信号を受信できる場合には、排ガス排出設備2からの信号に基づいてバルブ21~26の開閉を制御し、排ガス排出設備2から信号を受信できない場合には、測定器27により測定された物理量に基づいてバルブ21~26の開閉を制御してもよい。
【0061】
また、制御部18は、複数の測定器27からの測定値に基づいて、バルブ21~26の開閉を制御してもよい。例えば、いずれか1つの測定器27の測定値が異常な場合に、排ガス排出設備2に異常があると判定してもよい。一方、N個の測定器27の測定値が異常な場合に、排ガス排出設備2に異常があると判定してもよい(Nは2以上の整数)。
【0062】
また、測定器27は、本実施形態では排ガス排出設備2とプロセス排ガスバルブ23との間でプロセス排ガス流路L3に設けられているが、プロセス排ガス流路L3のその他の位置に設けられていてもよい。
【0063】
本実施形態によれば、測定器27から制御部18に測定値を出力することで、排ガス排出設備2から信号を使用せずにバルブ21~26の開閉を制御することが可能となる。
【0064】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0065】
1:二酸化炭素回収システム、2:排ガス排出設備、
11:吸収塔、12:リッチ液ポンプ、13:再生熱交換器、14:再生塔、
15:リーン液ポンプ、16:冷却器、17:ブロワ、18:制御部、
21:第1排出バルブ、22:第2排出バルブ、23:プロセス排ガスバルブ、
24:第1循環バルブ、25:第2循環バルブ、26:外部ガスバルブ、27:測定器
図1
図2
図3