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特許7013324配線器具覆い具、及び配線器具覆い部材の設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】配線器具覆い具、及び配線器具覆い部材の設置構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/02 20060101AFI20220124BHJP
   H02G 3/12 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H02G3/02
H02G3/12 030
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018097387
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019205236
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0143687(US,A1)
【文献】特開2017-005778(JP,A)
【文献】特開2016-110952(JP,A)
【文献】特開平11-234859(JP,A)
【文献】特開2008-079494(JP,A)
【文献】特開2015-141870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/02
H02G 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁裏側に配置された壁裏側固定体に一対の固定ビスで固定されて壁表側に配線器具を臨ませる配線器具固定体と、壁表面と、の間で挟持される一対の被挟持部と、該一対の被挟持部どうしを連結する連結部と、を有する略コ字状の台座部材と、
前記台座部材に着脱自在に嵌合する嵌合部を有し、前記配線器具と前記配線器具固定体を化粧する化粧プレートとを覆い隠す覆い部材と、
からなる配線器具覆い具であって、
前記一対の被挟持部は、前記固定ビスを緩めた状態で前記配線器具固定体の裏面と前記壁表面との隙間に挿入可能に形成されているとともに、前記一対の被挟持部の間隔が前記一対の固定ビスの間隔より大きく形成されて、前記一対の固定ビスの並び方向の両外側にそれぞれ配置可能であり、
前記覆い部材は、前記化粧プレートの周囲を囲む周壁と、該周壁の一端側を繋ぎ前記配線器具と前記化粧プレートとを覆い隠す天壁と、を備え、一部の前記周壁の他端側の先端縁は、前記台座部材の連結部が配置可能に切欠かれているとともに、前記一部を除く周壁の先端縁は、前記壁表面と略接するように形成されていることを特徴とする配線器具覆い具。
【請求項2】
前記台座部材は、前記被挟持部に前記覆い部材の嵌合部が嵌合する被嵌合部を有し、
前記覆い部材の嵌合部は、前記被挟持部の延びる方向に前記覆い部材をスライド移動させることで前記被挟持部の被嵌合部に嵌合可能であることを特徴とする請求項1に記載の配線器具覆い具。
【請求項3】
前記覆い部材は、ケーブルを内外を貫通するように配置すべく、除去可能な閉塞部により閉塞された貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線器具覆い具。
【請求項4】
前記化粧プレートは、矩形状に形成され、前記配線器具固定体の前面に固定されるプレート枠と、該プレート枠に嵌着されるプレート本体と、からなり、
前記台座部材は、前記プレート枠の対向する二対の辺またはこのうちいずれか一対の辺の外側縁と当接する当接段部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の配線器具覆い具。
【請求項5】
壁孔に配置される配線器具を壁表側に臨ませる配線器具固定体が、壁裏側に配置された壁裏側固定体に一対の固定ビスで固定され、前記固定ビスを緩めた状態で前記配線器具固定体の裏面と壁表面との隙間に挿入可能な厚さに形成された一対の被挟持部を有する台座部材の該各被挟持部が、前記一対の固定ビスの並び方向における両外側にそれぞれ配置されて、前記配線器具固定体と前記壁表面との間で挟持され、前記配線器具固定体に、該配線器具固定体を化粧する化粧プレートが取着されており、前記配線器具及び前記化粧プレートを覆い隠す覆い部材が前記台座部材に取着され
前記覆い部材は、前記化粧プレートの周囲を囲む矩形状の周壁と、該周壁の一端側を繋ぎ前記配線器具及び前記化粧プレートを覆い隠す天壁と、を備え、一辺を除く他の辺の周壁における他端側の先端縁は、前記壁表面と略接するとともに、前記一辺の周壁は、前記化粧プレートの壁表側の突出長より大きく前記壁表面から後退しており、
前記台座部材は、前記化粧プレートの周囲の一辺に沿う立ち壁が設けられ、該立ち壁は、前記化粧プレートの壁表側の突出長より大きく突出形成され、他の対向する辺に、前記覆い部材がスライド移動により嵌合する被嵌合部が設けられていることを特徴とする配線器具覆い部材の設置構造。
【請求項6】
前記覆い部材は、前記台座部材に対して、前記壁表面に沿う方向へのスライド移動により着脱可能であり、前記覆い部材のスライド方向と前記配線器具からのケーブルの引出し方向とは同一であることを特徴とする請求項5に記載の配線器具覆い部材の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンセント等の配線器具を埃等の侵入防止などのために覆う配線器具覆い具、及び配線器具覆い部材の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンセント等の配線器具に埃等が侵入し蓄積するとトラッキング現象が発生する虞があり、また、小児がいたずらで配線器具に触れたりすると感電する虞があり危険であった。そこで、本件出願人は、特許文献1に記載の配線器具装置の隠ぺい装置を提案している。
【0003】
この配線器具装置の隠ぺい装置を、図8の概略断面図で示すと、まず、配線器具装置30は、図8(a)に示すように、壁裏に配置される配線ボックスからなる壁裏側固定体33と、壁裏の電線が接続されて壁孔40から壁表に露出する配線器具31と、その配線器具31を保持して壁表面42に対向するとともに壁裏側固定体33にビス止めされる器具保持枠からなる配線器具固定体32と、配線器具31が壁表に露出するようにして配線器具固定体32及び壁孔40を覆う化粧プレート35とを備えている。
次に、隠ぺい装置60は、図8(b)に示すように、壁表面42と配線器具固定体32との間に配置される背面板61aを有する基台61と、基台61に組み付けられてもしくは備えられて、配線器具装置30の壁表側を覆い隠すカバー体62とを備えている。
【0004】
この隠ぺい装置60は、基台61における背面板61aは、壁表面42と配線器具固定体32との間に配置され、配線器具固定体32が壁裏側固定体33にビス止めされると、背面板61aは配線器具固定体32によって壁表面42に押し付けられることとなり、壁に安定して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-5778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の隠ぺい装置60は、既設の配線器具装置30に取り付けるには、図8(b)に示すように、配線器具固定体32を壁裏の壁裏側固定体33に固定する固定ビス34を一旦壁裏側固定体33から完全に取り外してから隠ぺい装置60の基台61を配線器具固定体32と壁表面42との間に挿入し、再度固定ビス34を最初から壁裏側固定体33のビス孔に螺着して取り付ける必要があった。このため、隠ぺい装置60の取り付けに手間がかかり、面倒な作業となっていた。そして、隠ぺい装置60の基台61を取り付けるためにこのような固定ビス34の取り外し及び取り付け作業を行なうことは、誤って感電する虞も生じ得る。
【0007】
そこで、本発明は、配線器具固定体を壁裏側固定体に固定するための固定ビスを壁裏側固定体から取り外すことなく配線器具装置に効率良く安全に設置することのできる配線器具覆い具、及び配線器具覆い部材の設置構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の配線器具覆い具は、壁裏側に配置された壁裏側固定体に一対の固定ビスで固定されて壁表側に配線器具を臨ませる配線器具固定体と、壁表面と、の間で挟持される一対の被挟持部と、該一対の被挟持部どうしを連結する連結部と、を有する略コ字状の台座部材と、
前記台座部材に着脱自在に嵌合する嵌合部を有し、前記配線器具及び前記配線器具固定体を化粧する化粧プレートを覆い隠す覆い部材と、
からなるものであって、
前記一対の被挟持部は、前記固定ビスを緩めた状態で前記配線器具固定体の裏面と前記壁表面との隙間に挿入可能に形成されているとともに、前記一対の被挟持部の間隔が前記一対の固定ビスの間隔より大きく形成されて、前記一対の固定ビスの並び方向の両外側にそれぞれ配置可能なものであり、
前記覆い部材は、前記化粧プレートの周囲を囲む周壁と、該周壁の一端側を繋ぎ前記配線器具と前記化粧プレートとを覆い隠す天壁と、を備え、一部の前記周壁の他端側の先端縁は、前記台座部材の連結部が配置可能に切欠かれているとともに、前記一部を除く周壁の先端縁は、前記壁表面と略接するように形成されたものである。
【0009】
請求項2の配線器具覆い具は、特に、台座部材が、前記被挟持部に前記覆い部材の嵌合部が嵌合する被嵌合部を有し、覆い部材の嵌合部は、前記被挟持部の延びる方向に前記覆い部材をスライド移動させることで前記被挟持部の被嵌合部に嵌合可能なものである。
請求項3の配線器具覆い具は、覆い部材が、前記ケーブルを内外を貫通するように配置すべく、除去可能な閉塞部により閉塞された貫通孔が設けられたものである
請求項4の配線器具覆い具は、化粧プレートが、矩形状に形成され、前記配線器具固定体の前面に固定されるプレート枠と、該プレート枠に嵌着されるプレート本体と、からなり、台座部材が、前記プレート枠の対向する二対の辺またはこのうちいずれか一対の辺の外側縁と当接する当接段部を有するものである。
【0010】
請求項5の配線器具覆い部材の設置構造は、壁孔に配置される配線器具を壁表側に臨ませる配線器具固定体が、壁裏側に配置された壁裏側固定体に一対の固定ビスで壁裏側に付勢固定され、前記固定ビスを緩めた状態で前記配線器具固定体の裏面と前記壁表面との隙間に挿入可能な厚さに形成された一対の被挟持部を有する台座部材の該各被挟持部が、前記一対の固定ビスの並び方向における両外側にそれぞれ配置されて、前記配線器具固定体と壁表面との間で挟持され、前記配線器具固定体に、該配線器具固定体を化粧する化粧プレートが取着されており、前記配線器具及び前記化粧プレートを覆い隠す覆い部材が前記台座部材に取着されたものである。
【0011】
また、請求項5の配線器具覆い部材の設置構造は、覆い部材が、前記化粧プレートの周囲を囲む矩形状の周壁と、該周壁の一端側を繋ぎ前記配線器具及び前記化粧プレートを覆い隠す天壁と、を備え、一辺を除く他の辺の周壁における他端側の先端縁は、前記壁表面と略接するとともに、前記周壁の一辺は、前記化粧プレートの壁表側の突出長より大きく前記壁表面から後退しており、
台座部材は、前記化粧プレートの周囲の一辺に沿う立ち壁が設けられ、該立ち壁は、前記化粧プレートの壁表側の突出長より大きく突出形成され、他の対向する辺に、前記覆い部材がスライド移動により嵌合する被嵌合部が設けられている。
請求項6の配線器具覆い部材の設置構造は、覆い部材が、前記台座部材に対して、前記壁表面に沿う方向へのスライド移動により着脱可能であり、前記覆い部材のスライド方向と前記配線器具からのケーブルの引出し方向とは同一のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、台座部材の一対の被挟持部が、固定ビスを緩めた状態で配線器具固定体の裏面と壁表面との隙間に挿入可能に形成されているとともに、一対の被挟持部の間隔は一対の固定ビスの間隔より大きく形成されて、一対の固定ビスの並び方向の両外側に一対の被挟持部をそれぞれ配置可能である。したがって、固定ビスを壁裏側固定体から取り外すことなく配線器具覆い具を配線器具固定体の裏面と壁表面との間に挿入し設置することができ、その設置作業を効率良く安全に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の配線器具覆い具を示し、(a)は分解斜視図、(b)は台座部材と覆い部材とを組み付けた状態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の配線器具覆い部材の設置構造を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態の配線器具覆い部材の設置構造の断面図である。
図4図1の配線器具覆い具を設置する手順を示す説明図である。
図5】同じく、図1の配線器具覆い具を設置する手順を示す説明図である。
図6】同じく、図1の配線器具覆い具を設置する手順を示す説明図である。
図7】ケーブルが水平方向に引き出された配線器具装置に覆い具を取り付ける状態を示す斜視図である。
図8】従来の配線器具覆い具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の配線器具覆い具、及び配線器具覆い部材の設置構造を図に基づいて説明する。
配線器具覆い具は、室内の壁孔に配線器具を設置した配線器具装置に取り付けられて配線器具等の壁表側を覆うものである。ここで、配線器具としては、コンセントやスイッチ等が挙げられる。
【0015】
前記配線器具覆い部材の設置構造は、室内の壁孔に配置される配線器具を壁表側に臨ませる配線器具固定体が、壁裏側に配置された壁裏側固定体に一対の固定ビスで固定され、配線器具固定体には、配線器具固定体を化粧する化粧プレートが取着され、更に、配線器具及び化粧プレートは配線器具覆い具によって覆い隠されたものである。以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0016】
図1乃至図3は、配線器具覆い具1を示し、図2及び図3は、配線器具覆い部材の設置構造2を示す。図2では、各構成部材は左上から右下の順に組み重ねられている。このうち、まず、配線器具覆い部材の設置構造2において配線器具覆い具1が取り付けられる配線器具装置30は、配線器具31を壁表側に臨ませる配線器具固定体32が壁孔40の前方に配置されている。本実施形態において、配線器具固定体32は、配線器具31を取り付ける矩形枠状の配線器具取付枠からなる。なお、配線器具固定体32は、配線器具取付枠とコンセント等の配線器具31とが一体化したものも含まれる。配線器具固定体32の上下両端部の幅方向中央部には一対の長孔からなる挿通孔32a,32aが設けられている。
【0017】
一方、壁裏側には、配線ボックス等からなる壁裏側固定体33が配置されており、壁裏側固定体33の壁裏側の面積は壁孔40より大きく、壁裏側固定体33の外周端部は壁裏面41に当接可能となっている。配線器具固定体32は、固定ビス34が上下一対の挿通孔32a,32aそれぞれに挿通され、壁孔40を貫通した後、壁裏側固定体33である配線ボックスのボス孔等に螺着されることにより、壁裏側に付勢されて固定されている。
【0018】
配線器具固定体32の前面側にはこれを覆い隠す化粧プレート35が取り付けられている。化粧プレート35は、合成樹脂等で矩形状に形成され、配線器具固定体32の前面に固定されるプレート枠36と、プレート枠36に嵌着されるプレート本体37と、からなる。プレート枠36は、矩形枠板状に形成され、上下一対の取付ビス38が配線器具固定体32の上下一対の固定ビス34,34の両外側においてビス止めされることにより配線器具固定体32に固定されている。プレート本体37は、中央部に配線器具31が室内側に臨む四角孔からなる臨み孔37aが形成され、周縁部がプレート枠36の周縁に嵌合することによりプレート枠36に取り付けられている。
【0019】
一方、このように構成されている配線器具装置30に取り付けられる配線器具覆い具1は、図1及び図2に示すように、台座部材10と、配線器具31及び化粧プレート35を覆い隠す覆い部材20と、からなり、台座部材10が配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との間で挟持され、台座部材10に覆い部材20が嵌合により着脱自在に取着される構成となっている。
【0020】
台座部材10は、略コ字板状をなし、合成樹脂等で形成され、配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との間で挟持され一定幅の水平方向に延びた上下一対の被挟持部11,11と、一対の被挟持部11,11の一側の端部どうしを連結する一定幅の上下方向に延びた連結部12と、を有する。図4(c)、(d)に示すように、上下一対の被挟持部11,11の内寸である間隔L1は、配線器具固定体32の上下一対の固定ビス34,34の外寸である間隔L2より大きく形成され、一対の固定ビス34,34の並び方向の両外側にそれぞれ配置可能となっている。すなわち、被挟持部11は固定ビス34の外側に配置されることになり、固定ビス34は被挟持部11を貫通しない。被挟持部11は、固定ビス34を緩めた状態で配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との隙間に挿入可能な厚さに形成されている。
【0021】
更に、台座部材10は、連結部12の端縁すなわち図1の左側辺に、化粧プレート35の周囲の一辺に沿う立ち壁13が立設されており、立ち壁13は、化粧プレート35の壁表側の突出長より大きく突出している。また、台座部材10は、他の対向する辺すなわち図1の上下一対の被挟持部11,11の端縁に壁表側に突出する縦壁14が設けられ、縦壁14は立ち壁13と同一高さに設定されている。更に、両被挟持部11の先端には、所定高さの段差で突出する突部11aが被挟持部11の幅方向に形成されている。突部11aの高さは立ち壁13及び縦壁14より小さく設定されている。これは、固定ビス34を緩めることにより生じる配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との隙間に被挟持部11を挿入する際、突部11aが高いとその分固定ビスを緩める量が増えるため、所定高さに抑えたからである。
【0022】
上下の各縦壁14には、覆い部材20の後述する嵌合部23がスライド移動により嵌合する被嵌合部15が設けられている。被嵌合部15は、より詳細には、覆い部材20の嵌合部23が壁表側から水平方向に挿入される挿入口15aが縦壁14の延びる方向に間隔をおいて2つ形成されているとともに、各挿入口15aの奥側には壁表面42との間で溝を形成し覆い部材20の嵌合部23を被挟持部11の延びる方向にスライド移動可能なスライド溝15bが形成されて成る。なお、スライド溝15bの底面の一部には台座部材10に覆い部材20が取着されたときの保持力を高めるため、小さい山形の突起が設けられている。
【0023】
ここで、上下一対の辺に設けられた縦壁14は、化粧プレート35のプレート枠36の対向する上下一対の辺の外側縁36aと当接し、これにより、プレート枠36に対する台座部材10の上下方向の移動が規制されている。また、連結部12に設けられた立ち壁13及び被挟持部11の突部11aは、プレート枠36の対向する左右一対の辺の外側縁36aと当接し、これにより、プレート枠36に対する台座部材10の左右方向の移動が規制されている。これらの縦壁14、立ち壁13及び突部11aは、プレート枠36の外側縁36aと当接する当接段部16を形成している。これらの当接段部16により、台座部材10はプレート枠36に対して一定位置に保持される。また、台座部材10へのプレート枠36の組み付け収容を円滑に行なうことができる。なお、当接段部16は、縦壁14、立ち壁13及び突部11aに形成されているが、これらのいずれかのみに形成してもよい。
【0024】
一方、覆い部材20は、合成樹脂等で形成され、化粧プレート35の周囲を囲む大きさの形状の周壁21と、周壁21の一端側を繋ぎ配線器具31及び化粧プレート35を覆い隠す天壁22と、を備え、図1の右側の一辺を除く他の三辺の周壁21における他端側の先端縁21aは、壁表面42と略接するように形成されている。また、図1の右側の一辺の周壁21は、化粧プレート35の壁表側の突出長より大きい、壁表面42から切欠高さHだけ後退するよう形成されている、すなわち、各周壁21の他端側の先端縁21aの一部である右側の一辺の周壁21は、台座部材10の連結部12を配置可能とすべく切欠高さHだけ切欠かれている。
【0025】
更に、覆い部材20の上下一対の周壁21,21の先端縁部の内面には、内部空間側に突出して台座部材10の被挟持部11の被嵌合部15に着脱自在に嵌合可能な角柱状突起からなる嵌合部23が上下に2個ずつ設けられている。この構成により、覆い部材20は、嵌合部23を台座部材10の被嵌合部15の挿入口15aから挿入した後、被挟持部11の延びる方向にスライド移動させることで、台座部材10に対して着脱可能となっている。加えて、覆い部材20は、配線器具31に接続されたケーブル50を内外を貫通するように配置すべく、図1における上下面及び左側面の周壁21の中間部分に、除去可能な閉塞部により閉塞された貫通孔24が設けられている。本実施形態においては、下面の周壁21の一部の薄バリ部分をニッパ等の工具を用いて切除、切り欠くことにより貫通孔24が形成されている。この場合、切り欠かれる周壁21の薄バリ部分は、除去可能な閉塞部となる。なお、貫通孔24は、ノックの打ち抜きや、着脱自在な閉塞蓋の取り外しなどによって形成してもよい。
【0026】
次に、上記のように構成された配線器具覆い具1を壁孔40に配置されている配線器具装置30に設置する手順を図4乃至図6に基づいて説明する。ここで、図4乃至図6において、配線器具装置30は、配線器具31であるコンセントにプラグ51が差し込まれ、ケーブル50は下方に引き出されている。
【0027】
まず、図4(a)に示すように、壁孔40に配線器具装置30が配置されている状態において、プラグ51及びプレート本体37を取り外す。なお、化粧プレート35がプレート枠36とプレート本体37とが一体に形成されて成る場合は、これらを一体として取り外す。次いで、ドライバ等の工具を使用して配線器具固定体32と壁裏側固定体33とに取り付けられている固定ビス34を僅かに緩めて、配線器具固定体32及び配線器具31をプレート枠36とともに壁表面42から所定距離浮かし、図4(b)に示すように、配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との間に隙間を形成する。この隙間は、台座部材10の被挟持部11の板厚より僅かに大きい。
【0028】
次に、図4(c)に示すように、配線器具固定体32及び化粧プレート35のプレート枠36の左方向から台座部材10を壁表面42に沿って右方向にスライド移動させてこれを配線器具固定体32と壁表面42との隙間に挿入する。そして、固定ビス34を再度締め付ければ、図4(d)に示すように、被挟持部11は、配線器具固定体32と壁表面42とで挟持され、配線器具装置30に台座部材10が固定される。このとき、台座部材10は、図5(e)に示すように、プレート枠36の上下一対の辺の外側縁36aが、台座部材10の上下一対の縦壁14の当接段部16に当接するようにして、また、プレート枠36の左右一対の辺の外側縁36aが、台座部材10の立ち壁13の当接段部16及び被挟持部11の突部11aの当接段部16に当接するようにして、前記隙間に取り付ける。これにより、台座部材10とプレート枠36とは相対的に一定位置に保持される。続いて、図5(f)に示すように、プレート本体37を前方からプレート枠36の前面に押し当て、プレート枠36に嵌着することにより、化粧プレート35を取り付ける。そして、図5(g)に示すように、配線器具31にプラグ51を差し込み、ケーブル50を接続する。
【0029】
次に、覆い部材20の下面の周壁21の薄バリ部分を工具で切除し、ケーブル50が内外を貫通する貫通孔24を形成する。そして、図6(h)に示すように、覆い部材20の周壁21の貫通孔24からケーブル50を引き出しつつ、覆い部材20を台座部材10に取り付ける。このとき、覆い部材20は、図6(i)に示すように、台座部材10に対してそのコ字状の開口側である右側に所定距離ずらした位置で台座部材10に押し当て、それによって嵌合部23を台座部材10の被嵌合部15の挿入口15aに挿入してから、覆い部材20を壁表面42に沿って左方向にスライド移動させて被嵌合部15のスライド溝15b内に嵌合させる。
【0030】
このとき、台座部材10は、配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42とで挟持されてはいるものの、取付時に台座部材11に対して覆い部材20を左方向にスライド移動させる際に、覆い部材20とともに移動してしまって覆い部材20を取り付けできなくなる虞があるが、台座部材10に設けられた当接段部16のうちの連結部12の立ち壁13と被挟持部11の突部11aとがプレート枠36の左右側辺の外側縁36aと当接することにより、台座部材10がプレート枠36に対して左右方向に移動するのを規制しており、かつ、プレート枠36は壁表面42に対して一定位置に固定されているので、確実に覆い部材20を台座部材11に取り付けることができる。これにより、覆い部材20は、図6(j)に示すように、台座部材10に取着され、配線器具31及び化粧プレート35の全体を覆い隠す。
【0031】
なお、台座部材10の連結部12の立ち壁13と対応する覆い部材20の周壁21の先端縁21aは、台座部材10の立ち壁13を配置可能とすべく切欠高さHだけ切り欠かれ、壁表面42から後退しているとともに、台座部材10の立ち壁13は、化粧プレート35の壁表側の突出長より大きく突出しているから、図6(i)において、覆い部材20を化粧プレート35の前面に配置したとき、覆い部材20の左側面の周壁21の先端縁21aが化粧プレート35のプレート本体37の表面と干渉するのが回避される。また、覆い部材20において先端縁21aが切り欠かれている周壁21を除く他の3つの周壁21の先端縁21aは、壁表面42と略接するように形成されているから、設置後、配線器具覆い具1の見栄えが良く、また、外部からの塵埃の侵入が防止される。
【0032】
ところで、上記実施形態では、ケーブル50は、プラグ51を介して配線器具31に接続され、覆い部材20の下面の周壁21から垂直下方に引き出されたものを例示しているが、ケーブル50は、覆い部材20の側面の周壁21から水平方向に引き出される場合もある。例えば、図7に示すように、コンセントに接続されたケーブル50は、覆い部材20の側面の周壁21に設けられた貫通孔24から図7の右方向に引き出され、壁表面42に固定されたケーブル化粧カバーの基台52内を右方向に配線されている。この場合、ケーブル50の引出し方向と台座部材10に対する覆い部材20のスライド方向とは一致するので、台座部材10に対する覆い部材20の取着時の作業性が良い。
【0033】
次に、本実施形態の配線器具覆い具1、及び配線器具覆い部材の設置構造2の作用を説明する。
台座部材10の一対の被挟持部11,11は、固定ビス34を緩めた状態で配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との隙間に挿入可能に形成されているとともに、一対の被挟持部11,11の間隔L1は一対の固定ビス34,34の間隔L2より大きく形成されて、一対の固定ビス34,34の並び方向の両外側にそれぞれ配置可能である、つまり、被挟持部11は、固定ビス34が貫通することなく、配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42とで挟持されることにより取り付けられる。したがって、固定ビス34を壁裏側固定体33から完全に取り外すことなく配線器具覆い具1を既設の配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との間に挿入し設置することができるから、その作業を効率良く行なうことができる。これは、覆い具1が取り付けられている配線器具装置30から配線器具覆い具1を着脱するときも同様である。
【0034】
また、単に固定ビス34を緩めて台座部材10を配線器具固定体32の裏面32bと壁表面42との隙間に挿入すればよいので、台座部材10を安全に固定することができる。
【0035】
そして、覆い具1を取り付けることにより、配線器具31及び化粧プレート35は覆われるので、コンセント等の配線器具31に埃等が侵入し蓄積するのが防止され、トラッキング現象の発生が回避される。また、小児がいたずらで配線器具31に触れたりすることによる感電事故を防ぐこともできる。更に、配線器具31がスイッチ等である場合に、小児がいたずらで触れることにより誤作動が生じるのを未然に防止できる。
【0036】
ところで、上記実施形態の覆い部材20は、スライド移動させて嵌合部23を台座部材10の被嵌合部15に嵌合させることにより台座部材10に取着しているが、これに限られるものではなく、例えば、図示しないが、覆い部材20を台座部材10に正面から押し付け、覆い部材20の係止突起を台座部材10の係止孔に弾性的に係止させることにより、スライド移動させることなくそのまま台座部材10に取着させてもよい。あるいは、覆い部材20の嵌合部23と台座部材10の被嵌合部15との嵌合部分を、ヒンジ構造により連結し、または、台座部材10の連結部12にヒンジを設けることにより、台座部材10に覆い部材20を取着してもよい。
【0037】
更に、上記実施形態の台座部材10は、連結部12に立設された立ち壁13と上下一対の被挟持部11に立設された縦壁14とが同一高さに形成されているが、異なる高さに形成してもよい。この場合、覆い部材20の一部の周壁21において反天壁22側の先端縁21aに形成される切欠高さHは、台座部材10の連結部12の立ち壁13の高さに対応した大きさに形成される。
【0038】
また、台座部材10の被挟持部11は、一定幅に形成されているが、連結部12側の端部から固定ビス34と干渉しないその手前までの間においては、幅広に形成してもよい。この場合、挟持面積が増すので、その分、配線器具固定体32と壁表面42とによる挟持力が増大する。更に、被挟持部11の片面または両面にパッキングを貼着してもよい。
加えて、台座部材10の被挟持部11の先端部は、配線器具固定体32と壁表面42との隙間に挿入し易くするために、先細りの楔形状に形成してもよい。
【0039】
更に、上記実施形態の配線器具覆い具1は、矩形状に形成されているが、丸形状や八角形状のものとしてもよい。
そして、上記実施形態において、壁裏側固定体33は、配線ボックスからなるが、これに限らず、壁裏面41に当接可能な枠状体であってもよい。
加えて、上記実施形態の化粧プレート35は、プレート枠36とプレート本体37とからなるが、前述のように、プレート枠36とプレート本体37とが一体化されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 配線器具覆い具 30 配線器具装置
2 配線器具覆い部材の設置構造 31 配線器具
10 台座部材 32 配線器具固定体
11 被挟持部 32b 裏面
12 連結部 33 壁裏側固定体
13 立ち壁 34 固定ビス
14 縦壁 35 化粧プレート
15 被嵌合部 36 プレート枠
16 当接段部 37 プレート本体
20 覆い部材 40 壁孔
21 周壁 42 壁表面
21a 先端縁 50 ケーブル
22 天壁 L1 一対の被挟持部の間隔
23 嵌合部 L2 一対の固定ビスの間隔
24 貫通孔 H 覆い部材の周壁の切欠高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8