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特許7013336インサイチュー架橋性ポリマー組成物およびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】インサイチュー架橋性ポリマー組成物およびその方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 26/00 20060101AFI20220124BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20220124BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20220124BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 5/04 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 5/08 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A61L26/00
A61L31/04 100
A61L31/04 120
A61L31/12
A61L31/14 300
A61P7/04
A61P17/02
C08L5/04
C08L5/08
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018120864
(22)【出願日】2018-06-26
(62)【分割の表示】P 2014541368の分割
【原出願日】2012-11-12
(65)【公開番号】P2018183611
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2018-07-25
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】61/559,110
(32)【優先日】2011-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514119351
【氏名又は名称】クレシロン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cresilon,lnc.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エー.・ランドリナ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-186048(JP,A)
【文献】特開2004-041586(JP,A)
【文献】特開2000-005296(JP,A)
【文献】国際公開第2011/011658(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101463145(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101463144(CN,A)
【文献】特開平7-188424(JP,A)
【文献】特開平6-319517(JP,A)
【文献】特開平11-318407(JP,A)
【文献】第48回高分子学会予稿集, 1999, Vol.48, No.10, pp.2431-2432
【文献】Biomaterials, 2008, Vol.29, pp.4831-4837
【文献】SEN-I GAKKAISHI (繊 維 と 工 業), 1990, Vol.46, No.12, pp.576-580
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
MEDLINE/CAplus/BIOSIS/EMBASE/WPIDS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約2重量%~約5重量%のポリアニオン性ポリマー、ここで前記ポリアニオン性ポリマーはアルギン酸ナトリウムであり、
b)約2重量%~約25重量%のポリカチオン性ポリマー、ここで前記ポリカチオン性ポリマーはキトサンであり、ここで前記キトサンは塩化キトサンではない、および、
c)73重量%~93重量%の水、
からなる出血の治療に使用するためのゼラチン状マトリックス組成物であって、圧力を加える必要なく出血が治療される、上記ゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項2】
出血が動脈出血、静脈出血、歯のまたは口腔の出血である、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項3】
出血が動脈出血である、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項4】
出血が静脈出血である、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項5】
出血部位で止血マトリックスを形成する、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項6】
出血部位で固化する、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項7】
動物において出血が治療される、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項8】
ヒトにおいて出血が治療される、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【請求項9】
パック、小袋、チューブ、シリンジ、ビン、または、バッグ内に貯蔵される、請求項1に記載のゼラチン状マトリックス組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本出願は、その全体の開示が参照によりここに組み込まれている2011年11月13日出願の特許仮出願第61/559,110号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、一般に、生体適合性ポリマー製剤を用いた組成物に関し、特に、傷の治癒において使用するための血友病のポリマーマトリックス、血液の凝固、および化粧用途に関する。
【発明の背景】
【0003】
傷の治癒は、多様な細胞とマトリックス成分が相互作用を行って最初に仮の組織を確立し、次いで、成熟した代替物を形成しつつこの仮の組織を再構成することを含む、複雑で組織的な過程である。最初に、止血血小板血栓が、感染防止および乾燥防止用の障壁を再確立し、細胞浸潤物の第1の波を引き起こす。これは、主として、生来と獲得の両方の免疫性を提供する白血球からなる。こうした細胞は、微生物による汚染を排除するために酵素および殺菌性分子を産生するが、しかし、こうした同じ防御機構は、失われた組織を再生するのに必要な角化細胞、繊維芽細胞、および内皮細胞に対して有害である。したがって、治癒が進むにつれて、炎症相の事象および過程が消失する必要がある。
【0004】
皮膚の傷の修復の場合、これは汚染された表面で生ずるので、特別な困難が発生する。
傷が感染した場合、炎症相が慢性になり、再生相が抑制されるので通常の治癒が妨害される。さらに、微生物と白血球の両方から放出される酵素が、傷組織および周囲の皮膚を破壊する。したがって、通常の皮膚の傷において汚染物質によってもたらされる感染を防止するために適切な治癒を保証することが重要である。
【0005】
傷の治癒は、通常、三つの相:炎症相、増殖相、および再構成相に分割される。フィブロネクチンは、特に侵入細胞が接着する足場を創出することによって傷治癒過程のそれぞれの段階に関係することが報告されてきた。最初に、フィブロネクチンやフィブリノーゲンなどの多数のメディエータが傷部位に放出される。フィブロネクチンは、炎症細胞の傷内への移動および単球によるデブリ食作用を促進する。その後、血管形成および再上皮化が行われる。この段階で、フィブロネクチンは、内皮細胞に対して遊走能を発揮し、上皮細胞および線維芽細胞の基底膜上への移動を促進する。フィブロネクチンはまた、それがコラーゲンフィブリルの組織化で主要な役割を果たす再構成相で必須であるように思われる。線維状コラーゲンは、究極的に、組織の引張強度を増進し、傷の閉鎖をもたらす線維束を形成する。
【0006】
ヒドロゲルは、通常、傷治癒過程を促進するための局所製剤として利用されてきた。ゲル組成物は、膨張度、生体適合性、浸透性、および膨張動力学という特性で選択されてきた。かかる化合物の例として、ビニルポリマー(例えば、ポリアクリル酸)、セルロース、およびセルロース誘導体が挙げられてきた。カルボマーとも呼ばれるポリアクリル酸ポリマーは、フィブロネクチンの皮膚傷への送達性が優れているので使用されている。
【0007】
天然に産する生体高分子は、再生医療、再生医薬、薬物送達、医療用インプラント、形成外科、およびその他で応用されている。かかる産生物は、ヒアルロン酸(HA)、キトサン、ヘパリン、硫酸コンドロイチン、アルギネートおよび他のグルコサミンおよびグリコサミノグリカン、他の多糖類、およびその誘導体を含む成分を有する。
【0008】
組合せでは、フィブロネクチン(および類似のタンパク質)の濃縮物は、慢性潰瘍を治療するためにアルギン酸塩と一緒に利用されてきた。ドレッシングシステムは、凍結乾燥法によって固化され、ゲルを繊維に変化させる。この手順によって、親水特性を有するスポンジ様構造体が創出される。流体の存在下で、ドレッシングは、ゲル様状態に戻ることができ、傷浸出液中でその重量の20倍までを吸収する。ドレッシングは、そのスポンジ様構造および水分保持力のために傷治療後容易に除去される。しかし、生理食塩水でいったん水和すると、フィブロネクチン-セルロースドレッシングは、上皮が剥がれたヒトの皮膚の表面上で所望の線維状保護フィルムを提供しない。次いで、創面切除が、あらゆる壊死材料を除去するためにドレッシングの除去で実施される。
【0009】
したがって、治癒の遅延、肉芽形成と上皮形成の低減、および傷炎症の持続を含めて、急性および慢性の傷の治療において課題が存在する。不完全な傷の治癒によって、感染、痛み、および慢性(非治癒性)の傷の発症など他の合併症および問題をもたらす恐れがある。
【0010】
治癒を補助し、炎症を低減し、痛みを和らげ、急性と慢性両方の傷における瘢痕形成を防止すると思われる慢性の傷の治療の必要性が現今存在する。治療が可能であると思われる急性の傷として、火傷、擦り傷、乾燥皮膚、術後切開痕、切り傷、刺創、水膨れ、虫刺され、および他の重篤な組織傷害が挙げられる。慢性の傷の治療は、加圧潰瘍、静脈潰瘍、糖尿病性の脚の潰瘍、褥瘡潰瘍、および非治癒性の組織の傷害を含めた治癒の遅い傷を包含すると思われる。
【0011】
全体として、施用が容易であり、組織の治癒に資するマトリックスを形成し、抗微生物特性を有する組成物が望まれている。その組成物は、生体適合性であってもよく、速やかに反応して細胞毒性の可能性を回避するものであってもよい。さらに、その組成物は、固化した傷ドレッシングの薄いおよび厚い層を提供するための所望の制御された方法を提供しつつ、傷の治癒を促進し、最大化することになる。
【0012】
間接的な効果として、創面切除などの医療手順に対する必要性の低減、入院期間の短縮、術後の回復期間の短縮、日常的な機能および労働への復帰間隔の短縮、および治療コスト全体の低減を挙げることができる。施用および使用方法を含めた傷の治癒に対するこうした改善が、多様な組織を治療および修復する際に役立つことが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
以下の発明は、内部と外部の両方で形成及び固化できる、ゼラチン状の傷治癒および止血マトリックスである生体適合性ポリマー組成物である。
【0014】
本発明の一態様では、生体適合性ポリマー組成物は、1)1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーと、2)1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーとを含む。本発明の一態様では、前記1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーは、少なくとも1種の架橋性ポリアニオン性ポリマーを含む。本発明の別の態様では、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーは、少なくとも1種の架橋性ポリアニオン性ポリマーと少なくとも1種の非架橋性ポリアニオン性ポリマーとを含む。
【0015】
本発明の一態様では、生体適合性ポリマー組成物は、1)傷の表面で形成できる1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーと、2)固化過程を補助し、血液凝固を促進する1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーとの混合物を含む。本発明の別の態様では、生体適合性ポリマー組成物は、1)傷の表面で形成できる1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーと、2)固化過程を補助し、血液凝固を促進する1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーと、3)周囲の領域を殺菌しつつ傷中でゲルを架橋結合する架橋ミストとの混合物を含む。
【0016】
本発明の一態様では、前記1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーは、アルギネートまたはヒアルロン酸を含む。本発明の一態様では、前記1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーは、キトサンを含む。本発明の一態様では、架橋ミストは、塩化カルシウム水溶液であってよい。
【0017】
圧力を加える必要なしで止血を速やかに実現することおよび生体適合性傷治癒マトリックスを提供することを含めた、本発明の医療ゲルを使用する1種又は2種以上の方法も開示されている。
【0018】
本発明の多様な態様によって、所望の粘度および所定の機能特性を変更するように製剤を調整し、実施することが可能である。一側面では、ポリカチオン性ポリマーとポリアニオン性ポリマーの比を改善して傷の治癒における多様な効率の度合いを実現することができる。別の側面では、治療薬を添加して薬物送達オプション用の薬物製剤を統合することができる。さらに、他の特徴として、医療用ゲルの調製中、ゲルの施用中に温度(複数可)および/または圧力(複数可)を制御すること、ならびに固化マトリックスの弾性または剛性のために制御することを包含することができる。液体と固形両方の構造のマトリックス製剤はまた、解剖上および生理上の測定値ならびに状態で決まる場合もある。
【0019】
本発明の多様な態様によって、第1の組織部位または第2の組織部位で組成物を調整し実施することが可能になり、明白であるとみなされているかかる改変形態を統合し、多様な量で組み合わせて任意の大きさ、形状および構成の構造マトリックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一態様の側面図である。
図2図2は、本発明物が血液およびそれ自体と相互作用している状況の顕微鏡的描像である。
図3A図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3B図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3C図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3D図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3E図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3F図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3G図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3H図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図3I図3A~3Iは、ポリカチオン性ポリマーまたはポリアニオン性ポリマーを形成するのに使用できる多様なポリマーサブユニットを示す。
図4図4は、既存の技術と比較した場合の本発明の利点を示す。
【発明の詳細な説明】
【0021】
以下の詳細な説明では、限定するためではなく説明のために、具体的な詳細を開示する例示的な態様を、本発明を完全に理解するために記載する。しかし、本発明は、ここで開示された具体的な詳細から逸脱した他の態様においても実施できることは当業者には明白であろう。他の例では、本発明の説明を曖昧にしないように、周知の組成物および方法の詳細な説明を排除する場合がある。
【0022】
本発明の生体適合性ポリマー組成物は、外部の傷および内部の傷を治療するのに使用することができる。本発明の一態様では、生体適合性ポリマー組成物は、多様な傷に施用することができる。傷の非限定的な例として、限定されないが、外部裂傷、擦り傷、火傷、眼球裂傷、実質組織の損傷、内部裂傷、消化管裂傷、表面切り傷およびかすり傷、内出血、動脈出血、静脈出血、歯牙または口腔出血および切開が挙げられる。かかる傷の治療から利益を得ることができる対象体として、ヒト;馬、羊、牛、豚、犬、猫などの哺乳類;およびクジラ、イルカ、アザラシ、カワウソ、魚などの海洋動物;および亀などの爬虫類を含む多様な動物が挙げられる。
【0023】
本発明の一態様による構造マトリックスの例示は図1に示される。図に示すように、組織の損傷断面、すなわち傷(112)では、血管系(116)が全体にわたり突出している。生体適合性ポリマー組成物(114)は、傷(112)に施用され、保護コート(110)によってコートされている。
【0024】
図2は、構造ポリマー(226)と血友病のポリマー(224)とを含む生体適合性ポリマー組成物(114)の一態様の拡大図を示す。構造ポリマー(226)は、全組成物重量の約0.1%~95%の架橋性ポリアニオン性ポリマーと、全組成物重量の0%~95%の非架橋性ポリアニオン性ポリマーとを含む。血友病のポリマー(224)は、全組成物重量の約1%~90%のポリカチオン性ポリマーを含む。赤血球(210)は、赤血球-カチオン基結合(216)を介してカチオン官能基(212)と連携して示されている。
【0025】
図3A~3Iは、構造ポリマー(226)または血友病のポリマー(224)として選択され得る種々のポリマーを示す。ポリマーは、カルボキシメチル(CM)基の付加による修飾によってアニオン官能基(218)を得ることができる。図3Eは、カルボキシメチルセルロースを示す。アルギネート(3A)、ヒアルロン酸ナトリウム(3F)、κ-カラギーナン(3G)、ι-カラギーナン(3H)、およびポリアクリル酸ナトリウム(3I)は、構造ポリマー(226)として機能すると思われるポリマーの例である。同様に、キチン(3B)およびキトサン(3C)は、血友病のポリマー(224)として機能すると思われるポリマーの例である。図3Dは、任意のポリマー(340)が、ジエチルアミノエチル(DEAE)基で修飾することによってカチオン官能基(212)を得ることができる状況を示す。
【0026】
生体適合性ポリマー組成物(114)は、全組成物重量の約0.1%~99.8%の溶媒を含む。本発明の一態様では、溶媒はエタノールである。好ましくは、溶媒は、エタノールを水に溶解した5%水溶液である。溶媒の非限定的な例として、水、エタノール、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、およびテトラヒドロフランが挙げられる。溶液では、構造ポリマー(226)および血友病のポリマー(224)は、分子間相互作用を行い、それによってそれらが結合して一緒になる。血友病のポリマー(224)上のカチオン官能基(212)は、構造ポリマー(226)上のアニオン官能基(218)を引き寄せ、イオン性架橋(214)をもたらす。加えて、血友病のポリマー(224)および構造ポリマー(226)は、シッフ塩基またはアゾメチン結合と同様に、共有結合的に架橋(228)され得る。
【0027】
保護コート(110)は、0.1重量%~30重量%の二価以上のカチオン(220)と、0重量%~90重量%の疎水性ポリマーと、5重量%~99.9重量%の溶媒とを含む。保護コート(110)は、二価カチオン(220)を内側に拡散させることによって組成物(114)を架橋し、それによって構造ポリマー(226)の二価カチオン架橋(222)がもたらされる。これによって組成物(114)の剛性が増加し、より良好な安定性が可能になる。保護コート(110)はまた、疎水性ポリマーを含むことができ、これによって組成物(114)からの水の損失が制限され、耐久性が改善される。疎水性ポリマーは、ポリウレタン、ニトロセルロース、シアノアクリレート、スチレン、ポリテトラフルオロエタン、およびシリコーン、およびその組合せであってよい。溶媒は、水、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、およびテトラヒドロフラン、およびその組合せであってよい。二価以上のカチオンは、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Ag2+、Ag3+、Au2+、Au3+、Mg2+、Cu2+、Cu3+、およびZn2+であってよい。本発明の一態様では、カチオンは、Ca2+である。
【0028】
本発明の一態様では、構造ポリマー(226)は、0.1重量%~5重量%のアルギン酸ナトリウムと、1重量%~5重量%のヒアルロン酸ナトリウムとを含み、血友病のポリマー(224)は、2重量%~25重量%の塩化キトサンを含み、溶媒は、65重量%~96.9重量%のエタノールを水に溶解した5%水溶液を含む。この態様では、組成物は、より速やかな組織の再生を促進するための傷治癒マトリックスとして機能する。
【0029】
別の態様では、構造ポリマー(226)は、2重量%~5重量%のアルギン酸ナトリウムと、0重量%~2重量%のヒアルロン酸ナトリウムとを含み、血友病のポリマー(224)は、5重量%~20重量%の塩化キトサンを含み、溶媒は、73重量%~93重量%のエタノールを水に溶解した5%水溶液を含む。この態様では、組成物は、圧力を加える必要なしで止血を速やかに実現するための濃厚ゲルとして機能する。組成物は、欠陥のある血管に局所的に送達することができる。
【0030】
本発明の別の態様では、構造ポリマー(226)は、0.1重量%~4重量%のアルギン酸ナトリウムと、1重量%~5重量%のリシン富化ポリペプチドとを含み、血友病のポリマー(224)は、5重量%~25重量%のジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン)を含み、溶媒は、65重量%~93重量%のエタノールを水に溶解した5%水溶液を含む。次いで生体適合性ポリマー組成物(114)は、0.1重量%~1重量%の塩化カルシウムと、1重量%~5重量%のニトロセルロースと、94重量%~98.9重量%の酢酸アミルとを含むエアロゾルミストを施用することによってインサイチューで架橋結合する。この態様では、組成物は、耐久性があり、傷からの水の損失を制限する切り傷およびかすり傷用の保護被覆として機能する。
【0031】
本発明の一態様では、生体適合性ポリマー組成物は、約3.6重量%のアルギン酸ナトリウムと、約7重量%の塩化キトサンと、約89.4重量%のエタノールを水に溶解した5%水溶液とを含む。この態様は、動脈出血を治療するための組成物として機能することができる。
【0032】
本発明の一態様では、保護コートは、約0.1重量%~約30重量%の二価以上のカチオンと、0重量%~約90重量%の疎水性ポリマーと、約5重量%~約99.9重量%の溶媒とを含む溶液を含む。本発明の一実施形態では、保護コートは、約0.1重量%~約1重量%の二価カチオンと、約1重量%~約5重量%の疎水性ポリマーと、約94重量%~約98.9重量%の溶媒とを含む溶液を含む。本発明の一態様では、保護コートは、約0.1重量%~約1重量%の二価カチオンと、約1重量%~約5重量%の疎水性ポリマーと、約94重量%~約98.9重量%の溶媒とを含む溶液を含む。
【0033】
本発明の一態様では、組成物(114)は、薬物や生体分子などの治療薬用の担体として使用される。薬物送達システムとしての組成物(114)の使用は、傷の治癒ゲルの効率を改善する。一側面では、保護コート(110)は、銀塩を用いて調製され、ゲルの抗菌特性が増加する。一態様では、治療薬は、抗菌剤、抗生物質、ホルモン、タンパク質(カルレチクリン、トロンビン、プロトロンビン、ファクターVIIIなどの)、およびヨウ素、およびその組合せからなる群から選択される。本発明の一態様では、治療薬は、好ましくは、ヨウ素である。本発明の別の態様では、治療薬は、タンパク質である。
【0034】
本発明の一態様では、架橋性ポリアニオン性ポリマーは、ポリスチレンスルホネート(ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどの)、ポリアクリレート(ポリアクリル酸ナトリウムなどの)、ポリメタクリレート(ポリメタクリル酸ナトリウムなどの)、ポリビニルスルフェート(ポリビニル硫酸ナトリウムなどの)、ポリホスフェート(ポリリン酸ナトリウムなどの)、ι-カラギーナン、κ-カラギーナン、ゲランガム、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルアガロース、カルボキシルメチルデキストラン、カルボキシルメチルキチン、カルボキシルメチルキトサン、カルボキシルメチル基で修飾されたポリマー、アルギネート(アルギン酸ナトリウムなどの)、複数のカルボキシル基を含むポリマー、キサンタンガム、およびその組合せであってよい。好ましくは、架橋性ポリアニオン性ポリマーは、アルギネート、より好ましくは、アルギン酸ナトリウムである。
【0035】
好ましくは、架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約1重量%~約95重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約5重量%~約40重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約10重量%~約30重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む。
【0036】
本発明の一態様では、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウムなどの)、ポリヌクレオチド(RNAなどの)、平均残基等電点が7未満であるポリペプチド鎖、グルコサミノグリカン、およびプロテオグリカン、およびその組合せであってよい。好ましくは、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸、より好ましくは、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0037】
好ましくは、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約0重量%~約95重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約5重量%~約25重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約0重量%~約5重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約0重量%~約2重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、非架橋性ポリアニオン性ポリマーは、約1重量%~約5重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む。
【0038】
本発明の一態様では、ポリカチオン性ポリマーは、キトサン(塩化キトサンなどの)、キチン、ジエチルアミノエチル-デキストラン、ジエチルアミノエチル-セルロース、ジエチルアミノエチル-アガロース、ジエチルアミノエチル-アルギネート、ジエチルアミノエチル基で修飾されたポリマー、複数のプロトン化されたアミノ基を含むポリマー、および平均残基等電点が7を超えるポリペプチド、およびその組合せであってよい。好ましくは、ポリカチオン性ポリマーは、キトサン、より好ましくは、塩化キトサンである。好ましくは、ポリカチオン性ポリマーは、ジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン)である。
【0039】
好ましくは、ポリカチオン性ポリマーは、約1重量%~約90重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、ポリカチオン性ポリマーは、約2重量%~約80重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む;好ましくは、ポリカチオン性ポリマーは、約2重量%~約25重量%の生体適合性ポリマー組成物を含む。
【0040】
生体適合性ポリマー組成物の個々の成分は、例えば、パック、小袋、チューブ、タブ型容器、ポンプ、シリンジ、ビン、バッグ、およびエアロゾル系スプレー缶を含めた、多様な異なる用途のための多様な異なる容器で貯蔵することができる。成分は、例えば、プラスチック、金属、またはガラスを含めた多様な材料から作製された容器に貯蔵することができる。成分は、操作できるように連結した構成で供給してもよく、使用者が使用前にセットアップする別個の成分として供給してもよい。
【0041】
ここで記載された組成物またはシステムは、1種以上の、ポリアニオン性ポリマーを含む溶液;ポリカチオン性ポリマーを含む溶液;溶媒;および二価以上のカチオンと、疎水性ポリマーと、溶媒とを含む溶液を含む生体適合性ポリマー組成物を形成するためのキットまたは製造用物品中に含ませることができる。キットまたは製造用物品は、ガーゼ、包帯、テープ、ブラシ、さじ、およびスポンジをさらに含むことができる。
【0042】
多数の実施法が説明された。しかし、本文書の趣旨および範囲から逸脱することなく多様な改変形態が作成可能であることは理解されよう。特に、例えば、溶液の多様な組成物が説明されたが、同じまたは類似の効果を実現するために、多様な類似の成分および要素を代替として統合または利用することができる。さらに、器官の移植、組織の接合、ならびに/あるいは身体の外部および/または内部の任意の部位もしくは位置における多様な外科切開および損傷を含めた、皮膚の真皮層の内部または外部の多様な傷の位置を標的とするために多様なマトリックスを用いることもできる。したがって、他の実施法も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0043】
さらには、説明された調査結果では、剛性マトリックスを形成するために組成物の一態様を利用することができるが、別の組成物を単独または組み合わせて弾性を増加させるように設計することもできる。さらには、組成物を混合および製剤する方法は、自然に再構築された組織の形成を統合する埋め込まれた固化マトリックスと同じまたは類似の効果を実現するために、任意の順序および組合せで実施することができる。一態様では、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーは、最初に傷に施用され、次いで1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーが、傷の部位で前記1種又は2種以上の重合性ポリマーに施用される。一態様では、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーが1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーと混合され、次いで混合物が傷に施用される。一態様では、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーは、1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーが傷に施用されるのと同時にまたはほぼ同時に傷に施用される。
【0044】
一態様では、傷を治療する方法は、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーを傷に施用し、次いで1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーを傷の部位で前記1種又は2種以上の重合したポリマーに施用することを含む。一態様では、傷を治療する方法は、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーを1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーと混合し、次いでその混合物を傷に施用することを含む。一態様では、傷を治療する方法は、1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーを、1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーを傷に施用するのと同時にまたはほぼ同時に傷に施用することを含む。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
a.約0.1重量%~約95重量%の1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーと、
b.約0.1重量%~約90重量%の1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーと、
c.0.1重量%~99.8重量%の水とを含む、生体適合性ポリマー組成物。
[2]
前記1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーが、少なくとも1種の架橋性ポリアニオン性ポリマーを含む、[1]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[3]
前記1種又は2種以上のポリアニオン性ポリマーが、少なくとも1種の非架橋性ポリアニオン性ポリマーをさらに含む、[2]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[4]
少なくとも1種の架橋性ポリアニオン性ポリマーが、ポリスチレンスルホネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリホスフェート、ι-カラギーナン、κ-カラギーナン、ゲランガム、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルアガロース、カルボキシルメチルデキストラン、カルボキシルメチルキチン、カルボキシルメチルキトサン、カルボキシルメチル基で修飾されたポリマー、アルギネート、複数のカルボキシル基を含むポリマー、およびキサンタンガムからなる群から選択される、[3]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[5]
1種又は2種以上の架橋性ポリアニオン性ポリマーが、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニル硫酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、およびアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される、[4]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[6]
少なくとも1種の非架橋性ポリアニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸、ポリヌクレオチド、平均残基等電点が7未満であるポリペプチド鎖、グルコサミノグリカン、およびプロテオグリカンからなる群から選択される、[3]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[7]
少なくとも1種の非架橋性ポリアニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸ナトリウムまたはRNAからなる群から選択される、[6]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[8]
前記1種又は2種以上のポリカチオン性ポリマーが、キトサン、キチン、ジエチルアミノエチル-デキストラン、ジエチルアミノエチル-セルロース、ジエチルアミノエチル-アガロース、ジエチルアミノエチル-アルギネート、ジエチルアミノエチル基で修飾されたポリマー、複数のプロトン化されたアミノ基を含むポリマー、および平均残基等電点が7を超えるポリペプチドからなる群から選択される、[3]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[9]
少なくとも1種の架橋性ポリアニオン性ポリマーが、水素結合によって少なくとも1種のポリカチオン性ポリマーと架橋結合している、[3]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[10]
少なくとも1種の架橋性ポリアニオン性ポリマーが、共有結合によって少なくとも1種のポリカチオン性ポリマーと架橋結合している、[3]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[11]
抗菌剤、抗生物質、ホルモン、タンパク質、およびヨウ素からなる群から選択される治療薬をさらに含む、[3]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
[12]
a.約0.1重量%~約30重量%の二価以上のカチオンと、
b.0重量%~約90重量%の疎水性ポリマーと、
c.約5重量%~約99.9重量%の溶媒とを含む溶液を添加することを含む、[1]に記載のポリマー組成物上に保護コートをインサイチューで形成する方法。
[13]
前記疎水性ポリマーが、ポリウレタン、ニトロセルロース、シアノアクリレート、スチレン、ポリテトラフルオロエタン、およびシリコーンからなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[14]
前記溶媒が、水、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[15]
前記二価以上のカチオンが、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Ag2+、Ag3+、Au2+、Au3+、Mg2+、Cu2+、Cu3+、およびZn2+の塩からなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[16]
[1]に記載の生体適合性ポリマー組成物を傷に直接施用することを含む、傷を治療する方法。
[17]
前記傷が、外部裂傷、擦り傷、火傷、眼球裂傷、実質組織の損傷、内部裂傷、消化管裂傷、表面切り傷およびかすり傷、内出血、動脈出血、静脈出血、歯のまたは口腔の出血および切開からなる群から選択される、[16]に記載の方法。
[18]
[1]に記載の生体適合性ポリマー組成物を傷に直接施用することを含む、傷圧力を加える必要なしで速やかに止血を実現する方法。
[19]
a.約1重量%~約20重量%のアルギン酸ナトリウムと、
b.約1重量%~約5重量%のヒアルロン酸ナトリウムと、
c.約2重量%~約20重量%の塩化キトサンと、
d.55重量%~96重量%の、エタノールを水に溶解した5%水溶液とを含む、生体適合性ポリマー組成物。
[20]
a.約0.1重量%~約1重量%の塩化カルシウムと、
b.約1重量%~約5重量%のニトロセルロースと、
c.約94重量%~約98.9重量%の酢酸アミルとを含む溶液を添加することを含む、[19]に記載のポリマー組成物上に保護コートをインサイチューで形成する方法。
[21]
前記溶媒が、水、エタノール、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される、[1]に記載の生体適合性ポリマー組成物。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4