IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トリニティ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-塗料供給システム 図1
  • 特許-塗料供給システム 図2
  • 特許-塗料供給システム 図3
  • 特許-塗料供給システム 図4
  • 特許-塗料供給システム 図5
  • 特許-塗料供給システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】塗料供給システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20220124BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20220124BHJP
   B05B 12/04 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C11/00
B05B12/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018125793
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020001023
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】名倉 啓介
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152710(JP,A)
【文献】特開2017-018845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00-21/00
B05B12/00-12/14
13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料供給ポンプと、
前記塗料供給ポンプの吸入口に接続された塗料タンクと、
前記塗料供給ポンプの吐出口に接続されて塗装機へ塗料を送る塗料往路と、
前記塗装機から前記塗料タンクへ塗料を戻す塗料還路と、
前記塗料往路、前記塗料還路及び前記塗装機のうち予め定められた指定箇所での塗料の圧力が目標圧となるように、前記塗料供給ポンプの吐出量をフィードバック制御する制御装置と、を有する塗料供給システムにおいて、
前記制御装置は、前記フィードバック制御の制御パラメータ値を記録したテーブルを備えて、そのテーブルに記録された制御パラメータ値を用いて前記塗料供給ポンプの吐出量を制御するように構成され、
前記テーブルには、前記指定箇所における塗料の圧力が前記目標圧を含む第1圧力範囲から外れた場合の方が、前記指定箇所における塗料の圧力が前記第1圧力範囲内にある場合よりも、前記指定箇所における塗料の圧力を前記目標圧へ速く近づけるように、前記制御パラメータ値が複数段階に分かれて記録されている、塗料供給システム。
【請求項2】
前記テーブルには、前記指定箇所における塗料の圧力が前記第1圧力範囲を上回った場合の方が、前記指定箇所における塗料の圧力が前記第1圧力範囲を下回った場合よりも、前記指定箇所における塗料の圧力を前記目標圧へ速く近づけるように、前記制御パラメータ値が少なくとも3段階に分かれて記録されている、請求項1に記載の塗料供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記塗装機における塗料の元圧が前記目標圧となるように、前記塗料供給ポンプの吐出量を制御する、請求項1又は2に記載の塗料供給システム。
【請求項4】
前記塗装機は、複数備えられ、
前記塗料往路には、前記塗料供給ポンプの吐出口に接続した往路主管と、前記往路主管から分岐して複数の前記塗装機のそれぞれに接続する複数の往路枝管と、が設けられ、
前記塗料還路には、前記塗料タンクに接続した還路主管と、前記還路主管から分岐して前記複数の塗装機のそれぞれに接続する複数の還路枝管と、が設けられ、
前記圧力センサとして、前記複数の塗装機の中から選択された一の塗装機に接続した前記往路枝管内の塗料の圧力を検出する第1圧力センサと、前記一の塗装機に接続した前記還路枝管内の塗料の圧力を検出する第2圧力センサと、を有し、
前記制御装置は、前記第1圧力センサにより検出された塗料の圧力と前記第2圧力センサにより検出された塗料の圧力の平均値が前記目標圧となるように、前記塗料供給ポンプの吐出量を制御する、請求項3に記載の塗料供給システム。
【請求項5】
前記塗料往路には、塗料フィルタが設けられていて、
前記塗料供給ポンプの吐出圧を検出する吐出圧センサを有する、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の塗料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗料供給ポンプにより塗料を送る塗料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の塗料供給システムでは、塗装機の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転に切り替え、正規運転では、塗料供給ポンプの吐出流量が設定正規流量となるように制御され、セーブ運転では、塗料供給ポンプの吐出流量が設定正規流量より小さい流量となるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-154042号公報(段落[0062]~[0068]、図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の塗料供給システムでは、例えば、塗装機における塗料の元圧といった特定の箇所での塗料の圧力を目標圧に保つことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、塗料供給ポンプと、前記塗料供給ポンプの吸入口に接続された塗料タンクと、前記塗料供給ポンプの吐出口に接続されて塗装機へ塗料を送る塗料往路と、前記塗装機から前記塗料タンクへ塗料を戻す塗料還路と、前記塗料往路、前記塗料還路及び前記塗装機のうち予め定められた指定箇所での塗料の圧力が目標圧となるように、前記塗料供給ポンプの吐出量をフィードバック制御する制御装置と、を有する塗料供給システムにおいて、前記制御装置は、前記フィードバック制御の制御パラメータ値を記録したテーブルを備えて、そのテーブルに記録された制御パラメータ値を用いて前記塗料供給ポンプの吐出量を制御するように構成され、前記テーブルには、前記指定箇所における塗料の圧力が前記目標圧を含む第1圧力範囲から外れた場合の方が、前記指定箇所における塗料の圧力が前記第1圧力範囲内にある場合よりも、前記指定箇所における塗料の圧力を前記目標圧へ速く近づけるように、前記制御パラメータ値が複数段階に分かれて記録されている、塗料供給システムである。
【0006】
請求項2の発明は、前記テーブルには、前記指定箇所における塗料の圧力が前記第1圧力範囲を上回った場合の方が、前記指定箇所における塗料の圧力が前記第1圧力範囲を下回った場合よりも、前記指定箇所における塗料の圧力を前記目標圧へ速く近づけるように、前記制御パラメータ値が少なくとも3段階に分かれて記録されている、請求項1に記載の塗料供給システムである。
【0007】
請求項3の発明は、前記制御装置は、前記塗装機における塗料の元圧が前記目標圧となるように、前記塗料供給ポンプの吐出量を制御する、請求項1又は2に記載の塗料供給システムである。
【0008】
請求項4の発明は、前記塗装機は、複数備えられ、前記塗料往路には、前記塗料供給ポンプの吐出口に接続した往路主管と、前記往路主管から分岐して複数の前記塗装機のそれぞれに接続する複数の往路枝管と、が設けられ、前記塗料還路には、前記塗料タンクに接続した還路主管と、前記還路主管から分岐して前記複数の塗装機のそれぞれに接続する複数の還路枝管と、が設けられ、前記圧力センサとして、前記複数の塗装機の中から選択された一の塗装機に接続した前記往路枝管内の塗料の圧力を検出する第1圧力センサと、前記一の塗装機に接続した前記還路枝管内の塗料の圧力を検出する第2圧力センサと、を有し、前記制御装置は、前記第1圧力センサにより検出された塗料の圧力と前記第2圧力センサにより検出された塗料の圧力の平均値が前記目標圧となるように、前記塗料供給ポンプの吐出量を制御する、請求項3に記載の塗料供給システムである。
【0009】
請求項5の発明は、前記塗料往路には、塗料フィルタが設けられていて、前記塗料供給ポンプの吐出圧を検出する吐出圧センサを有する、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の塗料供給システムである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、制御装置によるフィードバック制御の制御パラメータ値を記録したテーブルに、指定箇所における塗料の圧力が第1圧力範囲から外れた場合の方が第1圧力範囲内にある場合よりも該圧力を目標圧へ速く近づけるように、制御パラメータ値が複数段階に分かれて記録されているので、制御パラメータ値が1種類のみ記録されている場合と比較して、指定箇所における塗料の圧力を目標圧に保ち易くなる。
【0011】
請求項2の発明では、指定箇所における塗料の圧力が過度に高くなることが抑えられ、塗料が流れる流路の安全性の向上が図られる。
【0012】
請求項3の発明では、塗装機での塗料の吐出圧の安定化が図られる。
【0013】
請求項4の発明では、第1圧力センサと第2圧力センサが検出した圧力を用いて、塗装機の元圧を容易に見積もることが可能となる。
【0014】
請求項5の発明では、吐出圧センサが検出した圧力から塗料フィルタの目詰まりを知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る塗料供給システムの概略構成図
図2】塗装機周辺の概略構成図
図3】制御パラメータ値を示すテーブル
図4】観測圧(P1とP2の平均値P)の推移の一例を示すグラフ
図5】ポンプ制御処理のフローチャート
図6】異常検知処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本開示の一実施形態に係る塗料供給システム10が示されている。塗料供給システム10は、塗料供給ポンプ11と、塗料供給ポンプ11の吸入口に接続パイプ11Aを介して接続された塗料タンク12と、塗料供給ポンプ11の吐出口に接続されて塗装ブース20内の塗装機21に塗料を送る塗料往路13と、塗装機21から塗装タンク12に塗料を戻す塗料還路14と、を備えている。塗料往路13の途中には、塗料フィルタ15が設けられている。
【0017】
塗装ブース20内には、塗装機21が複数備えられている。塗料往路13は、塗料供給ポンプ11の吐出口に接続された往路主管13Aと、往路主管13Aから分岐した複数の往路枝管13Bと、からなり、複数の往路枝管13Bのそれぞれに塗装機21が1つ接続されている。また、塗料還路14は、塗料タンク12に接続された還路主管14Aと、還路主管14Aから分岐した複数の還路枝管14Bと、からなり、複数の還路枝管14Bのそれぞれに塗装機21が1つ接続されている。なお、上述した塗料フィルタ15は、往路主管13Aのうち、塗料供給ポンプ11に最も近い、即ち、最も上流の往路枝管13Bと塗料供給ポンプ11に挟まれた部分に設けられている。
【0018】
塗装機21は、塗装ガン22を有する多軸多関節のロボットで構成されている。詳細には、図2に示されるように、塗装機21には、往路枝管13Bに接続される流入口23と、還路枝管14Bに接続される流出口24と、流入口23と流出口24に連絡した塗装機内流路25と、が設けられている。塗装機内流路25の途中には、カラーチェンジバルブ26が設けられていて、このカラーチェンジバルブ26に塗装ガン22が接続されている。なお、塗料供給システム10では、塗料タンク12に貯蔵された塗料は、接続パイプ11A、塗料往路13、塗装機内流路25及び塗料還路14を流れて、塗料タンク12に戻る。
【0019】
塗料供給ポンプ11は、インバータ制御によって出力を調整可能な電動プランジャーポンプで構成されている。そして、塗料供給システム10には、塗料供給ポンプ11の吐出量を制御する制御装置30が備えられている。
【0020】
制御装置30には、第1圧力センサ31と、第2圧力センサ32と、第3圧力センサ33と、が接続されている。第1圧力センサ31は、塗料供給ポンプ11から最も遠い、即ち、最も下流の往路枝管13B内の塗料の圧力を検出する。第2圧力センサ32は、塗料タンク12に最も近い、即ち、最も下流の還路枝管14B内の塗料の圧力を検出する。第3圧力センサ33は、塗料供給ポンプ11の吐出圧を検出する。具体的には、第3圧力センサ33は、往路主管13Aのうち塗料供給タンク11と塗料フィルタ15の間に挟まれた部分にある塗料の圧力を検出する。制御装置30は、圧力センサ31,32,33からの検出信号を受信する。
【0021】
制御装置30は、塗料供給ポンプ11の吐出量をフィードバック制御する。具体的には、制御装置30は、塗料供給ポンプ11から最も遠い、即ち、最も下流の塗装機21における塗料の元圧(詳細には、カラーチェンジバルブ26の元圧)が予め設定された目標圧P’となるようにPID演算を行い、その演算結果に基づいてインバータへ送出する制御電圧を加減することにより塗料供給ポンプ11をフィードバック制御する。
【0022】
ここで、制御装置30は、第1圧力センサ31によって検出された塗料の圧力P1と第2圧力センサ32によって検出された塗料の圧力P2の平均値P=(P1+P2)/2を塗装機21における塗料の元圧とみなす。そして、制御装置30は、P1とP2の平均値Pを観測圧として、その観測圧が目標圧P’となるようにインバータへ制御電圧を出力する。これにより、塗装機21における塗料の元圧を直接的に計測することは困難であっても、塗装機21における塗料の元圧を容易に見積もることが可能となる。
【0023】
制御装置30は、PID制御の制御パラメータ値(即ち、比例パラメータKp、積分パラメータKi及び微分パラメータKd)が記録されたテーブルを備えている。図3には、制御装置30が備えるテーブルの一例が示されている。同図に示されるように、このテーブルには、比例パラメータKp、積分パラメータKi及び微分パラメータKdを1つの制御パラメータ群として、3つの制御パラメータ群が記録されている。第1制御パラメータ群の比例パラメータKpは、残りの2つの制御パラメータ群(即ち、第2制御パラメータ群と第3制御パラメータ群)の比例パラメータKpよりも小さく設定されている。また、第2制御パラメータ群の比例パラメータKpは、第3制御パラメータ群の比例パラメータKpよりも大きく設定されている。なお、図3の例では、3つの制御パラメータ群の間で、積分パラメータKiと微分パラメータKdは、異なる値になっているが、同じ値であってもよい。
【0024】
制御装置30が塗料供給ポンプ11を制御するにあたって、観測圧(P1とP2の平均値P)が目標圧P’を含む第1圧力範囲内にある場合と観測圧が第1圧力範囲から外れた場合で、異なる制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いる。本実施形態では、第1圧力範囲は、目標圧P’との差がΔP(但し、ΔP>0)以内の範囲(即ち、P’-ΔP以上、P’+ΔP以下の範囲)となっている。
【0025】
具体的には、制御装置30は、観測圧(P1とP2の平均値P)が第1圧力範囲内にある場合には、第1制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11を制御し、観測圧が第1圧力範囲から外れた場合には、第2制御パラメータ群又は第3制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11を制御する。ここで、第1制御パラメータ群の比例パラメータKpは、第2制御パラメータ群と第3制御パラメータ群の比例パラメータKpよりも小さいので、観測圧が第1圧力範囲内にある場合には、その観測圧を第1圧力範囲内に保持しやすくなっている。これにより、観測圧を目標圧P’に保ち易くなる。
【0026】
制御装置30は、観測圧(P1とP2の平均値P)が第1圧力範囲の上限値を上回る場合(即ち、観測圧>P’+ΔPである場合)には、第2制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11を制御し、観測圧が第1圧力範囲の下限値を下回る場合(即ち、観測圧<P’-ΔPである場合)には、第3制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11を制御する。ここで、観測圧の目標圧P’からのズレ量が同じである場合には、第3制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いるときよりも第2制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いるときの方が観測圧を目標圧P’に速く近づける。これにより、本実施形態の塗料供給システム10では、観測圧の過度な上昇が発生し難くなる。なお、観測圧が予め設定された規定圧を超えると、塗料供給システム10はシャットダウンされる。
【0027】
図4には、観測圧(P1とP2の平均値P)の推移の一例が示されている。同図に示されるように、塗料供給ポンプ11が起動されると、観測圧は上昇する。観測圧が第1圧力範囲に到達するまでは、制御装置30は、第3制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11を制御する。そして、観測圧が第1圧力範囲の下限値まで上昇すると、制御装置30は、第1制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11を制御する。すると、塗料供給ポンプ11の吐出量が抑えられ、観測圧の上昇が遅くなる。
【0028】
観測圧が第1圧力範囲内で目標圧P’を上回ると、制御装置30は、第1制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いたまま、観測圧を下げるように塗料供給ポンプ11を制御する。つまり、塗料供給ポンプ11の吐出量が抑えられる。図4の例では、オーバーシュートが生じ、観測圧が第1圧力範囲の上限値を上回る。観測圧が第1圧力範囲の上限値を上回ると、制御装置30は、第2制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプを制御する。すると、塗料供給ポンプの吐出量がさらに抑えられ、観測圧の低下が速くなる。そして、観測圧が第1圧力範囲の上限値まで低下すると、制御装置30は、再び、第1制御パラメータ群の制御パラメータ値を用いて塗料供給ポンプを制御する。その結果、塗料供給ポンプ11の吐出量は増加し、観測圧の低下速度が遅くなる。
【0029】
このように、制御装置30は、観測圧と第1圧力範囲にあるか否かに応じて、制御パラメータ値を使い分ける。その結果、観測圧が第1圧力範囲内から外れた場合には、観測圧が速く第1圧力範囲内に収まるようになり、観測圧が第1圧力範囲内にある場合には、観測圧が第1圧力範囲から外れ難くなっている。さらに、制御装置30は、観測圧が第1圧力範囲を上回る場合と下回る場合とで、制御パラメータ値を使い分ける。その結果、観測圧が第1圧力範囲の上限値を大きく上回ることが抑えられ、塗料供給システム10のシャットダウンが抑えられる。
【0030】
図5には、制御装置30が塗料供給ポンプ11の吐出量を制御する際に所定周期で繰り返し実行するポンプ制御処理S10が示されている。ポンプ制御処理S10では、まず、圧力P1と圧力P2の平均値Pと目標圧P’との差(|P-P’|)がΔP以下であるか否か、即ち、平均値Pが第1圧力範囲内にあるか否かが判断される(ステップS11)。平均値Pと目標圧P’との差がΔP以下である場合(ステップS11でYes)、図3の第1制御パラメータ値を用いたPID制御を実行し(ステップS12)、このポンプ制御処理S10を終了する。平均値Pと目標圧P’との差がΔP以下でない、即ち、平均値Pが第1圧力範囲内にない場合(ステップS11でNo)、P>P’+ΔPであるか否かが判断される(ステップS13)。P>P’+ΔPである場合、即ち、平均値Pが第1圧力範囲を上回る場合(ステップS13でYes)、図3の第2制御パラメータ値を用いたPID制御を実行し(ステップS14)、このポンプ制御処理S10を終了する。P>P’+ΔPでない場合、即ち、平均値Pが第1圧力範囲を下回る場合(ステップS13でNo)、図3の第3制御パラメータ値を用いたPID制御を実行し(ステップS15)、このポンプ制御処理S10を終了する。
【0031】
塗料供給システム10では、制御装置30が、第3圧力センサ33を用いて塗料フィルタ15を監視する。ここで、第3圧力センサ33は、往路主管13Aのうち塗料供給タンク11と塗料フィルタ15の間に挟まれた部分にある塗料の圧力を検出するので、塗料フィルタ15に目詰まり等の異常が発生した場合、第3圧力センサ33が検出する圧力P3が高くなる。これにより、塗料フィルタ15の異常を察知することが可能となる。
【0032】
具体的には、塗料フィルタ15の異常は、制御装置30が図6に示される異常検知処理S20を所定の周期で繰り返し実行することによって検知される。異常検知処理S20では、まず、第3圧力センサ33が検出した圧力P3が予め定められた基準圧力を超えるか否かが判断される(ステップS21)。圧力P3が基準圧力を超える場合(ステップS21でYes)、報知処理(ステップS22)が実行され、異常検知処理S20が終了する。報知処理(ステップS22)では、塗料フィルタ15の異常が報知される。圧力P3が基準圧力以下である場合(ステップS21でNo)、異常検知処理S20が終了する。
【0033】
本実施形態の塗料供給システム10では、制御装置30によるフィードバック制御の制御パラメータ値を記録したテーブルに、塗装機21における塗料の元圧が第1圧力範囲から外れた場合の方が第1圧力範囲内にある場合よりも該元圧を目標圧P’へ速く近づけるように、制御パラメータ値が複数段階に分かれて記録されているので、制御パラメータ値が1種類のみ記録されている場合と比較して、塗装機21における塗料の元圧を目標圧P’に保ち易くなる。その結果、塗装機21での塗料の吐出圧の安定化が図られる。また、本実施形態では、最も下流の塗装機21における塗料の元圧を制御するので、複数の塗装機21における塗料の元圧を目標圧P’以上に制御することができる。
【0034】
ここで、塗料供給システム10では、塗装機21に接続される往路枝管13B内の塗料の圧力を検出する第1圧力センサ31と、該塗装機21に接続される還路枝管14Bの塗料の圧力を検出する第2圧力センサ32と、を有し、第1圧力センサ31によって検出された塗料の圧力P1と第2圧力センサ32によって検出された塗料の圧力P2の平均値P=(P1+P2)/2を該塗装機21における塗料の元圧とみなす。これにより、塗料供給システム10では、塗装機21における塗料の元圧を直接的に検出することができなくても、塗装機21における塗料の元圧を制御することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の塗料供給システム10では、塗装機21における塗料の元圧(詳細には、P1とP2の平均値)が第1圧力範囲を上回った場合の方が、塗装機21における塗料の元圧が第1圧力範囲を下回った場合よりも、塗装機21における塗料の元圧を目標圧P’へ速く近づけるように、制御パラメータ値が3段階に分かれて記録されているので、塗装機21における塗料の元圧が過度に高くなることが抑えられ、塗料が流れる流路の安全性の向上が図られる。
【0036】
[他の実施形態]
(1)第1圧力範囲は、目標圧Pを含んでいればよく、目標圧Pと第1圧力範囲の上限値との差分が目標圧Pと第1圧力範囲の下限値との差分に一致しなくてもよい。
【0037】
(2)上記実施形態では、制御装置30は、塗装機21における塗料の元圧(詳細には、カラーチェンジバルブ26の元圧)を観測圧として、その観測圧が目標圧となるように塗料供給ポンプ11を制御していたが、塗料が流れる流路のうち予め定められた指定箇所での塗料の圧力)を観測圧とすればよく、例えば、還路主管14Aのうち最も下流の還路枝管14Bと塗料タンク12に挟まれた部分の塗料の圧力を観測圧としてもよいし、第3圧力センサ33によって検出された塗料の圧力を観測圧としてもよい。なお、この場合の目標圧は、上記実施形態における目標圧と同じ値であってもよいし異なる値であってもよい。
【0038】
(3)上記実施形態では、制御装置30は、最も下流の塗装機21における塗料の元圧を目標圧P’にするように塗料供給ポンプ11を制御する構成であったが、任意に選択された塗装機21(例えば、最も上流の塗装機21)における塗料の元圧を目標圧P”にするように塗料供給ポンプ11を制御してもよい。なお、P”は、P’と同じ値であっても異なる値であってもよい。
【0039】
(4)塗料供給システム10は、1つの塗装ブース20にのみ塗料を供給してもよいし、複数の塗装ブース20に塗料を供給してもよい。
【0040】
(5)第2制御パラメータ群と第3制御パラメータ群の何れかを備えない構成としてもよい。例えば、第3制御パラメータ群を備えない構成とした場合、平均値Pが第1圧力範囲から外れると、第2制御パラメータ群のパラメータ値を用いて塗料供給ポンプ11が制御される。
【0041】
(6)塗料供給システム10を、第3圧力センサ33を備えない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 塗料供給システム
11 塗料供給ポンプ
12 塗料タンク
13 塗料往路
14 塗料還路
15 塗料フィルタ
21 塗装機
30 制御装置
31 第1圧力センサ
32 第2圧力センサ
33 第3圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6